202208013
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>2022シネマ猛暑の夏(3)ナイトメアアリー
飯田橋ギンレイの2本立ては、2本が同じ主演者だったり、同じ監督だったり、「2本ともアクション」というようなつながりのある併映が多く、ミュージカルであるウエストサイドストーリーにどうしてナイトメアアリーというこわそうなタイトルの「スリラーサスペンス」「サイコ・スリラー」という惹句がついている映画を2本立てにしたのだろうか、と見に行くまでわかりませんでした。古い映画を知らないもので。
ナイトメアアリーは、1947年のタイロン・パワー主演『悪魔の往く町』のリメイクでした。ほうほう、リメイク2本立なのね。以下、ネタバレありの紹介です。
原作:ウィリアム・リンゼイ・グレシャム『 悪夢小路』
監督:ギレルモ・デル・トロ
脚本:ギレルモ・デル・トロ, キム・モーガン
撮影監督:ダン・ローストセン
出演:
・ブラッドリー・クーパー:スタントン・“スタン”・カーライル(見世物小屋に流れ着き、読心術の技を身につけ成功していく)
・ルーニー・マーラ:エリザベス・“モリー”(電気女として体に電流を流す見世物を見せている。スタンと恋仲になる)
・ケイト・ブランシェット:リリス・リッター博士 (心理学博士。患者の記録をスタンに見せ、詐欺を働かせる)
・トニ・コレット:ジーナ・クルンバイン (見世物小屋で読心術の技をスタンに教える。衣服靴しぐさなどの情報により相手の心理を読み解く)
・ウィレム・デフォー:クレメント・“クレム”・ホートリー (見世物小屋経営者。兵役帰りのアル中を「獣人Geek」に仕立てて見世物にしている)。
ウエストサイドの併映といっても、ホラーだと聞いていたので、どうしようかと思っていました。ホラー大嫌いの娘はウエストサイドストーリーのみ鑑賞。私は「シネマパスポートだけど1本より2本見たほうがお得」という精神で、こわいシーンは目をつぶる覚悟で150分目をあけていました。ホラーやスプラッターじゃなかったけれど、人間の怖さはわかる。
一番のホラーは、見世物として展示されている奇形児のホルマリン漬け。テレビのドキュメンタリーで、大学病院だったかの研究室に実際にガラス瓶の中に入って並べられているのを見たことあるから、夢に出てきたら怖いと思って見てました。怖いの嫌いなら、見なきゃいいのに。
この怖いもの見たさってのがあるから見世物小屋が人を集めることが出来たんでしょうね。今はできないけれど。日本にも「ろくろっ首女」とか「一つ目胎児の焼酎漬け」などの見世物がありました。
ギレルモ・デル・トロは、タイロンパワー映画のリメイクではなく、より原作に近い脚本にした、ということで、監督自身はこの作品を「ノワール映画」と表現しています。ノワール(犯罪と暗黒)の表現。
暗黒というけれど、画面はきれいでした。とくに光の具合。照明と撮影よかった。
前半は雨シーン、後半は雪シーンが多い。コロナパンデミックのため、全体の45%が撮影された2020年3月 に一時中止され、半年後に撮影再開。だから雨シーンと雪シーンに分かれたのかしら。
こわいシーンもあったけれど、ブラッドリー・クーパーが「私の宿命だ」と運命を受けいれるまで、見続けました。
わからなかったのは、ケイト・ブランシェットのリリス・リッター博士 がなぜスタンと組んだのか、ということ。
最後はスタンの稼いだお金を分捕ったけど、お金が目当てじゃなかったとおもう。私の映画リテラシーが低いので、リリスの本当の意図はなんだったのかわからないまま終わりました。わからないけれど、ケイト・ブランシェットがこういう「冷たい顔の女」の役をやると、ほんとうに怖い。これが一番のホラーか。
<つづく>