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ぽかぽか春庭「塔本シスコ展 in 世田谷美術館」

2021-12-07 00:00:01 | エッセイ、コラム


202111207
ぽかぽか春庭アート散歩>2021アート散歩秋(6)塔本シスコ展 in 世田谷美術館

 「塔本シスコ展シスコ・パラダイス かかずにはいられない!人生絵日記」
 会期:2021.09.04 - 11.07 

 アマチュア画家のうち、大学の美術科などで専門的な美術教育を受けていない画家の作風を「ナイーブアート」と呼びます。
 アンリ・ルソーなどがその嚆矢と思われ、「素朴派」という呼び方も。
 ほぼ同じ意の用語として「アウトサイダー・アート(英)」や「アール・ブリュット(仏)」があります。 日本でも、版画家の山下清などが例にあがるでしょう。
 70歳をすぎてから絵を描き始めたアメリカの「モーゼスおばあさんグランマモーゼス」など、ナイーブアートのファンはその素朴な絵に心惹かれます。


 地元ではNHKの取材を受けるなど有名人だったようですが、私は塔本シスコをまったく知りませんでした。
 世田谷美術館で展覧会があると知っても、招待券をもらってなかったら観覧しなかったかもしれません。(前回の展覧会のアンケートに答えて招待券をもらいました)

 美術館の口上
 50代から独学で油絵を始め、自宅の四畳半の一室をアトリエに、自由奔放に描いた塔本シスコ(1913–2005)。人生を丸ごと絵日記に描き出すかのごとく、日々の暮らしを題材に、キャンバスのみならず、空箱やガラス瓶、はてはしゃもじにまで、身の回りのあらゆるものに、よろこびあふれる創造のエネルギーを発散しつづけました。本展では約200点の作品をとおして、ありのままに、自分らしく描きつづけた、塔本シスコの自由な創作の世界をご紹介します。



 塔本シスコ(1913~2005)は、91歳で亡くなる直前まで絵筆を握り続けたそうです。毎日目覚めれば4畳半の自室の寝床をしまい、食事のちゃぶ台を片寄せるところから一日が始まります。タンスに大きなキャンバスを立てかけ、身の回りの自然や子供の頃の思い出、結婚式などの家族の営みなどを描き続けました。

美術館解説
 「シスコ」という名は養父がサンフランシスコ行きの夢を持っていたことから名づけられました。熊本県八代郡郡築村(現・八代市)生まれ。実家の家業が傾き、小学校4年で退学、奉公に出されるなどし、美術教育は受けていません。20歳で料理人の塔本末蔵さんと結婚。一男一女に恵まれますが、1959年に末蔵さんは派遣先の長野県内のダム工事事故に巻き込まれ殉職。53歳の時に長男の賢一さんの画材を使って絵を本格的に描き始め、59歳からは賢一さん夫婦と同居した大阪府枚方市の団地で描き続けました。

 入口にはシスコさんの等身大フィギュア。いっしょに写真を撮りました。

 シスコさんが故郷の海を描いている制作風景がビデオコーナーで放映されていました。世田谷美術館は広いのですから、できれば別の一室にビデオコーナーを設けてほしかった。座って落ち着いて見たかった)

 ビデオの中で描いていた「ふるさとの海」

 制作中の絵の前で

 描かれた人々は、シスコさんの家族親族が乗る漁の船と、泳ぐ人々。記憶をたどり、克明に描かれています。

 制作中のシスコさん

 
 58歳で息子の画材を使って描き始めてから、90歳ころには認知症を患いながらも絵筆を撮り続けました。30年に及ぶ画業が、200点以上ずらりと並んだ展示室は、年代順に進んでいくとシスコさんの人生をたどり、シスコさんが描いた年月を追体験するようになっていました。

 展示室内


 しゃもじや空き瓶など、身の回りのものにまで絵を書き込み、人形を作り、着物を自分で仕立てるとそこにアクリル絵の具で絵を書き、自ら着こんで盆踊りに出かけるなど、描き、生活を楽しみ、家族との時間を大切にしたシスコさんの一生がすごい迫力で伝わります。

 手作りの人形たち

長尾の田植え風景





 
 故郷九州出身の芸能人が大好きで、なかでも丸山明宏(美輪明宏)の肖像は繰り返し描いたそうです。(美輪に改名したのちも丸山さんと呼び続けたそう)。
 有名人ですからさまざまな画家が肖像画をえがいているでしょうが、このシスコによる明宏さん、とてもいいと思います。


 「私は、余白がある絵のほうが好きだから、こういうふうに、ぎっしりすきまなく描き込まれた絵を見ていると、脳が疲れてめまいがしてくる」という娘は、途中で常設展のほうに足を向けましたが、私は閉館時間ちかくまで「シスコパラダイス」を堪能しました。

 今まで見てきたナイーブ系の絵は、どちらかというとシスコさんのように、「ぎっしりくまなく」の絵柄が多かったように思います。美術教育を受けなかった絵描きさん、構図がどうの色彩の調和がどうのという理屈以前に「かきたいことを画面につぎつぎ描いていく」という描き方をしている人が多いからかもしれません。

 世田谷美術館のシスコ展の次はグランマモーゼスの展覧会です。モーゼスおばあさんはよく知られた画家なので、招待券は配布していそうにないし、ぐるっとパスでは割引になるだけで、入館はできないので、どうしようか思案中。


<おわり>
コメント (4)
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