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ぽかぽか春庭「留学生、本陣宿を見学する」

2022-12-15 00:00:01 | エッセイ、コラム
20221215
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>2022日本語学校冬(1)本陣宿見学

 2022年10月からの新入生と在学生(2021年12月生2022年5月生)、大多数の留学生が江の島鎌倉日帰りバス旅行に出かけた日、「旅行にはいかない」という在校生もいました。
 「友達と先週の日曜日江の島に行ってきたばかり」と言う学生や、「夜のバイト、シフトを替わってもらえなかった。バス旅行から帰ってくる時間じゃ、バイトに遅刻する」という学生。

 当初、旅行に行かない学生は「欠席とする」という方針を出した経営者にHAL先生は猛抗議。「当初は新入生だけが旅行に行くということだったので、バイトのシフトを入れてしまった学生がいるのに、一律に旅行にいかなければ欠席扱いというのは納得いかない。旅行に行かない学生のために、私は授業をやって、出席扱いにします」と宣言。

 私は旅行の引率からは外されていました。「HALせんせは行かなくていいです」と経営者に言われていたので、授業をするなんていわなければ、有給消化のため、休みをとる予定でした。
 それなのに、「ひとりでも欠席扱いにされるのは嫌だと言う学生がいるなら、私は学校に残って授業をします」と大宣言。はは、馬鹿だね。いつも損な役回りになるのは、性分です。

 9時からの授業、大学院志望者の中国人学生ふたりと、大学進学志望者のベトナム人3人が出席。
 1コマ目は「今年のEJU(留学生大学入試)に出た読解と作文の問題」というのをやりました。めっちゃ難しい。こんな読解問題、日本の高校生にも一般的な大学生にも歯が立たないだろう、という論説文を読んで質問に答え、さらに「この文章を書いた筆者の考えをふまえて、自分自身の考えを述べよ」という500字の作文を書け、という。

 中国人は中国の大学既卒者なので、漢字で意味を推測しつつ「オンライン化が進む大学授業について」かろうじて意見を述べることが可能でしたが、漢字の学習がまだまだ進んでいないベトナム人にはまったくのお手上げ。1年後の大学入試には留学生問題といえども、これほど高度な文章の読解が要求されるのだ、ということがおぼろげながらわかって、この1年先の留学生大学入試に備える、という覚悟ができたなら、それでOK,と言う程度。

 1コマ授業をやったあと、HAL先生は「これ以上頭を使うと爆発するなあ」と、日本語学習を終わらせ、日本の歴史文化の学習に切り替えました。

 「日本の伝統建築見学ツアーに行きます」と学生を誘いました。「150年前の建物を見にいきます」

 甲州街道沿いに、2里(8キロ)おきに設置された宿場町。日本橋を起点にして、点々と宿場町が連なります。
 その中で「都内に残る唯一の江戸幕末に建築された本陣宿」が残っています。
 江の島鎌倉ほどの観光地ではないけれど、「都内唯一の150年前の宿屋」というのもなかなかの文化財です。



 なかにひとり「サムライがでてくるゲーム」にハマったことのある学生がいました。「日本語の読み方でなんて読むのかわからないけど」というのですが、中国でやっていた最近のゲームなら「薄桜鬼」じゃないかと検討をつけました。
 本陣宿の壁に、ミュージカルになっている「薄桜鬼」のポスターが張ってあったので、「ほら、これハクオウキって読むんだよ」と教える。
 「薄桜鬼」は、アニメでも幅広くファンを獲得しているらしいけれど、「史実とは違うからね」と念を押しておかないと。

 以前、中国人学生が、日本の『源氏物語』の映画を見たというので、話を聞くと葵上や六条御息所が亡霊の悪鬼となって登場するホラー映画でした。どうやら2002年放映の「怪談源氏物語」が、著作権ガン無視だったころの中国で出回ったバージョンを「これぞ源氏物語」と思っているらしい。六条御息所が生霊となるのは紫式部が原作に書いていますが、「源氏物語はホラー」と思いこまれるのはちょっといやだな。

 「薄桜鬼」は、かなり脚色された話になっていたのだと思いますが、新選組の歴史もひととおりは知っているという学生がなかなかの知識を披露して、説明員を感心させました。解説員は、「ひじかたとしぞうって、さいしょはみんなドカタって読む」などと言いながら、「この部屋は土方歳三が昼寝をしたところ」なんていう説明を聞きました。

 中国人ふたりは、縁側に座って日向ぼっこ。
 ベトナム人3人は歴史説明がむずかしかったので、庭に出て「本陣宿の日本庭園」を眺める。後楽園、浜離宮、六義園など、もっと立派な日本庭園は都内にもたくさんあるけれど、たぶんはじめて見た「和風庭園」だったと思います。あまり感激していなかったけれど。

 日向ぼっこのふたり
 

 日本庭園を歩くベトナム3人組
  

 ボランティア説明員が熱心に説明してくれました。「留学生なので、難しい日本語はわかりません。やさしい日本語でお願いします」と頼んでは見たものの、一般の人には何がやさしい日本語で何が難しいのかわからないのです。中国人にとっては、「たてもの」と音声言語で聞くより漢字で「建造物・建物」と紙に漢字で書いてもらう方が意味がわかる場合も多い。
 ベトナム人にとっては「きょーとごしょ」と言われるより「京都にある天皇の住まい。パレス」という説明のほうがわかりやすい。 

 みんなでいっしょに日向ぼっこ


 1時間ちょっとの「150年前の本陣宿」を終えて学校にもどり、12時半の午前中授業終了を早めて12時には終わりにしました。
 「旅行に参加しない学生は欠席とする」という学校方針にたてついたHALセンセには、この先北風が吹くでしょうが、ま、なるようになる。
「欠席になりたくない」という留学生の希望もかなえられたし、有意義な一日だったと思いたい。

<つづく>
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