「クマのプーさん展」 Bunkamura ザ・ミュージアム

Bunkamura ザ・ミュージアム
「クマのプーさん展」
2019/2/9~4/14



Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「クマのプーさん展」を見てきました。

世界で50以上の言葉に訳され、多くの人々に愛され続けたクマのプーさんは、1926年、イギリスの作家A.A.ミルンと、挿絵画家のE.H.シェパードの2人の手によって生み出されました。

イギリスから、E.H.シェパードの直筆の鉛筆画やペン画がまとめてやって来ました。その多くはロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館のコレクションで、制作資料や手紙、写真などを加え、いずれもシェパードが生前に寄贈した作品でした。

物語の舞台となったのは、イングランド南東部のイーストサセックスのハートフィールドにある、コッチフォード・ファームで、ミルン一家が、度々、週末を過ごしたアッシュダウンの森でした。



プーさんのモデルは、ミルンの息子である、クリストファー・ロビンのお気に入りのぬいぐるみのクマでした。そして挿絵画家のシェパードも、同地を訪ね、森やクリストファーのおもちゃをスケッチしました。ただしシェパードの絵は、自身の息子のグレアムと、そのおもちゃであるクマのグラウラーに着想を得ていたそうです。

クリストファーは、森を含む家の周りを探検し、お茶の時間になると家に戻っては、父のミルンに冒険の話をしました。それがプーさんの物語の原点となりました。

会場では、プーさんの様々な場面を原画で紹介していて、大まかにストーリーを追うことが出来ました。また単に原画を並べるだけでなく、制作における構図や描法についても言及していて、いかにシェパードが物語を踏まえながら、細部に配慮して描いたのかについても良く分かるように工夫されていました。


「プーとコブタが、狩りに出て…」、『クマのプーさん』第3章、E.H.シェパード、ペン画、1926年、 クライブ&アリソン・ビーチャム・コレクション © The Shepard Trust

プーさんと仲良しのコブタの歩く光景を表した「プーとコブタが、狩りに出て…」では、愛らしい後ろ姿を繊細な線を重ねて描く一方で、右のカラマツは鋭く、素早い線で、さもカリグラフィーのように大胆に象っていました。ほかにも、初期とそれ以降のプーさんの姿や、のちに加えられた色についても触れていて、プーさんの誕生、あるいは成長物語と呼べうるエピソードも明らかにされていました。


「おいでよ、トラー、やさしいよ」、『プー横丁にたった家』第4章、E.H.シェパード、鉛筆画、1928年、V&A所蔵 © The Shepard Trust. Image courtesy of the Victoria and Albert Museum, London

プーさんというと、ともかくディズニーのアニメがよく知られていますが、全ての原点は、ミルンとシェパードの2人の共作にありました。そして生き生きとした線による原画が、これほどに魅惑的だと思いませんでした。

最後に会場内の状況です。日曜日の午後に出かけてきました。



入場の待ち時間こそなかったものの、館内は盛況で、特にはじめの展示室に関しては、作品を一番前で見るための列も出来ていました。

実のところ、鉛筆やペンの原画はかなり小さく、遠くからでは殆ど見られません。また撮影スポットもありましたが、多くの方でごった返していたため、カメラを向けるのもままならぬ状況でした。プーさんグッズで溢れるミュージアムショップも大盛況でした。

公式サイトの「混雑状況の目安」のページにも記載がありますが、日・祝日の午後が一番混雑します。平日、あるいは金曜や土曜の夜間開館をおすすめします。



展覧会は、母国イギリスのロンドン、そしてアメリカのアトランタ、ボストンを経て、日本へと巡回して来ました。このスケールでプーさんの原画を見る機会は、しばらく望めないのではないでしょうか。


4月14日まで開催されています。なお東京での展示を終えると、大阪のあべのハルカス美術館へと巡回(4月27日〜6月30日)します。

「クマのプーさん展」 Bunkamura ザ・ミュージアム@Bunkamura_info
会期:2019年2月9日(土)~4月14日(日)
休館:2月19日(火)、3月12日(火)
時間:10:00~18:00。
 *毎週金・土は21時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1500(1300)円、大学・高校生900(700)円、中学・小学生600(400)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。要事前予約。
住所:渋谷区道玄坂2-24-1
交通:JR線渋谷駅ハチ公口より徒歩7分。東急東横線・東京メトロ銀座線・京王井の頭線渋谷駅より徒歩7分。東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線・東京メトロ副都心線渋谷駅3a出口より徒歩5分。
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塩田千春「6つの船」 GINZA SIX

GINZA SIX
塩田千春「6つの船」
2019/2/27~10/31(予定)



2017年に東京の銀座に誕生した複合商業施設のGINZA SIX(ギンザシックス)では、かねてより中央吹き抜けのスペースを用い、大掛かりなインスタレーションを展示してきました。



これまでに登場したのは、草間彌生、ダニエル・ビュレン、ニコラ・ビュフの3名のアーティストで、それぞれ「南瓜」、「Like a flock of starlings: work in situ」、ないし「光る象」などを出展し、多くの人の目を引いてきました。



その第4弾としてスタートしたのが、国内外の美術館で個展を行い、2015年にはベネチア・ビエンナーレの国際美術展の日本館代表を務めた塩田千春で、「6つの船」と題した、全長5メートルの6隻の船を模したインスタレーションを公開しました。



いずれも黒色の船は全てフェルトで出来ていて、無数の白く細い糸に、まるで侵食されるように吊り下がっていました。これは、戦後の復興を遂げた銀座の「記憶の海」を出航する様子を表現していて、下から見上げると、まるで花を咲かせるように四方へと広がっていました。



2階から5階部分に相当する吹き抜け状のスペースゆえか、階を追うごとに景色が変化するのも特徴で、上から見下ろすと、さも海の合間を縫って進むクジラのようにも映りました。



全てはモノクロームに染まっているため、シャンパンゴールドで統一された吹き抜けの中に、さも溶け込むかのようにも思えるかもしれません。色に鮮やかだった草間やビュフの時とは、スペースそのものの印象すら異なって見えました。



なお既に知られているように、GINZA SIXには、中央吹き抜け以外でも、大巻伸嗣や船井美佐、それにチームラボの作品が、パブリックアートとして設置されています。



塩田は、今年の6月から六本木の森美術館にて個展、「塩田千春展:魂がふるえる」(6/20~10/27)の開催を控えています。同展では、インスタレーション、立体、映像などが過去最大スケールで公開され、塩田の約20年に渡る活動が網羅的に示されるそうです。大いに注目が集まるのではないでしょうか。


10月31日まで公開されています。

塩田千春「6つの船」 GINZA SIX(ギンザ シックス)中央吹き抜け
会期:2019年2月27日(水)~10月31日(木)*予定
休館:不定休。
時間:10:30~20:30(ショップ・カフェ。B2F~5F) 、11:00~23:00(レストラン。6F、13F)
料金:無料。
場所:中央区銀座6-10-1
交通:東京メトロ銀座線・丸ノ内線・日比谷線銀座駅A3出口より徒歩2分。東京メトロ日比谷線・都営浅草線東銀座駅A1出口徒歩3分。ともに地下通路で直結。
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「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」 サントリー美術館

サントリー美術館
「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」
2019/2/6~3/31



サントリー美術館で開催中の「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」を見てきました。

幕末から明治の絵師、河鍋暁斎(1831〜1839)は、狩野派の絵師として研鑽を積み、古画に学んでは、活動の幅を広げました。


河鍋暁斎「花鳥図」 明治14(1881)年 東京国立博物館 *展示期間:2/6~2/18(展示終了)

その狩野派と古画との関連を軸にして暁斎の画業を俯瞰するのが、「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」で、仏画、花鳥画、美人画など、水墨と着彩をあわせて約120件の作品(展示替えあり)がやって来ました。

冒頭からして魅惑的な2点の作品が待ち構えていました。1つは水墨の「枯木寒鴉図」で、明治14年の第二回内国勧業博覧会にて、事実上の2等を獲得した優品でした。ちょうど屈曲する枯れ木の頂点に、一羽の烏がとまる姿を捉えていて、素早く、さも一気呵成に引いたような力強い墨の線に、迷いは見られませんでした。

もう1つが「観世音菩薩像」で、鮮やかな色彩にて、優雅に佇む菩薩を細かに表現していました。白い肌には仄かな赤も加えられていて、透けた着衣も見事に描かれていました。あまりにも対照的な2点でしたが、改めて水墨、着彩の双方に実力を発揮した、暁斎の高い画技を知ることが出来ました。

10歳にして駿河台狩野派に入門した暁斎は、19歳で「洞郁陳之(とういくのりゆき)」の画号を受けて修行を終えるも、のちに中橋狩野家に再入門するなどして、狩野派との関係を続けました。


河鍋暁斎「虎図」 19世紀 東京・正行院 *全期間展示

そうした狩野派に関した作品も多く紹介されていました。うち目を引くのが「虎図」で、大きな一頭の虎が、大きく前脚を開きながら、さも渦を巻くように身をくねらせる姿を表していました。虎の毛並みを象った墨の線は、一見、大胆ながらも、量感を巧みに引き出していて、上目で横を見やる顔の表情にもリアリティーがありました。また「風神雷神図」も面白い作品で、お馴染みの風神と雷神をモチーフとしながらも、通常、示される両神のポーズを逆にしていました。

「学び」こそが展覧会の重要なテーマであるかもしれません。「古画に学ぶ」としたセクションでは、一部に元となる作品をあわせ見ることで、暁斎がいかに古画を摂取していたのかが分かるように工夫されていました。その一例が「放屁合戦絵巻」や「九相図」で、後者では人が死んで朽ち果て、腐敗していく様を、精緻に表していました。完全に白骨化した死体も生々しいのではないでしょうか。

「鯉魚遊泳図」は、水に泳ぐ9匹の鯉の様態を、多角的な視点から写していて、それこそ応挙を思わせるほどの迫真性を見せていました。暁斎は、中世絵画はもとより、狩野派、土佐派、円山派、さらには琳派や浮世絵にまで学んでいて、何も全ての作品を一朝一夕に次々と生み出したわけではありませんでした。



暁斎の代名詞と言えば、やはり戯画にあるのではないでしょうか。中でも興味深いのが「風流蛙大合戦之図」で、無数の蛙たちが槍を持ち、大砲と思しき水鉄砲を片手に、戦い合う光景をパノラマで描いていました。中には生首が転がり、血を噴き出す蛙もいましたが、実際は江戸幕府による長州征伐を、蛙の合戦に置き換えた作品だと言われています。

小さな画帖もハイライトの1つでした。いずれも特定の注文主のために制作されたもので、描写から彩色までが丁寧に施されていました。もちろん画帖の構造もあり、開いている面は僅かでしたが、これほど手元に引き寄せて愛でたくなる作品も少ないかもしれません。


河鍋暁斎「幽霊図」 慶応4~明治3(1868~70)年頃 イスラエル・ゴールドマン・コレクション *全期間展示

このほかにも、端的に不気味というよりも、むしろ人間の醜を直視して描いたような「幽霊図」をはじめ、暁斎の子、暁雲や暁翠との合作である「龍虎鷹山水衝立」など、見応えのある作品は少なくありませんでした。


河鍋暁斎「野見宿禰と当麻蹶速図」 明治7(1874)年 東京・湯島天満宮 *全期間展示

近年、都内においても、暁斎展が立て続けに開催されていて、重複する作品も散見されましたが、いずれにせよ粒ぞろいで、不足はありませんでした。

最後に展示替えの情報です。

「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」出品リスト(PDF)
会期:2019年2月6日(水)~3月31日(日)

全部で会期が8つに分かれていますが、特に3月第2週、3月5日を境に、前後期での大規模な入れ替えがあります。



今回はタイミング良く、金曜の夜間開館を利用してきました。よって館内には余裕がありました。



繰り返しになりますが、ここ数年は、約2年おきに暁斎展を見ているような気がします。そろそろ国立博物館などで、決定版となる大回顧展も行われるのでしょうか。久しぶりに超大作、「新富座妖怪引幕」を目にする機会があればと思いました。


3月31日まで開催されています。

「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」 サントリー美術館@sun_SMA
会期:2019年2月6日(水)~3月31日(日)
休館:火曜日。3月26日は18時まで開館。
時間:10:00~18:00
 *金・土は20時まで開館。
 *2月10日(日)、3月20日(水)は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1300円、大学・高校生1000円、中学生以下無料。
 *アクセスクーポン、及び携帯割(携帯/スマホサイトの割引券提示)あり。
場所:港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア3階
交通:都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結。東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結。東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩3分
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「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」 東京都美術館

東京都美術館
「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」
2019/2/9~4/7



東京都美術館で開催中の「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」を見てきました。

1970年、美術史家の辻惟雄が著した「奇想の系譜」は、当時、傍流であった江戸の6名の絵師を「奇想」の概念に位置付け、美術史の研究に新たな視点をもたらしました。

「奇想の系譜」の絵師の作品が一堂にやって来ました。その絵師とは、岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳で、さらに今回の展覧会に際して、白隠慧鶴と鈴木其一が加えられました。

トップバッターは、2016年の展覧会で空前のブームを引き起こした伊藤若冲でした。象と鯨が対峙した「象と鯨図屏風」や、鶏が得意げにポーズを構える「鶏図押絵貼屏風」が並ぶ中、目を引いたのが「旭日鳳凰図」で、岸辺の岩の上で羽を広げる鳳凰を極彩色で表していました。ちょうど動植綵絵の2年前に制作された作品で、サイズが一回り大きく、ハート形の尾の模様や妖艶な表情の顔、さらには粘り気を帯びたような波など、まさに若冲ならではの描写を見せていました。

このほか、雨の中、屈曲する竹を水墨で描いた「雨中の竹図」や、糸瓜の蔦の先にカマキリが乗った「糸瓜群虫図」も興味深い作品でした。ともかく先の回顧展にて全貌が明かされた若冲でしたが、新出の「鶏図押絵貼屏風」や、所蔵館以外では初公開となった「宇宙の竹図」など、見慣れない作品もあり、また改めて絵師の魅力に接することが出来ました。


曽我蕭白「雪山童子図」 明和元年(1764)頃 三重・継松寺

続くのが曽我蕭白で、チラシ表紙でも目立つ「雪山童子図」が、一際、異彩を放っていました。同作は、釈迦が前世で雪山童子として修行した際、鬼に姿を変えた帝釈天から熱意を試される場面を表したもので、鬼の青と童子の腰布の赤が、鮮烈なコントラストを描いていました。蕭白の35歳の頃の作品と言われています。

「唐獅子図」も異様な迫力を見せていて、高さは2メートル超の大画面に、口を開く阿形と、口を閉じた吽形の唐獅子が相対していました。ともかく乱れるような筆遣いが特徴的で、獰猛な獅子も、何かに怯えているような姿に見えなくもありません。「ふざける」(解説より)ような落款も、どこか滑稽でした。


長沢芦雪「群猿図襖」 寛政7年(1795) 兵庫・大乗寺

「京のエンターテイナー」として、一昨年の愛知での回顧展も話題を集めた、長沢芦雪にも優品が揃っていました。兵庫の大乗寺に伝わり、東日本初公開となった「群猿図襖」は、海辺の岩場の猿を表したもので、その生態を写実的に捉えつつも、擬人化したような人懐っこい姿を見せていました。

「白象黒牛図屏風」も機知に富んだ作品で、右に白い象、そして左に黒い牛を、ともに画面からはみ出さんとばかりに描き、さらにそれぞれ小さな烏と仔犬を加えていました。何よりも、安心しきった様子で笑みを浮かべる仔犬がすこぶる可愛らしく、もはや絵の主人公と呼んでも差し支えないかもしれません。ここに芦雪は、黒と白、そして大と小を対比して表現しました。


奇想で最も絵が上手い絵師とは、岩佐又兵衛かもしれません。とりわけ凄まじいのが「山中常盤物語絵巻」で、源義経伝説を元に、母の常盤御前の仇討ちを12巻に描いていました。(会期中、第4巻と5巻を公開。)うち、第4巻は、山中の宿で常盤御前が襲われる場面を示していて、まさに刀を胸に突きつけられ、血を垂らしては仰向けで横たわる御前の姿を、極めて臨場感のある形で表していました。

また「堀江物語絵巻」にも、凄惨な殺害場面が登場していて、鮮血が吹き飛び、身体が裂ける姿を、何らためらうことなく、克明に示していました。ともかく血みどろを含め、着衣の紋様までをも執拗までに細かく描いていて、そこには確かに絵師の「執念のドラマ」(解説より)が現れていました。


狩野山雪「梅花遊禽図襖」 寛永8年(1631) 京都・天球院

狩野山雪では「梅花遊禽図襖」が目立っていました。金地を背に、一本の老いた梅が幹を左へのばしていて、花を咲かせつつ、紅葉した蔦が絡んでいました。梅の花と紅葉という、春と秋の異なった季節を1つの画面に落とし込んだ作品で、うねっては屈曲する幹は、まるで悶えているかのようでした。

目をぎょろりと開いては、上を見やる達磨を描いたのが、白隠慧鶴の「達磨図」で、80歳を超えた最晩年の作品と言われています。一見、即興的な筆触ながらも、髭や瞼、さらには着衣など、硬軟のある線を自在に使い分けていて、量感のある達磨を巧みに表していました。なお今回、新たに奇想に位置付けられた白隠は、近年、若冲や蕭白、芦雪などの18世紀の京都の絵師に影響を与え、一連の個性的な表現の起爆剤になったと指摘されているそうです。


鈴木其一「百鳥百獣図」(部分) 天保14年(1843) 米国・キャサリン&トーマス・エドソンコレクション

同じく新たに奇想の絵師となった鈴木其一では、アメリカより初めて里帰りした「百鳥百獣図」に魅せられました。四季の草花が広がる野山の中、鳥やたくさんの動物を事細かに描いた作品で、どこか若冲の画風を思わせてなりません。右に百鳥、左に百獣を配した双幅の作品で、特に百獣図では、前景の白い象が目立っていました。一般的な琳派のイメージとは一線を画していて、其一像に新たな視点を呼び込む作品と言えるかもしれません。

ラストは奇想で唯一の浮世絵師である歌川国芳でした。ここでは人気の「相馬の古内裏」などの浮世絵とともに、「一ツ家」や「火消千組の図」といった絵馬も目立っていて、大画面の肉筆にも充実した作品を生み出した、国芳の高い画力に改めて感じ入るものがありました。



展示替えの情報です。会期中、一部の作品が入れ替わります。

「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」出品リスト(PDF)
前期:2月9日(土)~3月10日(日)
後期:3月12日(火)~4月7日(日)

若冲は18点のうち7点、蕭白は12点中10点、芦雪は16点中4点、又兵衛は約20点のうち1点を除き全て入れ替えなど、絵師により差がありますが、大幅に作品が替わります。事実上、前期と後期をあわせて1つの展覧会と言って差し支えありません。(場面替えもあり。)



最後に会場の状況です。会期3日目、2月11日の祝日に出かけて来ました。美術館に到着したのは14時頃でした。

チケットブースに僅かな待機列こそあったものの、入場への待ち時間はありませんでした。また場内は、最初の若冲と、ラストの国芳の展示室こそやや混み合っていたものの、ほかは思いの外にスムーズで、どの作品も最前列で鑑賞出来ました。何かと混みがちな絵巻の展示も、少し並ぶと、難なく見ることが出来ました。

現在のところ、実際に入場が規制されたのは、シルバーデーのみで、土日に関しても制限は行われていません。


とはいえ、おそらくは今年、最も注目を集める江戸絵画展であることは間違いありません。会期終盤へ向かって混雑することも予想されます。混雑情報については専用のアカウント(@kisoukonzatsu)がリアルタイムでこまめに発信しています。まずは早めに観覧されることをおすすめします。

あまりにも小さな芦雪の「方寸五百羅漢図」や、実に細密な其一の「百鳥百獣図」など、肉眼では細部が判別しにくい作品も少なくありません。よって単眼鏡が有用でした。

今でこそすっかり人気を得た奇想の絵師でしたが、こうして作品を並び立て見られる機会は殆どありませんでした。あえて比べることで、奇想の括りよりも、各絵師の個性なりが際立って見えるかもしれません。



4月7日まで開催されています。

「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」@kisou2019) 東京都美術館@tobikan_jp
会期:2019年2月9日(土)~4月7日(日)
時間:9:30~17:30
 *毎週金曜日、及び11月1日(木)、3日(土・祝)は20時まで。 
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日、2月12日(火)。但し2月11日(月・祝)、4月1日(月)は開館。
料金:一般1600(1400)円、大学生・専門学校生1300(1100)円、65歳以上1000(800)円、高校生800(600)円。中学生以下無料。
 *( )は20名以上の団体料金。
 *毎月第3水曜日はシルバーデーのため65歳以上は無料。
 *毎月第3土曜、翌日曜日は家族ふれあいの日のため、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住)は一般料金の半額。(要証明書)
住所:台東区上野公園8-36
交通:JR線上野駅公園口より徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口より徒歩10分。京成線上野駅より徒歩10分。
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「石川直樹 この星の光の地図を写す」 東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリー
「石川直樹 この星の光の地図を写す」 
2019/1/12~3/24



東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「石川直樹 この星の光の地図を写す」を見てきました。

23歳にして七大陸最高峰の登頂に成功した石川直樹(1977〜)は、今も世界各地を渡り歩き、「人類学や民俗学」(解説より)を取り入れた写真を撮り続けてきました。



その石川の撮った、1990年代終盤から近年へと至る作品が、東京オペラシティアートギャラリーにやって来ました。いずれも世界全体を極地まで俯瞰していて、写真のみならず、映像も出展されていました。



はじまりは、北アメリカ・アラスカ山脈最高峰のデナリでした。かつてはマッキンリーと呼ばれた山で、1998年、石川は20歳にして登山隊に加わり、登頂に成功しました。その18年後の2016年には、単独での登頂も果たしました。



また2000年、北極から南極点まで人力で地球を縦断するプロジェクトに参加した石川は、徒歩とスキー、および自転車で南北アメリカ大陸を横断しました。



ともかく目立つのは、北極圏を捉えた「POLAR」や、南極大陸を写した「ANTARCTICA」など、極地を舞台とした作品で、氷河をはじめとした雄大な自然のみならず、都市や人々の生活にも目を向けていました。



必ずしも地域別に写真を並べているわけではないのも、展覧会の特徴の1つと言えるかもしれません。「NEW DIMENSION」では、世界各地の古い壁画をテーマとしていて、北海道のフゴッペ洞窟や南米のパタゴニアの壁画などをあわせて展示していました。



おおむね雪や氷に覆われた極地の光景と一転して、色彩に鮮やかな南の海や島を写した作品もありました。うち「CORONA」は、ポリネシアの諸地域を10年間にわたって撮影したシリーズで、エメラルドグリーンの海や赤い帆を靡かせた舟、または島に生きる人々の日常の暮らしなどを表していました。



「THE VOID」は、ニュージーランド北島に住むマオリ族の地を訪ねた作品で、鬱蒼した原生林を映像で捉えていました。樹木の間より差し込む木漏れ日も眩しく見えるかもしれません。



「自然と共生するというのは、人間が自然を守ることではなく、自然と自然が対等な関係を結ぶことではなかったか。」石川直樹(会場内パネルより)



1つのハイライトと化していたのが、ヒマラヤ山脈西端に位置する世界第2位の高さを誇る「K2」の登頂の記録でした。K2は世界で最も登るのが難しい山とされ、石川も2015年に挑戦したものの、雪崩の発生などで、断念することになりました。



ここではパキスタンの街からK2登頂のためのキャンプなど、一連の登山の様子が、写真、映像、さらにはテキストで紹介されていました。中には5000メートルを超える高所で体調を崩した石川自身の体験も記録されていて、苦難に続く苦難の連続であったことが、ひしひしと伝わってきました。



ラストでは「石川直樹の部屋」と題し、遠征で使用したテントなどの装備、あるいは旅先で入手した道具のほか、愛読書など、石川に関した様々な資料も展示されていました。



ともかく所狭しと登山のウェアやシューズなどが並んでいて、石川の活動を臨場感のある形で知ることが出来ました。



このほか知床や国内の島々の写真も出展されていましたが、思いの外に人が捉えられている作品が多いことに気づきました。各地域を写真でつないでは、さも宇宙で星座を描くべく、新たな世界の地図を作った石川の関心は、あくまでも人にあるのかもしれません。



一部のスペースを除き、撮影も可能です。

3月24日まで開催されています。おすすめします。

「石川直樹 この星の光の地図を写す」 東京オペラシティアートギャラリー
会期:2019年1月12日(土)~3月24日(日)
休館:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、及び2月10日(日)。
時間:11:00~19:00 
 *金・土は20時まで開館。
 *入場は閉館30分前まで。
料金:一般1200(1000)円、大・高生800(600)円、中学生以下無料。
 *同時開催中の「収蔵品展065 木版画の魅力」、「projectN74 大和美緒」の入場料を含む。
 *( )内は15名以上の団体料金。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
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「アートが日常を変える 福原信三の美学」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「アートが日常を変える 福原信三の美学 Granby Workshop : The Rules of Production Shinzo Fukuhara/ASSEMBLE, THE EUGENE Studio Ⅱ展」
2019/1/16~3/17



資生堂ギャラリーで開催中の「アートが日常を変える 福原信三の美学 Granby Workshop : The Rules of Production Shinzo Fukuhara/ASSEMBLE, THE EUGENE Studio Ⅱ展」を見てきました。

資生堂の初代社長を務め、写真家でもあった福原信三は、文化人としても活動し、「社会、日常の中にある美や創造性を追求」(公式サイトより)しました。

その価値観に共鳴した2組の現代アーティストを紹介するのが、「福原信三の美学」と題した展覧会で、1組目に日本のアーティストスタジオのTHE EUGENE Studio(ザ・ユージーン・スタジオ)が、福原の業績を辿りつつ、会場内にカフェ機能を有したオープンスペースを築きました。



そして現在、2組目として、イギリスの建築家集団で、同国の栄誉ある現代美術のターナー賞を受賞した、ASSEMBLE(アッセンブル)が、ワークショップ形式で作った陶器の展示を行っています。



たくさんの陶器が木製の棚に並んでいました。その殆どがASSEMBLEが、同ギャラリーで実施したワークショップで制作したもので、いずれも益子の土を用い、イギリスのスリップキャスティングと呼ばれる方法で成型され、益子の窯で焼かれました。土には、古いガラスや陶磁器を砕いた粉も混じっていて、中には東日本大震災で被害を受けた益子の器も含まれていたそうです。



ワークショップは展覧会の開始から1週間かけて行われ、無事に終了し、現在は完成品をはじめ、制作に際して用いられた道具類が展示されていました。粘土のついた作業着やバケツなどもあり、ワークショップのプロセスを知ることも出来ました。



そもそもASSEMBLEはイギリスのリバプールで、荒廃したストリートを再生するプロジェクト、グランビー・ワークショップにおいても、地域住民とともに陶器や家具を制作していました。つまりグランビー・ワークショップでの取り組みを、日本の資生堂ギャラリーで改めて展開したわけでした。



一般的にスリップキャスティングの成型法では、決まった型を用いて大量に生産されますが、交換可能なパーツを利用すると、形にバリエーションを生み出すことが出来るそうです。そこに作り手の創意工夫が反映されるのかもしれません。


場内には、ギャラリーでのワークショップや益子での焼成を捉えた映像もあり、楽しそうに作陶に励む参加者の姿などが映されていました。出来上がった陶器はシンプルでかつスタイリッシュでしたが、必ずしも用途は明示されていないため、どのようなシーンで使うのかについて考えるのも楽しいかもしれません。

3月17日まで開催されています。

「アートが日常を変える 福原信三の美学 Granby Workshop : The Rules of Production
Shinzo Fukuhara/ASSEMBLE, THE EUGENE Studio Ⅱ展」 資生堂ギャラリー@ShiseidoGallery
会期:2019年1月16日(水)~3月17日(日)
休廊:月曜日。
料金:無料。
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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「ソフィ カル ─限局性激痛 原美術館コレクションより」 原美術館

原美術館
「ソフィ カル ─限局性激痛 原美術館コレクションより」
2019/1/5~3/28


Sophie Calle
Exquisite Pain, 1984-2003
© Sophie Calle / ADAGP, Paris 2018 and JASPAR, Tokyo, 2018


原美術館で開催中の「ソフィ カル ─限局性激痛 原美術館コレクションより」のガイドツアーに参加して来ました。

フランスの現代美術家のソフィ・カル(1958〜)は、かねてより写真や言葉で構成した、自伝的とも言える物語を紡いでは、作品を制作してきました。

そして1999年から2000年にかけ、自らの失恋の体験を素材とした「限局性激痛」を原美術館で発表し、大きな反響を呼びました。

その「限局性激痛」がフルスケールで再現されました。作品は前後編、つまり第一部と第二部に分かれていて、前半は失恋の体験を綴り、後半はその体験を他者に語って、代わりに相手の辛い体験を聞いては、心の傷を治癒していくプロセスを提示していました。


「ソフィ カル 限局性激痛」原美術館コレクションより 展示風景
©Sophie Calle / ADAGP Paris and JASPAR Tokyo, 2018 Photo by Keizo Kioku


はじまりは、ソフィが「人生最悪の日」とした、失恋の日の92日前でした。1984年、海外に3ヶ月滞在可能な奨学金を得たソフィは、あえて自らの文化とは異なった日本を選択し、フランスを出発すると、シベリア鉄道、中国から香港を経由して日本へと渡りました。日本へ至るまでに各地を転々としていて、最終的に日本に来たのは、20日以上も経ってからことでした。

日本での滞在中、ソフィは各地を旅し、目にした光景、あるいは日々の生活を写真に記録しつつも、パリにいた恋人と手紙をやり取りしていました。

第一部では、そうした写真や手紙がずらりと並んでいて、例えば新宿のバーや成人式、あるいはテレビでの相撲、はたまた旅館の朝食、さらには宿泊したホテルのキーなどが写されていました。そして全ての記録や恋人との手紙は、失恋の「人生最悪の日」に向けて、カウンドダウンするように構成されていて、ソフィの失恋の日へ至るプロセスを追体験出来るようになっていました。

3ヶ月の海外滞在を終えようとしたソフィは、インドのニューデリーで恋人と落ち合うように連絡を取りました。しかしニューデリーに出向くも、恋人はやって来ず、ここではじめてソフィは、愛する人に捨てられた、すなわち失恋したことを知るわけでした。

1985年、失意の中、フランスへ帰国したソフィは、「厄払い」(解説より)のために、自身の苦しみを人に語ることを決めました。そしてソフィは、「自分の苦しみを人に語れないことが一番辛い」として、代わりに話し相手にも、個々に辛い体験を語ってもらうことにしました。


「ソフィ カル 限局性激痛」原美術館コレクションより 展示風景
©Sophie Calle / ADAGP Paris and JASPAR Tokyo, 2018 Photo by Keizo Kioku


そのやりとりを記録したのが、後半の第二部で、ソフィの失恋の体験と、話し相手の辛い体験を、今度は写真と刺繍で示していました。この相手の体験が、想像を絶するほどに深刻な状況で、中には恋人の自殺を語る人もいました。結果的にソフィは、痛みが癒されるまで、おおよそ3ヶ月間、他者と語り合いました。


「ソフィ カル―限局性激痛」1999-2000年 原美術館での展示風景
© Sophie Calle / ADAGP, Paris 2018 and JASPAR, Tokyo, 2018


ここで興味深いのは、ソフィの刺繍によるテキストで、はじめは長々と細かに失恋の状況を記しているものの、日を追うごとに短くなり、最終的には「惨めな、ありふれた物語である。くどくどと繰り返すには値しない。」のような、どこか失恋の経験と決別を表すような、簡潔な言葉のみになっていました。また刺繍糸の色も変わり、黒い布地と一体化して、読めなくなりました。

ともかく第一部、第二部とも、赤裸々に心理が表現されていて、まさにソフィの長大なモノローグを聞いているようでした。と同時に、自らの痛みをさらけ出しつつ、他者の痛みを相対化するプロセスにおいても、多くのドラマが生みだされていました。ともかくひたすらに読ませる展開で、まるで複数の小説を同時に追っているかのようでした。


なお「限局性激痛」とは医学用語で、身体部位を襲う、狭い範囲の痛みを意味しているそうです。また日本滞在が切っ掛けとなって生まれた「限局性激痛」は、ソフィ自身が日本で最初で発表したいと考え、1999年の原美術館での展覧会のため、まず日本語版で制作されました。そしてのちに、フランス語版や英語版が発表されました。

3月28日まで開催されています。

「ソフィ カル ─限局性激痛 原美術館コレクションより」 原美術館@haramuseum
会期:2019年1月5日(土)~3月28日(木)
休館:月曜日。但し1月14日、2月11日は開館。1月15日、2月12日は休館。
時間:11:00~17:00。
 *水曜は20時まで。入館は閉館の30分前まで
料金: 一般1100円、大高生700円、小中生500円
 *原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生の入館無料。
 *20名以上の団体は1人100円引。
住所:品川区北品川4-7-25
交通:JR線品川駅高輪口より徒歩15分。都営バス反96系統御殿山下車徒歩3分。

注)写真は美術館より頂戴した広報用の図版を使用しています。館内の撮影は出来ません。
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「光悦と光琳ー琳派の美」 畠山記念館

畠山記念館
「光悦と光琳ー琳派の美」 
2019/1/19~3/17



畠山記念館で開催中の「光悦と光琳ー琳派の美」を見てきました。

琳派の祖、本阿弥光悦と、尾形光琳を中心とした、琳派に関したコレクションが、畠山記念館で公開されています。

光悦の「扇面月兎画賛」に魅せられました。薄や萩の生い茂る中、兎が扇の右半分に広がる月を見上げていて、月の金と大地の緑、さらに兎の白のコントラストも鮮やかでした。首をひねる兎には、躍動感も感じられて、跳ねる脚など、身体の一瞬の動きを巧みに捉えていました。



宗達と光悦による2つの和歌巻も大変な力作ではないでしょうか。うち「金銀泥四季草花下絵古今和歌巻」では、宗達が梅や躑躅、それに蔦など、四季の移ろいを示す草花を描き、光悦が書をリズミカルに記していて、下絵と書が極めて見事に調和していました。(会期中に巻替えあり)

工芸では、光悦の「赤楽茶碗 銘 雪峯」が絶品でした。これは口部から胴、高台へかけて火割れがあり、金粉で繕われた小ぶりの茶碗で、なだらかな白い釉薬を山に降る雪に、そして火割れを雪解けの渓流に見立てたことから、「雪峯」の銘が付けられました。ともかく火割れが生む表情が鮮烈で、白を雲に見立てれば、火割れは、まるで空に轟く稲光のようにも思えました。



光悦と光琳の名が冠された展覧会ですが、光琳の弟、乾山の作品もいくつか展示されていました。うち「黒楽茶碗 銘 武蔵野」は、胴に月と薄を白釉で線で描いたもので、シンプルながらも、風流な趣きをたたえていました。このほか、乾山では、半筒形の茶碗の胴に、笹を描いた「銹絵染付笹文茶碗」にも見入りました。

お馴染みの畠山コレクションだけに、何度か目にした作品も少なくありませんが、さすがの優品揃いで、見応えに不足はありません。今は少なくなった、自然光の差し込む展示室の中を何度か行き来しては、琳派の世界に酔いしれました。

展示替えの情報です。会期途中に半数以上の作品が入れ替わります。

「光悦と光琳ー琳派の美」畠山記念館(出品目録)*PDF

詳細はリンク先の出品目録をご覧下さい。(本エントリで紹介したいくつかの作品は、既に展示が終了しています。)



なお館内に「2019年6月17日より、大規模改築工事のため、しばらく休館します。」との案内がありました。現段階で詳細は不明ですが、大掛かりな設備の入れ替えや、文字通り、建物の改築が行われるのかもれません。



3月17日まで開催されています。

「光悦と光琳ー琳派の美」 畠山記念館
会期:2019年1月19日(土)~3月17日(日)
休館:月曜日。但し2月11日(月・祝)は開館し、2月12日(火)は休館。2月15日(金)。
時間:10:00~16:30(入館は16時まで)
料金:一般700(600)円、学生500(300)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:港区白金台2-20-12
交通:都営浅草線高輪台駅A2出口より徒歩5分。東京メトロ南北線・都営三田線白金台駅1番出口より徒歩10分。
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「未来を担う美術家たち 21st DOMANI・明日展」 国立新美術館

国立新美術館
「未来を担う美術家たち 21st DOMANI・明日展 文化庁新進芸術家海外研修制度の成果」
2019/1/23~3/3



国立新美術館で開催中の「未来を担う美術家たち 21st DOMANI・明日展」を見てきました。

文化庁の「新進芸術家海外研修制度」に参加した美術家を紹介するDOMANI展も、今年度で21回目を迎えました。

今回の出展作家は、主に昭和50年代に生まれた9名で、あわせて文化庁が作品を所有し、フィレンツェでも滞在経験のある日本画家、三瀬夏之介がゲストとして加わっていました。


和田的 展示風景

はじめは千葉県出身で、主に白磁を制作する和田的でした。「太陽」や「白器|記憶」など題した作品が、黒い台のケースに収められていて、いずれも乳白色に染まっていました。


和田的「白器|記録」 2017年 松森美術 ほか

一部には細かな装飾があるものの、全体としては抽象性を帯びていて、中には高層ビルなどの建築を連想させる作品もありました。


蓮沼昌宏 展示風景

続くのは、2016年からフランクフルトで研修した蓮沼昌宏で、映画の先祖とも呼ばれる動画装置、キノーラを用いた作品を展示していました。いずれもイラストの描かれた400枚から500枚の紙片が連なっていて、手で回すことにより、さながらパラパラ絵本のように物語が進む仕掛けとなっていました。


蓮沼昌宏「男木島」 2016年

ともかくアナログな味わいが魅力的で、海や緑、それに生き物らの登場した「直島」や「男木島」など、牧歌的な風景が展開する作品が特に面白いかもしれません。


村山悟郎「自己組織化する絵画(樹状多層構造)」 2017年
 
まるで展示室へ絵画が増殖するかのようでした。1983年に生まれ、2015年よりウィーンに滞在した村山悟郎は、麻紐とカンバスを織り、さらに下地やドローイングを施した「織物絵画」と呼ばれる作品を出展していました。


村山悟郎「自己組織化する絵画(樹状多層構造)」 2017年 部分

麻紐には棒針も付いていて、絵具やカンバス地などが、複雑に組み合っていました。一部は、人の顔や大きな鳥が翼を広げたような姿をしていて、いくつかの具体的なイメージも浮かび上がって来ました。

近年、ドキュメンタリーの手法で映像を手がける志村信裕は、羊から文化、経済、文化を巡るドキュメンタリー映像、「Nostalgia, Amnesia」を公開していました。


志村信裕「Nostalgia, Amnesia」 2019年

バスク地方の山岳地帯や南西フランスの小村、それに千葉県成田市の三里塚の地を巡りながら、それぞれに羊と関わる人々にインタビューを行っては、羊毛の価値や生産、それに食肉としてのあり方、さらには羊や戦争の関係などを明らかにしていました。


志村信裕「Nostalgia, Amnesia」 2019年

三里塚と牧場、さらに成田闘争の歴史や、そもそも日本でいつ羊が飼われたのかなど、テーマは多岐に及んでいて、全40分の映像も、気がつけば最初から最後まで見入っていました。なお本作は、2016年にパリで研修した作家による、研修後の初の本格的な新作でもあるそうです。


白木麻子 展示風景

2015年にベルリンで研修した白木麻子は、椅子や机と思しきものや、ガラスを取り込んだインスタレーションを展開していました。それらは一見すると家具のようであるものの、例えば底の抜けた椅子など、必ずしも本来的な用途を満たしていませんでした。


白木麻子「Liquid path - Buoyancy and dynamic」 2017年

いずれも複雑に組み合わされていて、まるで建築の断片を配したかのようでした。また宗教的な儀礼の場のような気配も感じられるかもしれません。


加藤翼 展示風景

メキシコシティやジャカルタで、ゲリラ的なパフォーマンスを行った加藤翼は、アーカイブを映像などで紹介していました。


加藤翼「Pass Between Magnetic Tea Party」 2015年

「Pass Between Magnetic Tea Party」は、メキシコシティの公道の路地でティーパーティをパフォーマンスで、人々が道の真ん中にテーブルを置いて道路を封鎖しつつも、車が来たら退かしては、パーティーをする光景を捉えていました。公と私の境界、ないし共同体のあり方に再考を促すようなテーマを有していましたが、端的に人々の行き来する楽しそうな姿が印象に残りました。


三瀬夏之介 展示風景

ラストを飾るのは、ゲスト作家の三瀬夏之介で、10年間の隔たりをもって描かれた2つの「日本の絵」を出展していました。とも国立新美術館のホワイトキューブを覆うほどに巨大な作品で、大変な迫力を見せていました。


今年度は、研修を終えてから期間の短い作家が選ばれているそうです。「平成の終わりに」と題したテーマはアバウトかもしれませんが、社会の様々な課題に目を向けた作品も多く、見ごたえは十分でした。なお志村信裕をはじめ、川久保ジョイなど、映像を中心とした展示も少なくありません。時間に余裕をもってお出かけ下さい。



全ての作品の撮影も可能です。3月3日まで開催されています。

「未来を担う美術家たち 21st DOMANI・明日展 文化庁新進芸術家海外研修制度の成果」@DOMANI_ten) 国立新美術館@NACT_PR
会期:2019年1月23日(水)~3月3日(日)
休館:火曜日。
時間:10:00~18:00
 *毎週金・土曜日は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大学生500(300)円、高校生以下無料。 
 *2月24日(日)は天皇陛下御在位30年を記念して無料。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
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「2019 MOMASコレクション第4期 特別展示:瑛九の部屋」 埼玉県立近代美術館

埼玉県立近代美術館
「2019 MOMASコレクション第4期 特別展示:瑛九の部屋」
2019/1/12~4/14



埼玉県立近代美術館で開催中の「2019 MOMASコレクション第4期 特別展示:瑛九の部屋」を見てきました。

1911年に宮崎に生まれ、画家や版画家、写真家としても活動した瑛九(1911〜1960)は、晩年、浦和に移住し、精力的に制作を行いました。

瑛九の重要な作品の1つに、浦和の地で描いた「田園」がありました。細かな色彩の点描の広がる抽象画ながらも、まるで空には太陽が輝き、下には大地が広がっているようでもあり、まさに長閑な田園を前にしたかのような趣きをたたえていました。


瑛九「田園」 1959年 *特別出品:加藤南枝氏蔵

そして現在、「田園」は、同美術館にて、ただ1つ、ある仕掛けを施した、独立の暗室にて公開されています。

その仕掛けとは、鑑賞者が、自由に明かりをコントロール出来ることでした。暗室の正面に「田園」があり、照明が当てられていましたが、手元の白いつまみを左右に回すと、それぞれ照明が暗くなったり、明るくなったりしました。つまりお好みの光の強さを調整して、「田園」を見られるわけでした。

これは「田園」を所有する、加藤南枝氏の発案で、1975年から1980年にかけ、日本とアメリカで企画した「ライト・デザイン」を引き継ぐものでした。

「私が長い時間をかけて発見した田園の魅力を、短い時間での劇的な経験として体験できるようにと考え出したのが、ライト・デッサンだった。」 加藤南枝 *解説より

私も実際につまみを動かし、照度を上げたり下げたりしましたが、当然ながら光の加減で作品の表情はかなり変化しました。明るいと色彩が華やぎ、より1つ1つの粒が飛び出してくるようでもあり、一方で暗くすると、色彩は沈み込み、何やら宇宙に瞬く星屑のようにも見えました。



さて瑛九に関した展示は「田園」のみに留まりません。さらに「瑛九と光春ーイメージの版/層」と題し、近年収集した瑛九の油彩、フォト・デザイン、コラージュのほか、瑛九の生涯の友人で、評伝を著した山田光春のガラス絵や素描も公開していました。

瑛九を中心に、両者の作品、資料を合わせると約80点にもおよび、1つの瑛九の企画展として捉えても差し支えないかもしれません。


ポール・シニャック「アニエールの河岸」 1885年 埼玉県立近代美術館

このほかにも、コレクション展として、新たに収蔵されたポール・シニャックの「アニエールの河岸」も初めてのお披露目となりました。シニャックが青年時代の1885年に制作した作品で、パリの近郊の町、アニエールを流れるセーヌ川を、ちょうど河岸の際に立って俯瞰するように捉えていました。川面のサーモンピンクが殊更に美しく、細かな色彩の筆触は、どこか瑛九の「田園」とも響きあうかもしれません。

なお同作は、昨年、埼玉県が2億9000万円で購入したもので、県が議決を必要とする7000万円以上の高額の絵画としては、1997年のシャガールの「二つの花束」以来のことになります。


「特別展示:瑛九の部屋」を含むコレクション展は、企画展の「インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」のチケットでも観覧可能です。お見逃しなきようにおすすめします。

4月14日まで開催されています。

「2019 MOMASコレクション第4期 特別展示:瑛九の部屋」 埼玉県立近代美術館@momas_kouhou
会期:2019年1月12日 (土) ~4月14日 (日)
休館:月曜日。但し2月11日は開館。
時間:10:00~17:30 
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般200(120)円 、大高生100(60)円、中学生以下は無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *企画展チケットで観覧可。
住所:さいたま市浦和区常盤9-30-1
交通:JR線北浦和駅西口より徒歩5分。北浦和公園内。
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「インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」 埼玉県立近代美術館

埼玉県立近代美術館
「インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」
2019/2/2~3/24



埼玉県立近代美術館で開催中の「インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」を見てきました。

かねてより建築には、完成に至らなった構想や、提案のみに留められたアイデアが数多く存在してきました。

そうしたアンビルト、未完の建築を紹介したのが、「インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」で、約40名の建築家、及び美術家による、実現し得なかった建築の資料を展示していました。


ウラジーミル・タトリン「第三インターナショナル記念塔」 1919〜20年 コンピューター・グラフィックス(1998年)

冒頭からしてインパクトの強いアンビルドが待ち構えていました。それがロシアのウラジーミル・タトリンの「第3インターナショナル記念塔」で、労働者の国際組織のための塔として考案されました。高さは、当時、世界で最も高かった、エッフェル塔の300メートルを超えた400メートルで、鉄の螺旋状の構造の中に、ガラスの建物が4つ連なっていました。

1919年に発注され、完成した6メートルの模型は、パレードにも出展されましたが、技術的な問題や、内戦による混乱により、建てられませんでした。その姿は、まるでロケットの発射台、あるいはSFの宇宙船のようで、完成していれば、さぞかし人々に強い印象を与えたに違いありません。

ブルーノ・タウトが、日本で唯一、大規模な設計を行った「生駒山嶺小都市計画」も、実現し得えなかった建築でした。これは1933年から34年にかけ、当時の大阪電気軌道、現在の近畿日本鉄道の依頼によって作られた構想で、生駒山に遊園施設やホテル、住宅などを配した「山の市街」なるものでした。

前川國男の「東京帝室博物館建築設計図」も興味深いプランでした。1930年に公募された旧東京帝室博物館、つまり今の東京国立博物館の本館の設計案で、設計主旨の「日本趣味の東洋的建築様式」に反し、あえてホワイトキューブを基調としたモダニズム的な建築を提案しました。結果的に、渡辺仁の案が当選し、現在の和洋折衷的な帝冠様式をとる建物が築かれました。


黒川紀章「東京計画1961- Helix計画」 模型 1961年

このほか、菊竹清訓の「国立京都国際会館設計競技案」や、黒川紀章の「東京計画1961」なども印象的ではないでしょうか。うち後者は二重螺旋構造をしたメガストラクチャーで、数百万人が住めるように、東京湾の上に増殖可能な都市プランとして構想されました。まさに高度経済成長を反映したかのような、壮大なスケールを目にすることが出来ました。


荒川修作+マドリン・ギンズ「問われているプロセス/天命反転の橋」 模型 1973〜89年

1つのハイライトと呼べるのが、荒川修作+マドリン・ギンズの「問われているプロセス/天命反転の橋」で、フランスのエピナール市のモーゼル河にかける橋として構想されました。しかし端的に橋と言っても、大変に独特な形状をしていて、中に21の構造物が連なり、通過すると人の感覚が更新されることを意図していました。実際には140メートルで構想されていて、会場内には13メートルの模型があり、異様なまでの迫力を見せていました。


藤本壮介「ベトンハラ・ウォーターフロント・センター」 コンピューター・グラフィックス 2012年

アンビルトにも魅惑的な建物は数多く存在します。私が特に引かれたのは、藤本壮介の「ベトンハラ・ウォーター・フロントセンター」で、セビリアの首都、ベオグラードに流れるサヴァ川沿いに、商業や展示スペースを有した複合施設として構想されました。中でも、藤本が「浮遊する雲」と呼んだ、リボン状に渦を巻いたブリッジが特徴的で、建物の内外に行き来出来るように作られていました。

美術家では会田誠や山口晃も目立っていたかもしれません。「シン日本橋」と「新東都名所 東海道中 日本橋改」では、現在の日本橋の上の首都高の上、さらに巨大な木製の太鼓橋を築き上げていました。こうした美術家らの建築に対したアイデアを紹介するのも、今回の展覧会の大きな特徴でした。


ザハ・ハデッド・アーキテクツ+設計JV(日建設計・梓設計・日本設計・オーヴ・アラップ・アンド・パートナーズ・ジャパン設計共同体)「風洞実験模型」(縮尺1/300)

ラストはザハ・ハデッドの「新国立競技場」でした。この施設は、言うまでもなく、国立競技場の後継施設として構想されたもので、一度、デザインコンクールに採用されたものの、白紙化されて、実現に至りませんでした。詳細な風洞模型や、分厚い実施設計書などが並んでいて、改めて建物が着工を待つのみであったことを知ると、何とも言い難い複雑な心境にさせられました。


必ずしも取っ付きやすい内容ではないかもしれませんが、解説が詳細で助かりました。数多くある建築展の中でも、あえて「未完」に着目した、異色の展覧会と言えそうです。



3月24日まで開催されています。

「インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」 埼玉県立近代美術館@momas_kouhou
会期:2019年2月2日 (土) ~3月24日 (日)
休館:月曜日。但し2月11日は開館。
時間:10:00~17:30 
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1200(960)円 、大高生960(770)円、中学生以下は無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *MOMASコレクションも観覧可。
住所:さいたま市浦和区常盤9-30-1
交通:JR線北浦和駅西口より徒歩5分。北浦和公園内。
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「イケムラレイコ 土と星 Our Planet」 国立新美術館

国立新美術館
「イケムラレイコ 土と星 Our Planet」
2019/1/18~4/1



国立新美術館で開催中の「イケムラレイコ 土と星 Our Planet」を見てきました。

1951年に三重県で生まれ、70年代にスペインへ渡り、長らくヨーロッパで活動するイケムラレイコは、絵画に彫刻、水彩のほか、版画や写真など、多様なメディアを横断しては、作品を制作してきました。

冒頭は「ブロローグ」における、1970年代のエッチング、「生命の循環」の拡大版に目がとまりました。それは植物や生き物、またはイメージ言葉など、のちのイケムラの制作を特徴付ける要素を四季図として示した作品で、「どこへ向かうべきか」などといったテキストとともに、有機的なモチーフが円の中に描きこまれていました。

そして展示は、「プロローグ」以降、ラストの「エピローグ」に至るまで、全部で16のセクションに分かれていて、「生命の循環」が、最初と最後を繋ぐ1つの重要な作品となっていました。


「有機と無機」展示風景

イケムラが粘土による彫刻を手がけたのは、1980年代末になってからのことでした。一連の彫刻を紹介した「有機と無機」では、人間、あるいは生き物のような形をした作品が、緑色のステージの上に並んでいました。ただし人間をとっても、顔を持つ者や、そうでない者もいて、その姿を一様に括ることは出来ませんでした。


「有機と無機」展示風景

そもそもイケムラは、粘土をこね、不定形な塊を築いてから、イメージを生む作業をしていて、いずれの彫刻も、手の指で練った跡が生々しいまでに残されていました。一部はまるで古代の遺品のような雰囲気をたたえていて、プリミティブな印象も与えられました。

「アマゾン」のセクションに目がとまりました。暗がりの空間に、剣を持った女性を写した、おおよそ2メートル近くはあろうかいう版画が、天井より何点か吊るされていました。これらは、ギリシャ神話の武勇を誇る女性民族をモチーフとした近作で、さらに耳を澄ますと、ジャングルをイメージしたのか、虫の鳴き声も聞こえました。

こうした戦いも、イケムラが早くから取り組んできた主題の1つで、まさに「戦い」では、例えば神風特攻隊の写真に着想を得た「カミカゼ」など、戦争をテーマとした作品を展示していました。但し「カミカゼ」の一枚を撮っても、戦闘機や戦艦などのモチーフは判然とせず、終始、色彩は混じっていて、遠目からでは抽象画のようにも見えました。


「うさぎ観音」展示風景

1つのハイライトと化していたのが、「うさぎ観音」でした。兎の耳をした、高さ3メートルを超える人型の彫像で、中は空洞になっていました。彫像は両手を胸にあてながら、まさに観音のごとくに、慈悲深い面持ちで前を見据えていました。その造形には、2011年の東日本大震災で被災した人々への祈りが込められているそうです。


「庭」展示風景

また「庭」と題した屋外の展示場にも、もう一体の「うさぎ観音」がいました。先の観音と同様に、胸の前で両手を重ねながら立っていましたが、より悲しみに暮れているのか、涙を流しているかのような表情を伺えました。これは滋賀県立陶芸の森で、多くの人々の協力を得て作られた作品で、特別な釉薬がかけられました。私が出向いた際は曇天で、一面のグレーに染まっていましたが、天候や時間を変えると、また違って見えるかもしれません。

地平線や水平線も、イケムラの重要な主題でした。うち「オーシャン」は、暗がりの海辺の中、黄色の光とともに、まるで幽霊のように佇む少女の姿を捉えていました。その幻想的の光景はもとより、絵具が滲み、織り成して出来た、透明感のある色彩自体も魅力ではないでしょうか。


「コスミックスケープ」展示風景

イケムラは2010年代より、東洋の「アニミズム世界観」(解説より)を表した大画面の絵画を描くようになりました。それらが一堂に会したのが、「コスミックスケープ」のセクションで、会場内で最も広いスペースをぐるりと一周、取り囲むように作品が並んでいました。


「コスミックスケープ」展示風景

山や水辺、そして時折、木立のある山水の幽玄な光景が、どこか水墨を思わせるような淡い色彩にて描かれていて、中には、自然と一体化したかのような人物の姿が見られました。


「コスミックスケープ」より「うねりの春」 2018年

昨年の新作「うねりの春」も、「コスミックスケープ」に連なる作品で、オレンジや赤などの明るい色遣いにて、自然の景色や人間、そして何にも似つかない有機物を表していました。ほかの「コスミックスケープ」よりも、不思議な高揚感があり、何やら空間を祝福するかのような光が満ちていました。


「コスミックスケープ」展示風景

イケムラは「コスミックスケープ」の制作に際し、キャンバスを床に置き、その中に入るようにして描いていくそうです。一連の作品は全てが循環しては繋がるかのようで、そこに広がる夢幻的な光景に見入っていると、何やらまだ知らぬ別の星の大地を彷徨っているかのような錯覚に陥りました。

ラストの「エピローグ」には、冒頭に登場した「生命の循環」のオリジナルのエッチングがありました。そこから再び「プロローグ」へと戻ることは出来ませんが、循環、言い換えれば生命の転生も、1つの大きなテーマなのかもしれません。


「コスミックスケープ」より「うねりの春」(部分) 2018年

イケムラの大規模な個展として思い起こすのは、2011年の秋、東京国立近代美術館で行われた「イケムラレイコ うつりゆくもの」でした。生地である三重県立美術館にも巡回しました。

その時も、「イントロダクション」よりはじまる全15章立ての構成で、今回と同様、何ら時系列に作品が並んでいたわけではなく、「うみのけしき」や「成長」、それに「出現」など、各テーマの元にイケムラの制作が紹介されていました。もちろん私も見に行きました。


以来、約10年弱、イケムラは「社会に向き合う態度をより意識」(解説より)するようになったとしています。変わりゆくものと変わらないものについて考えながら、まるで人間や動物、神、そして宇宙に大地、さらに生と死を巡る一大叙情詩のように展開した、イケムラの作品世界に見入りました。



一部の展示室は撮影も可能でした。本エントリに掲載の写真も、全て撮影可コーナーで写しました。



4月1日まで開催されています。おすすめします。

「イケムラレイコ 土と星 Our Planet」 国立新美術館@NACT_PR
会期:2019年1月18日(金)~4月1日(月)
休館:火曜日。
時間:10:00~18:00
 *毎週金・土曜日は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大学生500(300)円、高校生以下無料。 
 *2月24日(日)は天皇陛下御在位30年を記念して無料。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
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「小原古邨」 太田記念美術館

太田記念美術館
「企画展 小原古邨」
2019/2/1~3/24



明治10年に金沢に生まれ、明治末期から昭和前期にかけ、主に輸出向けの木版花鳥画を制作した小原古邨(1877~1945)は、これまで海外で高い評価を得てきました。一方で、国内では、必ずしもよく知られた木版画家ではありませんでした。

しかし昨年、茅ヶ崎市美術館で行われた「小原古邨展―花と鳥のエデン」は、口コミなどで評判も広がり、会期終盤には入場が規制されるほど人気を博しました。

古邨ブーム再びとなるかもしれません。太田記念美術館にて「企画展 小原古邨」が開催されています。

さて今回の古邨展は、茅ヶ崎の「小原古邨展―花と鳥のエデン」の巡回展ではなく、別の摺りの作品が出展されていましたが、何よりも構成が最も異なっていました。

つまり、茅ヶ崎では、春夏秋冬の季節別に作品を並べていましたが、太田記念美術館では、原則、画業を時系列に紹介する内容になっていました。特に古邨が、それぞれ版元であった松木平吉(大黒堂)と秋山武右衛門(滑稽堂)と制作した、明治末期までにウエイトが置かれていて、昭和に入り、新版画を進めた渡邊庄三郎(渡邊版画店)と作った作品と、半ば比較するかのように展示されていました。


小原古邨「鵞鳥」 個人蔵 *前期展示

元々、日本画家に師事していた古邨は、木版画への道を進み、大黒堂と滑稽堂から、多くの作品を世に送り出しました。明治末までの古邨の作風は、淡い色彩と基調として、時に水彩と見間違うかのような、日本画とも言える魅力をたたえていました。

そもそも画稿も、絹本に肉筆で描き、写真湿板で写した物を下絵にしていて、「桜に烏」などは、瑞々しい色彩を伴っていました。こうした一連の画稿が数点出ているにも特徴で、古邨のリアルな筆の息遣いを見ることが出来ました。


小原古邨「蓮に雀」 個人蔵 *前期展示

「柿に目白」も魅惑的な一枚で、丸々と熟れた朱色の柿の実に、白い腹をした一羽の目白がとまる姿を描いていました。背景はうっすらと青みがかっていて、大気や空を表しているかのようでした。

「雨中の桐に雀」も印象に深い作品で、細い線で示された雨の中、3羽の小さな雀が、桐の葉の下で雨宿りをしていました。ともかく古邨は鳥などの小動物を描くことに長けていて、木兎や鷺、鳩に鶏など、思わず目を細めてしまうほどに愛らしい生き物がたくさん登場していました。

「滝に鶺鴒」にも目がとまりました。瑞々しい青みを伴った、滔々と水の落ちる滝壺の岩に、一羽の鶺鴒がとまっていて、細かな波が辺りを渦巻いていました。水の筋から波の飛沫など、大変に精緻な表現で、水のグラデーションも細かに表現されていました。その色彩の透明感は、おおよそ木版とは思えないかもしれません。

チラシの表紙を飾った「踊る狐」は、木版と試摺が並べて展示されていました。まるで擬人化した狐が踊る異色作で、微笑ましい姿を見せていましたが、試摺には毛並みを柔らかくすなどの指示が書かれていて、古邨の表現に対してのスタンスも伺うことが出来ました。


小原古邨「紫陽花に蜂」 渡邊木版美術画舗 *前期展示

昭和に入った古邨は、版元を渡邉庄三郎の渡邉版画店に替え、再び輸出向けの木版画を制作しました。この頃の作品は、以前も色彩が鮮やかで、まさに時流に乗った新版画的な木版表現を主体としていました。この明治末までと昭和期における作風の変化も、古邨を追う上で重要なポイントで、これほど版元で作品の表情が異なるとは思いませんでした。

渡邊版画より出た「月夜の桜」は、画稿、試摺、木版と3点が揃っていました。画稿には、満月の下、桜の花が赤紫色になる光景を描いていて、試摺でも同様の表現が見られました。しかし完成した木版は、画稿と大いに色が異なり、全てがまるで巴水画を思わせるような藍一色に染まっていました。これは渡邊が意図して変えたものでしたが、受け手側のニーズに応えるためのものだったのかもしれません。



そのほか、主に夜の戸外を描いた珍しい風景画も目を引きました。既に茅ヶ崎でご覧になった方も多いかもしれませんが、画稿と木版の比較しかり、また新たな視点で古邨の画業を知ることが出来るのではないでしょうか。


小原古邨「月に木菟」 個人蔵 *後期展示

会期の情報です。展覧会は完全2期制です。前後期で全ての作品が入れ替わります。総出展数は150点ですが、一度に見ることは叶いません。

「企画展 小原古邨」出展リスト(PDF)
前期:2月1日(金)~24日(日)
後期:3月1日(金)~24日(日)

最後に会場内の状況です。私はタイミング良く、平日の夕方前に行くことが出来ました。よって館内にはかなり余裕があり、どの作品もじっくり見られました。閉館前は人も疎らで、ほぼ貸切でした。


しかし一度、茅ヶ崎で話題を集めた小原古邨を、今度は東京で紹介する単独の回顧展です。実に茅ヶ崎の展覧会以前、小原古邨の作品がまとめて公開されたのは、1998年の平木浮世絵美術館にまで遡らなくてはなりません。

「小原古邨 花咲き鳥歌う紙上の楽園/東京美術」

後半にかけて混み合うことも予想されます。早めの鑑賞をおすすめします。



3月24日まで開催されています。

「企画展 小原古邨」 太田記念美術館@ukiyoeota
会期:2019年2月1日(金)~3月24日(日)
 *前期:2月1日(金)~24日(日)、後期:3月1日(金)~24日(日)
休館:2月4日、12日、18日、25日~28日、3月4日、11日、18日。
時間:10:30~17:30(入館は17時まで)
料金:一般700円、大・高生500円、中学生以下無料。
住所:渋谷区神宮前1-10-10
交通:東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅5番出口より徒歩3分。JR線原宿駅表参道口より徒歩5分。
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「酒呑童子絵巻 鬼退治のものがたり」 根津美術館

根津美術館
「酒呑童子絵巻 鬼退治のものがたり」
2019/1/10~2/17



根津美術館で開催中の「酒呑童子絵巻 鬼退治のものがたり」を見てきました。

都の貴族の娘を略奪しては食らい、のちに源頼光らによって退治された酒呑童子の物語は、おおよそ14世紀頃に成立し、御伽草子として絵巻物や奈良絵本に描かれてきました。

そして酒呑童子の物語の諸本は、鬼の住処により、大江山と伊吹山の2系統に分かれ、根津美術館が所蔵する3作は、いずれも伊吹山系に属するそうです。

その酒呑童子の3種の絵巻、すなわち16世紀(室町時代)と17世紀(江戸時代)、19世紀(江戸時代)の作品が、一堂に公開されました。うち後者の2巻は、順に伝山楽、住吉弘尚の作とされ、19世紀の絵巻は、前半に酒呑童子の生い立ちを加えるという、ほかに類を見ない構成をとっていました。


「酒呑童子絵巻」 日本・室町時代 16世紀 根津美術館

はじめの16世紀の「酒呑童子絵巻」は、それこそ御伽草子絵巻に相応しく、稚拙な描写を特徴としていて、とりわけ大きな口を開けて熟睡する酒呑童子は、まるで赤ん坊が眠り込むかのるように可愛らしい姿をしていました。本作は元々、3巻構成であったとされるものの、現在は中巻の部分のみ残されています。


「酒呑童子絵巻」 伝狩野山楽 日本・江戸時代 17世紀 根津美術館

続く17世紀の伝山楽作とされる「酒呑童子絵巻」は、写実的な人物と花鳥の緻密な表現が目立っていて、大和絵風の典雅な作風を見せていました。ラストの酒呑童子が退治される場面においても、室内に置かれた金屏風が極めて細かく描かれていて、相当に腕の立つ絵師が関わっていることを伺えました。


「酒呑童子絵巻」 住吉弘尚筆 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館

ラストの住吉弘尚による19世紀の「酒呑童子絵巻」は、全8巻本の大作で、大変に長く、展示でもケースの大半を占めていました。先にも触れたように、前半の4巻に酒呑童子の半生が描かれていて、一体、酒呑童子がどのように生まれ、生活し、幼くして悪事を働いていたことが明らかにされていました。

それによると、近江国の伊吹明神の子に生まれた酒呑童子は、3歳にして酒を飲み、禁酒のために比叡山へ行くものの、再び酒を飲んで暴れては、最澄に追放され、伊吹の岩屋に住みました。そしてそこでも悪行を働いたため、最澄が童子調伏の修法を行い、都より終われ、100年間潜伏しました。



しかし最澄の亡きあと、再び悪事を働いたため、今度は一条天皇によって、源頼光に追討の命が下されました。そして頼光は、渡辺綱をはじめとした四天王ら6名の部隊を結成し、住吉や熊野、八幡の神の加護を受けて、酒呑童子の元へと向かいました。三神には、人には薬であるものの、鬼には毒となる酒や、兜などを授かりました。


「酒呑童子絵巻」 住吉弘尚筆 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館

その後、結果的に、頼光一行は、酒呑童子に酒を飲ませ、大いに酔わし、前後不覚にさせては、首を落とすわけでした。なお酒呑童子の首は、刎ねられてもなお、頼光にかぶりつこうとしましたが、神の兜をかぶっていたため、無傷でした。

いずれも全般的に端正な描写ではありましたが、例えば酒呑童子が大酒を飲み、顔を真っ赤にして暴れる姿などは、酔っ払いの容態を目にするようで、とても臨場感がありました。一部こそパネルであるものの、ラストの凱旋の場面まで紹介されていて、絵巻を追うと、酒呑童子の物語の筋が良く理解出来るようになっていました。ともかく酒呑童子の一本にテーマを絞った構成で、徹頭徹尾、酒呑童子でした。どこよりも酒呑童子に詳しくなれる展覧会と言っても良いかもしれません。


同時開催のコレクション展では、この時期の恒例となった、伝山楽の「百椿図」もあわせて公開されていました。こちらもお見逃しなきようにおすすめします。



2月17日まで開催されています。

「酒呑童子絵巻 鬼退治のものがたり」 根津美術館@nezumuseum
会期:2019年1月10日(木)~2月17日(日)
休館:月曜日。但し1月14日(月・祝)、2月11日(月・祝)は開館し、翌1月15日(火)、2月12日(火)は休館。
時間:10:00~17:00。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1100円、学生800円、中学生以下無料。
 *20名以上の団体は200円引。
住所:港区南青山6-5-1
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A5出口より徒歩8分。
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「山口晃 昼ぬ修羅」 横浜能楽堂

横浜能楽堂
「山口晃 昼ぬ修羅」 
2019/1/19~3/23



横浜能楽堂で開催中の「山口晃 昼ぬ修羅」を見てきました。

かねてより能では、源平の武将らを主人公に、合戦の有様を描きつつ、人間の苦悩を表現した「修羅物」が演じられてきました。一方で現代美術家の山口晃も、中世の武士を現代に置き換えたような、時空の入り混じった合戦図などを制作してきました。

その修羅をテーマとしたのが、「昼ぬ修羅」と題した個展で、展示廊に留まらず、能楽堂の全体のスペースを用いてインスタレーションを展開していました。



梅の樹のオブジェの配された能舞台もインスタレーションの一環でした。見所、いわゆる客席に目を転じると、多くの弓が置かれていることがわかりました。



それらはまるで波を描くように弓は連なっていて、古くから日本に伝わり、能の装束にも取り入られた、青海波を意味していました。また耳を傾けると、能舞台では通常、聞き得ない音が響いていることに気づきました。元来、能舞台は屋外にあったとされていて、山口は見所を海に見立てたのかもしれません。



2階の展示廊では、山口の新旧の絵画が展示されていました。いずれも「洞穴の頼朝」や「西海」などの源平の合戦や武者、あるいは「波の結晶」といった水や波などをモチーフにした作品で、能楽堂の備品と入り混じるように置かれていました。



これらは山口が能楽堂の収蔵庫から取り出してきたもので、能面に榊、そしてお茶を入れるようなポットや盥、さらには館内案内板などもありました。



絵画と備品との関係は必ずしも明らかではありませんが、備品の一部がまるで武士の刀に見えるなど、時に相互に意味を持ち得ているかのようでした。



なお武士が波に揉まれ、海中に沈む姿を描いた新作の「入水清経」は、まだ完成していませんでした。会期中、随時、手が加えられ、会期末までには出来上がるそうです。



2階の休憩室のインスタレーションも見逃せません。タイトルは「与一の景」で、備品によるバリケードの向こうに、金屏風を背にしたテーブルセットが設えていました。そして煌々と明かりがついていたものの、宴席には人の気配がなく、終始、無人でした。



これは怪談の「耳なし与一」をテーマにした作品で、盲目の琵琶法師の与一が琵琶を演奏した場所が、実は鬼火に囲まれた平家一門の墓場であったことに由来していました。つまり無人のテーブルセットは墓場の宴席であり、バリケードは此岸と彼岸の境界であることを意味していたようでした。



受付に出品一覧と館内案内図が用意されていて、大まかな展示位置は分かりますが、キャプションは一切なく、ともすれば見落としてしまうような作品も少なからずありました。率直なところ、今でも全ての作品を鑑賞出来たのか自信がありません。



山口の作品世界をどう捉えるかについては、あくまでも見る側に委ねられているようです。何やら謎かけを目の当たりにしているかのようでした。

最後に観覧に際した注意事項です。会期は3月23日まで続きますが、開館日の全ての時間で自由に見学出来るわけではありません。



休館日はもちろん、開館日においても、有料公演が開催される際は、舞台のチケットが必要です。また施設使用時には、一部の作品が見られない場合があります。

公式サイトに入場可能な日と時間についての案内が掲載されています。必ず事前に公開日時を確認の上、お出かけ下さい。(現在のところ、2月15日までのスケジュールが公開中。)


「特別展 山口晃 昼ぬ修羅 ご入場可能な日と時間について」横浜能楽堂

会場の横浜能楽堂は、桜木町駅より紅葉坂を上がり、右手へ折れた、掃部山公園の中にあります。みなとみらいを一望出来る高台に位置し、正面が神奈川県立図書館でした。



桜木町駅から歩いて15分ほどでしたが、横浜美術館からもランドマークタワーなどを経由して、おおよそ20分強でした。横浜美術館へお出かけの際に立ち寄るのも良さそうです。



観覧は無料です。(ただし舞台有料公演時はチケットが必要。)3月23日まで開催されています。

「山口晃 昼ぬ修羅」 横浜能楽堂@YokohamaNogakud
会期:2019年1月19日(木)~3月23日(土)
休館:1月21日(月)、28日(月)、2月4日(月)、5日(火)、6日(水)、26日(火)、3月4日(月)、5日(火)、6日(水).
 *施設使用時には一部の作品が観覧不可。
時間:9:00~20:00
料金:無料。但し本舞台有料公演時は舞台チケットが必要。
住所:横浜市西区紅葉ケ丘27-2
交通:JR線・市営地下鉄線桜木町駅より徒歩15分。京浜急行線日ノ出町駅より徒歩18分。
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