都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「没後400年 特別展 長谷川等伯」 記者発表会
来春早々、上野の地に史上空前(東博副館長談)の長谷川等伯展がやってきます。先日、東京国立博物館で行われた「特別展 長谷川等伯」の記者発表会に参加してきました。
国立博物館クラスでの桃山・江戸期の絵師の回顧展というと、かつての若冲、永徳など、近年は京博のみで行われてきましたが、今回の長谷川等伯に関しては、有り難いことにも東博と京博の二会場で開催されます。まずは展示のスケジュールをあげてみました。
「特別展 長谷川等伯」
東京展(東京国立博物館・上野) :2010年2月23日(火)~3月22日(月・休)
京都展(京都国立博物館・東山七条):2010年4月10日(土)~5月9日(日)
東京展が先行します。それにしても会期がそれぞれ25日と27日間しかありません。非常にタイトなスケジュールです。
続いて本展の見どころです。
・没後400年を記念した、かつてない規模での長谷川等伯の回顧展。
・国宝3点、重文30点を含む、計80点にも及ぶ等伯の名品を一堂に展観。
・「信春」と名乗った七尾時代の画業初期から、上洛後、画壇に地位を占める晩年まで、その生涯を絵画とともに辿る。
・仏画、障壁画、水墨画などのあらゆるジャンルの等伯画を結集。
・国宝3点、「松林図屏風」(東博)、「楓図壁貼付」、「松に秋草図屏風」(智積院)については全期間展示。(その他の作品については一部、展示替えあり。)
・縦10m、横6mに及ぶ大絵画「仏涅槃図」(本法寺)を公開。
・国宝「松林図」と関係が伺われるもう一つの松林図、「月夜松林図」を東京で初めて展示。
・本展開催における研究で等伯の真筆であることが確認された「花鳥図屏風」を公開。(後ろに写真あり。)
発表会では展示の内容について東博、京博の学芸員の方から説明がありました。以下、そのポイントを三つに絞り、出品作とあわせてご紹介したいと思います。
【その1・仏画】
能登の畠山家家臣の奥村家の子として生まれた等伯は、「信春」と名乗り、縁のあった日蓮宗寺院に関する仏画を制作した。上洛後も日蓮宗僧侶、日通との親交を続け、熱心な法華信徒として活動する。本展では「信春」時代の作品(15点)など、あまり知られない等伯の仏画を紹介する。
・長谷川等伯 重要文化財「三十番神図」(1566年・大法寺)
法華経の守護神である三十番神が精緻に描かれている。信春時代の仏画としてもとりわけ色彩鮮やかな作品。各神像の背景には手長猿も見ることが出来、後の水墨画との関連も指摘出来る。
・長谷川等伯 重要文化財「日堯上人像」(1572年・本法寺)
本法寺の第8世、日堯上人が説法を行う姿が描かれている。ちなみに本法寺とは等伯の生家の菩提寺の本寺。等伯はこの寺の伝手にて上洛することが出来た。
・長谷川等伯 重要文化財「仏涅槃図」(1599年・本法寺)
等伯が61歳の時に描いた縦10mにも及ぶ巨大な仏画である。京都三大涅槃図の一。完成時は宮中で披露された。絵の中には等伯一族の名も記され、その厚い信仰心を伺うことが出来る。本展のハイライトでもある。
・長谷川等伯 重要文化財「日通上人像」(1608年・本法寺)
本法寺ぼ日通上人の死に際し、等伯が70歳の時に描いた肖像画。日通は等伯と、住職、信徒という関係でなく、一友人としての深い交流があった。またこの交流から、等伯にまつわるエピソードなどを記した「等伯画説」が誕生している。そこには等伯の会話や絵画観などが書き残されており、日本最古の画論書でもある。
【その2・水墨画】
国宝「松林図屏風」をはじめとした水墨画群を紹介する。
・長谷川等伯 重要文化財「枯木猿猴図」(龍泉庵)*東京展:前期2/23-3/7、京都展:後期4/27-5/9
元は屏風絵。4面あったとされる1部より抜き出している。等伯は水墨の技法を、中国の画家、牧谿の作に倣っていたが、中でもとりわけ優れているのが本作である。母子猿や父猿の長閑な様子、そしてそこから感じられる家族愛、さらには柔らかく温和な雰囲気などは、牧谿を通り越した等伯独自のものであると言って良い。
・長谷川等伯 国宝「松林図屏風」(東京国立博物館)
しっとりした大気の中に佇む松林の姿が描かれている。かつて日本で最も好きな日本画は何かと聞くアンケートがあったが、その中でも一位にランクインしたことがあるくらい有名な作品。遠くに雪山を望み、その前で展開される冷やかな空気と柔らかな光の動きが、まさに日本人の知る心の原風景に近い光景を生み出した。とは言え、全景の緩やかな気配とは一転し、近づて見ると紙がふやけるほどの荒々しいタッチにて墨線がひかれていることが分かる。ここに自然の深遠さを会得しつつ、波乱に満ちた等伯の生涯を重ね合わせることが出来るのではないだろうか。
・長谷川派「月夜松林図」(個人蔵)
国宝「松林図」は長らく他に関連する作品を見出すことができなかったが、現在では本作がそれに先行するものとして知られている。つまりは等伯の「松林図」を考える上で極めて重要な作品。久々に展覧会に出品される。(東京では初公開。)
【その3・金碧障壁画】
新発見の「花鳥図屏風」をはじめとして、国宝「楓図壁貼付」など、桃山文化を代表する金碧障壁画を総覧する。
・長谷川等伯 国宝「楓図壁貼付」/国宝「松に秋草図屏風」(1593年頃・智積院)
いわゆる桃山期の大画様式は狩野永徳が大成したものだが、それを参考にしながらも、等伯独自の画風を確立させた障壁画として名高い作品。秀吉の長男、鶴松の菩提を弔うために建立された祥雲寺(現智積院)に描かれた。力強い巨木こそ永徳を彷彿させるが、細かな葉や花などの描写は、装飾性と艶やかさを兼ね備えた等伯ならではのスタイルと言って良い。
・長谷川等伯 「花鳥図屏風」(個人蔵)*作品写真は下に掲載*
等伯は40代の頃、まだ信春を名乗っていた時期の作品である。今回の展観にあわせて彼の作だと断定された。等伯の金碧障壁画は「楓図」以前、殆ど描かれたことがなかったのではないかという考えもあったが、本作の発見によってそれは覆された。松の天秤型に開く樹木表現、もしくは細かな葉の描写などに、楓図と関連づけられる部分が見られる。
その他にも川村記念美術館の重要文化財「烏鷺図屏風」なども出品されるそうです。壮観なラインナップではないでしょうか。
続いて本展でも紹介される新出の「花鳥図屏風」の公開が行われました。なお撮影が可能だったので、ここに私の撮った写真をいくつか掲載してみます。
大きく迫り下がる金の雲霞の他、楓図同様、左右に広がる枝振りと装飾的な花々、そしてその背景に見られる応挙風の荒々しい滝などが印象に残りました。
なおかつての等伯展というと、石川県立美術館や京都市美術館などで30~40点規模のものはあったそうですが、質量ともにこれほどの内容が揃ったことはなかったそうです。「空前」という言葉もあながち誇張ではないことをお分かりいただけるのではないでしょうか。
少し先の話ではありますが、いまから来春の上野の日本美術は長谷川等伯で決まりとなりそうです。心待ちにしたいと思います。
*展覧会基本情報(東京展)*
名称:「特別展 長谷川等伯」
会場:東京国立博物館(台東区上野公園13-9)
会期:2010年2月23日(火)~3月22日(月・休)
休館:月曜日。但し最終日の月曜(休日)は開館。
時間:午前9:30~午後5:00。金曜は午後8時まで。
料金:一般1400円、大高生900円、中小生500円。(前売はそれぞれ200円引)なおペア券2000円を12月23日まで発売。
*作品の写真、また図版の掲載は許可を得ています。
国立博物館クラスでの桃山・江戸期の絵師の回顧展というと、かつての若冲、永徳など、近年は京博のみで行われてきましたが、今回の長谷川等伯に関しては、有り難いことにも東博と京博の二会場で開催されます。まずは展示のスケジュールをあげてみました。
「特別展 長谷川等伯」
東京展(東京国立博物館・上野) :2010年2月23日(火)~3月22日(月・休)
京都展(京都国立博物館・東山七条):2010年4月10日(土)~5月9日(日)
東京展が先行します。それにしても会期がそれぞれ25日と27日間しかありません。非常にタイトなスケジュールです。
続いて本展の見どころです。
・没後400年を記念した、かつてない規模での長谷川等伯の回顧展。
・国宝3点、重文30点を含む、計80点にも及ぶ等伯の名品を一堂に展観。
・「信春」と名乗った七尾時代の画業初期から、上洛後、画壇に地位を占める晩年まで、その生涯を絵画とともに辿る。
・仏画、障壁画、水墨画などのあらゆるジャンルの等伯画を結集。
・国宝3点、「松林図屏風」(東博)、「楓図壁貼付」、「松に秋草図屏風」(智積院)については全期間展示。(その他の作品については一部、展示替えあり。)
・縦10m、横6mに及ぶ大絵画「仏涅槃図」(本法寺)を公開。
・国宝「松林図」と関係が伺われるもう一つの松林図、「月夜松林図」を東京で初めて展示。
・本展開催における研究で等伯の真筆であることが確認された「花鳥図屏風」を公開。(後ろに写真あり。)
発表会では展示の内容について東博、京博の学芸員の方から説明がありました。以下、そのポイントを三つに絞り、出品作とあわせてご紹介したいと思います。
【その1・仏画】
能登の畠山家家臣の奥村家の子として生まれた等伯は、「信春」と名乗り、縁のあった日蓮宗寺院に関する仏画を制作した。上洛後も日蓮宗僧侶、日通との親交を続け、熱心な法華信徒として活動する。本展では「信春」時代の作品(15点)など、あまり知られない等伯の仏画を紹介する。
・長谷川等伯 重要文化財「三十番神図」(1566年・大法寺)
法華経の守護神である三十番神が精緻に描かれている。信春時代の仏画としてもとりわけ色彩鮮やかな作品。各神像の背景には手長猿も見ることが出来、後の水墨画との関連も指摘出来る。
・長谷川等伯 重要文化財「日堯上人像」(1572年・本法寺)
本法寺の第8世、日堯上人が説法を行う姿が描かれている。ちなみに本法寺とは等伯の生家の菩提寺の本寺。等伯はこの寺の伝手にて上洛することが出来た。
・長谷川等伯 重要文化財「仏涅槃図」(1599年・本法寺)
等伯が61歳の時に描いた縦10mにも及ぶ巨大な仏画である。京都三大涅槃図の一。完成時は宮中で披露された。絵の中には等伯一族の名も記され、その厚い信仰心を伺うことが出来る。本展のハイライトでもある。
・長谷川等伯 重要文化財「日通上人像」(1608年・本法寺)
本法寺ぼ日通上人の死に際し、等伯が70歳の時に描いた肖像画。日通は等伯と、住職、信徒という関係でなく、一友人としての深い交流があった。またこの交流から、等伯にまつわるエピソードなどを記した「等伯画説」が誕生している。そこには等伯の会話や絵画観などが書き残されており、日本最古の画論書でもある。
【その2・水墨画】
国宝「松林図屏風」をはじめとした水墨画群を紹介する。
・長谷川等伯 重要文化財「枯木猿猴図」(龍泉庵)*東京展:前期2/23-3/7、京都展:後期4/27-5/9
元は屏風絵。4面あったとされる1部より抜き出している。等伯は水墨の技法を、中国の画家、牧谿の作に倣っていたが、中でもとりわけ優れているのが本作である。母子猿や父猿の長閑な様子、そしてそこから感じられる家族愛、さらには柔らかく温和な雰囲気などは、牧谿を通り越した等伯独自のものであると言って良い。
・長谷川等伯 国宝「松林図屏風」(東京国立博物館)
しっとりした大気の中に佇む松林の姿が描かれている。かつて日本で最も好きな日本画は何かと聞くアンケートがあったが、その中でも一位にランクインしたことがあるくらい有名な作品。遠くに雪山を望み、その前で展開される冷やかな空気と柔らかな光の動きが、まさに日本人の知る心の原風景に近い光景を生み出した。とは言え、全景の緩やかな気配とは一転し、近づて見ると紙がふやけるほどの荒々しいタッチにて墨線がひかれていることが分かる。ここに自然の深遠さを会得しつつ、波乱に満ちた等伯の生涯を重ね合わせることが出来るのではないだろうか。
・長谷川派「月夜松林図」(個人蔵)
国宝「松林図」は長らく他に関連する作品を見出すことができなかったが、現在では本作がそれに先行するものとして知られている。つまりは等伯の「松林図」を考える上で極めて重要な作品。久々に展覧会に出品される。(東京では初公開。)
【その3・金碧障壁画】
新発見の「花鳥図屏風」をはじめとして、国宝「楓図壁貼付」など、桃山文化を代表する金碧障壁画を総覧する。
・長谷川等伯 国宝「楓図壁貼付」/国宝「松に秋草図屏風」(1593年頃・智積院)
いわゆる桃山期の大画様式は狩野永徳が大成したものだが、それを参考にしながらも、等伯独自の画風を確立させた障壁画として名高い作品。秀吉の長男、鶴松の菩提を弔うために建立された祥雲寺(現智積院)に描かれた。力強い巨木こそ永徳を彷彿させるが、細かな葉や花などの描写は、装飾性と艶やかさを兼ね備えた等伯ならではのスタイルと言って良い。
・長谷川等伯 「花鳥図屏風」(個人蔵)*作品写真は下に掲載*
等伯は40代の頃、まだ信春を名乗っていた時期の作品である。今回の展観にあわせて彼の作だと断定された。等伯の金碧障壁画は「楓図」以前、殆ど描かれたことがなかったのではないかという考えもあったが、本作の発見によってそれは覆された。松の天秤型に開く樹木表現、もしくは細かな葉の描写などに、楓図と関連づけられる部分が見られる。
その他にも川村記念美術館の重要文化財「烏鷺図屏風」なども出品されるそうです。壮観なラインナップではないでしょうか。
続いて本展でも紹介される新出の「花鳥図屏風」の公開が行われました。なお撮影が可能だったので、ここに私の撮った写真をいくつか掲載してみます。
大きく迫り下がる金の雲霞の他、楓図同様、左右に広がる枝振りと装飾的な花々、そしてその背景に見られる応挙風の荒々しい滝などが印象に残りました。
なおかつての等伯展というと、石川県立美術館や京都市美術館などで30~40点規模のものはあったそうですが、質量ともにこれほどの内容が揃ったことはなかったそうです。「空前」という言葉もあながち誇張ではないことをお分かりいただけるのではないでしょうか。
少し先の話ではありますが、いまから来春の上野の日本美術は長谷川等伯で決まりとなりそうです。心待ちにしたいと思います。
*展覧会基本情報(東京展)*
名称:「特別展 長谷川等伯」
会場:東京国立博物館(台東区上野公園13-9)
会期:2010年2月23日(火)~3月22日(月・休)
休館:月曜日。但し最終日の月曜(休日)は開館。
時間:午前9:30~午後5:00。金曜は午後8時まで。
料金:一般1400円、大高生900円、中小生500円。(前売はそれぞれ200円引)なおペア券2000円を12月23日まで発売。
*作品の写真、また図版の掲載は許可を得ています。
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「ウェイ・ジャ/渡辺豊/イケムラレイコ個展」 清澄(小山登美夫ギャラリー/シュウゴアーツ)
小山登美夫ギャラリー(江東区清澄1-3-2 6・7階)
「ウェイ・ジャ(韋嘉)/渡辺豊 個展」
10/10-31
7階のメインスペースでは、2007年に「中国で最も影響力のある若手アーティスト賞」を受賞(画廊HPより引用)したウェイ・ジャの新作を約10点ほど紹介。ブルーやピンク、それにグレーなどの色彩を重層的に塗り込みながらも、透明感にも溢れた、光の瞬きを感じるタッチにて、謎めいた中性的な少年モチーフを象っていく。興味深いのは彼らに翼が生えたりしていること。巨大な怪物と格闘し、時に天使の似姿をとる少年たちの姿には、宗教画風の静謐な雰囲気も感じられた。
階下の小スペースでは1981年生まれの作家、渡辺豊のペインティングを6点ほど展示。一軒家を思わせる建築物をオレンジや黄色などの華やかなカラーリングで表しながら、そこにカンディンスキー風の曲線を描き加え、さらにはモチーフ自体を解体するかのようなシュールな景色を生み出していく。正面に立ちふさがる家の壁の前で跳ねる曲線は、まるで音符のようにリズミカルに動いていた。寂し気な後景の建物とアンバランス感が逆に面白い。
シュウゴアーツ(江東区清澄1-3-2 5階)
「イケムラレイコ ME ZA ME」
10/10-11/21
眠った少女らをモチーフとして描いた新作ドローイングが展示されている。これまでは少女の姿そのものの印象が強かったが、今回はその暗がりの背景の方がメインに押し出されているようで興味深い。眠りに引き起こされて起こる空間の揺らぎは、お馴染みの消え行く影絵のような幻想的なタッチによって、さらに危うく、また断片的に示されている。意外な展開で驚いた。
今回はシュウゴアーツ目当てで行きましたが、小山登美夫ギャラリーでの若手中国人作家、ウェイ・ジャの作品が特に印象に残りました。
「ウェイ・ジャ(韋嘉)/渡辺豊 個展」
10/10-31
7階のメインスペースでは、2007年に「中国で最も影響力のある若手アーティスト賞」を受賞(画廊HPより引用)したウェイ・ジャの新作を約10点ほど紹介。ブルーやピンク、それにグレーなどの色彩を重層的に塗り込みながらも、透明感にも溢れた、光の瞬きを感じるタッチにて、謎めいた中性的な少年モチーフを象っていく。興味深いのは彼らに翼が生えたりしていること。巨大な怪物と格闘し、時に天使の似姿をとる少年たちの姿には、宗教画風の静謐な雰囲気も感じられた。
階下の小スペースでは1981年生まれの作家、渡辺豊のペインティングを6点ほど展示。一軒家を思わせる建築物をオレンジや黄色などの華やかなカラーリングで表しながら、そこにカンディンスキー風の曲線を描き加え、さらにはモチーフ自体を解体するかのようなシュールな景色を生み出していく。正面に立ちふさがる家の壁の前で跳ねる曲線は、まるで音符のようにリズミカルに動いていた。寂し気な後景の建物とアンバランス感が逆に面白い。
シュウゴアーツ(江東区清澄1-3-2 5階)
「イケムラレイコ ME ZA ME」
10/10-11/21
眠った少女らをモチーフとして描いた新作ドローイングが展示されている。これまでは少女の姿そのものの印象が強かったが、今回はその暗がりの背景の方がメインに押し出されているようで興味深い。眠りに引き起こされて起こる空間の揺らぎは、お馴染みの消え行く影絵のような幻想的なタッチによって、さらに危うく、また断片的に示されている。意外な展開で驚いた。
今回はシュウゴアーツ目当てで行きましたが、小山登美夫ギャラリーでの若手中国人作家、ウェイ・ジャの作品が特に印象に残りました。
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「城田圭介展」 BASE GALLERY
BASE GALLERY(中央区日本橋茅場町1-1-6)
「城田圭介展」
9/28-10/31
写真から絵画へと次元が変化します。1975年生まれのアーティスト、城田圭介の個展を見てきました。
上記DMの画像だけでは、線や面の錯綜する謎めいた光景にも見えますが、そのイメージの揺らぎ、そして一見するところの素材を超えた曖昧な境界線こそ城田の魅力の一つなのかもしれません。手法は明快です。駅や街の景色を撮った写真をキャンバスの中央に置いて、その周囲を延長、ようは広げるようにしてモノクロームの絵具で描いていきます。誇張された独特の遠近感によって風景は歪みだし、既視感のある駅の改札やショーウインドウは、未だ知らない近未来風の街の「何処か」へと生まれ変わりました。またモノクロの絵具は、眩しい都会のネオンサインを一転して光と闇の世界へと転換させます。実際、キャンバスの前に立つと、実と虚の間、つまりは写真と絵画の境界はすぐに分かりますが、そのせめぎ合う様子もまた興味深いところではありました。
絵画と写真との組み合わせは簡素ですが、このスタイリッシュな様子に惹かれる方も多いのではないでしょうか。
明日までの開催です。
「城田圭介展」
9/28-10/31
写真から絵画へと次元が変化します。1975年生まれのアーティスト、城田圭介の個展を見てきました。
上記DMの画像だけでは、線や面の錯綜する謎めいた光景にも見えますが、そのイメージの揺らぎ、そして一見するところの素材を超えた曖昧な境界線こそ城田の魅力の一つなのかもしれません。手法は明快です。駅や街の景色を撮った写真をキャンバスの中央に置いて、その周囲を延長、ようは広げるようにしてモノクロームの絵具で描いていきます。誇張された独特の遠近感によって風景は歪みだし、既視感のある駅の改札やショーウインドウは、未だ知らない近未来風の街の「何処か」へと生まれ変わりました。またモノクロの絵具は、眩しい都会のネオンサインを一転して光と闇の世界へと転換させます。実際、キャンバスの前に立つと、実と虚の間、つまりは写真と絵画の境界はすぐに分かりますが、そのせめぎ合う様子もまた興味深いところではありました。
絵画と写真との組み合わせは簡素ですが、このスタイリッシュな様子に惹かれる方も多いのではないでしょうか。
明日までの開催です。
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「あるがせいじ 新作展」 ラディウム-レントゲンヴェルケ
ラディウム-レントゲンヴェルケ(中央区日本橋馬喰町2-5-17)
「あるがせいじ 新作展」
10/2-31
細密極まりない驚異のテクスチャーが紙面に未知の景色を広げます。レントゲンで開催中のあるがせいじの新作個展へ行ってきました。
ともかくあるがせいじと言えば、これまでにもその細かな手仕事によって、驚くべきイメージを紙面上で展開してきましたが、今回もその手法こそ断固なまでに守りながらも、生み出されたテクスチャーは今までにない新たな方向が示されていました。穴というよりも点、そして面というよりも線の集積が無数に連なり、それがあたかもドローイングのような様相をとりながら、抽象を越えた特異の景色が眼前に広がっています。食い入るように見つめてしまう作品というのは、まさにこう言ったものを指すのかもしれません。
無限にループするエッシャーのだまし絵、さらにはテレビの走査線を限りなく拡大して焼き付けたような映像的なイメージも頭に浮かんできました。
この作品が何かのドローイングだと思われた方は、是非とも今週末に浅草橋までお出かけ下さい。
31日まで開催されています。
「あるがせいじ 新作展」
10/2-31
細密極まりない驚異のテクスチャーが紙面に未知の景色を広げます。レントゲンで開催中のあるがせいじの新作個展へ行ってきました。
ともかくあるがせいじと言えば、これまでにもその細かな手仕事によって、驚くべきイメージを紙面上で展開してきましたが、今回もその手法こそ断固なまでに守りながらも、生み出されたテクスチャーは今までにない新たな方向が示されていました。穴というよりも点、そして面というよりも線の集積が無数に連なり、それがあたかもドローイングのような様相をとりながら、抽象を越えた特異の景色が眼前に広がっています。食い入るように見つめてしまう作品というのは、まさにこう言ったものを指すのかもしれません。
無限にループするエッシャーのだまし絵、さらにはテレビの走査線を限りなく拡大して焼き付けたような映像的なイメージも頭に浮かんできました。
この作品が何かのドローイングだと思われた方は、是非とも今週末に浅草橋までお出かけ下さい。
31日まで開催されています。
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「ユリイカ 特集・若冲」 青土社
西と東で若冲展たけなわのところですが、本日発売されたユリイカの若冲特集を読んでみました。
早速、目次を順に挙げながら、内容を簡単にご紹介(+感想)したいと思います。
『特集・若冲 - 「動植綵絵」・モザイク画・「象と鯨図屏風」…永遠に新しい絵師のすべて』 2009年11月号
【徹底討議】
「21世紀の若冲 書き換えられる日本美術史」 辻惟雄×山下裕二
冒頭のお馴染みのお二方による若冲対談。MIHO展の「象と鯨図屏風」新発見のエピソードにはじまり、新出の資料による新たな若冲観の提示、さらには奇想の系譜から動植綵絵分析へと話が繋がっていく。ここで面白いのは晩年の若冲は同じモチーフを反復させて描いているという指摘。確かにそれで失われたもう一点の「象と鯨」との関係も説明出来るかもしれない。また綵絵は仏画として描かれたこと、プライス蔵の「鳥獣花木図屏風」は若冲に間違いないこと(正しくは若冲派であること。)については、出来ればそれに対して反論する研究者の声も欲しかった。
【カラー口絵】
「この若冲がすごい! 現代の絵師たちが選ぶこの一点」
〈菜虫譜〉 選=青島千穂
〈雪中錦鶏図〉 選=三瀬夏之介
〈池辺群虫図〉 選=池田学
〈芭蕉叭々鳥図襖絵〉 選=佐伯洋江
〈鯉魚図〉 選=寺田克也
〈鳥獣花木図屏風〉 選=D[di:]
〈象と鯨図屏風〉 選=鈴木志保
〈隠元豆・玉蜀黍図〉 選=秋山亜由子
見出しの通り、各作家が若冲この一点を挙げるコーナー。カラー図版も付属。三瀬さんの「雪中錦鶏図」、池田さんの「池辺群虫図」、佐伯さんの「芭蕉~」は、微細に全てを埋め尽くして破壊的スケールにまで全体を高めること、細部を連続させて一つの壮大な物語絵巻をつくること、余白とモチーフが強い緊張感で対峙していることなどと言うような、それぞれの作風とリンクしているようで面白かった。
【若冲2009】
「若冲の画法」 横尾忠則
「見るものと、見られるものと 二一世紀の 動植綵絵」 黒川創
「若冲のマグナム・オーパス。」 茂木健一郎
「若冲展を思い出しながら」 狩野博幸
若冲にまつわる短めの4点のエッセー。京博の若冲展を手がけた狩野博幸氏は、かの展示の図録がネットオークションで数万円にまで達しているなどのエピソードを紹介している。いくら売り切りが原則とは言え、分かっておられるのなら図録は再版出来ないものなのか。
【〈動植綵絵〉熟観玩味】
「動植綵絵を観る複数の時間」 古谷利裕
「若冲をもっと遠くに!」 福永信
「動物と植物に触れる 伊藤若冲の動植綵絵」 石岡良治
モチーフにおける色彩、そして空間構成などの点などから、若冲全体を論じる論文集。マティスの色彩感にも準じ、若冲絵の色彩は各モチーフを反響、そして関連づけているという古谷、空間における大気の欠如と、感傷を抑圧することでかえって強い表現を得ているとする石岡の指摘が面白かった。
【若冲のパラレル・ヴィジョン】
「エンサークルメント 冲(むな)しきが若(ごと)し」 高山宏
「細部に宿る神 若冲とレオナルド」 池上英洋
「半生命と若冲の動物群」 池上高志
「伊藤若冲のD4C」 斎藤環
西洋画のピクチャレスク、そしてレオナルド、さらには画像編集の「レイヤー」の概念などから、若冲の見えにくいエッセンスを探り当てていく。鳥獣と樹花の両升目描屏風を、望遠レンズの圧縮効果から分析し、ともに価値を与えていた斉藤は、冒頭の対談で「何となく若冲作」としていた指摘から一つ踏み込んでいて興味深い。若冲の男くささ、レオナルドの女性性への関心のなさを共通項として挙げる池上先生の論文も楽しかった。百犬図と猫のスケッチの図版がこうも類似して見えるとは驚き。
【若冲を桃源郷に訪ねる】
「笑う象、伸びる鯨、桃源郷の若冲さん」 谷崎由依
「桃源にて」 田辺青蛙
ともにMIHOへ行った時のこと回想しながら、若冲のことについて触れる軽めのエッセー。これを見るとMIHOがとんでもない山奥(実際、半分そうだが。)にあるように思えて、行くのが怖じ気づいてしまうかもしれない。
【サブカルチャーと(しての)若冲】
「オレサマたちの夢の跡」 永山薫
「伊藤若冲とサブカルチャー 京都、畸人たちのネットワーク」 樋口ヒロユキ
漫画、サブカル批評家でもある両氏による、いささか辛辣な語り口のエッセー。オタク的要素、タトゥーなどから若冲へと繋げていく。
【資料】
「若冲略年譜」
文字通りの若冲年譜。シンプルながら、「動植綵絵」などの作品を制作年を追うのにも最適。見やすい。
まだ流して拝見したのみですが、全体としてはなかなか読み応えがあって楽しめました。
東博の名宝展を挙げるまでもなく、昨今、若冲に関する関心はまた一段と高まってきているような気がします。目新しい情報はありませんが、現在開催中、もしくは開催予定の若冲関連の展覧会を簡単にリストアップしてみました。
「皇室の名宝 日本美の華 第一期」 東京国立博物館(10/6-11/3)
「動植綵絵」全30幅を都内では83年ぶりに一括展示。混雑情報などは公式HPへ。
「若冲ワンダーランド」 MIHO MUSEUM(9/1-12/13)
新出の「象と鯨図屏風」の他、これまであまり紹介されることのなかった個人蔵の水墨画など、全130点の若冲作を展観。(但し計6度の展示替えのため、一度に出ているのは40点程度。)出品リスト参照。
「若冲アナザーワールド」 静岡県立美術館・千葉市美術館(静岡:2010/4/10-5/16、千葉:2010/5/22-6/27)
升目描の「白象群獣図」他、静岡所蔵の「樹花鳥獣図屏風」などを展示予定。「象と鯨」も出品の可能性あり。展示自体はMIHO同様、水墨画がメインとなりそう。
ワンダーランドとアナザーワールドの両展示が、事実上の巡回なのか、また異なるのかが気になるところではあります。
「ユリイカ2009年11月号 特集・若冲/青土社」
「ユリイカの特集・若冲」1冊1300円です。まずは書店にてご覧下さい。
*関連エントリ(それぞれ私が観た展示の感想です。)
「若冲ワンダーランド」 MIHO MUSEUM
「皇室の名宝 - 日本美の華」(第一期) 東京国立博物館(プレビュー)
早速、目次を順に挙げながら、内容を簡単にご紹介(+感想)したいと思います。
『特集・若冲 - 「動植綵絵」・モザイク画・「象と鯨図屏風」…永遠に新しい絵師のすべて』 2009年11月号
【徹底討議】
「21世紀の若冲 書き換えられる日本美術史」 辻惟雄×山下裕二
冒頭のお馴染みのお二方による若冲対談。MIHO展の「象と鯨図屏風」新発見のエピソードにはじまり、新出の資料による新たな若冲観の提示、さらには奇想の系譜から動植綵絵分析へと話が繋がっていく。ここで面白いのは晩年の若冲は同じモチーフを反復させて描いているという指摘。確かにそれで失われたもう一点の「象と鯨」との関係も説明出来るかもしれない。また綵絵は仏画として描かれたこと、プライス蔵の「鳥獣花木図屏風」は若冲に間違いないこと(正しくは若冲派であること。)については、出来ればそれに対して反論する研究者の声も欲しかった。
【カラー口絵】
「この若冲がすごい! 現代の絵師たちが選ぶこの一点」
〈菜虫譜〉 選=青島千穂
〈雪中錦鶏図〉 選=三瀬夏之介
〈池辺群虫図〉 選=池田学
〈芭蕉叭々鳥図襖絵〉 選=佐伯洋江
〈鯉魚図〉 選=寺田克也
〈鳥獣花木図屏風〉 選=D[di:]
〈象と鯨図屏風〉 選=鈴木志保
〈隠元豆・玉蜀黍図〉 選=秋山亜由子
見出しの通り、各作家が若冲この一点を挙げるコーナー。カラー図版も付属。三瀬さんの「雪中錦鶏図」、池田さんの「池辺群虫図」、佐伯さんの「芭蕉~」は、微細に全てを埋め尽くして破壊的スケールにまで全体を高めること、細部を連続させて一つの壮大な物語絵巻をつくること、余白とモチーフが強い緊張感で対峙していることなどと言うような、それぞれの作風とリンクしているようで面白かった。
【若冲2009】
「若冲の画法」 横尾忠則
「見るものと、見られるものと 二一世紀の 動植綵絵」 黒川創
「若冲のマグナム・オーパス。」 茂木健一郎
「若冲展を思い出しながら」 狩野博幸
若冲にまつわる短めの4点のエッセー。京博の若冲展を手がけた狩野博幸氏は、かの展示の図録がネットオークションで数万円にまで達しているなどのエピソードを紹介している。いくら売り切りが原則とは言え、分かっておられるのなら図録は再版出来ないものなのか。
【〈動植綵絵〉熟観玩味】
「動植綵絵を観る複数の時間」 古谷利裕
「若冲をもっと遠くに!」 福永信
「動物と植物に触れる 伊藤若冲の動植綵絵」 石岡良治
モチーフにおける色彩、そして空間構成などの点などから、若冲全体を論じる論文集。マティスの色彩感にも準じ、若冲絵の色彩は各モチーフを反響、そして関連づけているという古谷、空間における大気の欠如と、感傷を抑圧することでかえって強い表現を得ているとする石岡の指摘が面白かった。
【若冲のパラレル・ヴィジョン】
「エンサークルメント 冲(むな)しきが若(ごと)し」 高山宏
「細部に宿る神 若冲とレオナルド」 池上英洋
「半生命と若冲の動物群」 池上高志
「伊藤若冲のD4C」 斎藤環
西洋画のピクチャレスク、そしてレオナルド、さらには画像編集の「レイヤー」の概念などから、若冲の見えにくいエッセンスを探り当てていく。鳥獣と樹花の両升目描屏風を、望遠レンズの圧縮効果から分析し、ともに価値を与えていた斉藤は、冒頭の対談で「何となく若冲作」としていた指摘から一つ踏み込んでいて興味深い。若冲の男くささ、レオナルドの女性性への関心のなさを共通項として挙げる池上先生の論文も楽しかった。百犬図と猫のスケッチの図版がこうも類似して見えるとは驚き。
【若冲を桃源郷に訪ねる】
「笑う象、伸びる鯨、桃源郷の若冲さん」 谷崎由依
「桃源にて」 田辺青蛙
ともにMIHOへ行った時のこと回想しながら、若冲のことについて触れる軽めのエッセー。これを見るとMIHOがとんでもない山奥(実際、半分そうだが。)にあるように思えて、行くのが怖じ気づいてしまうかもしれない。
【サブカルチャーと(しての)若冲】
「オレサマたちの夢の跡」 永山薫
「伊藤若冲とサブカルチャー 京都、畸人たちのネットワーク」 樋口ヒロユキ
漫画、サブカル批評家でもある両氏による、いささか辛辣な語り口のエッセー。オタク的要素、タトゥーなどから若冲へと繋げていく。
【資料】
「若冲略年譜」
文字通りの若冲年譜。シンプルながら、「動植綵絵」などの作品を制作年を追うのにも最適。見やすい。
まだ流して拝見したのみですが、全体としてはなかなか読み応えがあって楽しめました。
東博の名宝展を挙げるまでもなく、昨今、若冲に関する関心はまた一段と高まってきているような気がします。目新しい情報はありませんが、現在開催中、もしくは開催予定の若冲関連の展覧会を簡単にリストアップしてみました。
「皇室の名宝 日本美の華 第一期」 東京国立博物館(10/6-11/3)
「動植綵絵」全30幅を都内では83年ぶりに一括展示。混雑情報などは公式HPへ。
「若冲ワンダーランド」 MIHO MUSEUM(9/1-12/13)
新出の「象と鯨図屏風」の他、これまであまり紹介されることのなかった個人蔵の水墨画など、全130点の若冲作を展観。(但し計6度の展示替えのため、一度に出ているのは40点程度。)出品リスト参照。
「若冲アナザーワールド」 静岡県立美術館・千葉市美術館(静岡:2010/4/10-5/16、千葉:2010/5/22-6/27)
升目描の「白象群獣図」他、静岡所蔵の「樹花鳥獣図屏風」などを展示予定。「象と鯨」も出品の可能性あり。展示自体はMIHO同様、水墨画がメインとなりそう。
ワンダーランドとアナザーワールドの両展示が、事実上の巡回なのか、また異なるのかが気になるところではあります。
「ユリイカ2009年11月号 特集・若冲/青土社」
「ユリイカの特集・若冲」1冊1300円です。まずは書店にてご覧下さい。
*関連エントリ(それぞれ私が観た展示の感想です。)
「若冲ワンダーランド」 MIHO MUSEUM
「皇室の名宝 - 日本美の華」(第一期) 東京国立博物館(プレビュー)
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「Art Point Selection 4」 ギャラリー・アート・ポイント
ギャラリー・アート・ポイント(中央区銀座8-11-13 エリザベスビルB1)
「Art Point Selection 4」
10/26-31
日頃、ブログでもお世話になっているあおひーさんが出展されるとのことで行ってきました。ギャラリー・アート・ポイントでの「Art Point Selection 4」を見てきました。
出品作家は以下の通りです。写真、絵画、またコラージュなど、計4名の方の平面作品によって構成されたグループショーでした。
あおひー、Shen Ting-Tseng、鈴木さと美、福田直子
正面に並ぶのがあおひーさんの作品です。出品は計8点でした。モノクロームの際にも見られた光と闇の邂逅は、今度は相手を色に変えて展開されていました。色がじっくりと光に溶け込んでいく確かな美しさが感じられます。
モノクロームでは、独特のブレによる抽象性の強い作風が印象的でしたが、今回は半具象的な『景色』を見せる作品も登場していました。
また透明のアクリル板を差し込むことで、作品に色の力と、さらなる重層的な質感を呼び込んでいます。一見して感じられたのは、写真が非常に絵画的であるということでした。なお作品のタイトルが前回展とも一変しています。そちらは是非会場でお確かめ下さい。
さて本展ではその他、白を基調とした鈴木さとみさんの工芸的な味わいのあるタブロー、または華やかでかつ良い意味での毒気を見せた福田直子さんのコラージュなども紹介されています。
鈴木さとみさんの作品です。白の絵具をクリーム状に塗ったような質感が印象に残りました。また絵に静かな動きを与える円のモチーフと、随所に影のようにして登場する青などの仄かな彩色も見逃せないところです。
こちらは福田直子さんのコラージュです。雑誌の一面などから切り抜いた色鮮やかな紙片が広がっています。一見するだけでは、絵具が激しく迸る表現主義絵画のようにも見えてきます。はじめはコラージュと分かりませんでした。
もう一方、Shen Ting-Tsengのペインティングはあおひーさんの写真のちょうど真向かいに並びます。各作家の素材、そして何よりも色の展開にも配慮された、全体として統一感のあるグループ展でした。
ギャラリー・アート・ポイントは、ちょうど東京画廊の向かいのビルの地下にある画廊です。銀座というよりも新橋の方が近いかもしれません。
最終日にはあおひーさんも在廊されておられるそうです。
グループ展「Art Point Selection」開催中です!@あお!ひー
(オープニングパーティの様子)
31日までの開催です。また伺いたいと思います。
「Art Point Selection 4」
10/26-31
日頃、ブログでもお世話になっているあおひーさんが出展されるとのことで行ってきました。ギャラリー・アート・ポイントでの「Art Point Selection 4」を見てきました。
出品作家は以下の通りです。写真、絵画、またコラージュなど、計4名の方の平面作品によって構成されたグループショーでした。
あおひー、Shen Ting-Tseng、鈴木さと美、福田直子
正面に並ぶのがあおひーさんの作品です。出品は計8点でした。モノクロームの際にも見られた光と闇の邂逅は、今度は相手を色に変えて展開されていました。色がじっくりと光に溶け込んでいく確かな美しさが感じられます。
モノクロームでは、独特のブレによる抽象性の強い作風が印象的でしたが、今回は半具象的な『景色』を見せる作品も登場していました。
また透明のアクリル板を差し込むことで、作品に色の力と、さらなる重層的な質感を呼び込んでいます。一見して感じられたのは、写真が非常に絵画的であるということでした。なお作品のタイトルが前回展とも一変しています。そちらは是非会場でお確かめ下さい。
さて本展ではその他、白を基調とした鈴木さとみさんの工芸的な味わいのあるタブロー、または華やかでかつ良い意味での毒気を見せた福田直子さんのコラージュなども紹介されています。
鈴木さとみさんの作品です。白の絵具をクリーム状に塗ったような質感が印象に残りました。また絵に静かな動きを与える円のモチーフと、随所に影のようにして登場する青などの仄かな彩色も見逃せないところです。
こちらは福田直子さんのコラージュです。雑誌の一面などから切り抜いた色鮮やかな紙片が広がっています。一見するだけでは、絵具が激しく迸る表現主義絵画のようにも見えてきます。はじめはコラージュと分かりませんでした。
もう一方、Shen Ting-Tsengのペインティングはあおひーさんの写真のちょうど真向かいに並びます。各作家の素材、そして何よりも色の展開にも配慮された、全体として統一感のあるグループ展でした。
ギャラリー・アート・ポイントは、ちょうど東京画廊の向かいのビルの地下にある画廊です。銀座というよりも新橋の方が近いかもしれません。
最終日にはあおひーさんも在廊されておられるそうです。
グループ展「Art Point Selection」開催中です!@あお!ひー
(オープニングパーティの様子)
31日までの開催です。また伺いたいと思います。
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「タムラサトル」 Takuro Someya Contemporary Art
Takuro Someya Contemporary Art(中央区築地1-5-11 築地KBビル1階)
「Viewing Week - タムラサトル」
10/23-11/7
柏の広々とした旧工場跡のスペースで様々なアーティストを紹介してきたTakuro Someya Contenporary Art(TSCA)が、東京・新富町に新スペースをオープンさせました。オープニング第一弾、タムラサトルの個展へ行ってきました。
さすがに柏で見た超弩級の大作オブジェこそ登場しませんが、このスタイリッシュな新スペースでも金属と電気が生み出す、激しく、また時にエロスすら感じさせる火花の魅力は健在です。本個展はお馴染みの白熱灯を用いた新作と、その他に柏にも出品のあった旧作の「接点」、「円盤」シリーズの小品数点にて構成されています。自律的に回転する金属の接点の他、反復して行き来する金属棒などが、奇妙なほどに人懐っこく感じられるのもまた魅力的でした。
→
(火花が出ているのをご覧いただけるでしょうか。)
オブジェとするよりも電気仕掛けの『装置』とも言うべき作品が、あちこちで白熱灯がぴかぴか光、また火花を散らして、新スペースの門出を可憐にも祝福しています。外見は非常に無機質ですが、その光の瞬き、または運動、そしてその揺らぎは非常に繊細でもありました。
なお住所表記は築地とありますが、最寄駅は有楽町線の新富町です。アラタニウラノから中央区役所を挟んだ反対側に位置しています。ちょうど区役所と築地警察署の裏側です。駅出口からは2分とかかりません。(もちろんアラタニウラノからも至近です。)
間口こそこじんまりとしていますが、奥行きはかなりあります。今後しばらくは「Viewing Week」と題して、柏で発信してきた作家を改めてここ東京で紹介していくそうです。目が離せません。
11月7日までの開催です。まずはお出かけ下さい。
「Viewing Week - タムラサトル」
10/23-11/7
柏の広々とした旧工場跡のスペースで様々なアーティストを紹介してきたTakuro Someya Contenporary Art(TSCA)が、東京・新富町に新スペースをオープンさせました。オープニング第一弾、タムラサトルの個展へ行ってきました。
さすがに柏で見た超弩級の大作オブジェこそ登場しませんが、このスタイリッシュな新スペースでも金属と電気が生み出す、激しく、また時にエロスすら感じさせる火花の魅力は健在です。本個展はお馴染みの白熱灯を用いた新作と、その他に柏にも出品のあった旧作の「接点」、「円盤」シリーズの小品数点にて構成されています。自律的に回転する金属の接点の他、反復して行き来する金属棒などが、奇妙なほどに人懐っこく感じられるのもまた魅力的でした。
→
(火花が出ているのをご覧いただけるでしょうか。)
オブジェとするよりも電気仕掛けの『装置』とも言うべき作品が、あちこちで白熱灯がぴかぴか光、また火花を散らして、新スペースの門出を可憐にも祝福しています。外見は非常に無機質ですが、その光の瞬き、または運動、そしてその揺らぎは非常に繊細でもありました。
なお住所表記は築地とありますが、最寄駅は有楽町線の新富町です。アラタニウラノから中央区役所を挟んだ反対側に位置しています。ちょうど区役所と築地警察署の裏側です。駅出口からは2分とかかりません。(もちろんアラタニウラノからも至近です。)
間口こそこじんまりとしていますが、奥行きはかなりあります。今後しばらくは「Viewing Week」と題して、柏で発信してきた作家を改めてここ東京で紹介していくそうです。目が離せません。
11月7日までの開催です。まずはお出かけ下さい。
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「若冲ワンダーランド」 MIHO MUSEUM
MIHO MUSEUM(滋賀県甲賀市信楽町桃谷300)
「若冲ワンダーランド」
9/1-12/13
新発見の「象と鯨図屏風」をはじめとした国内外の若冲の作品を展観します。MIHO MUSEUMで開催中の「若冲ワンダーランド」へ行ってきました。
まずは本展の概要を挙げてみます。
・新出の「象と鯨図屏風」の他、とりわけ個人蔵の作品を中心に、若冲の絵画を全6期の会期に分けて約130点ほど展示する。
・若冲作の出品は各会期毎に約40点。(「象と鯨図屏風」は全期間展示。必ずしも全ての作品が入れ替わるわけではない。)他、蕪村、応挙、大雅らの作品もあわせて数点ほど紹介。
・これまでに知られなかった若冲の新たな姿を提示する。関連資料の他、豪華図録の巻頭論文は極めて重要。若冲は「絵画オタク」ではなかった。
上述の通り詳細な全6期制とのことで、各会期毎の若冲作はそれほど多いわけではありませんが、「象と鯨」はもとより、あまり見慣れない個人蔵の作品、とりわけ露出の比較的少ない水墨画など、かなり新鮮味のある若冲展という印象を受けました。
続いて本展の流れです。随所に館長の辻氏のカラーが伺える、計七章立ての構成でした。
第一章「プロフィール」
第二章「版画」
第三章「動植綵絵への道 - 法度の中に新意を出す」
第四章「若冲ワンダーランド - リアリティーとユーモアのカクテル」
第五章「若冲をめぐる人々」
第六章「象と鯨図屏風」
第七章「ワンダーランドの共住者たち」
第八章「面白き物好き」
もう間もなく会期は、27日からの第4期(11月8日まで)に突入しますが、以下に私の観た3期中の作品の感想を並べてみることにしました。お付き合い下されば幸いです。
「双鶏図」(1795年・個人蔵・全期間展示)
お馴染みのヒモのような尾っぽを振り上げた鶏が描かれている。ふと見返る様子も若冲画ならではの躍動感に溢れていた。
「布袋唐子図」(個人蔵・展示終了)
失礼ながらもまるで饅頭のような身体と顔した布袋が登場。頭の上に乗る子どもがまた楽し気な様子だった。また一見、大まかなタッチで描かれているのかと思いきや、布袋の髭の部分など、意外にも細かい筆さばきを確認出来るのも興味深い。
「牡丹・百合図」(慈照寺・~11/1)
前もって図版で見ていてどうしても実物に接したくなった作品。双幅の大画面に、南宋の花鳥画を連想させるような中国風の艶やかな牡丹と百合が群れている。花は毒気を放つようにむせ返っていた。またそれを支える岩の『覗き穴』がいかにも若冲らしい。さらに茎に近い部分は緑を、また先端に向けて白く絵具を配した百合の色のグラデーションも絶品だった。若冲の描く花には何とも言えない妖しさが感じられる。逆さカタツムリも必見。
「鸚鵡図」(千葉市美術館・~11/8)
千葉市美ご自慢の一枚。いわゆる裏彩色の効果なのだろうか。羽の部分はうっすらと黄金色に輝いていた。また羽の部分の立体感と、飾りの部分の平面的な描写の対比も面白い。また嘴の箇所は如何なる技法を用いているのだろうか。墨を思わせる黒に白い絵具が滲むようにして広がっていた。
「隠元豆図」(個人蔵・~11/8)
隠元豆が上から垂れ下がっている。やや鋭角的にのびる蔓や葉に飛び乗った昆虫などはいつもの若冲風だが、興味深いのは蔓の線を境にして背景を塗り分けていること。その色面の差異によって絶妙な遠近感が出ているような気がした。
「乗興舟」(京都国立博物館・全期間展示)
京博版「乗興舟」の一部分(約2m)を展示。一本の河に沿って連なる茂みや家々は旅情を誘う。ただやはりこれはかつて大倉で観たときのように全巻を楽しみたい。
「花鳥版画」(1771年・平木浮世絵財団・~11/1)
現在6点しか確認されていないという花鳥版画の一枚を紹介。そそり立つ茎、そして穴のあいた葉など、一見大人しいようでも若冲画の要素がいくつも盛り込まれていた。色も美しい。
「松に鸚鵡図」(個人蔵・展示終了)
上に挙げた「鸚鵡図」よりもさらに絵具の塗りも厚い、非常に重厚感のある鸚鵡が木にとまっている。松の下の白い流れは滝の水流だろうか。細部、特に羽の描写に凝った鸚鵡の姿はまるで置物のようだが、その脚が非常にリアルなのには驚いた。鳥を観察し続けた若冲ならではの表現ではないだろうか。
「雪中遊禽図」(個人蔵・~11/8)
まるで水飴のように粘性を帯びた雪が木々に降り積もる。ともかく目に飛び込んでくるのは、上に同じく置物のような小禽の描写よりも、その眩しいほどに白い雪、揺れる花々の輝くような彩色の鮮やかさ。花のピンク色はそれこそ宝石の表面のようにキラキラと光っていた。また葉の靡く様も非常に生々しい。あたかも自ら意思を持って手を広げるように葉を伸ばしていた。
「葡萄図」(1759年・個人蔵・~11/15)
くるくるととぐろをまいたツタがリズミカルに跳ねる葡萄が描かれている。ただしここでの主役は実ではなくむしろ葉の方。まるで後ろから光を当てたように透き通っていた。
「寒山拾得・楼閣山水図」(個人蔵・~11/1)
大典の賛も書き入れられた三幅の水墨画。和やかに寄り添う二人の様子はどこか卑猥ですらある。また左右に切り立つ岩盤は何やら暗示的。この背景には一体何があるのだろうか。色々と詮索したくなる作品でもあった。
「鳥獣花木図屏風」(プライスコレクション・~11/8)
東博のプライス展でも話題となった升目描の大作がMIHOに出品中。果たしてこれが若冲の真筆なのかについては賛否両論あるところだが、一つのデザインとして見ると非常に華やかな作品であることは間違いない。線が全く若冲ではないが、その分、例えば子どもたちがどこからかモチーフを切り抜いて、ぺたぺたと折り紙でも貼付けたような味わいが感じられて可愛らしかった。久しぶりに接すると意外と良く見えたのが自分でも不思議。
「蟹・牡丹図衝立」(個人蔵・全期間展示)
衝立ての片側にカニが、またもう一方には牡丹の描かれた水墨の作品。脚には動植綵絵の「群魚図・蛸」ならぬ小カニを従えた親カニが大きく描かれている。それにしてもアッと驚かされるのは反対の牡丹ではないだろうか。金砂子の散る華やかな空間には、まるでそこへ消えてしまうかのようにもがき苦しむ牡丹が伸びている。その奇異な形態は曾我蕭白の「群仙図屏風」のよう。これほどシュールな牡丹を他で見たことはない。
「石燈籠図屏風」(京都国立博物館・展示終了)
対決展でも印象に深かった大作の屏風。靄に包まれた湖岸の景色を、点描によって示された燈籠ととも描く。一体、この景色が朝なのか夕なのかは良く分からないが、後述する「燈籠図」がそのヒントになるような気もした。湿り気を帯びた石のひんやりとした質感は、細かな点の集合によって見事に表現されている。その静かな景色と荒々しい木の対比的な描写がまた面白い。枝をぶんぶん振り回しているかのようだ。
「雨龍図」(個人蔵・~11/8)
S字型の龍が筋目描の技法で表現されている。それにしてもこのおどけた表情は何とも微笑ましい。白目を上に向け、口をあんぐり開け、それこそ「いないいないばあ」でもするような仕草をしていた。思わず笑ってしまう。
「蘇鉄図」(個人蔵・~11/1)
巨大な蘇鉄を描いている。幹を筋目にて、また葉を薄い墨にて示す筆さばきが巧い。石燈籠の石の点描ではないが、若冲は対象の質感にもかなり注意して絵を描いていたのではないだろうか。何気ない描写だが、クローズアップされた構図にもよるのか、非常に力強い作品でもあった。
「燈籠図」(個人蔵・~11/8)
上の石燈籠屏風の一場面でも切り取ってきたような一枚。点描の燈籠が朧げに立っている。興味深いのは上空にうっすうあとした月が見えていること。ひょっとするとあの屏風も夕景なのかもしれない。
「鷹図」(個人蔵・展示終了)
荒々しい波に洗われた岩盤の上に立つ一羽の鷹が堂々と描かれている。筋目による羽の流れる様は美しく、キリリと横を見やるその表情は凛々しい。また、ともすると即興的に描いたように見える波だが、良く目をこらすと、年輪を描くように一面一面、細い線が重なっていることが分かった。巧い。
「羅漢像」(個人蔵・展示終了)
モデルが大典である可能性が高いという羅漢像。そのリアルな表情を見ると、若冲が人物画も手中に収めていたことが良く分かる。目を細め、にやりと笑う姿は真に迫っていた。
(左)
(右)
「象と鯨図屏風」(1795年・MIHO MUSEUM・全期間展示)
本展の目玉。2008年夏に発見された六曲一双の新出屏風を一括して展示。落款からして若冲が80歳の時に描かれた。右隻には牙を剥き出しにしながら、鼻を高らかに伸ばした象、そして左隻には波間を進む鯨の姿が描かれている。まず一見して印象深いのは、中央の空間が広いせいか、意外と静かな印象を与える作品であるということ。象はあたかも正座でもするかのように大人しく座り、後ろの崖から伸びる牡丹に祝福もされてくつろいでいるように見えた。また鯨はその半分以上が海の下に沈んでいるからか、前へ進むというよりも、さらに潜り込んで消えていくようなイメージを感じた。細部の線は晩年の作ということもあるのだろうか。象の鼻の部分などは、後から塗り直したのかと思うほどに緩い描線で象られている。むしろ崖や波の線の方が冴えていた。ただ波は山の稜線のように起伏があって力強い。さらに鯨の周囲の波しぶきも荒々しかった。なお本展ではこの作にあわせ、関連する当時の鯨に関する資料、また絵画なども紹介されている。若冲が鯨のイメージをどう摂取していたのかについても知ることが出来た。
「五百羅漢図」(1789年・個人蔵・~11/8)
府中の江戸絵画展でも出ていた「石峰寺図」と同様の形態をとる一枚。昨年に発見された。石峰寺同様、山門の先には彼岸の奇想天外な世界が広がっている。絵の中に入り込むようにして楽しめた。
以上です。東博対決展にも出た「石燈籠図屏風」やプライス氏所蔵の「鳥獣花木図屏風」など、一度見た大作もいくつかありましたが、ともかく何度見ても飽きないような中毒性があるのも若冲画の大きな特徴です。時間の都合で常設を含めて2時間ほどの滞在でしたが、そのうち8割以上の時間は若冲の前にへばりついていました。
残りの会期の出品作については美術館HPの出品リストをご参照下さい。なお私感ながらハイライトは、モザイク画の最も優れた作である「白象群獣図」をはじめ、有名な「百犬図」、またMIHOの所蔵品で名高い蕪村の大作屏風計二点が出る、会期末の12月以降になるような気もします。
MIHOの展覧会はいつもそうかもしれませんが、全400頁近くの分厚い図録も非常に良く出来ています。なお本図録は一冊3000円にて東博のミュージアムショップでも発売中です。名宝展の際にでも是非手に取ってご覧下さい。
ちなみに若冲展と言えばもう一つ、来年に静岡県立美術館と千葉市美術館を巡回する「若冲アナザーワールド」展ですが、先日お問い合わせしたところ、必ずしもMIHO展の巡回ではないものの、ともに「象と鯨図屏風」は出品の方向で話が進んでいるそうです。またモザイク関連では静岡所蔵の「樹花鳥獣図屏風」も期間を区切って展示(予定)されるとのことでした。さらにちらし表紙にも掲載された「白象群獣図」の出品もほぼ確定として良いのではないでしょうか。ただし如何せん会期は来年の4月です。それまで「象と鯨」を待ちきれるかどうかは難しいところかもしれません。(実際、私は待ちきれませんでした。)
なお「若冲アナザーワールド」の情報はTakさんの記事が参考になります。
「伊藤若冲―アナザーワールド―」静岡、千葉で開催!!@弐代目・青い日記帳
最後に有名な美術館であるので今更に紹介するまでもないかもしれませんが、MIHOミュージアムへの鉄道、もしくはバスでのアクセスについて触れておきます。(大半の方はマイカーを利用されているようでした。)
・JR石山駅へは京都駅より琵琶湖線で15分程度。新快速の停車駅なので毎時6~7本とアクセスに問題なし。
・石山駅からは美術館へは帝産湖南交通の路線バス(前向きシートタイプ)を利用。ミホミュージアム行き。所要は約50分。運賃は片道800円。本数が少ないためバス時刻表の確認は必須。
・バスは半分が住農混在地域の生活道路、また半分が狭い山道(悪路)を走行する。よってバス酔いする方は酔い止め薬が必要な可能性も。
・18日の日曜日、行きは午前11:10発、帰りは15時ちょうどの便を利用したが、行きはほぼ満席、帰りは満席の上に立ち客数名といった状況だった。なるべく早めにバス停へ行っておいた方が良さそう。
・美術館バス停からは館内専用の電気自動車でエントランスまで移動する。歩くことも可能だが5分以上はかかった。
ちょうど琵琶湖と信楽の間に連なる山の、ほぼ頂上付近にそびえる壮大なスケールの美術館でした。館内の展示室自体はそれほどでもありませんが、広々としたレストランやカフェなども併設されており、半日はゆうに楽しめるのではないでしょうか。また辺りは若干、紅葉が始まっていました。これから一層、美しい季節となりそうです。
なお話題の展覧会ではありますが、この立地もあってか、鑑賞に支障が出るほどの混雑は皆無でした。ただ館内はかなり暗めです。しばらく目を慣らすまでに時間がかかりました。
山深き信楽の地で若冲がお待ちかねです。ロングランの展覧会です。12月13日まで開催されています。
「若冲ワンダーランド」
9/1-12/13
新発見の「象と鯨図屏風」をはじめとした国内外の若冲の作品を展観します。MIHO MUSEUMで開催中の「若冲ワンダーランド」へ行ってきました。
まずは本展の概要を挙げてみます。
・新出の「象と鯨図屏風」の他、とりわけ個人蔵の作品を中心に、若冲の絵画を全6期の会期に分けて約130点ほど展示する。
・若冲作の出品は各会期毎に約40点。(「象と鯨図屏風」は全期間展示。必ずしも全ての作品が入れ替わるわけではない。)他、蕪村、応挙、大雅らの作品もあわせて数点ほど紹介。
・これまでに知られなかった若冲の新たな姿を提示する。関連資料の他、豪華図録の巻頭論文は極めて重要。若冲は「絵画オタク」ではなかった。
上述の通り詳細な全6期制とのことで、各会期毎の若冲作はそれほど多いわけではありませんが、「象と鯨」はもとより、あまり見慣れない個人蔵の作品、とりわけ露出の比較的少ない水墨画など、かなり新鮮味のある若冲展という印象を受けました。
続いて本展の流れです。随所に館長の辻氏のカラーが伺える、計七章立ての構成でした。
第一章「プロフィール」
第二章「版画」
第三章「動植綵絵への道 - 法度の中に新意を出す」
第四章「若冲ワンダーランド - リアリティーとユーモアのカクテル」
第五章「若冲をめぐる人々」
第六章「象と鯨図屏風」
第七章「ワンダーランドの共住者たち」
第八章「面白き物好き」
もう間もなく会期は、27日からの第4期(11月8日まで)に突入しますが、以下に私の観た3期中の作品の感想を並べてみることにしました。お付き合い下されば幸いです。
「双鶏図」(1795年・個人蔵・全期間展示)
お馴染みのヒモのような尾っぽを振り上げた鶏が描かれている。ふと見返る様子も若冲画ならではの躍動感に溢れていた。
「布袋唐子図」(個人蔵・展示終了)
失礼ながらもまるで饅頭のような身体と顔した布袋が登場。頭の上に乗る子どもがまた楽し気な様子だった。また一見、大まかなタッチで描かれているのかと思いきや、布袋の髭の部分など、意外にも細かい筆さばきを確認出来るのも興味深い。
「牡丹・百合図」(慈照寺・~11/1)
前もって図版で見ていてどうしても実物に接したくなった作品。双幅の大画面に、南宋の花鳥画を連想させるような中国風の艶やかな牡丹と百合が群れている。花は毒気を放つようにむせ返っていた。またそれを支える岩の『覗き穴』がいかにも若冲らしい。さらに茎に近い部分は緑を、また先端に向けて白く絵具を配した百合の色のグラデーションも絶品だった。若冲の描く花には何とも言えない妖しさが感じられる。逆さカタツムリも必見。
「鸚鵡図」(千葉市美術館・~11/8)
千葉市美ご自慢の一枚。いわゆる裏彩色の効果なのだろうか。羽の部分はうっすらと黄金色に輝いていた。また羽の部分の立体感と、飾りの部分の平面的な描写の対比も面白い。また嘴の箇所は如何なる技法を用いているのだろうか。墨を思わせる黒に白い絵具が滲むようにして広がっていた。
「隠元豆図」(個人蔵・~11/8)
隠元豆が上から垂れ下がっている。やや鋭角的にのびる蔓や葉に飛び乗った昆虫などはいつもの若冲風だが、興味深いのは蔓の線を境にして背景を塗り分けていること。その色面の差異によって絶妙な遠近感が出ているような気がした。
「乗興舟」(京都国立博物館・全期間展示)
京博版「乗興舟」の一部分(約2m)を展示。一本の河に沿って連なる茂みや家々は旅情を誘う。ただやはりこれはかつて大倉で観たときのように全巻を楽しみたい。
「花鳥版画」(1771年・平木浮世絵財団・~11/1)
現在6点しか確認されていないという花鳥版画の一枚を紹介。そそり立つ茎、そして穴のあいた葉など、一見大人しいようでも若冲画の要素がいくつも盛り込まれていた。色も美しい。
「松に鸚鵡図」(個人蔵・展示終了)
上に挙げた「鸚鵡図」よりもさらに絵具の塗りも厚い、非常に重厚感のある鸚鵡が木にとまっている。松の下の白い流れは滝の水流だろうか。細部、特に羽の描写に凝った鸚鵡の姿はまるで置物のようだが、その脚が非常にリアルなのには驚いた。鳥を観察し続けた若冲ならではの表現ではないだろうか。
「雪中遊禽図」(個人蔵・~11/8)
まるで水飴のように粘性を帯びた雪が木々に降り積もる。ともかく目に飛び込んでくるのは、上に同じく置物のような小禽の描写よりも、その眩しいほどに白い雪、揺れる花々の輝くような彩色の鮮やかさ。花のピンク色はそれこそ宝石の表面のようにキラキラと光っていた。また葉の靡く様も非常に生々しい。あたかも自ら意思を持って手を広げるように葉を伸ばしていた。
「葡萄図」(1759年・個人蔵・~11/15)
くるくるととぐろをまいたツタがリズミカルに跳ねる葡萄が描かれている。ただしここでの主役は実ではなくむしろ葉の方。まるで後ろから光を当てたように透き通っていた。
「寒山拾得・楼閣山水図」(個人蔵・~11/1)
大典の賛も書き入れられた三幅の水墨画。和やかに寄り添う二人の様子はどこか卑猥ですらある。また左右に切り立つ岩盤は何やら暗示的。この背景には一体何があるのだろうか。色々と詮索したくなる作品でもあった。
「鳥獣花木図屏風」(プライスコレクション・~11/8)
東博のプライス展でも話題となった升目描の大作がMIHOに出品中。果たしてこれが若冲の真筆なのかについては賛否両論あるところだが、一つのデザインとして見ると非常に華やかな作品であることは間違いない。線が全く若冲ではないが、その分、例えば子どもたちがどこからかモチーフを切り抜いて、ぺたぺたと折り紙でも貼付けたような味わいが感じられて可愛らしかった。久しぶりに接すると意外と良く見えたのが自分でも不思議。
「蟹・牡丹図衝立」(個人蔵・全期間展示)
衝立ての片側にカニが、またもう一方には牡丹の描かれた水墨の作品。脚には動植綵絵の「群魚図・蛸」ならぬ小カニを従えた親カニが大きく描かれている。それにしてもアッと驚かされるのは反対の牡丹ではないだろうか。金砂子の散る華やかな空間には、まるでそこへ消えてしまうかのようにもがき苦しむ牡丹が伸びている。その奇異な形態は曾我蕭白の「群仙図屏風」のよう。これほどシュールな牡丹を他で見たことはない。
「石燈籠図屏風」(京都国立博物館・展示終了)
対決展でも印象に深かった大作の屏風。靄に包まれた湖岸の景色を、点描によって示された燈籠ととも描く。一体、この景色が朝なのか夕なのかは良く分からないが、後述する「燈籠図」がそのヒントになるような気もした。湿り気を帯びた石のひんやりとした質感は、細かな点の集合によって見事に表現されている。その静かな景色と荒々しい木の対比的な描写がまた面白い。枝をぶんぶん振り回しているかのようだ。
「雨龍図」(個人蔵・~11/8)
S字型の龍が筋目描の技法で表現されている。それにしてもこのおどけた表情は何とも微笑ましい。白目を上に向け、口をあんぐり開け、それこそ「いないいないばあ」でもするような仕草をしていた。思わず笑ってしまう。
「蘇鉄図」(個人蔵・~11/1)
巨大な蘇鉄を描いている。幹を筋目にて、また葉を薄い墨にて示す筆さばきが巧い。石燈籠の石の点描ではないが、若冲は対象の質感にもかなり注意して絵を描いていたのではないだろうか。何気ない描写だが、クローズアップされた構図にもよるのか、非常に力強い作品でもあった。
「燈籠図」(個人蔵・~11/8)
上の石燈籠屏風の一場面でも切り取ってきたような一枚。点描の燈籠が朧げに立っている。興味深いのは上空にうっすうあとした月が見えていること。ひょっとするとあの屏風も夕景なのかもしれない。
「鷹図」(個人蔵・展示終了)
荒々しい波に洗われた岩盤の上に立つ一羽の鷹が堂々と描かれている。筋目による羽の流れる様は美しく、キリリと横を見やるその表情は凛々しい。また、ともすると即興的に描いたように見える波だが、良く目をこらすと、年輪を描くように一面一面、細い線が重なっていることが分かった。巧い。
「羅漢像」(個人蔵・展示終了)
モデルが大典である可能性が高いという羅漢像。そのリアルな表情を見ると、若冲が人物画も手中に収めていたことが良く分かる。目を細め、にやりと笑う姿は真に迫っていた。
(左)
(右)
「象と鯨図屏風」(1795年・MIHO MUSEUM・全期間展示)
本展の目玉。2008年夏に発見された六曲一双の新出屏風を一括して展示。落款からして若冲が80歳の時に描かれた。右隻には牙を剥き出しにしながら、鼻を高らかに伸ばした象、そして左隻には波間を進む鯨の姿が描かれている。まず一見して印象深いのは、中央の空間が広いせいか、意外と静かな印象を与える作品であるということ。象はあたかも正座でもするかのように大人しく座り、後ろの崖から伸びる牡丹に祝福もされてくつろいでいるように見えた。また鯨はその半分以上が海の下に沈んでいるからか、前へ進むというよりも、さらに潜り込んで消えていくようなイメージを感じた。細部の線は晩年の作ということもあるのだろうか。象の鼻の部分などは、後から塗り直したのかと思うほどに緩い描線で象られている。むしろ崖や波の線の方が冴えていた。ただ波は山の稜線のように起伏があって力強い。さらに鯨の周囲の波しぶきも荒々しかった。なお本展ではこの作にあわせ、関連する当時の鯨に関する資料、また絵画なども紹介されている。若冲が鯨のイメージをどう摂取していたのかについても知ることが出来た。
「五百羅漢図」(1789年・個人蔵・~11/8)
府中の江戸絵画展でも出ていた「石峰寺図」と同様の形態をとる一枚。昨年に発見された。石峰寺同様、山門の先には彼岸の奇想天外な世界が広がっている。絵の中に入り込むようにして楽しめた。
以上です。東博対決展にも出た「石燈籠図屏風」やプライス氏所蔵の「鳥獣花木図屏風」など、一度見た大作もいくつかありましたが、ともかく何度見ても飽きないような中毒性があるのも若冲画の大きな特徴です。時間の都合で常設を含めて2時間ほどの滞在でしたが、そのうち8割以上の時間は若冲の前にへばりついていました。
残りの会期の出品作については美術館HPの出品リストをご参照下さい。なお私感ながらハイライトは、モザイク画の最も優れた作である「白象群獣図」をはじめ、有名な「百犬図」、またMIHOの所蔵品で名高い蕪村の大作屏風計二点が出る、会期末の12月以降になるような気もします。
MIHOの展覧会はいつもそうかもしれませんが、全400頁近くの分厚い図録も非常に良く出来ています。なお本図録は一冊3000円にて東博のミュージアムショップでも発売中です。名宝展の際にでも是非手に取ってご覧下さい。
ちなみに若冲展と言えばもう一つ、来年に静岡県立美術館と千葉市美術館を巡回する「若冲アナザーワールド」展ですが、先日お問い合わせしたところ、必ずしもMIHO展の巡回ではないものの、ともに「象と鯨図屏風」は出品の方向で話が進んでいるそうです。またモザイク関連では静岡所蔵の「樹花鳥獣図屏風」も期間を区切って展示(予定)されるとのことでした。さらにちらし表紙にも掲載された「白象群獣図」の出品もほぼ確定として良いのではないでしょうか。ただし如何せん会期は来年の4月です。それまで「象と鯨」を待ちきれるかどうかは難しいところかもしれません。(実際、私は待ちきれませんでした。)
なお「若冲アナザーワールド」の情報はTakさんの記事が参考になります。
「伊藤若冲―アナザーワールド―」静岡、千葉で開催!!@弐代目・青い日記帳
最後に有名な美術館であるので今更に紹介するまでもないかもしれませんが、MIHOミュージアムへの鉄道、もしくはバスでのアクセスについて触れておきます。(大半の方はマイカーを利用されているようでした。)
・JR石山駅へは京都駅より琵琶湖線で15分程度。新快速の停車駅なので毎時6~7本とアクセスに問題なし。
・石山駅からは美術館へは帝産湖南交通の路線バス(前向きシートタイプ)を利用。ミホミュージアム行き。所要は約50分。運賃は片道800円。本数が少ないためバス時刻表の確認は必須。
・バスは半分が住農混在地域の生活道路、また半分が狭い山道(悪路)を走行する。よってバス酔いする方は酔い止め薬が必要な可能性も。
・18日の日曜日、行きは午前11:10発、帰りは15時ちょうどの便を利用したが、行きはほぼ満席、帰りは満席の上に立ち客数名といった状況だった。なるべく早めにバス停へ行っておいた方が良さそう。
・美術館バス停からは館内専用の電気自動車でエントランスまで移動する。歩くことも可能だが5分以上はかかった。
ちょうど琵琶湖と信楽の間に連なる山の、ほぼ頂上付近にそびえる壮大なスケールの美術館でした。館内の展示室自体はそれほどでもありませんが、広々としたレストランやカフェなども併設されており、半日はゆうに楽しめるのではないでしょうか。また辺りは若干、紅葉が始まっていました。これから一層、美しい季節となりそうです。
なお話題の展覧会ではありますが、この立地もあってか、鑑賞に支障が出るほどの混雑は皆無でした。ただ館内はかなり暗めです。しばらく目を慣らすまでに時間がかかりました。
山深き信楽の地で若冲がお待ちかねです。ロングランの展覧会です。12月13日まで開催されています。
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「アイ・ウェイウェイ展 - 何に因って?」 森美術館
森美術館(港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階)
「アイ・ウェイウェイ展 - 何に因って?」
7/25-11/8
森美術館で開催中の「アイ・ウェイウェイ展 - 何に因って?」へ行ってきました。
まずはアイ・ウェイウェイ(艾未未)氏のプロフィールをチラシから引用します。(一部改変。)
アイ・ウェイウェイは、現代中国を代表するクリエイターのひとりです。美術、建築、デザイン、出版、展覧会企画など多岐にわたる分野で活躍していますが、とくに2008年の北京オリンピックスタジアム雪景におけるヘルツォーク&ド・ムーロンとのコラボレーションによって国際的な評価を高めました。
クリエイターという肩書きがやや謎めいてもいますが、とりあえず端的に今回の展示の内容を表してしまうとすれば、彼の制作の中心でもある立体彫刻、及びインスタレーションを紹介する回顧展と言うことが出来るのではないでしょうか。森美の広々としたスペースに、アイ・ウェイウェイの比較的大きなサイズの作品群が全26点ほど紹介されていました。
なお周知の通り、本展示は写真の撮影とその利用が可能です。賛否もあるようですが、今更ながら本エントリでも私の撮った会場の写真をいくつか載せてみました。
作家:アイ・ウェイウェイ
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示-非営利-改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。
作家:アイ・ウェイウェイ
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示-非営利-改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。
作家:アイ・ウェイウェイ
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作家:アイ・ウェイウェイ
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作家:アイ・ウェイウェイ
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作家:アイ・ウェイウェイ
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作家:アイ・ウェイウェイ
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示-非営利-改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。
率直なところ、興味深かったのは作品の外形よりも、作家による多様な素材へのこだわりでした。紫檀や伝統的な組木の技法、さらに茶葉を用いたものなどは、中国の伝統的な文化の残滓を分かりやすい形で伝えることに成功しています。また取り壊された寺院の柱までを素材とする姿勢には、良い言葉で言えば彼の国の近代化の状況を如実に示すことにも繋がっていました。
なお撮影に関してはマナーの話もあろうかと思いますが、今日の日没後は会場自体が閑散としていたため、何ら違和感を覚えることなく見て回ることが出来ました。とは言え展覧会は、作品自体の魅力云々の話を除けば、その見せ方にもメリハリのない、極めて大味な内容だったように思えました。
突如ココログでスタートした森美ブログにも、アイ・ウェイウェイのメッセージが載せられていました。
アイ・ウェイウェイ アーティスト・メッセージ@森美術館公式ブログ
11月8日までの開催です。
「アイ・ウェイウェイ展 - 何に因って?」
7/25-11/8
森美術館で開催中の「アイ・ウェイウェイ展 - 何に因って?」へ行ってきました。
まずはアイ・ウェイウェイ(艾未未)氏のプロフィールをチラシから引用します。(一部改変。)
アイ・ウェイウェイは、現代中国を代表するクリエイターのひとりです。美術、建築、デザイン、出版、展覧会企画など多岐にわたる分野で活躍していますが、とくに2008年の北京オリンピックスタジアム雪景におけるヘルツォーク&ド・ムーロンとのコラボレーションによって国際的な評価を高めました。
クリエイターという肩書きがやや謎めいてもいますが、とりあえず端的に今回の展示の内容を表してしまうとすれば、彼の制作の中心でもある立体彫刻、及びインスタレーションを紹介する回顧展と言うことが出来るのではないでしょうか。森美の広々としたスペースに、アイ・ウェイウェイの比較的大きなサイズの作品群が全26点ほど紹介されていました。
なお周知の通り、本展示は写真の撮影とその利用が可能です。賛否もあるようですが、今更ながら本エントリでも私の撮った会場の写真をいくつか載せてみました。
作家:アイ・ウェイウェイ
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示-非営利-改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。
作家:アイ・ウェイウェイ
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率直なところ、興味深かったのは作品の外形よりも、作家による多様な素材へのこだわりでした。紫檀や伝統的な組木の技法、さらに茶葉を用いたものなどは、中国の伝統的な文化の残滓を分かりやすい形で伝えることに成功しています。また取り壊された寺院の柱までを素材とする姿勢には、良い言葉で言えば彼の国の近代化の状況を如実に示すことにも繋がっていました。
なお撮影に関してはマナーの話もあろうかと思いますが、今日の日没後は会場自体が閑散としていたため、何ら違和感を覚えることなく見て回ることが出来ました。とは言え展覧会は、作品自体の魅力云々の話を除けば、その見せ方にもメリハリのない、極めて大味な内容だったように思えました。
突如ココログでスタートした森美ブログにも、アイ・ウェイウェイのメッセージが載せられていました。
アイ・ウェイウェイ アーティスト・メッセージ@森美術館公式ブログ
11月8日までの開催です。
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「静寂と色彩:月光のアンフラマンス」 川村記念美術館(プレビュー)
川村記念美術館(千葉県佐倉市坂戸631)
「静寂と色彩:月光のアンフラマンス」
2009/10/10-2010/1/11
マルセル・デュシャンの考案した「アンフラマンス」という造語をキーワードに、中世の仏画から現代美術までの魅力を探ります。川村記念美術館で開催中の「静寂と色彩:月光のアンフラマンス」へ行ってきました。
なお今回はプレス内覧会に参加してきました。まずは展示に先立って行われた同館学芸員の鈴木尊志氏のレクチャーをまとめたいと思います。
[月光とはなにか。]
・「月」とはヨーロッパ・ロマン主義にも代表されるような象徴的な要素も強いが、その一方でのスピリチュアリズム的な癒しの概念を見る面も少なくはない。今回はそうした月の概念を、ロマン主義とともにスピリチュアリズム的な東洋的精神に近づけてみる試みを行っている。
・月と東洋と西洋美術、そして現代美術との関係について考える。月という概念に、各々の美術、とりわけ現代美術は一体何を問いかけているのだろうか。
[アンフラマンスの意味。]
・アンフラマンスとは、極薄とも超薄とも訳されるマルセル・デュシャンの述べた造語である。また状態の移ろい、移行の間で生まれる様々な境界域を指す言葉でもある。
・さらにデュシャンは人が座っていた席を立った後に残る気配や温もりもアンフラマンスと称した。
・彼は平面から立体への境界域をアンフラマンスと呼んだが、逆に三次元から二次元へ移す絵画制作ともアンフラマンスと言えるものである。
[月とアンフラマンス、そして美術との関係について。]
・実は太陽の光がなくては見ることの出来ない月光(=それ自体は光らない。)とは、一種の光と闇とのズレや移ろいを指し示すアンフラマンスでもある。
・月の静寂な精神性を取り込み、そこに西洋と東洋の思想の差異を見ながら、一方でバックボーンとしているであろうアンフラマンス的な境界域(デュシャンはそこに芸術の源泉があると考えた。)にも注視した上にて美術品を展観していく。
ともかくは聞き慣れない「アンフラマンス」という言葉からして謎めいたものがありますが、この展覧会を率直に申し上げると、その企画の意図を理解しようとする点において極めて難解だと言わざるを得ません。例えば一例として順路冒頭には「当麻曼荼羅図」(鎌倉~南北朝時代)が掲げられていますが、その隣には複製の「マルセル・デュシャン・ノート」(1980)が何ら詳細な説明もなく半ば唐突に登場しています。もちろん何でも細かいキャプションがあれば良いと言うものではありませんが、コンセプチャルな構成であるだけに、もう一歩、イメージを補完するテキストがあればと思えてなりませんでした。
しかしながら決して展覧会に見るべき点がないというわけではありません。以下、上記のレクチャーの内容を踏まえ、私の思う展示のポイントを3つのキーワードからピックアップしてみました。ご参考いただければ幸いです。
【スイスのスピリチュアリスト、エンマ・クンツ(1892-1963)のドローイング(日本初公開)】
スイスの小村に生まれ、振り子を使って水脈や鉱物など目の前にあいものを探す技法(美術館資料より引用。)である「ダウジング」と自然薬草投与によって様々な患者を治癒したヒーラー、エンマ・クンツの幾何学面的ドローイング17点が日本ではじめて公開されている。
クンツは近代医学に見放された患者をスピリチュア的方法で治癒し、その際に直感的なインスピレーションにて方眼紙上に一種の患者のカルテを描いた。
いわゆるアウトサーダーアートとしても括られる作品だが、あたかもエンブレムのような独特な抽象紋様は他にはない独特な創造性を知ることが出来る。資料展示もあり。
【色彩で楽しむ現代アート】
本展覧会はデュシャンと曼荼羅という凄まじい組み合わせで始まるが、メイン会場にずらりと並ぶ作品の殆どはいわゆる現代アートの絵画である。
そもそも川村はロスコやニューマンをはじめ、名高いアメリカ抽象絵画でも「色」に魅力のある作品が多い。この展示でも東西の現代作家による各々の色の呼応した美しい空間を味わうことが出来る。
特にインパクトがあるのは板に油彩と蜜蝋を混ぜ合わせてあたかも果物の内部とも、人体の組織の断面図とも言えるような色面をつくるホセ・マリア・シシリアのペインティング。
また出品数が最も多いのはリヒターの弟子でもある渡辺あつこの油彩、全20点。いつか見た何気ない街角の景色や室内の光景が、既視感を誘いながらも、どこか物悲しい様にて描かれている。
昨年の同館でも見たルイスのようなステイニングの技法によって美しい色彩のカーテンを生み出すのは、VOCA賞にも出品のあった小池隆英。薄く広がる絵具の滲みは、天井からの自然光に祝福されている。
【ターナーと応挙(巴水)で見る西洋と東洋の風景】
今回の第一部は常設の日本画展示室。そこには前述の曼荼羅や、その崇高性への希求という点で同質的でもある橋本平八の仏像的彫像をはじめ、ターナーや応挙のエッチングや屏風が展示されている。
モノクロームの世界の中に自然そのものを超越した崇高的なものを見出したターナーの作品と、その一方でめがね絵とも呼ばれる技法を駆使し、西洋的遠近法をも意識して風景を作り出した応挙の「秋月雪峡図」(11月29日まで展示)が対面に並んだ。
そもそも狩野派に師事した応挙は、ターナーにも通じる西洋のピクチャリズムを学ぶことによって、西洋的なリアルな風景描写(例えば岩の描き方などはターナーの作と似ている。)に、東洋的な自然への無常観を取り込むことに成功した。ターナーと応挙を類似的な視点で捉えるのは確かに面白い。(応挙の後は巴水が10点出る予定。月明かりも美しい巴水の藍色の静寂の夜景が、ターナーとどう呼応するかにも注目すべきものがある。)
なお出品の日本画数点に関しては展示替えが予定されています。(仏画は出光美術館蔵。応挙と巴水は千葉市美術館蔵。)
筆者不詳「当麻曼荼羅図」 10/10(土)-11/1(日)
筆者不詳「地蔵菩薩独尊来迎図」 11/3(火)-11/29(日)
筆者不詳「十一面観音菩薩図」 12/1(火)-2010/1/11(月・祝)
円山応挙「秋月雪峡図」 10/10(土)-11/29(日)
川瀬巴水「旅みやげ」他計10点 12/1(火)-2010/1/11(月・祝)
屋外にはカラフルな吹きガラスのオブジェ、増田洋美の「PLAY THE GLASS」が草木や芝生と戯れ、また陽光を浴びて美しい光を放っていました。庭園も自然にも囲まれた川村記念美術館ならでは演出です。
少し先のことにはなりますが、クリスマスシーズンには「クリスマス市」と題し、庭園ギャラリーにてドイツのクリスマスにちなんだ装飾品の展示、もしくはオーナメントや焼き菓子の販売などを行う企画があるそうです。ちょうどその時期は好きな巴水版画の展示期間とも重なるので、出来ればまた訪問したいと思いました。
なお展示コンセプトの理解まで突っ込んで見るには、上記のレクチャーをして下さった学芸員の鈴木氏のギャラリートークにあたるのがベストかもしれません。以下、スケジュールを公式HPより転載しておきます。
10月25日(日)/11月8日(日)/11月22日(日)/12月20日(日)
各日14:00-15:00。先着60名。
なおエントランスの映像作品もお見逃しなきようにご注意下さい。入口受付からちょうど正面の頭上を見据えると、プロジェクター投影による抽象的でかつ教会を思わせるようなイメージが広がっています。
ロングランの展覧会です。来年1月11日まで開催されています。
注)写真の撮影と掲載は主催者の許可を得ています。
「静寂と色彩:月光のアンフラマンス」
2009/10/10-2010/1/11
マルセル・デュシャンの考案した「アンフラマンス」という造語をキーワードに、中世の仏画から現代美術までの魅力を探ります。川村記念美術館で開催中の「静寂と色彩:月光のアンフラマンス」へ行ってきました。
なお今回はプレス内覧会に参加してきました。まずは展示に先立って行われた同館学芸員の鈴木尊志氏のレクチャーをまとめたいと思います。
[月光とはなにか。]
・「月」とはヨーロッパ・ロマン主義にも代表されるような象徴的な要素も強いが、その一方でのスピリチュアリズム的な癒しの概念を見る面も少なくはない。今回はそうした月の概念を、ロマン主義とともにスピリチュアリズム的な東洋的精神に近づけてみる試みを行っている。
・月と東洋と西洋美術、そして現代美術との関係について考える。月という概念に、各々の美術、とりわけ現代美術は一体何を問いかけているのだろうか。
[アンフラマンスの意味。]
・アンフラマンスとは、極薄とも超薄とも訳されるマルセル・デュシャンの述べた造語である。また状態の移ろい、移行の間で生まれる様々な境界域を指す言葉でもある。
・さらにデュシャンは人が座っていた席を立った後に残る気配や温もりもアンフラマンスと称した。
・彼は平面から立体への境界域をアンフラマンスと呼んだが、逆に三次元から二次元へ移す絵画制作ともアンフラマンスと言えるものである。
[月とアンフラマンス、そして美術との関係について。]
・実は太陽の光がなくては見ることの出来ない月光(=それ自体は光らない。)とは、一種の光と闇とのズレや移ろいを指し示すアンフラマンスでもある。
・月の静寂な精神性を取り込み、そこに西洋と東洋の思想の差異を見ながら、一方でバックボーンとしているであろうアンフラマンス的な境界域(デュシャンはそこに芸術の源泉があると考えた。)にも注視した上にて美術品を展観していく。
ともかくは聞き慣れない「アンフラマンス」という言葉からして謎めいたものがありますが、この展覧会を率直に申し上げると、その企画の意図を理解しようとする点において極めて難解だと言わざるを得ません。例えば一例として順路冒頭には「当麻曼荼羅図」(鎌倉~南北朝時代)が掲げられていますが、その隣には複製の「マルセル・デュシャン・ノート」(1980)が何ら詳細な説明もなく半ば唐突に登場しています。もちろん何でも細かいキャプションがあれば良いと言うものではありませんが、コンセプチャルな構成であるだけに、もう一歩、イメージを補完するテキストがあればと思えてなりませんでした。
しかしながら決して展覧会に見るべき点がないというわけではありません。以下、上記のレクチャーの内容を踏まえ、私の思う展示のポイントを3つのキーワードからピックアップしてみました。ご参考いただければ幸いです。
【スイスのスピリチュアリスト、エンマ・クンツ(1892-1963)のドローイング(日本初公開)】
スイスの小村に生まれ、振り子を使って水脈や鉱物など目の前にあいものを探す技法(美術館資料より引用。)である「ダウジング」と自然薬草投与によって様々な患者を治癒したヒーラー、エンマ・クンツの幾何学面的ドローイング17点が日本ではじめて公開されている。
クンツは近代医学に見放された患者をスピリチュア的方法で治癒し、その際に直感的なインスピレーションにて方眼紙上に一種の患者のカルテを描いた。
いわゆるアウトサーダーアートとしても括られる作品だが、あたかもエンブレムのような独特な抽象紋様は他にはない独特な創造性を知ることが出来る。資料展示もあり。
【色彩で楽しむ現代アート】
本展覧会はデュシャンと曼荼羅という凄まじい組み合わせで始まるが、メイン会場にずらりと並ぶ作品の殆どはいわゆる現代アートの絵画である。
そもそも川村はロスコやニューマンをはじめ、名高いアメリカ抽象絵画でも「色」に魅力のある作品が多い。この展示でも東西の現代作家による各々の色の呼応した美しい空間を味わうことが出来る。
特にインパクトがあるのは板に油彩と蜜蝋を混ぜ合わせてあたかも果物の内部とも、人体の組織の断面図とも言えるような色面をつくるホセ・マリア・シシリアのペインティング。
また出品数が最も多いのはリヒターの弟子でもある渡辺あつこの油彩、全20点。いつか見た何気ない街角の景色や室内の光景が、既視感を誘いながらも、どこか物悲しい様にて描かれている。
昨年の同館でも見たルイスのようなステイニングの技法によって美しい色彩のカーテンを生み出すのは、VOCA賞にも出品のあった小池隆英。薄く広がる絵具の滲みは、天井からの自然光に祝福されている。
【ターナーと応挙(巴水)で見る西洋と東洋の風景】
今回の第一部は常設の日本画展示室。そこには前述の曼荼羅や、その崇高性への希求という点で同質的でもある橋本平八の仏像的彫像をはじめ、ターナーや応挙のエッチングや屏風が展示されている。
モノクロームの世界の中に自然そのものを超越した崇高的なものを見出したターナーの作品と、その一方でめがね絵とも呼ばれる技法を駆使し、西洋的遠近法をも意識して風景を作り出した応挙の「秋月雪峡図」(11月29日まで展示)が対面に並んだ。
そもそも狩野派に師事した応挙は、ターナーにも通じる西洋のピクチャリズムを学ぶことによって、西洋的なリアルな風景描写(例えば岩の描き方などはターナーの作と似ている。)に、東洋的な自然への無常観を取り込むことに成功した。ターナーと応挙を類似的な視点で捉えるのは確かに面白い。(応挙の後は巴水が10点出る予定。月明かりも美しい巴水の藍色の静寂の夜景が、ターナーとどう呼応するかにも注目すべきものがある。)
なお出品の日本画数点に関しては展示替えが予定されています。(仏画は出光美術館蔵。応挙と巴水は千葉市美術館蔵。)
筆者不詳「当麻曼荼羅図」 10/10(土)-11/1(日)
筆者不詳「地蔵菩薩独尊来迎図」 11/3(火)-11/29(日)
筆者不詳「十一面観音菩薩図」 12/1(火)-2010/1/11(月・祝)
円山応挙「秋月雪峡図」 10/10(土)-11/29(日)
川瀬巴水「旅みやげ」他計10点 12/1(火)-2010/1/11(月・祝)
屋外にはカラフルな吹きガラスのオブジェ、増田洋美の「PLAY THE GLASS」が草木や芝生と戯れ、また陽光を浴びて美しい光を放っていました。庭園も自然にも囲まれた川村記念美術館ならでは演出です。
少し先のことにはなりますが、クリスマスシーズンには「クリスマス市」と題し、庭園ギャラリーにてドイツのクリスマスにちなんだ装飾品の展示、もしくはオーナメントや焼き菓子の販売などを行う企画があるそうです。ちょうどその時期は好きな巴水版画の展示期間とも重なるので、出来ればまた訪問したいと思いました。
なお展示コンセプトの理解まで突っ込んで見るには、上記のレクチャーをして下さった学芸員の鈴木氏のギャラリートークにあたるのがベストかもしれません。以下、スケジュールを公式HPより転載しておきます。
10月25日(日)/11月8日(日)/11月22日(日)/12月20日(日)
各日14:00-15:00。先着60名。
なおエントランスの映像作品もお見逃しなきようにご注意下さい。入口受付からちょうど正面の頭上を見据えると、プロジェクター投影による抽象的でかつ教会を思わせるようなイメージが広がっています。
ロングランの展覧会です。来年1月11日まで開催されています。
注)写真の撮影と掲載は主催者の許可を得ています。
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「足立喜一朗展/宮城勝規展/明月記」 江戸川橋・神楽坂(YUKA CONTEMPORARY他)
新たなギャラリーがいくつかオープンしています。江戸川橋・神楽坂界隈の画廊を廻ってきました。
YUKA CONTEMPORARY(文京区関口1-30-9)
「足立喜一朗 - シャングリラ2」
9/18-10/24
ちょうど椿山荘の庭園から神田川を挟んだ向かい側に新しく出来たギャラリー。ホワイトキューブの中央には、自然の植物に覆われた巨大「芋虫」のような物体が、おそらくは電気仕掛けにてそれこそクネクネと這うようにして動いている。そして目を転じると宙には同じような緑を帯びた球体があり、何と中には生きている小鳥が飼育されていた。「芋虫」もチェーンにつながれ、また鳥もカゴに入っているということで、何かペットに対するメッセージでもこめられているのだろうか。また壁面には同じく植物をイメージしたアクリルや水彩も展示されている。自然とも人工とも言い切れないオブジェの如何とし難い違和感に対し、こちらの平面作品は比較的安心して見られた。
Ohshima Fine Art(新宿区西五軒町3-7 ミナト第三ビル3階)
「宮城勝規 - unknown memories」
9/26-10/24
失礼ながらも見た時はさほど印象に残らなかったものの、後々からその子どもたちのイメージが頭から離れない不思議なポートレート群。アクリルを用いて、日本人とも西洋人とも、また男の子とも女の子ともとれるような子どもたちを簡素なタッチで描いている。くりくりとした黒目がとても印象的。アニメーション的と言うよりも、まるで人形のような出立ちをして様々なポーズをとっていた。奇妙なのは彼ら彼女らの何名かにしっぽがのびていること。にこやかに微笑みながらも、居場所も定まらないような頼りない姿を見ていると、何故か夢二の描く人物画を思い出した。
eitoeiko(新宿区矢来町32-2)
「明月記 Ever Bright Moonlight」
9/26-10/31
神楽坂の閑静な住宅街の中にある、23区内では珍しい一戸建てタイプのギャラリー。つい先月オープンしたばかりの新スペースに、アレックス・ボール、高杉恵、日高進太郎の三名の若手アーティストの作品が並ぶ。まず注目すべきは、それこそオランダ静物画などを連想させる細やかな描写で人物などを小画面に表したアレックス・ボールの油彩。日本に滞在し、美術書の図版からも取り入れられたモチーフは非常にまさに繊細。ベージュ色を基調とした薄塗りの色彩の上でシュールな景色が広がる。また壁面を効果的に用いているのは銅版の日高進太郎。銅版と言いつつも、立体作品と思える様相にて、壁一面に作家の縁の地でもある橋本(相模原)の光景を、まるで地図かジオラマを展開するかのように描いていく。一方の高杉は「2009年・夏・東京」と題した小さな彫像を展示。町ですれ違った人物を顔を粘土で象っている。ガラス瓶との組み合わせが面白かった。なお同ギャラリーは隣接のスペースにカフェもオープンさせるとのこと。神楽坂界隈の新たなアートスポットになる可能性もあり。
(eitoeiko。画廊入口は左奥です。)
高橋コレクションの日比谷への移転などにより、いささか足が遠のいてしまった感もある神楽坂界隈ですが、その跡に入居したOhshima Fine Artをはじめとする新設のギャラリー、それに先日もご紹介した松の湯でのイベントなど、またにわかに目の離せないエリアになってきたのではないでしょうか。ちなみに周知の通り、神楽坂というよりも市ヶ谷になりますが、11月からはミヅマも中目黒から移転してきます。こちらも要注目です。
新スペース開設のお知らせ@ミヅマアートギャラリー
*同地域の主なギャラリー
【江戸川橋】
YUKA CONTEMPORARY(9/18オープン)
【神楽坂・西五軒町】(ミナト第三ビル・旧高橋コレクション)
MORI YU GALLERY TOKYO
Yuka Sasahara Gallery
Ohshima Fine Art(9/26オープン)
【神楽坂・矢来町】
eitoeiko(9/26オープン)
【市ヶ谷】
ミヅマアートギャラリー(11/4オープン予定)
なお上の三軒は少し距離がありますが、徒歩で移動しても問題ありません。ただしやや入り組んだ場所にもあるので、お出かけの際は各リンク先の地図をご参照下さい。
YUKA CONTEMPORARY(文京区関口1-30-9)
「足立喜一朗 - シャングリラ2」
9/18-10/24
ちょうど椿山荘の庭園から神田川を挟んだ向かい側に新しく出来たギャラリー。ホワイトキューブの中央には、自然の植物に覆われた巨大「芋虫」のような物体が、おそらくは電気仕掛けにてそれこそクネクネと這うようにして動いている。そして目を転じると宙には同じような緑を帯びた球体があり、何と中には生きている小鳥が飼育されていた。「芋虫」もチェーンにつながれ、また鳥もカゴに入っているということで、何かペットに対するメッセージでもこめられているのだろうか。また壁面には同じく植物をイメージしたアクリルや水彩も展示されている。自然とも人工とも言い切れないオブジェの如何とし難い違和感に対し、こちらの平面作品は比較的安心して見られた。
Ohshima Fine Art(新宿区西五軒町3-7 ミナト第三ビル3階)
「宮城勝規 - unknown memories」
9/26-10/24
失礼ながらも見た時はさほど印象に残らなかったものの、後々からその子どもたちのイメージが頭から離れない不思議なポートレート群。アクリルを用いて、日本人とも西洋人とも、また男の子とも女の子ともとれるような子どもたちを簡素なタッチで描いている。くりくりとした黒目がとても印象的。アニメーション的と言うよりも、まるで人形のような出立ちをして様々なポーズをとっていた。奇妙なのは彼ら彼女らの何名かにしっぽがのびていること。にこやかに微笑みながらも、居場所も定まらないような頼りない姿を見ていると、何故か夢二の描く人物画を思い出した。
eitoeiko(新宿区矢来町32-2)
「明月記 Ever Bright Moonlight」
9/26-10/31
神楽坂の閑静な住宅街の中にある、23区内では珍しい一戸建てタイプのギャラリー。つい先月オープンしたばかりの新スペースに、アレックス・ボール、高杉恵、日高進太郎の三名の若手アーティストの作品が並ぶ。まず注目すべきは、それこそオランダ静物画などを連想させる細やかな描写で人物などを小画面に表したアレックス・ボールの油彩。日本に滞在し、美術書の図版からも取り入れられたモチーフは非常にまさに繊細。ベージュ色を基調とした薄塗りの色彩の上でシュールな景色が広がる。また壁面を効果的に用いているのは銅版の日高進太郎。銅版と言いつつも、立体作品と思える様相にて、壁一面に作家の縁の地でもある橋本(相模原)の光景を、まるで地図かジオラマを展開するかのように描いていく。一方の高杉は「2009年・夏・東京」と題した小さな彫像を展示。町ですれ違った人物を顔を粘土で象っている。ガラス瓶との組み合わせが面白かった。なお同ギャラリーは隣接のスペースにカフェもオープンさせるとのこと。神楽坂界隈の新たなアートスポットになる可能性もあり。
(eitoeiko。画廊入口は左奥です。)
高橋コレクションの日比谷への移転などにより、いささか足が遠のいてしまった感もある神楽坂界隈ですが、その跡に入居したOhshima Fine Artをはじめとする新設のギャラリー、それに先日もご紹介した松の湯でのイベントなど、またにわかに目の離せないエリアになってきたのではないでしょうか。ちなみに周知の通り、神楽坂というよりも市ヶ谷になりますが、11月からはミヅマも中目黒から移転してきます。こちらも要注目です。
新スペース開設のお知らせ@ミヅマアートギャラリー
*同地域の主なギャラリー
【江戸川橋】
YUKA CONTEMPORARY(9/18オープン)
【神楽坂・西五軒町】(ミナト第三ビル・旧高橋コレクション)
MORI YU GALLERY TOKYO
Yuka Sasahara Gallery
Ohshima Fine Art(9/26オープン)
【神楽坂・矢来町】
eitoeiko(9/26オープン)
【市ヶ谷】
ミヅマアートギャラリー(11/4オープン予定)
なお上の三軒は少し距離がありますが、徒歩で移動しても問題ありません。ただしやや入り組んだ場所にもあるので、お出かけの際は各リンク先の地図をご参照下さい。
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「TWS-Emerging 122 海谷慶」 TWS本郷
トーキョーワンダーサイト本郷(文京区本郷2-4-16)
「TWS-Emerging 122 海谷慶 Vastness -空々漠々-」
10/3-25
「海の生物が安らぎ息づく珊瑚礁の集合体」(公式HPより引用)を木彫で表現します。トーキョーワンダーサイト本郷で開催中の海谷慶の展示を見てきました。
お世辞にも広いとは言えないTWSの一室の上、ただの一点のオブジェのみで勝負する展示にも関わらず、あれほど長い時間かけて見たのは本当に久しぶりのことでした。フロア中央に突如登場するのは、縦は数mにも及ぶ、確かに一見、珊瑚礁を連想させる巨大な木彫「オアシス」(2009)です。触手はまさに千手観音の指の如く無数に伸び、また何層かに重なる平べったい貝のような面を広げて、あたかも何らかの人造的な建造物を思わせるような景色を見せて繋がっていました。ノミで削られた表面は、それこそ海の波で洗われた岩盤ではないでしょうか。その力強い造形はもとより、作品から発せられる素材の木の匂いは、単に珊瑚というイメージを超え、魂の宿る未知の生き物を連想させるほどにまでのスケールにまで至っています。圧巻でした。
ここにはタイトルの「オアシス」に由来するイメージよりも、一介の魔物と面と向かって対峙しているような緊張感さえ漂っています。抜群の照明効果による作品の「影」はまた、今にもこの生き物が動き出そうとする不穏な気配を生み出していました。
25日の日曜日までの開催です。おすすめします。
「TWS-Emerging 122 海谷慶 Vastness -空々漠々-」
10/3-25
「海の生物が安らぎ息づく珊瑚礁の集合体」(公式HPより引用)を木彫で表現します。トーキョーワンダーサイト本郷で開催中の海谷慶の展示を見てきました。
お世辞にも広いとは言えないTWSの一室の上、ただの一点のオブジェのみで勝負する展示にも関わらず、あれほど長い時間かけて見たのは本当に久しぶりのことでした。フロア中央に突如登場するのは、縦は数mにも及ぶ、確かに一見、珊瑚礁を連想させる巨大な木彫「オアシス」(2009)です。触手はまさに千手観音の指の如く無数に伸び、また何層かに重なる平べったい貝のような面を広げて、あたかも何らかの人造的な建造物を思わせるような景色を見せて繋がっていました。ノミで削られた表面は、それこそ海の波で洗われた岩盤ではないでしょうか。その力強い造形はもとより、作品から発せられる素材の木の匂いは、単に珊瑚というイメージを超え、魂の宿る未知の生き物を連想させるほどにまでのスケールにまで至っています。圧巻でした。
ここにはタイトルの「オアシス」に由来するイメージよりも、一介の魔物と面と向かって対峙しているような緊張感さえ漂っています。抜群の照明効果による作品の「影」はまた、今にもこの生き物が動き出そうとする不穏な気配を生み出していました。
25日の日曜日までの開催です。おすすめします。
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「ART in the Sky」 新丸ビル・アトリウム
新丸ビル3F アトリウム(千代田区丸の内1-5-1)
「ART in the Sky」
10/16-25
アートアワードトーキョー(A.A.T.M.)の出品作家3名が、新丸ビルの吹き抜けの空間を演出します。新丸ビルで開催中の「ART in the Sky アートアワードトーキョー丸の内から羽ばたく作家たち」へ行ってきました。
出品作家は以下の3名です。一作家一点ずつの展示でした。
荒神明香(A.A.T.M.2007 グランプリ受賞)
杉田陽平(A.A.T.M.2008 出展)
平川ヒロ(A.A.T.M.2009 審査員賞受賞)
事前に情報を得ていなかったので、てっきりアトリウムの壁面を使った展示かと思っていましたが、実際には上の写真のようなインスタレーション的な展覧会でした。巨大な吹き抜け空間には、それ自体が数mあるであろう絵画にオブジェが、あたかもシャンデリアの様相をとって飾られています。実際、何れもがアトリウムにあわせて手がけられた作品とのことで、確かにこのスペースとの相性もなかなか見事なものがありました。
当然ながら頭上遥か高くに掲げられているので、残念ながら例えば杉田陽平のペインティングのような特徴ある質感までを伺い知れることは出来ません。もう一歩、作家の情報を補完する小品の展示もあっても良いとは思いました。(作家を紹介するパネルはあります。)
丸の内界隈にお出かけの際にでも立ち寄ってみては如何でしょうか。
なお最終日の25日(日)からは、同ビル隣接の丸ビルにて「藝大アーツ イン 東京丸の内」が始まります。美術だけでなく、音楽を含めた芸大ならではの一体的なイベントのようなので、出来ればそちらも拝見してきたいです。
「藝大アーツ イン 東京丸の内」@丸ビル(10/25-10/31)
25日まで開催されています。
*関連リンク
THINK ART:丸の内界隈のアートイベント一覧マップ。
「ART in the Sky」
10/16-25
アートアワードトーキョー(A.A.T.M.)の出品作家3名が、新丸ビルの吹き抜けの空間を演出します。新丸ビルで開催中の「ART in the Sky アートアワードトーキョー丸の内から羽ばたく作家たち」へ行ってきました。
出品作家は以下の3名です。一作家一点ずつの展示でした。
荒神明香(A.A.T.M.2007 グランプリ受賞)
杉田陽平(A.A.T.M.2008 出展)
平川ヒロ(A.A.T.M.2009 審査員賞受賞)
事前に情報を得ていなかったので、てっきりアトリウムの壁面を使った展示かと思っていましたが、実際には上の写真のようなインスタレーション的な展覧会でした。巨大な吹き抜け空間には、それ自体が数mあるであろう絵画にオブジェが、あたかもシャンデリアの様相をとって飾られています。実際、何れもがアトリウムにあわせて手がけられた作品とのことで、確かにこのスペースとの相性もなかなか見事なものがありました。
当然ながら頭上遥か高くに掲げられているので、残念ながら例えば杉田陽平のペインティングのような特徴ある質感までを伺い知れることは出来ません。もう一歩、作家の情報を補完する小品の展示もあっても良いとは思いました。(作家を紹介するパネルはあります。)
丸の内界隈にお出かけの際にでも立ち寄ってみては如何でしょうか。
なお最終日の25日(日)からは、同ビル隣接の丸ビルにて「藝大アーツ イン 東京丸の内」が始まります。美術だけでなく、音楽を含めた芸大ならではの一体的なイベントのようなので、出来ればそちらも拝見してきたいです。
「藝大アーツ イン 東京丸の内」@丸ビル(10/25-10/31)
25日まで開催されています。
*関連リンク
THINK ART:丸の内界隈のアートイベント一覧マップ。
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「特別展 菱田春草」(前期展示) 明治神宮文化館
明治神宮文化館 宝物展示室(渋谷区代々木神園町1-1)
「特別展 菱田春草」(前期展示)
10/3-11/29(前期:10/3-10/29 後期:10/31-11/29)
明治神宮文化館宝物展示室で開催中の「特別展 菱田春草」を見てきました。
まずは本展の概要です。
・春草の終焉の地でもあり、また代表作「落葉」のモデルともなった代々木の森(現明治神宮)での回顧展。
・出品は全60点。会期は前後期の二期制。一度の展示替えにて、ほぼ全ての作品が入れ替わる。(前後期各30点。)
・富山県美、水野、遠山記念館など、日本各地の美術館所蔵の春草作品を展観。前後期あわせれば、都内にて近年、これほどの規模の春草展が開催されたことはない。
上述の通り前後期各30点ほどの出品ということで、決して量で圧倒する展示ではありませんが、終の住処を構えた縁の土地で見る回顧展もまた趣き深いものがありました。早速、前期中より印象に残った作品を並べてみます。
「竹に猫」(水野美術館)
入口すぐ脇の展示ケースに置かれた屏風絵。やや凛々しい表情をした猫が、竹の方をじっと見据えている。竹との間にある余白の効果だろうか。竹と猫との間に流れる奇妙な緊張感も面白い。
「落葉(未完)」(個人蔵)
最も有名な永青文庫所蔵の「落葉」ではなく、数バージョンある類似したモチーフの中の一点。未完作ということだが、ともかく興味深いのは、他作にはない隆起する大地が描かれていること。永青の「落葉」が、うっすらと靄に包まれた静寂の空間に奥行きがあるのに対し、本作は前へと迫り出してくるような力強さが感じられる。なお今回は福井県立美術館所蔵の「落葉」のパネルが紹介されているので、それとの比較もまた楽しめるのではないだろうか。
「秋景山水」(東京藝術大学)
狩野派風の山水画。橋本雅邦に学んだというその出自が伺える。荒々しい岩山の渓谷に潜む小さな猿が何とも可愛らしかった。
「伏姫」(長野県信濃美術館)
南総里見八犬伝に画題を求めた一枚。池の前にて今にも自刃しようとする伏姫の姿が描かれている。画面を半分に分け、上に「落葉」風の余白のある林、そして下にその黒い影がのびる池が広がっている構図も良かった。水面にもうつる姫の様子は物悲しい。
「武蔵野」(富山県立近代美術館)
秋草の広がる大地の彼方に富士がそびえる。全てが永遠に続くかのような深淵でかつ雄大な景色に心惹かれた。かつての春草が見た代々木の武蔵野もこのような様子だったのだろうか。
「躑躅図」(遠山記念館)
艶やかなツツジがうっすらと芝色を帯びた山裾に群生する。その滲みだす色のコントラストが美しい。ツツジの花々も時に色を変えて細かく描かれていた。
「かけす」(個人蔵)
朴の木の枝にカケスがとまる。抱一の十二ヶ月花鳥図の一幅を思わせるような牧歌的な表現が良い。淡彩の中での浮かび上がる葉の金色の葉脈は琳派表現にも通じるものがあるのだろうか。
なお絵画の他、春草の書簡などもいくつか紹介されています。また図録はやや小さめでしたが、詳細な解説も掲載された本格版でした。(一冊1500円)
勝手ながらも明治神宮内の宝物室というと古びた施設をイメージしてしまいますが、実際には土産物屋や飲食スペースなども併設する真新しい建物で驚きました。なおガラスケースと作品がやや遠い箇所もあるので、単眼鏡などを用意しても良いかもしれません。
開館時間が明治神宮の開門時間に準じます。10月中の最終入場は16時まで、また11月は15時半(閉館時間は各30分後)とやや早めです。ご注意下さい。
後期には、神宮の祭神でもある明治天皇御遺愛の「雀に鴉」(東京国立近代美術館)が登場します。もちろんそちらも追いかけるつもりです。(追記:後期展示も見てきました。感想は下記リンク先へどうぞ。)
「特別展 菱田春草」(後期展示) 明治神宮文化館
前期展示は10月29日まで開催されています。
「特別展 菱田春草」(前期展示)
10/3-11/29(前期:10/3-10/29 後期:10/31-11/29)
明治神宮文化館宝物展示室で開催中の「特別展 菱田春草」を見てきました。
まずは本展の概要です。
・春草の終焉の地でもあり、また代表作「落葉」のモデルともなった代々木の森(現明治神宮)での回顧展。
・出品は全60点。会期は前後期の二期制。一度の展示替えにて、ほぼ全ての作品が入れ替わる。(前後期各30点。)
・富山県美、水野、遠山記念館など、日本各地の美術館所蔵の春草作品を展観。前後期あわせれば、都内にて近年、これほどの規模の春草展が開催されたことはない。
上述の通り前後期各30点ほどの出品ということで、決して量で圧倒する展示ではありませんが、終の住処を構えた縁の土地で見る回顧展もまた趣き深いものがありました。早速、前期中より印象に残った作品を並べてみます。
「竹に猫」(水野美術館)
入口すぐ脇の展示ケースに置かれた屏風絵。やや凛々しい表情をした猫が、竹の方をじっと見据えている。竹との間にある余白の効果だろうか。竹と猫との間に流れる奇妙な緊張感も面白い。
「落葉(未完)」(個人蔵)
最も有名な永青文庫所蔵の「落葉」ではなく、数バージョンある類似したモチーフの中の一点。未完作ということだが、ともかく興味深いのは、他作にはない隆起する大地が描かれていること。永青の「落葉」が、うっすらと靄に包まれた静寂の空間に奥行きがあるのに対し、本作は前へと迫り出してくるような力強さが感じられる。なお今回は福井県立美術館所蔵の「落葉」のパネルが紹介されているので、それとの比較もまた楽しめるのではないだろうか。
「秋景山水」(東京藝術大学)
狩野派風の山水画。橋本雅邦に学んだというその出自が伺える。荒々しい岩山の渓谷に潜む小さな猿が何とも可愛らしかった。
「伏姫」(長野県信濃美術館)
南総里見八犬伝に画題を求めた一枚。池の前にて今にも自刃しようとする伏姫の姿が描かれている。画面を半分に分け、上に「落葉」風の余白のある林、そして下にその黒い影がのびる池が広がっている構図も良かった。水面にもうつる姫の様子は物悲しい。
「武蔵野」(富山県立近代美術館)
秋草の広がる大地の彼方に富士がそびえる。全てが永遠に続くかのような深淵でかつ雄大な景色に心惹かれた。かつての春草が見た代々木の武蔵野もこのような様子だったのだろうか。
「躑躅図」(遠山記念館)
艶やかなツツジがうっすらと芝色を帯びた山裾に群生する。その滲みだす色のコントラストが美しい。ツツジの花々も時に色を変えて細かく描かれていた。
「かけす」(個人蔵)
朴の木の枝にカケスがとまる。抱一の十二ヶ月花鳥図の一幅を思わせるような牧歌的な表現が良い。淡彩の中での浮かび上がる葉の金色の葉脈は琳派表現にも通じるものがあるのだろうか。
なお絵画の他、春草の書簡などもいくつか紹介されています。また図録はやや小さめでしたが、詳細な解説も掲載された本格版でした。(一冊1500円)
勝手ながらも明治神宮内の宝物室というと古びた施設をイメージしてしまいますが、実際には土産物屋や飲食スペースなども併設する真新しい建物で驚きました。なおガラスケースと作品がやや遠い箇所もあるので、単眼鏡などを用意しても良いかもしれません。
開館時間が明治神宮の開門時間に準じます。10月中の最終入場は16時まで、また11月は15時半(閉館時間は各30分後)とやや早めです。ご注意下さい。
後期には、神宮の祭神でもある明治天皇御遺愛の「雀に鴉」(東京国立近代美術館)が登場します。もちろんそちらも追いかけるつもりです。(追記:後期展示も見てきました。感想は下記リンク先へどうぞ。)
「特別展 菱田春草」(後期展示) 明治神宮文化館
前期展示は10月29日まで開催されています。
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「小林清親と土屋光逸 - 師弟による明治のおもかげ木版画展」 礫川浮世絵美術館
礫川浮世絵美術館(文京区小石川1-2-3 小石川春日ビル5F)
「土井コレクション第2弾 小林清親と土屋光逸 - 師弟による明治のおもかげ木版画展」
10/1-25
没後60年を記念し、主に昭和初期に日本の風景を美しく表した『幻』の版画家、土屋光逸の画業を紹介します。礫川浮世絵美術館で開催中の「小林清親と土屋光逸 - 師弟による明治のおもかげ木版画展」を見てきました。
まずは聞き慣れない土屋光逸の経歴、及び本展の見所などを一部チラシから引用して挙げてみます。
・土屋光逸。1870年に浜松で生まれ、15歳で上京。以降、小林清親の元に弟子入りして家族同然の扱いを受けながら浮世絵制作の修行を続けた。
・30年にわたって清親の元で働いた後、年齢60にしてようやく木版画界に登場。その切っ掛けは、清親17回忌記念展にて、新版画運動を目指した版元、渡邊庄三郎氏に見出されたことであった。
・新興版元の土井貞一をはじめ、一級の摺師、掘師と連携して、「巴水風」とも言える風景版画を制作し続けた。
・以降、79歳に逝去するまで版画を作り続けるものの、登場が遅かったため、その点数は巴水などと比べると非常に少ない。(出版作品:巴水780点、光逸135点。)
・巴水などのように外国で華々しく評価された事実もなく、国内外にてほぼ忘れられた版画家でもあった。本展は1999年、茅ヶ崎の市立美術館で彼の画業が紹介されて以来、二度目となる光逸のほぼ単独の回顧展である。
・出品は版画約30点強。(その他資料30点。)代表作「東京風景シリーズ」をメインに紹介する。なおタイトルに清親とあるが、清親作は数点のみ。彼との関係は資料などで説明されている。
いくつかの図版を見れば明らかなように、その透き通った藍色の美しさをはじめ、昭和初期のノスタルジックな風景版画の魅力は、巴水版画の魅力に通じるものがあるのではないでしょうか。如何せん非常に狭い同館の展示室のこと、出品点数は上記の通り多くありませんが、以下惹かれた作品をいくつか並べてみました。
「東京風景 日比谷公園」
深い雪に覆われた日比谷公園の姿を描く。満月から差し込む光は雪を照らし出し、ひっそりとした公園の雪景色を仄かなクリーム色にも染めていた。
「東京風景 高輪泉岳寺」
日の陰った泉岳寺境内を写し捉える。雨に降られたその様は静けさにも包まれているが、傘をさして歩く親子連れの他、今ちょうど建物の入口から明かりの中へと入ろうとする人物など、随所に動きのある作品でもある。また闇と光の鮮やかなコントラストは、やはり師、清親の光線画に学んだのだろうか。
「東京風景 銀座の雨」
柳の並ぶ銀座の目抜き通りを描いた美しい一枚。朱色のガス灯の明かりが温かい。雨に降られて家路を急ぐ人達も連なっている。物悲しい柳と建物のネオンサインを対比的にも捉えた構図にも魅力を感じた。
「東京風景 増上寺の雪」
同じ増上寺を描いた巴水作を思い起こすと興味深い。巴水が傘を斜めにして歩く女性を入れるなどして、殆ど吹雪に近い状態の雪景色を示したのに対し、光逸は軽やかに雪がこぼれ落ちる、実に穏やかな雪景を描きだした。光逸は巴水作をどのように捉えていたのだろうか。
「牛込神楽坂」
戦前の初期摺と戦後の後摺の2つのパターンが確認されている作品。(図版は戦前の昭和14年版。)「割烹藤井」と記された大きな提灯が神楽坂の小径を煌煌と照らし出す。行き交う和装の女性は芸子だろうか。雨に濡れた路面はどことなく香しい。
「東京風景 品川沖」
満月の下で靡く帆船。まさに巴水ブルーを彷彿させる色味である。目に染みる美しさだった。
「森ヶ崎海岸」
「品川沖」同様、東京湾沿岸の静かな海を描いた作品。ランプを頼りに網をすくっている漁船なのだろうか。影絵のような漁師がかがみ込むように海を覗き込んでいた。ともに透明感に溢れた月明かりと海の青みは、ついこの前に葉山で見たリヴィエールの世界に通じるものがないだろうか。
巴水が風景に静寂の詩情を包み込んでいるとしたら、光逸はそこに清親譲りの人々の生活の息吹きと、どことない情緒性を表したと言えるのかもしれません。まさに名も殆ど知られない、忘れられた絵師の一人ですが、眩い色遣いはもちろん、何らかの物語絵を見るかのようなロマンに満ちた描写には強く惹かれました。
なお本展もかつて同館で行われた川瀬巴水展と同様、浮世絵研究家でありコレクターの土井利一氏が全面的に企画されています。なお土居氏は土日に会場におられることが多いそうです。知られざる光逸に触れるにはまたとないチャンスではないでしょうか。(質問にも丁寧に答えて下さいます。)また巴水展の時もそうでしたが、出品リストが非常に優れている点も見逃せません。掲載された情報量はリストの域をゆうに超えています。
ちなみに江戸博の新版画展にも光逸の作品が2点ほど紹介されているそうです。そちらは未見なので、今度楽しみたいと思います。
10月25日までの開催です。
「土井コレクション第2弾 小林清親と土屋光逸 - 師弟による明治のおもかげ木版画展」
10/1-25
没後60年を記念し、主に昭和初期に日本の風景を美しく表した『幻』の版画家、土屋光逸の画業を紹介します。礫川浮世絵美術館で開催中の「小林清親と土屋光逸 - 師弟による明治のおもかげ木版画展」を見てきました。
まずは聞き慣れない土屋光逸の経歴、及び本展の見所などを一部チラシから引用して挙げてみます。
・土屋光逸。1870年に浜松で生まれ、15歳で上京。以降、小林清親の元に弟子入りして家族同然の扱いを受けながら浮世絵制作の修行を続けた。
・30年にわたって清親の元で働いた後、年齢60にしてようやく木版画界に登場。その切っ掛けは、清親17回忌記念展にて、新版画運動を目指した版元、渡邊庄三郎氏に見出されたことであった。
・新興版元の土井貞一をはじめ、一級の摺師、掘師と連携して、「巴水風」とも言える風景版画を制作し続けた。
・以降、79歳に逝去するまで版画を作り続けるものの、登場が遅かったため、その点数は巴水などと比べると非常に少ない。(出版作品:巴水780点、光逸135点。)
・巴水などのように外国で華々しく評価された事実もなく、国内外にてほぼ忘れられた版画家でもあった。本展は1999年、茅ヶ崎の市立美術館で彼の画業が紹介されて以来、二度目となる光逸のほぼ単独の回顧展である。
・出品は版画約30点強。(その他資料30点。)代表作「東京風景シリーズ」をメインに紹介する。なおタイトルに清親とあるが、清親作は数点のみ。彼との関係は資料などで説明されている。
いくつかの図版を見れば明らかなように、その透き通った藍色の美しさをはじめ、昭和初期のノスタルジックな風景版画の魅力は、巴水版画の魅力に通じるものがあるのではないでしょうか。如何せん非常に狭い同館の展示室のこと、出品点数は上記の通り多くありませんが、以下惹かれた作品をいくつか並べてみました。
「東京風景 日比谷公園」
深い雪に覆われた日比谷公園の姿を描く。満月から差し込む光は雪を照らし出し、ひっそりとした公園の雪景色を仄かなクリーム色にも染めていた。
「東京風景 高輪泉岳寺」
日の陰った泉岳寺境内を写し捉える。雨に降られたその様は静けさにも包まれているが、傘をさして歩く親子連れの他、今ちょうど建物の入口から明かりの中へと入ろうとする人物など、随所に動きのある作品でもある。また闇と光の鮮やかなコントラストは、やはり師、清親の光線画に学んだのだろうか。
「東京風景 銀座の雨」
柳の並ぶ銀座の目抜き通りを描いた美しい一枚。朱色のガス灯の明かりが温かい。雨に降られて家路を急ぐ人達も連なっている。物悲しい柳と建物のネオンサインを対比的にも捉えた構図にも魅力を感じた。
「東京風景 増上寺の雪」
同じ増上寺を描いた巴水作を思い起こすと興味深い。巴水が傘を斜めにして歩く女性を入れるなどして、殆ど吹雪に近い状態の雪景色を示したのに対し、光逸は軽やかに雪がこぼれ落ちる、実に穏やかな雪景を描きだした。光逸は巴水作をどのように捉えていたのだろうか。
「牛込神楽坂」
戦前の初期摺と戦後の後摺の2つのパターンが確認されている作品。(図版は戦前の昭和14年版。)「割烹藤井」と記された大きな提灯が神楽坂の小径を煌煌と照らし出す。行き交う和装の女性は芸子だろうか。雨に濡れた路面はどことなく香しい。
「東京風景 品川沖」
満月の下で靡く帆船。まさに巴水ブルーを彷彿させる色味である。目に染みる美しさだった。
「森ヶ崎海岸」
「品川沖」同様、東京湾沿岸の静かな海を描いた作品。ランプを頼りに網をすくっている漁船なのだろうか。影絵のような漁師がかがみ込むように海を覗き込んでいた。ともに透明感に溢れた月明かりと海の青みは、ついこの前に葉山で見たリヴィエールの世界に通じるものがないだろうか。
巴水が風景に静寂の詩情を包み込んでいるとしたら、光逸はそこに清親譲りの人々の生活の息吹きと、どことない情緒性を表したと言えるのかもしれません。まさに名も殆ど知られない、忘れられた絵師の一人ですが、眩い色遣いはもちろん、何らかの物語絵を見るかのようなロマンに満ちた描写には強く惹かれました。
なお本展もかつて同館で行われた川瀬巴水展と同様、浮世絵研究家でありコレクターの土井利一氏が全面的に企画されています。なお土居氏は土日に会場におられることが多いそうです。知られざる光逸に触れるにはまたとないチャンスではないでしょうか。(質問にも丁寧に答えて下さいます。)また巴水展の時もそうでしたが、出品リストが非常に優れている点も見逃せません。掲載された情報量はリストの域をゆうに超えています。
ちなみに江戸博の新版画展にも光逸の作品が2点ほど紹介されているそうです。そちらは未見なので、今度楽しみたいと思います。
10月25日までの開催です。
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