「フランシス・ベーコンナイト」(6次元)が開催されます *受付終了

いよいよ3月8日から東京国立近代美術館で始まる「フランシス・ベーコン展」。


「フランシス・ベーコン展」
会期:2013年3月8日(金)~5月26日(日)
時間:10:00~17:00(金曜日は20:00まで) *入館は閉館30分前まで
休館:月曜日(但し、3/25、4/1、4/8、4/29、5/6は開館)、5/7(火)は休館。
会場:東京国立近代美術館
料金:一般1500(1300)円、大学生1100(900)円、高校生700(500)円。中学生以下無料
 *( )は前売券。3月7日まで販売中。

欧米ではピカソと並び、20世紀を代表する画家として評価されているものの、日本ではもう一歩の知名度。必ずしも大いに受容されているとは言えません。


フランシス・ベーコン(1909-1992)

昨年冬、同美術館でのベーコン展記者発表会に参加させていただきましたが、その時、印象深かったのは、本展担当の保坂健二朗学芸員の強くまた熱いベーコン愛。

「フランシス・ベーコン展」@記者発表会(拙ブログ)

もうこれでもかというくらいのベーコン推し。単に作品解説を超えた、ベーコンに対する激しい熱情を感じてなりませんでした。

「人物像と、神経組織に対して、より暴力的に、そして痛烈に、もたらす試み。」by保坂健二朗(ベーコンについて)


「フランシス・ベーコン展」記者発表会(11/22。東京国立近代美術館。)

その保坂さんがお馴染みの荻窪6次元に満を持して登場!題してフランシス・ベーコンナイト、「ベーコンをより深く理解するための講座【18禁】」が開催されます。

定員に達したため、受付を終了しました。

3/9(土)『フランシス・ベーコンナイト ベーコンをより深く理解するための講座【18禁】』
出演:保坂健二朗氏(東京国立近代美術館主任研究員)
時間:18:30開場 19:00開始
参加費:1500円(おつまみ付)
予約:件名を『フランシス・ベーコンナイト』とし、お名前、人数、お電話番号、を明記の上、rokujigen_ogikubo@yahoo.co.jp まで。

日時は展覧会開始翌日の3月9日(土)の夜7時から。それにしても驚きの「18禁」です。かの濃密な6次元の空間で一体どのようなドロドロ、いやエロスに満ち溢れたベーコントークをお聞きすることが出来るのか。今から軽く興奮するほどに期待してしまいます。


「ジョージ・ダイアの三習作」1969年 ルイジアナ近代美術館

ところで着々と更新中のベーコン展特設WEBサイト。面白いのが「BACON'S WORLD」。お馴染みフクヘンさんをはじめ、アラーキーに森山大道さん、そして鈴木理策さん、そしてミヤケマイさんに指揮者の佐渡さんなどがベーコンに対する思い思いのコメントを。



そこには6次元の中村さんもコメントを寄せておられます!

それでは「フランシス・ベーコンナイトin6次元」の予約受付は上記概要の通りメール(rokujigen_ogikubo@yahoo.co.jp)にて。定員あり、先着順です。ともかくお早めにどうぞ!

定員に達したため、受付を終了しました。

「美術手帖2013年3月号/フランシス・ベーコン/美術出版社」

六次元 ロクジゲン http://www.6jigen.com/
住所:〒167-0043 杉並区上荻1-10-3 2F
電話:03-3393-3539
営業時間:金・土・日(15:00~22:00)
問い合わせ rokujigen_ogikubo@yahoo.co.jp
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2013年 春の江戸絵画まつり!

いよいよ3月1日(金)より仙台市博物館でスタートする「若冲が来てくれましたープライスコレクション 江戸絵画の美と生命」展。


「若冲が来てくれましたープライスコレクション 江戸絵画の美と生命」(仙台展)
会期:3月1日(金)~5月6日(月・祝)
休館:毎週月曜日。但し3/11、4/29、5/6は開館。
時間:9:00~16:45(入館は16:15まで)
会場:仙台市博物館(仙台市青葉区川内26)
交通:仙台駅西口バスプール9番乗場710~720系統のバス(718系統を除く)で約10分、博物館・国際センター前下車徒歩3分。
料金:一般・大学生800円、高校生以下無料。*10名以上の団体は100円引

以降、岩手県立美術館(5/18~7/15)と福島県立美術館(7/27~9/23)へと巡回。2006年の東博の展覧会でも大いに話題を集めたプライス夫妻所蔵の江戸絵画コレクションが東北にて一挙公開されます。


「紫陽花双鶏図」(アジサイの花と二羽のニワトリ) 伊藤若冲

また本展はかの震災を切っ掛けとして、プライス夫妻の発案により実現したもの。公式サイトのメッセージにもあるように「すべての収益が東北にもたらされる」、東日本大震災復興支援プロジェクト(作品の無償貸与及び、グッズ収益の寄付。)でもあります。


「鳥獣花木図屏風」(花も木も動物もみんな生きている) 伊藤若冲

また江戸絵画をどう楽しく見せるのかにも注目。板橋区美ならぬ「子ども向けタイトル」の他、章立ても「はる・なつ・あき・ふゆ」や「プライス動物園」など一風変わった趣向が。またライティングも新たな試みが取り入れられているそうです。

さらにはプライスコレクション以外にも宮内庁や東京国立博物館、またMIHOMUSEUMの江戸、及び近代絵画の名品も一部出品。一部展示替えを含めた出品リストも既に公開されています。

さて一方は名古屋の愛知県美術館。こちらでも同日、3月1日(金)から「江戸時代絵画 真の実力者 円山応挙展」が開催されます。


「円山応挙展―江戸時代絵画 真の実力者」
会期:3月1日(金)~4月14日(日) 
休館:毎週月曜日。
時間:10:00~18:00 *毎週金曜日は20時まで開館。(入館は閉館30分前まで)
会場:愛知県美術館(名古屋市東区東桜1-13-2)
交通:地下鉄東山線・名城線栄駅、名鉄瀬戸線栄町駅下車。オアシス21連絡通路利用徒歩3分。
料金:一般1300(1100)円、大学・高校生1000(800)円、中学生以下無料。*( )内は20名以上の前売料金

展覧会初出品を含む70~80点の応挙画が集結。様々な江戸絵画展で接する機会の多い応挙といえども、これほど集まるのは稀。さらに障壁画では大乗寺客殿の空間を再現した露出展示も行われるとか。もちろん出品リストも既に公開済。

さらに先日には同館館長の@masa7878さんのアカウントで既に会場の設営風景もアップ!

APMoA館長(愛知県美術館)‏@masa7878
円山応挙展@愛知県美術館:ついに大乗寺の障壁画空間が美術館に再現されました! まだ展示作業の真っただ中ですが、これは感激、感動的もの☆☆☆!! どうぞお見逃しなく(^.^)  pic.twitter.com/g6jFq7zUVb


これまた期待も高まります。何としても見ておきたい展覧会です。

そしてさらに西へ。3月末には京都で狩野派の奇才が登場。3月30日より京都国立博物館で「狩野山楽・山雪展」が開催されます。


「特別展覧会 狩野山楽・山雪」
会期:3月30日(土)~5月12日(日)
休館:毎週月曜日。*但し4/29(月)は開館、翌4/30(火)は休館。5/6(月)は開館。
時間:9:30~18:00 *毎週金曜日は20時まで開館。(入館は閉館30分前まで)
会場:京都国立博物館(京都市東山区茶屋町527)
交通:京都駅より市バスD2のりばから206・208号、D1のりばから100号系統にて「博物館・三十三間堂前」下車。京阪線七条駅より東へ徒歩約7分。
料金:一般1300(1100)円、大学・高校生1000(800)円、中学生以下無料。*( )内は20名以上の団体料金

京博の狩野派展といえば2007年の狩野永徳。その豪華絢爛な障壁画の世界に圧倒されましたが、この時も京都会場のみで巡回はありませんでした。それは今回も同じで京都限定です。新発見9件、初公開6件を含む、80件超の作品が公開されます。

さてさて悩ましいのは東北、名古屋、京都をどういうスケジュールで回るのかということ。プライス展は東北を三巡回することもあり会期も長めですが、愛知と京都はそれぞれ一ヶ月半の短期決戦。ぼやぼやしていると終わってしまいます。

私はご縁あって仙台へは早々に伺いますが、愛知と京都は掛け持ちを計画。両会期が重なる3/30~4/14の間に行くつもりでいます。(但し応挙展が後期に入るため、国宝の雪松図はありません。)

また関東で足元を見れば府中で「かわいい江戸絵画」展も。


「かわいい江戸絵画」
会期:3月9日(土)~5月6日(月)
休館:月曜日(4/29、5/6をのぞく)、及び3/21(木)、4/30(火)。
時間:10:00~17:00 *毎週金曜日は20時まで開館。(入館は閉館30分前まで)
会場:府中市美術館(府中市浅間町1-3)
交通:京王線東府中駅から徒歩15分。京王線府中駅からちゅうバス(多磨町行き)「府中市美術館」下車。
料金:一般700(560)円、大学・高校生350(280)円、小・中学生150(120)円。*( )内は20名以上の団体料金

こちらは2012年の「三都画家比べ」、2011年の「江戸の人物画」などに続く、春の府中恒例の江戸絵画シリーズです。

毎度目を引くようなキャッチーなタイトル、切り口ながらも、展示内容は至極充実。個人蔵の珍しい作品も多く、江戸絵画ファンとして見逃せません。なお会期途中に大規模な展示替えもありますが、二度目の観覧料は半額という嬉しいサービスも。こうなれば前後期通うしかありません。(展示替えリスト

そして少し先の5月には江戸博で「ファインバーグコレクション 江戸絵画の奇跡」も控えています。


「ファインバーグ・コレクション展 ―江戸絵画の奇跡―」
会期:5月21日(火)~7月15日(月・祝)
休館:毎週月曜日。*但し7/15(月)は開館。
時間:9:30~17:30 *毎週土曜日は19:30まで開館。(入館は閉館30分前まで)
会場:江戸東京博物館(墨田区横網1-4-1)
交通:JR線両国駅西口徒歩3分。都営大江戸線両国駅A4出口徒歩1分。
料金:一般1300(1100)円、大学生1040(840)円、高校・中学・小学生650(450)円。*( )内は20名以上の団体料金

アメリカの実業家であるロバート・ファイン・バーグ氏が一代で蒐集した日本美術コレクション、琳派にはじまり、大雅や文晁らの文人画、そして応挙、若冲、蕭白。さらには北斎らの浮世絵まで90点余が展示されるという内容。同コレクションが日本でまとめて初めて公開される展覧会です。まさに江戸絵画のオールスター。

また現在、山種美術館で開催中の「琳派から日本画へ」展でも江戸絵画の名品がずらり。こちらは先日のプレビューの様子を記事(「琳派から日本画へ」@山種美術館)にまとめました。


「琳派から日本画へ 和歌のこころ・絵のこころ」
会期:2月9日(土)~3月31日(日) 前期:2/9~3/3 後期:3/5~3/31
休館:月曜日(但し2/11は開館、翌日は休館。)
時間:10:00~17:00(入館は16時半まで)
会場:山種美術館(渋谷区広尾3-12-36)
交通:JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅2番出口より徒歩約10分。恵比寿駅前より都バス学06番「日赤医療センター前」行きに乗車、「広尾高校前」下車。
料金:一般1200(1000)円、大・高生900(800)円、中学生以下無料。*( )内は20名以上の団体料金。

東北「プライス」、名古屋「応挙」、京都「山楽・山雪」、府中「かわいい」、両国「ファインバーク」、そして山種「琳派」。気になるものだけでもこれだけ江戸絵画展がずらり。もちろん全て見るつもりですが、目移りしてしまいます。

「江戸絵画入門―驚くべき奇才たちの時代/別冊太陽/平凡社」

この春から夏はどっぷり江戸絵画の魅力に浸ること出来そうです。
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「第7回 shiseido art egg ジョミ・キム展」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「第7回 shiseido art egg ジョミ・キム展」 
2/5-2/28



資生堂ギャラリーで開催中の「第7回 shiseido art egg ジョミ・キム展」へ行ってきました。

日常に潜む美意識、そして時間の経過によって変わりゆくモノの儚さ。

ジョミ・キムの個展を一言で表せば、そんな言葉になるかもしれません。

フロアの床面でプール状に広がる透明の粒。一体何なのかと近づいて見ると、それは何と消臭ビーズ。いずれもキラキラと瞬いています。

しかしながらこれらは素材の性格上、時間の経過とともに小さく、最後は消えてしまうもの。実は会期当初はもっと大きく、水分もたっぷり含んでいたビーズですが、今では一部も消失。中央部のこんもりと積まれた部分のみに言わばその残骸を残しています。

この時間とともに変化する表情は、本展の見るべきポイントの一つ。それはアルミ風船を用いた作品も同様です。今でこそくしゃっと床に落ちていますが、元々は階段の踊り場を越える高さにまで浮いていたとか。もちろんその理由は会期中、ガスが徐々に抜けていったからです。

また身の回りの品を素材として扱うジョミ・キム、その最たるものと言えば髪の毛ではないでしょうか。キムは自身の髪の毛を櫛に編み込んで木のオブジェに転化。さらに付け睫毛を卓上用の敷物のように象っています。もちろんそれも制作直後と比べて状態が変化するわけですが、その様子は制作後の写真で比較可能。やはりモノの移ろいということに着目しています。

日常的なモノ、つかの間の時に移ろいゆく美を探っていくこと。派手さはありませんが、普段見落としてしまう身の回りに、こうも細やかな表情を見出せるもののかと感心しました。

2月28日までの開催です。



【第7回 shiseido art egg 展示スケジュール】
久門剛史展  1月8日(火)~31日(木)
ジョミ・キム展 2月5日(火)~28日(木)
川村麻純展  3月5日(火)~28日(木)

2月28日まで開催されています。

「第7回 shiseido art egg ジョミ・キム展」 資生堂ギャラリー
会期:2月5日(火)~28日(木)
休館:毎週月曜日
時間:11:00~19:00(平日)/11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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「大巻伸嗣 : constellation - traces in memories」 アートフロントギャラリー

アートフロントギャラリー
「大巻伸嗣 : constellation - traces in memories - 」
2/22-3/10



アートフロントギャラリーで開催中の大巻伸嗣個展、「constellation - traces in memories - 」へ行ってきました。

つい先日、渋谷ヒカリエCUBEでも新作を披露していた大巻伸嗣。お馴染みの水晶の粉を用いての小宇宙。ボール状に浮かぶ白い花々の美しさには見惚れたものでした。



その大巻が矢継ぎ早に代官山でも個展を開催。今度は鮮やかなカラーの平面も出品しています。



純白から色の世界へ。岩絵具を用いての草や花の文様、それが壁面いっぱに展開。赤からオレンジ、そして青に緑と進む色のグラデーションからして目を奪われはしないでしょうか。



さてもう少し近寄ってみましょう。紅葉に朝顔に蝶々。蔓で絡み合う草花の群れ。そのモチーフはいずれも伝統的な日本絵画を思わせるもの。そうして見ると4層、平行に広がる支持体は絵巻のようではありませんか。



まるで抱一の「四季草花図巻」。艶やかでかつ抒情的でした。



なお本展では立体作品もあわせて展開。2005年にスパイラルで発表した「Flotage」の発展版も登場しています。



無数に寄りそう白い線描は地図の等高線をイメージしているとか。素材は何と修正液、入り組んだ線から様々な景色が広がってきます。アクリルボックスと線描の織りなす透明感も魅力的でした。

渋谷から代官山へ。大巻の今の制作を堪能することが出来ました。

3月10日まで開催されています。

「大巻伸嗣 : constellation - traces in memories - 」 アートフロントギャラリー@art_front
会期:2月22日(金)~3月10日(日)
休廊:月曜日
時間:11:00~19:00
料金:無料
住所:渋谷区猿楽町29-18 ヒルサイドテラスA棟
交通:東急東横線代官山駅より徒歩5分。
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「毛利悠子 おろち」 waitingroom

waitingroom
「毛利悠子 おろち」
1/19-2/24



waitingroomで開催中の毛利悠子個展、「おろち」へ行ってきました。

廃材や機械部品を素材にして有機的な繋がりをもったインスタレーションを展開する作家、毛利悠子。現在、初台のICCの「アノニマス・ライフ」にも出品中。先だってのMOTの「ブルームバーグ・パヴィリオン」(2012/5/19~6/17)の展示をご記憶の方も多いかもしれません。

その毛利が先月から恵比寿のwaitingroomで個展を開催。小さなスペースですが、これまた作家の魅力を良く伝える内容となっています。



天井には電源コード、そして足元にはハタキ、またラジカセやコイル、木机などが随所に。写真では分かりませんが、これらは可動式。ようはプログラムにそって突如、バタンと倒れたり、またブルブル振動したりしているのです。



この繊細さといえば、前エントリでまとめた利部志穂を思わせる面もありますが、毛利はどちらかと言うと、素材自体の鋭敏な感覚よりも、意外性のある動きの面白さが際立っているもの。

ハタキそのものがまるで生命を得ているかの如く倒れる姿は実に可愛げ。また不知火や雲龍と名付けられた作品も。まるで相撲です。ついつい動きを目で追っかけてしまいます。



電源コードとハタキ、そしてランプに如何なる意味があるのか。普段は意図もしない細かな機械部品自体の動き、そして何よりも相互の関係について考えさせられはしないでしょうか。

さてタイトルにもある「おろち」とは一体何なのか。何でも毛利が最近興味を覚えているという「紐」や「縄」という素材から付けられたものだそうです。

「かつて、とある電子通信機の会社の工場に、恐竜の骨格、あるいは大蛇の姿のようなグロテスクな機具が天井からぶら下がっていた。近づいてよく見てみると、それは赤、青、黄などを何十本もよりあわせ、束ねられた電線であった。そして、この“怪物”の職場の工員たちは“おろち”と呼んでいたという。」毛利悠子(リリースより)

紐や縄が繋ぐ「結び」と機械エネルギー。そこにある謎めいた関係。それを想像力で補いながら見る体験は、殊更に刺激的でした。



なお本展、さり気なく作品の背後に映る影もまた魅力です。薄暗い空間にぽっかり浮かぶ「おろち」のシルエット。それこそ生き物のようでした。

会場のwaitingroomは写美から徒歩圏内。恵比寿映像祭にあわせて是非おすすめします。

明日、2月24日までの開催です。

「毛利悠子 おろち」 waitingroom@waitingroom_
会期:1月19日(土)~2月24日(日)
休廊:火~木曜日。*オープンは月、及び金~日曜日。
時間:月曜 17:00~23:00、金・土・日曜 13:00~19:00
料金:無料
住所:渋谷区恵比寿西2-8-11 渋谷百貨ビル3F(4B)
交通:JR線、東京メトロ日比谷線恵比寿駅西口より徒歩4分。東急東横線代官山駅東口より徒歩5分。
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「利部志穂 タマがわ、たった火ーよき眠りの家ー」 実家 JIKKA

実家 JIKKA
「利部志穂 タマがわ、たった火ーよき眠りの家ー」
2/19-3/10



実家 JIKKAで開催中の利部志穂個展、「タマがわ、たった火ーよき眠りの家ー」へ行ってきました。

日用品などを組み合わせてインスタレーションを展開する作家、利部志穂(かがぶしほ)。

最近では2010年のVOCA展の他、所沢ビエンナーレや、国立新美術館で開催中の「アーティスト・ファイル2013」にも出品、ますます活躍の場を広げています。



そうした利部、今回は小さなホワイトキューブに挑戦。会場は3331の北側、末広町にもほど近いギャラリー「実家 JIKKA」。昨年にオープンした若きアーティストやギャラリストのためのフリースペースです。



さて一歩、足を踏み入れてみると、そこには利部ならではの繊細なインスタレーションが。紐にペンチに針金にアルミフレームにビニールと、まさに身近な素材があちらこちらに。注意して進まないとうっかり踏みつけてしまう場所にも作品が置かれています。



アルミシートの輝きと透明のビニール。細く軽やかな針金とどっしりと構えたアルミのフレーム。素材に色、そして何よりも光は空間の中で多様に変化。軽やかな気配の中にも重厚感も。またいわゆる無機的な素材を用いながら、その繋がりはどこか有機的な展開を思わせています。



それにしても息を吹きかけるだけでも飛んでいってしまうかのような作品ばかり。普段、身近で気にもとめないような針金や紙切れが愛おしく見えてくるではありませんか。



私が利部の作品を見知ったのは板橋区立美術館での「発信//板橋//2011」展。残念ながら震災により会期途中で打ち切りとなってしまいましたが、その時も美術館のエントランスホールの空間が一変、思いがけないほど魅力的にうつったものでした。

さて本展は言わば二部構成です。3月1日からは恵比寿のNADiffにて「タマがわ、たった火ーよき目覚めの家ー」がスタート。パフォーマンスも行われます。

「ーよき目覚めの家ー NADiff window gallery vol.30」
会期:3月1日(金)~4月1日(月)12:00~20:00
休廊:月曜日(最終日4/1はオープン)
パフォーマンス: 3月16日(土)15:00~15:30
会場:NADiff window gallery(恵比寿)

また先にも触れたように国立新美術館のアーティストファイル展にも出品中。会期中にはアーティストトークと、アートナイト関連のイベントも予定されています。こちらも楽しみです。



「アーティスト・ファイル2013-現代の作家たち」
会期:1月23日(水)~4月1日(月)10:00~18:00 *金曜は20時まで
休館:火曜日
トーク:3月9日(土)14:00~15:30
イベント:パフォーマンス「フレルヒカリ」3月23日(土)18:00~18:30
会場:国立新美術館

末広町「実家」に恵比寿の「NADiff」、六本木の「国立新美」。利部の三展示、是非ともお見逃しなきようにおすすめします。

3月10日まで開催されています。

「利部志穂 タマがわ、たった火ーよき眠りの家ー」 実家 JIKKA
会期:2月16日(土)~3月10日(日)
休廊:月・火曜日。
時間:12:00~19:00
料金:無料
住所:千代田区外神田3-6-14 深野ビル1階
交通:東京メトロ銀座線末広町駅3番出口より徒歩2分。千代田線湯島駅より徒歩5分、JR秋葉原駅より徒歩7分。
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「小林猶治郎展」 練馬区立美術館

練馬区立美術館
「超然孤独の風流遊戯 小林猶治郎展」
2/17-4/7



練馬区立美術館で開催中の「超然孤独の風流遊戯 小林猶治郎展」へ行ってきました。

明治に生まれ、戦前、戦後と悠々自適に絵画と向き合い続けた画家、小林猶治郎(1897~1990)。美術ファンの中でも彼の名はあまり知られていないかもしれません。

それもそのはず、生前も殆どの作品は売られず、アトリエにお蔵入り。死後も一部が練馬や千葉の公立美術館に収められたものの、大々的に公開されたことは一度もありませんでした。


小林猶治郎「鶏頭」1931年 油彩・画布 小泉製麻株式会社

まさに小林猶治郎の復権、没後初の一大回顧展です。彼は人生の後半を豊玉北で過ごした練馬の画家。今回、同美術館ではそこにあったアトリエに入り、遺族の協力を得て調査研究。また作品の一部については修復も行い、回顧展の開催にこぎつけました。

それでは小林猶治郎とは如何なる画家なのか。生まれは静岡は興津です。少年時代を東京の下町で過ごし、慶応の普通部から商工学校を経て、理財科(現経済科)に入学します。

一見、画家人生とは無縁にも思える青少年期。彼が画家へ転向する切っ掛けとなったのは肺結核の療養です。医者に余命は25歳までと宣告された猶治郎は「残りの人生は好きな絵を描いて過ごそう。」と考え、大学を中退、絵の道を志すようになります。

以来、深川、神戸、千葉の安房、下落合などを渡り歩きながら、58歳の時に練馬へアトリエを新築して定住。結果的に医師の宣告などもろともせず、93歳の天寿を全うしました。

さてそうした小林猶治郎、確かに練馬の画家であることには間違いありませんが、あえて申し上げれば千葉の画家でもあります。


小林猶治郎 左:「勝山岩井袋」1927年 油彩・画布 個人蔵
      右:「房州風景」1925年 油彩・画布 千葉市美術館


と言うのも1922年、26歳の時に関東大震災によって東京の家を失った猶治郎は日本各地を転々としますが、当初は生活の拠点を千葉の安房勝山に移しているのです。

安房勝山の地にて彼は雑貨・絵草紙の店「みなとや」を構えながら絵を描き続けます。


小林猶治郎「潮染手ぬぐい」

また同じく安房の鴨川の紺屋に通い、染織について学んだことも。そこで潮染手ぬぐいのデザインを行い、房州みやげとして販売も手がけました。

猶治郎は風景に静物と様々な絵画を残しましたが、多くあるのは千葉・房総の海や景色を描いた作品。この時期、1930年前後の作品は大変に充実しています。


小林猶治郎「なぎさ」1927年 油彩・画布 小泉製麻株式会社

1927年に帝展に入選した「なぎさ」も舞台は安房の海。ちなみに本作は神戸にあり、阪神大震災時に穴があいてしまいましたが、本展にあわせて修復されたものです。

何物にもとらわれない伸びやかな筆致、そして何よりも輝かしき光と色。作風に特徴的な鮮やかな色彩感覚は、おそらくは千葉の安房の光や色から獲得したに違いありません。


小林猶治郎「タイトル不詳(螺旋)」1955年頃 油彩・画布 個人蔵

また展示ではキュビズムや抽象を思わせる実験的な作品の他、「油彩日本画」とも呼ばれる晩年の俳味のある作品までが登場。


小林猶治郎「踏路者」1935年 油彩・画布 練馬区立美術館

それに童心に帰ったような軽妙な絵画も猶治郎の世界。計80点余で猶治郎の全貌を紹介しています。

絵画を通して見る一人の奔放な画家の軌跡。「超然孤独」とありますが、家族との絆は強く、彼の作品は大切に守られてきたそうです。


富田有紀子展(2/17~4/7)

なお会場では猶治郎のお孫さんにあたる富田由紀子の個展もあわせて開催。富田は96年のVOCA展で奨励賞を受賞した画家、鮮烈な色遣いによる花をモチーフした一連の作品は美しき光を放っています。


「富田由紀子展」展示室風景

知られざる画家を発掘、綿密な調査を経て、改めて世に問う展覧会。まさに練馬ならではの好企画ではないでしょうか。


小林猶治郎「素描写生行脚」1985年 油彩・画布 個人蔵

「芸術家は感激が枯れたら生ける屍。人生八十八、明日の無い孤独道と自在心を求めて、彷徨う枯淡の夢。」小林猶治郎

4月7日まで開催されています。私はおすすめします。

「超然孤独の風流遊戯 小林猶治郎展」 練馬区立美術館
会期:2月17日(日)~4月7日(日)  
休館:月曜日
時間:10:00~18:00
料金:大人500円、大・高校生・64~74歳300円、中学生以下・75歳以上無料。
住所:練馬区貫井1-36-16
交通:西武池袋線中村橋駅より徒歩3分。

注)写真は特別内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「パラモデル パラの模型/ぼくらの空中楼閣」 メゾンエルメス

メゾンエルメス
「パラモデル パラの模型/ぼくらの空中楼閣」
2/16-5/6



メゾンエルメスで開催中のパラモデル個展、「パラの模型/ぼくらの空中楼閣」のプレスプレビューに参加してきました。

2001年に林泰彦(1971~)と中野裕介(1976~)により結成されたアートユニット「パラモデル」。パラレルやパラドックスなどを意味する「パラ」と、模型、設計図を意図する「モデル」の組み合わせ。これまでにも国内各地の美術館や画廊にて、まさに模型、言わば建築的なインスタレーションを展開してきました。

そのパラモデルが今回は東京のど真ん中、銀座のメゾンエルメスのクリスタルな空間に挑戦。これまた場を意識し、その構造を見事に活かしたインスタレーションを行っています。

ではその活かした構造とは。それこそエルメスを特徴付ける外壁のガラスブロックに他なりません。

メゾンエルメスは関西国際空港を設計したことでも知られるレンゾ・ピアノ氏の設計。外壁には45センチ角のガラスブロックが13000枚ほど張られています。


「パラの図式_#001」2013年
方眼用紙、アルミパイプ、木材、針金 540×630×1935センチ

パラモデルはそのガラスに着目。全く同じ45センチ四方のキューブをアルミと木材によって作り、それを上下左右に拡張させ、空間全体を埋め尽くすような巨大構造物を生み出しました。


「パラの図式_#001」2013年
方眼用紙、アルミパイプ、木材、針金 540×630×1935センチ

それが「パラの図式#001」、まるでキューブが細胞分裂して増殖するかのように展開した作品です。しかしながら内部は空洞、素材も簡素なパイプに方眼紙ということで、独特の軽やかさをもたたえています。


「パラの図式_#001」2013年
方眼用紙、アルミパイプ、木材、針金 540×630×1935センチ


それにしてもエルメスのガラス壁、その形と大きさに直接向き合った作品はこれまでにあったでしょうか。構造物は人工都市のようでもあり、また宙に浮く巨大戦艦のようでも。一方で増殖というキーワードにもよるのか、何らかの有機物のようにも見えてきます。

さて今、「人工都市」や「有機物」と書きましたが、それは本展のキーワードでもあります。

というのも作品は、レンゾ・ピアノのガラスブロックに、ブルーノ・タウトの「都市の冠~クリスタル建築」の構想を結びつけたもの。


「巨大な少年の建築計画(頭部)」2013年
工事用養生メッシュシートにインクジェット出力 435×435×655センチ


詳しくは配布の解説シートを参照いただきたいところですが、そこに「巨大な少年の建築計画(頭部)」のインスタレーションを加えることで、より人間的で複眼的なシナリオを持つ一種の物語が構築されているのです。


「巨大な少年の建築計画(腕部)」2013年
工事用養生メッシュシートにインクジェット出力 268×268×804センチ


パラモデルといえば現在、ステーションギャラリーで開催中の「始発電車を待ちながら」でプラレールを用いた作品も発表していますが、今回のエルメスのようにテクストも付随するコンセプチャルな作品もまた彼らの世界の在り方です。

巨大都市の一角、ある建築家による、巨大な少年の建築計画。
透明なガラスブロック群で出来た繭の中、胎児のように息づく少年は、
宮殿状の色とりどりに煌めく「都市の冠」を被っている。(パラモデル)


丸の内と銀座でパラモデルの全方位な魅力を楽しめるのではないでしょうか。


手前:「パラの模型_#003」2013年
透明塩ビパイプ、ランバーコア、糸


なお「パラの図式」や「パラの模型」など、一部の作品については、2月25日まで公開制作が行われるとか。増殖するパラモデルの世界をリアルタイムで知るチャンスです。

「Paramodel (パラモデル)/青幻舎」

5月6日まで開催されています。

「パラモデル パラの模型/ぼくらの空中楼閣」 メゾンエルメス
会期:2月16日(土)~5月6日(月・祝)
休廊:会期中無休。
時間:11:00~20:00 *日曜は19時まで。
料金:無料
住所:中央区銀座5-4-1 銀座メゾンエルメス8階フォーラム
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅B7出口すぐ。JR線有楽町駅徒歩5分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「琳派から日本画へ」 山種美術館

山種美術館
「琳派から日本画へ 和歌のこころ・絵のこころ」
2/9~3/31



山種美術館で開催中の「琳派から日本画へ 和歌のこころ・絵のこころ」のプレスプレビューに参加してきました。

同館では三番町時代の2008年以来となる琳派展。今回は所蔵品だけでなく、東博や東近美、それに文化庁など、他館の作品も登場し、実に充実した展示となっています。


本阿弥光悦「摺下絵古今集和歌巻」17世紀(江戸時代)
紙本・墨書 東京国立博物館


しかしながら何も最大の特徴は他館の作品が展示されていることではありません。

ずばり本展は『琳派時代拡張型』。平安古筆より江戸絵画、さらには近代日本画までを幅広く俯瞰することで、「和歌」と「装飾」、言い換えれば日本人が古来より大切にしてきた歌や絵のこころを探っていこうとする企画なのです。

琳派のエッセンスを1000年もの時間軸に広げてみる日本美術。最近の同館ならではの複眼的な視点の光る展覧会でした。

では早速、展示へ参りましょう。まずは藤原定信の「石山切(貫之集下)」から。


藤原定信「石山切(貫之集下)」重要美術品 12世紀(平安時代)
紙本金銀泥絵・墨書 山種美術館(前期展示)


いずれも華麗な料紙装飾に流麗な書体と、その色に形の美しさからして見惚れてしまいますが、何とこれらの古筆コレクションは15年ぶりの公開だとか。

蔵の深い山種美術館、まだまだ名品をお持ちです。琳派のデザインにも連なるかざりの妙味。まさか平安古筆で味わえるとは思いませんでした。

続いては本丸の琳派、まずは大御所の宗達です。ここではまたまた超レアな作品が。この「源氏物語図 関屋・澪標」に他なりません。


俵屋宗達(款)「源氏物語図 関屋・澪標」17世紀(江戸時代)
(前期展示)


ここで「いや、そんなことはないだろう。」というお声を頂戴するのも致し方ないところ。言うまでもなく宗達の同名の屏風は静嘉堂文庫に納められ、国宝指定を受けている超一級品。レアではありません。では、今回出ている同じ屏風仕立ての作品は何なのか。


*参考図版 俵屋宗達「源氏物語図 関屋・澪標」17世紀(江戸時代)
静嘉堂文庫美術館(本展非出品)


やや込み入った話にはなりますが、実は今回公開の「源氏物語図」。今から遡ること約35年、昭和52年刊行の琳派全集に一度モノクロで図版が掲載されたものの、実際に一度も公開されたことのない別バーションの作品なのです。

もちろん伝来には議論があり、本展でも厳密には「俵屋宗達(款)」として紹介。しかしながら反り返った太鼓橋になだらかな山の稜線などはいかにも宗達風。金地ではなく素地が金泥、また人物描写などに相違点あるものの、全体として似通っているのは事実です。


「源氏物語図 関屋・澪標」短冊(スライドより)
右から 相見香雨 前田青邨 奥村土牛 安田靫彦 小林古径 (前期展示)

 
また本作では付属品として短冊が残され、そこには前田青邨、奥村土牛、小林古径といった名だたる日本画家の極書、ようは一種の鑑定書が記されているのも興味深いところ。展示初公開の「「源氏物語図 関屋・澪標」、かの国宝作との関係は如何なるものなのか。本展をきっかけにまた議論されていくに違いありません。


酒井抱一「秋草鶉図」重要美術品 19世紀(江戸時代)
紙本金地・彩色 山種美術館(前期展示)


さて山種の琳派と言えば我らが酒井抱一。お馴染みの「秋草鶉図」もご覧の通り。やまと絵風の可憐な秋草に一転しての中国画風の精緻な鶉、そして眩い金に黒く重い月。様々なエッセンスを無理なく画面に落とし込んだ抱一の鋭い機知を伺うことも出来ます。


酒井抱一「月梅図」19世紀(江戸時代)
絹本・彩色 山種美術館(前期展示)


また抱一では「月梅図」も優品です。何気ない月と梅との取り合わせにも見えますが、墨の濃淡、かすれを活かしての梅の溌剌とした描写は見事なもの。

江戸絵画のラストは是真から「波に千鳥図」です。もちろんこれは得意の漆絵。かつて根津美術館の是真展でも引用がありましたが、是真は光琳伝の硯箱を写すなど、琳派を意識している面が多分にあります。時代の区切りに相応しい作品でした。

それでは後半の近代日本画。これが大観に観山に古径に御舟に又造と怒濤のラインナップです。


下村観山「老松白藤」1921(大正10)年
紙本金地・彩色 山種美術


まずは観山から。「木の間の秋」の例を挙げるまでもなく、近代の琳派変奏を語る上では外せない画家ではありますが、今回は「老松白藤」が出品。画面を支配する松の力強さは琳派というよりも、桃山の狩野派の巨木様式を思わせる面があるかもしれません。


菱田春草「月四題」1909-1910(明治42-43)年
絹本・墨画淡彩 山種美術館


また同じく近代の琳派の系譜として挙げられる機会の多い春草からは「月四題」が。実は本作は私が日本画を見始めた頃、一番好きになった作品。満月の夜の茫洋たる情景美。どことない物悲しさ。改めて心に響きました。

さて最後に私の一推しを。川端龍子の「八ツ橋」です。


川端龍子「八ツ橋」1945(昭和20)年
絹本金地・彩色 山種美術館(前期展示)


八ツ橋、燕子花のモチーフといえば琳派の王道。光琳の名品を挙げるまでもなく、抱一以降にも度々登場して受け継がれてきました。

山下先生をして曰く『野蛮な燕子花』。確かにこれでもかと群れ、またむせ返るほどに咲く燕子花はもはや過剰です。そしてそれが逆に龍子一流のアクの強さ、言わばギラギラとした表現だからゆえの魅力を伝えています。

まさに衝撃の燕子花でした。是非ともお見逃しなきようおすすめします。


「琳派から日本画へ」オリジナル和菓子(PDF)

さて本展はスペースなどの都合もあり展示替え多数。前後期合わせて一つの展覧会です。

前期展示:2/9~3/3 後期展示:3/5~3/31 出品リスト(PDF)

なお前期観覧券の半券を提示すると後期は200円引(大・高校生は100円引)で入場出来ます。半券は要保存です。*「琳派から日本画へ」お得な割引サービスのご案内

琳派・近代日本画ファンはもちろん、古筆ファンにもおすすめしたいと思います。

「美術手帖2008年10月号/琳派/美術出版社」

前期展示は3月3日まで、展覧会は3月31日までの開催です。

「琳派から日本画へ 和歌のこころ・絵のこころ」 山種美術館@yamatanemuseum
会期:2月9日(土)~3月31日(日) 前期:2/9~3/3 後期:3/5~3/31
休館:月曜日(但し2/11は開館、翌日は休館。)
時間:10:00~17:00(入館は16時半まで)
料金:一般1200(1000)円、大・高生900(800)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:渋谷区広尾3-12-36
交通:JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅2番出口より徒歩約10分。恵比寿駅前より都バス学06番「日赤医療センター前」行きに乗車、「広尾高校前」下車。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「矢島史織:MIND SCOPE」 LIXILギャラリー

LIXILギャラリー
「矢島史織:MIND SCOPE」 
2/1-2/25



LIXILギャラリーで開催中の矢島史織個展、「MIND SCOPE」へ行ってきました。

透明なガラスの中に溢れんばかりに入った水。何気なく表面を目で追っかけていると、いつしか反射して映り込む周囲の景色が広がっている。

矢島の作品を端的に表せば、そうした言葉で言えるかもしれません。

1979年に長野で生まれ、2005年に多摩美術大学大学院の日本画領域を修了した矢島は、これまでにも地元長野の他、都内各地の画廊にて個展を重ねてきました。



いわゆる「グラスシリーズ」を制作する切っ掛けになったのは、木漏れ日のピンホール現象。矢島はそのピンホールを追うことで、光と影の関係にも着目。さらにグラスと水とを通した風景を描くことを始めました。

それにしてもこの絵具の透明感、日本画の顔料の繊細な美しさを巧みに引き出しています。



色が折重なるグラス、そして広がる木立に自然の景色。暖色系の色遣いは春の気配を感じさせはしないでしょうか。

またグラス上部では水が表面張力でぐっとせり上がる光景も。矢島は絵具を何層にも塗り込めることで、たっぷりとした水の質感を表しました。



矢島の述べる「八ヶ岳で体験した森」、その「早朝の澄んだ色、昼間の強いコントラスト、過ぎ去る雨雲、そして夜の闇」。(LIXILギャラリーWEBサイトより転載。)確かにその光に色と空気を作品から味わうことが出来ます。

2月25日まで開催されています。

「矢島史織:MIND SCOPE」 LIXILギャラリー
会期:2月1日(金)~2月25日(月)
休廊:日・祝
時間:10:00~18:00
住所:中央区京橋3-6-18 LIXIL:GINZA2階
交通:東京メトロ銀座線京橋駅より徒歩1分、東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅7番出口より徒歩3分、都営浅草線宝町駅より徒歩3分、JR線有楽町駅より徒歩7分。
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「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」 横浜美術館

横浜美術館
「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」
1/26-3/24



横浜美術館で開催中の「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」のプレスプレビューに参加してきました。

20世紀が生んだ世界的な報道写真家、ロバート・キャパ。実はその存在は元々、二人の人物によって創り出されたフィクションであったことをご存知でしょうか。


「ゲルダ・タロー」展示室風景

その二人とはアンドレ・フリードマン(1913~1954)とゲルダ・タロー(本名ゲルタ・ポホリレ。1910~1937)。1930年代にパリで知り合った二人は「ロバート・キャパ」という人物を作ることで、報道写真の仕事の道を切り開きます。

しばらくするとタローは写真家として自立。フリードマン自身がキャパに取って代わりますが、1937年、スペイン内戦のさなかにタローが27歳の若さで死亡。またフリードマン自身も後にインドシナ戦争の取材中に地雷へ接触して亡くなってしまいます。

まさに戦場の写真家。生と死の隣り合わせの極限を撮り続けた写真家です。

そして本展ではキャパの二人、つまりはフリードマンとタローの業績を紹介。300点もの写真、資料によって知られざる二人の関係を解き明かしています。


撮影者不詳 「ゲルダ・タロー、グアダラハラ戦線」1937年7月 ICP

まずはゲルダ・ポホリレ、通称タローから。岡本太郎に由来するペンネームを使った彼女、当初からフリードマンとともに写真家として活動をスタート。スペイン内線の取材に参加し、特に女性兵士を多く被写体におさめました。


ロバート・キャパ「セロ・ムリアーノ付近、コルドバ戦線」1936年9月5日 横浜美術館

そしてゴルドバ戦線ではいわゆる「キャパ」としての名声を高めた「崩れ落ちる兵士」を撮影。まさに決定的瞬間、あまりにも有名な作品ですが、これをフリードマンではなくタローが写したのではないかという説も存在します。

「キャパ」の写真は一体どちらが撮ったのか。二人の写真家による一枚の作品、また別の作品。その比較検討も展示のポイントかもしれません。

それにしてもタローの死は早すぎます。戦線で取材していた彼女は1937年7月25日、乗っていた車が共和国軍の戦車に追突されてしまいます。翌日に病院で死亡。いつしか「キャパの彼女」という以外、歴史の記憶から忘れ去られていきました。

実は出品のタローの写真はほぼ日本初公開です。言わば本展はタロー復権の一つの切っ掛けになるのかもしれません。


「ロバート・キャパ」展示室風景

さて続いてはタロー亡き後のフリードマン。キャパの190点余にも及ぶ作品を時系列で。こちらは全て横浜美術館のコレクションです。

冒頭はタローとの共同活動期。先にも触れたスペイン内戦での作品などが紹介されています。また1938年には日中戦争の取材のために中国へも。1943年からは連合国軍に同行し、第二次世界大戦の取材も始めました。


ロバート・キャパ「ノルマンディー海岸、オマハ・ビーチ」1944年6月6日 横浜美術館

強烈なのはノルマンディー上陸作戦時の一枚。「Dデイ、オハマビーチ」です。まさに作戦のさなか、上陸軍の第1陣の船に乗船した彼は、無我夢中、まさに死にものぐるいでかの歴史的修羅場をカメラに収めました。

率先して戦場へと乗り込むフリードマン。それはパリ解放でも同様です。パリ入城へのフランス軍戦車の後を追い、当時フランス人以外は禁じられていたパリ解放の瞬間、凱旋のパレードを写し出しました。(フリードマンはハンガリー人です。)


ロバート・キャパ「東大寺・奈良」1954年4月21日 横浜美術館 他

また展示では戦後、日本に取材した一連のシリーズも。約20日間、東京から熱海、また奈良、大阪などの関西を回った彼は、「桜の花よりも、その下に生きている日本の人々の方が魅力的だ。」と語り、あくまでも一般の人々の暮らし、日常を見つめ続けました。


ロバート・キャパ「ナムディンからタイビンへの道、ヴェトナム」1954年5月25日 横浜美術館

そしてタローと同じく、フリードマンの死も突然です。日本滞在中にインドシナ戦争の取材依頼を受けた彼は一路ベトナムへ。戦地を取材して歩きながらも1954年5月25日、北部ベトナムで地雷を踏んで死亡。僅か40歳で人生の幕を降ろしました。

未だ語り尽くされない二人の「ロバート・キャパ」。迫力ある作品はもとより、その激しくドラマチックな人生にも胸を打たれました。

3月24日まで開催されています。

「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」 横浜美術館
会期:1月26日(土)~3月24日(日)
休館:木曜日。但し1/31は開館。
時間:10:00~18:00(入館は17時半まで)
料金:一般1100(1000)円、大学・高校生700(600)円、中学生400(300)円。小学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体。要事前予約。
 *毎週土曜日は高校生以下無料。
住所:横浜市西区みなとみらい3-4-1
交通:みなとみらい線みなとみらい駅5番出口から徒歩5分。JR線、横浜市営地下鉄線桜木町駅より徒歩約10分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「大巻伸嗣 More Light」 渋谷ヒカリエ 8F CUBE

渋谷ヒカリエ 8F CUBE
「大巻伸嗣 More Light」
2/6-2/18



渋谷ヒカリエ 8F CUBEで開催中の大巻伸嗣個展、「More Light」へ行ってきました。

国内外の現代アート展などで引っ張りだこの人気アーティスト大巻伸嗣。布に水に紐や水晶、はたまた絵具に和紙にと多様な素材を用い、空間を多様に変化させて見せるインスタレーション、その繊細でかつ美しい表現に惹かれている方も多いかもしれません。



そのような大巻の都内で久々となる個展が現在、渋谷ヒカリエで開催中。お馴染みの水晶に雲母を駆使して平面や立体に、白を基調とした円形、球形の作品を展開しています。



白いボール状のものが無数に浮く空間。さながら水晶粉の月、惑星。白い宇宙とも呼ばれるような景色が広がっていますが、細部に目を凝らすとまた異なった世界が出現。



そこには月面上の地形ならぬ、艶やかな花が咲いていることが見て取れます。



もちろん床や壁面に設置された円形のオブジェも同様。水晶のキラキラとした輝きを放つ花びらが随所に。まさしく百花繚乱です。



あえて白に白をあわせ、ニュアンスに富んだ光の変化を取り込んだ作品群。大巻ならではの繊細な感性が際立っていました。

なお本展は二部構成。場所を代官山に移してのアートフロントギャラリーでも22日から個展が。


「大巻伸嗣 : constellation - traces in memories - 」@代官山アートフロントギャラリー(2/22~3/10)

そちらでは2005年にスパイラルで発表された「Flotage」の発展版が展示されるとか。こちらも必見と言えそうです。

渋谷ヒカリエ 8F CUBEでの大巻伸嗣個展、「More Light」は2月18日まで開催されています。

「大巻伸嗣 More Light」 渋谷ヒカリエ 8F CUBE
会期:2月6日(水)~2月18日(月)    
時間:11:00~20:00
料金:無料
住所:渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ8階
交通:東急田園都市線、東京メトロ副都心線渋谷駅15番出口直結。東急東横線、JR線、東京メトロ銀座線、京王井の頭線渋谷駅と2F連絡通路で直結。
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「BLACKS ルイーズ・ニーヴェルスン|アド・ラインハート|杉本博司」 DIC川村記念美術館

DIC川村記念美術館
「BLACKS ルイーズ・ニーヴェルスン|アド・ラインハート|杉本博司」
2/2-4/14



DIC川村記念美術館で開催中の「BLACKS ルイーズ・ニーヴェルスン|アド・ラインハート|杉本博司」のプレスプレビューに参加してきました。

「黒」を重要な要素とした美術作品の特徴とは一体何か。どのような作品であれ、何らかの形で色を意識しないことはありませんが、言わば「色彩の誘惑」(プレスリリースより引用)を排した「黒」はより異質。むしろ強い個性を持っているのかもしれません。

前置きがややこしくなりました。端的に本展では「黒」を基調とした現代の三作家を紹介。作品を通して開ける「黒」の美しさはもとより、個々に全く異なった表現を楽しめるような展示となっています。

さてその三作家とは。ルーズ・ニーヴェルスン(アメリカ。1899~1988)、アド・ラインハート(アメリカ。1913~1967)、そして杉本博司(日本。1948~)。それぞれ彫刻、絵画、写真の分野で業績を残すアーティストです。


杉本博司「劇場」シリーズ:展示室風景

早速、お馴染みの杉本博司から。出品はいずれも「劇場」シリーズ。いわゆる世界各地の劇場内部のスクリーン、映画一本分を長時間露光で捉えた作品です。


杉本博司「劇場」シリーズ:展示室風景

杉本はモノクロームについて、「カラー写真はあまりにも人工的。白黒世界は現実世界からの抽象である。」と述べています。

一見、上映前の真っ白なスクリーンかと思いきや、先にも触れたように実は映画一本分が写し出されているというこの作品。通常、一瞬間を写し出すに過ぎないカメラのファインダーを長時間開けておくことで、逆に人の眼は分からない光を捉えることに成功しています。


杉本博司「劇場」シリーズ:展示室風景

それはまさに杉本が「シャッターの持たない人間の眼は必然的に長時間露光になる。(略)はじめて眼が開いた時に露光は始まり、臨終の時で眼を閉じるまでが、人間の眼の一回の露光である。」をカメラで体現したもの。それを通じて人間の見ることの意味、つまりは知覚の在り方そのものを洞察しているわけです。

なお作品は主に70、80年代のものと、90年代の計25点超で構成。さり気なくこのスケールで「劇場」を見られることは滅多にありません。

さて続いてはルイーズ・ニーヴェルスン。キエフに生まれ、アメリカで活躍した女性の木彫家です。あえて申し上げましょう。このニーヴェルスンの彫刻作品を見るだけでも、本展へ行く価値は十分にあります。

と言うのも、そもそも国内で殆ど紹介されない彼女の作品をまとめて見られるからです。

出品は15点。いずれも国内各地の美術館より集められたものですが、それは日本にあるニーヴェルスン・コレクションの殆ど。しかも作家の変遷を辿れるように比較的初期から最晩年の作品までと幅広く揃っています。


ルイーズ・ニーヴェルスン「世界の庭 Vl」1959年 塗料、木材 93.5×190.5×22.2cm
DIC川村記念美術館
©Estate of Louise Nevelson / ARS, New York/JASPAR, Tokyo, 2012


ニーヴェルスンの彫刻は極めて独特。ともかくも黒い箱を一つ一つ積み上げていくような手法はあまり他に例がありません。

初期の50年代ではまだ箱の大きさも形もランダム。既製の木製品(時に廃材も利用。)を寄せ集めて作品にしていましたが、後に自身でパーツの形状を考えて構成、それを艶消しの黒に塗装、組み立てて制作。次第に幾何学的で統一感のある巨大壁画の作風へと変化しました。


ルイーズ・ニーヴェルスン「夢の家 XXX」1972年 塗料、木材 180×67×36cm
DIC川村記念美術館
©Estate of Louise Nevelson / ARS, New York/JASPAR, Tokyo, 2012


元々、メキシコの壁面家、ディエゴ・リベラの助手の経験もあったというニーヴェルスン、黒を用いたのは「形をよりはっきり見せるため。」からだそうです。

また会場では黒の作品を同じく黒の壁面に並べていますが、これは作家自身が自在を展示した際によく試みられたとのこと。作家の意図を再現しています。

それにしても曲線と直線、また細部と全体の関係。組み上げられた箱全体の建築的な存在感と、内部の凹凸のある細かな装飾の魅力、大変に見ごたえがあるのではないでしょうか。

ルイーズ・ニーヴェルスン。私にとって忘れらない作家がまた一人増えました。

ラストはアメリカ抽象芸術を代表する作家でもあるアド・ラインハート。まさに黒の展覧会に相応しい黒の画家として差し支えありません。


アド・ラインハート「無題」1966年 他
スクリーンプリント、紙 滋賀県立近代美術館


最初には晩年の小品、版画が数点。写真はおろか、遠目からでも黒一色にしか見えませんが、近づくと色調が微妙に変化していることが分かります。

そして代表的な「抽象絵画」シリーズです。 ここではほぼ1.5メートル四方の限りなく正方形に近い3点、川村記念とサムソン美術館の「抽象絵画」、そして東京現代美術館の「タイムレス・ペインティング」が並んでいます。


アド・ラインハート:展示室風景

ラインハートは「色彩はものを見えなくする。色彩は野蛮で不安定だ。」と考え、色はもちろん、質感、筆致、光、動き、形などを極限にまで排し、唯一無二。言わば非絵画的とも言える一連の黒のシリーズを制作しました。


アド・ラインハート:展示室風景

しかしながら先の版画同様、ここでも3点並べることで、初めて浮かび上がる異なった黒を見ることが出来ます。

杉本、ニーヴェルスン、ラインハート。写真、彫刻、絵画の異なったメディアから開ける様々な黒のイメージ。表現こそ違いますが、シリーズでの制作、構図やモチーフとしての反復や結合と、共通点も存在します。

川村記念美術館ならではの現代美術から「黒」の魅力を探る展覧会。会場が総じて暗めなのも特徴ですが、徐々に目が慣れてくると、作品の黒と空間の闇が奇妙にも調和してくることが分かります。


お茶席企画「Tearoom in BLACKS」

なお今回はお茶席でも黒に因んだ企画が。陶芸家・横山拓也と木工作家・新宮州三のコラボによる黒の茶碗と漆器で抹茶とお菓子をいただけます。(10:30~16:30、一服800円)

関連の講演会プログラムも充実。いずれも先着60名で聴講は入館料のみ。要チェックです。

「三次元における黒―素材、空間、色彩」
梅津元 氏 (埼玉県立近代美術館主任学芸員/芸術学)
2月23日(土)14:00~15:30

「黒いカンヴァス : マティスからラインハートまで」
田中正之 氏 (武蔵野美術大学教授)
3月9日(土)14:00~15:30

「闇と色彩 ― 写真と黒の関係」
清水穣 氏(同志社大学教授)
3月23日(土)14:00~15:30

杉本もニーヴェルスンもラインハートも館外作品が多数。この切り口で揃うことは二度とないかもしれません。


ルイーズ・ニーヴェルスン:展示室風景

4月14日までの開催です。私はおすすめします。

「BLACKS ルイーズ・ニーヴェルスン|アド・ラインハート|杉本博司」 DIC川村記念美術館@kawamura_dic
会期:2月2日(土)~4月14日(日)
休館:月曜日。但し2/11は開館。2/12は休館。
時間:9:30~17:00(入館は16時半まで)
料金:一般1300(1100)円、学生・65歳以上1000(800)円、小・中・高生500(400)円。
 *( )内は20名以上の団体。
 *2/15(金)は DIC株式会社の創業記念日につき入館無料。
住所:千葉県佐倉市坂戸631
交通:京成線京成佐倉駅、JR線佐倉駅下車。それぞれ南口より無料送迎バスにて30分と20分。東京駅八重洲北口より高速バス「マイタウン・ダイレクトバス佐倉ICルート」にて約1時間。(一日一往復)

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「古代ギリシアの名作をめぐって 人 神々 英雄」 ルーヴル - DNP ミュージアムラボ

ルーヴル - DNP ミュージアムラボ
「古代ギリシアの名作をめぐって 人 神々 英雄」 
2/1-9/1



ルーヴル - DNP ミュージアムラボで開催中の「古代ギリシアの名作をめぐって 人 神々 英雄」のプレスプレビューに参加してきました。

ルーヴル美術館のコレクションを大日本印刷(DNP)のマルチメディアコンテンツを使って紹介する「ルーヴル - DNP ミュージアムラボ」。2006年から続くプロジェクト、これまでにもエジプト美術や西洋絵画などの様々な優品が展示されてきました。

第2期の最終展示に当たる今回のテーマは古代ギリシア美術。ギリシア陶器の傑作として知られる「アンタイオスのクラテル」を筆頭に、ルーヴルより4点の美術品が来日。それを双方向のデジタルメディアで直感的に楽しむことが出来ます。


左:「赤像式萼形クラテル」、通称「アンタイオスのクラテル」
 陶器画家エウフロニオスによる署名、陶工エウクシテオス作といわれる/アテナイ、紀元前515‐紀元前510年頃
 粘土/高さ44.8 cm、直径 55 cm/チェルヴェーテリ(イタリア) 出土/カンパーナ・コレクション、1861年 パリ、ルーヴル美術館
右:「赤像式の杯」
 陶工エウフロニオスによる署名、陶器画家オネシモス作といわれる/アテナイ、紀元前500‐紀元前490年頃
 粘土/高さ9.6cm、幅49cm、直径39.9cm/チェルヴェーテリ(イタリア)出土/1871年取得 パリ、ルーヴル美術館


と言うわけで、早速「アンタイオスのクラテル」から。現存するところ僅か10点、古代ギリシア陶器の作家では最も革新的というエウクシテオスの作品、ともかくは英雄ヘラクラスが巨人アンタイオスを退治する様子を描いた鮮やかな紋様に目を奪われはしないでしょうか。

ちなみにクラテルとは酒と水とワインを曲げ合わせるための容器。古代ギリシアの宴会で良く用いられ、これ一つで45リットル、ワインボトルに換算すると30本分は入るそうです。


「アンタイオスのクラテル」鑑賞システム(画面)

そして作品をより深く理解させてくれるのがデジタル鑑賞システム。陶器の精緻な拡大図像はもとより、アトリビュートの意味、さらには作家の署名の場所などを紹介。これらはいずれもタッチパネル方式、操作も簡単です。


「アンタイオスのクラテル」鑑賞システム(画面)

中でも驚かされるのは、肉眼では見落としてしまう髭の立体的な表現まで確認出来ること。確かに髭がボツボツと浮き上がっているではありませんか。


「ディオニュソスの仮面」
 ボイオティア、紀元前450‐紀元前400年頃
 粘土/高さ30cm/ボイオティア(ギリシア) 出土/1895年取得 パリ、ルーヴル美術館


また「ディオニュソスの仮面」ではかつて施されていた装飾なども分かりやすく解説。通常、文字情報であることの多いキャプションを、そのまま視覚イメージに置き換えて見られるわけです。

さてワインを入れたクラテルに酒の神として知られるディオニュソス(ローマ神話ではバッカス)。この両者の共通点は何なのか。


鑑賞システム「シュンポジオンへようこそ」

簡単です。実は本展はギリシアの宴会、いわゆる「シュンポジオン」も重要なテーマ。会場では宴会の様子を3面プロジェクションスクリーンで再現。踊り子や楽師の中、横になって寛ぎながら酒を飲む男たちを等身大スケールで体感出来ます。


鑑賞システム「シュンポジオンへようこそ」(画面)

ちなみにお気づきかもしれませんが、図像は先の「アンタイオスのクラテル」に描かれたモチーフ。またシステムはインタラクティブです。近づくと人物が動いたりします。また耳を澄ませば古代ギリシア音楽が。これらは当時のパピルスなどに残された曲を、再現した楽器で演奏したものだそうです。


鑑賞システム「ギリシアの神々や英雄を見分ける」(画面)

またこの他には、覚えるだけでも大変、ギリシア神話に登場する多様な神々をアトリビュートなどで見分けるシステムも。こちらもタッチパネル。なおこれはルーヴル美術館でも特に人気のミロのヴィーナスの展示室に設置されることが決まったそうです。

ラストは身体を動かしてギリシア彫刻を楽しむコーナー。


鑑賞システム「男性の裸像 完璧を求めて」

これが鑑賞者自身が装置の前に立ち、CG映像に沿って、ギリシア彫刻のポーズを真似しながら、造形について理解しようとするコンテンツ。ちなみに真似したポーズはそのままお土産として写真でいただけます。


鑑賞システム「男性の裸像 完璧を求めて」

まさに至れり尽くせりの体感型鑑賞プログラム「ルーヴル - DNP ミュージアムラボ 古代ギリシアの名作をめぐって」。入場には事前予約(WEBサイト、もしくは電話。)が必要ですが、これが全て無料というのは本当に太っ腹。頭が下がります。

ちなみに今回で2010年からの第2期が終了しますが、既に第3期の開催も決定。2014年から3年間のスケジュールで行われるそうです。


「ルーヴル - DNP ミュージアムラボ 古代ギリシアの名作をめぐって 人 神々 英雄」展示室入口 

毎回のラボに参加して感じるのは、DNPのデジタルシステムが進化していること。次のシリーズではさらにどのような新しい試みが待ち受けているのか。そちらにも期待したいと思いました。

ロングランの展覧会です。9月1日まで開催されています。

「古代ギリシアの名作をめぐって 人 神々 英雄」 ルーヴル - DNP ミュージアムラボ
会期:2月1日(金)~9月1日(日)
休館:金・土・日曜のみ開館。月~木、及び金曜が祝日の場合は休館。
時間:金曜 18:00~21:00、土・日曜 10:00~18:00。
料金:無料。完全事前予約制→「展覧会公式サイト」または「ルーヴル ‐ DNP ミュージアムラボ カスタマーセンター」(03-5435-0880)にて。
 *[電話受付時間] 月~木 11:00~17:00/金 11:00~21:00/土・日 9:00~18:00(月~金の祝日、年末年始は休み)
住所:品川区西五反田3-5-20 DNP五反田ビル1F
交通:JR山手線(西口)・都営浅草線(A2出口)・東急池上線五反田駅徒歩6分。東急目黒線不動前駅徒歩7分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「石川真生―沖縄を撮る」 横浜市民ギャラリーあざみ野

横浜市民ギャラリーあざみ野
「あざみ野 フォト・アニュアル 石川真生―沖縄を撮る」
2/2-2/24



横浜市民ギャラリーあざみ野で開催中の「あざみ野 フォト・アニュアル 石川真生―沖縄を撮る 」へ行ってきました。

横浜はあざみ野発、現代の写真表現を紹介する「あざみ野フォト・アニュアル」。近年、年に一回、写真家を個展形式で紹介してきましたが、今回選ばれたのは石川真生。1953年に沖縄で生まれた沖縄の写真家です。


「石川真生―沖縄を撮る」展示室風景

石川は占領下の沖縄でデモに参加。そこで火炎瓶にぶつかって焼死した機動隊員の姿を目撃した体験から、写真家になることを決意。以来、一貫して沖縄を撮り続けました。

展示では石川のデビュー作の「熱き日々 in オキナワ」(1975-77年)と初公開の近作「沖縄芝居」(1989-92年)、そして同じく沖縄出身の森花との共作で最新作でもある「森花-夢の世界」(2012年)の三シリーズを紹介。過去から今へ。終始、沖縄と向き合いながらも、表現を変化させてきた石川の世界を知ることが出来ました。

さてそのデビュー作の「熱き日々 in オキナワ」から。

1975年、まだ22歳だった石川は、ちょうどベトナムから帰還してきた米兵の写真を撮ろうと思い、黒人専用のバーで働きながら、黒人米兵やホステスと生活を共にします。


「熱き日々 in オキナワ」1975-77年、ゼラチン・シルバープリント

賑やかなバーで酒を飲む人々、交わる男女。そして熱気に満ちた日常。それは石川の「黒人を愛して何が悪い。セックスを謳歌して何が悪い。」の言葉に集約されているのではないでしょうか。

ちなみにこの一連のシリーズ、80年代に出版された際、被写体の女性から抗議を受け、お蔵入りなってしまったとか。その時にプリントはおろか、ネガも渡してしまったため、作品は世に出ることもありませんでしたが、実は何と父親が一部のプリントを秘蔵。それが今回、公開されることになりました。


「熱き日々 in オキナワ」1975-77年、ゼラチン・シルバープリント

よって一部のプリントは変色していたり、端が破れていたりと良好ではありません。しかしながらここに捉えられたのは確かに石川が身体をもって入り込んだ沖縄の深部。ドロドロとしながらも生き生きとした人間ドラマを写真からも感じることが出来ます。

作品はプリント25点、スライド90点超。全てモノクロームです。どことなく退廃的でもあり熱気に満ちた70年代の沖縄の日常。力強さと儚さとが同居する瞬間。石川は親しみのある眼差しでもって彼ら彼女らを捉えています。実に見応えがありました。

さて本展、石川という一人の写真家の個展ながら、その幅広い表現には驚かされるものがあります。最新作の「森花-夢の世界」へと進みましょう。


「森花-夢の世界」2012年、インクジェットプリント

ここに表れたのは艶やかでかつシュールな夢の国。まだ20代の沖縄のアーティスト、森花が見た夢を自身で演じながらセットで再現。それを石川が撮影していくという共作シリーズです。


「石川真生―沖縄を撮る」展示室風景

しかしながら夢の多様なこと。性に痛みもストレート。またメッセージも強烈です。

後ろを向いた両親に足枷で繋がれた「両親」、そして浴槽で愛する男を殺し、『女にとって愛とは独り占めすることだ。』との言葉を残す「浴槽」、さらには『私』を食べる東京の食卓を描いた「食卓」など。舞台はもちろん全て沖縄。

時に猟奇的なまでの夢は不条理な現実世界も告発します。

「熱き日々」で沖縄の女性の生活を捉えた石川はさらに夢にまで潜り込みます。被写体との密接な関わりは作品に迫真性をもたらしました。


「沖縄芝居」1989-1992年 インクジェットプリント

また他には沖縄の伝統的な芝居の役者を写したシリーズも。なお石川は先に亡くなられた東松照明のワークショップの一期生、その後も深く関わりを持ち続けたいわゆるお弟子さんでもあります。

会場では亡くなる前に東松が石川について語ったインタビュー映像も。残念ではありますが、今となっては大変に貴重です。


石川真生さん(左)と森花さん(右)

お邪魔した初日パーティー時に森花さんとポーズをとっていただきました。石川さんご本人も作品同様にエネルギッシュ!また気さくでお茶目な方です。ちなみに石川さんは何と会期中、連日、会場におられるとか。お話を伺うチャンスです!

沖縄の歌姫 仲田まさえがおくる うちなーの歌と踊り】(石川真生展関連イベント)
日時:2月16日(土)15:30開演 (15時開場、17時頃終演予定)
会場:アートフォーラムあざみ野 エントランスロビー
出演:仲田まさえ
 *予約不要。入場無料、入退場自由。


「平成24年度横浜市所蔵カメラ・写真コレクション展 アメリカ写真の黎明」

ちなみに同ギャラリーでは「写真コレクション展 アメリカ写真の黎明」もあわせて開催。横浜の誇る19世紀アメリカの写真、カメラコレクションを楽しむことも出来ます。


「写真コレクション展 アメリカ写真の黎明」展示室風景

沖縄の生活、文化、そして何よりも人と向き合い続けた石川。その人生の蓄積に裏打ちされた写真は説得力がありました。

「石川真生写真集 FENCES,OKINAWA (沖縄写真家シリーズ 琉球烈像/未来社」

2月24日まで開催されています。入場は無料でした。

「あざみ野 フォト・アニュアル 石川真生―沖縄を撮る」 横浜市民ギャラリーあざみ野@artazamino
会期:2月2日(土)~2月24日(日)
休館:会期中無休。
時間:10:00~18:00
料金:無料
住所:横浜市青葉区あざみ野南1-17-3 アートフォーラムあざみ野内
交通:東急田園都市線あざみ野駅東口徒歩5分、横浜市営地下鉄ブルーラインあざみ野駅1番出口徒歩5分。
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