『どうぶつかいぎ展』 PLAY! MUSEUM

PLAY! MUSEUM
『どうぶつかいぎ展』 
2022/2/5~4/10



PLAY! MUSEUMで開催中の『どうぶつかいぎ展』を見てきました。

ドイツの作家、エーリヒ・ケストナーは絵本『動物会議』において、かわいらしい動物を主人公にして、戦争を繰り返す人間を痛烈に批判する物語を描きました。

そのケストナーの『動物会議』に着想を得て、8名のアーティストが絵画や立体、映像などの作品を公開しているのが『どうぶつかいぎ展』で、絵をつけたヴァルター・トリアーの複製原画とともに、物語の内容を追うようにして展開していました。


『無題』 梅津恭子 2021年

まず冒頭ではぬいぐるみ作家の梅津恭子が、人間たちの行いに憤りを覚えて話し合うゾウやキリンたちをぬいぐるみで表現していて、続くイラストレーターの秦直也は動物会議を開くべく世界中の動物たちと連絡をとりあう姿を細かなイラストして描いていました。


『めざせ動物ビル』 村田朋泰 2021年

動物たちが「動物ビル」に向かう様子をインスタレーションに表現したのが、アニメーション作家の村田朋泰でした。ここでは動物たちが汽車や飛行機に乗る光景をアニメに映しつつ、白くまやペンギンたちが氷山に乗って海を渡るすがたを立体の作品にて表していました。


『無題』 植田楽 2021年

造形作家の植田楽は「動物ビル」そのものの立体として表現していて、ビルの中にはセロテープで作られた86体の動物のオブジェが置かれていました。海から陸に生きる動物たちはさまざまで、中には会話していたり、喧嘩するような仕草を見せるものもいました。


『いざ、動物会議』 菱川勢一 2022年

物語の核心でもある「動物会議」の様子を作品として再現したのが、映画監督としても活動する映像作家の菱川勢一でした。


『いざ、動物会議』 菱川勢一 2022年

いずれも毛皮を丸めたような不思議なかたちをした動物たちが、ぷるぷる震えたり、ふて寝をしていたりとさまざまなすがたを見せていて、動物たちの鳴き声を取り込んだ音も流れていました。


『いざ、動物会議』 菱川勢一 2022年

それらはまるで森の中で動物たちがガヤガヤと語り合っているかのようで、時折、鳴き声がシュプレヒコールを上げるようにして盛り上がるのも臨場感がありました。


鴻池朋子 展示風景

そうした菱川の作品に向かい合うようにして展示されたのが、動物をかたどる作品でも知られる現代美術家の鴻池朋子のインスタレーションでした。


鴻池朋子 展示風景

牛の皮にキツネやタヌキを描いた絵や、妖怪のような動物たちを回転する灯籠から映し出す作品などを展示して、机の上には自らの著書『どうぶつのことば』から抜粋された「人間と動物の境界に出現するノート」を公開していました。そこからは鴻池の動物に寄り添おうとするメッセージも感じられるかもしれません。

動物たちが人間たちに突きつけたメッセージをポスターとして描いたのが、画家で絵本作家としても活動するjunaidaでした。


『闇の世界 夢の世界』 junaida 2021年

黒や赤、黄色など5色を基調としたポスターには、いずれも目隠しをした子どもたちが描かれていて、「NO WAR」や「FOR PEACE」といったスローガンが記されていました。


『闇の世界 夢の世界』(原画) junaida 2021年

それらはまさに動物が人間に提示した5つの条件が要約されるかたちで示されていて、目隠しの部分には絵本『動物会議』の内容と同様、動物と子どもたちが遊ぶ光景も表されていました。


『動物会議の最終日』 ヨシタケシンスケ 2021年

エポローグでは絵本作家のヨシタケシンスケが、『動物会議』が終わったあとのストーリーを描くとともに、ケストナーとトリアーが絵本を出版したのちのエピソードなどを表していました。


絵本『動物会議』原画/ヴァルター・トリアー/1947-49年/オンタリオ美術館蔵

『動物会議』は第二次世界大戦後の1949年に出版されましたが、戦争や貧困によって子どもたちが困難に置かれる状況は、いまだなおかつ解消されているとは全くもって言えません。現にヨーロッパでは大規模な侵略戦争が行われ、人々の命が失われるとともに、日常の生活が奪われようとしています。



今回の『どうぶつかいぎ展』では、ケストナーの原作を知らずとも作品やキャプションを通してストーリーを追うことができますが、あらためて絵本を読んだ上で、展示にじっくりと向き合うのも良いかもしれません。


ケストナーの名作絵本に現代アーティストらが向き合う。PLAY! MUSEUMの『どうぶつかいぎ展』で考える子どもたちの未来 | イロハニアート


『無題』 秦直也 2021年

撮影も可能です。4月10日まで開催されています。おすすめします。

『どうぶつかいぎ展』 PLAY! MUSEUM@PLAY_2020
会期: 2022年2月5日(土)~4月10日(日)
休館:2月27日(日)
時間:10:00~18:00
 *平日は17:00まで。
 *入場は閉館の30分前まで
料金:一般1500円、大学生1000円、高校生800円、中・小学生500円、未就学児無料。
 *同時開催の「ぐりとぐら しあわせの本」展の料金も含む
 *平日は当日券のみ/休日は希望者に向けてオンラインチケットの日付指定券を販売
住所:東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3
交通:JR立川駅北口・多摩モノレール立川北駅北口より徒歩約10分
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『ミケル・バルセロ展』 東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリー
『Miquel Barceló ミケル・バルセロ展』
2022/1/13~3/25



東京オペラシティアートギャラリーで開催中の『ミケル・バルセロ展』を見てきました。

1957年にスペインのマジョルカ島に生まれたミケル・バルセロは、「ドクメンタ7」(ドイツ・ カッセル。1982年)でデビューすると、パリ、アフリカなどの各地にアトリエを構えて制作し、絵画から彫刻、陶、パフォーマンスといった幅広い作品を発表してきました。

まず目を引くのが、縦横2〜3メートルにも及ぶ大画面の絵画で、激しく力強いタッチの元、一見、抽象を思わせるようなモチーフが描かれていました。いずれも鮮やかな色彩を伴っていて、画肌は時に隆起しては、絵具そのものが荒波を立てるように広がっていました。


『雉のいるテーブル』 1991年

とはいえ、バルセロが表現しているのは抽象ではなく、闘牛や海、また川の風景など、具象的なモチーフに基づいていて、例えばアクションペンティングを思わせる『雉のいるテーブル』も、雉をはじめとした鳥獣や魚などの死骸を花瓶や髑髏をともに描いた作品でした。


『とどめの一突き』 1990年

まるで火口のように見える『とどめの一突き』は、闘牛場をモチーフとしていて、目を凝らすと黒い円の下の方に牛と人間が対峙する姿を見ることが出来ました。ただバルセロはナポリのヴェスヴィオ山を訪ねた際、「空の闘牛場」のように感じたとも語っていて、闘牛場と火口の2つのイメージを重ね合わせた作品と呼べるかもしれません。

また闘牛を愛したバルセロは、危険に立ち向かう闘牛士の姿を、孤独に制作を行う画家の自画像として捉えていて、絵画の重要な主題としてたびたび取り上げてきました。


『小波のうねり』 2002年

地中海の自然の中で育ったバルセロにとって、海も主要なモチーフの1つでした。そのうちの『小波のうねり』は、水色の海面のうねりを繊維状の物質が混じった絵具にて描いていて、左右から立ち位置を変えると色彩が変化するように表現されていました。海面が時間や天候で表情を変えていくのを目にしているように思えたかもしれません。


『マンダラ』 2008年

1988年、西アフリカを旅したバルセロはマリ共和国に拠点を置くと、以来、毎年のように滞在を繰り返しては制作を行うようになりました。『マンダラ』も蛇行するアフリカ川を俯瞰した作品で、カヌーや漁師、樹木などが流れる光景を描いていました。例えばトゥオンブリーの絵画を連想させるような即興的ともいえるタッチも魅力ではないでしょうか。


手前:『堅い頭の動物たち』 2012年

こうした一連の絵画とともに並ぶのが、壺や花瓶、鉢といった陶のオブジェで、いずれも歪みを伴いつつ、中には人の高さほどに大きなものもありました。


『ミケル・バルセロ展』 展示風景

バルセロは陶の制作に際し、力を加えてから窯で焼くことで、さまざまなイメージを作り上げていて、古代の壁画のような動物の絵が描かれるなど、プリミティブな味わいも感じられました。


右:『ドリー』 2013年 左:『マルセラ』 2011年

暗がりの画面にあたかも亡霊のように人が浮かび上がるのが「ブリーチ・ペインティング」と呼ばれる肖像画で、水で溶いた漂白剤にて絵具を脱色する技法にて描いていました。


左:『水浴する人たち』 2019.07-08 右:『内生する1人を含む4人』 2019.07-08

この他にも比較的小さな紙の作品やスケッチブック、またパフォーマンス映像なども展示されていて、バルセロの40年の活動をさまざまな角度から追いかけることができました。


『COVIDのノート』 2020年

『COVIDのノート』と題したコロナ禍のロックダウン下にて描かれた作品も、まさにバルセロのいまを知る上で興味深いかもしれません。


『パソ・ドブレ』(縮約版) 2015年 チューリヒ、スイス

スペイン出身の画家でありつつも、マリ共和国の滞在の経験など、アフリカの土地や文化がバルセロに大きなインスピレーションを与えているように感じられました。


ミケル・バルセロを知っているか? 日本初の回顧展が開催中|Pen Online

一部を除いて撮影も可能でした。3月25日まで開催されています。*一番上の写真の作品は『曇った大地海』2019年

『Miquel Barceló ミケル・バルセロ展』 東京オペラシティアートギャラリー@TOC_ArtGallery
会期:2022年1月13日(木)~3月25日(金)
休館:月曜日。(祝日の場合は翌火曜日)、2月13日(日)*全館休館日
時間:11:00~19:00 
 *入場は閉館30分前まで。
料金:一般1400(1200)円、大・高生1000(800)円、中学生以下無料。
 *同時開催中の『project N 85 水戸部七絵』の入場料を含む。
 *( )内は各種割引料金。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
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『池内晶子 あるいは、地のちからをあつめて』 府中市美術館

府中市美術館
『池内晶子 あるいは、地のちからをあつめて』 
2021/12/18~2022/2/27



府中市美術館で開催中の『池内晶子 あるいは、地のちからをあつめて』を見てきました。

1967年生まれの池内晶子は、絹糸を用いた作品を手がけ、国内各地の美術館や芸術祭などでインスタレーションを発表してきました。

その池内の美術館での初めての個展が『あるいは、地のちからをあつめて』で、3つの企画展示室とロビーを用い、絹糸による大掛かりな作品、および紙やガラスを用いた小品などを展示していました。

まず最初の展示室にて姿を現すのが『Knotted Thread-red―Φ1.4cm-Φ720cm』と題した作品で、ガランとした何もないスペースの中央に筒状のかたちをした絹糸が吊られ、床には同じく赤い糸が円を描くように広がっていました。



これらは池内が6日間かけて、実に全長2万メートルを超える糸をつなぎ合わせて作られたもので、直径は7メートルにもおよんでいました。また作品を取り囲むガラスケースへ赤い糸がぼんやりと映り込む光景も幻想的だったかもしれません。

続く暗がりのスペースでは『Knotted Thread-h220cm(north-south)』が展示されていて、南北から張られた糸の中央に、たくさんの結び目をつけた1本の糸が吊るされていました。また糸は機械ではなく、新潟の「朝日村 まゆの花の会」による手よりのもので、照明の効果によってわずかな光を放っていました。といえ糸は極めて細く、時折姿を隠すようにして見えなくなるほどでした。

最後の展示室では5メートルの軸糸に10センチ間隔の糸を結びつけた『Knotted Thread--red-east-west-catenary-h360cm』が公開されていて、空調の風などによって微かに波打つように揺らめいていました。またガラスケースの中に同じようなかたちで糸が渡されていました。

ちょうど糸の波を前にすると確かに糸を確認できるものの、大変に細いためか、角度を変えると見えなくなったりしていて、表情は一様ではありませんでした。



この他、ロビーにはドローイングや糸による小品、また版画などが展示されていました。また制作風景を映したドキュメンタリー映像も興味深いのではないでしょうか。



いずれも空気の流れ、さらに湿度などでも表情が変化していく繊細なインスタレーションで、ゆらゆらと靡く絹糸を見つめていると、いつしか糸が消え、空間全体へと溶けていくような錯覚に陥りました。またエントランスロビーの吹き抜けにも一本の絹糸が渡されていましたが、注意して見ないと気がつかないかもしれません。


ロビーの一部作品のみ撮影が可能でした。2月27日まで開催されています。

『池内晶子 あるいは、地のちからをあつめて』 府中市美術館@FuchuArtMuseum
会期:2021年12月18日(土)~2022年2月27日(日)
休館:月曜日。2月24日(木)。
時間:10:00~17:00
 *入館は閉館の30分前まで
料金:一般700(560)円、大学・高校生350(280)円、中学・小学生150(120)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *府中市内の小中学生は「学びのパスポート」で無料。
場所:府中市浅間町1-3 都立府中の森公園内
交通:京王線東府中駅から徒歩15分。京王線府中駅からちゅうバス(多磨町行き)「府中市美術館」下車。
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『Viva Video! 久保田成子展』 東京都現代美術館

東京都現代美術館
『Viva Video! 久保田成子展』
2021/11/13〜2022/2/23



東京都現代美術館で開催中の『Viva Video! 久保田成子展』を見てきました。

1937年に生まれた久保田成子は、映像と彫刻を組み合わせたヴィデオ彫刻を手がけると、ヴィデオ・アートの先駆者として評価されてきました。

その久保田の約30年ぶりとなる大規模な個展が『Viva Video! 久保田成子展』で、代表的なヴィデオ彫刻のみならず、初期のフルクサスの活動などを示す資料や作品が展示されていました。

まず初めに並んでいたのは、若き久保田の活動を示す資料や写真などで、東京で前衛美術のコミュニティに参加した経緯やハイレッド・センターでの活動、また夫となるナムジュン・パイクとの関係などが紹介されていました。

また久保田が1964年に渡米して以降、フルクサスでの制作やパイクとの共同生活からヴィデオを用いた作品を手がけたことについても丹念に追っていて、とりわけフルクサスのイベントとして行われた『ヴァギナ・ペインティング』の写真などは衝撃的ですらありました。


『デュシャンピアナ:マルセル・デュシャンの墓』 1972-75/2019年 久保田成子ヴィデオ・アート財団

主にカメラを用いてヴィデオ作品を制作してきた久保田は、映像に造形の要素を持たせたいと考えると、1975年には床から天井までテレビモニターを積み上げ、機械の部分を木の立体で覆った『デュシャンの墓』を発表して、ヴィデオ彫刻の制作に乗り出しました。


『デュシャンピアナ:階段を降りる裸体』 1975-76/83年 富山県美術館

そしてデュシャンへのオマージュである『デュシャンピアナ:階段を降りる裸体』や『デュシャンピアナ:ドア』などにて高い評価を得ると、アメリカやヨーロッパを中心とする国際展にて招待されて注目を浴びました。


『河』1979-81 年

1980年頃にデュシャンから離れ、山や河といった自然のモチーフを取り入れた久保田は、水を満たした水槽とモニターを組み合わせた『河』などを発表し、動きをともなうヴィデオ彫刻を制作するようになりました。


『ナイアガラの滝』 1985/2021年

10台のモニターが組み込まれた『ナイアガラの滝』は、春夏秋冬のナイアガラの情景を映像に投影しつつ、手前のシャワーによって実際に水が落ちるように作られた作品で、滝の映像と水の流れがレイヤーのように折り重なっていました。


『三つの山』 1976-79年 久保田成子ヴィデオ・アート財団

一連のヴィデオ彫刻で印象に深いのが、作品の前で静止して映像を見るのではなく、自由に周りを行き来しながら鑑賞できることでした。


『河』 1979-81年

とりわけ先の『河』は、逆さ吊りになったモニターが、笹舟のような構造物の水面に映像を投影するように作られていて、あたかも舟の中を覗きこむようにすることで初めて映像を見ることができました。


『韓国の墓』 1993年

『韓国の墓』は、夫のパイクの帰国に同行した際、久保田に強い印象を与えた墓をモチーフにした作品で、墓のかたちを模した構造物の中に墓参の様子などを映したモニターを組み込んでいました。


『韓国の墓』 1993年

ちょうど茶碗をひっくり返したような半円の彫刻の表面には、鏡による突起物が付けられていて、プロジェクションによる効果もあってか、まるできらきらと輝く宇宙船を目にしているかのようでした。


『スケート選手』 1991-92年

フィギュアスケート選手の伊藤みどりをモチーフにした『スケート選手』も目立っていたのではないでしょうか。いずれのヴィデオ彫刻とも、主にブラウン管のモニターを用いつつ、一見、アナログな構造でありながら、どこかSF的とも近未来的ともいえるような世界を築き上げているのも面白く思えました。

久保田は1996年、ホイットニー美術館での個展を控えるも、夫のパイクが脳梗塞に倒れたため、それまでと同じように制作に集中することができなくなってしまいました。



しかし介護とパイクの展覧会をサポートしつつ、2000年には療養生活を主題とした作品を発表するなどして活動を続け、パイクの没後も自らの病気と闘いながら作品の制作や本の出版を行いました。


『パイクから成子への手紙』(複写) 2001年 個人蔵

こうしたパイクとの関係をはじめとした、久保田の人生の歩みも浮かび上がる展示ではなかったでしょうか。1人のアーティストの活動を追うのに際して作品と資料に不足はありませんでした。


『デュシャンピアナ:自転車の車輪1,2,3』 1983-90年 公益財団法人アルカンシエール美術財団/原美術館コレクション

なお『デュシャンピアナ:自転車の車輪1,2,3』と『ヴィデオ俳句―ぶら下がり作品』、および『スケート選手』に関しては作品保存の観点より、動作時間が限られていました。詳しくは美術館の公式サイトでご確認ください。


一部エリアの展示作品の撮影が可能でした。


『Viva Video! 久保田成子展』展示風景

まもなく会期末です。2月23日まで開催されています。遅くなりましたが、おすすめします。

『Viva Video! 久保田成子展』 東京都現代美術館@MOT_art_museum
会期:2021年11月13日(土)〜2022年2月23日(水・祝)
休館:月曜日。但し2022年1月10日、2月21日は開館。年末年始 (12月28日〜1月1日 )、1月11日。
時間:10:00~18:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1400円、大学・専門学校生・65歳以上1000円、中高生600円、小学生以下無料。
 *予約優先チケットあり。
 *MOTコレクションも観覧可。
住所:江東区三好4-1-1
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩9分。都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩13分。
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Bunkamura ザ・ミュージアムにて『ミロ展-日本を夢みて』がはじまりました

スペインで生まれたジュアン・ミロは、日本でも早い段階から受容され、国内の美術館にも多くの作品がコレクションされるなどして人気を集めてきました。



そのミロの20年ぶりとなる大規模な回顧展が、東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムにて開催されています。展示の様子についてPenオンラインに寄稿しました。

20年ぶりの大回顧展! Bunkamura ザ・ミュージアムの『ミロ展 ― 日本を夢みて』でひも解くミロと日本の意外な関係|Pen Online

今回のミロ展の最大の特徴は、ミロと日本の関係について検証していることで、若きミロが日本に憧憬を抱き、いつしか日本の人々と交流しながら、文化に造詣を深めていく様子を時間を追って紹介していました。

よって単にミロの絵画だけでなく、例えばミロが収集した民芸品や、ミロが参照したであろう日本に関する書籍といった資料も公開されていて、ミロと日本の意外ともいえる関係について知ることができました。

と同時に、国立ソフィア王妃芸術センターから56年ぶりに来日を果たした『絵画(カタツムリ、女、花、星)』など、国内外から集められた絵画も充実していて、端的な『ミロ展』としても見応えのある内容となっていました。

日本とミロの関係で特に重要なのは、晩年のミロが2度の来日を果たしたことで、交流した書家の影響を伺わせるような作品などもいくつか展示されていました。そしてミロ自身も「日本の書家たちの仕事に夢中になったし、確実に私の制作方法に影響を与えている」と語るなど、自らの制作と書との関係について意識していました。

この他、ミロが友人のアルティガスとともに手がけた陶の作品やブロンズの彫刻、タペストリーなど絵画以外の作品も並んでいて、ミロの幅広い創作を目の当たりにすることができました。


混雑緩和などの観点より、会期中のすべての土日祝、および4月11日(月)~4月17日(日)はオンラインによる入場日時予約が必要となりました。予約方法については公式サイトをご覧ください。

4月17日まで開催されています。なお東京での展示を終えると、愛知県美術館(2022年4月29日〜7月3日)と富山県美術館(2022年7月16日〜9月4日)へと巡回します。

『ミロ展-日本を夢みて』 Bunkamura ザ・ミュージアム@Bunkamura_info
会期:2022年2月11日(金・祝)~4月17日(日)
休館:2月15日(火)、3月22日(火)。
時間:10:00~18:00。
 *毎週金曜と土曜は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1800円、大学・高校生1000円、中学・小学生700円。
 *土日祝および4月11日(月)~4月17日(日)はオンラインによる入場日時予約が必要。
住所:渋谷区道玄坂2-24-1
交通:JR線渋谷駅ハチ公口より徒歩7分。東急東横線・東京メトロ銀座線・京王井の頭線渋谷駅より徒歩7分。東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線・東京メトロ副都心線渋谷駅3a出口より徒歩5分
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『奇想のモード』 東京都庭園美術館

東京都庭園美術館
『奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム』 
2022/1/15~4/10



東京都庭園美術館で開催中の『奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム』へ行ってきました。

20世紀の大きな芸術運動であったシュルレアリスムは、芸術の領域のみならず、モードの世界とも密接に関わり、多くのクリエイターらに影響を与えました。

そうしたシュルレアリスムとモードの関係を中心に、「奇想」の観点からさまざまなファッションを紹介するのが『奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム』で、16世紀の歴史的なファッションプレートからコンテンポラリーアートに至る約190点の作品や資料が展示されていました。

まず目を引くのが西洋のコルセットや中国の纏足、スコットランドのライチョウの足を用いたピンなどで、サルヴァドール・ダリの大型の彫刻などとあわせて展示されていました。

そもそもシュルレアリストたちは、1938年に開催した『シュルレアリスム国際展』にて、マネキンをダリやエルンストが飾るなどモードの世界に接近していて、例えばキリコもマネキンのモチーフを絵画に取り入れたりしました。

一方でモードにおいてもシュルレアリスムを契機に新たな制作をするようになり、過去には使わなかった素材を使ったり、だまし絵的なイラストや内と外を反転させたデザインなどを採用しました。シュルレアリスムとモードとは互いに深い関係にあったといえるかもしれません。



このシュルレアリスムに共鳴したのが、ココ・シャネルのライバルでもあったデザイナー、エルザ・スキャパレッリでした。コクトーやダリとのコラボなども手がけたスキャパレッリは、「ショッキングピンク」を考案したり、当時としては奇抜ともいえるデザインを取り込んで脚光を浴びました。本館の大食堂におけるスキャパレッリのドレスなどは展示のハイライトと呼んでも良いかもしれません。


「和装の奇想」 展示風景

日本に関しては「和装の奇想」と題し、浮世絵における花魁の装いや、蛇といった小動物を象った帯留などが展示されていて、江戸時代から大正、昭和時代のユニークともいえる装いの一端を見ることができました。


舘鼻則孝 展示風景

ラストの「ハイブリットとモード」では、舘鼻則孝や串野真也、それに永澤陽一といった現代アーティストたちの作品が紹介されていて、とりわけレディ・ガガに見出されて話題を集めた舘鼻則孝の『ヒールレスシューズ』が目立っていました。


ANOTHER FARM 『Modified Paradice』2018年

串野真也と尾崎ヒロミ(スプツニ子!)によるアートユニット「ANOTHER FARM」は、遺伝子組み換えによって発光体となったシルクを用いた『Modified Paradice』を展示していて、西陣織によって仕立てられたドレスから神秘的な光が放たれていました。

ダリ、マン・レイ、スキャパレッリから舘鼻則孝まで。『奇想のモード』で知るアートとモードの密接な関係|Pen Online

アール・デコ様式の本館の佇まいとモードやシュルレアリスム作品との邂逅も見どころかもしれません。またダリやキリコといったシュルレアリスムの彫刻や絵画とともに、エルンストのポスターやカッサンドルがデザインした雑誌の表紙など、メディアに関する資料が多かったのも印象に残りました。


串野真也 展示風景

新館の展示のみ撮影が可能でした。(本館は不可)


事前予約制です。4月10日まで開催されています。

『奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム』 東京都庭園美術館@teienartmuseum
会期:2022年1月15日(土)~4月10日(日)
休館:月曜日。ただし3月21日は開館、3月22日(火)は休館
時間:10:00~18:00。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1400(1120)円 、大学生1120(890)円、中・高校生・65歳以上700(560)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *小学生以下および都内在住在学の中学生は無料。
 *第3水曜日のシルバーデーは当面中止。
住所:港区白金台5-21-9
交通:都営三田線・東京メトロ南北線白金台駅1番出口より徒歩6分。JR線・東急目黒線目黒駅東口、正面口より徒歩7分。
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『再開記念展 松岡コレクションの真髄』 松岡美術館

松岡美術館
『再開記念展 松岡コレクションの真髄』 
2022/1/26~4/17



設備改修工事を終え、約2年8ヶ月に再開した松岡美術館が、館蔵の名品を紹介する『再開記念展 松岡コレクションの真髄』を開催しています。

1975年、実業家の松岡清次郎(1894〜1989年)によって東京・新橋に開館した松岡美術館は、清次郎が生涯にわたって収集した東洋陶磁、日本画、西洋彫刻の作品を長く公開してきました。

そして1989年に清次郎が逝去すると、1996年には白金台の私邸跡地に新美術館の建設がはじまり、2000年に移転開館しました。そして2019年から館蔵品の修復調査と設備改修のために休館に入り、この2022年1月にリニューアルオープンを果たしました。

まず『再開記念展 松岡コレクションの真髄』にて充実しているのは、「館蔵 東洋陶磁名品選 松岡清次郎の志をたどる」と題した東洋陶磁のコレクションで、清次郎が作品を収集した経緯を辿りながら、日本、朝鮮、そして中国の陶磁が一堂に公開されていました。


『色絵 花卉文 大壺』 江戸時代(1700〜1740年代)

清次郎が最初に収集したのは日本の陶磁で、日本画を収集していた傍ら、60歳代になってから少しづつ購入すると、17〜18世紀の古伊万里を中心に90点のコレクションを築き上げました。


『青花 双鸞菊文 大盤』 中国・元時代 14世紀

そして1972年の頃に海外のオークションへ出向くと、中国陶磁の魅力に引き込まれ、積極的にコレクションしていくようになりました。


『青花龍唐草文天球瓶』 中国・明時代(1403〜1424年)

中国の明時代の『青花龍唐草文天球瓶』は同館を代表するコレクションの1つで、清次郎が一度は落札にできなかったものの、最初の落札者であったポルトガルの銀行王がクーデターにより逮捕されたため、改めて手に入れたという異例の経緯を辿った作品でした。


『青花双鳳草虫図八角瓶』 中国・元時代 14世紀

元時代の『青花双鳳草虫図八角瓶』は、世界有数のコレクションを築いたフレデリック・メイヤーの旧蔵品で、収集当時、中国の美術品としては史上2番目の金額にて落札されました。なお『青花龍唐草文天球瓶』と『青花双鳳草虫図八角瓶』は同時に出品されるのは、約7年ぶりのことでもあります。


『黄色地琺瑯彩牡丹文碗』 中国・清時代(1662〜1722年)

一連の優品の中で私が印象に残ったのは、日本の鍋島や中国の清の時代の小さな碗などで、中でも色彩鮮やかでかつ精緻な模様が描かれた『黄色地琺瑯彩牡丹文碗』に魅せられました。


池上秀畝『巨波群鵜図』 1932年

続く2つの展示室にて展開した「館蔵日本画 花鳥風月」も見応えがあって、江戸時代の酒井抱一をはじめ、近代以降の横山大観や渡辺省亭、それに小林古径らの作品が約50点(展示替えあり)ほど公開されていました。


酒井抱一『月兎』 江戸時代

酒井抱一の『月兎』は、おぼろげに照る月の下、秋草と白い兎を描いた作品で、月と兎は周囲を薄い墨でぼかす外隈と呼ばれる技法が用いられていました。すました表情で前を向く兎などがまるで影絵のように表されているのも趣き深いかもしれません。


渡辺省亭『青梅に雀の図』 1896年

渡辺省亭の『青梅に雀の図』も魅惑的な作品で、雨に濡れた梅の木へ二羽の雀がやって来る姿を描いていました。雨に溶け込むような梅の木の詩的な表現と、一転して写実的ともいえる雀の描写が巧みで、情緒深い光景を生み出していました。


下村観山『杉に栗鼠』 1907〜12年頃

横山大観の『木菟』や下村観山の『杉に栗鼠』などもかわいらしい作品ではないでしょうか。池上秀畝の『巨浪群鵜図』といった大作の屏風も見応えがありましたが、あたかも清次郎の生き物に対する慈しみが感じられるような小さな掛軸画に魅せられました。


常設展示:古代東洋彫刻 展示風景

この他、館内では古代エジプト美術から中国・ガンダーラの仏教彫刻群にインドのヒンドゥー教神像、それにヘレニズム、ローマ期の大理石彫刻、はたまたヘンリー・ムアといった西洋の近現代彫刻なども公開されていました。陶磁器、日本画などとあわせればかなりのボリュームではないでしょうか。



私も久しぶりに松岡美術館へ出かけましたが、個人の邸宅を思わせるような佇まいに惹かれるとともに、東洋陶磁を中核とした質の高いコレクションに改めて感心させられるものがありました。


『アルテミス』 ローマ期 1〜2世紀頃

展示替えの情報です。「館蔵日本画 花鳥風月」において一部の作品が入れ替わります。

「館蔵日本画 花鳥風月」出品リスト
前期:1月26日(水) ~3月6日(日)
後期:3月8日(火)~4月17日(日)

会期中に2度目の観覧が半額となる「リピーター割引券」が受付で配布(1人1枚)されています。2年に渡る修復を経て以降、初めて公開される伝周文の『竹林閑居図』(後期に出品)など、前後期追いかけながら絵画の優品を愛でるのも良さそうです。



館内は一部展示室と作品を除いて撮影が可能でした。ただし電子音やシャッター音を鳴らしての撮影やフラッシュは禁止です。消音対応のカメラアプリを利用されることをおすすめします。


予約は不要です。4月17日まで開催されています。

『再開記念展 松岡コレクションの真髄』 松岡美術館@matsu_bi
会期:2022年1月26日(水)~4月17日(日)
休館:月曜日(祝日の場合は翌平日)
時間:10:00~17:00。
 *第一金曜日のみ19:00まで開館
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1200円 、25歳以下500円、高校生以下無料。
住所:港区白金台5-12-6
交通:東京メトロ南北線・都営地下鉄三田線白金台駅1番出口から徒歩7分。
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『第14回恵比寿映像祭 スペクタクル後』 東京都写真美術館

東京都写真美術館
『第14回恵比寿映像祭 スペクタクル後』
2022/2/4~2/20



2009年に映像とアートの国際フェスティバルとしてはじまった『恵比寿映像祭』は、今年で第14回を迎えるに至りました。

今回のテーマは「スペクタクル後」で、19~20世紀の博覧会や映画の歴史から現代にいたるイメージや映像表現が紹介されていました。

まず3階の展示室では、ゲスト・キュレーターの小原真史による「スペクタクルの博覧会」と題した展示が行われていて、19世紀から20世紀にかけて世界で行われた博覧会に関する資料が一堂に公開されていました。

ここでは小原自身が収集した資料と写真美術館のコレクションにより、ロンドン万博以降、第二次世界大戦後の大阪万博までの絵葉書やポスター、また写真資料などが並んでいて、かつての白人を上位とした人類学や先住民への差別といった、コロニアリズムやレイシズムの観点が浮き彫りとされていました。ともかく資料が1つの特別展のように豊富でかつ充実していて、今回の映像祭でも特に時間をかけて見入りました。

同じく3階では、撮影用カメラと映写機を一体化したシネマトグラフを発明したリュミエール兄弟に関する展示とともに、ブエノスアイレス生まれでアメリカに在住するアマリア・ウルマンの映像なども公開されていました。そのうちウルマンの作品は、日用品の巨大市場である中国・浙江省の義鳥を舞台に、作家本人が現地で仕事を得ようとする様子などを演じていて、実に12ヶ国語という多くの字幕によって展開していました。


パンタグラフ『ストロボの雨を歩く』 2015年

続く2階の展示室では、複数の現代のアーティストらが作品を公開していて、天井からは回転する傘に絵が動き、アニメーションが浮き上がるパンタグラフの『ストロボの雨を歩く』が吊るされていました。※毎時00分よりストロボを使った実演を実施。


三田村光土里『Till We Meet Again また会うために、わたしはつくろう』 2020年

三田村光土里は、遠く離れた友人たちとの再会をテーマにした映像『Till We Meet Again』と、それを起点に「アッセンブリッジ・ナゴヤ2020」にて発表したインスタレーションを再構築した展示を行っていて、とりわけ何らかの物語を呼び起こすようながらんとした寂しげな室内空間が印象に残りました。


ひらのりょう『Krasue(ガスー)』 2021年

アニメーション作家のひらのりょうによる映像インスタレーション『Krasue(ガス―)』も鮮烈だったかもしれません。日本のヤクザとタイの妖怪などが登場するアニメーションは、時に暴力的表現を伴いながら、猟奇的とも呼べるような展開を見せていて、それこそ怖いものをあえて目にしたくなるような独特の魅力が感じられました。


小田香『Day of the Dead(死者の日)』 2021年

ラストの地下展示室では3名のアーティストがスケール感のある作品を公開していて、中でも、メキシコのマヤの洞窟泉セノーテをめぐる旅をモチーフとした映像インスタレーション『Day of the Dead(死者の日)』における神秘的な世界観が心に残りました。


藤幡正樹『Voices of Aliveness』 2012年

2階と地下の展示は無料、3階の展示は有料(500円)です。無料展示も楽しめましたが、3階の「スペクタクルの博覧会」が想像以上に見応えがありました。あわせてご覧になられることをおすすめします。


三田村光土里 展示風景

『恵比寿映像祭」では展示以外にも、上映プログラムといったさまざまな催しが行われます。スケジュールなどは公式サイトをご覧ください。


2月20日まで開催されています。※一番上の写真の作品は、山谷佑介『Doors』(2019年)

『第14回恵比寿映像祭 スペクタクル後』 東京都写真美術館@topmuseum
会期:2022年2月4日(金)~2月20日(日)
休館:月曜日。
時間:10:00~20:00
 *最終日は18:00まで。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:無料
 *3階展示室、定員制のプログラム(上映、イヴェントなど)、一部のオンラインプログラムは有料。
場所:目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
交通:JR線恵比寿駅東口より徒歩約7分。東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩約10分。
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「時を旅する百段階段 ちいさな世界」 ホテル雅叙園東京・百段階段

ホテル雅叙園東京・百段階段
「時を旅する百段階段 ちいさな世界」
2022/1/15~3/27



ホテル雅叙園東京・百段階段にて、ミニチュアハウスやペーパーアート、それにひな飾りなどを展示する「時を旅する百段階段 ちいさな世界」が開かれています。



まずどこか懐かしい昭和の時代の光景を連想させるのが、入江千春の『あかり絵』と題した作品で、子供たちが楽しそうに遊ぶ光景などをオブジェにて表現していました。



これらは素焼きの人形と照明、それに博多弁の言葉をあわせたもので、屋台でラーメンを食べたり、家の中で鯉のぼりを出して楽しむ子どもたちの姿などを見ることができました。日常を表したほのぼのとした情感も魅力ではないでしょうか。



木を素材にして、肉眼では判別しにくいほど小さな彫刻を手がけるのが、ミニチュア木彫作家として活動する小出信久でした。



ツゲやコクタン、また竹の皮や絹糸などを組みあせながら、ミニ三輪車やこづち引き、またレーサーなどを作っていて、米粒ほど小さいテディベアに至っては、ルーペを通すことで初めて細部を確認することができました。



ペーパーアーティストの太田隆司は、かつての都電が走る東京の街角の風景を紙で築いていて、建物のみならず、自転車に乗る人や電車を降りる人までも巧みに作り上げていました。



立体間取りアーティストのタカマノブオの住宅模型も目を見張るかもしれません。



身の回りの材料でペーパークラフトを作りはじめたタカマノブオは、独学にて屋根着脱式の住宅模型の制作技法を考案すると、TVドラマや映画に登場する主人公たちの住まいを再現して作りました。



ここでは映画『ALWAYS 三丁目の夕日』や「男はつらいよ」の『くるま菓子舗』などの模型が並んでいて、まさに映画のワンシーンをのぞき込むような臨場感も得られました。



またいずれも図面がないため、作家が間取りを考察して作りあげたことにも驚かされるかもしれません。細部まで見事に再現されていました。



こうしたミニチュアと並んで百段階段を彩るのが、ひな人形や鮮やかなつるし飾りでした。そのうち北浦和の懐石料亭・二木屋からは、木目人形の小さなひな飾りが出展されていて、愛らしい姿を見せていました。



茨城県稲敷市の江戸崎つるしびなの会によるつるし飾りもあでやかだったかもしれません。まさに「昭和の竜宮城」と称されるように、豪華な意匠の施された百段階段の各広間とのコラボレーションも見どころと言えそうです。



まるで昭和の竜宮城!ホテル雅叙園東京の「百段階段」で楽しむ『ちいさな世界』 | イロハニアート


3月27日まで開催されています。

「時を旅する百段階段 ちいさな世界」 ホテル雅叙園東京・百段階段
会期:2022年1月15日(土)~3月27日(日)
休館:会期中無休
時間:12:30~18:00。
 *3月27日は17:00まで。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000円、学生500円、未就学児無料。
住所:目黒区下目黒1-8-1
交通:JR線、東急線、東京メトロ南北線、都営三田線目黒駅より徒歩5分。目黒駅、及び品川駅より無料ホテルバスあり。
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『描くひと 谷口ジロー展』 世田谷文学館

世田谷文学館
『描くひと 谷口ジロー展』
2021/10/16~2022/2/27



世田谷文学館で開催中の「描くひと 谷口ジロー展」を見てきました。

1971年に漫画誌にデビューした谷口ジロー(1947〜2017)は、ハードボイルドから時代劇や家庭劇、はたまたSFから動物をモチーフとした作品をてがけ、多くの言語に翻訳されるなど世界各地で愛読されてきました。

その谷口の作品を紹介するのが『描くひと 谷口ジロー展』で、初期から未完の遺作までの自筆原画など約300点もの作品が公開されていました。

高校卒業までを鳥取市にて過ごした谷口は、20歳にして漫画家を目指し上京すると、動物漫画で知られる石川球太のアシスタントとして働きました。

そして1971年に『嗄れた部屋』が「ヤングコミック」に掲載されると、「昭和の絵師」とも呼ばれた上村一夫のアシスタントを担い、1975年には『遠い声』が第14回ビックコミック賞佳作に入選しました。そしてこの頃より多くの成年コミック誌に作品を発表しました。


『青の戦士』 1980~81年 原作:狩撫麻礼

関川夏央との共作である『事件屋稼業』は、1979年からはじまり、断続的に1990年代の半ばまで続いたロングランの作品で、1980年には狩撫麻礼が原作を手がけた『青の戦士』がスタートしました。このように共作者、原作者とともに活動した谷口は、多くの傑作を生み出していきました。


『ブランカ』 1984〜86年 展示風景

谷口は人間と動物の絆や自然への畏怖や敬意など、動物や自然をテーマとした作品を多く描いていて、1982年の『ブランカ』では遺伝子操作された軍用犬が飼い主のいるニューヨークを目指す物語を表しました。また1991年の『犬を飼う』は、谷口本人の飼い犬が亡くなった体験をもとにした作品で、犬への愛情をリアルでかつ細やかに描いていました。


『孤独のグルメ』 1994~2015年 原作:久住昌之 展示風景

1990年代には『犬を飼う』をはじめ、セリフがほとんどない『歩くひと』や、久住昌之の原作による『孤独のグルメ』など多様な作品を手がけていて、故郷を舞台に父と子や家族を描いた『父の暦』や『遙かな町へ』は多くの言語に翻訳されるなど、世界でも評価を得るようになりました。


『歩くひと』 1990〜91年 表紙用イラスト。

そして『歩くひと』や『ブランカ』、『父の暦』などがフランスをはじめとして各国で紹介されると、Jiro Taniguchiとして人気を集め、2000年代には各国の漫画祭などで賞を受賞して脚光を浴びました。


『「坊っちゃん」の時代』から『不機嫌亭漱石』 1987~96年 共作:関川夏央 展示風景

2010年代には『孤独のグルメ』や『事件屋稼業』がテレビドラマ化されたほか、ヨーロッパでは『遙かな町へ』が実写映画化されるなど、映像作品としても人気を集めました。


『神の犬』 1995~96年

ともかく「描くひと」とあるように貪欲なまでに多様な主題を描いた谷口でしたが、初期の劇画調からのちに描かれた作品にはタッチの違いも見られて、そうした作風の変化にも興味を引かれるものがありました。


『VENICE』 2014年


『孤独のグルメ』の直筆イラストも公開。世界で愛された漫画界の巨人、谷口ジローの作品に酔いしれる|Pen Online

会場内の撮影も可能でした。予約は不要ですが、混雑時は入場が規制される場合があります。



2月27日まで開催されています。

『描くひと 谷口ジロー展』 世田谷文学館@SETABUN
会期:2021年10月16日(土)~2022年2月27日(日)
休館:月曜日。但し月曜が祝日の場合は開館し、翌平日に休館。年末年始(2021年12月29日~2022年1月3日)。
時間:10:00~18:00 *入場、及びミュージアムショップの営業は17時半まで。
料金:一般900(720)円、大学・高校生・65歳以上600(480)円、小・中学生300(240)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:世田谷区南烏山1-10-10
交通:京王線芦花公園駅より徒歩5分。
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『SMBC meets Contemporary Art “Come take a look!”』 三井住友銀行本店東館 アース・ガーデン

三井住友銀行本店東館 1F アース・ガーデン
『SMBC meets Contemporary Art “Come take a look!”』 
2022/1/25~2/18



東京・大手町の三井住友銀行本店東館 1F アース・ガーデンにて、ミスミグループの創業者である田口弘のアートコレクションを紹介する『SMBC meets Contemporary Art “Come take a look!”』が行われています。


コラクリット・アルナーノンチャイ『History Painting (Poetry Floor2)』 2016年

これは三井住友フィナンシャルグループが新たに立ち上げた、アートに触れる場と環境を広く提供する「SMBC ART HQ」の企画として開かれたもので、第1弾としてタグチアートコレクションから国際的に注目される16組のアーティストの作品が選ばれました。


宮島達男『Counter Falls』 2018年

田口は1980年代末より現代美術を収集しはじめると、ミスミ社長在職時にアメリカン・ポップアートを中心とするコレクションを築きました。そして後の2000年頃より収集対象を世界、あるいは日本国内に広げて個人でも作品を集め、2021年11月の段階で600点ものコレクションに至りました。


ジュリアン・オピー『Shahnoza pole dancer』 2006年

今回の展示で興味深いのは、宮島達男やジュリアン・オピーといった有名なアーティストだけでなく、アメリカのシカゴ生まれのドナ・フアンカなどの国内ではなかなか見る機会の少ない作品が展示されていることでした。


ドナ・フアンカ『Mami Wata』 2017年 『HANGISI』 2017年

そのドナ・フアンカの『HANGISI』とは、女性の足を彩るパンプスのブランドシリーズに由来していて、濃い青や白、それに肌を思わせるような色が有機的に混ざるように広がっていました。


ハルーン・グン=サリ『Senzenina(われわれが何をしたのか)』 2018年

南アフリカを拠点に活動するハルーン・グン=サリの『Senzenina(われわれが何をしたのか)』は、反アパルトヘイト闘争の歌をタイトルにした作品で、2012年に同国のロンミン鉱山で起こった事件で犠牲となった労働者をモチーフにしていました。イギリス資本の同鉱山では、待遇改善のためにストライキが行われ、それを排除しようとした警察の発砲よって鉱山労働者17名もの命が奪われてしまいました。


グザヴィエ・ヴェイヤン『Natasa』 2019年

フランスのグザヴィエ・ヴェイヤンは、人間や動物を等身大のスケールで表現する制作を続けていて、局面を削ぎ落としたような幾何学的形態を見せた『ナターシャ』などを展示していました。鮮やかな色彩と、シンプルでありながら近未来的なフォルムも魅力かもしれません。


エルムグリーン&ドラッグセット『Human Scale (Loop Pool)』 2019年

三井住友銀行本店東館1Fの広く開放的なスペースを用い、大型のインスタレーションや絵画が多いのも特徴かもしれません。会期中は無休ですが、平日と土休日にて開館時間が異なります。お出かけの際はご注意ください。

入場は無料です。2月18日まで開催されています。

『SMBC meets Contemporary Art “Come take a look!”』 三井住友銀行本店東館 1F アース・ガーデン
会期:2022年1月25日(火)~2月18日(金)
休館:会期中無休。
時間:9:00~18:00(月~金)、13:00~18:00(土日祝)
料金:無料
住所:千代田区丸の内1-3-2
交通:東京メトロ千代田線・丸ノ内線・半蔵門線・東西線、都営三田線大手町駅C14出口より直結。
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2022年2月に見たい展覧会【香月泰男/木村伊兵衛と画家たちの見たパリ/第25回TARO賞】

新型コロナウイルスのオミクロン株の猛威が国内を襲い、地域によっては美術館が再び臨時休館に追い込まれるなど影響が出ています。



一方で首都圏においては『フェルメールと17世紀オランダ絵画展』の開幕が見送られたものの、ごく一部の美術館を除き、予約制や人数制限などの対策を踏まえて開館しています。2月に見たい展覧会をリストアップしました。

展覧会

・『第14回恵比寿映像祭 スペクタクル後』 東京都写真美術館(2/4~2/20)
・『生誕160年記念 グランマ・モーゼス展 素敵な100年人生』 世田谷美術館(2021/11/20~2022/2/27)
・『北斎で日本史 ―あの人をどう描いたか』 すみだ北斎美術館(2021/12/21~2022/2/27)
・『あざみ野フォト・アニュアル2022 中井菜央 雪の刻』 横浜市民ギャラリーあざみ野(1/29~2/27)
・『サロン展「松濤クロニクル1981→2021」』 渋谷区立松涛美術館(2/12~3/13)
・『FACE展2022』 SOMPO美術館(2/19~3/13)
・『未来へつなぐ陶芸―伝統工芸のチカラ展』 パナソニック汐留美術館(1/15~3/21)
・『特別展 春日神霊の旅 -杉本博司 常陸から大和へ』 神奈川県立金沢文庫(1/29~3/21)
・『ボストン美術館所蔵 THE HEROES 刀剣×浮世絵―武者たちの物語』 森アーツセンターギャラリー(1/21~3/25)
・『季節をめぐり、自然と遊ぶ~花鳥・山水の世界~』 大倉集古館(1/18~3/27)
・『よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―』 サントリー美術館(1/26~3/27)
・『生誕110年 香月泰男展』 練馬区立美術館(2/6~3/27)
・『木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり』 目黒区美術館(2/19~3/27)
・『ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?』 ポーラ美術館(2021/9/18~2022/3/30)
・『はじまりから、いま。 1952ー2022 アーティゾン美術館の軌跡―古代美術、印象派、そして現代へ』 アーティゾン美術館(1/29~4/10)
・『どうぶつかいぎ展』 PLAY! MUSEUM(2/5~4/10)
・『再開記念展 松岡コレクションの真髄』 松岡美術館(1/26~4/17)
・『開館55周年記念特別展 上村松園・松篁 —美人画と花鳥画の世界—』 山種美術館(2/5~4/17)
・『ミロ展—日本を夢みて』 Bunkamuraザ・ミュージアム(2/11~4/17)
・『21_21 DESIGN Future SIGHT』 21_21 DESIGN SIGHT(2021/12/21~2022/5/8)
・『浅田政志展』 水戸芸術館(2/19~5/8)
・『アイラブアート16 視覚トリップ展  ~ウォーホル、パイク、ボイス 15人のドローイングを中心に~』 ワタリウム美術館(1/22~5/15)
・『開館40周年記念展 扉は開いているか ―美術館とコレクション1982-2022』 埼玉県立近代美術館(2/5~5/15)
・『上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー』 三菱一号館美術館(2/18~5/15)
・『第25回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展』 川崎市岡本太郎美術館(2/19~5/15)
・『Chim↑Pom展:ハッピースプリング』 森美術館(2/18~5/29)
・『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』 国立新美術館(2/9~5/30)

ギャラリー

・『クリスチャン・マークレー Voices[声]』 ギャラリー小柳(2021/11/24~2022/2/26)
・『竹中美幸展』 アートフロントギャラリー(2/4〜2/27)
・『西野壮平写真展「線をなぞる "tracing lines”』 キヤノンギャラリー S(1/20〜3/7)
・『ポーラ ミュージアム アネックス展 2022 前期』 ポーラ ミュージアム アネックス (2/11〜3/13)
・『妹島和世+西沢立衛/SANAA展 環境と建築』 TOTOギャラリー・間(2021/10/22~2022/3/20)
・『AC部「異和感ナイズ展』 クリエイションギャラリーG8(2/22〜3/30)
・『転移のすがた アーティスト・レジデンシー10周年記念展』 銀座メゾンエルメス(2021/12/17~2022/4/3)
・『泉太郎』 Take Ninagawa(2/26〜4/9)
・『万物資生|中村裕太は、資生堂と   を調合する』 資生堂ギャラリー(2/26〜5/29)

まずは戦後日本の美術史に足跡を残した画家の回顧展です。練馬区立美術館にて『生誕110年 香月泰男展』が開かれます。



・『生誕110年 香月泰男展』@練馬区立美術館(2/6~3/27)

1911年に山口県に生まれた香月泰男は、東京美術学校に入学すると、1942年に召集令状を受けて当時の満洲へと動員され、敗戦後はシベリアで抑留生活を送るなど苦難の人生を歩みました。


その香月の生誕110年を期して行われるのが今回の回顧展で、初期からシベリアでの抑留を主題とした「シベリア・シリーズ」のほか、遺作『渚(ナホトカ)』などが一堂に公開されます。まさに香月の人生を絵画にて追体験していくような展覧会となりそうです。なお同展は宮城県美術館を皮切りに全国にて開かれてきた巡回展で、東京では練馬区立美術館のみの開催となります。(この後、足利市立美術館へ巡回。)

続いては日本を代表する写真家の展示です。『木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり』が目黒区美術館にて開催されます。



・『木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり』@目黒区美術館(2/19~3/27)

1901年に東京で生まれ、日本の写真界を牽引した木村伊兵衛は、戦後初めて写真家としてヨーロッパを取材し、アンリ・カルティエ=ブレッソンなどと交流しながらパリの街角を写真におさめました。


その木村がパリにて撮影したカラー写真などを紹介するのが『木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり』で、加えて1910年から50年にかけてパリへ留学した同館所蔵の画家の作品も公開されます。木村の写真と同時代の画家の絵画の双方にて、当時のパリの情景を楽しめる展示となりそうです。

ラストは今年で25回目を迎えた現代美術展です。川崎市岡本太郎美術館にて『第25回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展』が行われます。



・『第25回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展』@川崎市岡本太郎美術館(2/19~5/15)


これは美術家の岡本太郎の精神を継承しつつ、現代美術作家を公募の形式にて顕彰するもので、応募された578点のうち入選した24名(組)の作品が公開されます。毎年、絵画、立体、インスタレーションを問わずに刺激的な作品が多いのも特徴で、今年も「現代美術のいま」を楽しめる内容となりそうです。

WEBメディア「イロハニアート」でも2月のおすすめの展覧会をご紹介しました。

大阪に新たな美術館もオープン!『メトロポリタン美術館展』から『Chim↑Pom展』まで。2月に見たいおすすめ展覧会5選 | イロハニアート

今後の状況により各展覧会の会期などが変更になる場合があります。最新の開催情報についてはWEBサイトにてご確認ください
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