都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
2021年 私が観た展覧会 ベスト10
2021年 私が観た展覧会 ベスト10
1.「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」 東京都現代美術館(3/20~6/20)
会場へ足を踏み入れた途端、かつて見たことのないような光景に驚かされるともに、痛みや苦しみを抱えては瞑想するような人物の彫刻に旋律さえ覚えるような展覧会でした。ひび割れた粘土のようなブロンズの彫刻は、あたかもポロポロと朽ち果てていく遺物のようで、時間のとまったような空間を行き来していると、いまだかつて見たことのない異次元の世界へと引き込まれていくような錯覚に囚われました。
2.「テート美術館所蔵 コンスタブル展」 三菱一号館美術館(2/20~5/30)
イギリスの風景画家、コンスタブルの実に35年ぶりの回顧展でした。初期から晩年までの油彩や水彩によって丹念に辿りながら、同時代のターナーとの関係などについても触れていて、特に「ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号」の隣に「ウォータールー橋の開通式」が並ぶ光景は壮観でした。また妻に先立たれ、親友もなくした晩年のコンスタブルは、かつてを懐かしむように絵を描いていたともされていて、後年の生き様にも共感を呼ぶものがありました。
3.「ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island ―あなたの眼はわたしの島」 水戸芸術館(9/14~10/17)
身体やジェンダー、それにエコロジーをテーマにしつつ、独自の音楽と空間を構築するピピロッティ・リストの30年にわたる活動を紹介する展覧会でした。「アパートメント・インスタレーション」と呼ばれる、色彩豊かな映像と劇場的ともいえる空間構成は、時間を忘れるほどに居心地よく感じられました。その一方で直接的な性といった際どい表現も散見されて、安らぎと刺激を同時に感じるような稀有な鑑賞体験を得ることができました。
4.「曽我蕭白 奇想ここに極まれり」 愛知県美術館(10/8~11/21)
江戸中期に活躍し、奇想の絵師とも呼ばれる曾我蕭白の回顧展の決定版でした。特にハイライトを飾る「旧永島家襖絵」は44面のすべてが公開されていて、さまざまな技法を使い分けて描いた蕭白の高い画技を見ることができました。以前に千葉市美術館で開かれた「蕭白ショック!!」は蕭白の面白さが伝わるような内容でしたが、質量ともにさらに充実した今回の回顧展では絵師の凄みすら感じられました。
5.「没後30年記念 笠松紫浪―最後の新版画」 太田記念美術館(2/2~3/28)
今年いくつか開催された新版画に関する展示の中で、特に心を引かれたのが主に大正から昭和にかけて活動した笠松紫浪の回顧展でした。笠松も例えば巴水と同じく、日本各地の風景を描き続けましたが、どこか人の生活も滲み出ているようで、ドラマのワンシーンを切り取るような情緒的な味わいも感じられました。また戦後は東京タワーや横浜の大型貨物船など近代的な風景も描いているのも興味深く思えました。
6.「渡辺省亭 欧米を魅了した花鳥画」 東京藝術大学大学美術館(3/27~5/23)
明治から大正にかけて活動した日本画家、渡辺省亭の国内の美術館としては初めての回顧展でした。省亭は渡仏し、印象派の画家と交流したり、ロンドンで個展を開くなど、いち早く海外で評価されましたが、国内では画壇に属さなかったゆえか特に没後は知られてきませんでした。そうした中、現在の望みうる最上の作品にて省亭の魅力を紹介していて、特に色彩豊かでかつ繊細な表現による花鳥画に心を奪われました。
7.「加藤翼 縄張りと島」 東京オペラシティアートギャラリー(7/17~9/20)
複数の参加者との協働作業によるパフォーマンスで知られるアーティスト、加藤翼の美術館としての初個展でした。これまでに加藤が手がけた建物を引き倒したり、あるいは引き起こすパフォーマンスを映像とインスタレーションにて紹介していて、それこそ「セーノ!セーノ!」や「go!go!」といった掛け声とともにプロジェクトに参加しているようなライブ感を得ることができました。また構造物と映像とが一体となったような空間構成も面白かったかもしれません。
8.「ホー・ツーニェン 百鬼夜行」 豊田市美術館(10/23~2022/1/23)
妖怪を起点に、軍人やスパイを登場させつつ、第二次世界大戦を挟んだ日本の文化や精神史を浮かび上がらせる異色の展覧会でした。ともかく妖怪の行進から「マレーの虎」へと連なる虎の物語は衝撃的で、おおよそ想像もつかない展開に驚きを覚えながらアニメーションに見入りました。アジアでの歴史や伝承をリサーチしつつ、映像やインスタレーションにて時空を超えた物語を紡ぎ出すホー・ツーニェンは、まさに鬼才といえるのではないでしょうか。
9.「柳宗悦没後60年記念展 民藝の100年」 東京国立近代美術館(10/26~2022/2/13)
これまでにも民藝の作品を見る機会はありましたが、今回は民藝運動そのものを体系立って紹介した「民藝の総括」とでも呼べるような展覧会でした。陶磁器、染織、木工、籠、それに民画や出版物、写真などの約400点の資料が充実していたのはもちろんのこと、民藝と社会との関係や柳を中心とした民藝に携わった人々の活動をさまざまな観点から掘り起こしていて、「民藝とは何だったのか?」ということの一端を知ることができました。
10.「生誕260年記念企画 特別展『北斎づくし』」 東京ミッドタウン・ホール(7/22~9/17)
「北斎漫画」、「冨嶽三十六景」、そして「富嶽百景」の全点、及び全図を公開するという過去になかった異色の北斎展でした。また通常、見開きのみで展示される機会の多い「北斎漫画」についても883もの全てのページを閲覧できて、もはや1人の絵師が生み出したとは思えないほど膨大な北斎の創造力に感じいるものがありました。また建築家の田根剛の空間構成をはじめ、祖父江慎のグラフィックデザイン、橋本麻里の監修による音声ガイド、さらに充実したミュージアムショップなど、1つのパッケージとしての展覧会の完成度には目を見張るものがありました。
次点.「柚木沙弥郎 life・LIFE」 PLAY! MUSEUM(11/20〜2022/1/30)
ベスト10以外で特に印象に残った展覧会は以下の通りです。(順不同)
・「奥村土牛 ―山﨑種二が愛した日本画の巨匠 第2弾―」 山種美術館(11/13~2022/1/23)
・「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×森村泰昌 M式「海の幸」―森村泰昌 ワタシガタリの神話」 アーティゾン美術館(10/2~2022/1/10)
・「鈴木其一・夏秋渓流図屏風」 根津美術館(11/3~12/19)
・「戸谷成雄 森―湖:再生と記憶」 市原湖畔美術館(10/16~2022/1/16)
・「木組 分解してみました」 国立科学博物館(10/13~11/24)
・「塔本シスコ展 シスコ・パラダイス かかずにはいられない! 人生絵日記」 世田谷美術館(9/4~11/7)
・「川瀬巴水 旅と郷愁の風景」 SOMPO美術館(10/2~12/26)
・「福田美蘭展 千葉市美コレクション遊覧」 千葉市美術館(10/2~12/19)
・「山城知佳子 リフレーミング」 東京都写真美術館(8/17~10/10)
・「杉浦非水 時代をひらくデザイン」 たばこと塩の博物館(9/11~11/14)
・「写真芸術展 CHIBA FOTO」 千葉市内13会場(8/21~9/12)
・「イサム・ノグチ 発見の道」 東京都美術館(4/24~8/29)
・「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」 東京都現代美術館(7/17~10/17)
・「Walls & Bridges 世界にふれる、世界を生きる」 東京都美術館(7/22~10/9)
・「イラストレーター 安西水丸展」 世田谷文学館(4/24~9/20)
・「包む-日本の伝統パッケージ」 目黒区美術館(7/13~9/5)
・「開館60周年記念展 ざわつく日本美術」 サントリー美術館(7/14~8/29)
・「国宝 鳥獣戯画のすべて」 東京国立博物館(4/13~5/30)
・「大・タイガー立石展 POP-ARTの魔術師」 千葉市美術館(4/10~7/4)
・「膠を旅する——表現をつなぐ文化の源流」 武蔵野美術大学美術館(5/12〜6/20)
・「電線絵画展-小林清親から山口晃まで-」 練馬区立美術館(2/28~4/18)
・「佐藤可士和展」 国立新美術館(2/3~5/10)
・「あやしい絵展」 東京国立近代美術館(3/23~5/16)
・「モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて」 SOMPO美術館(3/23~6/6)
・「筆魂 線の引力・色の魔力ー又兵衛から北斎・国芳まで」 すみだ北斎美術館(2/9~4/4)
・「小村雪岱スタイル-江戸の粋から東京モダンへ」 三井記念美術館(2021/2/6~4/18)
・「写真家ドアノー/音楽/パリ」 Bunkamura ザ・ミュージアム(2/5~3/31)
・「千葉正也個展」 東京オペラシティ アートギャラリー(1/16~3/21)
・「冨安由真展|漂泊する幻影」 KAAT神奈川芸術劇場(1/14~1/31)
・「米谷健+ジュリア展 だから私は救われたい」 角川武蔵野ミュージアム(11/6~2021/3/7)
・「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」 神奈川県立近代美術館 葉山(1/9~4/11)
今年も昨年と同様、コロナ禍に振り回される一年となりました。年の初めに一都三県へ飲食店の時短営業を中心とした緊急事態宣言が発出され、一度、3月末に解除されました。しかし4月に入り今度は休業要請の伴う緊急事態宣言が出されると、都内を中心とした美術館や博物館が臨時休館に追い込まれました。それにより国立新美術館の「佐藤可士和」展や府中市美術館の「与謝蕪村 『ぎこちない』を芸術にした画家」、さらに三菱一号館美術館の「コンスタブル展」など、いくつもの展覧会が会期途中で打ち切りとなりました。また水戸芸術館の「ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island ―あなたの眼はわたしの島」など、開幕が延期され、実質的に会期が短くなった展覧会もありました。
新型コロナウイルスへの対応に伴う「美術館・博物館」休館情報 第十報(2021年1月9日)、第十一報(3月25日)、第十二報(4月26日)、第十三報(5月13日)、第十四報(6月1日)
そして現在、国内においては一時期よりも感染状況は落ち着いていますが、諸外国に目を転じると新たな変異株によって急速な感染拡大が続くなど、いまだ収束が見通せない状況に置かれています。世界的なコロナ禍から約2年経ちました。
皆さまは今年一年、どのような美術との出会いがありましたでしょうか。このエントリをもちまして年内のブログの更新を終わります。今年も「はろるど」とお付き合い下さりどうもありがとうございました。それではどうぞ良いお年をお迎え下さい。
*過去の展覧会ベスト10
2020年、2019年、2018年、2017年、2016年、2015年、2014年、2013年、2012年、2011年、2010年、2009年、2008年、2007年、2006年、2005年、2004年(その2。2003年も含む。)
「柚木沙弥郎 life・LIFE」 PLAY! MUSEUM
「柚木沙弥郎 life・LIFE」
2021/11/20〜2022/1/30
PLAY! MUSEUMで開催中の「柚木沙弥郎 life・LIFE」を見てきました。
1922年に生まれた柚木沙弥郎は、20代から型染の染色家としてデビューすると、70歳を超えてから絵本の制作を手がけるなど幅広く活動してきました。
その柚木の創作の全体を紹介するのが「life・LIFE」で、絵本の原画をはじめ、人形、ポスター、はたまた布の作品などが一堂に公開されていました。
まず冒頭に並ぶのは「絵のみち」とした絵本の仕事で、「つきよのおんがくかい」や「せんねんまんねん」、さらに「雨ニモマケズ」といった作品の原画や複製が展示されていました。
「たかいたかい」 柚木沙弥郎・作 2006年 福音館書店
「たかいたかい」はウシやネコの赤ちゃんを抱いてあげる様子を描いた作品で、赤ちゃんが嬉しそうにはしゃぐ姿を布を染める型染と同じ方法で表現していました。
「つきよのおんがくかい」 山下洋輔・文 柚木沙弥郎・絵 1999年 福音館書店
「つきよのおんがくかい」は山下洋輔のジャズコンサートの催しから着想を得た作品で、山下の役をクマが務め、イヌやネコ、それにウマなどが楽しそうに楽器を鳴らす光景を描いていました。ともかく一生懸命でかつ愉快に演奏する姿を鮮やかな色彩にて表していて、あたかも音楽のリズムまでが伝わるかのようでした。
「せんねんまんねん」 まど・みちお・詩 柚木沙弥郎・絵 2008年 福音館書店
まどみちおの詩に絵をつけた「せんねんまんねん」は、あらゆる生命が支え合い、繋がることを謳った作品で、ヤシの実やミミズ、それにヘビといった植物や生き物が、揺らぎを伴うような瑞々しい色遣いにて描かれていました。
「せんねんまんねん」 まど・みちお・詩 柚木沙弥郎・絵 2008年 福音館書店
あらゆる生き物が太陽を中心に輪になっている表紙からは、生命賛歌とも呼べるような多幸感も感じられるのではないでしょうか。まさに柚木の絵本の傑作といっても良いかもしれません。
絵葉書「注文の多い料理展」原画 1974年
元々、民藝運動から染色の道を歩んだ柚木は、民藝の拠点だった光原社(盛岡)から同社の出版した宮沢賢治の「注文の多い料理店」の絵を依頼され、型染絵による絵葉書を発表しました。その後も柚木と光原社の縁は続いていて、賢治をテーマとした作品を発表していきました。
型染ポスター
また光原社と同様、日本民藝館で開かれる展覧会や催しのための仕事にも長く携わっていて、「日本民藝協会新作工芸展」や「アフガニスタンの工芸展」といったポスターも多く手がけました。いずれも型染の技法を用いた作品で、独特の温かみのある風合いを見ることができました。
「町の人々」 2004年
紙粘土や染布、さらに古着などを素材にした人形を並べたのが「町の人々」で、絵本「トコとグーグーとキキ」に登場する動物たちをモチーフとしていました。
それらは柚木が子どもの頃に見た人形芝居の記憶も参照されていて、40数体の完成作のうち、約半数をフランスのギメ東洋美術館が収蔵し、残りの20数体が日本に残されました。
「布の森」展示風景
「絵のみち」から右へカーブする通路を抜けると現れるのが「布の森」と題する展示で、型染の技法によって作られた約50点もの色とりどりの布が一面に吊るされていました。
「布の森」展示風景
布の作品は壁だけでなく、石を敷いた展示室の中央へも吊るされていて、それこそ「布の森」の中を散策するようにしてさまざまな角度から鑑賞することができました。
「布の森」展示風景
青や茶、黄、灰色といった色はもとより、幾何学的、あるいは水、さらには動植物などモチーフも千差万別ながら、いずれもが自然のかたちを切り出して表現しているようで、絵本と同様に温もりが感じられました。
「布の森」展示風景
また布の合間を歩いていると布が微かに揺れていて、布同士が透けたり重なったりして見える光景も美しく感じました。
「柚木さんの好きなもの」
柚木が世界各国の民芸品や玩具をコレクションした「柚木さんの好きなもの」も楽しいのではないでしょうか。所狭しと納められた人形や器などを見ていると童心に帰るような気持ちにさせられました。
WEBメディア「イロハニアート」にも展覧会の内容について寄稿しました。あわせてご覧いただければ幸いです。
くらしと人生を豊かにする彩り。染色家でアーティスト、柚木沙弥郎の70年を超える創作活動の軌跡(イロハニアート)
【MUSEUM 柚木沙弥郎展ムービー】PLAY! MUSEUM「柚木沙弥郎 life・LIFE」のムービーを公開しました。愉快な絵本の世界が広がる「絵のみち」、ユーモラスな人形たち、そして色とりどりの大きな布が織りなす「布の森」の空間を、ムービーでも感じていただけたら嬉しいです。https://t.co/ExcUrr049l pic.twitter.com/Nrr16AL5s6
— PLAY_2020 (@PLAY_2020) December 17, 2021
会場内の撮影も可能でした。また巡回の予定はありません。
1月30日まで開催されています。おすすめします。
「柚木沙弥郎 life・LIFE」 PLAY! MUSEUM(@PLAY_2020)
会期:2021年11月20日(土)〜2022年1月30日(日)
休館:会期中無休。但しただし12月31日(金)、1月1日(土)、2日(日)をのぞく
時間:10:00~18:00
*平日は17:00まで。
*入場は閉館の30分前まで
料金:一般1500円、大学生1000円、高校生800円、中・小学生500円、未就学児無料。
*同時開催の「ぐりとぐら しあわせの本」展の料金も含む
*平日は当日券のみ/休日は希望者に向けてオンラインチケットの日付指定券を販売
住所:東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3
交通:JR立川駅北口・多摩モノレール立川北駅北口より徒歩約10分
「つくる・つながる・ポール・コックス展」 板橋区立美術館
「つくる・つながる・ポール・コックス展」
2021/11/20~2022/1/10
板橋区立美術館で開催中の「つくる・つながる・ポール・コックス展」を見てきました。
1958年にパリに生まれたポール・コックスは、グラフィックデザインや絵本、舞台美術などを手掛け、近年は風景画を描くなど幅広く活動してきました。
そのコックスは2006年、イラストレーター向けのワークショップ「夏のアトリエ」の講師として板橋区立美術館へと招かれ、以来、2015年には同館の展覧会のポスターを描くなど交流を続けてきました。
「本の仕事」展示風景
まず冒頭に展開するのは絵本をはじめとした本の仕事で、過去から現在にまで出版された私家版を含む50点の作品が並んでいました。
「古事記」の絵本のためのスケッチ
いずれもポップな色彩をともなった親しみやすいイラストが描かれていて、日本語としても出版された「日本神話えほん」では絵本のためのスケッチも紹介されていました。
「本の仕事」展示風景
コックスの絵本で興味深いのは、私家版を中心に実験的とも呼べる制作がなされていることでした。このうち「夢見がちな小説全集」ではリングファイル綴じのためにページを入れ替えることができて、偶然組み合わされた文章と絵を楽しむ趣向がとられていました。
「本の仕事」展示風景
この他にも各ページの絵柄の中に書かれた数字を解読すると文ができる「暗号メッセージ」や、テキストに含まれる数字や記号をヒントに内容を楽しむ「これを読みなさい」など独創的な絵本も少なくありませんでした。また私家版のハンドメイドな風合いも魅力的だったかもしれません。
「グラフィックデザインとイラストの仕事」展示風景
グラフィックデザインの仕事で多くを占めるのは、オペラ座といった劇場のためのポスターでした。そもそも音楽家に生まれ、音楽に造形の深かったコックスは、1996年にナンシー・オペラ座のポスターを依頼されたことをきっかけに、現在のナンテール・アマンディエ劇場に至るまでの多くの劇場ポスターを手がけてきました。
「グラフィックデザインとイラストの仕事」展示風景
それらはいずれも絵本と同じように明るい色彩と軽やかなイラストを特徴としていましたが、中には象徴的とも暗示的ともいえるデザインや抽象的なイメージを伴う作品もあり、必ずしも具象というわけではありませんでした。単にわかりやすいだけではない、いわば知性を感じさせるのもコックスの作品の醍醐味なのかもしれません。
「グラフィックデザインとイラストの仕事」展示風景
コックスが本格的に風景画を手がけたのは2011年の頃で、住まいを南フランスのアルルに移したことをきっかけに、同地の風景をスケッチしては絵画を描きました。
「無題」 2019年
それらは川辺の館から緑に覆われた野山、あるいは空の雲などさまざまな場所を描いていて、一度見たかのような郷愁を呼び覚ますような作品も少なくありませんでした。
「無題」 2001年
その一方で音楽的なリズムを伴うような抽象的な作品もあり、線や色が自然のかたちを超えて自由に展開しているようにも思えました。
「レ・ボ=ド=プロヴァンスの庭」 2021年
今回の展覧会に合わせて制作されたのが「レ・ボ=ド=プロヴァンスの庭」で、横幅6.8メートル、高さ3.2メートルもの大画面にアルル近くにある庭から着想した光景を表していました。一見、抽象的でもありますが、しばらく目にしているとモネが晩年に描いた睡蓮のイメージも思い浮びました。
「えひらがな」展示コーナー
「えひらがな」とは、ひらがなを人や動物に置き換えて表現し、自由に言葉を生み出すことができる参加型のインスタレーションで、実際にイラストを手にとっては文字列を作ることができました。
「えひらがな」展示コーナーよりイラストを「はろるど」と表示
これは元々、1996年頃からアルファベットにて取り組まれた作品で、今回の展覧会のために新たな日本語のバージョンとして作られました。
「手探りすること、試みること」に焦点を置いたとのことでしたが、完成作とともにスケッチなどから制作のプロセスを辿ることができるような内容だったかもしれません。おもちゃ箱をひっくり返したような遊び心にも満ち溢れた展示でした。
「グラフィックデザインとイラストの仕事」展示風景
コックス自身、子どもの頃から日本の美術に深い影響を受けていたそうです。今回は残念ながらコロナ禍のために来日は叶いませんでしたが、今後も日本でもさまざまな制作を見ることができるのではないでしょうか。
【新着】「あそび」と「自由」がなくてはならない大切なもの。日本とも関わりが深いフランスのアーティスト、ポール・コックスの魅力 https://t.co/xMZpcuLWlN
— Pen Magazine (@Pen_magazine) December 11, 2021
会場内の撮影が可能でした。2022年1月10日まで開催されています。
「つくる・つながる・ポール・コックス展」 板橋区立美術館(@itabashi_art_m)
会期:2021年11月20日(土)~2022年1月10日(月・祝)
休館:月曜日(ただし1月10日は開館)。年末年始(12月29日~1月3日)。
時間:9:30~17:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般650円、高・大生450円、小・中学生200円。
*毎週土曜日は高校生以下無料。
住所:板橋区赤塚5-34-27
交通:都営地下鉄三田線西高島平駅下車徒歩13分。東武東上線・東京メトロ有楽町線成増駅北口2番のりばより増17系統「高島平操車場」行き、「区立美術館」下車。
「戸谷成雄 森―湖:再生と記憶」 市原湖畔美術館
「戸谷成雄 森―湖:再生と記憶」
2021/10/16~2022/1/16
市原湖畔美術館で開催中の「戸谷成雄 森―湖:再生と記憶」を見てきました。
1947年に長野県で生まれた戸谷成雄は、チェーンソーで木を彫り込む作品を手がけ、国内外の芸術祭や美術館の展示に参加するなどして活動してきました。
その戸谷の新旧作にて構成されたのが「森―湖:再生と記憶」で、大きなアトリウムを有する美術館の特徴的な空間を活かし、大小10点の作品を展示していました。
「双影景」 2008年
まず冒頭の「森」を抜けると現れるのが、木の彫刻が垂直に並ぶ「双影景」で、いずれも木の表面はチェーンソーによって荒々しく刻み込まれていました。
「双影景」(部分) 2008年
ただ端的に刻み込まれたと言っても、例えば細かく砕くように切り込みが入っていたり、龍のうろこのようなうねりを見せるものもあり、個々の彫刻ではかなり様子が異なっていました。また切り込みそのものも木の半分のみ施された作品から、上から下までほぼ全部刻まれたものもあり、必ずしも一様ではありませんでした。
「落下」 1992年
そうした「双影景」の向こうの小部屋にあるのが「落下」で、ちょうど中央部がクレーターのようにくり抜かれ、穴の空いた一枚の円盤のような木の彫刻が吊るされていました。
「落下」 1992年
木の周囲は「森」などと同じく、チェーンソーで刻まれていて、穴の下には木屑と思しき粒子状の物体が小さな山を築いていました。
今回の個展のハイライトを飾るのは、地下から地上へと至るアトリウムの空間に展示された「雷神 - 09」、及び「水根II(スワ)」と「地霊 Ⅳ」でした。
「雷神 - 09」 2009年
そのうち高さ9メートルにも及ぶのが「雷神 - 09」で、丸みを帯びた木の根のような部分から、1本の幹のような彫刻が直立していました。
右奥:「水根II(スワ)」(2005年)、左手前:「地霊 Ⅳ」(1993年)
そしてガラスと鉄の箱に木の彫刻を納めた9点の「地霊 Ⅳ」と、木が根を張り巡らせたような「水根II(スワ)」が斜めに向かうように展示されていて、荘厳とも言うべき雰囲気を醸し出していました。この地下空間を古代の洞窟に見立てれば、例えば木の精霊を祀るための場のようにも思えるかもしれません。
「水根II(スワ)」 2005年
戸谷は関東において近年、「オムニスカルプチャーズ——彫刻となる場所」(武蔵野美術大学美術館、2021年)や「ドローイングの可能性」(東京都現代美術館、2020年)でも作品を発表してきましたが、美術館での単独の個展となると「戸谷成雄―現れる彫刻」 (武蔵野美術大学美術館、2017年)にまで遡るのかもしれません。
「視線体ー散」 2019年
作品数自体こそ多くはありませんが、美術館の空間と一体となったようなインスタレーションとして見応えがありました。
「戸谷成雄 森―湖:再生と記憶」会場風景
12月26日まで開かれている「いちはらアート×ミックス2000+」のパスポートにて観覧することができました。
【新着】里山の美術館に出現した「神秘の森」。『戸谷成雄 森―湖:再生と記憶』展で感じる彫刻の凄み https://t.co/kJgRLgonnz
— Pen Magazine (@Pen_magazine) December 21, 2021
2022年1月16日まで開催されています。
「戸谷成雄 森―湖:再生と記憶」 市原湖畔美術館(@LSM_ICHIHARA)
会期:2021年10月16日(土)~2022年1月16日(月・祝)
休館:月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始(12月27日〜1月3日)。
時間:10:00~17:00(月~金)、9:30~19:00(土曜・祝前日)、9:30~18:00(日曜・祝日)
*入館は閉館の30分前まで
料金:一般800(700)円、65歳以上、大学・高校生600(500)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:千葉県市原市不入75-1
交通:JR線五井駅から小湊鉄道にて高滝駅下車、徒歩約20分。
「いちはらアート×ミックス2000+」 小湊鉄道を軸とした周辺エリア(後編:旧平三小学校、月出工舎、旧白鳥保育所)
「いちはらアート×ミックス2000+」
2021/11/19~12/26
「前編:五井機関区、上総牛久、市原湖畔美術館」から続きます。「いちはらアート×ミックス2000+」へ行ってきました。
旧平三小学校は湖畔美術館から市原鶴舞バスターミナルを経由し、南へ向かった山間部にある2016年に閉校した学校で、他のいずれの会場とも離れた場所にありました。
ここでは11名の作家が計12点の作品を公開していて、3階建ての校舎内の各教室を用い、映像からインスタレーションと多様な展示が行われていました。
栗真由美の「ビルズクラウド」は、市原のさまざまなかたちをした建物を提灯のように吊るしていて、それこそ明かりが街を温かく照らしているかのようでした。どこか子どもの頃の縁日を思い出すような、郷愁を誘う雰囲気も感じられたかもしれません。
キム・テボンの「ドリームキャッチャー」は、機械、あるいは武器を連想させるオブジェを用いたインスタレーションで、実際に手にしながら宇宙船のような構造物の中へ立ち入ることが可能でした。
ブラジルのマリア・ネポムセノは、色をつけたロープをコイル状に編んで広げる「知るは海」を展示していて、教室一面に海の波や泡を連想させる光景を築いていました。
プロダクトデザインを学んだのちにアーティストとして活動をはじめた長谷川仁は、カラフルな紙をちぎっては吸引孔に入れ、それが空気の働きによって天井から降ってくる「混色」と題する作品を設置していて、教室には紙の山が堆く積もっていました。ここでは観客も思い思いに紙を入れることができましたが、吸引孔が詰まってしまったのか、なかなかな紙が降ってこないようでした。
旧平三小学校で最も印象深かったのは、校舎内の階段と外階段の2ヶ所にて作品を展示していた冨安由真でした。
冨安は2018年の第12回shiseido art eggで入選を果たすと、2021年には神奈川芸術劇場で個展「KAAT EXHIBITION 冨安由真展|漂泊する幻影」を開くなどして活動し、近年、作品が注目を集めるアーティストの1人として知られてきました。
そのうちの「塔(エメラルド・シティに落ちる)」とは、タロットカードの「塔」(The Tower)に着想を得ながら、配膳室のダムウェーターを用いたインスタレーションで、1階から3階まで外階段を経由して鑑賞することができました。
ともかく1階から2階、3階へと行く毎に、不穏でかつ不可思議な光景が現れ、特に最上階では天井を見上げて驚くものがありました。ダムウェーターの前の小さなスペースを逆手にとりつつ、上下の空間の感覚を揺さぶるような、刺激のある展示といえるかもしれません。
旧平三小学校を出て次に向かったのは、さらに山深き場所に建つ月出工舎でした。廃校となった月出小学校の跡地にある同工舎は、2014年の第1回アートミックスより会場として使われ、以来、クリエイティブスペースとして展覧会を開催してきたほか、アーティスト・イン・レジデンスといった活動が行われてきました。
鍛治瑞子がリノベーションした体育館にて展開していたのは、染織を活かした作品を手がける岡博美の「その内に持つ色」で、月出工舎周辺で採取した植物で染めた布や糸を吊るしていました。茶色や黄色を帯びた色は、まさに月出の土地の色を表しているのかもしれません。
この鍛冶がリノベーション計画の際、月出の環境を読み解いて制作した映像「The Traces of the Environment and Textures - TSUKIDE」も充実していました。そこには月出の森のシルエットなどが幾重にも映し出されていて、鳥のさえずりといった音響を耳にしていると、森の奥深くへ光とともに入っていくような感覚を覚えました。シンプルながらも美しい映像インスタレーションだったのではないでしょうか。
月出工舎では山の斜面に面した場所にも作品が設置されていて、薄暗がりの廃屋の中に絵画を並べた来田広大の「風待ちの家」も目がとまりました。
この月出エリアはもとより、今回のアートミックスで最も感銘したのが、大正時代の古民家を舞台にした、田中奈緒子の「彼方の家」でした。
そこで目に飛び込んでくるのは、タンスや鏡、あるいは電燈といった家の建具などで、いずれも打ち捨てられたのか、床にめり込むように切断されたり、飛び出しては崩れるようなかたちを見せていました。
また床には水を思わせるような皮膜が貼られていて、あたかも波に飲まれては壊されてしまった家や建具の残骸を連想させるものがありました。
さらに月明かりのような照明がゆっくり動きながらあたりを照らしていて、一輪のみ可憐に咲く彼岸花の存在とあいまってか、物悲しい雰囲気を醸し出していました。
それこそ主を失い、誰もいなくなった家の中で時間が止まり、すべてが永遠に静止しているような気配も感じられたかもしれません。
「彼方の家」の余韻に浸りながら月出工舎を後にすると、すでに15時近くとなっていました。本来、アートミックスは17時までとされていましたが、会期が春から冬に変更されたことで閉場時間が16時に早まっていました。
最後の目的地である旧白鳥保育所は、月出地区から西へ向かった上総大久保駅近くに位置していて、隣接する旧白鳥小学校と合わせて計8点の作品が展示されていました。
旧白鳥保育所では大杉祥子がその名も「白鳥の湖」と題した展示を行っていて、バレエ「白鳥の湖」をイメージした舞台を版画と紙人形にて見せていました。
調理室を舞台にしていたのが文筆家の五所純子で、インスタレーションとテキストを交えて食にまつわる「FOOD COURT」の展示を行っていました。
流木と思しき木材を使い、窓の内外へと連なるインスタレーションを手がけたのが高山夏希で、黒板の上の平面の作品と合わせ、自然のダイナミックな風景を教室へと展開していました。
このほか、髙田安規子・政子のユニットや篠崎恵美の作品も見どころだったかもしれません。なお旧白鳥保育所も旧平三小と同様に、今回のアートミックスから初めて会場となりました。
起点となった五井へ帰るために道を北に進むと、途中に立ち寄った上総鶴舞駅で藤本壮介の「Tree / Toilet」と成田久の「試着駅」を見学し、最後に上総村上駅にてレオニート・チシコフによる宇宙服の作品を鑑賞しました。
すでに上総村上駅に着いた時は、日没を過ぎた17時頃になっていました。結局、この日は、五井機関区、上総牛久エリア、上総久保駅、市原湖畔美術館、旧平三小学校、月出工舎、旧白鳥保育所、上総鶴舞駅、上総村上駅とめぐり、主要会場6箇所、そして3つの駅プロジェクトの作品を鑑賞することができました。一方で月崎地区や養老渓谷などのエリアは時間の都合ではじめからルートに入れませんでした。日を改めて出かけるのがベストかもしれませんが、そもそもアートミックスを1日ですべて見るのは現実的でありません。
作品数と滞在時間はおおむね比例するため、旧平三小学校や月出工舎は比較的時間をかけて鑑賞しましたが、商店街の中に展示施設が点在する上総牛久エリアも意外と時間がかかりました。過去のアートミックスと同様、予めルートや滞在時間をプランニングしておく必要がありました。
【芸術祭の回り方】開幕15日目です。芸術祭は大きく9エリアからなり、ゆっくり見て回る方は1日3、4エリア程度が目安です。全作品を制覇するなら車で2日、電車とバスで3日程度かかります。また、モデルコースも掲載していますので、こちらもご参考ください。▼モデルコースhttps://t.co/kdhl24NxdM pic.twitter.com/fI3ezuOF0h
— 【公式】いちはらアート×ミックス (@ichiharaartmix) December 8, 2021
私が見た中で特に面白かったのは、中﨑透「Clothing Fills in the Sky」(上総牛久)、冨安由真「塔(エメラルド・シティに落ちる)」(旧平三小学校)、そして田中奈緒子の「彼方の家」(月出の森)でした。また市原湖畔美術館での戸谷成雄展も見応えがありました。
今回で3回目を迎えたいちはらアートミックスですが、コロナによる長期にわたる延期はもとより、2019年に同地域を襲った台風や豪雨災害など、かつてないほど開催に際して困難があったことは間違いありません。
市原市南部は美しい里山を有するとともに、会場でもあった廃校や空家、空きテナントが目立つなど、過疎や人口流出などの問題を抱えています。コロナの影響により運営やイベントに際して多くの制約があったと思いますが、次回に向けて地域へと根差すプロジェクトもさらに必要となるのかもしれません。
公式サイトにも案内されていますが、会場時間や周遊バスの時刻表などがガイドブックの内容と異なっています。最新の情報はTwitterもしくは公式サイトにてご確認ください。
「房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス2000+」は12月26日まで開催されています。
「房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス2000+」(@IchiharaArtMix) 小湊鉄道を軸とした周辺エリア
会期:2021年11月19日(金)~12月26日(日)
休館:月・火曜日。但し11/23(火・祝)を除く。
時間:10:00~16:00 *施設やイベントによって異なる。
鑑賞パスポート料金:一般3000円、大学・高校生1500円、小中学生500円。
*鑑賞パスポート=会期中、芸術祭の作品の全てを観覧可。1枚で1名のみ有効、1作品1回のみ(2回目以降、要個別料金。)。
*各会場における個別観覧券あり。
住所:千葉県市原市不入75-1(市原湖畔美術館)他
交通:JR線五井駅から小湊鉄道にて高滝駅下車。小湊鉄道上総牛久駅より周遊バス「上総牛久駅ルート」で市原湖畔美術館。
「いちはらアート×ミックス2000+」 小湊鉄道を軸とした周辺エリア(前編:五井機関区、上総牛久、市原湖畔美術館)
「いちはらアート×ミックス2000+」
2021/11/19~12/26
新型コロナウイルス感染症の影響により、約1年半あまり開催を延期していた「いちはらアート×ミックス2000+」が、会期を大幅に変更して11月19日からはじまりました。
会場は千葉県市原市の南部を中心としたエリアで、小湊鉄道各駅と市原湖畔美術館、および市南部に点在する旧学校の校舎にてさまざまな展示が行われていました。
いつもお世話になっているアート仲間の先輩方と五井駅で待ち合わせたのは、朝の9時過ぎのことで、まずは駅東口に位置するインフォメーションセンターへ向かいました。アソビューのサイトを通してパスポートをネット決済することも可能ですが、その場合もすべてインフォメーションセンターにて紙の券に引き替える必要があります。
紙のパスポートを手にしたのちは、インフォメーションセンター近くの会場である小湊鉄道五井機関区へと行き、駅構内と合わせていくつかの展示を見学しました。
ここではロシアの作家アレクサンドル・ポノマリョフが機関車にインスラレーションを展開したり、アルジェリア生まれのアデル・アブデスメッドが駅ホームにてピアノを用いた作品を公開していました。ピアノは自動によって演奏されていて、軽快なジャズのメロディを奏でていました。
この他にもターニャ・バダニナが「門」を展示するなど、機関区とホームを合わせて5~6点の作品を見ることができました。
今回は過去2回とは異なり、五井そのものも主要会場の1つとなっていて、普段、立ち入ることのできない機関区など、会場そのものも魅力であるように思えました。
そして駅を出た後はレンタカーを借り、市原市中南部に展開する各会場を巡ることにしました。アートミックス周遊に際しては鉄道と無料バスを組み合わせる方法もありますが、どうしても本数が少ないため、車移動の方が効率的に回れるのは否めません。
まず上総牛久エリアでは、駅近くの商店街の空き店舗を利用し、豊福亮や柳建太郎らが作品を展示していました。
豊福は「牛久名画座」において、ゴンブリッチ著の「美術の物語」に登場するカラヴァッジョやベラスケスといった絵画を自らのスタイルで写して描いていて、まさに名画座の名の通り、名画がシャンデリアのある室内をゴージャスに彩っていました。
柳建太郎は息を吹きかければ崩れてしまいそうなほど繊細なガラスのオブジェを展示していて、有機的に連なりつつ光を放った光景に目を奪われました。
上総牛久で最も印象に残ったのは、中﨑透の「Clothing Fills in the Sky」で、同地で営業する古い衣料品店の2階と3階を用いた大掛かりなインスタレーションでした。
ここでは店が何十年も前より営業を続けてきた歴史を、店主夫妻より聞き取ったエピソードとともに紐解いていて、陳列棚や什器、それにマネキンなどのさまざまなオブジェを再構成して展示していました。
またSection1から続く店にまつわるテキストも興味深く、あたかも店の辿った道のりを追体験しているかのようでした。インスタレーションそのものに加え、店や地域への丹念なリサーチも作品に深みをもたらしていたのではないでしょうか。
牛久地区より次に向かったのは上総久保駅で、現代美術家の西野達が「上総久保駅ホテル」を公開していました。
これは上総久保駅のホームに面した場所に、実際に宿泊可能な装備(トイレ、シャワーなど)をつけて部屋を築いたもので、ちょうどベットのすぐ前のガラスの外にホームが広がっていました。
今のところ宿泊自体は行われていないそうですが、それこそ日本で最もホームに近いホテルといえるのかもしれません。駅の周囲に広がる長閑な景色を見遣りながら、突如出現したホテルの一室にてしばし滞在しました。
この上総久保駅からもほど近いのが、高滝湖に面した市原湖畔美術館で、クワクボリョウタらが旧作を館内にて公開する一方、屋外では旧ソ連生まれのウラジミール・ナセトキンなどが新たな大型のオブジェなどを築いていました。
ちょうど11時を回っていたので併設のレストラン「PIZZERIA BOSSO」でピザを頂いたのちは、一通り屋外の作品を見学し、アートミックスに合わせて行われていた「戸谷成雄 森―湖:再生と記憶」を鑑賞しました。
アートミックスでは食に関するプロジェクトがあり、今回も旧里見小学校にて里山食堂が開設されていますが、おそらくはコロナの影響のために極めて限定的で、過去ほど展開はありませんでした。この日は平日だったのでレストランへ難なく入れましたが、食事に関しては前もって準備しておくのも選択肢となりそうです。
さて「戸谷成雄 森―湖:再生と記憶」では、一貫してチェーンソーで木を彫り込む作品で知られる戸谷が、「森」や「双影景」といった作品を公開していて、コンクリートの構造とアトリウムのあるスペースを取り込んで見事なインスタレーションを築いていました。
中でも高さ9メートルにも及ぶ「雷神 - 09」やレリーフ状の「水根II(スワ)」などが並ぶ地下の展示室は、あたかも木の精霊を祀った地の奥底へと迷い込んだような雰囲気が感じられて、畏怖の念すら呼び覚まされました。
木と襞の生み出す戸谷の彫刻に心を打たれながら美術館を後にすると、次はアートミックスでも最も多くの作品が集まる旧平三小学校へと移動しました。
「後編:旧平三小学校、月出工舎、旧白鳥保育所」へと続きます。
「房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス2000+」(@IchiharaArtMix) 小湊鉄道を軸とした周辺エリア
会期:2021年11月19日(金)~12月26日(日)
休館:月・火曜日。但し11/23(火・祝)を除く。
時間:10:00~16:00 *施設やイベントによって異なる。
鑑賞パスポート料金:一般3000円、大学・高校生1500円、小中学生500円。
*鑑賞パスポート=会期中、芸術祭の作品の全てを観覧可。1枚で1名のみ有効、1作品1回のみ(2回目以降、要個別料金。)。
*各会場における個別観覧券あり。
住所:千葉県市原市不入75-1(市原湖畔美術館)他
交通:JR線五井駅から小湊鉄道にて高滝駅下車。小湊鉄道上総牛久駅より周遊バス「上総牛久駅ルート」で市原湖畔美術館。
「藤森照信とモザイクタイルミュージアム」 多治見市モザイクタイルミュージアム
「開館5周年企画展 藤森照信とモザイクタイルミュージアム」
2021/11/20〜2022/1/10
2016年に岐阜県多治見市にオープンしたモザイクタイルミュージアムは、藤森照信のデザインによるユニークな建物でも知られ、全国各地から多くの人々の注目を集めてきました。
上:「ロゴマークサインのタイル」 (株)エクシィズ 2021年
その開館5周年を期して行われているのが「藤森照信とモザイクタイルミュージアム」で、模型や写真、またスケッチなどから藤森が建物をテザインしたプロセスを紹介していました。
藤森照信スケッチ(紙) 2012年 茅野市美術館
まず目を引くのが美術館の平面と建物を描いた紙のスケッチで、藤森が多治見市へ最初に提出した建築図案でした。当時、受け取った市役所の担当者は一般的な設計図との違いに驚いたとされていますが、確かに小山のような外観はスケッチからしても極めて独創的に思えました。
そして同じく藤森が構想を練ったスケッチの複製もあわせて多く展示されていて、藤森がどのような意図を込めて建物をイメージしたのを追うことができました。中にはカフェの紙ナプキンにメモを記したものもあって、それこそ場所を問わずにアイデアを膨らませていたのかもしれません。
外壁の構造(工程順) 樹脂 (株)吉川組 2021年
建物の構造を知る上で面白いのは、外壁の構造を下地から完成段階までの工程を再現した資料でした。下地の上に貼られたタイルのかけらから樹脂によって表面が整えられ、さらに土を塗っていて、独特の感触を見せる外壁がいかに作られたのかを辿ることができました。
モザイクタイルミュージアム屋根のタイル 國代耐火工業所 2015年
また地元の工場にて生産され、スロープを描く建物の側面に使用されている屋根タイルからは、土の質感を残したような温かみのある風合いが感じられました。
タイルのスダレ試作再現 (株)吉川組 2021年
同館の4階に築かれた「タイル・ガーデン」こと「タイルのすだれ」に関する資料も面白いかもしれません。ここではワイヤーにタイルを固定したすだれの試作や外形の模型が展示されていて、緩やかなカーブを描いて空へと広がるようなかたちをした「タイル・ガーデン」の構造が分かりました。
「タイル・ガーデン」 *モザイクタイルミュージアム4階
なお「タイル・ガーデン」の部分は屋根もなく、雨も差し込むために、耐久性や安全性についても確認がなされたそうです。タイルは基本的に水を弾くゆえになしえた作品といえるかもしれません。
外壁タイルの準備 展示風景
外壁のタイルについては地元の有志の方々が、素材を提供したり、タイルをハンマーで割る作業にも携わったそうです。それらの作業についてもタイルと写真にて紹介されていました。
下:「鯉タオル」 笠原・原田製陶所 1963年頃
昭和30年代に作られたという鯉のかたちをしたタイルも可愛らしいのではないでしょうか。また今回の企画展のために藤森が制作した建物の模型も、モザイクタイルミュージアムのミステリアスな外観を木から巧みに切り出していました。
モザイクタイルミュージアム模型
WEBメディア「イロハニアート」へ、モザイクミュージアム全体の見どころやアクセス情報などをまとめました。あわせてご覧いただければ嬉しいです。
メルヘンの世界からやって来た?ユニークな建物も楽しい「多治見市モザイクタイルミュージアム」の魅力(イロハニアート)
岐阜県の南東部に位置し、1300年もの美濃焼の歴史を受け継ぐ多治見市。いまも窯元にて職人が器を作り続ける「焼きものまち」として知られ、岐阜県現代陶芸美術館や多治見市美濃焼ミュージアムといった文化施設も点在しています。#多治見市 #モザイクタイルミュージアムhttps://t.co/nlFLPMl2u7
— イロハニアート (@irohani_art) December 10, 2021
「藤森照信とモザイクタイルミュージアム」展示風景
一部を除いて撮影も可能でした。なお土日祝日は事前の予約が必要です。
多治見市モザイクタイルミュージアム外観
2022年1月10日まで開催されています。
「開館5周年企画展 藤森照信とモザイクタイルミュージアム」 多治見市モザイクタイルミュージアム
会期:2021年11月20日(土)〜2022年1月10日(日)
休館:月曜日(休日の場合は翌平日)、年末年始(12月29日~1月3日)
時間:9:00〜17:00
*入場は閉館の30分前まで
料金:一般310円、団体(20名以上)250円。
*土日祝日は事前予約制。
住所:岐阜県多治見市笠原町2082-5
交通:JR線多治見駅南口から「多治見駅前」2番バスのりばより東鉄バス笠原線「東草口行き」または「羽根行き」に乗車、「モザイクタイルミュージアム」下車。(駅からの所要時間:約17分)
「ホー・ツーニェン 百鬼夜行」 豊田市美術館
「ホー・ツーニェン 百鬼夜行」
2021/10/23〜2022/1/23
豊田市美術館で開催中の「ホー・ツーニェン 百鬼夜行」を見てきました。
1976年にシンガポールに生まれたホー・ツーニェンは、同国を拠点に活動し、映像やインスタレーション、また演劇などのさまざまな領域で作品を発表してきました。
そのホーが日本の近代から現代へと至る妖怪に着目し、旧日本軍の軍人やスパイ、さらには1960年代の怪傑ハリマオのモデルにまつわる物語を描いたのが「百鬼夜行」と題した個展で、主にアニメーションを軸とした映像を公開していました。
まず冒頭の大きなスクリーンに投影されたのが「100の妖怪」なる映像で、まさに百鬼夜行ならぬ100の妖怪たちが闊歩する様子をアニメーションにて表現していました。
魑魅魍魎の妖怪たちは奇妙なほど生き生きと歩いていて、ろくろ首や目玉の飛び出た男など一般的に知られるような者から、虎の被り物をした人や僧侶、さらに軍服姿の兵隊といったさまざまな人物がいました。また歩く途中で妖怪へと化けたり巨大化するような者も少なくなく、顔のないのっぺらぼうもいて、1つとして同じ光景は見られませんでした。
このアニメーションとともに、叫び声とも呻き声とも言えるような切迫感のある音楽が轟いていて、それこそこの世ならざる彼岸へと引き込まれていくような錯覚に捉われました。そして妖怪を映したスクリーンの手前にもう1つの映像があり、そこでは侍やサラリーマンなどが寝転ぶ光景が映されていました。
ともかく妖怪の行進と強烈な音響に身も心ものみ込まれてしまいましたが、この段階では一体、どのような妖怪が歩いているかは明らかではありませんでした。また侍や軍人、それにサラリーマンらが登場し、高層ビルが背景に現れたりするように、時代も同一とは思えませんでした。
続く映像「36の妖怪」では、さながら「100の妖怪」の種明かしをすべく、先の妖怪たちが別の妖怪へと化ける様態をテキストとともにアニメーションで映していて、ここではじめて第二次世界大戦中に「マレーの虎」と呼ばれた山下奉文やスパイ活動を行った谷豊らが妖怪として描かれていることを知ることができました。
この妖怪の行進を起点に、旧日本軍の秘密工作機関である「F機関」などについて扱ったのが「1人もしくは2人のスパイ」とする映像で、ここではアニメーションと実写を交え、スパイたちが行った活動や諜報員としての日常が描かれていました。妖怪たちは何も通常、知られたろくろ首などだけではなく、戦中の日本で活動した軍人やスパイ、さらには思想家などが姿を変えて表されているわけでした。
妖怪を起点に、軍人やスパイを登場させつつ、第二次世界大戦を挟んだ日本の文化や精神史を浮かび上がらせていて、ラストには江戸時代の虎の図像を引用しながら、「マレーの虎」へと連なる虎の物語を展開させていました。また過去の戦争の事実についても描いていて、ユーモラスな妖怪に目を奪われていると、いつしか日本のリアルな過去に引き戻されるような印象も与えられました。
映像は4つの展示室に主に4点あり、全部合わせると1時間を超えるほどでした。また冒頭の「100の妖怪」からいわば謎解きするように映像が展開するため、基本的に順番に見る必要がありました。時間に余裕をもってお出かけください。
アニメーションの手法を用いつつ、妖怪を素材に歴史や文化に踏み込んで表現するホーは、まさに鬼才といえるのではないでしょうか。おおよそ想像もつかない、ぞくぞくするような展開に驚きを覚えながら映像に見入りました。
【今日から!】とよたまちなか芸術祭の特別展示として、豊田市の旧旅館・喜楽亭を会場に、ホー・ツーニェンがその場の歴史を読み込んで展開したあいちトリエンナーレ2019の話題作《旅館アポリア》を再現します。喜楽亭は美術館から徒歩で約15分です。時間にゆとりをもってお出かけください。 https://t.co/OnufdSttdC
— 豊田市美術館 (@toyotashibi) December 4, 2021
一部の映像の撮影が可能でした。1月23日まで開催されています。おすすめします。
「ホー・ツーニェン 百鬼夜行」 豊田市美術館(@toyotashibi)
会期:2021年10月23日(土)〜2022年1月23日(日)
休館:月曜日。但し1月10日は開館。年末年始(12月27日〜1月4日)
時間:10:00~17:30
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、高校・大学生800(600)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:愛知県豊田市小坂本町8-5-1
交通:名鉄線豊田市駅、愛知環状鉄道新豊田駅より徒歩15分。
青木繁の「海の幸」が生まれた房州館山の布良を訪ねて
青木が友人の坂本繁二郎や森田恒友、そして恋人だった福田たねらとともに滞在した布良の家は、現在「青木繁『海の幸』記念館 小谷家住宅」として一般に公開されています。
布良は館山市中心部より南に約10キロほど離れた場所にある漁港で、館山駅からは安房白浜行きの路線バスで約25分ほどかかりました。館山駅からバスに乗って山を抜けると、右正面に太平洋に面した海岸が開けていて、しばらくすると記念館に近い安房自然村バス停に着きました。
1899年に布良を襲った大火の後に建てられた小谷家住宅とは、漁業で栄えた一家の木造平屋建ての住宅で、2009年に館山市指定有形文化財に指定されました。かつて小谷家の住まいでもあった同宅は、後世に残すためにNPO法人とともに基金を集め、約2年の改修工事を経て、2016年に記念館としてオープンしました。
バス停から少し海岸方向へ降りた先に建つ小谷家住宅の前には、ブロンズの刻画「海の幸」も展示されていて、ここが青木とゆかりのある地であることを見ることができました。
私が出向いた際はあたりに人がいなく、玄関も閉ざされていましたが、家の方へ近づくとすぐにガイドの方がやってきて下さいました。同住宅は現在、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点より、個人客に限定した上、土日のみ見学を受け付けています。
中へ入ると座敷があり、右手に青木らが滞在した2間続きの客室が広がっていて、床の間には「大漁」と書かれた掛け軸がかかっていました。また「海の幸」の複製画も展示されていました。そして青木を出迎えた小谷家当主・小谷喜録の子孫にあたる方が、小谷家の来歴や青木の滞在時のエピソードなど丁寧にを説明して下さいました。
小谷家は江戸期より昭和初期まで布良で続いた漁家で、小谷喜録は布良を含む当時の富崎村の議員をはじめ、帝国水難救済会布良救難所看守長をつとめるなど地元の名士として活動していました。
また小谷家が所蔵する「日本重要水産動植物の図」とは、1890年に水産実習のお礼として水産伝習所より贈られたもので、当地に滞在した青木も見ていたとされています。
この地に青木がやってきたのは、東京美術学校を卒業した1904年のことで、いわゆる制作旅行として布良海岸が選ばれました。これは青木や坂本と同じ久留米出身で、交流していた詩人高島宇朗に布良の良さを伝えられていたからと言われていて、約40日間滞在して「海の幸」を制作しました。また青木自身も布良を気に入った様子などを旧友に絵手紙として送りました。
小谷家に滞在した3年後に描かれた大作「わだつみのいろこの宮」も、布良の海に潜ったことから着想を得た作品として知られていて、青木は布良の海そのものも何点か絵画に描きました。
福田たねの「館山の茶屋」(複製画)は、70歳を超えた福田が、かつて青木らと布良に来たことを思い出して描いた作品で、海岸で4人揃ってかき氷を食べる光景が表されていました。
青木とたねの間には子どもが生まれたものの入籍せず、6年後に青木は結核により亡くなりますが、たねは83歳まで生きて野尻長十郎との間に7人の子をもうけました。また1962年には青木との子で、「海の幸」に因んで名付けられた幸彦こと音楽家の福田蘭童や坂本繁二郎とともに布良を訪ねて、「海の幸」の記念碑の除幕式に参加しました。
その記念碑が記念館のすぐ近くの布良海岸に建っていて、正面に伊豆大島、そして眼下に青木も描いた波に削られた岩場と砂浜が入り組む海岸を見ることができました。
青木繁「海の幸」 1904年 *アーティゾン美術館の展示より
10名の裸体の男がサメを担いで砂浜を歩く「海の幸」は、神話世界をのぞき込むような独特の雰囲気が漂っているとともに、人間の根源的な生命感がみなぎっているような印象を与えられます。またたねをモデルとしたとも言われ、こちらを向く1人の人物の目線も心を捉えられてなりません。
「海の幸」の制作にはラファエル前派の影響とともに、布良に伝わる御輿を担ぐ祭礼の光景に着想を得たという指摘もなされています。そして布良には昔からいくつかの神話も伝えられてきました。
青木繁「海の幸」記念館小谷家住宅(館山市指定文化財)お待たせしました!10/16〜 見学を再開します。土日のみ開館当面は個人客のみとし、団体はご遠慮願います。利用案内はこちらをご参照下さい。https://t.co/XDoauAK7d8 pic.twitter.com/WtnPqwrF9C
— 青木繁「海の幸」記念館 (@aokisigeru_mera) October 15, 2021
この日はあまり時間がなく、残念ながら海岸線まで降りられませんでしたが、日本美術史上でも傑作と称される「海の幸」を生んだ布良を訪ね歩くのも楽しいのではないでしょうか。
「青木繁『海の幸』記念館 小谷家住宅」(@aokisigeru_mera)
開館:土曜・日曜日。(お盆時期、年末年始を除く)
時間:10:00~16:00(4月〜9月)、10:00〜15:00(10月〜3月)
料金:一般200円、小中高生100円。
住所:千葉県館山市布良1256
交通:JR線館山駅よりJRバス関東「安房白浜」行き(約25分)、「安房自然村」下車徒歩3分。
山種美術館にて「奥村土牛 ―山﨑種二が愛した日本画の巨匠 第2弾―」が開催されています
その「奥村土牛 ―山﨑種二が愛した日本画の巨匠 第2弾―」について、WEBメディアのイロハニアートに寄稿しました。
「生きた絵を描きたい」 4つの時代を生き、ひたすら実直に絵を描き続けた日本画家、奥村土牛の魅力:イロハニアート
1889年に生まれた奥村土牛は、38歳の遅咲きにて院展に初入選すると、戦前から戦後にかけて一貫して身近な生き物や風景を瑞々しい色彩を伴って描きました。
奥村土牛「兎」 昭和11年 *会期中の撮影が可能です。
その画風は初期から晩年にいたるまで大きく変化することなく、2つの戦争を経験したことを感じさせないほどおおらかでかつ情感に満ちた魅力をたたえています。
土牛は山種美術館の創設者である山﨑種二と深く交流し、種二も土牛に協力を惜しまなかったことから、全国屈指といえる土牛の充実したコレクションが築かれました。
同館にて土牛が公開される機会は少なくありませんが、今回は「醍醐」や「鳴門」といった代表作を含む69点の全出品作が土牛で占められています。私も三番町時代の山種美術館にて土牛の絵画に初めて出会い、とても好きになりましたが、改めて画家の真摯な制作に胸を打たれるものがありました。
さていわゆるコロナ禍においてさまざまな取り組みを行なってきた山種美術館ですが、いまもオンラインでのコンテンツを発信しています。
【オンライン講演会】山下裕二氏が語る 「私が好きな山種コレクション」
第1回「江戸絵画と浮世絵」2021年8月14日(土)14:00~15:30 アーカイブ販売中
第2回「東京画壇の日本画」2021年12月11日(土)14:00~15:30 ライブ販売中
第3回「京都画壇の日本画」2022年2月13日(日)14:00~15:30 ライブ販売中
まずは同館の顧問の山下裕二先生のオンライン講演会です。第2回目に当たる「東京画壇の日本画」のライブ放送が、2021年12月11日(土)に開かれます。(第1回もオンライン発売中)
オンライン展覧会【開館55周年記念特別展】奥村土牛 ―山﨑種二が愛した日本画の巨匠 第2弾―
また展示作品の図版とパネルやキャプションに加え、奥村土牛のことばを収録したオンライン展覧会も同時に開催中です。
【オンライン販売】2022年オリジナルカレンダーほか新商品のご案内
図録やグッズを購入できるオンラインショップでは、新たに「山種コレクション名品選」2022年カレンダーとステーショナリーグッズ8点セット(限定50セット)の販売がはじまりました。四季にまつわるコレクションを掲載したカレンダーに関しては毎年定評がありますが、オンラインショップ上で各月の絵柄を確認することも可能です。
\❄冬季限定! #Beantobar チョコレート❄/#山種美術館 オリジナルパッケージの #CRAFTCHOCOLATEWORKS のチョコレート🍫。 カカオ豆の香り豊かな板チョコは絶品です♪パッケージは #速水御舟《翠苔緑芝》の黒猫と兎の2種類。ぜひお手に取ってくださいね。 #ミュージアムグッズ pic.twitter.com/7OwTazRJtx
— 山種美術館 奥村土牛展開催中 (@yamatanemuseum) December 5, 2021
山種美術館は現在、感染症予防対策を強化した上で、10時〜17時(月曜休)に開館しています。奥村土牛展の会期も1ヶ月近くを経過しましたが、今のところ大きな混雑は発生していません。「土牛の美術館」ならではの優品をゆったりと楽しめる良い機会となりそうです。
「奥村土牛 ―山﨑種二が愛した日本画の巨匠 第2弾―」は2022年1月23日まで開催されています。
「奥村土牛 ―山﨑種二が愛した日本画の巨匠 第2弾―」 山種美術館(@yamatanemuseum)
会期:2021年11月13日(土)~2022年1月23日(日)
休館:月曜日。ただし12/27(月)、1/3(月)、1/10(月・祝)は開館。1/11(火)は休館。12/29~1/2は年末年始休館。
時間:10:00~17:00
*入館は16時半まで。
料金:一般1300円、大・高生1000円、中学生以下無料。
*きもの割引:きもので来館すると一般200円引、大学生・高校生は100円引。
*オンラインチケットあり。
住所:渋谷区広尾3-12-36
交通:JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅2番出口より徒歩約10分。恵比寿駅前より都バス学06番「日赤医療センター前」行きに乗車、「広尾高校前」下車。渋谷駅東口より都バス学03番「日赤医療センター前」行きに乗車、「東4丁目」下車、徒歩2分。
「ふくしま 藁の文化」 福島県立博物館
「ふくしま 藁の文化~わらって、すげぇんだがら~」
2021/10/9~12/19
福島県立博物館で開催中の「ふくしま 藁の文化~わらって、すげぇんだがら~」を見てきました。
イネ科の植物を乾燥させた藁は、燃料や建築資材、それに飼料などに利用されるだけでなく、しめ飾りといった神聖なものとしても尊ばれ、人々の暮らしと深く関わってきました。
その藁にまつわるコレクションを紹介するのが「ふくしま 藁の文化」で、衣食住にまつわる藁の道具からしめ飾り、はたまた藁で作られた人形などが一堂に公開されていました。
まず冒頭で紹介されているのが「わらわら、神さま大集合!」題した東日本のわら人形で、福島の会津やいわきをはじめ、秋田や岩手、さらには茨城から千葉へといたるさまざまな人形が並んでいました。それらは大きく手を広げては、どこかコミカルな表情をしていて、神さまであるにもかかわらず人懐っこく見えました。
田村市屋形のお人形様 田村市船引町屋形
福島県田村市屋形のお人形さまとは、同地の村を守るべく作られた人形で、毎年4月に面を塗ったり髭をつけるといった衣替えが行われてきました。そして屋形ではいまも技術の継承に努めるべく、わら細工の講習会が行われているそうです。
「辻切り(道切り)」のダイジャ 千葉県市川市堀之内
市川市堀之内の「辻切り」のダイジャとは、利根川流域の埼玉から千葉、あるいは茨城県に伝わるオビシャと呼ばれる神事に合わせて作られる大蛇で、耳には琵琶の葉を入れ、目には線香の灰が紙に包まれていました。オビシャとは一年のうちの豊作を占う神事で、地域により内容を変えていまに伝えられてきました。
「けんだい」 会津若松市北会津町下荒井虚空蔵堂
しめ飾りやしめ縄で目立っていたのは、会津若松市北会津町の虚空蔵堂へ年末に奉納される「けんだい」と呼ばれるしめ飾りで、大きな渦巻状の藁がそれこそ大蛇のようにトグロを巻いていました。元々は正月のみ飾られていたものの、現在は次の年末まで1年間飾られているとのことでした。
「大わらじ(信夫三山暁まいり)」4分の1模型 福島市御山
福島市信夫山の羽黒神社の境内に奉納された大わらじも目立っていたのではないでしょうか。実に長さ12メートル、重さ2トンにも及ぶ日本最大のわらじで、市内の農家から調達される2000束もの藁で作られました。展示品は4分の1サイズの模型で、実際に奉納された光景も写真パネルで紹介されていましたが、もはや塔のように巨大でした。
左下:「花嫁づっと」 会津坂下町坂本平井
この他にも藁に関する道具としては、かつて結婚式の後に祝儀の料理を入れて土産にしていた「花嫁づっと」や、割れやすい皿を保管していたという「皿いじこ」なども興味深いのではないでしょうか。
「猫の巣」 南会津町
南会津町の古民家に残され、家人が飼い猫のために作ったという「猫の巣」もかわいらしく思えました。
現代の生活において昔に比べると藁を使うシーンは減っていますが、それでも藁と作り手が生みだした文化の重みを感させるものがありました。藁を通して人々の暮らし、あるいは祈りのあり方を見るような展覧会といえるかもしれません。
なお同館が誇る「東日本のわら人形コレクション」が新収蔵資料を交えて一度に公開されたのは、1988年の企画展「境の神・風の神」以来、実に30年以上ぶりのことになります。
常設展においても藁を用いた資料がいくつも展示されていました。こちらもあわせて見ておきたいところです。
今朝の河北新報様に取り上げていただきました!わら人形大集合、4mの「ショウキサマ」も 福島県立博物館で企画展 | 河北新報オンラインニュース https://t.co/R7JLByDf77
— 福島県立博物館【公式】 (@fukushimamuseum) November 6, 2021
撮影が可能でした。12月19日まで開催されています。
「ふくしま 藁の文化~わらって、すげぇんだがら~」 福島県立博物館(@fukushimamuseum)
会期:2021年10月9日(土)~12月19日(日)
休館:月曜日。
時間:9:30~17:00
*入場は閉館30分前まで。
料金:一般・大学生800(640)円、高校生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:福島県会津若松市城東町1-25
交通:JR線会津若松駅よりまちなか周遊バス「ハイカラさん」にて約20分。三の丸口下車すぐ。
「第15回shiseido art egg 中島伽耶子展 ハリネズミたち」 資生堂ギャラリー
「第15回shiseido art egg 中島伽耶子展 ハリネズミたち」
2021/11/23~12/19
資生堂ギャラリーで開催中の「第15回shiseido art egg 中島伽耶子展 ハリネズミたち」を見てきました。
アーティストの中島伽耶子は、壁や境界線をモチーフとした作品を手掛け、国内外の展示や芸術祭などで発表してきました。
その中島が資生堂ギャラリーの空間に築いたのも、文字通り「壁」そのもので、ちょうど大小の2つの展示室を遮るようにして立っていました。
まず1階より階段を降りると、踊り場から左下のスペースに見えるのが白い壁で、壁には透明アクリルのような板が何枚も突き出ていて、中央部分には扉がありました。
白い壁はほぼ天井付近にまで達しているためか、向こう側のスペースを望むことは叶わず、踊り場からは壁と扉のみを見ることしかできませんでした。そしてちょうどベルのスイッチが置かれていて、押すと壁の手前に置かれたベルから非常を知らせるような強い金属音が発せられました。また時折、ドアの上の明かりが灯る様子を見ることができました。
踊り場から階段を降りると先の白く明るいスペースから一転、薄暗がりの空間が広がっていて、展示室を斜めに横切るようにう大きな壁が立っていました。いうまでもなく、先ほど踊り場から見た壁の反対側で、壁の表面には植物の模様がプリントされていました。そして扉にはノブが付けられていたものの、いわば「作品」として触れることは許されていませんでした。よって扉をあけて行き来することはできません。
この壁にはたくさんの透明アクリル板が付いていましたが、それらは壁の両面に別々に設置されているわけではなく、貫通、つまり突き刺さっていました。よって板の部分から向こう側の照明が透過して、床に散った同じ透明の板の破片へと光が反射していました。
板が刃物のように鋭く貫通した壁と静けさを打ち破るなベルの激しい音は、どこか痛みを連想させる面があり、越えられない壁の存在も相まってか疎外感や閉塞感を覚えてなりませんでした。結果的に壁を突き抜けられるのは、板そのものと、板を透過した光、そして乾いたベルの音だけでした。
私も資生堂ギャラリーのすべての展覧会を追えているわけではありませんが、大展示室と小展示室を完全に区切った会場プランははじめて見たかもしれません。また影に刺さる板ががハリネズミの針に似ていることと、ドイツの哲学者であるショーペンハウアーの寓話「ハリネズミのジレンマ」から引用された「ハリネズミ」というタイトルも興味深く思えました。
*ヤマアラシ(ハリネズミ)が暖め合おうと互いに寄り添うと、針のような毛で相手を傷付けてしまうため、近づいたり離れたりすることを繰り返すジレンマ。他者との適切な距離を探る心理的な葛藤を表す言葉として使われる。(解説より)
「第15回 shiseido art egg」展示スケジュール
石原海展:9月14日(火) ~10月10日(日)
菅実花展:10月19日(火) ~11月14日(日)
中島伽耶子展:11月23日(火・祝) ~12月19日(日)
「第15回 shiseido art egg中島 伽耶子」展のショート動画(約1分)を公開しました!https://t.co/5ZzGoVBBdL中島 伽耶子展「Hedgehogs ハリネズミたち」は12月19日(日)まで。 pic.twitter.com/eiOFgF1h14
— 資生堂ギャラリー (@ShiseidoGallery) December 1, 2021
今年度のアートエッグは中島展をもって終了します。今後、専門家諸氏の選定を得て、12月下旬頃に「shiseido art egg賞」の受賞者が公式サイトにて発表されます。
12月19日まで開催されています。
「第15回shiseido art egg 中島伽耶子展 ハリネズミたち」 資生堂ギャラリー(@ShiseidoGallery)
会期:2021年11月23日(火・祝)~12月19日(日)
休廊:月曜日。*祝日が月曜にあたる場合も休館
料金:無料。
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
2021年12月に見たい展覧会【深堀隆介/池内晶子/ミヤケマイ×華雪】
今年も残すところあと1ヶ月を切り、来年の展覧会のスケジュールを特集した雑誌も目につくようになってきました。また専門家諸氏による1年の展覧会の振り返る企画も、年末に向けて新聞紙面に掲載されるかもしれません。
12月も興味深い展覧会が少なくありません。まずは気になる展覧会をリストアップしてみました。
【展覧会】
・「ブダペスト国立工芸美術館名品展 ジャポニスムからアール・ヌーヴォーへ」 パナソニック汐留美術館(10/9~12/19)
・「鈴木其一・夏秋渓流図屏風」 根津美術館(11/3~12/19)
・「上野アーティストプロジェクト2021 Everyday Life : わたしは生まれなおしている」 東京都美術館(11/17~2022/1/6)
・「開館60周年記念展/千四百年御聖忌記念特別展 聖徳太子 日出づる処の天子」 サントリー美術館(11/17~2022/1/10)
・「つくる・つながる・ポール・コックス展」 板橋区立美術館(11/20~2022/1/10)
・「大英博物館ミイラ展 古代エジプト6つの物語」 国立科学博物館(10/14~2022/1/12)
・「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」 森美術館(4/22~2022/1/16)
・「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 ― モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン」 三菱一号館美術館(10/15~2022/1/16)
・「戸谷成雄 森―湖:再生と記憶」 市原湖畔美術館(10/16~2022/1/16)
・「戦後デザイン運動の原点 デザインコミッティーの人々とその軌跡」 川崎市岡本太郎美術館(10/23~2022/1/16)
・「アイヌプリ―北方に息づく先住民族の文化―」 國學院大學博物館(11/18~2022/1/22)
・「開館20周年記念 フランソワ・ポンポン展」 群馬県立館林美術館(11/23~2022/1/26)
・「ミヤケマイ×華雪 ことばのかたち かたちのことば」 神奈川県民ホールギャラリー(12/20~2022/1/29)
・「佐藤雅晴 尾行―存在の不在/不在の存在」 水戸芸術館(11/13~2022/1/30)
・「矢萩喜從郎 新しく世界に関与する方法」 神奈川県立近代美術館 葉山(11/27~2022/1/30)
・「ザ・フィンランドデザイン展 自然が宿るライフスタイル」Bunkamuraザ・ミュージアム(12/7~2022/1/30)
・「深堀隆介展 金魚鉢、地球鉢。」 上野の森美術館(12/2~2022/1/31)
・「大林コレクション展 安藤忠雄 描く/都市と私のあいだ/Self-History」 WHAT(9/25~2022/2/13)
・「Viva Video! 久保田成子展/クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]/ユージーン・スタジオ 新しい海」 東京都現代美術館(11/20~2022/2/23)
・「生誕160年記念 グランマ・モーゼス展 素敵な100年人生」 世田谷美術館(11/20~2022/2/27)
・「池内晶子 あるいは、地のちからをあつめて」 府中市美術館(12/18~2022/2/27)
・「北斎で日本史 ―あの人をどう描いたか」 すみだ北斎美術館(12/21~2022/2/27)
・「ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?」 ポーラ美術館(9/18~2022/3/30)
・「21_21 DESIGN Future SIGHT」 21_21 DESIGN SIGHT(12/21~2022/5/8)
【ギャラリー】
・「名和晃平 TORNSCAPE」 SCAI THE BATHHOUSE(11/2~12/18)
・「大竹伸朗 : 残景」 Take Ninagawa(10/30~12/18)
・「第15回 shiseido art egg 中島伽耶子展」 資生堂ギャラリー(11/23~12/19)
・「塩田千春 Cold Fever - 冷めた熱」 KENJI TAKI GALLERY / Roppongi(11/13〜12/25)
・「篠原有司男 吾輩のパンチがオーロラに炸裂!」 ANOMALY(12/4~2022/1/15)
・「岡本瑛里展 素兎を南に追って」 ミヅマアートギャラリー(12/1~2022/1/15)
・「144人のクリエイターと豊橋の職人がつくる 百年前掛け」クリエイションギャラリーG8、ガーディアン・ガーデン(12/9~2022/1/22)
・「植田正治を変奏する」 東京工芸大学写大ギャラリー(11/29~2022/1/29)
・「Landscape やわらかな地平のその先に」 ポーラ ミュージアム アネックス(12/10~2022/1/30)
・「ドヴァランス_デザインのコモンセンス」 GYRE GALLERY(12/10~2022/2/13)
・「石川直樹―STREETS ARE MINE」 ギャラリー エー クワッド(12/10~2022/2/17)
・「クリスチャン・マークレー Voices[声]」 ギャラリー小柳(11/24~2022/2/26)
・「妹島和世+西沢立衛/SANAA展 環境と建築」 TOTOギャラリー・間(10/22~2022/3/20)
・「ソール・スタインバーグ シニカルな現実世界の変換の試み」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(12/10~3/12)
今月はいずれも現代美術に注目したいと思います。まずは金魚を描く画家の個展です。上野の森美術館にて「深堀隆介展 金魚鉢、地球鉢。」が開催されます。
「深堀隆介展 金魚鉢、地球鉢。」@上野の森美術館(12/2~2022/1/31)
1973年に愛知県に生まれた深堀は、器の中に樹脂を流し込み、絵具で金魚を立体的にでかつリアルに描く作品で知られ、これまでにも国内外にて広く注目を集めてきました。その深堀の意外にも東京の美術館としては初めての個展が「深堀隆介展 金魚鉢、地球鉢。」で、約300点もの金魚をモチーフとした作品が展示されます。
開幕に先立ち、深堀さんにライブペインティングを披露していただきました。照英さん、ヒコロヒーさんも言葉をなくすぐらい鮮やかな描きっぷりで、1時間弱で仕上げたとは思えない美しい作品が完成!この作品を含め、会場内で3カ所、写真撮影OKのエリアがございます!#深堀隆介展 #金魚鉢地球鉢 pic.twitter.com/lkHGt28hTk
— 深堀隆介展『金魚鉢、地球鉢。』(東京) (@kingyobachitko) December 2, 2021
近年ではライブペインティングやインスタレーションにも力を入れている深堀だけに、また新たな制作の方向性を示すような展示となるかもしれません。
続いては絹糸を用いた作品で知られる池内晶子の展覧会です。府中市美術館にて「池内晶子 あるいは、地のちからをあつめて」が開かれます。
「池内晶子 あるいは、地のちからをあつめて」@府中市美術館(12/18~2022/2/27)
「動物の絵」展は無事終了し、次回の企画展「池内晶子 あるいは、地のちからをあつめて」の準備が始まります。池内さんはこれからおよそ2週間かけて、展示室で作品をつくっていきます。図は初期の青い糸をつかった作品(部分)。出品作品です。 #池内晶子 #地のちからをあつめて pic.twitter.com/EpeP3WMfk8
— 府中市美術館 (@FuchuArtMuseum) December 1, 2021
1967年に生まれた池内晶子は、1980年代の終盤から糸を作品に取り込むようになり、絹糸をつないだかたちを空気を含んだ彫刻や絵画のように展開するインスタレーションなどを制作してきました。今回の美術館での初個展となる「池内晶子 あるいは、地のちからをあつめて」では、展示室を大胆に用いて、ほぼ現場での制作による新作が公開されます。30年以上も糸とともに作品を作る池内の現段階での集大成とも呼べる展示となりそうです。
ラストは気鋭のアーティストのコラボレーション展です。神奈川県民ホールギャラリーにて「ミヤケマイ×華雪 ことばのかたち かたちのことば」が行われます。
「ミヤケマイ×華雪 ことばのかたち かたちのことば」@神奈川県民ホールギャラリー(12/20~2022/1/29)
ミヤケマイ×華雪【ことばのかたち かたちのことば】開催期間12/20~1/29https://t.co/bKsTlDzuP3まもなく、開催されます📜ホームページもアップされていますのでご覧ください🔮
— 神奈川県民ホールギャラリー (@kanaken_gallery) November 10, 2021
日本の伝統的な美意識や工芸的手法を現代へとつなぎ、書画などの作品を制作してきたミヤケマイは、展覧会だけでなく企業とのコラボや本の装丁などで幅広く活動してきました。そのミヤケマイとともに展示に取り組むのが書家の華雪で、港に面した県民ホールギャラリーの立地に鑑みて、舟や水を用いた大規模なインスタレーションなどが公開されます。これまでクロスすることのなかった2人の邂逅とともに、特徴的なスペースを有するギャラリーの空間をいかに用いるかにも注目を集めそうです。
なお12月のおすすめ展覧会をイロハニアートへも寄稿しました。そちらもお出かけの参考にしていただければ幸いです。
12月にスタートする展覧会は多くありませんが、それでも見ておきたいものは少なくありません。タイガー立石から佐藤雅晴など、12月に見たいおすすめ展覧会5選をご紹介します!#タイガー立石 #國學院大學博物館 #佐藤雅晴 #深堀隆介https://t.co/hmwnvYvg6x
— イロハニアート (@irohani_art) December 2, 2021
タイガー立石から佐藤雅晴、それに「金魚」を描く深堀隆介まで。12月に見たいおすすめ展覧会5選:イロハニアート
それでは今月もどうぞよろしくお願いいたします。