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ぽかぽか春庭「めっきがはがれる」

2024-04-07 00:00:01 | エッセイ、コラム

20240407

ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>2024日本語でどづぞ(10)めっきがはがれる

 ことばの変化について、いろいろなアンテナを張っているつもりですが、受信する電波が、私のところにはなかなか届かない。で、テレビやラジオから学ぶことも多いです。
 大好きなラジオ番組の過去の放送をyoutubeで聞いていて、知らなかった「ことば」の中身の変化について教わりました。
 
 ことばの内容が変化し、意味が変化していくことは、語彙の変化によくおこること。平安時代、宮中で部屋を与えられた内勤の女性を表す「女房」が、ごく一般的な身分の男性の妻も表すように意味が変化したり、何室もある大きなお屋敷の一番奥に部屋を持っている妻だから「奥様」だったはずなのに、アパートの一室しかない部屋の妻でも「奥様」と呼ばれるのは、できるだけ丁寧に相手の配偶者を扱おうとする言葉の意識からの変化(意味の拡大)。語彙学の基礎として、日本語教師養成講座で教えてきました。
  
 これまでに知られてきたことわざや慣用句も使用法が変化する。「情けは人のためならず」が、若い人には「人に情けをかけて助けてやるのは自立心を損なうので、その人のためにならない」という意味で受け取られてきた、など、変化の内容は様々です。「流れに棹さす=流れに乗って舟を動かす」は、小舟を棹で動かす方法を知らない世代には、「舟の上から流れの上に棒を突き立てて、舟の動きを止める」と、受け取られています。新しもん好きの辞書に新しい用法も搭載されています。
 
 さて、ラジオ番組から教わったこと。「めっきがはがれる」の、従来の意味では。「中身は価値のないものに、うわべだけ金や銀をふきつけ、メッキをほどこしても、中身は本物の金や銀ではないから、しだいに表面のメッキがはがれていき、価値のない中身があらわれてしまう」という意味でつかわれてきました。
 
 しかし、現代日本のメッキ技術は非常に精巧になり、めっきというのはほとんどはがれなくなった。はがれるとしたら、よほど特殊な、特別なことになる。今まで学会の定説とされてきた学説例えば相対性理論が、新理論によって価値がなくなる、というような、特別な場合でないと使えなくなるのではないか、という「めっきがはがれる」の中身が変化していくかもしれない、という未来予想語、について、アナウンサーが紹介していました。なるほど、中身に合わせてことばを使う、という立場もある。めっきはたやすく剥がれたりしないものだ、ということが世の常識になれば、「めっきがはがれる」の意味もかわっていくかもしれません。
 
 メッキの件、TBS安住紳一郎日曜天国の過去放送分をyoutubeで聞いていて教わりました。だいぶ前の放送だと思います。めっきの技術進化のことなど知らず、「めっきがはがれる」という語について考えたことはありませんでした。まだまだ知らないこともたくさんあり、ことばの変化についても教えてもらえると思うと、この先もことばの変化が、「お楽しめるです」。
 
 春庭は、「めっき」の意味が変わっても「めっきがはがれる」という慣用句は使い続けられるのではないかと考えます。それは、定着した慣用句は、元の語の意味が忘れられたり変わったりしても使い続けられるからです。次回、その例を並べてみます。
 
 ここでクイズです。1~5の語の意味がわかりますか。
1「らちがあかない」「らち」とは何ぞや
2「しのぎをけずる」「しのぎ」とは
3「だいなしになる」の「だい」は何?
4「せっぱつまる」の「せっぱ」とは
5「つかのま」の「つか」とは。
 
 いずれも、元の語の意味が正確に言える人は、刀剣専門家だったり建築専門家だったりすると思います。私は、元の意味が分からなくても、使っていました。
 
<つづく>
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