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ぽかぽか春庭「踏青節」

2024-04-04 00:00:01 | エッセイ、コラム

20240404

ぽかぽか春庭ことばのYaちまち>2024歳時記春(1)踏青節

 3月春分の日から半月後、二十四節季では清明となります。中国では清明節。一家一族そろって先祖の墓に詣でて一族の紐帯を固める大切な行事。それぞれの地方で独自な行事としてきましたが、人民政府が清明節を国の祝日として皆の休日に決めてから、いっそう盛んな行事になりました。お墓の掃除、お墓参りが中心になるので、「掃節」とも呼ばれます。また、緑濃くなる季節に外に出て一族で飲んだり食べたりうたったりのピクニックも兼ねているので、「踏青節」でもあります。

 日本では二十四節季のひとつ清明は、季語でもあるし、「踏青」=「青き踏む」も、季語として今もたくさんの俳句が作られています。

踏青や飴屋にかゝる綺羅の塵 正岡子規

・青き踏むや離心抱ける友のさま 杉田久女

・「ひと」と呼ぶ動物出でて青き踏む 金子兜太

 私が育った田舎の家庭では、水沢山にタラの芽やわらびなどが萌え出る時期に、一家五人が犬のコロを連れて踏青に出かけたものでした。山のあちこちでわらびやこごみを摘みながら水沢山の船尾滝の下へ行き、持参の鍋に沢の水を張り、火を起こします。今は、山の中で勝手に火を使うことは禁止になっていると思いますが、60年前の山は、火の始末さえ沢の水できちんとすれば、だれにも迷惑をかけない、一家のささやかな娯楽でした。

・纏向の墓の女王や青き踏む 春庭

・ブルーストッキングの女立ちきて青き踏む 春庭

 摘んだわらびなどは家に持ち帰ってからアクを抜いてから食べます。家からリュックで運んできた野菜や肉で、父が煮た鍋と、母が握ってきたおむすびで、楽しく昼食をとった我が家の踏青節。60年以上たっても、私には大切な思い出です。

<つづく>

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ぽかぽか春庭「万愚節」

2024-04-02 00:00:01 | エッセイ、コラム

20240401

ぽかぽか春庭ことばのYaちまち>2024歳時記春夏(1)万愚節

 4月1日に「笑える嘘、人を楽しませる嘘」なら言っても許される、というエイプリルフールを実践する人、どれほど残っているでしょうか。かっては公共放送が局を挙げて「火星人が攻めてきた」と、ニュースを流して国中をパニックに陥れた、なんていう大がかりな嘘もあったようですが、現代ではうっかり冗談もいえないコンプライアンス優先の社会ですから、笑って許してくれるのは、特別親しい友人か家族くらいのものになったでしょう。

 堅苦しいキリスト教社会の中で、秋の万聖節に対するものとして春の万愚節エイプリルフールがおかれたともいわれるが、その発生には諸説ある。定説なし。日本では、クリスマスやハロウィーンが短い期間に浸透拡散した輸入行事であったのに比べて、エイプリルフールはそれほど浸透しなかったように思います。

 季語としては、エイプリルフールというカタカナ語と万愚節という漢字語、四月馬鹿という語がそれぞれに歳時記搭載されています。

・万愚節すぐや凍土の零番地  角川源義 

・寧馨児あへなく四月馬鹿となる 日野草城 

 初めて見た「寧馨児」という語。麒麟児と同じ、すぐれた子供、神童。「寧馨」は、中国の晋・宋代の俗語で「このような」という意味。歳時記は、知らなかったことばも教えてくれる。

・年金で生き抜けぬ世の老いの身を笑うしかないエイプリルフール 春庭

<つづく>

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