N響定期 「ブラームス:交響曲第4番」 アシュケナージ

NHK交響楽団 第1703回定期公演 Aプログラム2日目

R. シュトラウス 「変容」
ブラームス 交響曲第4番ホ短調 作品98

管弦楽 NHK交響楽団
指揮 ウラディーミル・アシュケナージ

2011/5/29 15:00~ NHKホール



2007年までN響の音楽監督をつとめ、現在は桂冠指揮者の地位にあるアシュケナージが名曲を披露します。N響定期を聴いてきました。

冒頭の「変容」を簡潔に表せば実直な演奏と言えるかもしれません。ゲーテの「植物変容論」に由来するというこの作品は、弦楽合奏で紡がれる瞑想的な響きが印象に深い音楽ですが、アシュケナージは各モチーフを丁寧に積み上げ、破綻のないように手堅くまとめていきます。

途中、ワーグナーのトリスタンやエロイカの第2楽章など、言わばどこか英雄や死を連想させるモチーフも登場しますが、アシュケナージのアプローチは決して絶望のどん底まで踏み込むことはありません。N響の比較的ソフトタッチな弦の響きは、あくまでもホールを優し気に満たしていました。

一転してのメインのブラ4は大迫力の演奏です。テンポを幾分遅めにとり、一つ一つのフレーズを丁寧に歌い上げつつも、時折耳をつんざかんとばかりに金管を咆哮させ、ともかく音という音を前に出してこの曲の持つ力強さを表現していきます。

まさに重厚長大路線のブラームスです。たとえばバロック時代の音楽との関連も指摘される第4楽章の「知的な運動」(解説冊子より引用)はもっとアクロバットな音の乱舞となり、あくまでも横の線を重視した、極めて没入的な演奏が繰り広げられていました。

なお余談ですが、開演前の室内楽は震災の影響により取りやめとなっていました。予定では6月いっぱいまで中止されるそうです。ご注意下さい。
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「メトロポリタン・オペラ(MET)」日本公演、いよいよ開催!

世界最高峰とも呼ばれるアメリカのメトロポリタンオペラが、もう間もなく、この6月に5年ぶりの来日を果たします。メトと言えば豪華なキャストに絢爛な舞台を誇るオペラの殿堂としてご存知の方も多いのではないでしょうか。



KDDI オペラスペシャル「メトロポリタン・オペラ(Met)」2011年6月日本公演

・名古屋公演 愛知県芸術劇場大ホール
 「ラ・ボエーム」6/4
 「ドン・カルロ」6/5 
・東京公演
 「ラ・ボエーム」6/8、6/11、6/17、6/19 NHKホール
 「ドン・カルロ」6/10、6/15、6/18 NHKホール
 「ランメルモールのルチア」6/9、6/12、6/16、6/19 東京文化会館
・MET管弦楽団特別コンサート 6/14 サントリーホール




プッチーニ、ヴェルディ、そしてドニゼッティとイタリアもの王道3作を引っさげての来日です。震災の影響等により一部出演者に変更、及び体調不良により音楽監督のレヴァインがキャンセルとなりましたが、それでも遜色ないメンバーでの公演となりました。


ドン・カルロ(第三幕) Ken Howard

中でもレヴァインの代役として登場した指揮のルイージには大注目です。ルイージは近年、ドレスデン国立歌劇場の音楽監督をつとめ、現在もMETの首席客演指揮者、また2012年からはチューリッヒ歌劇場音楽総監督にも就任が予定されていますが、私見からすればイタリア人指揮者で今、最も魅力的なオペラ指揮者と言えるのではないでしょうか。

そのルイージがMETという超実力派の歌劇団を指揮します。かつて私自身、新国立劇場で彼の振るパリアッチとカヴァレリアのあまりにも美しいカンタービレに涙したことがありますが、今回もルイージの登場するボエームとドン・カルロは音楽面でも非常に期待が持てる内容となりそうです。

キャストではお馴染みのソプラノ二名、MET常連のフリットリ、そして人気のネトレプコを挙げないわけにはいきません。

5/31追記:原発事故の影響によりキャストがさらに変更となりました。ネトレプコは降板です。

メトロポリタン・オペラ出演者変更のお知らせ

また残念ながら欧州の公演で定評のあるカウフマンは降板となってしまいましたが、それでも二度目の来日となるバリトンのホロストフスキーらにも注目が集まるのではないでしょうか。


ラ・ボエームより Marty Sohl

震災の影響により各種公演そのものが中止される中、このMETの来日は音楽シーンにとって大きな話題となるに違いありません。本公演にあわせ、MET総裁で、オペラの改革者としても名高いピーター・ゲルブも力強いメッセージを発しています。

メトロポリタン・オペラ総裁 ピーター・ゲルブ氏のメッセージ(観光庁WEBサイトより)

なお先行する名古屋公演にあわせて、既に名古屋へは歌劇団のメンバーが到着しているそうです。最新情報は主催のジャパンアーツによるブログ、ツイッターでも更新されています。そちらもあわせてご覧ください。

オペラブログ @met_japan(ツイッターアカウント)

またN響でも親しみのあるノセダに関心のある方も多いのではないでしょうか。日本ではコンサート物が多いノセダですが、マリインスキーでゲルギエフに師事した経歴でもよく知られています。意外にも表情を巧みに変化させる繊細な指揮ぶりが印象深いだけに、ルチアというドニゼッティの中でもとりわけ細やかな音楽のついた作品の指揮ぶりにも大いに注目したいところです。


ランメルモールのルチアより Ken Howard

今月号のモーストリー・クラシックでMETが特集されています。同WEBサイト上では一部、内容の「立ち読み」が可能です。こちらも公演までしばらく楽しめるのではないでしょうか。

「MOSTLY CLASSIC/07月号」

公演の詳細、またチケット情報については改めて日本公演の公式サイトでご確認下さい。E、F席については全て完売していますが、それ以上のランクの券種ではまだ比較的チケットにも余裕があるそうです。

KDDI オペラスペシャル「メトロポリタン・オペラ(Met)」日本公演



METと言えば最近評価の高い映画館でのライブビューイングをはじめ、ネット上でもラジオ放送など、より身近な場所での活動も光っています。それを踏まえての5年ぶりの来日公演、また深化した舞台を楽しませてくれそうです。
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「江川純太展 - 正解も不正解も消えた。それが答えなのか?」 eitoeiko

eitoeiko
「江川純太展 - 正解も不正解も消えた。それが答えなのか?」
5/7-6/4

eitoeikoで開催中の「江川純太展 - 正解も不正解も消えた。それが答えなのか?」へ行ってきました。

作家プロフィールについては同ギャラリーWEBサイトをご覧ください。

江川純太 Junta Egawa@eitoeiko

同ギャラリーでの江川の個展は、昨年8年に続き、2度目です。また4月にスパイラルで行われたアートフェア「行商」でも出品がありました。



さて前回展では、シルバーに染まったキャンバスの上を、青や赤のドットやストロークが滲むような作風が印象的でしたが、今回は表情が変化し、言わば色やモチーフに強度のある、より抽象性の高い絵画となっています。

色彩はストロークというよりもブロックのように固まってキャンバスに打ちつけられ、シルバーのキャンバスと相対するようにうねり、また沈みこみ、さらには打ちつけられるようにこびりついていました。色が高らかに自己主張をしています。各々は激しくぶつかり合っていました。



キャンバスにより近づいて見ると迫力が増すかもしれません。複雑に絡み合う色は時にナイフで切り込みを入れられたかのように断絶しています。そのせめぎあう様はどこかスリリングでした。



しかしながらメッセージ性の強いタイトルとの関係も考慮するべきかもしれません。「彼女は何故、ないているのですか?」と題された一枚の油彩の向こうには、確かに一人で泣く女の子の幻影が見え隠れしているように思えてなりません。抽象の向こうには心象風景が名残惜しそうに広がっていました。

なお作家、江川は本年度のトーキョーワンダーウォールに入選しました。明日、5/28より開催予定の入選作品展にも出品があるそうです。

ーキョーワンダーウォール公募2011入選作品展@東京都現代美術館 5/28~6/19

6月4日まで開催されています。

「江川純太展 - 正解も不正解も消えた。それが答えなのか?」 eitoeiko
会期:5月7日(土)~6月4日(土)
休廊:月・火
時間:12:00~19:00
住所:新宿区矢来町32-2
交通:東京メトロ東西線神楽坂駅より徒歩5分、都営地下鉄大江戸線牛込神楽坂駅より徒歩10分。
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「東松照明 新宿騒乱」 MISA SHIN GALLERY

MISA SHIN GALLERY
「東松照明 新宿騒乱」
4/23-6/12



MISA SHIN GALLERYで開催中の東松照明個展、「新宿騒乱」へ行ってきました。

本展の概要については同ギャラリーのリリースをご覧ください。

東松照明 TOMATSU Shomei 新宿騒乱(PDF)

写真家の東松が主に1960年代の新宿を捉えた作品、約20点で構成されていました。

激しくぶつかりあうデモ隊や一方でのストリッパーたちの性の乱舞など、まさにカオスとも言うべき新宿の破滅的なエネルギーの原初はこの時代にあったのかもしれません。

モノクロームに包まれた新宿の景色は一時たりとも休むことはありません。全力でこの時代を駆け抜けたという東松のファインダーは、まさに人々がうごめき、衝突し、また時に愛し合い、そして泣き叫ぶ新宿の全てを捉えています。

またストリッパーたちの乱れた部屋、さらには家屋の建ち並ぶ中を這うようにのびる都電の軌道を見ると、どこか今は殆ど失われてしまったかのような独特の生活臭が漂っているように思えてなりませんでした。

私はこの時代をリアルに経験していませんが、それでも何か身体にまとわりついてくるような人々の根源的な営みのようなものをひしひしと得ることが出来ました。時代性や場所性を通り越して語りかけてくる力が確実に存在しています。

空にのびる架線捉えた「都電」(1966)が忘れられません。真っ白な空、そしてちぎれそうになってに広がる雲の巣のような架線、また下に断片的に写された人々の全てが、何とも言えない緊張感をもって対峙しています。その希有な瞬間は東松の巧みな感覚によって永遠に切り取られました。

なお現在、東松の出身地である名古屋の市美術館で回顧展が開催中です。



「写真家・東松照明 全仕事」@名古屋市美術館 4月23日(土)~6月12日(日)

6月11日まで開催されています。

「東松照明 新宿騒乱」 MISA SHIN GALLERY
会期:4月21日(木)~6月11日(土)
休廊:日・月・祝
時間:12:00~19:00
住所:港区白金1-2-7
交通:東京メトロ南北線・都営三田線白金高輪駅4番出口より徒歩4分。
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「宮永愛子展 - 景色のはじまり 金木犀 - 」 ミヅマアートギャラリー

ミヅマアートギャラリー
「宮永愛子展 - 景色のはじまり 金木犀 - 」
4/21-5/28



金木犀の大きなベールが見る者を優しく包み込みます。ミヅマアートギャラリーで開催中の宮永愛子個展、「景色のはじまり 金木犀」へ行ってきました。

作家プロフィールについては同ギャラリーWEBサイトをご覧ください。

宮永愛子 MIYANAGA Aiko

最近では2009年に同ギャラリーで個展を開催した他、同年の国立新美術館のアーティストファイルにも出品がありました。

さて宮永というとナフタリンのイメージがありますが、今回のメインの大作はそうではありません。

入口すぐのフロアに吊るされているのは、まるでレースのカーテンのような質感をたたえた薄いベールです。長さ15メートル、また幅4メートルにも及ぶ巨大なベールは、あたかも内側に光源を持つかのように淡いアイボリーの煌めき仄かに放っていました。その表情は温和です。まさに来場者を包み込むように靡いていました。

そしてそのベールの素材こそが金木犀です。宮永は何と6万枚にも及ぶ金木犀の葉を特殊な溶液に浸し、さらにはスポンジでこすって葉脈のみを残して、のりでひたすら繋げました。

ベールの中には実際に立ち入ることも可能です。内側と外側を遮るベールは限りなく薄く、また透明で、今にも崩れ落ちてしまうかのように脆く連なっています。いつか消えてしまうような儚い面持ちは、やはりナフタリンの作品と共通するのかもしれません。

奥の小部屋では、新美のアーティストファイルにも出品されていた器の作品と、時計を用いたナフタリンのオブジェも展示されていました。こちらは耳を澄まして味わいたいところです。

如何せん繊細な作品であるので当然ながら叶いませんが、この金木犀のベールを屋外に出して、太陽の光を受けとめている姿を見たいとも思いました。

展示に際しての宮永のメッセージにも是非目を通してみて下さい。

宮永愛子展「景色のはじまり - 金木犀 - 」

今週の土曜、28日まで開催されています。

「宮永愛子展 - 景色のはじまり 金木犀 - 」 ミヅマアートギャラリー
会期:4月21日(木)~5月28日(土)
休廊:日・月・祝
時間:11:00~19:00
住所:新宿区市谷田町3-13 神楽ビル2階
交通:東京メトロ有楽町線・南北線市ヶ谷駅出口5より徒歩5分。JR線飯田橋駅西口より徒歩8分。
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「ボストン美術館浮世絵名品展」 千葉市美術館

千葉市美術館
「ボストン美術館浮世絵名品展 錦絵の黄金時代 - 清長、歌麿、写楽」
4/26-6/5



「浮世絵の正倉院」とも称されるボストン美術館の浮世絵より、主に天明・寛政期に描かれた諸作品を展観します。千葉市美術館で開催中の「ボストン美術館浮世絵名品展 錦絵の黄金時代 - 清長、歌麿、写楽」へ行ってきました。

昨年より既に神戸、名古屋、また東京の山種美術館で開催されてきた同展覧会ですが、ようやく4月下旬からここ千葉市美術館へと巡回してきました。

ボストン美術館浮世絵名品展公式WEBサイト/@ukiyoeten(ツイッター)

テーマはタイトルにもあるように「錦絵」です。その最も充実した時代と言われる天明・寛政期の清長、歌麿、写楽を中心に、同時代の浮世絵師をあわせて約140点ほどの作品がずらりと勢揃いしていました。

出品リスト(PDF)@ボストン美術館浮世絵名品展(千葉市美術館)

冒頭の清長から一気にヒートアップします。千葉市美術館で以前、半ば伝説と化した超弩級の清長展がありましたが、今回も約40点に及ぶ充実した清長の諸作品が待ち構えていました。


鳥居清長「美南見十二候 九月」(天明4年頃)

まず目を引くのが「美南見十二候 九月」です。美南見とは北の遊里の吉原に対し、南の品川を指す言葉だそうですが、そこでは夜の海を前にくつろぐ遊女たちが細密な筆で描かれています。とりわけ見るべきなのは格子の向こうの夜景です。

黒摺による闇にはぼんやりと月が浮かび、水面には仄かな舟の明かりが灯っています。一番右の女性は清長の真骨頂でもある艶やかな八頭身美人ですが、そうした背景の叙情的な様子にも惹かれるものがありました。

「五代目市川団十郎の横川覚範 三代目沢村宗十郎の狐忠信 中山富三郎の静御前」の鮮やかな色に心躍らせた方も多いかもしれません。ここではそれぞれの登場人物の着衣の朱などの色がくっきりと浮き上がっています。これは義経の物語を題材にしながらも、実際には揃わないという三名の役者をまとめたものだそうですが、清長の作品の中でもとりわけゴージャスでした。

清長を通り越すと登場するのは、浮世絵師最大のスター、喜多川歌麿です。私自身、浮世絵の中では春信と並んで歌麿に強く惹かれますが、今回の展示作品からも改めてその魅力を感じることが出来ました。


喜多川歌麿「高名美人六家撰」難波屋おきた」(寛政7~8年)

好きな作品をあげていくともうキリがありません。歌麿絶頂期の「歌撰恋之部 稀ニ逢」や、それより少し下った「茂兵衛女房 おさんが相」の大首絵の他、有名なおひさなど、あの艶やかでかつ表情豊かな美人画に恋してしまいました。


喜多川歌麿「歌撰恋之部 稀ニ逢恋」(寛政5~6年頃)

余談ですが、1995年に開館した千葉市美術館のオープニングを飾ったのは歌麿展でした。残念ながらそれは見ることが叶いませんでしたが、そろそろまた大掛かりな回顧展を拝見したいものです。

さて写楽では浮世絵に定評のある千葉市美ならではの嬉しいおまけつきです。展示の半ばハイライトとしても位置づけられるのが、一平VS江戸兵衛の対決展示でした。

 
東洲斎写楽「三代目大谷鬼次江戸兵衛」(寛政6年)*千葉市美術館蔵/「市川男女蔵の奴一平」(寛政6年)

これは言うまでもなく写楽でも有名な2点の作品ですが、ボストン美所蔵の一平の隣に、彼から金を奪う悪役の図である千葉市美所蔵の江戸兵衛が並んで展示されています。このサプライズは他会場ではありません。手を開いて闘志を剥き出し、今にも飛びかからんとする江戸兵衛と、とっさに刀を抜いて返り討ちにしようと構える一平の相対する様子はまさに迫力満点です。息をのみました。

ところでこの一平VS江戸兵衛の対決以外にも、会場全体として、他の巡回先ではなかった仕掛けがなされています。それが会場の照明、つまりは本展にあわせて導入されたブレンド4色のLEDのスポットライトです。この照明が用いられたのは国内の美術館で初めてだそうですが、繊細な浮世絵の色をあくまでも自然な感覚で浮き上がらせていました。その効果を、是非現地で確かめてみてください。

山種美術館では会期後半、大変な混雑だったと聞きましたが、少なくとも今の千葉市美ではそうした心配は全くありません。つい先日の土曜のお昼過ぎに出かけましたが、会場内は非常に空いていて、ストレスなく一点一点をじっくり楽しむことが出来ました。

それに千葉市美では夜間開館(金・土は夜8時まで)も行われています。経験上、同館の夜間で混雑していたことはありません。間違いなく狙い目となりそうです。

なお千葉会場ではさらにお楽しみがもう一つあります。同時開催中のコレクション展、「岡本秋暉とその師友」がこれまた充実していました。そちらも別記事でまとめる予定です。

「別冊太陽 浮世絵師列伝/小林忠/平凡社」

会期中は無休です。6月5日まで開催されています。*千葉展終了後、巡回の予定の仙台展(仙台市博物館)は中止されました。

「ボストン美術館浮世絵名品展 錦絵の黄金時代 - 清長、歌麿、写楽」 千葉市美術館
会期:4月26日(火)~6月5日(日)
休館:無休
時間:10:00~18:00(日~木)、10:00~20:00(金・土)
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
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「紙のかたち展」 とらや東京ミッドタウン店ギャラリー

とらや東京ミッドタウン店ギャラリー
「紙のかたち展 - 切って魅せる - 」
4/28-6/12(後期展示)



とらや東京ミッドタウン店ギャラリーで開催中の「紙のかたち展 - 切って魅せる - 」へ行ってきました。

「虎」と記されたのれんでお馴染みのミッドタウン地下の「とらや」ですが、その中のスペースでミニ企画展が行われていることをご存知でしょうか。

「第20回企画展 紙のかたち展」(PDF)@とらや東京ミッドタウン店ギャラリー

今回のテーマはずばり「切り紙」です。現在開催中の後期では、日本人が古くから親しんできたこの文化に新たな息吹を与えた、1975年生まれの切り絵作家、福井利佐の作品が紹介されていました。


「羽衣」

図版を一目見るだけでは、これが切り紙であることはおろか、紙で出来ていること自体も信じられないかもしれません。


「菖蒲饅」

モチーフは多種多様です。今回は虎や初夏、和菓子などがメインですが、他にも花や鯉などの動植物や、時におどろおどろしくもある顔面を、極めて細密に紙から切り出しています。


「夫婦鯉滝登り」

ゆるやかな線、そして重なる線はもはや艶やかと言えるかもしれません。またその奥に広がる色の効果もあってか、作品に立体感があるのも大きな特徴でした。薄い紙で出来ているにも関わらず、近くに寄って見ると大変な迫力があります。

なお作家サイトに作品が多数紹介されています。こちらも必見です。

福井利佐WEBサイト

狭いスペースでもあるので作品数は限られますが、何気なく立ち寄ったにも関わらず、しばらく見入ってしまいました。



6月12日まで開催されています。

「紙のかたち展 - 切って魅せる - 」 とらや東京ミッドタウン店ギャラリー
会期:4月28日(木)~6月12日(日)
休館:無休(東京ミッドタウン休業日に準じる)
時間:11:00~21:00
住所:港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア地下1階
交通:都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結。東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結。東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩3分。
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「アーティスト・ファイル2011」 国立新美術館

国立新美術館
「アーティスト・ファイル2011 - 現代の作家たち」
3/16-6/6



「国内外でいま最も注目すべき活動を展開している作家たち」(美術館HPより引用)を各個展形式で紹介します。国立新美術館で開催中の「アーティスト・ファイル2011 - 現代の作家たち」へ行ってきました。

本年の出品作家は以下の通りです。

クリスティン・ベイカー(1975~)アメリカ
バードヘッド:ソン・タオ(1979~)/ジ・ウェイユィ(1980~)中国
タラ・ドノヴァン(1969~)アメリカ
岩熊力也(1969~)
鬼頭健吾(1977~)
松江泰治(1963~)
ビョルン・メルフス(1966~)ドイツ
中井川由季(1960~)


日本、アメリカ、中国、ドイツの計8組のアーティストが、絵画、彫刻、写真、映像の他、インスタレーションなどを展開していました。

いつもながらに全体像が見えてこない展覧会ですが、個々の作家を追っていくと楽しめる面があるかもしれません。冒頭、色彩感溢れるアクリル絵具による巨大な絵画を展示したのはクリスティン・ベイカーでした。


クリスティン・ベイカー「クロトブラック・カーヴ」2004年

その味わいは一見、抽象画です。ビビットな色はどこか幾何学面を描きながら、支持体の中を縦横無尽に駆けています。そしてその奥から浮かび上がるのは何やらF1やサーキットコースの断片です。一体何なのかと思う方も多いかもしれません。

実はこれらはいわゆる車などの事故のシーンを描いたものでした。ベイカーの記憶を頼りに再現されたその光景は、決して写実ではないにも関わらずどこか生々しく、たとえば車の音や焦げたタイヤの感触までが伝わってくるような臨場感があります。まさに衝撃の絵画でした。


松江泰治「ALTIPLANO 100676」2010年 

さてしばらく前のTARO NASUの個展の記憶が甦るのは写真家の松江泰治です。とりわけ世界各地の都市を捉えたシリーズは印象深いものがあります。本来的に異なるはずの各都市の様相には、奇妙な統一感があることが分かるのではないでしょうか。そしていつもながらの引き延ばされた、ようは細部を拡大して取り出された空間の中には、人々の生活の息遣いが確かに存在していました。


タラ・ドノヴァン「霞」2003年

タラ・ドノヴァンは新美の巨大空間を用いての大掛かりなインスタレーションを展開します。展示室の壁面の全てに散った「霞」の素材を知って驚きました。まるで大きな綿飴か雲です。身近なモノから思わぬ美感を引き出していました。


中井川由季「波打って開く」2010

陶を手がけるのは中井川由季です。岩石の如くゴツゴツとしたその塊は、あたかも何らかの太古の化石のようでした。また一見するところ陶らしからぬ質感もまた見るべき点かもしれません。

一点勝負でこの味気ない新美の空間を変化させたのはお馴染みの鬼頭健吾でした。今回の素材はスカーフです。ゆらゆらと地をはってなびくその姿は、まるで海岸線に打ち寄せる波のようでした。

ラストを飾るのは中国人作家2名のバードヘッドです。展示室の一面には、彼らの育った上海を写した写真が所狭しとひしめき合っています。

そして写された街角を歩くカップルやあどけない子どもたち、また天を切り裂く摩天楼や地下鉄の駅、さらにはビルの壁面の落書きなどを見ていると、まさにあの強大なエネルギーの渦巻く現代中国のカオスが剥き出しになっているように思えてなりませんでした。迫力があります。

ビョルン・メルフスの作品は注意が必要かもしれません。高速で明かりが点滅する映像がありますが、あまりにも刺激が強く、とてもその場に居られませんでした。目がくらくらします。

会場内は閑散としていました。ゆっくり見られます。6月6日までの開催です。

「アーティスト・ファイル2011 - 現代の作家たち」 国立新美術館
会期:3月16日(水)~6月6日(月)
休館:火曜日
時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)*夜間開館は休止
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
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「あおひー NIJIMASS」 ギャラリー・アート・ポイント

ギャラリー・アート・ポイント
「あおひー NIJIMASS」
5/16-5/21



日頃お世話になっているあおひーさんの個展、「NIJIMASS」へ行ってきました。

あおひーさんのプロフィールについては画廊WEBサイトをご覧ください。

展示詳細「あおひー NIJIMASS」@ギャラリー・アート・ポイント

さてこれまでにもデジカメを操り、モノクロとカラーの双方で被写体のイメージをかき混ぜてきたあおひーさんでしたが、今回はこれまで作品に表れていた「ブレ」と「ぼけ」への意識がやや変わっていると言えるのかもしれません。



そのヒントこそ「NIJIMASS」というタイトルです。そこには単に写真をぼかして見せるのではなく、色とフォルムをより意識的に強く変化させていく、つまりは文字通り「滲ませる」ということに主眼が置かれています。



実は前回のグループ展(新進作家13人展)でも青い輝きを放つ「BLUE」に強く感心させられましたが、やはりモチーフ自体が言わば色として溶け、さらには線と面を巻き込んで滲み出し、元々の持つイメージを通り越した新たな価値を創造することにこそ一番の魅力があるのではないでしょうか。

もちろん滲む色彩の奥底に、何気ない日常が潜む作品もまた美しい光景を作り出します。駅のエスカレーターのベルトや川の水面、さらにはライト越しのフォークの残像がまさかこれほど煌めいて見えるとは思いませんでした。



滲む景色は微睡みの境地です。色の生み出すリズムはどこか音楽的でもありました。

なおあおひーさん本人がブログにてタイトルの由来、それに作品リストを公開されています。在廊スケジュールも記載されているのでその時を狙って伺ってみては如何でしょうか。

予告!あおひー「NIJIMASS」(在廊予定)/NIJIMASS/リスト@あお!ひー

短期決戦の展覧会です。今週の土曜、21日まで開催されています。

「あおひー NIJIMASS」 ギャラリー・アート・ポイント
会期:5/16(月)~5/21(土)
休廊:会期中無休
時間:12:30~19:30(最終日のみ17時まで。)
住所:中央区銀座8-11-13 エリザベスビルB1
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線銀座駅A4出口より徒歩6分。JR線・東京メトロ銀座線新橋駅出口1より徒歩6分。
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「毘堂  i-con」 MEGUMI OGITA GALLERY

MEGUMI OGITA GALLERY
「毘堂  i-con」
5/10-5/28



メグミオギタギャラリーで開催中の毘堂(びどう)個展、「i-con」へ行ってきました。

展示概要、及び作家プロフィールなどについては同ギャラリーWEBサイトをご覧ください。

毘堂プロフィール/i-con」@MEGUMI OGITA GALLERY

さて毘堂なる作家名をはじめ、モナリザを思わせる上記DM画像からして謎めいた感がありますが、種明かしをしてしまえば彼は1992年、能面師の小川玄洞氏に師事してこの名を拝命した能面師です。よって会場にも伝統的な技法に基づく能面が展示されています。その数は計11点、いずれもが不思議な生気をたたえて掲げられていました。

しかしながら一般的な能面を連想するとまた違った印象を受けるかもしれません。能面のモチーフはモナリザ同様、西洋の古典絵画に由来するもので、作品自体もアンティーク調の額の中へ絵画の様相をとって収められています。フェルメールの「青いターバンの女」の他、ラトゥールの「女占い師」、またモディリアーニやピカソの名画の人物たちが、言わばキャンバス上より解放され、三次元の能面と化して登場していました。

そして興味深いのは、一見写実に忠実なような能面が、どこか絵画上の人物の特徴を捉えてデフォルメしたような表現を見せているところです。「青いターバンの少女」はオーバーアクション気味に横目を剥いています。その表情はむしろ絵画より豊かでした。

能面の表面にある細かな傷は、絵画作品の上にもあるひび割れを再現したものだそうです。それは能面制作でも「古色」と呼ばれて用いられる技術ですが、そうした独特の様式美も魅力の一つでした。

西洋絵画と能面が邂逅する瞬間はスリリングです。この二つが出会った時の意外性には驚きました。

カウンター奥に等伯画で有名な可愛らしい動物の能面が展示されています。そちらもお見逃しなきようご注意下さい。

5月28日までの開催です。これはおすすめします。

「毘堂  i-con」 MEGUMI OGITA GALLERY
会期:5月10日(火)~5月28日(土)
休廊:日・月・祝
時間:11:00~19:00
住所:中央区銀座2-16-12 銀座大塚ビルB1
交通:東京メトロ銀座線銀座駅A13出口徒歩7分、東京メトロ日比谷線・都営浅草線東銀座駅3番出口徒歩5分、東京メトロ有楽町線新富町駅1番出口徒歩5分。
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「夢に挑む コレクションの軌跡」 サントリー美術館

サントリー美術館
「夢に挑む コレクションの軌跡」
3/26-5/22



サントリー美術館で開催中の「夢に挑む コレクションの軌跡」へ行ってきました。

1961年に丸の内に開館して以来、赤坂見附、またここミッドタウンへ移転してきたサントリー美術館ですが、今年で50年を迎えるということで、コレクションから選りすぐりの作品が公開されています。まさに総名品展です。難しいことを抜きにして、ご自慢の磁器やガラス、それに江戸絵画までを楽しんできました。(出品リスト

特集:50年の軌跡@サントリー美術館

冒頭からちょっとした仕掛けが待っています。旧美術館を再現したエントランスをくぐると登場するのは、同館が設立当時に収集した作品です。ここでは織部の名品や蒔絵の盥などを、いつもながらの効果的な展示で味わうことが出来ます。まさに眼福の一言でした。


「薩摩切子 藍色被船形鉢」19世紀中頃

ミッドタウン移転後で印象深かった企画展の一つに「切子展」が挙げられますが、今回のコレクション展にも何点かの切子の他、ガラスの器が展示されています。透明感に満ちた藍が目にしみる「薩摩切子 藍色被船形鉢」には強く惹かれました。


「鼠草子絵巻(部分)」桃山時代 16世紀

鳥獣戯画展で一際異彩を放っていた「鼠草子絵巻」も再登場です。鼠と人間の婚礼の顛末を描くこの絵巻はあくまでも一部分の公開でしたが、久々に可愛らしくまたコミカル鼠たちに出会うことが出来ました。こうした絵巻物に優品が多いのも同美術館の特徴かもしれません。


「ランプ:ひとよ茸」エミール・ガレ 1902年頃

ガレとジャポニスム展の記憶も甦ります。「光と色のジャポニスム」と題された第6章の展示室では、ガレの花器が10点強ほど紹介されていました。切子と並び、ガレもサントリー美術館だからこその充実したラインナップです。ここは見入りました。


「佐竹本三十六歌仙絵 源順」 鎌倉時代 13世紀

いつかは本格的な琳派展の開催も願いたいところですが、今回の展示では光悦、乾山らの作品がいくつか登場しています。また意外にもお目見えしていたのは「佐竹本・三十六歌仙絵 源順」です。本作は1994年に同館に収蔵されたそうですが、佐竹本を追っている方には必見の展示かもしれません。


「西湖図屏風」狩野山楽 江戸時代 17世紀

ラストは新収蔵品の初公開です。ここでは伝又兵衛や伝山雪、また伝永徳の屏風絵がいくつか展示されています。見慣れた名品ばかりでなく、こうした新しいコレクションを楽しめるのも今回の展覧会の魅力ではないでしょうか。

震災等の影響により一部、開館時間が変更(通常は10:00~18:00、金曜・土曜は10:00~20:00。)されています。観覧の際はご注意下さい。

5月22日までの開催です。

「開館50周年記念 美を結ぶ。美をひらく。1 夢に挑む コレクションの軌跡」 サントリー美術館
会期:3月26日(土)~5月22日(日)
休館:火曜日
時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)
場所:港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア3階
交通:都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結。東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結。東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩3分。
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読響名曲シリーズ 「ドヴォルザーク:交響曲第8番」他 ヴロンスキー

読売日本交響楽団 第2回オペラシティ名曲シリーズ

オール・ドヴォルザーク・プログラム
 ドヴォルザーク「序曲 謝肉祭」作品92
 ドヴォルザーク「ヴァイオリン協奏曲 イ短調」作品53
 ドヴォルザーク「交響曲第8番 ト長調」作品88

管弦楽 読売日本交響楽団
ヴァイオリン アラベラ・美歩・シュタインバッハー
指揮 ペトル・ヴロンスキー

2011/5/14 18:00~ 東京オペラシティコンサートホール

読響オペラシティ名曲シリーズより、ヴロンスキーの「オール・ドヴォルザーク・プログラム」を聴いてきました。

当初予定のマーツァルに代わり、急遽指揮台に立ったヴロンスキーですが、その務めを十分に果たしたのはもちろん、思いがけないほどの名演を聴かせてくれたと言っても過言ではありません。

1946年にプラハで生まれ、その後世界各地でキャリアを築いてきたヴロンスキーは、いわゆるご当地もののドヴォルザークの音楽から、驚くほど生気に溢れたリズムと華やかな響きを引き出してきます。

冒頭の「謝肉祭」から、「何かが違う。」と感じられた方も多かったかもしれません。ボヘミアの街のお祭りを表したこの曲を指揮するヴロンスキーはまさにノリノリで、それこそ人々の集った宴から発する独特のカタルシスまでを示してきます。まさに熱狂の謝肉祭でした。

そしてそのような指揮に半ばあおられたかのように演奏する読響も好調です。スラブ音楽の持つ独特なリズム感を全身で表現し、色彩感にも豊かな響きをホールいっぱいに満たしていました。

そのスラブ色の濃い演奏でより名演となったのはメインのドヴォ8です。かつてN響でエリシュカが振った際も非常に感心しましたが、それが細部に見通しのよい、音楽の全体の構造を提示してくるような演奏だったのに対し、ヴロンスキーはさながら音楽の持つ原初的なエネルギーを解放するかのようなアプローチで攻めてきます。

交響曲というよりも交響詩的な演奏と言えるかもしれません。ボヘミアの魂は一つの大きなうねりをもって音楽に取り憑きます。それは良い意味で泥臭いドヴォルザークです。曲を覆う音楽的な構造云々は一端取り払われ、その核心、まさに剥き出しとなった音楽の心だけがひたすら真摯に、また実直に表されていました。

この曲がまさかこれほど民族色の濃いものだったとは思いもよりません。スラブの大地と空の情景が思い浮かぶような見事な演奏でした。

なお同楽団のWEBサイトにヴロンスキーのメッセージが掲載されています。

「ペトル・ヴロンスキー氏が来日。読響と24年振りの共演へ!」@読売日本交響楽団

ヴロンスキーは24年ぶりに読響を振ったそうですが、さらなる共演を願ってやみません。これほどドヴォルザークの音楽に心揺さぶられたのは初めてでした。
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「PLATFORM2011 浜田涼・小林耕平・鮫島大輔」 練馬区立美術館

練馬区立美術館
「PLATFORM2011 浜田涼・小林耕平・鮫島大輔 - 距離をはかる」
4/16-5/29

練馬区立美術館の現代美術のグループ展も今年で2回目を迎えました。「PLATFORM2011 浜田涼・小林耕平・鮫島大輔 - 距離をはかる」へ行ってきました。

本展に出品の作家は以下の通りです。

浜田涼(1966~)
小林耕平(1974~)
鮫島大輔(1979~)

略歴などは美術館の公式WEBサイトをご参照下さい。

PLATFORM2011@練馬区公式ホームページ

各作家による絵画、立体、それにインスタレーションなどの作品が展示されていました。

作家はそれぞれ別個のスペースを用いて作品を展開していましたが、冒頭、1階展示室の鮫島大輔の一連のアクリル画、また『球』がなかなか興味深いものがあります。


鮫島大輔「untitled」2008年 カンヴァス・アクリル

その球とはずばり支持体です。鮫島は何気ない郊外の住宅などを平面、そして球体の表面に描き、さながら三次元的に外部の場を展示室へ呼び込んでいます。

誇張された遠近法、またレンズをのぞき込んでみたような歪んだ空間は、たとえばどこにでもあるような駐車場、それにコンビニなどを、どこかシュールな場所へと変化させていました。

またもう一点、気になるのが、何とも言えないような孤独感です。誰もいない駐車場に置かれた車や住宅の庭木は不思議と寂し気で、人の気配の薄い、ようは不在を意識させるような印象を与えていました。


浜田涼「大切な人の写真を持っていますか?その写真の表情以外に、その人の顔を思い出せますか?」2001年 静電記録マットタイプフィルム・インク

タイトルにある『距離感』を強く認識させるのは、写真を加工して、その奥にある朧げなイメージを浮き上がらせた浜田涼です。

ここで彼は写真にアクリルなどの加工を施すことで、写された対象をぼかし、見る側との距離感を揺さぶっています。近作では表面のアクリルの質感はほぼなく、まるであえて狙ったピンぼけ写真のような風合いを見せていました。


小林耕平「2-9-1」2009年 video

「つかみどころのない」と美術館WEBサイトにも記された小林耕平のインスタレーションが強烈です。作品はともかくも、会場内にあった作家の言葉、「言葉を使わずものを使って私に問いかけて下さい。」という一節がとても心に残りました。

PLATFORM展ではワークショップなども多数用意されています。今回はほぼプログラムが終了してしまいましたが、次回展では参加してみようと思いました。

パフォーマンス&トーク終了しました@練馬区立美術館ブログ

5月29日まで開催されています。

「PLATFORM2011 浜田涼・小林耕平・鮫島大輔 - 距離をはかる」 練馬区立美術館
会期:4月16日(土)~5月29日(日)
休館:月曜日
時間:10:00~18:00
場所:東京都練馬区貫井1-36-16
交通:西武池袋線中村橋駅下車徒歩3分
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「東北画は可能か? - 方舟計画」 イムラアートギャラリー東京 

イムラアートギャラリー東京
「東北画は可能か? - 方舟計画」
5/7-5/21



イムラアートギャラリー東京で開催中の「東北画は可能か? - 方舟計画」へ行ってきました。

展覧会の概要については同ギャラリーWEBサイトをご覧ください。

「東北画は可能か? - 方舟計画」@イムラアートギャラリー東京

「東北画は可能か?」は、東北芸術工科大学の三瀬夏之介や鴻崎正武らが、学生を交えて企画運営するチュートリアル活動です。昨年始まったこのプロジェクトは、これまでにも山形や宮城、それに東京などで展示を繰り広げてきました。



さて今回は「方舟」をテーマに、学生、及び作家の平面作品が紹介されています。その様子を一言で表せば絵画の森です。絵画という絵画の全てが、ギャラリーの壁面を埋め尽くすさんとばかりに並んでいました。

当然ながら展示に関係するのが2ヶ月前に東日本を襲った大震災です。そもそも今回の展示自体が気仙沼のリアス・アーク美術館での開催を予定していましたが、美術館自体が被災、休館となったため、急遽このイムラアートでの開催が実現しました。

展示は必ずしも震災後に描かれた作品だけではありません。会場では作品に添えられたテキストに印があるものが震災後、そしてないものが震災前として区別されていました。


「東北八重山景」

しかしながらその前後の変化だけに注意するのはあまり意味をなさないことかもしれません。学生の共作の2点、「東北八重山景」(震災前)と「方舟計画」(震災後)を見ても感じられるように、その細部の描き込みはともかくも、震災前の「東北八重山景」にもどこか不穏な気配が漂っています。


「方舟計画」

全てを焦がすように下から燃え盛る炎の描写は鮮烈です。また天国と地獄の同居した光景は、全てをない交ぜにして剥き出しにぶつかり合う破壊と再生のカオスでした。

震災後の「方舟計画」にはまさに災害そのもの、ようは津波や原発なども描かれています。その目を覆いたくなるような惨禍の上をダイナミックに駆ける東北の大地、つまり方舟の原動力は、未来へ眼差しをもった全ての人々の希望であるのかもしれません。



学生のテキストの前に言葉を失いました。絵とともに全身で向き合う必要があります。簡単に整理出来ません。

5月21日まで開催されています。

「東北画は可能か? - 方舟計画」 イムラアートギャラリー東京
会期:5月7日(土)~5月21日(土)
休廊:日・月・祝休廊
時間:12:00~19:00
場所:新宿区西五軒町3-7 ミナト第三ビル4階
交通:都営大江戸線牛込神楽坂駅A3出口より徒歩10分。東京メトロ東西線神楽坂駅1番出口より徒歩約5分。
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東博で見る狩野一信の「五百羅漢図」

江戸東京博物館で展示中の狩野一信の五百羅漢図ですが、それと幅本とも言われる作品が東京国立博物館の常設展示にも登場しています。



一連の作品は増上寺の羅漢図とほぼ同じ図柄ではありますが、大きさはかなり小さく、1幅に2つの図をあわせた形で表装されています。つまりその数は全部で50幅です。かつて同館で一度まとめて展示されたこともあったそうですが、江戸博の五百羅漢展にあわせたのか、久々にお目見えしました。



展示作品は以下の通りです。「書画の展開:安土桃山・江戸」出品リスト

第13幅/第23幅/第27幅/第42幅/第28幅

風難や水難を描いた「七難」の他、いわゆる羅漢が超能力を発揮する「神通」などが登場していました。


江戸東京博物館「五百羅漢展」展示風景。(写真の撮影と掲載は許可を得ています。)

*参考エントリ*
「五百羅漢展 狩野一信」Vol.1 江戸東京博物館

なお江戸博の五百羅漢展にもこのミニサイズの羅漢図が出ています。そちらは10幅です。つまり現在、東博と江戸博をあわせると全部で15幅が展示されていることになります。



細部の細やかな描写などについては到底、増上寺の「五百羅漢図」には及びません。あくまでも副次的な作品として捉えて相違ないようです。

なおこの作品の由来については諸説あります。現在のところ、増上寺に先行する作品、もしくは同時並行して描かれたもの、さらには一信の没後に羅漢堂を建てる時などに弟子たちが描いたという解釈などがあるそうです。

本館8室にて5月29日まで公開されています。
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