20230805
ぽかぽか春庭感激観劇日記 >観劇感激2023夏(1)その場しのぎの男たち in 紀伊国屋サザンシアター
今回のアコさん上京は、東京ヴォ―ドビルショー50周年記念公演三谷幸喜作『その場しのぎの男たち』を観劇するためです。
公演直前に主演の伊東四朗がコロナ罹患。初日が危ぶまれましたが、伊東四朗は治療期間を経て復帰。私とアコさんは、7月28日金曜日 14時の回を観覧しました。
本作『その場しのぎの男たち』は 、1992 年に三谷幸喜が初めて劇団東京ヴォードヴィルショーに書き下ろした一幕の喜劇。
1991(明治 24) 年に日本全国を震撼させた大事件、世に言う「大津事件」をモチーフに政治家達の迷走っぷりを描いた喜劇です。劇団創立メンバーの佐藤B作と佐渡稔は 74 歳、客演の伊東四朗がコロナ罹患したニュースは、出演がどうなるか、代役をたてるのかと思っていたのですが、初日には復活し幕があがりました。初演大ヒットにより翌年再演。東京ヴォードヴィルショー30周年記念公演40周年と再演を重ねて、今回は劇団創立50周年。
Wキャストは、星組月組が日替わりで配役されています。私が見た回は星組でした。病み上がりの伊東は他の出演者に比べて声量がやや不足かと感じましたが、達者な芸は、伊藤博文の威厳と老獪さと洒脱を表現していました。1992年の初演から変わらぬ伊東四朗の伊藤博文役。86歳、すごいです。
他の出演者も、劇団員のアンサンブルが生きていました。三谷幸喜得意のシチュエーションコメディ。一幕一場で、出演者が入れ替わり舞台に現れたり引っ込んだり。
作:三谷幸喜 演出:鵜山 仁
出演:
佐藤B作(陸奥宗光)
佐渡稔(松方正義総理大臣)
石井愃一(逓信相後藤象二郎)
あめくみちこ(津田の妻)
山本ふじこ(くの一亀山御留)
たかはし 等(伊東巳代治)
大森ヒロシ(向畑治三郎・津田からニコライを守り勲章を受ける)
瀬戸陽一朗(前田)
まいど豊(外相青木周三)
中田浄(ボーイ)
市瀬理都子(ふく)
京極 圭(津田三蔵)村田一晃(津田三蔵)
大迫右典(巡査)
喜多村千尋(ミツ)
玉垣光彦(黒河)
(客演)伊東四朗(伊藤博文)
坂本あきら(内相西郷従道)
月組:山口良一(向畑治三郎)
ストーリーは。
明治24年5月11日の朝、大津市の路上で訪日中のロシア皇太子ニコライが、警備の巡査・津田三蔵に襲われる。世に言う「大津事件」である。組閣5日目の 松方正義内閣にとっては、青天の霹靂、日本の命運に関わる大ピンチ。だが同時に“伊藤博文の傀儡政権”という汚名返上のチャンスでもあった。だが、内相・西郷従道、外相・青木周蔵、逓信大臣・後藤象二郎らが無い知恵を絞って編み出す対策は、どれも「その場しのぎ」のものばかり。「切れ者」と名高い農商務大臣・陸奥宗光が駆けつけるが、これも五十歩百歩の体たらく。そこへ元老・伊藤博文が、右腕の枢密院書記官長・伊東巳代治を連れて乗り込んでくる。はたして松方内閣はこの難局を乗り越えられるだろうか・・・。
伊藤博文の肝入りで内閣総理大臣を拝命してたった5日目に起きた、国をゆるがす大事件。外交しだいでは、ロシア帝国と戦争にもなりかねない。皇太子ニコライの側近により、松方も伊藤も面会謝絶をくらい、ニコライの生死すら不明という状況の中、大臣たちは右往左往し、その場しのぎの策を打ち出しては不首尾に終わる。
ロシアのシェーヴィチ公使 は、日本を小国とあなどり、「犯人を死刑にしなければ戦争も辞さない」という強硬姿勢。
伊藤博文らも犯人を「皇族への大罪」と認定して死刑としようと図るが、司法側は「ニコライへの殺人未遂」にすぎない者は、刑法に照らして最高刑で無期懲役と主張。
回復したニコライが日本への感情を悪化させなかったことにより、津田三蔵の死刑は回避へ向かう。
伊藤伯爵が登場して陸奥宗光との確執をあからさまにしながら、津田の妻にニコライ暗殺を指示したり、脱獄した津田巡査の暗殺をホテル従業員になっている「くの一」に託したりなどのどたばた。一番受けていたのは、くの一役山本ふじこが舞台上でなんどでもでんぐり返しを繰り返したところ。
三谷のセリフ術で笑いながらも、「政治家というのは、自分のメンツや権勢維持が何より大事で、戦争になろうが人ひとりの命がどうなろうと自分のために動くことが最重要課題なのだ」ということが伝わる。
カーテンコールでは、座長佐藤B作の「50周年記念公演の挨拶」がありました。前日7月27日の公演には三谷幸喜が来ていたこと、コロナ禍で公演不可能が続き、今後の劇団継続が危ぶまれたとき、クラウドファンディングにより、目標1千万円を350万円超える額が集まった、という報告がありました。
私は東京ヴォードヴィルショウの役者さんたちはテレビで見ておなじみですが、劇団公演は初めて。楽しい公演でした。
公演前のテレビ番組「徹子の部屋」に、佐藤B作あめくみちこ夫妻が出演し、結婚22年になることなどを語っていました。2001年に「劇団内恋愛御法度」を座長がやぶり、14歳年下のあめくと再婚した。夫婦そろって劇団創立50周年を迎えることができたこと、紆余曲折はあったでしょうが、前妻の息子佐藤銀作も活躍しているし、これからも仲良くおすごしのことと思います。
<つづく>