春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

今日のいろいろ
ことばのYa!ちまた
ことばの知恵の輪
春庭ブックスタンド
春庭@アート散歩

ぽかぽか春庭「吹きガラス展 in サントリー美術館」

2023-06-06 00:00:01 | エッセイ、コラム

20230606
ぽかぽか春庭アート散歩>2023アート散歩6月(2)吹きガラス展 in サントリー美術館

 月曜日に開館している美術館は少なくて、月曜日に出かけたとき「ついでに美術館を歩こう」という場合の選択肢がせまくなります。6月5日月曜日の「ついで」は、高いからどうしようかなあ、と迷っていたサントリー美術館の「吹きガラス」展に行きました。シルバー割引がないサントリー、吹きガラス展は1500円。一日の行楽費は交通費食費を含めて千円前後という自分ルール。別段、ルールを守らなくても、だれに文句を言われることもないですが。

 六本木ミッドタウンは、いつきてもオシャレな都会で、私には似合わない街ですが、美術館に入ってしまえば、ガラスの展示を楽しみに過ごせる。(撮影可能のガラスには撮影OKマーク)

展覧会「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」
会期:2023年4月22日(土)〜6月25日(日)

 吹きガラスは細長いパイプの先に溶けたガラスを巻き付け、パイプの一方から息を吹き込んで先端のガラスを丸く仕上げる技法です。紀元前1~2世紀にはオリエントや古代地中海沿岸で技法が発達しました。ガラスの温度などで微妙な色と形を造形でき、現代のガラス作家も使用している技法です。 
 作り方が不明だったガラス器二連瓶四連瓶の復元の展示もあり、6階の映像公開では江戸期ちろり(酒器)の再現のようすを追ったドキュメンタリーが上映されていました。

 第2展示室


 第1章 古代ローマの吹きガラス
 サントリー美術館の解説
 吹きガラスは紀元前1世紀中頃、ローマ帝国下の東地中海沿岸域に始まると考えられています。初期の吹きガラスには、石や金属の器を思わせる色づかいやシャープな形をみることができますが、次第に、型を使わずに成形されたやわらかく、のびやかな造形がみられるようになります。重力や遠心力を活かした自然な曲線美をもつ形と、それを彩る飴細工のような大らかでのびのびとした装飾は、ローマ時代の吹きガラスの魅力です。

 シリア2~3世紀の把手付水注、地中海沿岸1-5世紀頸長瓶、シリア1-5世紀水柱 サントリー美術館蔵

  吊手付二十院 4-5世紀(東地中海沿岸)
 七耳付瓶シリア4世紀 岡山市立オリエント美術館
 

 第2章 ホットワークの魔法 ――ヨーロッパの吹きガラス
 サントリー美術館の解説
 熔解炉で熔かした熱いガラスを成形・加工することをホットワークといいます。ホットワークによる表現は、15~17世紀頃のイタリア、ヴェネチアにおいてひとつの頂点に達したといっても過言ではないでしょう。
 この時期のヴェネチアの吹きガラスは、美しく澄んだ素材、洗練された優美な形、そしてホットワークによる複雑かつ繊細で立体的な装飾をもち、高級品としてヨーロッパのガラス市場を独占しました。16世紀に発展したレース・ガラスは、ホットワークを極めたヴェネチアの職人の発想力と創造力の賜物です。その影響は大きく、同時期のヨーロッパ各地でヴェネチア様式の作品が作られただけでなく、現代のガラス作家にもその技が引き継がれています。

 ヴェネチアを中心としたイタリアの16~17世紀のガラス。レースのガラス製品は、箱根のガラス美術館でも見てきたけれど、何度みてもその技術はすごいなあと感じます。

 船形水差16-17世紀(イタリア)



 レース・ガラス脚付鉢 16-17世紀 イタリア


第Ⅲ章:制約がもたらす情趣 ――東アジアの吹きガラス
 サントリー美術館の解説
 東アジアにおける吹きガラスの生産は、5世紀頃に西方からの影響のもとで始まったとみられています。しかし、西方のものに比べると、東アジアの吹きガラスは概して小さく薄手で、ホットワークによる装飾も少なく、素朴なつくりをしています。実は、近代より前に東アジアで行われた吹きガラスの工程は、西方のそれとは異なるものでした。とくに、口の成形に必要なポンテと呼ばれる道具を使用しないこと、厚く大きな器を作るために欠かせない徐冷を行う本格的な設備がなかったことは、吹きガラスの表現に制約をもたらしました。
 12~19世紀までの東アジアで作られた吹きガラスを、日本に伝わる作品を通してご紹介します。また、本展にあわせて実施した当館所蔵《藍色ちろり》の技法研究の成果をもとに、江戸時代の吹きガラス職人の技に迫ります。
 藍色ちろり 18世紀 日本
  
 
 第Ⅳ章:今に連なる手仕事 ――近代日本の吹きガラス
 明治時代に入ると、日本でも近代的なガラス産業の道が拓かれます。ヨーロッパから招いた技術者の指導のもと、大規模な熔解炉を用いた複数名の流れ作業による製作スタイルが導入され、西洋式の道具や製法も伝授されました。その導入初期に重要な役割を果たしたのが品川硝子製造所です。ここで学んだ伝習生たちは、後に各地にガラス工場を開き、今日に至るガラス産業の発展に貢献しました。
 明治時代末頃から昭和時代初期にかけて作られた氷コップ(かき氷入れ)にみられる多様な装飾技法は、西洋から伝えられた技術が国内において習熟したことを物語っています。それだけでなく、あぶり出し技法による日本の伝統文様の表現などは、西洋技術を日本風にアレンジした試みといえるでしょう。バリエーション豊かな氷コップは、機械化以前の、手吹きによるガラス生三の最盛期の様子を伝えてくれます。 
 氷椀 20世紀 日本


第Ⅴ章:広がる可能性 ――現代アートとしての吹きガラス
 産業としての吹きガラスの流れと並行して、20世紀以降には芸術表現の手法としての吹きガラスの存在も見逃せません。器などの実用品の生産に用いられてきた伝統的な技法や方法に捉われることなく、熱く熔けたガラスを「吹いて膨らませる」という吹きガラスの基本を活かした新しい造形表現への挑戦が、現在進行形で進んでいます。
本章では、新進気鋭の若手作家4名の作品をご紹介します。「これも吹きガラス?」と思うような作品を通じ、吹きガラスのさらなる可能性をご覧ください。
 現代美術としてのガラス作品を展示しただい2展示室




 映像上映室で

 入口で


 さまざまな色を含みつつ光を通すその輝きにガラスの美しさに心ひかれます。古代の吹きガラス、ヴェネチアのガラス技巧のすごさ、近代江戸期の職人技、現代作家の斬新な作品。さまざまなガラスの美を堪能できました。
 「藍色ちろり」を復元した東京芸大の記録もとても興味深く拝見。美しいものに失業者の心もいやされます。

<つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする