「ニッポン貝人列伝-時代をつくった貝コレクション」 LIXILギャラリー

LIXILギャラリー
「ニッポン貝人列伝-時代をつくった貝コレクション」 
3/8~5/26



LIXILギャラリーで開催中の「ニッポン貝人列伝-時代をつくった貝コレクション」を見てきました。

海を身近とする日本には、古くから貝に魅せられ、貝を研究し、貝を蒐集した、いわば貝人というべき人々がいました。

その貝人らの活動を紹介するのが、「ニッポン貝人列伝」で、「日本近代貝類学の黎明期を築いた10人」(公式サイトより)のコレクションが公開されていました。



明治31年に下関で生まれた河村良介は、おおよそ50年に渡って貝を収集し続け、日本で最も充実したコレクションを築き上げました。河村の貝との出会いは江ノ島への旅行で、土産店で見つけた貝の美しさに惹かれたのがきっかけでした。



結果的に河村は、国内外を問わず、累計1万種、10万点以上の貝を集め、現在は国立科学博物館の「河村コレクション」として知られるようになりました。まさに貝に惚れ込んだのか、死の直前までコレクションが続けられたそうです。



日本の貝類学の先駆者として位置づけられるのが、江戸の安政期に生まれた平瀬與一郎でした。淡路島の庄屋の長男であった平瀬は、京都へと移り、貝を標本していた宣教師と出会い、収集をはじめました。いつしか平瀬は、フィラデルフィア自然科学アカデミーやアメリカの国立自然史博物館にまで、貝の標本を納入するようになりました。息子の信太郎も父の影響を受け、貝類学者の道を歩みました。



のちに日本貝類学の泰斗とまで称されたのが、黒田徳米でした。明治19年に兵庫県で生まれた黒田は、15歳の時、先の平瀬の営んでいた商店の奉公人となり、家事全般から倉庫の管理、また貝の洗浄や標本の整理を行うようになりました。



そして平瀬の設立した貝類博物館の研究員を引き受け、貝の研究に尽力し、昭和3年には日本貝類学会を設立しました。さらに京都大学で貝類の研究で博士号を取得し、100歳の誕生日の直前にまで研究や後進の指導に当たりました。著書、論文も500編以上発表し、一生涯に渡って、精力的に貝の研究に邁進したそうです。



その黒田に学び、日本の貝類学を世界的水準に押し上げたのが、波部忠重でした。京都大学に入学した波部は黒田と出会い、貝の生態と分類について研究しました。国立科学博物館の動物学研究部長に就任したほか、16年間に渡って日本貝類学会の会長も務めました。波部は、日本産の貝類の約5分の1を占める、1300もの新種を発見しました。

小学校教員で住職でもあった吉良哲明は、アマチュアの立場から貝をコレクションした貝人の1人でした。幼少の頃から貝に興味をもち、10代にして集めるようになりました。



吉良は昭和29年、1200種類の貝を、鮮明な写真と解説で紹介した「原色日本貝類図鑑」を発行し、大きな評判を呼びました。その本によって、貝類の魅力に取り憑かれた人も少なくないそうです。また戦後の物資不足の中、おおよそ14年にも渡って、貝類学会の連絡誌を1人で発行し続けた人物でもありました。



「西の熊楠、東の源蔵」と評された、鳥羽源蔵の収集活動も興味深いのではないでしょうか。明治5年、陸前高田に生まれた鳥羽は、35歳の時に貝類の研究をはじめ、岩手県沿岸をくまなく歩いては貝を収集しました。



その標本は同地の「海と貝のミュージアム」に収蔵されましたが、あろうことか東日本大震災の大津波で被災し、水没してしまいました。現在は、文化財レスキューの形で修復作業が進められていますが、このような大変な苦難が待ち構えていたとは、鳥羽自身も予想していなかったかもしれません。



場内には、色とりどり、大小様々で、模様も多様な貝がたくさん並んでいました。これほどまとまった数の貝を見る機会も、そう滅多にないのではないでしょうか。

手に馴染むものが多く、保存も難しくない貝は、コレクションがしやすく、実際、日本貝類学会の会員も、プロの学者よりアマチュアのコレクターの方が多いそうです。

貝は何も海を住処とするだけでなく、川や淡水でも生息し、陸上の山林においても見ることが出来ます。また太陽光の届かない深海においても適応する上、寿命も長く、アサリやシジミで5年、ホタテやアワビで10年ほど生きるそうです。中でも2006年にアイスランド沖で発見されたアイスランドガイは、220年も生きたと記録されています。逞しい生命力ではないでしょうか。



多彩な貝に惹かれるとともに、貝の生態、さらにはコレクションした貝人らの熱心な活動に目を見張るものがありました。


5月26日まで開催されています。

「ニッポン貝人列伝-時代をつくった貝コレクション」 LIXILギャラリー
会期:3月8日(木)~5月26日(土)
休廊:水曜日。
時間:10:00~18:00
料金:無料
住所:中央区京橋3-6-18 LIXIL:GINZA2階
交通:東京メトロ銀座線京橋駅より徒歩1分、東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅7番出口より徒歩3分、都営浅草線宝町駅より徒歩3分、JR線有楽町駅より徒歩7分
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「ルドンー秘密の花園」 三菱一号館美術館

三菱一号館美術館
「ルドンー秘密の花園」 
2/8~5/20



三菱一号館美術館で開催中の「ルドンー秘密の花園」のプレスプレビューに参加してきました。

一号館美術館のコレクションの中核でもあるオディロン・ルドンの大作、「グラン・ブーケ」には、いわば連作となりうる15点の作品がありました。

それがフランス・ブルゴーニュ地方に居を構えたロベール・ド・ドムシー男爵が、城館の大食堂を飾るためにルドンへ注文した壁画で、ルドンは当初、空間を18分割して描くことを考えました。現在では、16点の装飾画が残されています。


オディロン・ルドン「グラン・ブーケ(大きな花束)」 1901年 三菱一号館美術館

うち1枚が「グラン・ブーケ」で、1901年、残りの15枚の装飾画とともに、ドムシー男爵の城館に設置されました。そしてしばらく大食堂を飾り、おそらく住人を楽しませたものの、いつしか忘れ去られ、人目に触れることもありませんでした。


オディロン・ルドン「15点のドムシー城の食堂壁画(黄色い背景の樹)」 1900〜1901年 オルセー美術館 ほか

それが世に初めて公開されたのは、意外に日本で、1980年に全国6会場を巡回した「ルドン展」(但し、会場毎に展覧会名が異なります。)でした。しかし「グラン・ブーケ」だけは来日せず、ほかの15点の装飾画よりも長い間、ドムシー男爵の城館に留まり続けました。


右:オディロン・ルドン「15点のドムシー城の食堂壁画(黄色い花咲く枝)」 1900〜1901年 オルセー美術館

「グラン・ブーケ」を除く、一連の15点の装飾画は、1988年、相続税の美術品の物納制度により、フランス政府に取得され、のちにオルセー美術館に収蔵されました。結果的に「グラン・ブーケ」が広く公開されたのは、設置から110年近く経った2011年、パリで行われた「ルドン展」のことでした。また、それに先立つ2010年に、三菱一号館美術館が「グラン・ブーケ」を取得しました。

そして2012年に三菱一号館美術館で開催された「ルドンとその周辺ー夢見る世紀末」でも展示され、以降、同館のコレクションとして、約1年から2年のペースで公開されてきました。さらに今年、オルセー所蔵の装飾画の15点が再来日し、「グラン・ブーケ」との邂逅を果たしました。かつてドムシー男爵の城館を飾った装飾画の全てが揃うのは、もちろん日本で初めての機会でもあります。

ルドンが手紙で「巨大なパステル」と別扱いで記述した「グラン・ブーケ」は、瓶に活けられた花をモチーフとしていて、青を基調とし、まさに溢れんばかりの花々を、縦2メートル50センチ弱、横1メートル60センチ超の大画面に描きました。


右:オディロン・ルドン「15点のドムシー城の食堂壁画(花とナナカマドの実)」 1900〜1901年 オルセー美術館
 
一方で残りの15点は、おおむね暖色をベースとしていて、草花などのモチーフを、薄く伸ばした油絵具の上に、膠を用いたデトランプと呼ばれる技法で表しました。いずれも植物は、鮮やかというよりも、朧げに浮かび上がっていて、どことなく幻想的とも言えるのではないでしょうか。また作品を超えて樹木が連続していたり、遠いモチーフを大きく表す、いわば逆遠近法的な構図をとっているなど、ルドンが食堂空間を全体で捉えて制作している様子も分りました。なおデトランプ技法は、ルドンが影響を与えたナビ派の画家が好んで用いました。


左:オディロン・ルドン「15点のドムシー城の食堂壁画(花の装飾パネル)」 1900〜1901年 オルセー美術館

大食堂の空間の形状に合わせるため、「グラン・ブーケ」を含む、装飾画の大きさは大小様々で、厳密に同じサイズの作品は1つとしてありません。また植物や花をモチーフにしながら、15点の作品は、いずれも装飾性が高く、むしろ花瓶の花を描いた「グラン・ブーケ」が、極めて異質であることも見て取れました。


オディロン・ルドン「15点のドムシー城の食堂壁画」展示室風景 *「グラン・ブーケ」はパネル展示

スペースの都合もあり、一連の装飾画は同じ展示室に並んでいません。「グラン・ブーケ」は備え付けの単独の展示室にあり、ほかは10点と5点に分けて展示されていました。それでも作品を通し、ルドンが長年に渡って抱いてきた植物へ関心の在り方、ないし「装飾」への表現の志向も伺い知れるのではないでしょうか。かつて同じ城館にあったことを鑑みると、やはり感慨深いものがありました。


右:オディロン・ルドン「夢のなかで(表紙=扉絵)」 1879年 三菱一号館美術館

さて「ルドンー秘密の花園」展の見どころは、何もドムシー男爵の装飾画だけではありません。というのも、ルドンの花と植物に焦点を当て、いかに壁画を描くのに至ったのかに触れている上、そもそもドムシー男爵とは何者かを検証しているほか、コロー、ブレスダン、クラヴォーらを参照して、ルドンとの影響関係についても俯瞰しているからです。構成は綿密でした。


左:オディロン・ルドン「ペイルルバードの小道」 制作年不詳 オルセー美術館

はじまりはルドン初期の風景画でした。しかし初期といえども、デビューは遅く、版画集「夢のなかで」を刊行した時は、既に39歳を迎えていました。ルドンの画業は、主に木炭による「黒」の時代と、華やかな「色彩」の時代に分けられますが、前半の「黒」においても、油彩画がなかったわけでなく、彩色による風景の小品を描きました。ルドンは一連の商品を、「作者のための習作」として、手元に保管していました。

初期のルドンに影響を与えたのが、コローやブレスダンでした。版画家ブレスダンからはエッチングの指導を受け、ルドンも木炭ほか、リトグラフなどで樹木のモチーフを描きました。


オディロン・ルドン「夢想(わが友アルマン・クラヴォーの思い出に)」 1891年 三菱一号館美術館

若かりしきルドンに「目に見えない世界」(解説より)へを誘ったのは、植物学者のアルマン・クラヴォーでした。クラヴォーは顕微鏡によって明らかとなった、植物の微細な世界をルドンに教えるだけでなく、ポーやボードレールなどの文学を紹介しました。またクラヴォーに導かれ、ルドンは異文化や異教に対しての関心を抱きました。のちにクラヴォーが自殺すると、版画集の「夢想」において、「わが友アルマン・クラヴォーの思い出に」と記し、師の死を悼みました。


右:オディロン・ルドン「ドムシー男爵夫人の肖像」 1900年 オルセー美術館

ドムシー男爵がルドンと面識を得たのは、かの装飾画の完成に先立つこと、約8年前、1893年のことでした。「黒」の作品だけでなく、パステル、油彩も購入し、夫人の肖像画を制作を依頼しました。このところの書簡や出納帳による調査により、ルドンが装飾画に着手したのは、1900年の6月であり、同年の12月には城館を訪ねて、数枚のパネルの取り付けに立ち会ったことが分かりました。また装飾画の制作前後、ドムシー男爵は何度かルドンと旅していて、ミラノへ渡った際は、レオナルドの「最後の晩餐」に感動したとも伝えられています。2人は思いの外に親密であったようです。


「ドムシー男爵から自治体への手紙(1892年11月24日)写し」 *参考出品 ほか

ドムシー男爵は、地域の議会選挙に出馬し、トップ当選を果たしたほか、自治体へ寄付をし、水利利用に当てるように求めるなどの記録も残されています。城館はかつて本人が建てたとされていましたが、最近の研究により、父が建てたことも判明しました。ただしドムシー男爵の社会的状況については、必ずしも詳しくは分かっていません。


右:オディロン・ルドン「ステンドグラス」 1907年頃 ニューヨーク近代美術館

さらに展示は装飾画の連作を超え、「黒」の世界に表現した動植物、また「色彩」における蝶や植物と夢の関係、さらに花の作品から、ルドンの手がけた装飾プロジェクトについても触れていました。


右:オディロン・ルドン「神秘」 フィリップス・コレクション

岐阜県美術館をはじめ、オルセー美術館、ニューヨーク近代美術館、ボルドー美術館などのコレクションも少なくなく、「黒」に「色彩」を問わず、想像以上に充実していました。不足はありません。


撮影可のパネルコーナー(食堂壁画の位置関係が分かるように工夫されていました。)

既に会期も2ヶ月近くほど経過しました。土日の昼過ぎを中心に、やや混み合う時間もありますが、今のところ、特に入場待ちの行列は発生していません。


左:オディロン・ルドン「預言者」 1885年 シカゴ美術館

ただし一号館美術館は、何かと会期後半に混雑が集中する傾向があります。当面は、毎週金曜日の夜間開館(21時まで)が有用となりそうです。


5月20日まで開催されています。ご紹介が遅れましたが、おすすめします。

「ルドンー秘密の花園」 三菱一号館美術館@ichigokan_PR
会期:2月8日(木)~5月20日(日)
休館:月曜日。
 *但し、祝日の場合と、5月14日と「トークフリーデー」の2月26日、3月26日は開館。
時間:10:00~18:00。
 *祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週の平日は21時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:大人1700円、高校・大学生1000円、小・中学生500円。
 *東京都美術館の「ブリューゲル展」のチケットを提示すると100円引き。
 *アフター5女子割:毎月第2水曜日17時以降/当日券一般(女性のみ)1000円。
住所:千代田区丸の内2-6-2
交通:東京メトロ千代田線二重橋前駅1番出口から徒歩3分。JR東京駅丸の内南口・JR有楽町駅国際フォーラム口から徒歩5分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「第21回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」 川崎市岡本太郎美術館

川崎市岡本太郎美術館
「第21回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」 
2/16~4/15



毎年恒例、公募の形式で現代美術家の活動を紹介する「岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」も、今年で第21回目を迎えるに至りました。

応募総数は全558点で、昨年よりも約60点も増えました。うち26組の作家が入選を果たし、その作品が、川崎市岡本太郎美術館にて公開されています。


市川ヂュン「白い鐘」 特別賞

突然、ゴーンといった音が聞こえてきました。一体、何事かと思い、中を見回すと、目の前に現れたが、まさに鐘でした。その名は市川ヂュンの「白い鐘」で、一般的な寺院などにも見られるように、木製の櫓の中には、おそらく金属製と思しき鐘が吊り下がっていました。さらに実際に撞木にて、鐘を突くことも出来ました。つまり先ほど聞こえた金属音は、観客が鐘を打ち鳴らす音であったわけでした。


市川ヂュン「白い鐘」 特別賞

軽く突くと、思いの外に重厚な音が鳴り響きました。しかし素材に特徴があり、おおよそ鐘に一般的に用いられないアルミ製でした。市川は、何と15000個にも及ぶアルミの空き缶を集めては、溶かし、200キロものアルミを経て、鐘に鋳造しました。そのプロセスは、映像でも紹介されていました。


橋本悠希「拓」

何やら黒々とした、巨大な曼荼羅のような作品が目に飛び込んできました。橋本悠希による「拓」で、おおよそ縦と横で4メートルほどありました。長方形に分割された面を背景に、大きな円が描かれ、手を広げた人の影が見られました。それにしても、モザイク状の支持体しかり、何で作られているのでしょうか。


橋本悠希「拓」

近づいて驚きました。何とモザイクの一枚一枚は、スマートフォンにインクを刷ってつけた和紙でした。さらによく見ると、曼荼羅の隣には、おそらく制作に際して用いられたスマートフォンの原型が並んでいました。その多くは廃棄物で偶然なのか、バリバリに割れていて、損傷していましたが、中には文字や模様を象ったものもありました。何でも両面を彫っては組み合わせ、曼荼羅的なイメージを築き上げたのだそうです。まさかスマホで出来ていたとは想像もつきませんでした。


ichiko Funai「Bande a la plage!」

同じく素材に関して、意外性のある作品と出会いました。それがichiko Funaiの「Bande a la plage!」で、ビキニ姿の女性のいる海辺を捉えたスクリーンの前には、黒々とした衣服のようなものを纏った人形が起立していました。足元にはカラフルなビーチボールや浮き輪、それに時にノイズを放つモニターが置かれていました。それにしても、四方へと広がる黒い物体は、何であるのでしょうか。


ichiko Funai「Bande a la plage!」

これまた目を凝らして驚きました。その正体は、もはや今や懐かしいビデオテープで、モニターの側にはたくさんのVHSテープも積まれていました。作家は、「日常的な浜辺が、違和感という名のビデオテープのゴミに汚染され、認識が当たり前のように変容する。」(解説冊子より)と語っています。まるで浜辺に打ち上げられた海藻のようなビデオテープは、ひたすら絡み合っては、どこか無残な姿を見せていました。


大野修平「planted-15」

床に一本の植物が生えていました。それが大野修平の「planted-15」と題した作品で、高さは約1メートル30センチほどでした。植物は僅かに葉をつけているもの、とても細く、また目立たないためか、うっかりすると見逃してしまうかもしれません。そして何よりも特徴的なのは植物の形状で、ほぼ垂直に曲がり、とても現実では考えにくい角度で屈曲していました。素材には植物とありましたが、何度見ても、どのように制作したのかは分かりませんでした。


細沼凌史「キー・ボルドウォール」 *細沼さんに登っていただきました

細沼凌史は「キー・ボルドウォール」において、ボルダリングのスペースを美術館の中に作り出しました。目の前で展開するのはまさにボルダリングそのもので、会期中の土日を中心に、実際に体験することも可能でした。「誰かが登ってくれることで、作品の意味は成り立ちます」(解説より)としています。


細沼凌史「キー・ボルドウォール」

もちろん単なる一般的なボルダリングではありません。壁に打ち付けられたのは、パソコンのキーボードやマウスで、それを頼りに、頂上を目指す必要がありました。何とも意外な素材ではないでしょうか。


冨安由真「In-between」 特別賞

一枚のドアの向こうに広がるのが、冨安由真の「In-between」でした。中へ入ると狭い部屋があり、いささか古びた椅子や机、それに照明などが置かれていました。椅子の上には布もかかり、籠からは布も散乱し、ライトは書類を照らしていました。まるでつい先程まで人がいたような気配も感じられるかもしれません。さらに奥にはもう1つのドアが半開きになっていましたが、その先に進むことは叶いませんでした。


冨安由真「In-between」 特別賞

中の家具などに触れること出来ませんが、しばらく部屋の中を歩き回りまっていると、とあるアクションが起きました。審査評に「お化け屋敷」(解説より)とありましたが、確かに不気味な雰囲気が漂っていて、閉塞感もあり、そのまま部屋へ閉じ込められるかのようでした。


さいあくななちゃん「芸術はロックンロールだ」 岡本太郎賞

岡本太郎賞を受賞したさいあくななちゃんの「芸術はロックンロールだ」と、岡本敏子賞の弓指寛治の「Oの怨霊」が、ともに凄まじい密度、ないし情報量でした。その空間を埋めつくさんとばかりに広がる絵画、ないし立体作品を前にすると、思わず仰け反ってしまうほどでした。


ユゥキユキ「ユキテラス大御神☆天岩戸伝説」特別賞

古代神話やアニメのキャラクターを取り込んだインスタレーションを展開した、ユゥキユキの「ユキテラス大御神☆天岩戸伝説」も、独自の世界を構築していたのではないでしょうか。全般的に今年のTARO賞は、細かに造り込んでは、スケール感のある作品が多かったかもしれません。



既に受付は終了しましたが、会期途中(3月25日)までは「お気に入り作品を選ぼう」とし、来館者による人気投票も行われました。先日、その結果がWEBサイトで発表され、冨安由真の「In-between」が1位に選ばれました。上位の作家には記念品も贈呈されるそうです。


弓指寛治「Oの怨霊」 岡本敏子賞

館内の撮影も可能です。SNS、ブログなどに自由にアップ出来ます。なおボルダリングについては、動きやすい服装で参加されることをおすすめします。(以降の体験日:3月30、31日、4月6、7、13、14日。13:00~15:00。4月7日のみ12:00~14:00。)


「第21回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」会場風景

4月15日まで開催されています。

「第21回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」 川崎市岡本太郎美術館
会期:2月16日(金)~4月15日(日)
休館:月曜日。3月22日(木)、3月23日(金)。
時間:9:30~17:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般700(560)円、大・高生・65歳以上500(400)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *常設展も観覧可。
住所:川崎市多摩区枡形7-1-5
交通:小田急線向ヶ丘遊園駅から徒歩約20分。向ヶ丘遊園駅南口ターミナルより「溝口駅南口行」バス(5番のりば・溝19系統)で「生田緑地入口」で下車。徒歩5分。
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東京都庭園美術館の庭園が全面公開されました

東京都庭園美術館・庭園
2018/3/21〜(全面公開)



2014年に本館の改修と新館の改築を終え、以降、各種整備工事を進めてきた東京都庭園美術館は、この3月21日に西洋庭園の整備とレストラン棟の改築を完了し、総合開館しました。



本館正面左手、庭園入口より芝庭を超えた先に位置したのが西洋庭園で、樹木の再配置や広場スペースの拡大などが行われました。



園内には桜も植えられていて、早くも満開を迎えていました。また工事に際しては、休憩スペースが新設されたほか、バリアフリーに対応した園路の整備、さらに多目的トイレも整備されました。



西洋庭園は美術館全体の正門近くへと達していますが、基本的にルートが決まっていて、正門のゲートからは入園出来ません。



西洋庭園の整備とともに、新たに作られたのが、レストラン棟でした。南青山のフランス料理の老舗、ロアラブッシュの姉妹店の「レストラン デュ パルク」で、本格的なフレンチのほか、比較的カジュアルなカフェメニューも用意されているようです。この日は別の予定があったために利用しませんでしたが、新館の既存のカフェに加え、選択肢が1つ増えました。なおレストランへを利用する際、庭園の入園料は必要ありません。



なお整備期間中は、庭園への入場料が100円でしたが、整備完了に伴い、正規の200円に戻りました。



美術館の観覧チケットでも、庭園へ入場することが出来ます。私も開催中の「建物公開 旧朝香宮邸物語/鹿島茂コレクション フランス絵本の世界」の観覧チケット(観覧料は一般900円。)を購入して、庭園を散策してきました。(展示の感想は後日アップする予定です。)



さほど桜の本数が多いわけではありませんが、園内は落ち着いていて、のんびりとお花見をすることが出来ました。



今年の東京の桜の開花は早く、すぐに満開となりましたが、何とか今週末までは楽しめるのではないでしょうか。



この全面開放に合わせたのか、平成30年度より有効の庭園のみのパスポートも登場しました。一律1500円で、何度でも入園出来る上、レストランやショップの料金が5%引きになります。同伴1名も無料で入園出来ます。



何せ美術館のパスポート(4000円。展覧会、庭園ともに入場可。同伴1名無料。)が圧倒的にお得ですが、庭園のみ散策する際には有用となりそうです。


東京都庭園美術館の庭園は3月21日より全面公開されました。

東京都庭園美術館・庭園(@teienartmuseum
会期:2018年3月21日(水・祝)~ *全面開放
休館:第2・第4水曜日。年末年始。
時間:10:00~18:00。
 *11/23、11/24、11/25は20時まで開館。
 *入場は閉館の30分前まで。
料金:一般200(160)円 、大学生160(120)円、中・高校生・65歳以上100(80)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *美術館の展覧会チケットでも入園可。
 *小学生以下および都内在住在学の中学生は無料。
 *第3水曜日のシルバーデーは65歳以上無料。
住所:港区白金台5-21-9
交通:都営三田線・東京メトロ南北線白金台駅1番出口より徒歩6分。JR線・東急目黒線目黒駅東口、正面口より徒歩7分。
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この春の東京のおすすめの展覧会を「いまトピ」に寄稿しました

「gooいまトピ」に、この春に見たいおすすめの展覧会をアップしました。



「美術館でお花見も!この春に見たい東京+αの展覧会10選」
https://ima.goo.ne.jp/column/article/5704.html


いまトピは、NTTレゾナントの運営するコラムサイトで、プロ、アマを問わず、多くの書き手が、日々の「今の話題」に着目し、様々な情報を発信しています。私も先だって依頼があり、しばらく「いまトピ」にてコラムを担当することになりました。

1本目はシンプルに、この春に都内で見たい展覧会をあげてみました。実のところ、普段、ブログでも「予定と振り返り」で、毎月の展覧会の開催情報をリストアップしていますが、その拡大バージョンと言えるかもしれません。お出かけの参考にしていただければ幸いです。

【コラムにあげた展覧会一覧】

「博物館でお花見を」(東京国立博物館)
3月13日(火) ~4月8日(日)

「美術館の春まつり」(東京国立近代美術館)
3月23日(金)~4月8日(日)

「建物公開 旧朝香宮邸物語/鹿島茂コレクション フランス絵本の世界」(東京都庭園美術館)
3月21日(水)〜6月12日(火)

「桜 さくら SAKURA 2018ー美術館でお花見!」(山種美術館)
3月10日(土)~5月6日(日)

「ルドンー秘密の花園」(三菱一号館美術館)
2月8日(木)~5月20日(日)

「光琳と乾山 芸術家兄弟・響き合う美意識」(根津美術館)
4月14日(土)~5月13日(日)

「木島櫻谷 PartⅡ 四季連作屏風+近代花鳥図屏風尽し」(泉屋博古館分館)
4月14日(土)〜5月6日(日)

「春の江戸絵画まつり リアル 最大の奇抜」(府中市美術館)
3月10日(土)〜5月6日(日)

「鈴木其一の四季花鳥図屏風と景徳鎮窯のちいさな五彩」(東京黎明アートルーム)
5月28日(月)~6月30 日(土)

「百花繚乱列島-江戸諸国絵師めぐり」(千葉市美術館)
4月6日(金)~5月20日(日)



掲載が少し遅れたこともあり、既に都内では桜も見頃を迎えていますが、リアル、美術作品を問わず、なるべく「お花見」に引きつけて展覧会をご紹介したつもりです。また東京+αということで、最後に千葉市美術館の「百花繚乱列島-江戸諸国絵師めぐり」も取り上げました。



「木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険」 泉屋博古館分館
https://blog.goo.ne.jp/harold1234/e/16070277918361315f5c0949c5324bc5

「木島櫻谷展」はPart1の動物画も見応え十分ですが、ここはお花見に絡めてPart2の「四季連作屏風」の方をピックアップしました。さらに5月末に黎明アートルームで公開予定の「四季花鳥図屏風」は、サントリー美術館での鈴木其一展でも目を引いた作品で、同アートルームの美しい展示空間にも映えるに違いありません。

なるべく親しみやすいコラムにするため、文章のスタイルをブログと少し変えました。ブログはこのままの形で書き続けるつもりです。



なおブログでご縁のある「今日の献立ev.」のKIN(@kin69kumi)さんと、「雨がくる 虹が立つ」の虹(@nijihajimete)さん、さらに「アートの定理」の明菜(@Akina_art)さん、それに「ドイツ~東と西~」のyamasan(@yn600301)さんも、同じくgooいまトピにて、主に美術に関するコラムを立ち上げられました。また「青い日記帳」のTak(@taktwi)さんも、前々からいまトピに連載されています。

旅に出よう!アートを楽しむ金沢編
https://ima.goo.ne.jp/column/article/5694.html

展覧会でしか聞けない!声優たちによる魅惑の音声ガイドの世界
https://ima.goo.ne.jp/column/article/5699.html

金のハートは愛のアート!〜タダ見パブリックアート旅〜
https://ima.goo.ne.jp/column/article/5698.html

近代日本画の世界へようこそ
https://ima.goo.ne.jp/column/article/5696.html

Tak(タケ)
幅広いアート情報を毎日発信する美術ブロガー
https://ima.goo.ne.jp/column/writer/49.html

食事も楽しい金沢のアート旅行、そして人気声優による音声ガイド、またシェル・オトニエルによるパブリックアート、さらに近代日本画に関する展覧会の見どころなど、いずれも書き手の個性も発揮されたコラムではないでしょうか。是非、ご覧下さい。


いつまで続くか定かではありませんが、当面は月に2本程度のペースで、「いまトピ」にコラムを掲載していきたいと思います。今後ともブログとあわせてどうぞ宜しくお願いします。

「gooいまトピ」(@ima_topics
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はろるど(いまトピプロフィール)
gooブロガー。今年で14年目。
https://ima.goo.ne.jp/column/writer/101.html
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「UENOWELCOME PASSPORT 2018」が発売されます

上野地区の文化施設に入場出来る共通券、「UENOWELCOME PASSPORT 2018」が、4月1日より発売されます。



「上野文化の杜」(@uenobunka
http://ueno-bunka.jp

【UENO WELCOME PASSPORT 概要】
・利用及び販売期間:2018年4月1日(日)〜9月30日(日)
・販売価格(税込)
[A] 常設展等入場券 2000円
[B] 常設展等入場券+特別展チケット 3000円 *3000部限定販売

発売、利用期間は、4月1日(日)から9月30日(日)です。パスポートを提示すると、対象施設の常設展示などに利用期間中、各1回入場出来ます。(入園、拝観料を含む。)



【UENO WELCOME PASSPORT 対象施設】

東京国立博物館、国立科学博物館、 国立西洋美術館、上野動物園、旧岩崎邸庭園、東京都美術館、下町風俗資料館、朝倉彫塑館、上野の森美術館、上野東照宮

対象施設は上記の通りです。また東京藝術大学大学美術館、東京文化会館、国立国会図書館国際子ども図書館、国立近現代建築資料館の4館にパスポートを持参すると、特製ポストカードがプレゼントされます。

今年は通常のタイプ(2000円)に加え、新たに特別展チケットの付いたパスポートが登場しました。この特別展チケット付きパスポートでは、常設展示などの入場に加え、東京国立博物館、国立科学博物館、国立西洋美術館、東京都美術館、東京藝術大学大学美術館、上野の森美術館の6館において、指定の特別展のうちの1つに限り、観覧することができます。


「特別展ー人体」撮影可能エリア

【特別展チケット対象の展覧会】

1.東京国立博物館:「名作誕生―つながる日本美術」/ 「縄文―1万年の美の鼓動」
2.国立科学博物館:「人体―神秘への挑戦」/「昆虫展」
3.国立西洋美術館:「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」/「ミケランジェロと理想の身体」
4.東京都美術館:「プーシキン美術館展―旅するフランス風景画」/「藤田嗣治展」
5.東京藝術大学大学美術館:「東西美人画の名作≪序の舞≫への系譜」/「大河ドラマ特別展 西郷どん」
6.上野の森美術館:「ミラクル エッシャー展」

いずれの特別展も、通常価格は1500〜1600円程度です。ただし安い前売券もあるため、一概には括れませんが、端的に当日価格で比較すると、おおよそ500円程度はお得になります。



【利用対象施設・特典(A・Bに共通】

1.常設展および総合文化展への入場(各施設1回)
 東京国立博物館/国立科学博物館/国立西洋美術館
2.入館および入園、拝観料(各施設1回)
 上野動物園/旧岩崎邸庭園/下町風俗資料館/朝倉彫塑館/上野東照宮
3.指定の展覧会に入場(各施設1回)
 東京都美術館「BENTO おべんとう展」/上野の森美術館
4.指定の特別展に100円引きで各1回入場
 国立西洋美術館/東京都美術館/上野の森美術館

発売場所は、対象施設の各チケット窓口です。またエキュート上野、松坂屋上野店、上野マルイなどの商業施設のほか、浅草文化観光センターや東京観光情報センター(都庁)でも発売されます。


パスポートの対象となる各施設の入場料を合計すると、約4800円でした。(東京都美術館は対象のおべんとう展で計算しました。上野の森美術館は対象展覧会が公表されていないため、除外しました。)

東京国立博物館(620円)、国立科学博物館(620円)、国立西洋美術館(500円)、上野動物園(600円)、旧岩崎邸庭園(400円)、東京都美術館(800円)、下町風俗資料館(300円)、朝倉彫塑館(500円)、上野東照宮(500円)



よって全ての施設を利用しようとする場合、半額以下で入場出来ることになります。またこのパスポートが有用なのは、利用期間が6カ月間と長いことです。一度、購入しておき、夏休みから秋にかけての長いスパンで利用することが可能です。


また人気のシャンシャンに因み、パスポートの表紙はシンシンとの親子のデザインになりました。

上野地区文化施設共通入場券、「UENO WELCOME PASSPORT 2018」は、4月1日より発売されます。

【UENO WELCOME PASSPORT 概要】
・利用及び販売期間
 2018年4月1日(日)〜2018年9月30日(日)
・販売価格(税込)
[A] 常設展等入場券 2000円
[B] 常設展等入場券+特別展チケット 3000円 *3000部限定販売
・対象施設
 東京国立博物館、国立科学博物館、 国立西洋美術館、上野動物園、旧岩崎邸庭園、東京都美術館、下町風俗資料館、朝倉彫塑館、上野の森美術館、上野東照宮
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「くまのもの 隈研吾とささやく物質、かたる物質」 東京ステーションギャラリー

東京ステーションギャラリー
「くまのもの 隈研吾とささやく物質、かたる物質」 
3/3〜5/6



東京ステーションギャラリーで開催中の「くまのもの 隈研吾とささやく物質、かたる物質」を見てきました。

世界的建築家として活動する隈研吾。それにしても「くまのもの、ささやく物質、かたる物質」とは、何とも不思議なタイトルではないでしょうか。実のところ、行く前は、一体、どのような展覧会なのか想像もつきませんでした。

しかしながら展示に接すると、何故に「くまのもの」であるのかが良く分かりました。ようは隈が用いてきた素材、すなわち竹、木、紙、石などの原材料に着目して、建築の世界を紹介していたわけです。つまり主役は建築であり、それを築くための「もの」でもありました。


「ナンチャンナンチャン」 韓国・光州 2013年

はじまりは竹でした。ドーム状に広がるのが、「ナンチャンナンチャン」なる竹を用いたパビリオンで、実際に体験することは叶いませんが、床を踏むと空間全体が振動するというインタラクティブな仕掛けが用いられています。光州デザインビエンナーレへの出展作品として制作されました。


「浅草文化観光センター」 東京都台東区 2012年

木も隈にとって重要な素材の1つでした。「浅草文化観光センター」は、木造平屋建てを積層して中層ビルにした構成で、積層した7つの「家」に木の格子をつけ、各々に角度をつけることで、独立した存在に見えるようにしました。雷門前にあり、浅草の観光スポットの1つとして知られています。


「スターバックスコーヒー太宰府天満宮表参道店」 福岡県太宰府市 2011年

スターバックスコーヒーの太宰府天満宮表参道店も、良く知られた隈建築かもしれません。間口が狭く、奥行きの深い店舗に対し、奥へと引き込むように木の格子を配していました。格子はどこかとげどげしく、存在感もあり、大胆なデザインと言えるのではないでしょうか。


「梼原 木橋ミュージアム」 高知県高岡郡梼原町 2010年

日本の伝統的な木造建築を思わせるのが、「梼原 木橋ミュージアム」でした。高知県の中西部、高岡郡檮原町の山中に位置した建物で、山梨県の木橋、猿橋のシステムを、一本足のやじろべえ構造に変換していました。一点で起立する支柱にも、大きな特徴が見られるかもしれません。


「香柱」

基本的に素材、模型、写真パネル、および映像で各建築が紹介されていましたが、一部にインスタレーションとも言うべき、体感的に味わえるスペースがあるのもポイントです。その1つが「香柱」で、まさに香りをテーマとした竹ひごによるパビリオンが展開していました。太さ4ミリほどの小さな竹ひごが螺旋状に連なる空間は、何やら幻想的とも呼べるかもしれません。中に入り、ぐるりと一周、歩いて見ることも出来ました。


「新国立競技場整備事業」 東京都渋谷区・新宿区 2019年完成予定

一度、ザハ案が白紙撤回され、再コンペとなった「新国立競技場整備事業」も、隈研吾を中心としたチームが手がけています。スタジアムの全体を小径木の集合体としてデザインし、庇の重なりや軒下など、日本の伝統的な建築を連想させる面も見られました。現在、建築中で、2019年の11月末に完成が予定されています。

「今後、さらに活躍の場を広げる」(解説より)としたのが、紙でした。言うまでもなく、紙は柔らかいため、建築素材の欠点としても捉えられますが、隈はむしろ建築全体を柔らかくするための武器であると考えました。


「ぺーパーコクーン」 イタリア・ミラノ 2015年

特殊紙でトンネル状の空間を作り上げた「ペーパーコクーン」や、いわゆるタマゴケースの技術を応用させた「ペーパーブリック」なども、目を引くのではないでしょうか。「くまのもの」は、何も一般的な建築素材ばかりではありませんでした。


「安養寺木造阿弥陀如来坐像収蔵施設」 山口県下関市 2002年

土も建築の原材料でした。例えば山口県下関市の「安養寺木造阿弥陀如来坐像収蔵施設」で、古くから地元に伝わる日干しレンガを積み上げて外壁を作りました。レンガは調湿機能を有するため、空調施設は設けられていません。地元の豊浦土と呼ばれる上質の土が用いられました。


「としまエコミューゼタウン南池袋二丁目A地区市街地再開発事業」 東京都豊島区 2015年

また「としまエコミューゼタウン南池袋二丁目A地区市街地再開発事業」における高層ビルには、エコヴヴェールと名付けられた環境調節パネルが採用され、そこにはプラントボックスに土を入れ、地域の野生の草を植えるという「豊島の森」が作られました。


「石の美術館」 栃木県那須郡那須町 2000年

かつて隈は、コンクリートに似ているとして、石を敬遠していました。しかしガウディの設計したコロニア・グエル教会に出会い、石を建築のための塊として使おうと心がけ、新たなディテールに挑戦したそうです。そもそも石は大地の一部で、土の友人であるとも語っています。


「ヴィクトリア&アルバート・ミュージアム ダンディ」 イギリス・スコットランド ダンディ 2018年

「ヴィクトリア&アルバート・ミュージアムダンディ」が目立っていました。スコットランド北部、ダンディに建設されたデザインの美術館で、同地を流れるテイ川の河口に位置し、まるで水面に浮かぶ巨大な客船のような姿をしていました。2500枚ものキャストストーンパネルを水平に積み重ねています。


「新津 知・芸術館」 中国四川省成都市 2011年

中国四川省成都の「新津知・芸術館」のファサードには、地元の野焼きの方法で作られた瓦が用いられました。道教の聖地である老君山の麓に建つ光と水をテーマとした美術館で、ステンレスのワイヤーで瓦を固定することで、軽やかな質感を作り上げました。

石と同じように、隈が長く敬遠していたのが、金属でした。しかし自由に形を変えることの出来るマグネシウム合金と出会い、金属を建築へ取り込む実験がはじまりました。隈は、金属は粘り強く、まるで生き物のようであると言っています。


「無錫万科」 中国江蘇省無錫市 2014年

中国江蘇省無錫の「無錫万科」は、レンガの紡績工場を、アートと商業の複合施設にリノベーションした建物で、太湖に近いことから、太湖石の形状にヒントに、アルミキャストのパネルを作りました。パネルに多くの穴も開けられ、そこから光が差し込むことを意図してもいます。何とも奇抜なデザインではないでしょうか。


「渋谷駅街区 開発計画」 東京都渋谷区 2019年完成予定

「渋谷駅街区 開発計画」にもアルミが採用されました。高層ビルにはない有機的な表情を与えるために、低層部分には壁面をうねるような曲面が作られています。


「Tee Haus」 ドイツ・フランクフルト 2005〜2007年

さらに「樹脂」、「ガラス」、「膜・繊維」などの原材料と続いていました。空気を入れて膨らませる移動式の茶室、「Tee Haus」も面白いかもしれません。二重膜の構造で、にじり口は防水ジッパーが採用されているそうです。皮膜ゆえに、屋外からの光も室内に滲み出すのでしょうか。


「品川新駅(仮称)」 東京都港区 2020年完成予定

現在、建設中の「品川新駅(仮称)」も、隈の設計でした。フレームは鉄骨と木の混合で、そこへテフロン膜による半透明な膜材を被せ、大屋根を築いていました。


「品川新駅(仮称)」 東京都港区 2020年完成予定

屋根とズレる部分には、透明な膜も挿入し、空と天候も感じられる構造にしているそうです。一体の再開発も含む品川新駅の暫定開業は2020年春、本開業は2014年度に予定されています。新たな時代の駅のランドマークと化すのかもしれません。


「くまのもの 隈研吾とささやく物質、かたる物質」会場風景

それにしても驚くのは、全てのプロジェクトが、完成、ないし進行中であることでした。もちろん日本だけにとどまりません。一体、どれほど旺盛に仕事をしているのでしょうか。


「くまのもの 隈研吾とささやく物質、かたる物質」会場風景

タイミング良く平日に行くことが出来ましたが、場内は想像以上に賑わっていました。特に学生無料ウィーク期間中であったからか、若い方の姿を多く見かけました。(学生無料ウィークは既に終了しました。)毎週金曜日の夜間開館(20時まで)も有用となりそうです。



展示室内、模型などの撮影も出来ました。(動画撮影、自撮り棒の使用は不可。)

「隈研吾 物質と建築/エクスナレッジ」

5月6日まで開催されています。

「くまのもの 隈研吾とささやく物質、かたる物質」 東京ステーションギャラリー
会期:3月3日(土)〜5月6日(日)
休館:月曜日。但し4月30日は開館。
料金:一般1100(800)円、高校・大学生900(600)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
時間:10:00~18:00。
 *毎週金曜日は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで
住所:千代田区丸の内1-9-1
交通:JR線東京駅丸の内北口改札前。(東京駅丸の内駅舎内)
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「ビュールレ・コレクション」 国立新美術館

国立新美術館
「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」
2/14~5/7


国立新美術館で開催中の「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」を見てきました。

ドイツに生まれ、実業家として財をなしたエミール=ゲオルク・ビュールレ(1890~1956)は、主に印象派を中心とした絵画をコレクションしました。

それは当初、ビュールレの自邸を飾っていましたが、没後、遺族により財団が設立され、多くのコレクションが移管されました。そして1960年、保管場所でもあった邸宅の別棟が美術館として開放され、一般に公開されました。

しかし2008年、セザンヌの「赤いチョッキの少年」をはじめとする4点が、武装した強盗団により盗まれました。結果的に全ての作品は発見され、強奪事件は解決しましたが、その影響によりコレクションの公開は制限され、2020年にはチューリッヒ美術館へと移管することが決まりました。

プライベートコレクションとしては、最後の「ビュールレ・コレクション」展と言えるかもしれません。来日作品は全64点で、印象派と後期印象派が大半を占めるものの、一部にオランダ絵画、ないし20世紀モダンアートも含まれます。まとまって日本で紹介されるのは、1990年から開催された世界巡回展以来、2度目のことでもあります。


ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル「アングル夫人の肖像」 1814年頃

はじまりは肖像画で、中でもジャン=オーギュスト=ドミニク・アングルの「アングル夫人の肖像」に魅せられました。アングルの妻であるマドレーヌがモデルで、結婚した翌年に描かれました。丸みを帯びた顔は穏やかで、笑みもたたえ、画家とモデルとの親密な関係を伺わせるものがありました。実際、夫妻はマドレーヌが死去するまで、仲睦まじい夫婦として知られていました。この優美な顔立ちこそ、アングルの作風を思わせますが、衣服が荒い筆触で描かれていて、中には太い線も残っていることから、未完だと指摘されているそうです。


ピエール=オーギュスト・ルノワール「アルフレッド・シスレーの肖像」 1864年

ルノワールの描いた「アルフレッド・シスレーの肖像」も、興味深い一枚ではないでしょうか。左手をポケットに入れ、いかにもブルジョワ風に着飾り、ソファに深く腰掛けのが若きシスレーで、「リラックスした姿」(解説より)とあるように、確かに腰掛けた姿こそ寛いではいるものの、表情はやや硬く、どこか緊張しているようにも見えなくありません。シスレーは作品が評価されず、のちに経済的に困窮しますが、ルノワールとは後年に至るまで親交を深めました。


アントーニオ・カナール(カナレット)「サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂、ヴェネツィア」 1738〜42年

カナレットの2点が充実していました。うち1つが「サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂、ヴェネツィア」で、手前左に聖堂を見据えた、ヴェネツィアの景観を緻密な表現で描いていました。水色に染まる空は広く、水辺には建物がひしめき合っていて、ゴンドラも多く浮かぶ水面には、白い細かな波が立っていました。澄み切った大気はいかにもカナレット風で、建物や人物の細部までがクリアに際立って見えました。

同じくヴェネツィアを舞台にした、シニャックの「ジュデッカ運河、ヴェネツィア、朝」も魅惑的で、ゴンドラの浮かぶ水辺の先に、同じくサルーテ聖堂を望む景色を表していました。さざ波は全てモザイクで示され、遠方へ向かえば向かうほど白に染まり、建物は平面的な装飾パネルのように見えました。ガラスのような色彩の透明感も、また魅力の1つかもしれません。


エドゥアール・マネ「オリエンタル風の衣装をまとった若い女」 1871年頃

マネは計4点出展されていましたが、うち気にとまったのが「オリエンタル風の衣装をまとった若い女」でした。いわゆる東洋趣味に基づく作品で、中東風の装飾を伴い、白いシースルーのロングドレスを身にまとった女性を描いていました。しかし表情は虚ろで、やや疲れているようでもあり、そもそも何故に立っているかも明らかではありません。ドレスはとても薄く、乳房や下半身も透けていて、どことなく官能的な様相も見られました。


アルフレッド・シスレー「ハンプトン・コートのレガッタ」 1874年

シスレーの2点が優品でした。中でも「ハンプトン・コートのレガッタ」は、シスレーが4ヶ月間ほどロンドンに滞在した時に描いたもので、テムズ川で行われたレガッタ競技の光景が、画家ならではの素早い筆触で表されていました。夏の頃であるからか、川の向こうの木々は深い緑に染まっていて、空も明るく、レガッタの浮かぶ水面にも、燦々と光が降り注いでいるように見えました。またギャラリーを含むのか、大勢の人もいて、競技に特有な熱気も伝わってくるかもしれません。日本初公開の作品でもあります。


カミーユ・ピサロ「ルーヴシエンヌの雪道」 1870年頃

同じく日本初公開のピサロの「ルーヴシエンヌの雪道」にも心惹かれました。家族と暮らしていたパリ郊外のルーヴシエンヌの雪景を描いた作品で、まっすぐにのびる並木道のある通りを、ほぼ正面から捉えていました。道路には雪が降り積もるものの、天気が回復したのか、空は晴れていて、明かりが差し込んでいる様子も見て取れました。うっすらとサーモンピンクに染まった、雪の表現も美しいのではないでしょうか。平穏な日常の一コマを切り取っていました。


ピエール=オーギュスト・ルノワール「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)」 1880年

チラシ表紙も飾ったルノワールの「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)」は、やはりハイライトに相応しい一枚と言えるかもしれません。モデルは裕福な銀行家の長女、イレーヌで、まだ8歳ながらも、そっと前においた両手や背筋を伸ばして座る姿は、あどけないというよりも、むしろ上品で、やや大人びているようにも思えました。ブロンドの髪が殊更に豊かで美しく、青く透明感のあるドレスも、彼女の白く、ややピンク色に染まった顔を引き立てていました。


ポール・セザンヌ「赤いチョッキの少年」 1888/90年頃

無事に発見されたセザンヌの「赤いチョッキの少年」もやって来ました。左肘をつき、やや口を引き締め、どこか厳しげな表情で物思いに耽る少年を表していて、ともかくは長く引き伸ばされた右腕に目が向きました。セザンヌの描いた、最も有名な肖像画としても知られています。

セザンヌ(6点)と同じく、一定数まとめて展示されていたのが、ゴッホでした。全部で6点あり、おおよそ6年あまりの間に描かれた作品であるものの、意図してのことか、画家の作風の変遷を辿るようなセレクションとなっていました。


フィンセント・ファン・ゴッホ「花咲くマロニエの枝」 1890年

やはり目を引くのは、有名な「種をまく人」で、ゴッホがミレーの同名作の影響を受け、繰り返し描いた作品のうちの一枚でした。また「花咲くマロニエの枝」にも魅せられました。サン=レミ病院を退院したのち、ガシェ医師とともに過ごした頃のもので、画面から溢れんばかりに咲き誇るマロニエの花を捉えていました。うねるような筆触こそ独特ながらも、生気に満ちた草花や、水色に染まる空など、ゴッホの色彩の魅力を味わえる作品ではないでしょうか。

そのゴッホと一時、共同生活を送り、画家の死後、タヒチへと渡ったゴーギャンの「肘掛け椅子のひまわり」も、よく知られた作品かもしれません。椅子の上には、ゴッホにとって特別な花であったひまわりが載せられていて、ゴーギャンが亡き画家に向き合うべく描いたとも言われています。


アンドレ・ドランの「室内の情景(テーブル)」が、大変な力作でした。テーブルや椅子の雑然と置かれた一室を斜め上から描いていて、テーブルの脚の朱色、椅子の黄色、さらにテーブル上の白い布のほか、背後で黒い線によって分割されたような色の面が、いずれも強く主張するように表されていました。なんと迫力のある静物画なのでしょうか。


クロード・モネ「睡蓮の池、緑の反映」 1920/26年頃

ラストはモネの「睡蓮の池、緑の反映」が控えていました。高さ2メートル、横幅4メートルにも及ぶ大作で、ジヴェルニーにモネの築いた睡蓮の池を捉えた一枚として知られています。


クロード・モネ「睡蓮の池、緑の反映」(部分) 1920/26年頃

ビュールレが実際にジヴェルニーへ出向き、自分の目で見てから購入を決めた作品でもあり、これまでスイスの国外に一度も出たことがありませんでした。なおこの「睡蓮の池、緑の反映」のみ、自由に撮影も出来ました。


クロード・モネ「睡蓮の池、緑の反映」 展示室風景

ビュールレは、レンブラントやゴッホの贋作を購入し、収集した一部の作品がナチスの略奪品として裁判を受けたほか、先にも触れたように作品が盗難にあうなど、時に苦難な経験もしました。また第二次世界大戦中の武器商人としての経歴も知られています。

ただしいずれにせよ、コレクションは粒ぞろいであることは間違いありません。また日本初公開も少なくなく、新たな気持ちで印象派絵画に見入ることが出来ました。

3月18日の日曜日の午後に出かけてきました。事前に「空いている」と耳にしていましたが、館内は思いの外に賑わっていました。ただしも国立新美術館の展示室は広い上、作品数も70点に満たないからか、絵と絵の間隔は大きく開いていて、スペースには余裕がありました。

【至上の印象派展 ビュールレ・コレクション 巡回スケジュール】
九州国立博物館:5月19日(土)~7月16日(月・祝)
名古屋市美術館:7月28日(土)~9月24日(月・祝)



今のところ、入場に際しての行列などは発生していません。何かと人気の印象派を中心とする展覧会ではありますが、おそらく最終盤のGW期間中を除けば、さほど混雑することはなさそうです。

5月7日まで開催されています。

「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」@buehrle2018) 国立新美術館@NACT_PR
会期:2月14日(水)~5月7日(月)
休館:火曜日。但し5月1日(火)は開館。
時間:10:00~18:00
 *毎週金・土曜日は20時まで開館。
 *4月28日(土)~5月6日(日)は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1600(1400)円、大学生1200(1000)円、高校生800(600)円。中学生以下無料。
 * ( )内は20名以上の団体料金。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
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「写真都市展ーウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち」 21_21 DESIGN SIGHT

21_21 DESIGN SIGHT
「写真都市展ーウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち」 
2/23~6/10



21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「写真都市展ーウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち」を見てきました。

1928年にニューヨークで生まれたウィリアム・クラインは、写真や映画、それにファッションなどの分野で活動しつつ、ニューヨーク、ローマ、モスクワ、さらに東京など、世界の大都市を写した作品で評価されてきました。

そのクラインによる都市ヴィジョンを体感的に味わえるのが、「写真都市展ーウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち」展で、「22世紀を生きる写真家たち」とあるように、現代から次世紀の未来都市も見据えた、日本やアジアの写真家の活動も紹介していました。

冒頭はクラインでした。「アナーキーな視覚の撹乱者」との異名をとった彼は、1956年に「ニューヨーク」を刊行し、都市をテーマとした写真を送り出しました。それらはいずれも街のスナップでしたが、ブレは大きく、時にボケていて、構図にも統一感がなく、従来の価値観からすれば、異端、ないし失敗とも取れ得る写真ばかりでした。

しかしそうした荒々しいまでの表現は、むしろ都市の雑然とした喧騒や、カオスに満ちたエネルギーを捉えることに成功していました。いつしか革新的なまでの都市のイメージは大いに共感を呼び、のちの写真家らもクラインの手法を取り入れるようになりました。日本でも森山大道らに大きな影響を与えました。



そして今日、クラインの写した都市風景が、マルチ・プロジェクションによって再び蘇りました。手がけたのは、映像やアートのディレクションで活動するTAKCOMで、クラインの無数の都市写真を映像に落とし込み、多面的で流動感のある万華鏡のような世界を作り上げました。



このプロジェクションが驚くほどに充実していました。暗室の壁面には大小、様々なスクリーンがあり、そこへクラインの写した、ニューヨークからローマ、モスクワ、東京、パリなどの都市風景の写真が、次々と入れ替わっては、ひっきりなしに映し出されていました。



都市の「同時性」や「共振性」も表現したプロジェクションは、ともかくテンポが良く、スピード感があり、まさに都市の成長やダイナミズムを見るかのようでした。もちろん、クラインの写真の力があってからこそかもしれませんが、流れるように展開する都市風景、ないし人々の姿を前にしていると、さも時間や地域を超え、各々の都市へ旅しているような気分にさせられるかもしれません。



クラインのプロジェクションを抜けると、一転して現れたのが、計10組の現代の写真家による作品でした。



物質としての写真の固有性に光を当てているという多和田有希は、「ホワイトアウト」のシリーズにおいて、都市でうごめく人々の群集心理や集合的無意識を表現しました。



ビルの合間の道路や建物からネオンのようにオーラが立ち上がっていて、それらはまるで都市に潜めくエネルギーが吹き出しているかのようでした。これこそが近未来的な都市のイメージなのかもしれません。



安田佐智種は東日本大震災を踏まえた作品を制作しました。それが「みち(未知の道)」で、津波と放射能被害を受けた被災地の家々を歩いては、残された基礎を撮影しました。作家は震災以降、ニューヨークから日本の状況を見据え、喪失感と望郷の念に駆られていたそうです。大きく破壊された基礎からは、否応なしに津波の甚大な被害を思い起こさせるものがありました。



数百枚から数千枚にも及ぶ写真を組み合わせ、新たな都市の姿を作り上げたのが、西野壮平でした。モノクロームの画面には、無数にひしめきあう建物などが写されていますが、驚くほどに俯瞰的な構図のため、そもそもどの地点を捉えているのかさえ判然としません。まるで天地も反転し、時空や地平の歪んだ、異次元の都市を目の当たりにしたかのようでした。



勝又公仁彦は「Panning of Days -Syncretism/Palimpseste」において、同一の場所から、異なる日時に、長時間の露光で撮影した写真を組み合わせました。そこにはネオンサインの輝く銀座の街角などが写されていましたが、時間が蓄積しているゆえに、無数行き交う人影や車のライトの光跡も同時に捉えられていました。都会に特有の雑踏も伝わるのではないでしょうか。



一方で同じ勝又の「Skyline」は、都市の遠望を俯瞰して捉えた作品で、広く大きな空の下、ビルや鉄塔などの構造物の稜線のみが朧げに浮き上がっていました。まるで水墨画のような趣きをたたえているかもしれません。



須藤絢乃の「面影」が異彩を放っていました。一面に写されたのは主に若い女性のポートレートで、ややブレがあるものの、一見、有り体にモデルを捉えているようにも思えました。ただどこか皆、似ているようにも見えなくありません。

その答えは作家自身の存在でした。実のところ須藤は、ニューヨークやパリ、それに東京などで撮影した人間の顔を、自らの顔のフレームにデジタルで合成していました。よって自分と他者との区別は曖昧となり、アイデンティティーも不明瞭なゆえか、独特な浮遊感も感じられました。



台湾で冠婚葬祭や夜市に欠かせない、大型ステージトラックを使った演劇団を捉えたのが、沈昭良でした。沈は、日没前後で一瞬の無人と化したトラックを写した一方、演劇を見入る人々や、ダンサーにもカメラを向けました。ステージトラックは実にデコラティブで、いずれも過剰なまでの明かりを放ち、熱気を帯びているようにも見えました。



石川直樹と森永泰弘による、極地の都市を写したシリーズも興味深いのではないでしょうか。言うまでもなく、人の集まる都市は、生き物であり、常に変容する上、当然ながら時代や地域によって様相は異なります。



ウィリアム・クラインを起点にした、現代の写真家による都市への様々なアプローチに見入るものがありました。


6月10日まで開催されています。

「写真都市展ーウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち」 21_21 DESIGN SIGHT@2121DESIGNSIGHT
会期:2月23日(金)~6月10日(日)
休館:火曜日。但し5月1日は開館。
時間:11:00~19:00
 *入場は閉場の30分前まで。
 *六本木アートナイト特別開館時間:5月26日(土)は10:00~23:30
料金:一般1100円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料。
 *15名以上は各200円引。
住所:港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン・ガーデン内
交通:都営地下鉄大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅、及び東京メトロ千代田線乃木坂駅より徒歩5分。
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ベルト・モリゾ「黒いドレスの女性」 国立西洋美術館

国立西洋美術館・常設展
ベルト・モリゾ「黒いドレスの女性(観劇の前)」
2017/9/30〜

2017年度に収蔵された、ベルト・モリゾの「黒いドレスの女性(観劇の前)」が、国立西洋美術館の常設展にて公開されています。


ベルト・モリゾ「黒いドレスの女性(観劇の前)」 1875年 国立西洋美術館

縦長のカンヴァスに描かれたのは、肩を露わにしながら、漆黒のドレスを着た若い女性で、まさにタイトルが示すように、オペラ座などの劇場に出かける時の様子が表されています。

白い手袋を両手にはめ、右手ではドレスの裾を僅かに掴む、ないしは触れるような仕草を見せていました。一方の左手は、黄金色にも染まるオペラグラスを持っていて、少し前に出ているからか、今にも差し出すような気配も感じられなくはありません。その表情は温和であり、安心しきっていました。ちょうど友人でも現れたのでしょうか。どことない親密感も感じられました。

このモリゾの「黒いドレスの女性」は、1876年に行われた、第2回印象派展にて公開されました。同展は、デュラン=リュエル画廊で4月11日から約1ヶ月ほど開催され、モリゾをはじめ、カイユボット、ドガ、モネ、それにピサロ、ルノワールら、計20名の画家が作品を出展しました。モリゾ自身も、出産の年を除き、第1回から第8回までの印象派展に参加しました。

とりわけ目を引くのが、女性の纏うドレスの黒で、実際にも当時、「ゴヤのようだ」とも評されたそうです。そしてこの黒が深ければ深いほどに、ドレスを飾る白いバラがより映えて見えるかもしれません。マネの得意とした黒を思い出しました。また本作とほぼ同一のドレスを着た、モリゾの肖像写真が残されていることから、モデルに自らの衣装を着せて描いたとも考えられています。

モリゾの没後、作品は、パリで印象派の画家と交流を持ち、美術商をしていた林忠正の手に渡りました。1905年、林は500点もの印象派コレクションを持って帰国しましたが、その中にモリゾの作品は一枚もありませんでした。よって、事情こそ明らかではないものの、帰国前に手放したとも言われています。


縦60センチ弱、横30センチほどの、小さな作品ではありますが、穏やかな笑みをたたえ、ステップを踏むかのように歩む女性からは、観劇を前にした高揚感も感じられるのではないでしょうか。その美しき姿に心惹かれました。



なお本作については、国立西洋美術館ニュース「ゼフュロス」のNo.73に、詳細な解説が掲載されていました。あわせてご参照下さい。

ベルト・モリゾ「黒いドレスの女性(観劇の前)」 国立西洋美術館
会期:2017年9月30日(土)〜公開中
休館:月曜日。但し、月曜日が祝日又は祝日の振替休日となる場合は開館し、翌日の火曜日が休館。
時間:9:30~17:30 
 *毎週金・土曜日は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般500(400)円、大学生250(200)円、高校生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園7-7
交通:JR線上野駅公園口より徒歩1分。京成線京成上野駅下車徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅より徒歩8分。
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「暁斎・暁翠伝」にてブロガー向け内覧会が開催されます

4月1日から東京富士美術館ではじまる「暁斎・暁翠伝」にて、ブロガー向け内覧会が開催されます。



「暁斎・暁翠伝ー先駆の絵師魂!父娘で挑んだ画の真髄」
http://www.fujibi.or.jp/exhibitions/profile-of-exhibitions/?exhibit_id=3201804011

[東京富士美術館 「暁斎・暁翠伝 開催記念 ブロガー内覧会」開催概要]

・第1回 2018年3月29日(木) 14:00~
・第2回 2018年3月31日(土) 15:30~
*ともに会場は東京富士本館・企画展示室(八王子市谷野町492-1)

内覧会の開催日は、3月29日(木)と3月31日(土)です。3月最終週の木曜と土曜日の、計2回行われます。
 
[ブロガー内覧会スケジュール]

第1回:3月29日(木) 14:00~
 「暁斎・暁翠伝」の開会式に引き続き、ブロガー内覧会。
 *開会式には、河鍋暁斎の曾孫にあたる河鍋暁斎記念美術館・河鍋楠美館長が出席します。

第2回:3月31日(土) 15:30~
 15:30~17:30 ブロガー内覧会
 16:00~17:00 「暁斎・暁翠伝 ブロガー内覧会 特別ギャラリートーク」
 *本展担当学芸員が河鍋楠美氏をゲストに迎え展覧会の見どころをご紹介します。

スケジュールは上記の通りです。1回目は展覧会の開会式に引き続いて、ブロガー内覧会が開かれます。2回目は、先に内覧会を行ったのち、ブロガー向けのギャラリートークが行われます。いずれも、河鍋暁斎記念美術館の河鍋楠美館長が出席されます。

[申込方法]

富士美術館問い合わせメール(toiawase@fujibi.or.jp)にて受付。以下の内容を明記の上、問い合わせメールにて申し込み下さい。
1.参加日時
2. 名前またはハンドルネーム
3. ブログURL
4. Facebook、Twitter、Instagramなどのアカウントをお知らせください。

参加は事前申込制です。1回目、もしくは2回目の参加日、名前もしくはハンドルネーム、ブログURL 、SNSアカウントを明記の上、美術館の問い合わせメール(toiawase@fujibi.or.jp)までお送りください。申込の締切は3月26日(月)までです。参加対象者のみ、3月27日(火)に、美術館から折り返し招待メールが送られます。

[参加特典]
1. 参加無料。館内撮影可能。ブログ利用可。
2. 本展の図録でもある「河鍋暁斎・暁翠伝」(河鍋楠美著、 カドカワ)をプレゼント。

いずれの内覧会も一般会期前の開催です。当日は無料で観覧出来る上、館内の撮影も可能です。また参加者には、図録に相当する「河鍋暁斎・暁翠伝」(河鍋楠美著、 カドカワ)がプレゼントされます。


「暁斎・暁翠伝」は、近年、人気を集める幕末・明治初期の絵師、河鍋暁斎と、その長女で、美人画や小児図を得意とした、暁翠の業績を紹介する展覧会です。

河鍋暁斎の作品、資料を多数有し、暁斎の曾孫でもある河鍋楠美氏が館長を務める、河鍋暁斎記念美術館のコレクションが出展されます。本画、浮世絵、挿絵、能、狂言画、また席画などの幅広いジャンルの作品を揃え、暁斎の制作を総合的に俯瞰する内容となるそうです。

また娘の暁翠は、初期の女子美術教育にも携わっていました。その観点からも「現代に伝えられる暁斎」と題し、近年、暁斎の作品からインスピレーションを受けて制作されたワークショップなどの記録も紹介します。ここ数年、何かと続いて来た暁斎展関連の展覧会とは、また異なった視点も加わるのかもしれません。



八王子の東京富士美術館で開催される「暁斎・暁翠伝」のブロガー向け内覧会。受付の締切は3月26日(月)までです。興味のある方は応募してみては如何でしょうか。

「河鍋家伝来・河鍋暁斎記念美術館所蔵 暁斎・暁翠伝ー先駆の絵師魂!父娘で挑んだ画の真髄」(@kyosaikyosui) 東京富士美術館@tokyofujibi
会期:4月1日(日)~6月24日(日)
休館:月曜日(祝日の場合は開館。翌日火曜日が振替休館)。但し4月2日(月)は開館。
時間:10:00~17:00 
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1300(1000)円、高校・大学生800(700)円、中学・小学生400(300)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *毎週土曜日は小中生無料。
 *誕生日当日に来館すると無料。
住所:八王子市谷野町492-1
交通:京王線八王子駅西東京バス4番のりば、及びJR八王子駅北口西東京バス12番のりばより創価大正門東京富士美術館行、もしくは創価大学循環にて約15~20分。無料駐車場あり。
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「博物館でお花見を 2018」 東京国立博物館

東京国立博物館
「博物館でお花見を 2018」 
3/13~4/8



上野の春を彩る恒例企画、桜に関した作品と、お庭の桜も楽しめる「博物館でお花見を」が、今年も東京国立博物館ではじまりました。


国宝「花下遊楽図屛風」 狩野長信筆 江戸時代・17世紀

まずは館内でのお花見です。国宝室では、お馴染みの「花下遊楽図屏風」が公開中でした。右隻に満開の八重桜、左隻に海棠の咲く中、ともに酒宴を開いたり、風流踊りをする人物を表した屏風で、永徳の末弟、長信が制作したと考えられています。


国宝「花下遊楽図屛風」(右隻) 狩野長信筆 江戸時代・17世紀

右隻の桜は白い花をたくさん咲かせていて、戸張の向こうでは楽器に手をやり、楽しげに演奏する人の姿も見られました。花はおそらく胡粉なのか、かなり絵具が盛られていて、半ば立体的に浮き上がっていました。また人物の着物の衣装も精緻に表現されていて、やや退色しているものの、その色彩も魅力と言えるのではないでしょうか。なお右隻の中央には何もありませんが、これは大正時代の修理の際、関東大震災に見舞われ、焼失してしまった部分にほかなりません。


国宝「花下遊楽図屛風」(右隻・部分) 狩野長信筆 江戸時代・17世紀

焼失前に撮影された写真もキャプションに掲載されていて、桜の下で花見をする貴婦人の姿が描かれていた様子を見ることが出来ました。モノクロームではありますが、在りし日の姿を偲べるかもしれません。

さすがに身近な花だけあるのか、桜をモチーフとした作品はこと欠きません。特に桜をあしらった工芸品が目立ちました。


「色絵桜樹図透鉢」 仁阿弥道八作 江戸時代・19世紀

仁阿弥道八の「色絵桜樹図透鉢」が華やかでした。白泥と赤い色彩で満開の桜を描いていて、透かしも効果的なのか、器の内外の全体で桜の咲く様子を表現していました。また切り込みがあり、凹凸の見られる口縁部も、まるで桜の花びらを思わせるかもしれません。琳派の乾山に倣った器だとも言われています。


「色絵桜透文手鉢」 京焼 江戸時代・18世紀

同じく透かしを取り入れた京焼の「色絵桜透文手鉢」も優品でした。見込みに咲くのは、桜ではなく梅で、青い竹も笹を付けていました。では一体、桜はどこに見られるのでしょうか。その答えは鉢の側面で、透かし自体が桜の花の形をしていました。また青と緑の絡み合う取っ手など、随所に細かな工夫も見られる作品でした。


「色絵桜樹図皿」 鍋島 江戸時代・18世紀

見込の全体で桜を表現した鍋島の「色絵桜樹図皿」も美しいのではないでしょうか。幹や枝は屈曲していて、花は溢れんばかりに咲き誇っていました。花びらは一枚一枚、赤い絵具で細かく描かれていました。シンプルな図案ながらも、華やかでかつ、鍋島らしい品格のある作品と言えるかもしれません。


「小袖 白綸子地若松桜幕模様」 江戸時代・18世紀

小袖などの衣装にも桜はたくさん描かれていました。一際、目立っていたのは、小袖の「白綸子地若松桜幕模様」で、その名の通り、満開の桜が幔幕にかかっていました。また随所に広がる扇面は、末広がりを示す吉祥模様で、王朝文化のシンボルでもありました。源氏物語の「花宴」をイメージしたとも言われています。


「振袖 染分縮緬地枝垂桜菊短冊模様」 江戸時代・18世紀

振袖の「染分縮緬地枝垂桜菊短冊模様」も風流で、腰から上を春、下を秋に分け、しだれ桜が肩からかかる風景を表現していました。こうした腰の上下で模様を分けるスタイルは、江戸中期から後期にかけて流行しました。何でもこの頃、帯の幅が広がったことから、様々な帯結びを楽しむ風潮が生まれたそうです。


「不動明王立像」 平安時代・11世紀

桜の意外なモチーフとしては「不動明王立像」が挙げられるかもしれません。平安時代の作例で、目を剥き出し、見る者を威嚇するかのように堂々と立っていました。一見、桜と無関係に思えるかもしれませんが、実のところ素材がサクラ材でした。サクラを用いた珍しい仏像としても知られています。


「枝垂桜蒔絵笛筒」 江戸時代・18世紀 ほか

ほかにも永楽保全の「三島写桜文茶碗」や、雅楽でも用いる笛を収めるための「枝垂桜蒔絵笛筒」など、桜に因んだ優品が目白押しでした。「展示室に咲く名品の桜」(チラシより)で、一足早いお花見を味わうことが出来ました。



こうした一連の桜の作品を追うには、展覧会のチラシが有用でした。中を開くと、「本館桜めぐり」と題し、桜をモチーフにした作品が図版入りでピックアップされていました。



今年も「桜スタンプラリー」が開催中です。会期中、本館展示室の5つのポイントでスタンプを押すと、オリジナル缶バッジがプレゼントされます。バッジはら本館1階のエントランスの特設ブースで引き換えることが出来ました。


「博物館にお花見を」に合わせ、本館北側に広がる庭園の開放もスタートしました。庭園内には多様な品種の桜の木が植えられ、のんびりとお花見をすることも可能です。なお庭園は普段、非開放のため、自由に散策出来るのは、春と秋の開放時だけに限られています。つまり1年に2回しかありません。さらに3月末、及び4月第1週の週末は、日没後、19時半までの夜間ライトアップも行われます。

【春の庭園開放】
会期:3月13日(火)~5月20日(日)
時間:10:00~16:00
 *但し3月30日(金)、3月31日(土)、4月6日(金)、4月7日(土)は19時半まで開放。夜間ライトアップも実施。



私が出向いた際は、まだ桜は咲いていませんでしたが、おそらく来週末から今月末には見頃を迎えるのではないでしょうか。桜の時期の上野はどこも凄まじい人出ですが、この庭園はさほど混み合いません。隠れたお花見スポットと言えそうです。



「名作誕生ーつながる日本美術」の準備設営ため、平成館の特別展示室はクローズしていますが、当初、3月18日までを予定していた表慶館の「アラビアの道」は、5月13日まで会期が延長されました。


「アラビアの道ーサウジアラビア王国の至宝」会場風景

「アラビアの道ーサウジアラビア王国の至宝」 東京国立博物館(はろるど)

「アラビアの道」展は、常設展観覧料のみで入場可能です。お花見展と合わせて見るのも良いかもしれません。

間もなく春本番を迎えそうです。4月8日まで開催されています。

「博物館でお花見を 2018」 東京国立博物館@TNM_PR
会期:3月13日(火) ~4月8日(日)
時間:9:30~17:00。
 *毎週金・土曜は21時まで開館。
 *4月の日曜は18時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。
料金:一般620(520)円、大学生410(310)円、高校生以下無料。
 *( )は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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「ポーラ ミュージアム アネックス展2018 前期−無明と可視」 ポーラミュージアムアネックス

ポーラミュージアムアネックス
「ポーラ ミュージアム アネックス展2018 前期−無明と可視」 
2/23〜3/18



ポーラミュージアムアネックスで開催中の「ポーラ ミュージアム アネックス展2018 前期−無明と可視」を見てきました。

ポーラ美術振興財団による「若手芸術家の海外助成制度」に採択された現代アーティストを紹介するグループ展も、今回で12回目を迎えました。

前期のテーマは「無明と可視」です。ポーラ美術館館長の木島俊介が監修を務め、いずれも1980年代後半に生まれた、比較的若い世代の4名のアーティストを紹介していました。



まずは大阪を拠点に活動し、2015年に財団の在外研修員としてニューヨークへと渡った、堀川すなおのインスタレーションでした。堀川は「目の前にある もの その本来の姿を探るため、制作をしています。」と語っています。



インクジェット用の白いマイラーフィルムの上には、青い色鉛筆で、一見、具象的なモチーフが描かれていました。しかし良く目を凝らすと、細胞のようでもあり、楽器や箱のようでもあり、また植物や果物のようでもあり、あるいは装飾的なパターンのように映るなど、そもそも一体、何が描かれているのか判然としません。

しばらく眺めていると、素描というよりも、何らかの一つの大きな装置を作り上げるための、図版、ないし図面のようにも思えました。本来的なもののイメージを、半ば解体し、新たに構築すべく、自由に想像して描いているのかもしれません。



牧田愛の平面作品に視覚を揺さぶられました。作家は「認識の境界を作品に表現する。」として、「デジタル画面で認識する奥行きを、現実世界に再現したときにどのように知覚されるのかと考える。」としています。



目の前に開くのは、デジタルというよりも、いくつかのガラスを組み合わせて出来た、まるで鏡面のような世界でした。それはいずれも歪み、中には焦点もあわず、屈折しているようにも見えました。しかしイメージ自体は鮮烈で、光を放つようでもあり、独特のぶれを伴うことから、映像的な動きも感じられるかもしれません。

「層の重なり合いを表現とする」松橋萌は、山の中の木立をミニチュアに仕立てたような立体作品を展示していました。



その森には映像も投影され、何らかの物語が紡がれているように思えました。これぞ作家の語る「夏休みに訪れていた小屋と山の中の森」なのでしょうか。どことなく田舎の野山を思わせるような、郷愁を誘う作品でもありました。



いずれも素材に木や板紙を使用していましたが、まるで切り絵を見るかのような質感にも興味を引かれました。幾重にも重なる層が、人であり、植物であり、また風景を築き上げていました。

一昨年にメキシコに研修へ渡った岡田杏里は、「現実と幻想」、それに「現代性と土着性」をテーマとした作品を制作しています。



強く目を引いたのはジャングルで、青々と葉の茂る森の中には、男女と思しき人が向かい合っていました。ただし近づいて見ると、その人物は2〜3名ではなく、それこそ植物や生き物のようなモチーフにも顔や目があり、森へ数えきれないほどあまねく存在していることが分かりました。もはや魑魅魍魎で、何やらジャングルの中に密かに開けた、異世界を覗き込むようでもありました。



平面と立体、それにガラスを使用し、壁一面に作品を展開していたのも印象に残りました。作家は、「メキシコには原始の世界から現代社会が共存」していると語っています。ジャングルであり、トーテムポールであり、蛇であり、また人形を思わせるモチーフも、メキシコで記憶した風景の表れなのかもしれません。


「ポーラ ミュージアム アネックス展2018 後期ーイメージと投影」
会期:3月23日(金)〜4月22日(日)

3月23日からの後期は、テーマを「イメージと投影」に代え、村上亘・冨田香代子・今村綾・古川あいかの作品が展示されます。



入場は無料です。3月18日まで開催されています。*「」内はキャプションより。

「ポーラ ミュージアム アネックス展2018 前期−無明と可視」 ポーラミュージアムアネックス@POLA_ANNEX
会期:2月23日(金)〜3月18日(日)
休館:会期中無休
料金:無料
時間:11:00~20:00 *入場は閉館の30分前まで
住所:中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
交通:東京メトロ有楽町線銀座1丁目駅7番出口よりすぐ。JR有楽町駅京橋口より徒歩5分。
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「春の江戸絵画まつり リアル 最大の奇抜」 府中市美術館

府中市美術館
「春の江戸絵画まつり リアル 最大の奇抜」 
3/10~5/6



毎年、春の恒例、府中市美術館の「江戸絵画まつり」が、今年もはじまりました。

今回のテーマは「リアル」です。しかし「最大の奇抜」と続くように、江戸時代における「リアルとは何か。」を問い直すような内容と言えるかもしれません。そもそも日本絵画の魅力とは、「迫真性にこだわらない、純粋な色や形そのものから醸し出される美しさ」(解説より)にもありました。


森狙仙「群獣図巻」 *前期・後期とも展示

はじまりは猿の絵師としても知られる森狙仙でした。「群獣図巻」は、十二支でも動物図鑑でもなく、鼠や猫、それに象や馬などの動物を有り体に捉えた作品で、特に精緻な毛並みはリアルと呼べるのかもしれません。また、お馴染みの猿も出ていて、「梅猿図」では、白梅の枝に乗り、上下に戯れ合う二頭の猿を描いていました。一頭は、虫か蝶を捕まえたのか、手を動かすような仕草をしていて、下の猿は枝にぶら下がっていました。


織田蕊々「異牡丹桜真図」 西宮市笹部桜コレクション *前期展示

毎年、「江戸絵画まつり」には、ともすると知られざる、マニアックな絵師が多く登場するのも特徴です。一例が、尼僧として近江の寺を守りながら、桜ばかりを描いたと伝えられる織田蕊々でした。その作品の多くには品種目が記されていて、ソメイヨシノ一色の現代とは異なり、当時は、多様な品種に関心が持たれていたと考えられています。「異牡丹桜真図」も、太い幹を伴った桜の姿を捉えた一枚で、既に見頃はやや過ぎたのか、一部は葉を付けているものもありました。濃い色彩も特徴的で、花弁などの描線や色彩は細やかな一方、幹は太めの面で表し、塗り残しも見られるなど、大胆さも伺えました。エキゾチックな雰囲気も感じられるかもしれません。

印旛国鳥取藩の家老をつとめ、印旛画壇の祖とも呼ばれる土方稲嶺も、必ずしも有名な絵師ではありません。「群鶴図」では、文字通り、4羽に群れた鶴を描いていましたが、羽根はグレーでやや薄汚れていて、赤い頭も生々しく、そもそも寒々とした水辺の表現など、独特の趣きをたたえていました。吉祥主題の鶴の絵にしては、妙に地味と呼べるかもしれません。

画名から江漢との関わりも指摘される、司馬長瑛子の「従武州芝水田町浜望南東図」も興味深い作品でした。武蔵の芝、つまり現代の東京都港区あたりを捉えていて、弧を描いた海岸線は、遥か彼方にまで達していました。この遠近感のある構図に、江漢の作風を思わせるかもしれません。


村松以弘「白糸瀑図」 掛川市二の丸美術館 静岡県指定文化財 *前期展示

遠江の掛川に生まれ、谷文晁に学んだとされる村松以弘の「白糸瀑図」も忘れられません。富士宮にある有名な白糸の滝を描いた作品で、雄大な富士山がそびえ立つ中、左右へと広がる滝の全景をパノラマ的に表していましたが、実際には、こうした風景を一地点から見ることは叶いません。しかし細部は緻密で、点描を駆使しては、木々や岩を描きこんでいました。その意味では、空想とリアルが入り混じった風景と呼べるのかもしれません。

土方稲嶺の「関羽図」には驚きました。なにせ等身大で、高さは約170センチほどありました。長い髭を蓄え、左手に巻物を持って立つ三国志の名称の姿は堂々としていて、威圧感すら覚えるほどでした。

その土方に学んだ、鳥取藩士の絵師、黒田稲皐の「竹図」が、思いがけないほど魅惑的でした。水色で背景の水辺を表現し、手前の左右に墨で竹を即興的に描いた作品で、風になびいているのか、やや反っているようにも見えました。稲皐は、武芸に秀で、鯉の絵を得意とし、幅広い画題の作品を残したと言われています。

「江戸絵画まつり」で目にする機会の多い、安田雷洲の「鷹図」が、いつもながらに鮮烈でした。荒々しい波間の岩の上に立つ鷹をとらえていますが、まるで機械のようで、もはや甲冑に身をまとったサイボーグのようにしか見えません。雷洲は江戸で活動し、一時は北斎の弟子として挿絵も手がけ、浮世絵の流行を取り入れた銅版画などを多く残しました。そうした銅版画由来の緻密な線描も個性的で、鷹の羽はもとより、波を象った面にも、密集した線を見ることが出来ました。一度、作品を前にすると、なかなか頭から離れないような強いインパクトがありました。

熊本藩と関わりのある2人の絵師も、要注目ではないでしょうか。まず1人目が同藩の御用絵師、矢野良勝で、雪舟風の造形をもとに、西洋の遠近法を取り入れつつ、領内の風景を描きました。それが「肥後瀑布図」で、まさに領内の滝を俯瞰した構図で表していました。ただし全体を鳥瞰的に描く一方、何やら渓谷の中に立ち入って見上げたような描写が混在しているのも特徴で、視点は必ずしも1つではありませんでした。

もう1人の米田松洞は、同藩の家老を務め、書に絵画、詩や篆刻に秀でていた文人でもありました。この松洞の「北山秋景」が独特で、おそらく藩内の里山を表していると思われるものの、ともかく人物も木々も岩も小さく、全てが点景のようで、まるでミニチュアを覗き込むかのような雰囲気さえ感じられました。

ハイライトは2人の有名絵師、すなわち司馬江漢と円山応挙でした。ともに手法は異なるとはいえ、「迫真的に表す」(解説より)ことを探求した絵師として知られています。各15点ずつほどの作品が展示されていました。


司馬江漢「生花図」 府中市美術館 *前期・後期とも展示

まず江漢の「生花図」に見惚れました。薄緑色のガラスの花器には、百合や薔薇などの花々が、溢れんばかりに生けられていました。花の色彩は鮮やかでかつ、生気にも満ちていて、その芳しい様がひしひしと伝わってきました。またリアルにこだわったのか、ガラス器に透けて見える茎や、そもそも器の底が内側に折り曲がる姿なども、細かに描いていました。美しい一枚ではないでしょうか。


司馬江漢「円窓唐美人図」 府中市美術館 *前期・後期ともに展示

それにしても西洋画的な油画の「円窓唐美人図」の次に、拙い描線で猫を表した「猫と蝶図」を見ると、あまりにもの作風の違いに戸惑いすら覚えるほどでした。ともすると、同じ絵師の作品に思えないかもしれません。江漢のマルチな才能に改めて感じ入りました。


円山応挙「大石良雄図」 百耕資料館 *前期展示

応挙では「大石良雄図」が目立っていました。とするのも、先の土方の「関羽図」と同様、人の姿が原寸大で描かれていたからです。中央に赤穂浪士事件で有名な大石内蔵助が立ち、右には遊女の姿も見ることが出来ました。着衣の透けの描写なども巧みで、線には無駄もなく、刀の鍔や、袖の裏側の装飾などは、型紙を貼ったのかと思うほどに細かく表現されていました。

「百兎図」も面白いかもしれません。一面に群れるのは、白、黒、茶色の兎で、ともかく何頭いるのか分からないほどにたくさんいました。遠近感を意識したのか、遠くの兎が小さく描かれているのも見どころかもしれません。さらには「時雨狗犬図」といった、定番の可愛らしい応挙犬の作品も目を引きました。


円山応挙「猛虎図」 滴水軒記念文化振興財団 *前期・後期ともに展示

ほかにも岸駒、亜欧堂田善、祇園井特、英一蝶などにも見入る作品が少なくありません。「リアル」をきっかけにした「春の江戸絵画まつり」、今年も楽しめました。


太田洞玉「神農図」 府中市美術館 *後期展示

最後に展示替えの情報です。一部を除き、会期途中で作品が入れ替わります。通期で展示される作品は約15%に過ぎず、ほぼ前後期を合わせて1つの展覧会と言って差し支えありません。

前期:3月10日(土)~4月8日(日)
後期:4月10日(火)~5月6日(日)



そこで有用なのがチケットです。窓口でチケットを購入すると、本展1回に限り、2度目が半額となる割引券が付いています。



美術館前の桜並木もまだ蕾の状態でしたが、後期に入る頃には満開を迎えているかもしれません。おそらく後期も掘り出し物ならぬ、未知の江戸絵画に出会えるのではないでしょうか。



5月6日まで開催されています。おすすめします。

「春の江戸絵画まつり リアル 最大の奇抜」 府中市美術館
会期:3月10日(土)~5月6日(日)
休館:月曜日。但し4月30日は開館。
時間:10:00~17:00
 *入館は閉館の30分前まで
料金:一般700(560)円、大学・高校生350(280)円、中学・小学生150(120)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *府中市内の小中学生は「学びのパスポート」で無料。
場所:府中市浅間町1-3 都立府中の森公園内
交通:京王線東府中駅から徒歩15分。京王線府中駅からちゅうバス(多磨町行き)「府中市美術館」下車。
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「ニッポンの国宝100」第25号(東寺両界曼荼羅図/法隆寺伽藍) 小学館

小学館のウィークリーブック「ニッポンの国宝100」が、全50号のうちの半数に当たる第25号に到達しました。



「週刊 ニッポンの国宝100」
http://www.shogakukan.co.jp/pr/kokuhou100/

それが「東寺 両界曼荼羅」と「法隆寺伽藍」の特集で、ともに京都・奈良を代表する仏教美術、および建築が取り上げられていました。なお、東寺、法隆寺とも、既に別の国宝が掲載済みで、東寺では第8号で「立体曼荼羅」、そして法隆寺では第7号で「救世観音」、第13号で「百済観音」が特集されました。特に法隆寺の両観音像は、私も好きな仏像だけに、ともに追いかけました。



いつもの高精細な図版は、東寺の「両界曼荼羅」を鑑賞するのに有用でした。現存最古の彩色の両界曼荼羅である「金剛界曼荼羅」が原寸で掲載されているため、成身会を囲んだ、賢劫千仏の細かな姿までを確認することが出来ました。もちろん実際の作品に当たるのが一番かもしれませんが、おそらく肉眼ではここまで鮮明に見えません。



「国宝鑑賞術」では、5つの観点から両界曼荼羅の世界を解き明かし、作品の見方を分かりやすく紹介していました。また「国宝くらべる大図鑑」の視点もユニークで、ともすると見落とされがちな、両界曼荼羅の細部の菩薩や珍獣などを抜き出して見せていました。



後半の「法隆寺伽藍」も充実していました。まず目を引いたのは、世界最古の木造建築とされる西域伽藍を上空から捉えて掲載した写真で、おそらく現地でも、この高さから鑑賞することは叶いません。また若草伽藍と西院伽藍の古代瓦を比較しながら、長らく論争の続いてきた法隆寺の再建・非再建論争についても触れていました。1939年、焼土ともに若草伽藍が発掘されたことから、再建説が広く支持されました。

しかし近年、五重塔や金堂の天井壁画に、火災前の木材が使用されていたことが判明したため、非再建の可能性もあるとして、再び論争が沸き起こっているそうです。また2017年には、おおよそ50年ぶりに、若草伽藍の発掘調査も行われました。いずれ何らかの形で、一定の見解がまとめるのかもしれません。



国宝への旅をテーマとした「行こう国宝への旅」は、法隆寺へのガイドでした。私も昨年春、「救世観音菩薩立像」を拝むため、春の特別公開の際に法隆寺へいきましたが、その時の記憶も蘇りました。



「国宝救世観音菩薩立像 特別公開」 法隆寺夢殿(はろるど)

ちょうど折り返しに達した「週刊ニッポンの国宝100」は、これ以降も、来年の9月に向けて、残りの25号が刊行されます。(刊行予定一覧

26:室生寺/洛中洛外図屏風 舟木本
27:東大寺伝日光・伝月光菩薩/浮線綾螺鈿蒔絵手箱
28:早来迎/清水寺
29:向源寺十一面観音/紅白芙蓉図
30:醍醐寺/信貴山縁起絵巻
31:仏涅槃図/出雲大社
32:浄土寺/彦根屏風
33:明恵上人像/仁和寺
34:四天王寺扇面法華経冊子/法隆寺釈迦三尊像
35:葛井寺千手観音/薬師寺吉祥天像
36:志野茶碗 銘卯花墻/東大寺伽藍
37:羽黒山五重塔/聚光院花鳥図襖
38:辟邪絵/色絵雉香炉
39:勝常寺薬師三尊像/夕顔棚納涼図屏風
40:天燈鬼・龍燈鬼/金剛峯寺
41:浄瑠璃寺九体阿弥陀/二条城
42:東大寺不空羂索観音/観音猿鶴図
43:普賢菩薩/三佛寺投入堂
44:神護寺薬師如来/十便図・十宜図
45:玉虫厨子/臼杵磨崖仏
46:唐招提寺/火焔型土器
47:本願寺/鷹見泉石像
48:中宮寺菩薩半跏像/崇福寺
49:青不動/赤糸威鎧
50:深大寺釈迦如来/大浦天主堂

全て国宝を扱うだけに、有名な作品や建築も目立ちますが、中には一般的な書籍で細かく扱われないような国宝もあり、「ニッポンの国宝」ならではの多角的な視点での解説も期待出来ます。



昨年は京都国立博物館の「国宝展」を筆頭に、ともかく国宝に関する企画や展覧会も続き、「国宝イヤー」とも言われました。実際、「国宝展」は、同博物館の特別展史上最多となる、約62万名もの入場者を記録しました。

「週刊ニッポンの国宝100/東寺両界曼荼羅図・法隆寺伽藍/小学館」

さすがに今年は国宝がムーブメントになることはなさそうですが、今後とも「ニッポンの国宝」で国宝に親しんでいければと思いました。

「週刊ニッポンの国宝100」@kokuhou_project) 小学館
内容:国宝の至高の世界を旅する、全50巻。国宝とは「世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるもの」(文化財保護法)国宝を知ることは、日本美術を知ること。そして、まさに日本のこころを知る旅だともいえます。「週刊 ニッポンの国宝100」では、現在指定されている1108件の中からとくに意義深い100点を選び、毎号2点にスポットを当てその魅力を徹底的に分析します。
価格:創刊記念特別価格500円。2巻以降680円(ともに税込)。電子版は別価格。
仕様:A4変形型・オールカラー42ページ。
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