『かみがつくる宇宙―ミクロとマクロの往還』 市原湖畔美術館

市原湖畔美術館
『かみがつくる宇宙―ミクロとマクロの往還』
2024/10/19~2025/1/13



紙を素材に作品を手がける3名のアーティストを紹介する展覧会が、千葉県の市原湖畔美術館にて開かれています。

それが『かみがつくる宇宙―ミクロとマクロの往還』で、会場では布施知子、安部典子、柴田あゆみが三者三様に多彩な作品世界を見せていました。



まず無限折りなどの折りの作品で知られ、世界的折り紙作家として活動する布施知子は、『むくむくとねじねじ』と題したインスタレーションを展開していて、多様な折りによる紙が縦横に連なっては、さも美術館の周辺の里山のような景色を作り上げていました。



紙を重ねては切り込み、彫刻的な表現を手がける安部典子は、特殊照明作家の市川平とコラボレーションした『White Niget(白夜)』と題した作品を展開していて、紙によって生み出された地層が大陸のように広がる光景を見ることができました。



吹き抜けの空間へ繊細かつ大掛かりなインスタレーションを展示した、柴田あゆみの切り絵による『いのちの詩』も見応えがあったかもしれません。



わずかに揺れながら、シャンデリアのように吊るされた切り絵を見ていると、あたかも生命の源が地の底から噴き上がる光景を前にしているかのようでした。

紙が織りなす神秘の世界を体感!『かみがつくる宇宙―ミクロとマクロの往還』が開催中|Pen Online


12月21日(土)には、市原鶴舞バスターミナルと市原湖畔美術館を行き来する無料のシャトルバスが運行されます。

シャトルバス運行のお知らせ(12/21)

東京駅、及び横浜駅からの高速バスにて市原鶴舞バスターミナルまで行くことができます。詳しくは上記リンク先をご覧ください。



撮影も可能です。2025年1月13日まで開催されています。

『かみがつくる宇宙―ミクロとマクロの往還』 市原湖畔美術館@LSM_ICHIHARA
会期:2024年10月19日(土)~2025年1月13日(月・祝)
休館:月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始(12月29日〜1月3日)。
時間:10:00~17:00(月~金)、9:30~19:00(土曜・祝前日)、9:30~18:00(日曜・祝日)
 *入館は閉館の30分前まで
料金:一般1000(800)円、65歳以上、大学・高校生800(600)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:千葉県市原市不入75-1
交通:JR線五井駅から小湊鉄道にて高滝駅下車、徒歩約20分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『若冲激レア展』 福田美術館

福田美術館
『開館5周年記念 京都の嵐山に舞い降りた奇跡!! 伊藤若冲の激レアな巻物が世界初公開されるってマジ?!』(略称:若冲激レア展)
2024/10/12~2025/1/19


伊藤若冲『鶏図押絵貼屏風』 1797年

ヨーロッパで新たに発見された伊藤若冲の『果蔬図巻』が、京都・嵐山の福田美術館にて公開されています。

それが『開館5周年記念 京都の嵐山に舞い降りた奇跡!! 伊藤若冲の激レアな巻物が世界初公開されるってマジ?!』(略称:若冲激レア展)で、会場では『果蔬図巻』など若冲の作品約30点をはじめ、影響関係にあった画家など約50点の作品が展示されていました。


沈南蘋『花鳥図』 1731年

まずはじめは若冲、および影響の受けた中国の画家の作品が並んでいて、とりわけ沈南蘋や宋紫石、熊斐などに優品が少なくありませんでした。


熊斐『松竹梅鶴亀図』 18世紀

このうち沈南蘋の直弟子で長崎にて活動した熊斐の『松竹梅鶴亀図』とは、3幅の画面に松や竹、それに鶴や亀など吉祥主題のモチーフを描いた作品で、精緻でかつ立体感のある描写は師の沈南蘋の画風を思わせるものがありました。


伊藤若冲『蕪に双鶏図』 18世紀

若冲では30代の最初期に描いた『蕪に双鶏図』が充実していて、蕪畑の中でうずくまる雌鶏と、まるでポーズをとるように頭部を下に捻った雄鶏を巧みに描いていました。穴のたくさん空いた蕪の葉の描写なども若冲ならではの表現と言えるかもしれません。


伊藤若冲 画 梅荘顕常(大典) 跋『果蔬図巻』 1790年以前

『果蔬図巻』とは若冲76歳の時に描いた全長3メートル余りの図巻で、ウドやクワイ、瓜に茄子、苦瓜や葡萄、それに柘榴やスモモといったさまざまな野菜や果物を淡く美しい色彩にて表していました。


伊藤若冲 画 梅荘顕常(大典) 跋『果蔬図巻』 1790年以前

巻末には若冲と親しかった相国寺の僧・大典の直筆の跋文が添えられていて、野菜などのモチーフも共通することから、翌年に描いた『菜蟲譜』との関係も指摘されていました。


『乗興舟』展示風景

今回の『若冲激レア展』で特に感銘を受けたのは、若冲が大典とともに京都から大阪へと舟で下った時の風景を版画にした『乗興舟』の展示でした。


伊藤若冲 下絵 梅荘顕常(大典) 短辞『乗興舟』 1767年頃

ここでは『乗興舟』(一部欠落)そのものとともに、大典の詩の読み下しと訳文、さらに当時の風景を伝える浮世絵や現代の写真を掲載したパネルを展示していて、若冲と大典が淀川の舟旅で何を感じ、また表したのかを臨場感のあるかたちで見ることができました。


『乗興舟』解説パネル

これまでも何度か『乗興舟』を見る機会がありましたが、今回ほど面白く、また興味を持って見たことはなかったかもしれません。大変に充実した展示でした。


12月3日に一部の屏風において、右隻と左隻の入れ替えが行われます。

展示室内の撮影もできました。2025年1月19日まで開かれています。

『開館5周年記念 京都の嵐山に舞い降りた奇跡!! 伊藤若冲の激レアな巻物が世界初公開されるってマジ?!』(略称:若冲激レア展) 福田美術館@ArtFukuda
会期:2024年10月12日(土)~2025年1月19日(日)
休館:12月3日(火)、12月30日(月)~1月1日(水)
時間:10:00~17:00。最終入館は16時半まで。
料金:一般・大学生1500(1400)円、高校生900(800)円、小中学生500(400)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16
交通:嵐電(京福電鉄)嵐山駅下車、徒歩4分。阪急嵐山線嵐山駅下車、徒歩11分。JR山陰本線(嵯峨野線)嵯峨嵐山駅下車、徒歩12分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『特別展「はにわ」』 東京国立博物館・平成館

東京国立博物館・平成館
『挂甲の武人 国宝指定50周年記念 特別展「はにわ」』
2024/10/16~12/8


『特別展「はにわ」』展示風景

「埴輪 挂甲の武人」の国宝指定50周年を記念し、全国各地より埴輪の名品を集めた展覧会が、東京国立博物館にて開かれています。

それが『挂甲の武人 国宝指定50周年記念 特別展「はにわ」』で、人物や動物、それに家形などさまざまなかたちを見せる埴輪が約120件ほど展示されていました。


『埴輪 踊る人々』 埼玉県熊谷市 野原古墳出土 古墳時代・6世紀 東京国立博物館

まず冒頭で来場者を迎え入れていたのが、同じ片手を上げるポーズをしたペアの『埴輪 踊る人々』で、2022年からの解体修理を今年3月末に終えて以来、初めて公開されました。


『円筒埴輪』 奈良県桜井市 メスリ山古墳出土 古墳時代・4世紀 奈良県立橿原考古学研究所附属博物館

古墳に並べられていた埴輪のうち、最も大量に立てられたのが円筒埴輪で、古墳の巨大化によって時に数万本にも及ぶ埴輪が一つの古墳に置かれました。今回の展覧会でも大小さまざまな円筒埴輪が並んでいましたが、中でも高さ2メートルを超える強大な埴輪が特に目立っていたかもしれません。


『埴輪 挂甲の武人』 群馬県太田市飯塚町出土 古墳時代・6世紀 東京国立博物館

ハイライトを飾るのは、国宝「埴輪 挂甲の武人」と、同じ工房にて制作された可能性もある4体の兄弟埴輪が史上初めて一度に並んだ展示でした。


『特別展「はにわ」』展示風景

このうちの1体は国内では見る機会の少ないアメリカのシアトル美術館の所蔵品で、一概に兄弟埴輪とはいえども、細部に異なる意匠などを見比べることができました。


埴輪 挂甲の武人(彩色復元)』 2023年 制作:文化財活用センター

一連の「埴輪 挂甲の武人」ともに、制作当時の彩色を復元した埴輪も興味深かったかもしれません。白、赤、灰色の3色で塗り分けていた埴輪を目にすると、現代に残された埴輪のイメージとはまた異なって映りました。


『特別展「はにわ」』より「動物埴輪大集合」展示風景

こうした人物を含む形象埴輪の中でも特に愛らしいのが、鶏や鹿、猪、犬、水鳥のほか、さまざまな動物を模った動物埴輪でした。


『特別展「はにわ」』より「動物埴輪大集合」展示風景

会場では「動物埴輪大集合」と題し、数多くの動物の埴輪を並べていて、とりわけ辺りを警戒するように振り返る鹿の埴輪と、捕まえた魚を咥える鵜の埴輪に魅せられました。


最後に混雑の情報です。12月8日の会期末が迫り、連日多くの人で賑わっています。特に土日は混み合い、最大で30分から40分ほどの入場の待ち時間が発生しています。

混雑情報については同展の公式SNSアカウント(@haniwa820_ten)が発信しています。これからお出かけの方はSNSアカウントをご参照ください。


『埴輪 正座の女子』 群馬県高槻市 綿貫観音山古墳出土 古墳時代・6世紀 文化庁(群馬県立歴史博物館保管)

会場内の撮影もできました。12月8日まで開かれています。

『挂甲の武人 国宝指定50周年記念 特別展「はにわ」』@haniwa820_ten) 東京国立博物館・平成館(@TNM_PR
会期:2024年10月16日(水) ~ 2024年12月8日(日)
休館:月曜日。ただし11月4日(月)は開館、11月5日(火)は本展のみ開館
時間:9:30~17:00
 *毎週金・土曜日は20時まで開館
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般2100円、大学生1300円、高校生900円、中学生以下無料。
 *当日に限り総合文化展も観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR線上野駅公園口・鶯谷駅南口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄京成上野駅より徒歩15分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『いわいとしお×東京都写真美術館 光と動きの100かいだてのいえ』 東京都写真美術館

東京都写真美術館
『いわいとしお×東京都写真美術館 光と動きの100かいだてのいえ―19世紀の映像装置とメディアアートをつなぐ』 
2024/7/30~11/3



1962年に生まれた岩井俊雄は、19世紀の実験的な視覚装置を研究すると、独自のメディアートを切り開くとともに、いわいとしお名義にて絵本『100かいだてのいえ』シリーズが大ヒットするなど、多様に活動してきました。

そのいわいとしおのメディアアーティストとしての制作と19世紀の映像装置をシンクロさせたのが『いわいとしお×東京都写真美術館 光と動きの100かいだてのいえ』で、いわいのメディアアート作品、および東京都写真美術館が所蔵する19世紀の映像装置が公開されていました。

今回の展示で興味深いのは、19世紀の映像装置のレプリカが数多く展示されていることで、いずれも実際に手で触れて動かしながら、当時の人々が見たと思われる仕掛けや視覚の効果を味わうことができました。

一方でいわいのメディアアートで目立っていたのは、1985年から1990年にかけて制作した「時間層」のシリーズでした。そのうちの『時間層II』とは、120体の紙の人形を並べた円盤を回転させ、上に画面を下向きに設置したテレビからストロボ光を照らすと、人形がダンスをするように動き回る光景が生まれる作品で、「第17回現代日本美術展」の大賞を受賞しました。

これらの4点の「時間層」のシリーズは、展示の機会が長くなかったものの、今回をメディアアート研究者である明貫紘子の協力のもとに修復され、25年ぶりに揃って公開されました。

絵本「100かいだてのいえ」の作者、いわいとしおが切り開いてきたメディアアートの世界|Pen Online

『映像装置としてのピアノ』と呼ばれるグランドピアノと映像を融合させた作品も面白いのではないでしょうか。手前のトラックボールを転がすと光のドットを描き出され、後ろのピアノの音が鳴り響きながら水晶のような光が飛び出すように作られていました。


体験型の作品が多く、見て、触れて楽しめるような展覧会だったかもしれません。なお「時間層」のシリーズの作品は毎時00分と30分に作動します。



11月3日まで開催されています。

『いわいとしお×東京都写真美術館 光と動きの100かいだてのいえ―19世紀の映像装置とメディアアートをつなぐ』 東京都写真美術館@topmuseum
会期:2024年7月30日(火)~11月3日(日・祝)
休館:月曜日。(月曜日が祝休日の場合は開館し、翌平日休館)
時間:10:00~18:00
 *木・金曜日は20時まで。ただし7/20〜8/31の木・金は21時まで。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般700(560)円、学生560(440)円、中高生・65歳以上350(280)円。
 *( )は20名以上の団体料金。
 *8月30日(金)までの木・金曜日の17:00〜21:00はサマーナイトミュージアム割引:学生・中高生無料、一般・65歳以上は団体料金。
場所:目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
交通:JR線恵比寿駅東口より徒歩約7分。東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩約10分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『五十嵐靖晃 海風』 千葉県立美術館

千葉県立美術館
『五十嵐靖晃 海風』
2024/7/13~9/8



千葉県出身のアーティスト、五十嵐靖晃による回遊型美術展覧会「海風」が、千葉県立美術館にて開かれています。



今回の展覧会は美術館内だけでなく、千葉みなとエリアをフィールドに屋外にも作品を展示しているのが特徴で、さんばしひろばでは参加者とともに漁網を編み、空に掲げる五十嵐の代表作『そらあみ』が港の景色を美しく彩っていました。



また千葉ポートパーク展望の丘では、近隣の小学生とともに制作し、風を可視化する吹き流しの『風の子』を公開していて、ポートタワーと工場地帯を望む丘の上から、白い吹き流しが風に揺られる光景を見ることができました。



千葉県立美術館内では「協働の海」、「再生の海」と題した2つの大規模なインスタレーションと、「記憶の海」する五十嵐のアーカイブ展示を行っていて、「協働の海」では吹き抜けの空間へ糸を用いて海と星空を創出していました。



このほか、コレクションとのコラボとした「再生の海」も、糸の表現によりコレクションに新たな気づきを与えるような展示だったかもしれません。



アーカイブの「記憶の海」では、三宅島や瀬戸内、太宰府から北アルプス、さらにブラジルから南極など世界各地にて人々と協働しながら多様なプロジェクトを行う五十嵐の取り組みを知ることができました。



過去の活動や『海風展』の内容、また今後の取り組みなどについて、アーティストの五十嵐靖晃にインタビューをしてきました。(Penオンラインに寄稿しました。)

アートで現代を航海する。アーティスト、五十嵐靖晃の活動の軌跡と『海風展』|Pen Online


こちらもご覧いただければ幸いです。



千葉の埋立地へアートで新たな歴史を築いた展覧会だったといえるかもしれません。これまでも何度も通った美術館と千葉みなとエリアが、今回ほど魅力的に感じられたことはありませんでした。



9月8日まで開かれています。

『五十嵐靖晃 海風』 千葉県立美術館@chiba_pref_muse
会期:2024年7月13日(土)~9月8日(日)
休館:月曜日(7月15日、8月12日は開館)、7月16日(火)、8月13日(火)
時間:9:00~16:30。
 *金・土曜日及び休前日は19:30まで
 *入場は閉館の30分前まで
料金:一般1000円、高校・大学生500円、中学生以下、65歳以上無料。
住所:千葉市中央区中央港1-10-1
交通:JR線・千葉都市モノレール千葉みなと駅より徒歩約10分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『ホー・ツーニェン エージェントのA』 東京都現代美術館

東京都現代美術館
『ホー・ツーニェン エージェントのA』 
2024/4/6〜7/7



1976年にシンガポールで生まれ、同地に在住して活動するアーティスト、ホー・ツーニェンは、東南アジアの歴史的な出来事や思想、またアイディンティティなどを綿密にリサーチしながら、映像やインスタレーションなど多様な作品を発表してきました。

そのホーの作品世界を紹介するのが『ホー・ツーニェン エージェントのA』で、最初期を含む6点の作品、および国内初公開となる最新作が展示されていました。


『ウタマ—歴史に現れたる名はすべて我なり』 2003年

まずデビュー作『ウタマ—歴史に現れたる名はすべて我なり』とは、シンガポールの国家の起源に着想を得た作品で、13世紀末にサンスクリット語で「ライオンの町」の意味する「シンガプーラ」と名付けたとされるバレンバンの王子、サン・ニラ・ウタマを取り上げ、多様な物語を表現していました。


『ヴォイス・オブ・ヴォイド―虚無の声』 2021年

またVRと6面の映像からなる『ヴォイス・オブ・ヴォイド—虚無の声』とは、山口情報芸術センター[YCAM]とコラボレーションして制作された作品で、1930年から40年代にかけて大きな影響力を持った京都学派の哲学者たちの戦争の倫理性や死といった思想を題材としていました。


『時間(タイム)のT』 2023年

このほか、42章の映像とテキストを用い、時間のさまざまなあり方を表した最新作の『時間(タイム)のT』も見応え十分といえるかもしれません。


『ホー・ツーニェン エージェントのA』展示風景

ホーといえば2021年、豊田市美術館で開かれた『ホー・ツーニェン 百鬼夜行』展に接し、妖怪を引用したアニメーション作品に大いに心引かれましたが、今回も時間にまつわるさまざまな素材を用いながら、会場全体を連動させるような展示に魅了されました。

東南アジアの多元的な歴史を紐解き、時間のパラレルなあり方を表現する。ホー・ツーニェン展の見どころ|Pen Online

なお会場では、6つの作品が3つの展示室において交互に上映されています。よって時間によって鑑賞できる作品が異なります。詳しくは公式サイト上のタイムテーブルをご参照ください。


7月7日まで開催されています。

『ホー・ツーニェン エージェントのA』 東京都現代美術館@MOT_art_museum
会期:2024年4月6日(土)〜7月7日(日)
休館:月曜日(4月29日、5月6日は開館)、4月30日、5月7日。
時間:10:00~18:00
 *展示室入場は閉館の30分前まで。
料金:一般1500(1200)円、大学・専門学校生・65歳以上1100(880)円、中高生600(480)円、小学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *コレクション展も観覧可。
住所:江東区三好4-1-1
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩9分。都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩13分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『シン・東洋陶磁―MOCOコレクション』 大阪市立東洋陶磁美術館

大阪市立東洋陶磁美術館
『リニューアルオープン記念特別展「シン・東洋陶磁―MOCOコレクション」』
2024/4/12~9/29



1982年に住友グループより安宅コレクションを寄贈されたことをきっかけに誕生した大阪市立東洋陶磁美術館は、同コレクションの中国・韓国陶磁を中心に、李秉昌(イ・ビョンチャン)コレクションの韓国陶磁、または日本陶磁の収集などを重ね、世界第一級の東洋陶磁のコレクションを築いてきました。


『シン・東洋陶磁―MOCOコレクション』 展示風景

その大阪市立東洋陶磁美術館のリニューアルを期して開かれているのが、『リニューアルオープン記念特別展「シン・東洋陶磁―MOCOコレクション」』で、会場には同館の誇る東洋陶磁コレクションなど約380件の作品が公開されていました。


『シン・東洋陶磁―MOCOコレクション』 展示風景

今回のリニューアルに際して一新したのはエントランスホールの増改築で、展示ケースの改修やLED照明の更新といった展示環境の整備、また国宝の『油滴天目茶碗』専用ケースの導入などが行われました。


『シン・東洋陶磁―MOCOコレクション』 展示風景

展示は「天下無敵(てんかむてき)」や「翡色幽玄(ひしょくゆうげん)」、さらに「泥土不滅(でいどふめつ)」などと名付けられた13のセクションより構成されていて、いずれの陶磁器も透明度の高いガラスの中、「紫」励起LEDと呼ばれる照明の効果も相まって美しいすがたを見せていました。


国宝『飛青磁 花生』 元時代・14世紀 住友グループ寄贈(安宅コレクション)

『飛青磁 花生』とは中国で「玉壺春」の名で知られ、酒器として用いられた作品で、日本では花器として珍重されてきました。


重要文化財『法花 花鳥文 壺』 明時代・15世紀 住友グループ寄贈(安宅コレクション)

『法花 花鳥文 壺』は、花樹にとまるつがいの鳥が浮き彫りで表されたもので、法花としては最大級の作例といわれるように優美でかつ堂々としたすがたを見せていました。


『シン・東洋陶磁―MOCOコレクション』 展示風景

充実極まりない東洋陶磁コレクションを、最良の展示空間で鑑賞できる展覧会といえるかもしれません。まさに右も左も名品揃いで圧倒されました。




撮影も可能です。9月29日まで開催されています。

『リニューアルオープン記念特別展「シン・東洋陶磁―MOCOコレクション」』 大阪市立東洋陶磁美術館@OsakaMuseums
会期:2024年4月12日(金)~9月29日(日) 
休館日:月曜日、5/7(火)、7/16(火)、8/13(火)、9/17(火)、9/24(火)
 *但し祝日の4/29(月)、5/6(月)、7/15(月)、8/12(月)、9/16(月)、9/23(月)は開館。
時間:9:30~17:00。
 *入館は16:30まで
料金:一般1600(1400)円、高校生・大学生800(700)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:大阪市北区中之島1-1-26(大阪市中央公会堂東側)
交通:京阪中之島線なにわ橋駅1号出口すぐ。Osaka Metro御堂筋線・京阪本線淀屋橋駅1号出口、Osaka Metro堺筋線・京阪本線北浜駅26号出口各駅から約400m。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『板倉鼎・須美子展』 千葉市美術館

千葉市美術館
『板倉鼎・須美子展』 
2024/4/6~6/16


板倉鼎『黒椅子による女』 1928年 松戸市教育委員会

幼い頃より松戸市に過ごした板倉鼎(1901年生まれ)は、東京美術学校西洋画科に進んだのち、ロシア文学者である昇曙夢の長女須美子と結婚すると、ハワイを経由してパリへと留学しました。


板倉鼎『雲と秋果』 1927年 松戸市教育委員会

そのふたりの画業を紹介するのが『板倉鼎・須美子展』で、会場には鼎と須美子を長く顕彰してきた松戸市教育委員会の全面的な協力のもと、約240点もの作品と資料が展示されていました。

東京美術学校の在学中より帝展への入選を果たした鼎は、パリにて斎藤豊作や岡鹿之助と親交すると、アカデミー・ランソンではロジェ・ビシエールに絵を学びました。

そして若手芸術家の登竜門であるサロン・ドートンヌやサロン・ デ・ザンデパンダンなどに入選を果たすと、エコール・ ド・パリの画家たちの影響を受けながら、窓辺の静物を描いた作品や須美子をモデルとした連作などを制作しました。


板倉須美子『午後 ベル・ホノルル12』 1927〜28年 松戸市教育委員会

一方で須美子は鼎に出会って油彩画を手がけると、ホノルルの風物を描いた作品で独自の画風を切り開き、代表作「ベル・ホノルル」では当時のパリで鼎を上回るほどの評価を得ました。どことなく童話の世界を思わせるような幻想的な作風も魅力といえるかもしれません。


板倉鼎『垣根の前の少女』 1927年 千葉市美術館

『垣根の前の少女』とは鼎がサロン・ドートンヌに初入選した1927年に描かれた作品で、表題の通り垣根の前で立つ少女が、鼎の妹から送られたという孔雀草を口にくわえるすがたを捉えていました。必ずしも一概に言えないものの、女性の肖像画で人気を博したキスリングの画風を彷彿させる面があるかもしれません。


板倉鼎『ダリアと少女』 1929年 松戸市教育委員会

パリで新境地を開いた鼎は、帰国を目前とした1929年、敗血症により28歳の若さにて急死しました。そして幼い子を連れて帰国した須美子も1934年、結核によりわずか25歳にて世を去りました。


板倉須美子『ベル・ホノルル24』 1928年頃 松戸市教育委員会

夭折した洋画家夫妻の足跡を丹念に追いつつ、手紙などを交えて、1920年代のパリで活動した日本人画家の生き様を浮き彫りにするような展覧会だったかもしれません。作品や資料に不足はありませんでした。


一部作品のみ撮影が可能です。6月16日まで開かれています。おすすめします。

『板倉鼎・須美子展』 千葉市美術館@ccma_jp
会期:2024年4月6日(土)~6月16日(日) 
休室日:4月15日(月)、5月7日(火)、20日(月)、6月3日(月)*第1月曜日は全館休館
時間:10:00~18:00。
 *入館は閉館の30分前まで
 *毎週金・土曜は20時まで。
料金:一般1200(960)円、大学生700(560)円、高校生以下無料。
 *( )内は前売り、市内在住の65歳以上の料金。
 *常設展示室「千葉市美術館コレクション選」も観覧可。
 *ナイトミュージアム割引:金・土曜日の18時以降は観覧料が半額
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『第27回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)』 川崎市岡本太郎美術館

川崎市岡本太郎美術館
『第27回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)』
2024/2/17~4/14


村上力『學校』 特別賞

今年で27回目を迎える『岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)』が、川崎市岡本太郎美術館にて開かれています。

今回は621点の応募のうち22組の作家が入選し、専門家諸氏の選考を受け、岡本太郎賞以下、岡本敏子賞、そして過去最多の10組の特別賞が決まりました。


つん『今日も「あなぐまち」で生きていく』 岡本太郎賞

まず岡本太郎賞を受賞したのは1981年生まれのつんで、ダンボールで作られた巨大な団地のような立体作品、『今日も「あなぐまち」で生きていく』を展示していました。


つん『今日も「あなぐまち」で生きていく』 岡本太郎賞

ここでは団地の下の各部屋に付属された名簿を手に取ることができて、もうふやにくまん、それにプリンターなどと名付けられた、さながら住人と思しきキャラクターたちの紡ぐ物語を読むことができました。


三角瞳『This is a life. This is our life.』 岡本敏子賞

続く岡本敏子賞を受賞したのは1988年生まれの三角瞳で、ポリエステルの薄く白い布に人の顔を刺繍した『This is a life. This is our life.』を公開していました。


三角瞳『This is a life. This is our life.』 岡本敏子賞

4平方メートル四方に連なる布には、男女を問わずにさまざまな表情をした千人以上もの人の顔が象られていて、赤い糸で表現された遺伝子に束ねられた存在である人間と、そこから抗えない生命の設計図を示していました。


フロリアン・ガデン『Anomalies-poétiques/詩的異常』 特別賞

空間を大胆に用いた大掛かりなインスタレーションが目立つ中、日常に潜む異世界などを幻視的に表現したフロリアン・ガデンの『詩的異常』も魅惑的だったのではないでしょうか。


フロリアン・ガデン『Anomalies-poétiques/詩的異常』 特別賞

一見何気ない都市や郊外の風景を描きつつ、そこへ現実には存在し得ない巨大な昆虫やカエル、それにかっぱなどを描きこんでいて、中には駅のホームで待つ人々が皆、植木鉢を持っているシュールな光景なども表されていました。


野村絵梨『垢も身のうち』

また同じく日常を舞台にした作品といえば、野村絵梨の『垢も身のうち』も印象に深かったかもしれません。


野村絵梨『垢も身のうち』

ここでは作家本人が暮らす部屋をモデルに、3DCGで人形遊びのおもちゃのようなかたちにデフォルメし、そのデザインをもとにスタイロフォームで彫刻として表現していて、家具や洋服といった造形そのものにも魅力を感じました。


クレメンタイン・ナット『POT-PLANTS』 特別賞

なお会期中、3月17日までは「お気に入りを選ぼう!」と題し、お気に入りの作品を投票するコーナーが設置されています。投票の結果は3月22日(予定)に同館のWEBサイト上にて発表されるそうです。


会場内の撮影も可能です。4月14日まで開かれています。

『第27回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)』 川崎市岡本太郎美術館@taromuseum
会期:2024年2月17日(土)~4月14日(日)
休館:月曜日。3月21日(木)。
時間:9:30~17:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般700(560)円、大・高生・65歳以上500(400)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *常設展も観覧可。
住所:川崎市多摩区枡形7-1-5
交通:小田急線向ヶ丘遊園駅から徒歩約20分。向ヶ丘遊園駅南口ターミナルより「溝口駅南口行」バス(5番のりば・溝19系統)で「生田緑地入口」で下車。徒歩5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『進撃の巨匠 竹内栖鳳と弟子たち』 福田美術館

福田美術館
『進撃の巨匠 竹内栖鳳と弟子たち』
2024/1/18~4/7


竹内栖鳳『南支風光』 1938年

1864年に京都に生まれた竹内栖鳳は、先人たちの日本画の技に西洋の技法などを取り入れた自らの芸術を確立すると、京都画壇を代表する画家として活躍しました。

その竹内栖鳳と弟子たちに着目したのが『進撃の巨匠 竹内栖鳳と弟子たち』で、栖鳳をはじめ、上村松園、西村五雲、また小野竹喬、土田麦僊といった後進の画家とともに、戦後の小野竹喬、福田平八郎らの作品が展示されていました。


竹内栖鳳『水風清』 1935年頃

まず冒頭に並ぶのが栖鳳の作品で、若き栖鳳の描いた『秋夕図』や、群青や緑青を用いて波の打ち寄せる浜辺を描いた『春の海』、それに鶺鴒が可愛らしい姿を見せる『水風清』などに目が止まりました。


竹内栖鳳『春郊方牛図』 1902年頃

一際目立つのは、春の野に放たれた牛たちをモチーフとした『春郊方牛図』で、右に手前を見やる大きな牛を表しつつ、左には牛が群れる光景を俯瞰するようにして描いていました。


上村松園『しぐれ』 1940年頃

こうした栖鳳に続くのが弟子たちの作品で、筆墨は栖鳳を凌ぐとも評価された西村五雲の『高原之鷲』をはじめ、凛とした佇まいが美しい上村松園の『しぐれ』、はたまた赤い鶏頭に蔓を伸ばして咲く朝顔を描いた土田麦僊の『鶏頭花』などが印象に残りました。


土田麦僊『ヴェトイユ風景』 1922年

この土田麦僊が西洋絵画の流れを日本画の世界に取り込もうとしたのが『ヴェトイユ風景』で、単純化した家並みなどを岩絵具を用いつつ色鮮やかに描いていました。


『進撃の巨匠 竹内栖鳳と弟子たち』展示作品

戦後に活動した小野竹喬、福田平八郎、池田遙邨らの作品にも優品が目立っていたかもしれません。


池田遙邨『旭譜』 1982年

電線に止まる鳥たち朝日に浮かぶ様子を描き、それを五線譜に見立てたという池田遙邨の『旭譜』にも心惹かれました。


土田麦僊『鶏頭花』 1915年頃

展示替えの情報です。3月5日の休館日を挟み、一部の作品が入れ替わります。(本エントリは前期期間中の展示作品です。)

『進撃の巨匠 竹内栖鳳と弟子たち』作品リスト(PDF)
前期:1月18日(木)~3月4日(月)
後期:3月6日(水)~4月7日(日)
*作品点数:前期32/後期35/通期31


なお同館では先日、伊藤若冲が晩年に描いたとされる「果蔬図巻」が新たに発見されたことを発表し、美術ファンの中で注目を集めました。

「世界新発見の伊藤若冲の巻物『果蔬図巻(かそずかん)』が福田美術館のコレクションに加わり、同館で記者発表会を実施」福田美術館プレスリリース(PDF)

『果蔬図巻』は10月から開かれる展覧会にて公開されます。詳しくは上記リンク先リリースをご覧ください。


竹内栖鳳『海光清和』 1926年頃

4月7日まで開催されています。

『進撃の巨匠 竹内栖鳳と弟子たち』 福田美術館@ArtFukuda
会期:2024年1月18日(木)~4月7日(日)
 *前期:1月18日(木)~3月4日(月)、後期:3月6日(水)~4月7日(日)
休館:3月5日(火)
時間:10:00~17:00。最終入館は16時半まで。
料金:一般・大学生1500(1400)円、高校生900(800)円、小中学生500(400)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *嵯峨嵐山文華館両館共通券あり。
住所:京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16
交通:嵐電(京福電鉄)嵐山駅下車、徒歩4分。阪急嵐山線嵐山駅下車、徒歩11分。JR山陰本線(嵯峨野線)嵯峨嵐山駅下車、徒歩12分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『須藤康花―光と闇の記憶―』 松本市美術館

松本市美術館
『須藤康花―光と闇の記憶―』 
2023/12/9〜3/24


須藤康花『夢幻2』

1978年に福島県に生まれた画家の須藤康花(すどう・やすか)は、幼少期にネフローゼ症候群を発症して入退院を繰り返しながら描くことに集中すると、多摩美術大学に進学して版画を研究するも、2009年に30歳という若さにて亡くなりました。

その須藤の美術館での初の大規模回顧展が『須藤康花―光と闇の記憶―』で、父が松本市内に設立した康花美術館の全面的な協力のもと、初期から晩年までの約180点の作品が展示されていました。


左:須藤康花『ヒマワリととんぼ』

まず冒頭は幼少期から10代前半の頃に描いた作品が並んでいて、明るく伸びやかなタッチで美しい田園を描いた『ヒマワリととんぼ』などに目がとまりました。

14歳の時に母を亡くした須藤は、母と同じ慢性肝炎を発症して体調が深刻となるもののの、16歳に静岡県に転居して絵の道へ進むべく沼津美術研究所に入所し、のちに東京へ移って多摩美術大学へ進学しました。


『須藤康花―光と闇の記憶―』 展示作品

須藤の木炭やデッサンによる一連の作品を前にして印象に深いのは、暗がりの中に淡く温かみのある光が差し込みつつ、幻視とも夢想的とも呼べるようなイメージが広がっていることでした。


『須藤康花―光と闇の記憶―』 展示作品

またそこには何か特定し得ない奇異な生き物や不思議な植物などが描かれていて、時に未知の世界の洞窟を思わせる風景が幻想的に表されていました。


『須藤康花―光と闇の記憶―』 展示作品

こうした主にモノクロームによるイリュージョン的な世界を描いた作品の一方で、温かみのある色彩によりリアルな風景を表したのが長野県麻績村(おみむら)でのスケッチでした。


『須藤康花―光と闇の記憶―』 展示作品

大学で版画を研究しつつ、週末には父とともに麻績村で移った須藤は、農作業に勤しみながら地域の子どもたちに絵を教えるなどして暮らしました。人のいない光景にどことない寂しさも感じられるものの、自然の光景を素直に捉えようとした須藤の制作のありようが伺えるかもしれません。


須藤康花『白夜』

20代の半ば過ぎに描かれ、ラストの「光と闇の記憶」に並んだ『幻葬』や『崩壊前夜』、それに『白夜』などの作品にも心を惹かれました。


須藤康花『幻葬』

いずれも深い闇を伴う洞窟のような空間からわずかな光が滲み出すように灯されていて、時に人影と思しきすがたも見ることができました。また銅版の技法に由来した、画面全体に広がる繊細な質感も魅惑的だったかもしれません。


須藤康花『崩壊前夜』

展示室内の撮影も可能です。

会期末での鑑賞となりました。3月24日まで開催されています。

『須藤康花―光と闇の記憶―』 松本市美術館@MatsumotoMuseum
会期:2023年12月9日(土) 〜 2024年3月24日(日)
休館:月曜日(休日の場合翌平日)、年末年始(12/29~1/3)
時間:9:00~17:00
 *入場は16時半まで。
料金:大人1000円、大学高校生・70歳以上の松本市民700円。
住所:長野県松本市中央4-2-22
交通:JR線松本駅から徒歩約12分。JR松本駅よりタウンスニーカー(市内周遊バス)東コース「伊織霊水(美術館北)」下車。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『マツモト建築芸術祭 2024 ANNEX』 旧松本市立博物館 (メイン会場)

旧松本市立博物館 (メイン会場) / 新松本市立博物館 / 信毎メディアガーデン
『マツモト建築芸術祭 2024 ANNEX』 
2024/2/23~3/24


旧松本市立博物館(中島崇 展示作品風景)

長野県松本市の旧松本市立博物館(メイン会場)にて、「マツモト建築芸術祭 2024 ANNEX」が開かれています。


米谷健+ジュリア 展示作品風景

これは「名建築に アートが住み着く マツモトの冬。」をコンセプトに、過去2回にわたって開催した「マツモト 建築芸術祭」の第3回に当たるもので、今回は「消えゆく名建築 アートが住み着き 記憶する」と題し、メイン会場の旧松本市立博物館を中心に国内外17組のアーティストが作品を公開していました。


谷敷謙 展示作品風景

1967年に建てられた旧松本市立博物館は、松本市の最大の歴史遺産ともいえる松本城に隣接した建物で、長く地域の博物館施設として親しまれていたものの、新博物館への移転に伴い2021年に休館しました。現在は解体に向けた準備が進められています。


旧松本市立博物館(中島崇 展示作品風景)

まず建物全体を透明なフィルムでラッピングしたのが中島崇の『ケア』で、花崗岩を洗い出しにしたという外壁の記憶を残しつつ、柔らかく温かい光を新たにもたらしていました。


鬼頭健吾 展示作品風景

らせん階段の吹き抜けを用いた鬼頭健吾の『lines』も目立っていたかもしれません。ここではカラフルな蛍光色に彩られた棒状の線が何本も吊り下がっていて、階段を上下に行き来しながら変化する景色を楽しむこともできました。


磯谷博史 展示作品風景

磯谷博史の『花と蜂はち、透過する履歴』とは、2つの大きな瓶に蜂蜜を満たす中、集魚灯を落とし込んだインスタレーションで、ワイン色ともオレンジ色ともいえるような妖しく神秘的な光を辺りに放っていました。


宇佐美雅浩 展示作品風景

中心にいる人物の世界を1枚の写真で表現した宇佐美雅浩の『Manda-la 曼荼羅』も見応え十分ではなかったでしょうか。


宇佐美雅浩『早志百合子 広島』

広島の原爆ドームの近くの広場を舞台とした『早志百合子 広島』とは、被爆者の早志百合子の人生を時空を超えて表現したもので、右の原爆投下時の広島と左の明るい芝生で赤ん坊が遊ぶ空間を対比的に示していました。

左右の画面とも一見、合成写真と見間違うような光景が広がっていて、1人の人間の曼荼羅というだけでなく、広島の地域の歴史そのものを体現した世界が展開しているように思えました。


熊野寿哉 展示作品風景

自然光が取り込める半室内空間を効果的に活かしたのが、華道家で空間演出家として活動する熊野寿哉の『パンタレイ』でした。

蘭や苔、腐葉土などを用いた生け花の作品は、会期中、微生物や湿気などを発生させながら、成長しつつ、次第に劣化していって、近い将来に取り壊される建物と重なり合うような万物流転の思想を表していました。


河合政之 展示作品風景

使われなくなった地下のボイラー室を用いた、河合政之の『Three Elements 三元素』も芸術祭のハイライトを飾るような作品といえるかもしれません。


カンディダ・ヘーファー 展示作品風景

このほか、ドイツ生まれの写真家、カンディダ・ヘーファーの写真作品や、建物の片隅で小さな雑草を添えた須田悦弘の木彫なども印象に残りました。


新松本市立博物館の階段スペース(ここで映像展示が行われています)

過去2回の芸術祭では街中の建築においても作品が展開していましたが、今回は旧松本市立博物館に会場が集中しているために映像を除いてほぼありません。



しかしながら旧博物館の前の松本城をはじめ、市中に点在する蔵造りの古い建物など、松本の観光や街歩きを兼ねて楽しむのも良いのではないでしょうか。



フィルム越しに望む松本城公園など、芸術祭でしか味わえない景色そのものも魅力的に思えました。


3月24日まで開催されています。

『マツモト建築芸術祭 2024 ANNEX』@maaf_matsumoto) 旧松本市立博物館 (メイン会場) / 新松本市立博物館 / 信毎メディアガーデン
会期:2024年2月23日(金) ~ 3月24日(日)
休館:なし(新松本市立博物館のみ3/19 休館)
時間:10:00~17:00
料金:一般2000円、高校生・大学生・専門学生1500円、中学生以下無料。*メイン会場料金
住所:長野県松本市丸の内4-1 松本城公園内(旧松本市立博物館)
交通:JR線松本駅下車徒歩約20分。松本周遊バス「タウンスニーカー」北コース「松本駅お城口」発「松本城・市役所前」下車。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家』 東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリー
『ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家』
2024/1/17~3/24



スウェーデンを拠点とするガラス作家・山野アンダーソン陽子のガラス作品を中心に、日本やドイツのアーティストによる静物画や写真を紹介する展覧会が、東京オペラシティアートギャラリーにて開かれています。

それが『ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家』で、会場には山野アンダーソン陽子の作品のほか、三部正博の写真、さらには日本やドイツの18人の画家による絵画が展示されていました。



今回の展覧会のきっかけは2013年、山野アンダーソン陽子が「ガラスの作品を本にしたらどうか」と提案を受け、アートブックを制作するプロジェクトがはじまったことでした。



山野は日本やドイツの18人の画家へ、画家自身が描きたいと思うガラスを言葉へ表現してもらうと、その言葉からインスピレーションを受けてガラス作品を制作しました。



そして出来上がったガラスを各画家が静物画として思い思いに描くと、写真家の三部正博が画家のアトリエを訪ねて絵画とガラスの双方の写真を撮影し、デザイナー・須山悠里がアートブックに仕上げました。



一連のプロセスで興味深いのは、山野が各画家による絵画などのイメージではなく、言葉からガラス作品を制作していることで、そうしたコミュニケーションの一端を伺えるテキストも会場にて紹介されていました。



またそれぞれの画家は端的に静物画といえども、時に抽象表現を思わせるような作品を描いていて、山野アンダーソン陽子の美しいガラス作品が多様な平面イメージへと転化する様子も見ることができました。



先にガラスありきではないアプローチそのものからしてユニークといえるかもしれません。個々の作品はもとより、ガラス、絵画、写真が織りなす景色も魅力的に思えました。



会場内の撮影も可能でした。*写真は『ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家』展示風景


3月24日まで開かれています。

『ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家』 東京オペラシティアートギャラリー@TOC_ArtGallery
会期:2024年1月17日(水)~3月24日(日)
休館:月曜日。(祝日の場合は翌火曜日)、2月11日(日)*全館休館日
時間:11:00~19:00 
 *入場は閉館30分前まで。
料金:一般1400(1200)円、大・高生800(600)円、中学生以下無料。
 *同時開催中の「収蔵品展078 静物画の世界」、「project N 93 宮林妃奈子」の入場料を含む。
 *( )内は各種割引料金。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『円空―旅して、彫って、祈って―』 あべのハルカス美術館

あべのハルカス美術館
『あべのハルカス美術館開館10周年記念 円空―旅して、彫って、祈って―』
2024/2/2~4/7


『護法神立像』 1685(貞享2)年頃 岐阜県・千光寺

江戸時代初期の僧・円空は、修験僧として旅を続けながら神仏を彫り続けると、優しい微笑みをたたえたり、また怒りの相を表す諸像は、当時の人々だけでなく多くの現代人の心も惹きつけてきました。

その円空の足跡を作品と資料を交えて紹介するのが『円空―旅して、彫って、祈って―』で、会場には木の破片を削って作った仏像のような小さな彫刻から2メートルを超える大作まで、約160体の円空仏が公開されていました。

1632年に美濃国で生まれたと円空は、幼い頃に出家すると、同時代の資料こそ残っていないものの、20代にして寺を離れて、富士山や白山などに籠りました。

そして1663年、数え年32歳の時に彫ったものが最初の作品と確認されていて、その後は東北や北海道へ旅しては神仏の像を制作しました。

40歳の時に法隆寺において法相宗の法系に連なる僧であると認められると、円空の旅は続き、岐阜、愛知、三重のほか、奈良にて修験の行者として修行を積み重ねながら精力的に像を彫り続けました。


『不動明王及び二童子立像』 1685(貞享2)年頃 岐阜県・千光寺

円空が1年あまり滞在し、住職の舜乗と意気投合しては造仏に励んだ、岐阜県の飛騨の千光寺より多くの円空仏がやって来ました。


『両面宿儺坐像』 1685(貞享2)年頃 岐阜県・千光寺

このうち『両面宿儺坐像』とは、飛騨に現れた異形の悪人で、『日本書紀』では滅ぼされたとされるものの、地元では悪竜を退治した英雄として語られる両面宿儺を象った作品でした。


『観音三十三応現身立像』 1685(貞享2)年頃 岐阜県・千光寺

また『観音三十三応現身立像』とは、千光寺に31体現存するほぼ同形の菩薩立像で、近隣の村人が病気の時に借り出しては平癒を祈ったと伝えられてきました。


『狛犬』 1685(貞享2)年頃 岐阜県・千光寺

初期から晩年への活動を辿ることで作風の変遷を見ることができるだけでなく、円空の残した歌などを参照しながら、円空の人となりを浮かび上がらせるような構成も良かったかもしれません。


『護法神立像』 1685(貞享2)年頃 岐阜県・千光寺

実に関西では20年ぶりの大規模な円空展というだけに、作品資料ともに不足はありませんでした。


『金剛力士(仁王)立像(吽形)』 1685(貞享2)年頃 岐阜県・千光寺

会期中、第4章「祈りの森」(一部展示作品を除く)と冒頭の『金剛力士立像』の撮影が可能です。


木の中に仏性を見出した、円空の祈りの世界。あべのハルカス美術館にて展覧会が開催中!|Pen Online

他館への巡回はありません。4月7日まで開催されています。

『あべのハルカス美術館開館10周年記念 円空―旅して、彫って、祈って―』(@enku2024) あべのハルカス美術館@harukas_museum
会期:2024年2月2日(金)~ 4月7日(日)
時間:10:00~20:00(火〜金)、10:00〜18:00(月、土、日、祝)
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:2月5日(月)、3月4日(月)
料金:一般1800円、大学・高校生1400円、中学・小学生500円。
住所:大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階
交通:近鉄線大阪阿部野橋駅西改札、およびJR線天王寺駅中央改札より徒歩3分。地下鉄御堂筋線天王寺駅西改札より徒歩2分。*それぞれシャトルエレベーターまでの所要時間。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『マリー・ローランサン —時代をうつす眼』 アーティゾン美術館

アーティゾン美術館
『マリー・ローランサン —時代をうつす眼』
2023/12/9~2024/3/3


マリー・ローランサン『女と犬』 1923年頃 石橋財団アーティゾン美術館

20世紀前半に活躍したマリー・ローランサンは、柔らかな曲線やパステルカラーによる独自の画風を確立すると、自作詩や舞台装置や衣裳のデザインなども幅広く手がけました。

そのローランサンの制作を紹介するのが『マリー・ローランサン —時代をうつす眼』で、会場にはローランサンの作品(約40点)をはじめ挿絵本等の資料(約25点)、また同時代の画家の作品(約25点)など、計約90点が公開されていました。

1883年にパリにて生まれたローランサンは、画家を志してアカデミー・アンベールに通うも、のちにモンマルトルの集合アトリエ兼住居の「洗濯船(バトー・ラヴォワール)」に出入りし、若い新進芸術家と交流を深めました。

そしてジョルジュ・ブラックやパブロ・ピカソと親交し、キュビスムの画家として活動をはじめ、1912年には初めての個展を成功させるなどして注目を集めました。


マリー・ローランサン『ブルドッグを抱いた女』 1914年 群馬県立近代美術館

1914年にドイツ人男爵のオットー・フォン・ヴェッチェンと結婚したものの、第一次世界大戦がはじまり、ドイツがフランスに宣戦布告したことを受け、フランス国外への亡命を余儀なくされました。


マリー・ローランサン『牡鹿と二人の女』 1923年 ひろしま美術館

そしてスペインやイタリアなどを経由し、終戦後は夫の実家のあるドイツ・デュッセルドルフに移り住むものの、1921年には離婚してパリへと戻り、華やかな画風の作品を手がけて人気を博しました。


マリー・ローランサン『女優たち』 1927年 ポーラ美術館

その後は上流階級の女性たちがローランサンの肖像画を注文するなど社交界にも受け入れられ、第二次世界大戦中も画風を守り抜き、1956年に72歳にて亡くなりました。


マリー・ローランサン『花束』 1939年 マリー・ローランサン美術館

今回の回顧展では名の知れた優美な肖像画だけでなく、生涯を通じて描いた静物画も展示されていて、とりわけ多くを占めるという花の絵画に目を引かれました。


マリー・ローランサン『自画像』 1908年 マリー・ローランサン美術館

1908年の『自画像』はローランサンが25歳の時の作品で、早くも画家として自信を感じさせるような眼差しを向ける自らのすがたを、単純化された形態や輪郭線、平面的な色面を用いて描いていました。



マリー・ローランサン『三人の若い女』 1953年 マリー・ローランサン美術館

後年の『三人の若い女』はローランサンが実に10年をかけて制作したとされる大作で、画家に特徴的な淡い色彩によって三人の女性がゆるやかに集う光景を表していました。


ケース・ヴァン・ドンゲン『シャンゼリゼ大通り』 1924〜25年 石橋財団アーティゾン美術館

自らの画風を貫いたローランサンの制作をさまざまな観点より俯瞰する展示といえるかもしれません。このほか、ドンゲンや藤田など同時代の画家の作品にも見応えがありました。


3月3日まで開催されています。

『マリー・ローランサン —時代をうつす眼』 アーティゾン美術館@artizonmuseumJP
会期:2023年12月9日(土)~2024年3月3日(日)
休館:月曜日(1月8日、2月12日は開館)、12月28日-1月3日、1月9日、2月13日。
時間:10:00~18:00
 *2月23日を除く毎週金曜日は20時まで。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:【ウェブ予約チケット】一般1800円、大学・高校生無料(要予約)、中学生以下無料(予約不要)。
 *日時指定予約制。
 *ウェブ予約チケットが完売していない場合のみ当日チケット(2000円)も販売。
住所:中央区京橋1-7-2
交通:JR線東京駅八重洲中央口、東京メトロ銀座線京橋駅6番、7番出口、東京メトロ銀座線・東西線・都営浅草線日本橋駅B1出口よりそれぞれ徒歩約5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 前ページ