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ぽかぽか春庭「生まれて初めての雪だるま」

2022-02-13 00:00:01 | エッセイ、コラム
20220214
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>日本語学校冬--光の春(1)生まれて初めての雪だるま

 日本語教師、留学生からさまざまなことを知り学ぶことができるのは、超低級給与を補うに足る役得です。
 日本の民間学校では英語教師のほうがずっと高給とり。「日本語教育能力試験に合格していない人でも、とりあえず日本語しゃべれる人ならだれでも大勢雇える」と考えている経営者がいるうちは、高給にはならないのです。ほんとうは、日本語教育能力試験はなかなか難しく、専門的に学んだ人でないと合格できないのですけれど、、、。
 「薄給を補うに足る」喜びもある、とはいえ、もうちょっと高水準にならないと、日本語教育界によい人材があつまりません。有望な人材は、なかなか日本語教育界を志さない。

 さて、給与の低さを補う楽しみのひとつは、今まで行ったこともない国の文化や歴史を日本語学習者から教わること。もうひとつ、学習者から「日本に来てはじめて経験した」という体験談を聞き出すのも、とても興味深いこと。

 昔の留学生が「はじめて靴をはいたときの喜び」などを語ってくれたことがあります。熱帯ジャングルの中にあった日本の熱帯植物研究所で、植物採集助手としてアルバイトに雇われた彼、その利発さと勤勉さを日本人研究者から愛され、故国で教育を受ける機会、日本に留学する機会を与えられました。「ふるさとにいた子供のころ、くつを履いたことはありませんでした。日本人から靴をもらってはじめて履いた日、うれしくて抱いて寝ました」なんて話もききました。

 「日本で初めて電車に乗った」という「はじめて体験」も聞きました。アラブ産油国出身の大金持ちの坊ちゃま。移動はいつも運転手付きの自家用車だから、電車もバスも乗ったことがなかったのです。

 2022年。2月10日は東京にも積雪がありました。
1月の正月休みにも、東京に雪がふりました。きっとベトナムの学生など、ふるさとには雪が降らない地域の学生から「はじめての雪景色」の話がきけるぞ、と思って新学期の教室に行きました。

 やはり、ベトナム人学生は「はじめて雪を見た」と言っていました。あらゆる情報がスマホで手に入る現代ですが、自分で雪の冷たさにさわり、自分の目でどこまでも広がる白い世界を眺める経験は、ネット情報などにはかえがたいものです。

 ベトナム人学生が作った「生まれてはじめての雪だるま」の画像をスマホから送ってもらいました。
 フェンスの上にちょこんと乗った小さな雪だるまですが、彼にとっては故郷の家族に「雪だるま作った!」と自慢できるものだっただろうと思います。


 意外だったのは、ネパール人学生もはじめて雪景色を見たと言っていたこと。ネパール人はヒマラヤの雪景色など見慣れていると思い込んでいました。しかし「北の地方は山に近いから雪が家のまわりにふるけれど、私の出身地はインドに近い暑い地方のネパールだから、山にふる雪は知っていたけれど、自分の家のまわり全部白い雪の景色になるのを見たのは初めてでした」と、語っているのを聞き、ネパールといっても、南の地方は気温も異なるのだとわかりました。

 もうひとつ以外だったのは、中国でも南の地方の出身者が、1月6日に初めて雪景色を見て、はじめて雪だるまを作った、と話していたこと。
 いつも斜に構えてクールな社会評論を語っている学生ですが、「アルバイト先のコンビニ店長が、この雪じゃお客もそんなにこないから、雪だるまでも作ろう」と、店の前の駐車場の雪を集めて雪だるま作りに興じたと。

 「中国の貧しい地域に生まれて、子供時代に楽しいことなんてひとつもなかった」と語ってきた彼が、無心に雪だるまを作っているようすを想像すると、私の心も楽しくなりました。

 「日本に留学したって、いいことなんかひとつもない。とにかくお金がなければ何もできない」という彼、なにごとにも悲観主義の彼は「雪だるま作りなんて、手が冷たくなってたいへんなだけだった」などと言うのでしょうが、私は「ピカチュウ雪だるま、かわいいから写メ送って」と頼みました。

 彼の作品は、耳をつけた「ピカチュウ型雪だるま」でした。

 はじめてスキーをして、転んでばかりだったけれど楽しかった、という学生も何人かいたけれど、どんなことであれ、はじめての体験は楽しくうれしい。それを聞き出す私も楽しい。

 今日教えたオノマトペは、「心のようすを表す擬態語」。「わくわく、どきどき」などは、どんなときに使う擬態語か、文を作ってもらいました。
 「好きな子の隣に座って、どきどきした」うん、そうだろうね。
 「スキーに行く前、わくわくして眠れなかった」そうそう。

 日本でわくわくドキドキの体験をたくさんしてほしいです。

<つづく>
コメント (2)
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