「新収蔵作品特別展示:パウル・クレー」 アーティゾン美術館

アーティゾン美術館
「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 新収蔵作品特別展示:パウル・クレー」 
2020/6/23~10/25



2019年に石橋財団が新たに収蔵したパウル・クレー(1879〜1940)のコレクション24点が、アーティゾン美術館でまとめて公開されています。

それが「特集コーナー展示 新収蔵作品特別展示:パウル・クレー」で、新収蔵品に加え、既収蔵品である「島」の全25点の作品が一堂に展示されていました。

出展されたのは、日本人コレクターが長年に渡って収集した作品で、いずれもクレーが分離派展や青騎士グループに参加して活動した1910年代より、1920年代のバウハウスの教鞭の時代を経て、晩年の1930年に至った、画家の制作の大半を網羅したコレクションでした。


パウル・クレー「小さな抽象的ー建築的油彩(黄色と青色の球形のある)」 1915年 

最も初期の作品は1915年の「小さな抽象的ー建築的油彩(黄色と青色の球形のある)」でした。ここでは北アフリカのチュニジアに着想を得たとされる市街風景が、キュビズム風の幾何学的構成によって表されていて、右上には黄色く染まる月がのぼっていました。


パウル・クレー「庭の幻影」 1925年

1925年の「庭の幻影」は、画面に水平方向の直線をたくさん引き、太陽と思しき赤い円の元、教会などの建物や樹木などを描いていて、全ては夕景を感じさせるような茶褐色の色彩が覆っていました。


パウル・クレー「羊飼い」 1929年

一方で、青、ないし藍色、あるいは紫が混じるよった模糊とした画面に、人物と4本足の動物を線のみで表したのが「羊飼い」(1929年)で、おそらくは新約聖書の「ヨハネ福音書」に説かれた「よき羊飼い」のモチーフに由来すると考えられてきました。光が滲み出るような色彩感は独特で、まるでガラスを通した光を目にするかのようでした。


左:パウル・クレー「谷間の花」 1938年

晩年の1938年の「谷間の花」は、初期の幾何学的な構成とは異なり、不定形の色面を切り絵のように組み合わせた作品で、中央には輝かしいまでのオレンジ色の光を放つ大輪の花が咲き誇っていました。どこか原初的ながらも、強い生命感がみなぎる作品と言えるかもしれません。


パウル・クレー「数学的なヴィジョン」 1923年

私が今回の出展作で最も惹かれたのは、中期の1923年に描かれた「数学的なヴィジョン」でした。薄い水色の膜から浮かび上がるような平面には、天秤やモビールを思わせる装置が細い線にて象られていて、アルファベットや矢印なども記されていました。タイトルに「数学的」とありましたが、詩的でかつ幻想的なイメージも感じられないでしょうか。


「新収蔵作品特別展示:パウル・クレー」展示風景

過去に「パウル・クレー - おわらないアトリエ」(東京国立近代美術館。2011年。)、また「パウル・クレー 創造の物語」(旧:川村記念美術館。2006年。)など、比較的大規模な展覧会も行われたクレーは、私自身、美術を見始めた頃から好きな画家の1人でした。改めて今回の展示を通して、クレーの絵画のかけがえのない魅力に強く引き込まれるものを感じました。


右:メアリー・カサット「娘に読み聞かせるオーガスタ」 1910年 
左:メアリー・カサット「日光浴(浴後) 1901年 *「特集コーナー展示 印象派の女性画家たち」より

なお同じフロアでは、もう1つの特集コーナー展示、「印象派の女性画家たち」も合わせて開催中です。こちらではモリゾ、カサット、ブラックモン、ゴンザレスの絵画など、リニューアルに際して新たにコレクションに加えられた印象派の絵画が一堂に公開されていました。


いずれの特集コーナーも、同時開催中の「ジャム・セッション 鴻池朋子 ちゅうがえり」と「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館展示帰国展 Cosmo- Eggs| 宇宙の卵」に続くコレクション展です。上記2展と共通のチケットで観覧することが出来ます。

10月25日まで開催されています。

「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 新収蔵作品特別展示:パウル・クレー」 アーティゾン美術館@artizonmuseumJP
会期:2020年6月23日(火)~10月25日(日) *会期変更
休館:月曜日。(但し8月10日、9月21日は開館)。8月11日、9月23日。
時間:10:00~18:00
 *毎週金曜日の20時まで夜間開館は当面休止。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:【ウェブ予約チケット】一般1100円、大学・高校生無料(要予約)、中学生以下無料(予約不要)。
 *事前日時指定予約制。
 *ウェブ予約チケットが完売していない場合のみ当日チケット(1500円)も販売。
住所:中央区京橋1-7-2
交通:JR線東京駅八重洲中央口、東京メトロ銀座線京橋駅6番、7番出口、東京メトロ銀座線・東西線・都営浅草線日本橋駅B1出口よりそれぞれ徒歩約5分。
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