2月の展覧会・ギャラリーetc

2月中に見たい展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「動物礼讃ー大英博物館から双羊尊がやってきた」 根津美術館(~2/22)
・「祈りの生命デザイン」 多摩美術大学美術館(1/31~2/22)
・「あざみ野フォト・アニュアル 石川直樹 NEW MAPー世界を見に行く」 横浜市民ギャラリーあざみ野(1/31~2/22)
・「キャプテン・クック探検航海と『バンクス花譜集』展」 Bunkamura ザ・ミュージアム(~3/1)
・「天才陶工 仁阿弥道八」 サントリー美術館(~3/1)
・「燕子花と紅白梅 光琳アート」 MOA美術館(2/4~3/3)
・「THE 琳派ー極めつきの畠山コレクション」 畠山記念館(~3/15)
・「スサノヲの到来ーいのち、いかり、いのり」 DIC川村記念美術館(~3/22)
・「菅木志雄展 置かれた存在性/未見の星座(コンステレーション)」 東京都現代美術館(~3/22)
・「鬼頭健吾 Migration 回遊」 群馬県立近代美術館(~3/22)
・「微笑みに込められた祈り 円空・木喰展」 そごう美術館(2/7~3/22)
・「スイスデザイン展」 東京オペラシティ アートギャラリー(~3/29)
・「没後50年 小杉放菴」 出光美術館(2/21~3/29)
・「海老原喜之助展ーエスプリと情熱」 横須賀美術館(2/7~4/5)
・「幻想絶佳:アール・デコと古典主義」 東京都庭園美術館(~4/7)
・「第18回岡本太郎現代芸術賞展」 川崎市岡本太郎美術館(2/3~4/12)
・「花と鳥の万華鏡 春草・御舟の花、栖鳳・松篁の鳥」 山種美術館(2/11~4/12)
・「ガブリエル・オロスコ展」 東京都現代美術館(~5/10)
・「ベスト・オブ・ザ・ベスト」 ブリヂストン美術館(1/31~5/17)
・「山口晃展 前に下がる 下を仰ぐ」 水戸芸術館(2/21~5/17)
・「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」 三菱一号館美術館(2/7~5/24)
・「ルーヴル美術館展 風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄」 国立新美術館(2/21~6/1)

ギャラリー

・「パランプセストー重ね書きされた記憶/記憶の重ね書き vol.6 西原功織」 ギャラリーαM(~2/7)
・「小瀬村真美 Still」 AI KOWADA GALLERY(2/5~2/15) 
・「竹村文宏 Factroy」 児玉画廊|東京(~2/21)
・「鬼頭健吾 Reflection 反映」 ケンジタキギャラリー(~2/28)
・「森山大道 ACTOR・シミズイサム」 AKIO NAGASAWA Gallery(~3/1)
・「山本基展『原点回帰』」 POLA MUSEUM ANNEX(~3/1)
・「第9回シセイドウアートエッグ 飯嶋桃代」 資生堂ギャラリー(2/6~3/1)
・「原田郁 西澤知美ー遠い国近い国」 アートフロントギャラリー(2/13~3/1)
・「押江千衣子展」 西村画廊(2/3~3/7)
・「丹下健三が見た丹下健三」 TOTOギャラリー・間(~3/28)
・「束芋 息花」 ギャラリー小柳(2/14~4/4)

さて2月はじまりの展覧会、何と言っても楽しみなのは熱海のMOA美術館です。2月4日より「燕子花と紅白梅 光琳アート」がはじまります。



「燕子花と紅白梅 光琳アート」@MOA美術館(2/4~3/3)

光琳の二大国宝、「燕子花図屏風」と「紅白梅図屏風」が56年ぶりに同時に公開される特別展です。今春に開催される根津美術館での「燕子花と紅白梅 光琳デザインの秘密」(4/18~5/14)と二つで一つの企画ですが、先行するMOAでは光琳を起点に、光琳の影響が伺える近現代美術までを展観します。

「燕子花と紅白梅」については以前、拙ブログでも記者発表の様子をまとめました。そちらもあわせてご覧下さい。

「燕子花と紅白梅」 記者発表会(はろるど)

洋画家、海老原喜之助の回顧展が横須賀美術館はじまります。



「海老原喜之助展ーエスプリと情熱」@横須賀美術館(2/7~4/5)

海老原といえばチラシ表紙の「曲馬」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。かつて私もこの作品を東京都美術館の「日本の美術館名品展」(2009年)で見た際、どこか強く惹かれたことを覚えています。

ただ不思議とそれ以外の作品を見る機会がありませんでした。今回は油画80点超、ほか資料やデッサンも網羅します。首都圏では24年ぶりとなる回顧展です。これは見に行きたいと思います。

建て替え前の最後の展覧会です。ブリヂストン美術館にて「ベスト・オブ・ザ・ベスト」展がはじまります。



「ベスト・オブ・ザ・ベスト」@ブリヂストン美術館(1/31~5/17)

石橋美術館とブリヂストン美術館より「選び抜かれた」(リリース)より160点が紹介される展覧会。印象派からフォーブ、キュビズム、抽象、さらには戦後日本の洋画までが揃います。豪華なラインナップになることが予想されます。

なおビル建て替えについては詳細なアナウンスがまだありませんが、少なくとも工事は数年にわたって行われるそうです。まさに休館前の見納めということになりそうです。

それでは2月も宜しくお願いします
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「岡田美術館所蔵 琳派名品展」 日本橋三越本店新館7階ギャラリー

日本橋三越本店新館7階ギャラリー
「岡田美術館所蔵 琳派名品展~知られざる名作初公開」
1/21-2/2



日本橋三越本店新館7階ギャラリーで開催中の「岡田美術館所蔵 琳派名品展~知られざる名作初公開」を見て来ました。

一昨年に箱根にオープンした日本・東洋美術の殿堂こと岡田美術館。そういえば建物の正面にはかの宗達の「風神雷神図」を模した巨大な壁画もありました。

「大観・春草・御舟と日本美術院の画家たち」 岡田美術館(はろるど) *昨秋に岡田美術館へ行ってきた時の記事です。


俵屋宗達「明石図」(源氏物語図屏風断簡)  江戸時代前期

岡田美術館の琳派コレクションを展観します。出品は43件。粒ぞろいです。また岡田美術館の所蔵品が館外でまとめて公開されること自体が初めてでもあります。

冒頭は琳派前史、長谷川派です。「浮舟図屏風」は源氏の宇治十帖に由来するもの。波間に浮かぶ小舟の上には男女が寄り添います。艶かしい。もちろん二人は匂宮と浮舟です。

「柳橋水車図屏風」の状態が良いことに驚きました。中央には大きな橋がかかり、その前で柳の枝が緑色の葉をのばしています。柳はほぼ下から間隔を空けて立っていますが、一番左のみ上から垂れていて変化もあります。水車は左隻の橋の下です。金箔から眩い光が放たれています。

衣装の精緻な描写が光ります。「誰が袖図屏風」です。お馴染みの遊里の室内空間、桁には男女の着物が一見無造作にかけられています。右隻は帯でしょうか。その意匠が実に細かい。紅葉が朱色に染まっています。


俵屋宗達・本阿弥光悦「柳に波下絵和歌色紙 ほととぎす」 江戸時代初期

「花卉に蝶摺絵新古今和歌巻」が絶品でした。公開されていたのは下絵に竹の並ぶ場面です。左手は藤でしょうか。花が垂れています。光悦の書は軽快、それでいてどこか幽玄な雰囲気をも漂わせています。はじめに紙師が10枚の色変わり紙を繋ぎ、次いで宗達が下絵を描き、最後に光悦が和歌20首を散らす。巻物は現在に至るまで一度も切り離されたことはありません。珍しいことだそうです。

宗達では「白鷺図」と「烏図」も見応えありました。右に白鷺、左に烏が対になって並ぶ二点の軸画です。たらし込みや掠れなど墨の絶妙な技を駆使しています。


尾形光琳 「菊図屏風」 右隻 江戸時代前期

そして光琳です。一際大きな「菊図屏風」が目を引きます。群れるのは大輪の菊です。右から左、あるいは左から右へと余白を活かしてリズミカルに配されています。また花は胡粉で盛られ、さもパターン化しているように見えますが、一部は裏向きになっているのもありました。中央部は白砂でしょうか。横にうっすらと銀色を帯びた色面がのびています。


酒井抱一 「月に秋草図屏風」  江戸時代後期

抱一では「檜に啄木鳥」と「紅梅に鴛鴦図」が印象に残りました。二点ほぼ同じサイズ、やや大きめの軸画ですが、表現に隙はなく、かの十二ヶ月花鳥図の連作を彷彿させるものがあります。また「月に秋草図屏風」も興味深い一枚です。右上には半月、下にはオミナエシやキキョウなどの得意のモチーフが描かれています。そしてススキは全体的に上へ向かって直線的にのびています。確かに抱一一流の情感深い作品ではありますが、どこか全体のバランス感、安定した構図を志向しているようにも見えました。

素晴らしいのは其一の「木蓮小禽図」です。下からすくっとのびる木蓮、花はワイン色に染まっています。筆致は思いの外に素早く、所々絵具が掠れているところもあります。岡田美術館で見た御舟の「木蓮」を思い出しました。かなり似ています。ひょっとすると本作を御舟が参照したのかもしれません。

ラストは近代への展開です。雪佳の「燕子花図屏風」に御舟の「桃梨交枝」、そして又造の「初月屏風」へと続きます。特に又造が大変な力作です。細く鋭く尖った三日月を頂点に荒れ狂う波。そこへ赤や青の山が折重なります。ススキは截金でしょうか。技巧も見事です。躍動感と装飾性を兼ね備えていました。

事前に混んでいると耳にしていたので、平日の夕方以降、閉館1時間前を狙って出かけました。おかげで会場内は比較的スムーズでしたが、それでも最終入場時間まで続々と人がやって来ました。


伝尾形光琳「椿若松蒔絵硯箱」 江戸時代

会期も残すところあと3日です。ラストの土日、特にお昼の時間帯はかなり混み合うのではないでしょうか。余裕をもってお出かけ下さい。


デジタル復元された俵屋宗達の「風神雷神図屏風」。店内本館1階玄関前。撮影が出来ました。

なお本展と直接関係ありませんが、2月20日(金)に抱一研究でお馴染みの玉蟲敏子先生の講演会があるそうです。

[京都創生連続講座 in 東京] 琳派400年記念セミナー
前半:朗読「伊勢物語~琳派の愛した王朝文学~」
   山根基世(元NHK アナウンサー)
後半:講演「生きつづける光琳」
   玉蟲敏子(武蔵野美術大学教授)
開催日時:2月20日(金)17:00~19:00
会場:野村コンファレンスプラザ日本橋6階大ホール
住所:中央区日本橋室町2-4-3 日本橋室町野村ビル6階

入場は無料。定員300名の事前申込制です。(締切は2/6)。申込など、詳しくはセミナーのWEBサイトをご覧下さい。

「鈴木其一 (ToBi selection)/河野元昭/東京美術」

2月2日まで開催されています。

「岡田美術館所蔵 琳派名品展~知られざる名作初公開」 日本橋三越本店新館7階ギャラリー
会期:1月21日(水)~2月2日(月)
休館:1月1日
時間:10:00~18:30(19時閉場)
 *最終日は17:00(17:30閉場)まで開場。
料金:一般・大学生800円、高校・中学生600円、小学生以下無料。
 *三越M CARD、伊勢丹アイカードなどを提示すると本人と同伴1名が無料。
住所:中央区日本橋室町1-4-1
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線三越前駅より直結。東京メトロ銀座線・東西線日本橋駅B11出口より徒歩5分。都営浅草線日本橋駅より徒歩5分
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「クインテット2ー五つ星の作家たち」 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館

東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
「クインテット2ー五つ星の作家たち」
1/10-2/15



損保ジャパン日本興亜美術館で開催中の「クインテット2ー五つ星の作家たち」を見て来ました。

「将来有望な作家たちを紹介する」(公式サイトより)クインテット展。5名の作家の表現を響きあう様を5重奏、つまりはクインテットになぞらえます。いわゆる現代美術家の作品を会場内にて個展形式で展観しています。

[クインテット2展 出品作家]
富岡直子(1966年、神奈川県生まれ。)
平体文枝(1966年、石川県生まれ。)
岩尾恵都子(1968年、東京都生まれ。)
水村綾子(1969年、群馬県生まれ。)
山本晶(1969年、東京都生まれ。)

昨年に続いての第2弾企画です。出品は前回同様にいずれも女性、1960年代後半生まれの作家でした。

会場内、撮影が出来ました。(収蔵品コーナーは撮影不可。)


富岡直子「夜明け-daybreak」 2014年 アクリル・麻布・パネル ほか

さっと視界が開けてきます。「絵画に光=希望」(キャプションより)を見出して描くのは富岡直子です。確かに水平線から大空が立ち上がるかのような光景はどこか神々しくて美しいもの。彼方に望むのは雄大な山々でしょうか。水面に反射にして七色に灯る明かりも鮮やかです。上下反転するかのような光景です。空にはオーロラが靡いていました。


平体文枝「わたしひとりしかいない」 2014年 油彩・オイルスティック・キャンバス ほか

面と線との関係に面白さを感じました。平体文枝です。例えば上の画像左の「わたしひとりしかいない」はどうでしょうか。地は深い藍色や緑のグラデーションです。そこに紫がかった白のストロークが素早く交差していますが、その上からさらに黄色の線が縦へとのびています。そして線はさも書のように掠れてもいます。また良く見ると線は単純に縦方向ではなく、横にも筆触がのびていることも分かりました。


平体文枝「池のおもてをみつめていると」 2012年 油彩・オイルスティック・キャンバス

「池のおもてをみつめていると」も魅惑的な一枚です。地の薄い水色はそれこそ池の水面かもしれません。そこへ上から枝のような線が垂れています。もちろんこれは必ずしも枝ではないかもしれませんが、こうした抽象的な線が枝のような具体的なイメージと重なっているようにも見えます。

やや雰囲気が異なるのが岩尾恵都子です。闇を背景にして浮かびあがるのは大きな山。山肌は荒々しく、しかも色はオレンジやグリーンに染まっていて輝かしい。宝石の煌めきとも言えるでしょうか。ともかく眩い光が放たれています。


岩尾恵都子「ロボット」 2014年 油彩・キャンバス ほか

そして特徴的なのはいずれも山に長い睫毛をした目が描かれていることです。山に生命が宿っているようでもあります。


山本晶「cut」 2012年 油彩・キャンバス

透明感のある色彩も効果的です。山本晶です。薄い芝色や淡い紫が何層にも重なり、そこへ黄色や白が入り込んでいく。面は丸みを帯びつつも、時に鋭い角を描いて図形的にも表されています。矢印のモチーフもありました。また塗る際にマスキングテープを用いているのでしょうか。目を凝らすと所々、絵具が直線的に切れているようにも見えました。


水村綾子「phrase」 2014年 油彩・キャンバス

水村綾子の最近のテーマは「音」だそうです。絵具は大気の充満するかのようにキャンバスに満ちています。そして特徴的なのが随所に見られる斑点です。それがポツポツと連続して繋がっています。

何かキャンバスをコツコツと打つかのように続く斑点。これが「音」の痕跡なのでしょうか。また曲線を多用したモチーフは有機的でもあります。


平体文枝「二十五景」 2014年 シルクスクリーン・紙

前回展よりもさらに色味の繊細な作品が多いかもしれません。色は染み、滲み、広がり、また重なり合い、それがいつしか心象風景と化して、時には見る者の心を投影します。


「クインテット2」会場風景

お気に入りの色、風景を探しながら、会場を見て歩くのも楽しそうです。

2月15日まで開催されています。

[お知らせ]
「クインテット2」展のチケットが若干枚数手元にあります。先着順にてお一人様ペアで差し上げます。ご希望の方は件名に「クインテット2展チケット希望」、本文にフルネームでお名前とメールアドレスを明記の上、拙ブログアドレス harold1234アットマークgoo.jp までご連絡下さい。(アットマークの表記は@にお書き直し下さい。)なお迷惑メール対策のため、携帯電話のアドレスからはメールを受け付けておりません。ご了承下さい。

「クインテット2ー五つ星の作家たち」 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
会期:1月10日(土)~2月15日(日)
休館:月曜日。但し1/12は開館。翌13日も開館。
時間:10:00~18:00 毎週金曜日は20時まで。 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般500(400)円、大学・高校生300(200)円、中学生以下無料。
 *( )は20名以上の団体料金。
住所:新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン日本興亜本社ビル42階
交通:JR線新宿駅西口、東京メトロ丸ノ内線新宿駅・西新宿駅、都営大江戸線新宿西口駅より徒歩5分。
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「3.11大津波と文化財の再生」 東京国立博物館

東京国立博物館・本館特別2室・4室
「3.11大津波と文化財の再生」
1/14-3/15



東京国立博物館・本館特別2室・4室で開催中の「3.11大津波と文化財の再生」を見て来ました。

今年の3月で発生から4年となる東日本大震災。かの大地震に大津波と原発事故。その痛ましい記憶は未だ頭から離れることもありません。


被災後の陸前高田市博物館(2011.3)

3.11の津波によって被災した文化財の修復がテーマです。出品資料のほぼ全ては津波で市内中心部が壊滅的な被害を受けた陸前高田の文化財でした。

冒頭は時計です。3時27分前後をさして止まっています。津波の到達時間なのでしょう。地震からおおよそ40分後。時計の置かれていた部屋の写真もパネルで紹介されていましたが、見るも無惨なほどに破壊されています。かの津波の恐ろしさを物語っています。


紙資料に付着した汚れと塩分を洗浄して取り除く(2012.2)

土偶や土器などの考古資料が目立ちます。被災直後は文化財が瓦礫と混雑した状態です。まずは救い出すことが先決です。そして泥をとったり脱塩するなどの「安定化処理」を行い、その後に本格的な修理を施していきます。


石碑拓本掛軸を解体した後に本紙を洗浄(2011.12)

江戸時代後期をルーツとする高田歌舞伎に関する資料もありました。「絹地染小紋型長着」は町方の歌舞伎の際に着た衣装です。これも波を被ってしまいましたが、仕立て糸を一部解いては解体し、裏から布で補強して修復したそうです。


吉田家文書に真空凍結乾燥処理を行う(2011.5)

吉田家文書も重要です。吉田家とは江戸時代に気仙一帯の行政を担っていた家のことです。文書には同時代を伝える貴重な地誌が記されていましたが、津波で流出こそ免れたものの、多くが海水に浸かってしまいました。

そのうちの「高田村絵図」にはかつて国の名勝でもあった高田松原も描かれています。そして松原も津波で根こそぎ流されてしまいました。その後、唯一のこった松が「奇跡の一本松」として呼ばれたのはよく知られているところです。


「青い目の人形」 20世紀 陸前高田市立気仙小学校

海に面した街のゆえでしょう。漁撈道具が多く出ています。そのほかにはアメリカから市内の小学校へ贈られた「青い目の人形」も目を引きました。人形は泥に埋もれ、小学校から流出した金庫の中から見つかります。こびり付いた一粒一粒の砂を顕微鏡を覗きながらピンセットで取り除いたそうです。修復には多大なる労力があることを伺い知れます。


昆虫標本の修復作業(2011.8)

被災状況を保存するためにあえて残された資料もありました。「昆虫類ドイツ標本箱」です。言うまでもなく虫の標本箱、修復前のものはドロドロでもはや原型を留めていません。隣に並ぶのが修復後です。すっかりきれいに整理されていました。

本館の正面階段には陸前高田の博物館で被災した「リードオルガン」も展示されています。


「リードオルガン」 明治末期~大正初期 陸前高田市立博物館

このオルガンも瓦礫に埋もれてしまったものです。部品の取り替えは最小限にとどめ、錆を除去。汚れを筆で丁寧に取り除いています。(被災時の姿がパネルで掲載されています。)


「実習船 かもめ」 昭和時代 陸前高田市立博物館

本館入口前の一隻の船に目が留まりました。名は「かもめ」、陸前高田高校の実習船です。津波にさらわれた後、太平洋を彷徨い続け、何と二年後になってカリフォルニアに漂着しました。ちなみに漂流時に付着した貝類の一部は後に標本として陸前高田に収蔵されたそうです。

展示の内容が昨年に江戸東京博物館で行われた「平成の大津波被害と博物館」と重複する部分もありました。

「2011.3.11 平成の大津波被害と博物館ー被災資料の再生をめざして」@江戸東京博物館(はろるど)

震災から4年。被災資料を全て修理するには今後10年かかるとも言われているそうです。修復はまさに今も続いています。毎年どのような形であれ、修復の仕事を世に伝えていくことが重要だと言えそうです。

いわゆる常設展内での展示です。総合文化展料金で観覧出来ます。(みちのくの仏像展のチケットでも観覧出来ます。)

3月15日まで開催されています。

「3.11大津波と文化財の再生」 東京国立博物館・本館特別2室・4室(@TNM_PR
会期:1月14日(水)~3月15日(日)
時間:9:30~17:00。但し3月6日(金)と3月13日(金)は20時まで開館。
休館:月曜日。
料金:一般620(520)円、大学生410(310)円、高校生以下無料。
 *( )は20名以上の団体料金。
 *「みちのくの仏像」展チケットで観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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「みちのくの仏像」 東京国立博物館

東京国立博物館・本館特別5室
「みちのくの仏像」
1/14-4/5



東京国立博物館・本館特別5室で開催中の「みちのくの仏像」を見て来ました。

東北6県に伝わる仏像を紹介する展覧会です。平安時代(9世紀)から江戸時代(17世紀)まで、いわゆる東北三大薬師(*)を含む、全19躯の仏像が展示されています。

一面を覆う鑿の跡に驚きました。岩手・天台寺の「聖観音菩薩立像」です。


重要文化財「聖観音菩薩立像」 平安時代・11世紀 岩手・天台寺

手や腕、顔を除いた身体のあちこちに鑿の跡が残されています。全て横向き、幅もほぼ一定です。規則正しく紋様を描く様は思いのほかに美しいもの。経典に「仏像を刻む鑿の音は功徳がある。」と言い伝えられていることから、それを半ば視覚化するために残されたとも考えられているそうです。

東北へ仏教が伝わったのは8世紀の半ばです。仙台に国分寺が置かれ、土着の神を取り込みながら独自の深化を遂げていきます。また山形の寒河江に藤原氏の荘園があったことから、当地では慶派といった都の仏師も活動しました。


国宝「薬師如来坐像」 平安時代・9世紀 福島・勝常寺

一木造も東北の仏像の特徴です。その中でも特に充実しているのが、福島・勝常寺の「薬師如来坐像」ではないでしょうか。東京では15年ぶりの公開です。堂々たる姿、ただし表情は心なしか穏やかです。おそらくは奈良の仏師が制作したと言われています。


重要文化財「薬師如来坐像」 平安時代・貞観4年(862) 岩手・黒石寺

三大薬師のもう一つ、岩手・黒石寺の「薬師如来坐像」も印象に残りました。目はやや釣り上がり、表情は険しい。威厳に満ちています。制作は862年です。7年後に東北を貞観地震が襲いました。そして振り返れば東日本大震災も貞観地震の再来と言われています。その時は台座からあと少しで落ちるところだったそうです。つまり二度の大地震を経験した仏像でもあります。

震災で被災した仏像も出ていました。宮城・双林寺の「二天立像」です。地震で「持国天」が転倒。「薬師如来坐像」の左腕に衝突し、ともに破損してしまいました。修復には2年かかったそうです。


「聖観音菩薩立像」 平安時代・10世紀 秋田・小沼神社

不思議な出立ちの仏像と出会いました。秋田・小沼神社の「聖観音菩薩立像」です。肩ははっているものの、総じて細身で、腰はかなりくびれています。またどこか親近感を抱くようなお顔立ちも個性的ですが、ともかくは頭の上のコブに注目です。というのも可愛らしいおかっぱの子どものような像がのっています。キャプションにも記載がありましたが、確かに雪童子、ようは雪ん子のようでもありました。

一際大きな仏様です。宮城・給分浜観音堂の「十一面観音菩薩立像」は高さ3メートル近くもあります。

くっきりとした目鼻立ちです。下から見上げると逞しいまでの風格を感じますが、この仏像はそもそも牡鹿半島から海を見下ろす形で安置されていました。

仏像のあったお堂は海岸から僅か100メートルほどに過ぎません。ただし高台のために津波の被害を免れました。なお震災時には、お堂へ多くの人々が避難してきたそうです。


「釈迦如来立像」 円空作 江戸時代・17世紀 青森・常楽寺

円空仏が3躯出ていました。彼が東北の地にやって来たのはまだ30代。仏像の制作を始めた頃です。後期の荒々しい作風とは異なり、造形は細かく、表面も平に整えられています。ただそれでもお顔は笑みを浮かべています。円空仏ならではの和やかな表情をしていました。

素朴ながらも味わい深い東北の仏様。険しさの中にも親しみを感じるのは何故のことなのでしょうか。また鑿の痕跡や木目を活かした作品も多く、作り手の素材の木に対する強い関心、意識も垣間見えました。



展覧会が始まってからまだ1ヶ月も経っていませんが、会場内は予想以上に賑わっていました。

*東北三大薬師
黒石寺(岩手県)、勝常寺(福島県)、双林寺の「薬師如来像」。いずれも一木造。一つの会場で展示されるのは今回が初めてだそうです。

本館の手狭な特5室での展示です。ひょっとすると後半はかなり混雑してくるかもしれません。早めの観覧をおすすめします。

「みちのくの仏像/別冊太陽/平凡社」

4月5日まで開催されています。

「みちのくの仏像」 東京国立博物館・本館特別5室(@TNM_PR
会期:1月14日(水)~4月5日(日)
時間:9:30~17:00。但し3月6日(金)~4月3日(金)の金曜日は20時まで、4月4日(土)、5日(日)は18時まで開館。
休館:月曜日。但し3月23日(月)、30日(月)は17時特別開館。
料金:一般1000(900)円、大学生700(600)円、高校生400(300)円。中学生以下無料
 *( )は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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大分県立美術館(OPAM)が2015年4月24日に開館します

国内での県立美術館の新設は2006年の青森県立美術館以来のことです。2015年4月24日(金)、大分市に大分県立美術館、略称OPAM(オーパム。Oita Prefectural Art Museum)が開館します。


[大分県立美術館 OPAM(Oita Prefectural Art Museum)]
http://www.opam.jp/
@OPAM_OPAM

場所はJR大分駅北口より徒歩15分ほどの寿町。市役所や県庁の立ち並ぶ昭和通り沿いです。大分県立総合文化センターことiichiko総合文化センターの向かいに位置します。


大分県立美術館 OPAM イメージ図

建物の設計は坂茂。近年ではポンピドゥー・センター・メスの設計を担当したほか、阪神大震災や東日本大震災の復興支援活動でも知られた建築家です。2014年には建築の国際的な賞であるプリツカー賞を受賞したことでも話題となりました。

館長は新見隆です。武蔵野美術大学の教授をつとめ、かつては西武美術館やセゾン美術館で様々な展覧会を手がけた人物でもあります。


©Hiroyuki Hirai

建物自体は既に昨年冬に完成。11月には「OPAM誕生祭」として一般市民にも開放されました。その際には完成記念式典のほか、坂茂氏や新見館長の講演なども行われ、多くの人で賑わったそうです。

「県民の皆さんに、自由に建物の使い方を提案してもらいたい。建物がパーマネント(永久)になるか仮設に終わるかは、人々に愛されるかどうかで変わってくる。」坂茂(大分合同新聞「OPAM設計者・坂氏が語るコンセプト」より)

美術館の敷地面積は13595平方メートルで建物面積は16769平方メートル。うち展示部門の延べ面積は3883平方メートルです。一概に比較は出来ませんが、東博の本館の建築面積が6602平方メートル(展示面積は7346平方メートル)であることを鑑みると、その大きさの一端が伺い知れるのではないでしょうか。

外観は箱型、上部のデザインは大分の伝統的な竹工芸をイメージしています。これは地元の杉を用いているそうです。単なる飾りではなく、ギャラリーを支える構造物も兼ねています。

隣接するオアシスひろばとは屋根付きのデッキで接続しています。さらには大通りに面した南側では水平の折り戸を開閉することで、街路と一体感を得られるような構造となっています。


©Hiroyuki Hirai

館内は展示室のほか、自由に出入り可能なアトリウム、カフェ、情報コーナーやミュージアムショップも併設。展示室自体もかつての大分県立芸術館の3倍を確保しています。また室内に可動壁を設置し、アトリウムと一体となった運営も可能です。西洋絵画展から現代アート展までの幅広い展示を行うことが出来ます。

さらにアトリエや研修室などを整備し、若手芸術家の育成を行うとともに、いわゆる生涯学習施設としての機能も果たしていくそうです。

[大分県立美術館(OPAM)メインコンセプト]
・「五感で楽しむことができる」美術館
 様々な視点、感覚を通して、感性や創造性に訴え、訪れる人が五感で楽しむことが出来る美術館を目指します。
・「自分の家のリビング」と思える美術館
 美術館というと敷居の高いイメージがありますが、来館者が自宅のリビングにいるかのような、気軽に立ち寄れる美術館を目指します。
・「県民とともに成長する」美術館
 次代を担うこどもたちから高齢者まで、すべての年齢層の県民と一緒に成長する美術館を目指します。

オープニングを飾るのは「モダン百花繚乱『大分世界美術館』」です。桃山時代の楽茶碗からターナー、ピカソ、福田平八郎に高山辰雄、それに宇治山哲平など、和洋も時代も様々な美術品を5つのコンセプトの元に展示します。

「モダン百花繚乱『大分世界美術館』展示構成]
・モダンの祝賀
・死を越える生・咲き誇る生命
・日常の美 世界を映すもの・かたち
・画人たちの小宇宙
・視ることの幸福

国内外の美術館ないし、大分を象徴する同館のコレクション全200点をあわせ見ることで、大分の文化土壌を再発見し、さらに異なる文化を見知ることの意義を問う内容となるそうです。


©Hiroyuki Hirai

さらに開館記念展に引き続き、2015年度には以下の展覧会の開催も予定されています。

[大分県立美術館 年間スケジュール]
開館記念展 vol.1
「モダン百花繚乱『大分世界美術館』」
ー大分が世界に出会う、世界が大分に驚く「傑作名品200選」
会期 : 2015年4月24日(金)~7月20日(月・祝)

「『描く!』マンガ展」
マンガの今、マンガの明日
会期(予定):2015年8月1日(土)~9月23日(水・祝)

「第51回 大分県美術展」
主催:大分県美術協会
会期(予定):2015年9月29日(火)~10月18日(日)

開館記念展 vol.2
「神々の黄昏」
ー東西のヴィーナス出会う世紀末、心の風景(けしき)、西東
会期(予定):2015年10月31日(土)~2016年1月24日(日)

「シアター・イン・ミュージアム」
ライブ満載、ダンス満載、踊るミュージアム
会期(予定):2016年春

特筆すべきは、少なくともここにはいわゆる巡回展がないことです。つまり全て大分発の展覧会です。また大分県には県立美術会館が長らく蒐集して来た5000点もの美術品があります。それを活用した展覧会を意欲的に行っていくそうです。

「大分の優れた伝統と国内外の素晴らしい美術品を出会わせて新しい価値を生み出すこと。それが新しい美術館の使命である。」新見隆(OPAM Communication Paperより)

またアトリウムや3階屋外でも様々な展示が行われます。

「開館記念展・展覧会 アトリウム展示・3階屋外展示のご案内」@OPAM 大分県立美術館


マルセル・ワンダース「ユーラシアの庭」のためのデザイン構想図 2014年

アトリウムの西側スペースは現代美術家のミヤケマイさんの担当です。大分発のプロジェクト「世界は届けい・セカイハトドケイ」をテーマにしたインスタレーションを展示します。

開館まで残すところあと約100日です。それにあわせて美術館のプロモーションビデオが新たに公開されました。

コンセプトは「五感のすべてで感じ、心が遊び踊り出す。ここは、踊るミュージアム。」演出はクリエーターの桐島ローランド。パフォーマンスを披露するのは大分県出身のバレーダンサー首藤康之です。

大分県立美術館(OPAM)プロモーションビデオ「踊るミュージアム」


美術館の中を静かに進んでは時に力強く踊り出す首藤さん。館内の雰囲気も伝わるのではないでしょうか。ラストに降る雪は何と本物だそうです。

ちなみに市内には大分出身の磯崎新の設計の建物(アートプラザ、大分市情報学習センター、豊の国情報ライブラリーなど)がいくつも存在します。また坂茂もかつて磯崎のアトリエに在籍したことがありました。

その坂茂が国内の公立美術館として初めて手がけたのが大分県立美術館です。建築の観点からも注目すべき美術館、磯崎の作品とあわせて見るのも面白いのではないでしょうか。


©Hiroyuki Hirai

大分から全国へ向けて新たに美術を発信する場となる大分県立美術館。2015年4月24日(金)に「モダン百花繚乱『大分世界美術館』」展でオープンします。

[大分県立美術館 概要]
所在地:大分市寿町2-1
交通:JR線大分駅から徒歩約15分。
建築設計:株式会社坂茂建築設計
構造:鉄骨造・一部鉄筋コンクリート造
工期:平成25年4月~平成26年10月
敷地面積:13595平方メートル
建物面積:16769平方メートル
URL:http://www.opam.jp/op/

[問合せ先]
公益財団法人 大分県芸術文化スポーツ振興財団
住所:〒870-0036 大分市寿町2-1
電話:097-533-4500
ファックス:097-533-4567
メール:info@opam.jp

大分県企画振興部 芸術文化スポーツ局県立美術館推進室
住所:〒870-8501 大分市大手町3-1-1
電話:097-506-2083
ファックス:097-506-1725
メール:a10930@pref.oita.lg.jp
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「塩保朋子 Cosmic Perspective」 SCAI THE BATHHOUSE

SCAI THE BATHHOUSE
「塩保朋子 Cosmic Perspective」 
1/16-2/21



SCAI THE BATHHOUSEで開催中の「塩保朋子 Cosmic Perspective」を見て来ました。

1981年に生まれ、近年では「MOTアニュアル2010」(東京都現代美術館)のほか、「コズミック・トラベラーズ」(エスパス・ルイ・ヴィトン東京)などにも出品している現代美術家、塩保朋子。

私が塩保の作品を初めて知り、そして惹かれたのも、ここ谷中のスカイザバスハウスのことでした。

「塩保朋子 - Cutting Insights」 SCAI(はろるど)

同ギャラリーでは2008年以来の個展かもしれません。出品は約8点。うち奥の1点は大作です。天井高のあるSCAIの空間を活かしたインスタレーションを展示しています。

いわゆる切り絵の手法を用いての作品です。暗室の壁面でとぐろを巻くかのように広がっています。ほぼ円を描きながらも、一つの方向へはさも鳳凰が羽根を靡かせるようにのびている。まるで生き物です。そして目を凝らせばもちろん精緻、しかしながら全体のイメージは力強くもあります。白く渦を巻く姿は雲のようにも見えました。



近づくと細かく切り刻まれたデティールが際立ちました。葉脈や細胞の増殖などをイメージしているそうですが、私はどこか気泡、あるいは水の泡を連想しました。一方で糸を繋ぎ合わせたような独特の風合いもある。後ろが透けてもいます。また密でありながら粗である部分もあり、パターンは必ずしも一定ではありません。それに引きの景色と近づいた時に開ける景色が別物です。表情は多様、立ち位置を変えると異なって見えました。

足元の床もポイントです。淡い木漏れ日の差し込んだような斑紋が広がっています。

一瞬、壁の作品の影を見せているのかと思いましたが、実際には天井から吊るされた映像でした。垂直(壁)と平面(床)を呼応させては一つの空間を作り上げる手法、インスタレーションとしても洗練されています。

それにしてもこの細かな彫刻、一体どれほどの手仕事を得て完成されるのでしょうか。想像もつきません。

「MOTアニュアル2010」の際に収録されたインタビューがyoutubeに残っていました。

MOTアニュアル2010:装飾 塩保朋子 インタビュー


作品の制作について本人が語っています。鑑賞の参考となりそうです。

2月21日まで開催されています。おすすめします。

「塩保朋子 Cosmic Perspective」 SCAI THE BATHHOUSE
会期:1月16日(金) ~2月21日(土)
休廊:日・月・祝。
時間:12:00~18:00
住所:台東区谷中6-1-23
交通:JR線・京成線日暮里駅南口より徒歩6分。東京メトロ千代田線根津駅より徒歩7分。
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「中島崇 raw fancyー生の空想」 Kosmos Lane Studio & Gallery

Kosmos Lane Studio & Gallery
「中島崇 raw fancyー生の空想」
2014/12/20-2015/1/18(会期終了)



Kosmos Lane Studio & Galleryで開催中の中島崇個展、「raw fancyー生の空想」を見て来ました。

代々木上原駅より徒歩10分超のコスモス通り沿いにあるギャラリー、「Kosmos Lane Studio & Gallery」。

10人も入ればいっぱいになってしまうほどに小さなスペースでしたが、鮮やかに、そして軽やかに宙を舞うカラフルなリボンは端的に美しい。天井から曲線を描いては釣り下がる色の世界、光を受けては色を室内に照らし出します。まるで色の付いた密林を歩いているようでした。



作家の中島崇は1972年の生まれです。1994年に桑沢デザイン研究所の写真研究科を卒業。都内のギャラリーでの個展やグループ展に参加して活動を続けています。

実のところ作家の名を知ったのは今回が初めてでしたが、過去展の画像に当たると、作品自体は見ていたことに気がつきました。

「中島崇 煙の樹」@アーツ千代田3331 2013/10/2-2014/6/22

それが昨年のアーツ千代田で行われた「煙の樹」です。1階のカフェレストランのスペースにて煙をテーマにしたインスタレーション、白い帯が空間を自在に駆けては広がります。まさに煙がゆらゆらと靡くかのような姿をしていたことを覚えています。

「中島崇|現代美術家」(作家サイト)

中島はそのほかにも昨年、神田のトランス・アーツ・トーキョーにも「輪照ラス」を出品。さらにアートラインかしわ2014や恵比寿三越の玄関を飾るインスタレーションなども手がけました。

「中島崇 colorful blank」@柏高島屋ステーションモールS館(アートラインかしわ) 2014/9/30-10/27

今回は一つのギャラリーでの個展でした。いわゆるパブリックアート的なものではなく、空間内部で完結した作品ではあります。



ただそれでも窓の外の光を取り込んでは映える色の演舞は思いの外に心地良いもの。リボンは一見、ランダムに広がっているようにも思えますが、随所で図形が浮かび上がるようでもあり、どこか幾何学的な構成を意識していることも見て取れます。

「空間を抽象化していき、生の空想を具現化させた展示」 中島崇 *展覧会DMより

あくまでも空想に過ぎませんが、例えば抽象絵画の中に身を置いて、色のストロークを三次元化して眺めるとこのように見えるのかもしれません。鮮やかに透ける色へ身体を重ねてはしばし楽しみました。


Kosmos Lane Studio & Gallery

展覧会は終了しました。

「中島崇 raw fancyー生の空想」 Kosmos Lane Studio & Gallery
会期:2014年12月20日(土)~2015年1月18日(日)
休館:月曜日。年末年始(12月28日~1月5日)。
時間:10:00~19:00。
料金:無料。
住所:渋谷区上原2-29-6
交通:京王井の頭線駒場東大前駅より徒歩10分。小田急線・東京メトロ千代田線代々木上原駅より徒歩12分。
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「ヂョン・ヨンドゥ 地上の道のように」 水戸芸術館

水戸芸術館
「ヂョン・ヨンドゥ 地上の道のように」
2014/11/8-2015/2/1



水戸芸術館で開催中の「ヂョン・ヨンドゥ 地上の道のように」を見て来ました。

1969年に韓国・晋州に生まれ、同国のほか、MoMAでも個展を開くなど、世界的に活動を続ける現代作家、ヂョン・ヨンドゥ。日本では2013年の「アーティスト・ファイル展」にも出展がありました。

また旧作において水戸の高校生をモデルにするなど、かねてより日本、ひいては水戸とも関わりを持つ作家だそうです。

そのヂョンが改めて水戸に滞在し、当地の人々とのコミュニケーションを踏まえて行ったのが、今回の個展、「地上の道のように」です。

出品は写真、映像ほか、3Dデバイス型で鑑賞する体験型インスタレーション、計14点です。会場内、携帯電話とスマートフォンのみ撮影が出来ました。


「思春期」 2010-2011年 特殊紙にインクジェットプリント

まず冒頭、まるで西洋絵画展のような光景が目に飛び込んできます。「思春期」です。暗がりの夜の屋外、キャンプファイヤーでしょうか。炎を囲んでは暖をとる人の姿が写されています。さもカラヴァッジョやラ・トゥールを思わせる光の陰影。まさに絵画のようですが、実のところ写真でした。そして写真という実景ながらも、どこか芝居がかった舞台の一コマを見ているような趣きもあります。絵画のようで絵画ではなく、実景のようで、非現実的な空間にも見える。漠然とした違和感を覚えながら次の展示室へと進みました。

すると映像です。タイトルは「シックス・ポイント」。横に長いスクリーンです。ニューヨークの街の姿が映し出されていました。


「シックス・ポイント」 2010年 Video(28分44秒)

ただしここでも奇妙な感覚を覚えてなりません。と言うのも、リアルな街にも関わらず、どこかこの世ならざる、非現実的な街を見ているような印象があるのです。そもそもこの街は実際に一本の道路で繋がっているのでしょうか。(答えは解説シートにありました。)また映像にも関わらず、人は一切動いておらず、影のみがただ右から左へと動く。さらに手前の道路と奥の建物が切り離されているようにも見えます。

現実と非現実がない交ぜになったような街の光景、果たしてこの街は本当にニューヨークにあるのかという問いが頭から離れることはありません。言ってしまえば書き割りのようでもありました。


「奥様は魔女」 2001年 マルチスライドプロジェクション

さてヨンドゥは常に人とコミュニケーションをとって制作を続ける作家です。その一つの表れが「奥様は魔女」と題されたスライドでしょう。ここではモデルによる現実の自分と理想の自分を交互に見せています。つまりまず先にモデルの現実の姿をありのままに写し、次いで本当に就きたい職業などに演じた姿を捉えているのです。


「奥様は魔女」 2001年 マルチスライドプロジェクション

この夢に扮した姿こそがヨンドゥの作り上げた虚構ですが、それが本来的に実現していないという点においては、今の現実を半ば痛烈にまで突きつけているとも言えます。ようは夢の姿に扮していても、実際は違っている。少なくともここでは夢は映像の中でしか成り立ち得ない。そう簡単に夢は実現し得ないということを表しているとも受け取れるわけです。


「日常の楽園#2(ソウル)」 2010年 Video(26分31秒)

夢を見ることで逆に現実を知ることが出来る。ヨンドゥは何もユートピアのみを見せているわけではありません。その意味では映像の「日常の楽園」も、現実と虚構、空想がない交ぜに提示した作品と言えるのではないでしょうか。


「日常の楽園#2(ソウル)」 2010年 Video(26分31秒)

二面のモニターにはソウルとシンガポールが何気ない街角が映されていますが、次第にそこへ人の手によって無数の小道具が設置され、いつしか全く原型を留めない「楽園」と化します。ただしこれも書き割りに過ぎません。「楽園」のアイデアこそヨンドゥが対話を重ねた人物から採用されたそうですが、結果完成した「楽園」のモニターの外には何ら変わらない現実がまた広がっています。見たいもの、夢は果たして得られるのか。そんな問いをヨンドゥが発しているようにも思えました。


「ドライブ・イン・シアター」 2014年 ミクストメディア

とは言え、少なくとも写真や映像上において、ヨンドゥはまるで手品を繰り出すように夢を見せてくれます。「ドライブ・イン・シアター」です。展示室内にはタクシーが一台置かれ、観客は運転席ないし助手席に座ることが出来ます。すると目の前のスクリーンに窓ガラス横の背景と自分の姿が重なって映ります。

つまりここではタクシーに乗り込む自分が映画の主人公になるわけです。巨大な駐車場に車を停めては中から映画を見るドライブインシアター、日本ではもう残っていないそうですが、その構造をそっくり借りつつ、見ているはずの映画の主人公に自分がなれるという仕掛けは端的に面白いもの。見ている自分と映画の自分は果たしてどちらが本物なのか。その辺も曖昧になってきます。

一方で映画をそのまま素材に利用した作品がありました。「卒業」、「東京物語」などと名付けられた二連の写真です。


「東京物語- B camera」 2013年 二連の写真

例えば「東京物語」は小津安二郎の映画からとられたもの。右にはさながら映画のワンシーンを映していますが、左はそのシーンを撮影する様子自体を映す、つまり撮影しています。ようは一つの場面を異なった二つのカメラで捉えているわけです。

ただし映画のワンシーンを捉えた写真と思っていた画面を横から見ると、本来の作品とは異なった書き割りで表現されていることが分かります。映画を言わば三次元的に再現しつつ、さらに再現した映画を異なった視点で見る。ともに現実であり、また虚構とも言えます。ちなみに「東京物語」は東日本大震災の被災地で撮影されたそうです。


「ブラザーフッド-B camera」 2013年 二連の写真

それに朝鮮戦争を主題とした韓国映画「ブラザーフッド」は北朝鮮との国境の非武装地帯で撮影されたとか。映画の舞台と再現の舞台が巧みに絡み合います。

ラストの3点はいずれもヨンドゥが水戸に滞在しや経験を元に制作された作品です。


「ワイルド・グース・チェイス」 2014年 Video(4分49秒)

ここでキーパーソンになるのが白鳥健二氏。水戸在住の全盲のマッサージ師です。白鳥氏は通勤時にほぼ毎日、自宅から仕事先をカメラで撮影しています。そのことを聞いたヨンドゥは、白鳥さんの写真を元にスライドショーを作成。彼が好きだという小曽根真のピアノをBGMに取り込んだ映像作品、「ワイルド・グース・チェイス」を完成させました。


「ワイルド・グース・チェイス」 2014年 Video(4分49秒)

目の見えない白鳥さんの写した写真、夜景では激しくブレ、昼間の景色でも指が写り込んでいたりします。しかしあえてそれをヨンドゥは映像に使用しています。

現実と非現実をない交ぜにして見せるヨンドゥ、それは白鳥さんのとの出会いから、見えることと見えないことの関係についても考えさせられることにもなったそうです。


「ブラインド・パースペクティブ」 2014年 ミクストメディア

その一つの結実であるのが3Dデバイスによる体験型インスタレーション、「ブラインド・パースペクティブ」と言えるでしょう。同館で最も細長い通路状のスペースに散るのは無数のゴミ。天井付近まで堆く積まれています。主に県内から集められたものだそうです。

海岸などで打ち上げられたゴミも多いのでしょうか。ひしゃげたビニールのパイプにロープ、それに浮きや梱包材のようなものも目につきます。そして床を見やれば黄色の点字ブロックがほぼ真っすぐに繋がっていました。


「ブラインド・パースペクティブ」 2014年 ミクストメディア

一目見て震災の瓦礫を思い出しました。ともかく生々しい。臭いこそありませんが、まさしくゴミの山、全ての素材は本来の機能を完全に失っています。

この通路を鑑賞者は歩くわけです。その際に3Dデバイスを頭につけます。するとどう見えるのか。驚きました。自然の「楽園」が広がっているではありませんか。


「ブラインド・パースペクティブ」 2014年 ミクストメディア

青空の下、岩山からは滝が落ち、水しぶきをあげながら小川が流れています。草原の向こうには山々が連なります。森を抜けると大きな湿地帯が開けてきました。まるで尾瀬です。ゴミはまるでなく、全てが自然、思わず深呼吸したくなってしまいます。もちろん人の気配もまるでありません。耳を澄ませば鳥のさえずりも聞こえてきました。


「ブラインド・パースペクティブ」 2014年 ミクストメディア

しかしデバイスを外せば目の前にあるのはゴミの山。しかも自然はあくまでもバーチャルに作られたもの、つまり虚構に過ぎないことが分かります。そして実はその自然もコンピューターで描かれたものです。リアルな自然ではありません。さらに足元からは点字ブロックのゴツゴツした感触が伝わります。にわかに現実に引き戻されました。

水戸との関わりを色濃く反映しているのは、ラストの映像「マジシャンの散歩」です。全50分超の超大作、導くのは一人の韓国人マジシャンです。


「マジシャンの散歩」 2014年 Video(53分)

映像は白鳥さんの家の前からはじまります。マジシャンはいわゆるエスコート役ということでしょう。白鳥さんを誘う形にて水戸の街を歩きます。その合間で街の人に語りかけ、また次々とマジックを披露します。途中でバスに乗り込みました。向かうは水戸中心部。ゴールは芸術館の近辺です。

はじめはマジックを含め、完全なるドキュメンタリーなのかと思いましたが、よく見ていると何かが違うことが分かりました。つまりここでも現実と非現実が混ざり合っているのです。マジックはもちろん種のあるものですが、それだけではありません。マジックも、彼の語りもが、周囲の現実を変化させていますが、そこにも何らかのフィクションが差し込まれています。


「マジシャンの散歩」 2014年 Video(53分)

また手品で扱われた素材と現実の光景が時に重なり合うのも面白いもの。突如マジシャンがカッコウの産卵の話をして、マジックで手の中に卵を出したと思い気や、カッコウの彫像が姿を見せる。すると近くの信号からカッコウの鳴き声が流れ出しました。マジックが現実に何らかの作用を与えているかの如く行われています。

ふと展示室を振り返って驚きました。そこには映像内に出て来たカッコウの彫刻が吊るされていたのです。マジックは映像のみならず、展示室にまで及んでいる。ほかにも雨を降らしたり、シャツの色を変化させたりするなど、マジックは水戸の街を巻き込んで進行します。

ラストに白鳥さんが登場し、小曽根の軽やかなピアノのもと、とある仕掛けにて視点は水戸全体へと広がりました。そこにもまたマジックがあります。解説シートに「本当におこっていることは一体何でしょうか。」とありましたが、確かに見ていても本当のことはよく分かりません。目の前の現実は必ずしも全て事実ではなく、虚構が入れ混じる。それは時に複雑な入れ子状になって提示され、見ている我々の認識、感覚を揺さぶります。

まさに映像そのものが一つの奇術、イリュージョンです。現実は決して掴みきれないもの。見ているものとは何か、夢は果たして得られるのか。実は見ているようで見えていないのではないか。真実とは何か。ここには展示全体を貫くキーワード、言い換えればヨンドゥの問いやメッセージが散りばめられています。まさに展覧会のラストに相応しい集大成というべき作品でもありました。

さて観覧についての注意ポイントです。3Dインスタレーションの「ブラインド・パースペクティブ」は原則一人ずつしか参加出来ません。また体験時間は約1人5分です。

私が出向いた時はちょうど5名ほど先に並んでいる方がいたため、体験までおおよそ25~30分ほどかかりました。ただし混雑時は事前に名簿に名前を記載すると、特に列に加わらずとも、指定の時間に出向けば体験出来ます。

3Dインスタレーションは会場の終盤、最後の作品の一つ前の通路での展示です。先に待ち時間を確認した後、一度戻る形で順に作品を見るのも良いかもしれません。

また先にも触れましたが、映像の「マジシャンの散歩」が50分ほどあります。(全ての映像作品の所要時間は全部で2時間半程度です。)時間に余裕をもって出かけられることをおすすめします。



それにしても新旧作を交えながら、ラストに白鳥さんとの交流を元にした三部作を持ってくる展開しかり、水戸芸の展示構成の巧さには改めて感心させられました。

2月1日まで開催されています。ずばりおすすめします。

「ヂョン・ヨンドゥ 地上の道のように」 水戸芸術館@MITOGEI_Gallery
会期:2014年11月8日(土)~2015年2月1日(日)
休館:月曜日。但し11月24日、1月12日は開館。11月25日、1月13日は休館。年末年始(12/27~1/3)。
時間:9:30~18:00 *入館は17:30まで。
料金:一般800円、団体(20名以上)600円。中学生以下、65歳以上は無料。
住所:水戸市五軒町1-6-8
交通:JR線水戸駅北口バスターミナル4~7番のりばから「泉町1丁目」下車。徒歩2分。
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6次元で「点描ナイト」が開催されます

1月24日(土)から東京都美術館ではじまる「新印象派 光のドラマ展」。そのサテライトイベントです。荻窪のカフェ6次元で「点描ナイト」が開催されます。



[2/5(木) 新印象派展 「点描ナイト」]
出演:大橋菜都子(東京都美術館学芸員)×ナカムラクニオ(6次元)
会場:6次元(荻窪駅西口より徒歩2~3分)
日時:2月5日(木) 19:30~(19:00開場)
参加費:1500円(ドリンク付/要予約)
予約方法:件名を「点描ナイト」とし、名前、参加人数、電話番号を明記の上、rokujigen_ogikubo@yahoo.co.jp まで。

出演は東京都美術館学芸員の大橋菜都子さんと6次元のナカムラさん。新印象派の画家の一部を特徴付ける点描表現にスポットを当て、そこから美術史を遡っては横断して読み解こうとするトークイベントです。

[点描ナイト 概要]
東京都美術館で開催される『新印象派 光と色のドラマ』展。モネから始まり、スーラ、シニャックの新印象派、そしてマティス、ドランまで、多様な作品が展示されます。この新印象派が描いた『点描』という技法に注目し、美術史全体から読み解くトークイベントです。

点描表現を美術史的に「遡ってはさらに横断する」こと。トークでは新印象派だけに留まらず、古代のモザイクやイスラムのタイル、中国の山水画、さらにはスーパーリアリスムのチャック・クロースや、草間や瑛九らの現代美術まで踏み込んでいくそうです。意欲的な内容になることが予想されます。(内容は変わる可能性もあります。)

応募方法は上記の通りです。6次元まで直接メール(rokujigen_ogikubo@yahoo.co.jp)にてお問い合わせ下さい。先着順です。定員になり次第、受付は終了となります。



[6次元(荻窪)] 
http://www.6jigen.com/
住所:杉並区上荻1-10-3 2F

さて新印象派展、既に先行した大阪展(あべのハルカス美術館)は終了しました。大阪に次いでの東京巡回です。1月24日より上野の東京都美術館ではじまります。


アンリ=エドモン・クロス「農園、夕暮れ」1893年 油彩、カンヴァス 個人蔵

新印象派の誕生前夜からフォーヴまでの美術の流れを追いかける展覧会です。出品はモネ、スーラ、シニャックからマティス、ドランなど約100点。世界12カ国の美術館から作品がやってきます。


アンリ=エドモン・クロス「地中海のほとり」 1895年 油彩、カンヴァス 個人蔵

もちろんスーラ、シニャックが中心になるのかと思いますが、クロス、リュス、レイセルベルヘなどの作品が多く出ていることにも注目すべきではないでしょうか。いずれの画家も国内でまとめて見る機会があまりありません。

[新印象派 光と色のドラマ]
http://neo.exhn.jp/
会場:東京都美術館
会期:1月24日(土) ~3月29日(日) *大阪展出品リスト(PDF)

東京都美術館の大橋学芸員を招いての「点描ナイト」、参加予約は荻窪の6次元で受付中です。

「新印象派ー光と色のドラマ」 東京都美術館@tobikan_jp
会期:1月24日(土) ~3月29日(日)
時間:9:30~17:30
 *毎週月曜日日、及び11/1(土)、2日(日)、12/6(土)、13(土)、14(日)は20時まで開館)
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。
料金:一般1600(1300)円、大学生1300(1100)円、高校生800(700)円。65歳以上1000(900)円。中学生以下無料。
 *( )は20名以上の団体料金。
 *毎月第3水曜日はシルバーデーのため65歳以上は無料。
 *毎月第3土・翌日曜日は家族ふれあいの日のため、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住)は一般料金の半額。(要証明書)
住所:台東区上野公園8-36
交通:JR線上野駅公園口より徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口より徒歩10分。京成線上野駅より徒歩10分。
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「3331 千代田芸術祭 スカラシップ受賞者展 VOL.5」 アーツ千代田3331

アーツ千代田3331
「3331 千代田芸術祭 スカラシップ受賞者展 VOL.5」 
1/10-1/25



アーツ千代田3331で開催中の「3331 千代田芸術祭 スカラシップ受賞者展 VOL.5」を見て来ました。

昨年夏、アーツ千代田にて開催された「千代田芸術祭2014」。300組ものアーティストが参加した、いわゆるアンデパンダン方式での展覧会でした。

その際の入選者をピックアップしたのが今回の「スカラシップ展」です。出展は16組のアーティスト。ジャンルも絵画や立体、インスタレーションほか、映像などと多岐に渡ります。

会場内の撮影が出来ました。


いぬいかずと

まずはいぬいかずと(福住廉賞)、独学で絵を学んでいる画家です。出品はドローイング。家々が上下に交錯しては連なる街の風景や、レモンの実る様子、またはタマネギなどの野菜が表されています。ラフな筆致です。カラーボールペンやクレヨンなどを使って描いています。


いぬいかずと

魅惑的なのが色彩です。どこか瑞々しくまた心地良い。色の使い方にもバリエーションがありました。


椋本真理子「Pond of park」 2014年

彫刻で風景のランドスケープを描きます。椋本真理子(中村政人賞)です。モチーフや山やプールに花壇といった身の回りの風景、それをポップな立体で表しています。手前は池でしょうか。波打つ水面は抜けるように青い。かなり大きい。幅1メートル超はあるでしょうか。素材はFRPだそうです。思わず触りたくなってしまいます。


久野彩子「○」 2014年

驚くほどに緻密でした。オーディエンス賞に選ばれたのは上野彩子です。上の写真作品も平面ではありません。紛れもなく立体、金属の彫刻です。細かなパーツを組み合わせては都市空間的なイメージを作り上げています。上下左右へ増殖するように連なるパーツ。一片は僅か数ミリほどに過ぎません。その繊細なテクスチャに思わず息をのんでしまいました。


小笠原圭吾

会場を超えたコミュニケーションを志向しているのが小笠原圭吾(藤原えりみ賞)です。人々を介するのはリンゴ。ご覧のように床一面にリンゴが転がっていますが、実はこの素材は陶、いずれも焼き物でした。


小笠原圭吾「ドットの貯金箱」 2014年

手にとることも出来ましたが、大きさと言い形といい、そして重さまでが、実物とほぼ同じように作られています。

そして作家はリンゴを世界各地へ広めようとしています。その名は「pop dot project」。リンゴをワークショップなどで配っては、持ち帰った観客が様々な場所で撮影し、改めて作家にフィードバックするプロジェクトを進めています。またリンゴをドットの柄に見立ています。ゆえに「ドットプロジェクト」という名がついているわけです。(ちなみに3331の建物全体にドットの展開もあります。)


薄羽涼彌「How to wear sound」 2013年

映像の二点、ともに優秀賞を受賞した薄羽涼彌と冠木佐和子も面白いのではないでしょうか。


冠木佐和子

思わずにやりとさせられるのは薄羽の作品です。非常にシンプルな映像ですが、繰り返されるアクションからは、何か知的なコントを見ているような印象さえあります。そして冠木はアニメーションです。性的なモチーフからシュールな展開が広がっていて興味深い。映像自体のテンポも良く、動きも自在です。飽きさせません。


増田ぴろよ(辛酸なめこ賞)

「千代田芸術祭」がはじまったのは2010年のことです。実のところ私も昨年夏の展示を見ました。原則、一人一点の出展ながらも作家が多く、ゆえに作品は多数。どこかカオスな印象は否めません。アンデパンダン特有の熱気は感じられましたが、個々の作家や作品までに強い関心を持つことが出来なかったのも事実でした。


大津芳美(鈴木一成賞)

その点、スカラシップ展では作家数も少なく、展覧会としてもまとまりがあります。もちろん入選が全てとは思いませんが、さすがに一定の審査を踏まえた上での展示です。見応えのある作品も少なくありません。

昨夏の展示とは一味も二味も違った「千代田芸術祭 スカラシップ受賞者展」、思いの外に楽しめました。



入場は無料です。1月25日まで開催されています。

3331 千代田芸術祭 スカラシップ受賞者展 VOL.5」 アーツ千代田3331@3331ArtsChiyoda) メインギャラリー
会期:1月10日(土)~1月25日(日)
休館:火曜日
時間:12:00~19:00 入場は閉場の30分前まで。
料金:無料
場所:千代田区外神田6-11-14 アーツ千代田3331 1階
交通:東京メトロ銀座線末広町駅4番出口より徒歩1分、東京メトロ千代田線湯島駅6番出口より徒歩3分、都営大江戸線上野御徒町駅A1番出口より徒歩6分、JR御徒町駅南口より徒歩7分。
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「横浜美術館コレクション展2014年度第2期」 横浜美術館

横浜美術館
「横浜美術館コレクション展2014年度第2期」
2014/12/6-2015/3/1



横浜美術館で開催中の「コレクション展2014年度第2期」を見て来ました。

現在、「ホイッスラー展」が行われている横浜美術館。企画展に続くコレクション展がすこぶる充実しています。テーマは2つ。「抽象画ー戦後から現代」と「光と影ー都市との対話」です。

会場内の撮影が出来ました。(フラッシュは不可。)

まずはじめのセクションは「抽象画」。戦後日本美術における抽象画の展開を追っています。


岡田謙三「垂直」 1964年 油彩、カンヴァス

岡田謙三の「垂直」です。画業半ばでアメリカに渡り、抽象表現主義へと転回した岡田。和の抽象と言ってしまうのは語弊があるかもしれません。ただそれでも色遣いなどに日本や東洋的感性を思わせるものがあります。ほかの抽象画家とは異なった画風を見せていました。


右:山口長男「B(組形)」 1957年 油彩、カンヴァス

斎藤義重、山口長男はどうでしょうか。ともに戦前から前衛的な制作を行い、日本の抽象表現における先駆者ともいうべき存在。岡田とも同世代の画家でもあります。


田中敦子「作品79X」 1979年 エナメル、カンヴァス

その後は田中敦子、白髪一雄、菅井汲を経て、中村一美へと続く展開です。カラフルなネオンサインを平面に置き換えたような田中の「作品79X」は何とも華々しいもの。白髪の激しいストロークも熱気を帯びています。前に立つだけで絵にのまれました。


中村一美「連差ー破房7」 1995年 油彩、油性ペイント、合板に貼付したカンヴァス

中村一美の「連差ー破房7」は横6メートルにも及ぶ大作です。荒れ狂う色彩のストローク、どこか装飾的にも見えないでしょうか。それにしても一口に抽象といえども画風は様々。今となっても古びることはありません。抽象表現における新たな可能性を示しています。

2つ目の「光と影」は4つのテーマに分かれています。

2-1 風景になる都市、その光と影
2-2 西洋の作家の作品に見る光の表現
2-3 満ちる光、光と影
2-4 写真展示室:光と闇ー現代の都市風景


小林清親「御茶水蛍」 1880年 多色木版 ほか

まずは「風景になる都市、その光と影」です。ここでは幕末以降、日本、そして当地横浜にも着目して都市風景画を展示しています。中でも光線画で知られる小林清親が20点超と目立っています。


川瀬巴水「東京十二題 夜の新川」 1919年 多色木版 ほか

横浜関連ではベアトが写した維新前後の「横浜」や、清水登之の「ヨコハマ・ナイト」も面白い。そして巴水です。3点と僅かですが、「東京十二題」が出ていました。

「光と影」では現代作家の展示も見逃せません。


小西真奈「滝」 2008年 油彩、カンヴァス

特に小西真奈の「滝」に安田悠の「Link」、そして奈良美智の「春少女」などはそれぞれ魅惑的ではないでしょうか。いずれも2000年以降に描かれた作家の近作です。


デヴィット・ホイックニー「フレンチ・スタイルの逆光」 1974年 エッチング

デヴィット・ホックニーの「フレンチ・スタイルの逆光」のモチーフはルーブル美術館の窓だそうです。窓から透けるのは外の淡い光。均一でぶれがありません。うっすら黄色を帯びていました。

最後は浜美ならではの写真です。これがまた非常に見応えがあります。


金村修「Keihin Machine Soul」 1996年 ゼラチン・シルバー・プリント

ここでもテーマは都市です。金村修の「Keihin Machine Soul」は横浜界隈でしょうか。いわゆる雑然とした都市空間が舞台です。自転車で溢れる商店街や、無数の電線の錯綜する交差点などをモノクロームで切り取っています。

磯田智子の「残像」も面白いもの。真っ暗闇で僅かに灯る光、おそらくは地下鉄の駅です。車内から電車が駅に進入する際を狙って写したのかもしれません。


米田知子「空地1(市内最大の仮設住宅跡地から震災復興住宅をのぞむ)」 2004年 発色現像方式印画 ほか

そして米田知子です。かの阪神大震災に取材した一連のシリーズが目を引きます。震災直後といわゆる復興後の神戸を写した作品、復興後の真新しい家々の立ち並ぶ住宅街にはまだ空き地があります。きっとそこにもかつては何らかの生活があったのでしょう。振り返ってみれば今年の1月17日は、震災から20年の節目の年でもあります。


「横浜美術館コレクション展2014年度第2期」第2展示室 会場風景

浜美に特徴的な天井高のある第2展示室も見過ごせません。ダリの「幻想的風景」やデルヴォーの「階段」といったお馴染みの作品に加え、色彩のニュアンスが素晴らしいモローの「岩の上の女神」や、今年、大回顧展を控えたマグリットの「青春の泉」なども目を引きました。

近現代美術の常設展といえば、東京近辺ではまず東近美、さらに都現美などが充実していますが、ここ横浜美術館もそれに決して劣るものではありません。

「ホイッスラー展」 横浜美術館(はろるど)

ホイッスラー展のチケットでもちろん観覧出来ます。お出かけの際はコレクション展もお見逃しなきようおすすめします。


奈良美智「春少女」 2012年 アクリル、カンヴァス

3月1日まで開催されています。

「横浜美術館コレクション展2014年度第2期」 横浜美術館@yokobi_tweet
会期:2014年12月6日(土)~2015年3月1日(日)
休館:木曜日。但し12/25は開館。年末年始(12/29~1/2)。
時間:10:00~18:00
 *入館は17時半まで。
 *12/22~24は20時まで開館。(入館は19時半まで。)
料金:一般500(400)円、大学・高校生300(240)円、中学生100(80)円。小学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体。要事前予約。
 *毎週土曜日は高校生以下無料。
 *当日企画展(ホイッスラー展)チケットにて観覧可。
住所:横浜市西区みなとみらい3-4-1
交通:みなとみらい線みなとみらい駅5番出口から徒歩5分。JR線、横浜市営地下鉄線桜木町駅より徒歩約10分。
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三菱一号館美術館が4月6日に開館5周年を迎えます

東京・丸の内は三菱一号館美術館。2010年に明治時代に建てられた「三菱一号館」を美術館として再建。洋風の外観もすっかり丸の内の町並みに溶け込みました。

早いものです。三菱一号館美術館が2015年4月6日(月)、開館5周年を迎えます。


「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」
2月7日(土)~5月24日(日) 
http://mimt.jp/nga/

ちょうど5周年の時期に開催されているのは「ワシントン・ナショナル・ギャラリー」。現地のギャラリーの改修を機に行われる印象派展です。来日するのはルノワールやマネ、セザンヌにゴッホなど68点。うち38点が日本初公開という展覧会でもあります。


アルフレッド・シスレー「牧草地」1875年 油彩・カンヴァス
National Gallery of Art, Washington, Ailsa Mellon Bruce Collection


4月6日(月)のメモリアルデーは特別開館日です。以下の各種イベントが開催されます。

[4月6日(月)昼の部のイベント] 10時~18時
1.先着555名にオリジナルエコバックをプレゼント
(図柄は同館所蔵のロートレック作品「シルヴァヌスのメニューカード」から。1人1点限り。
2.抽選会(1人1回限り、ハズレなし。)
3.一号館広場にて音楽生演奏(雨天中止の場合もあり)

[4月6日(月)夜の部のイベント] 18時~21時
1.館内の「Cafe1894」にてワンドリンクサービス(Cafe1894の通常営業は行いません)
2.「Cafe1894」にて音楽生演奏(演奏時間は未定)
3.展示作品の写真撮影OK(3階展示室のみ)

当日は21時まで特別延長開館。昼の部と夜の部で様々なイベントが行われます。また夜のみ「ワシントン・ナショナル・ギャラリー」展の一部の撮影も可能です。


「マネとモダン・パリ」 三菱一号館美術館(はろるど)

それにしても5周年の一号館美術館、開館記念の「マネとモダン・パリ」にはじまり、つい最近の「ミレー展」まで、実に15もの企画展が行われました。

「展覧会について」(三菱一号館美術館) *過去の展覧会がアーカイブで掲載されています。

「マネとモダン・パリ」しかり、「シャルダン展」や「ヴァロットン展」など、一号館ならではの展覧会も少なくありませんでした。


エドゥアール・ヴュイヤール「黄色いカーテン」1893年頃 油彩・カンヴァス
National Gallery of Art, Washington, Ailsa Mellon Bruce Collection


メモリアルの4月6日は月曜の平日です。私も夜に出かけて5周年をお祝い出来ればと思います。

[三菱一号館美術館 2015年 展示スケジュール]
 
「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展ーアメリカ合衆国が誇る印象派コレクションから」
会期:2月7日(土)~5月24日(日) 
ナショナル・ギャラリーの改修を機に、同館のコレクションをまとめて紹介する展覧会。ルノワール、マネ、モネ、ドガ、セザンヌ、ゴッホなど68点。うち38点は日本初公開。

「画鬼・暁斎ーKYOSAI 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル」
会期:6月27日(土)~9月6日(日)
一号館を設計したコンドルの業績と、彼の敬愛し、作品を海外に紹介した暁斎の画業を辿る展覧会。日本画、浮世絵、戯画、日記等120点を展示。

「プラド美術館展ースペイン王室を虜にした巨匠たち」
会期:10月10日(土)~2016年1月31日(日)*予定
プラドコレクションから主にスペインの三大画家といわれるグレコ、ベラスケス、ゴヤのほか、ボスやルーベンス、ムリーリョらの作品を紹介する。



なお音楽演奏の出演者などについては追って発表されることと思います。お出かけの際は同館WEBサイトをご確認下さい。

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」 三菱一号館美術館
会期:2月7日(土)~5月24日(日)
休館:月曜日。但し祝日の場合は開館。4月6日、5月18日は開館。
時間:10:00~18:00。毎週金曜日(祝日、振替休日除く)は20時まで。
 *4月6日(月)は開館5周年のため特別開館。20時まで。
料金:大人1600円、高校・大学生1000円、小・中学生500円。
 *ペアチケットあり:チケットぴあのみで販売。
住所:千代田区丸の内2-6-2
交通:東京メトロ千代田線二重橋前駅1番出口から徒歩3分。JR東京駅丸の内南口・JR有楽町駅国際フォーラム口から徒歩5分。
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「美濃のラーメンどんぶり展」 松屋銀座7階デザインギャラリー1953

松屋銀座7階デザインギャラリー1953
「第710回デザインギャラリー1953企画展 美濃のラーメンどんぶり展」
2014/12/27-2015/1/26



松屋銀座デザインギャラリー1953で開催中の「美濃のラーメンどんぶり展」を見て来ました。

誰もが一つや二つは持っているであろうラーメンどんぶり。これほど身近で普段遣いする器もないかもしれません。

そのラーメンどんぶり、実は90%が美濃で生産されているそうです。つまり我々のラーメンの食生活は美濃なくしては成り立ちません。



ラーメンどんぶりとデザインとの関わりを見る展覧会です。企画したのは「美濃のやきもの研究会」。美濃焼の魅力を全国に発信すべく活動を続ける官民の有志連合です。そしてどんぶりをデザインしたのは25名のアーティストやデザイナー。中にはコメディアンや建築家まで参加しています。

[出店者]
秋山具義、浅葉克己、アラン・チャン、石上純也、片桐仁(ラーメンズ)、唐長・千田誠次、菊地敦己、北川一成、佐藤晃一、佐藤卓、佐野研二郎、ジョナサン・バーンブルック、祖父江慎、田名網敬一、束芋、天明屋尚、土井善晴、仲條正義、永井一史、永井一正、服部一成、松永真、皆川明、森田恭通、横尾忠則 (50音順)

のれんをくぐりましょう。ずらり並ぶのはラーメンどんぶり。いずれも形こそ同じ、大きく円を描いては口を開けていますが、その色や模様はさすがにバラエティに富んでいます。



建築家の石上純也が目を引きました。どんぶりを大きな花に見立てたデザイン、何でも縁の模様が雷ではなく蔦に見えることからひらめいたそうです。シンプルながらも強い印象を与えます。



佐野研二郎は水玉やストライプを組み合わせたデザインを提示しました。随所に見える金の模様は、割れた器の継ぎ目を飾る金継ぎからヒントを得ています。なかなかオシャレではないでしょうか。



どんぶりが地球儀と化しています。永井一史です。器の中には日本を核にユーラシア大陸、そして北米大陸が広がっています。日本のみが金色です。ラーメンを掬って、汁を飲み干しては初めて見えてくる黄金の国、日本。なかなか面白い趣向だと思いました。



一際、色彩鮮やかなのが皆川明です。緑やピンクに黄色の面がモザイク状に並んでいます。そしてレンゲは水玉の模様です。ちなみにこの図柄の色、ラーメンの中にある様々な色彩をイメージしたそうです。言われてみれば麺やスープに卵、そしてなるとや付け合わせの野菜など、一杯のラーメンには様々な色があります。



横尾忠則が強烈です。何と器の中で散らばるのはカラフルな人の骨です。そして外側にはドクロも並んでいます。「とんこつラーメンを食べてしっかりした骨をつくりましょう。」とのメッセージも添えられていました。



田名網敬一も凄まじい。蜘蛛です。歯を剥き出しに、舌をべろりとのばしては待ち構える。赤い脚を四方八方にのばしています。もはや魔物です。ちなみにこれは氏が学生時代にラーメンを食べていると、目の前に蜘蛛が落ちて来て、どんぶりに沈没してしまった体験を元にしているとか。さぞかし驚いたことでしょう。もはや薄気味悪くてスープを飲み干せません。



異彩を放つといえば束芋も忘れられません。何ともグロテスクとも言えるようなモチーフ、二人の男女の物語を表しているそうです。どんぶりの中でも展開される束芋ワールド、ブレがありませんでした。



江戸時代より続く日本唯一の唐紙屋、千田誠次によるどんぶりが魅惑的でした。デザインは紙の紋様です。色も繊細。飽きの来ないデザインです。ラーメン以外を盛っても映えそうな器、何かと重宝するのではないでしょうか。



なお会場では人気投票も行われていました。しかもどんぶりは商品化も検討されるそうです。お値段は分かりませんが、お気に入りのラーメンどんぶりを手に入れるチャンスかもしれません。なお詳細は4月以降に以下のデザインコミッティーのサイトで告知されます。

第710回デザインギャラリー1953企画展「美濃のラーメンどんぶり展」@日本デザインコミッティー

どんぶりの中の画像ばかりを挙げてしまいましたが、デザインは側面、そしてレンゲにも及びます。上から横からと眺めてはどんぶりの意匠を楽しみました。

入場は無料です。1月26日まで開催されています。

「第710回デザインギャラリー1953企画展 美濃のラーメンどんぶり展」 松屋銀座7階デザインギャラリー1953
会期:2014年12月27日(土)~2015年1月26日(月)
休館:1月1日(木・祝)
時間:10:00~20:00。最終日は17時閉場。
料金:無料。
住所:中央区銀座3-6-1
交通:東京メトロ銀座線・丸ノ内線・日比谷線銀座駅A12番出口直結。都営地下鉄浅草線東銀座駅A8番出口より徒歩3分。JR線有楽町駅より徒歩8分。
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「第9回 shiseido art egg 川内理香子展」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「第9回 shiseido art egg 川内理香子展」
1/9-2/1



資生堂ギャラリーで開催中の「第9回 shiseido art egg 川内理香子展」を見て来ました。

毎年年始恒例、若い世代の作家を個展の形式で紹介する企画展シリーズ、資生堂アートエッグ。

今年も公募により3名の作家が入選しました。1月から3月まで各一ヶ月ずつ作品を発表します。

トップバッターは川内理香子。1990年生まれの若いペインターです。現在、多摩美術大学美術学部の絵画学科に在籍する学生でもあります。

テーマは「食」ということでしょうか。食べ物をモチーフとしたドローイングやペインティングが並びます。いずれも2014年に制作された作品でした。



さて最小限の線と面、そして淡い色彩によって表されたのはいずれも食べ物です。確かに果物であり、パンケーキであり、また寿司であったりしますが、目を凝らすと単なる食べ物だけ描かれているわけではないことに気がつきました。



というのも例えばパンケーキ、何枚も重ねられていますが、良く見ると中央から人の頭が突き出しています。またほかにも食べ物だと思っていたものが手のひらや脚の形をしていました。つまり人物のパーツが食べ物のイメージと重なり合っているのです。その様子はグロテスクですらあります。また食べ物が体内に取り込まれて融合した姿、それ自体が有機的と言えるかもしれません。

それにしてもラフなスケッチです。線は断片的でかつ面も余白を利用しています。即興的です。食べ物の形態、また変容は一瞬の視点で捉えられています。



「The rise and fall of the tide」が目を引きました。連作です。人が生きるために食べ続けるというプロセス、つまりは食べてはお腹をすかせ、また食べるということを、潮の満ち引きに準えて制作しています。



モチーフはハンバーガーやフランスパン、それにチーズケーキなどです。特段に豪華というわけでもなく、日常の食卓で目にするような食べ物が連なります。そしてそれは全体の姿であったり、時に切れ端のみが描かれたりしています。また皿やフォークを添えた作品もありました。興味深いのは必ずしも美味しそうではないということです。まるで手で捏ねて作った粘土細工のようなものもあります。

ドローイングは「腸の形のようにつなげてみせた」そうです。身体的な何かを志向しているのでしょう。やはり食べ物と身体の関わりが重要になっているのかもしれません。

インスタレーション的な展示も目立つアートエッグ展の中、あえて軽妙なドローイングのみで勝負した川内のアプローチ。率直なところ天井高のあるホワイトキューブではパンチに欠ける面はあるやもしれません。

しかしながら一点一点、手元に引き寄せるように見入ると、思いの外に味わいがあることに気がつきます。何やら不気味ではありますが、そこにシュールな面白さがありました。



【第9回 shiseido art egg 展示スケジュール】
川内理香子展 1月9日(金)~2月1日(日)
飯嶋桃代展 2月6日(金)~3月1日(日)
狩野哲郎展 3月6日(金)~3月29日(日)

2月1日まで開催されています。

「第9回 shiseido art egg 川内理香子展」 資生堂ギャラリー
会期:1月9日(金)~2月1日(日)
休館:毎週月曜日
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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