「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」 三菱一号館美術館

三菱一号館美術館
「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展~アメリカ合衆国が誇る印象派コレクションから」 
2/7-5/24



三菱一号館美術館で開催中の「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展~アメリカ合衆国が誇る印象派コレクションから」を見てきました。

アメリカで唯一の西洋絵画を集めた国立美術館のワシントン・ナショナル・ギャラリー。同館のコレクションがまとめてやって来たのは2011年、六本木の国立新美術館(京都市美術館へ巡回)以来のことです。

前回は印象派前史からポスト印象派までを時代を追って俯瞰する構成でした。チラシ表紙を飾ったマネの「鉄道」やセザンヌの「赤いチョッキ」などに心打たれたことを今も覚えています。

あれから4年です。今度の会場は丸の内の一号館。端的に前回と何が違うのでしょうか。その答えの一つとして「小さなフランス絵画」というキーワードがあります。

「小さなフランス絵画の革新性 (担当学芸員インタビュー)」@ワシントン・ナショナル・ギャラリー展公式サイト

と言うのも本展の核となるのが、美術館の創設者の長女であるエイルサ・メロンのコレクションであるということです。彼女は弟のポールとともにナショナル・ギャラリーのコレクションを拡充。特にエイルサは小型の印象派作品を寄贈しました。


ピエール=オーギュスト・ルノワール「花摘み」 1875年 油彩・カンヴァス
National Gallery of Art, Washington, Ailsa Mellon Bruce Collection


その作品はいずれも自邸を飾るために蒐集されたものです。つまりこれ見よがしに大空間で展示するというよりも、さも手元に引き寄せては愛でるような、言わば身近な場で楽しむために集められた作品ばかりなのです。


エドゥアール・ヴュイヤール「黄色いカーテン」 1893年頃 油彩・カンヴァス
National Gallery of Art, Washington, Ailsa Mellon Bruce Collection


ヴュイヤールの「黄色いカーテン」はどうでしょうか。40センチ四方の小さな作品、一人の女性が分厚い黄色のカーテンを開けようとしています。もう一枚の花柄のカーテンも美しい。手前のベットのシーツでしょうか。それも黄色い。ともかく色彩の美しさが際立っています。

エイルサは日常の風景を装飾的に描いたナビ派の作品を好んで集めたそうです。よって本展でもヴュイヤールとボナールが充実。それぞれ8点と9点。この二人の画家のみで独立した一つの章が組み立てられています。


ピエール=オーギュスト・ルノワール「モネ婦人とその息子」 1874年 油彩・カンヴァス
National Gallery of Art, Washington, Ailsa Mellon Bruce Collection


「親密」もテーマの一つです。というのも、画家にとって身近なモデル、つまり家族であり、また友人であったりする人物を描いた作品が多い。またモデル同士、例えば恋人同士や時に飼い主とペットといった関係を描いた作品も目立ちます。


ピエール=オーギュスト・ルノワール「猫を抱く女性」 1875年頃 油彩・カンヴァス
National Gallery of Art, Washington, Gift of Mr. and Mrs. Benjamin E. Levy


その最たる作品がチラシ表紙を飾るルノワールの「猫を抱く女性」ではないでしょうか。白く、またうっすら光り輝くドレスに身を纏った女性が文字通り猫を抱く姿。優し気な視線は猫を見定めていて、その体を首から胸でしっかりと受け止めています。猫は取り澄ました表情をしていますが、すっかり安心したようにして身を任せています。女性のピンク色を帯びた肌をはじめ、猫の毛など、細かな描写もニュアンスに富んでいました。


ピエール=オーギュスト・ルノワール「アンリオ夫人」 1876年頃 油彩・カンヴァス
National Gallery of Art, Washington, Gift of the Adele R. Levy Fund, Inc.


ルノワールに良品が目立ちました。約10点です。2011年展にも出ていましたが、「アンリオ夫人」もやはり美しい。胸をやや開けた白いドレス。大きな目を見開いてはうっすら笑みをたたえています。背景は薄い水色です。透明感を帯びています。画家ならではの朧げな筆致です。肘の辺りは背景の薄い水色と混じり合っているようにも見えます。

ちなみにモデルの夫人を描いた11点のうち、唯一この作品のみが、夫人の手元に残されたそうです。そういう意味ではモデルと作品自体が密でもあります。余程出来映えに満足したのでしょう。

私の好きなシスレーが3点出ていたのも嬉しいところでした。うち特に惹かれたのは「ポール=マルリーの洪水」です。画家が繰り返し描いた作品の一つですが、水面の光の煌めき、グレーの雲の質感も実に美しい。そして小舟に乗っては行き交う人々の姿も見えます。よく指摘されることではありますが、洪水という災害を思わせない、どこか情緒的な作品でもあります。


アルフレッド・シスレー「牧草地」 1875年 油彩・カンヴァス
National Gallery of Art, Washington, Ailsa Mellon Bruce Collection


なお余談ですが、今秋に練馬区立美術館でシスレーの回顧展が行われるそうです。

「アルフレッド・シスレー:イル=ド=フランス、川のある情景展」(仮称)@練馬区立美術館 9月20日(日)~11月15日(日)

こちらにも期待しましょう。

さて最後に一つ、どうしても忘れられない作品があります。それがアントワーヌ・ヴォロンの「バターの塊」です。

図版がないので何ともお伝えしにくいのですが、ともかく画面いっぱいに描かれたのはてんこ盛りのバター。木のヘラが刺さり、下方は白い布にも覆われています。手前に卵が二つあるのはバターの大きさを伝えるためでしょう。そこから推測するに卵を7~8個は積み上げたくらいの高さ、クローズアップされたバターの塊の姿はまるで氷山です。画面いっぱいにそびえ立つ。ともかくバターが圧倒的な物質感をもって描かれています。

マネの「牡蠣」やセザンヌの「三つの洋梨」同様、食べ物をモチーフとした小品です。ひょっとするとエイルサのダイニングルームを飾っていたのかもしれません。派手さこそありませんが、これぞ今回のキーワードでもある「小さなフランス絵画」を象徴した作品と言えるのではないでしょうか。


ポール・セザンヌ「牛乳入れと果物のある静物」 1900年頃 油彩・カンヴァス
National Gallery of Art, Washington, Gift of the W. Averell Harriman Foundation in memory of Marie N. Harriman


出品は全68点。もちろん2011年展に出た作品もいくつか目にしましたが、うち38点は日本初公開です。その意味では新鮮味もありました。

会期第2週目の日曜の夕方前に出かけましたが、館内は予想以上に混雑していました。

特にはじめの方の展示室は絵画の前の行列が遅々として進みません。そして必ずしも広いとは言えない同館の展示スペースです。キャパシティに余裕があるわけでもありません。


エドゥアール・マネ「キング・チャールズ・スパニエル犬」 1866年頃 油彩・リネン
National Gallery of Art, Washington, Ailsa Mellon Bruce Collection


今後は入場規制がかかることも予想されます。まずは早めの観覧をおすすめします。(金曜の夜間開館も狙い目となりそうです。)

5月24日まで開催されています。

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展~アメリカ合衆国が誇る印象派コレクションから」 三菱一号館美術館
会期:2月7日(土)~5月24日(日)
休館:月曜日。但し祝日の場合は開館。4月6日、5月18日は開館。
時間:10:00~18:00。毎週金曜日(祝日除く)は20時まで。
料金:大人1600円、高校・大学生1000円、小・中学生500円。
 *ペアチケットあり:チケットぴあのみで販売。一般ペア2800円。
住所:千代田区丸の内2-6-2
交通:東京メトロ千代田線二重橋前駅1番出口から徒歩3分。JR東京駅丸の内南口・JR有楽町駅国際フォーラム口から徒歩5分。
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「花と鳥の万華鏡」 山種美術館

山種美術館
「花と鳥の万華鏡ー春草・御舟の花、栖鳳・松篁の鳥」
2/11-4/12



山種美術館で開催中の「花と鳥の万華鏡ー春草・御舟の花、栖鳳・松篁の鳥」を見てきました。

言わば日本画の華ともいえる花鳥画。その魅力を山種美術館のコレクションで楽しめる展覧会です。

今回は「青い日記帳×山種美術館 ブロガー内覧会」に参加しました。(館内の撮影のお許しをいただきました。)

冒頭は速水御舟の「牡丹花」、通称「墨牡丹」と呼ばれる作品です。


速水御舟「牡丹花(墨牡丹)」 1934(昭和9)年

厳密には牡丹には黒はなく、紫黒色をした花がそう呼ばれますが、ここで御舟はあえて墨を用いて黒い牡丹を描いています。薄い墨を淡く重ねては開く牡丹の美しさと言ったら比類がありません。


速水御舟「牡丹花(墨牡丹)」 1934(昭和9)年 *部分

雄しべは金泥を用いていました。闇にそっと明かりが灯るような姿、花弁は優しくしべを包み込みます。どこか情緒的なまでの趣きです。私も大好きな御舟ですが、その中でも最上位に挙げたい作品と言えるかもしれません。


渡辺省亭「牡丹に蝶図」 1893(明治26)年 *部分

本展では牡丹を描いた作品が多いのも特徴です。そもそも牡丹は花の王とも呼ばれる吉祥的な画題、春草の「白牡丹」や龍子の「牡丹」、さらには渡辺省亭の「牡丹に蝶図」など充実したものが目立ちます。ちなみに省亭の作は美術館初公開だそうです。同じ花を見比べてはお気に入りの作品を探すのも面白いかもしれません。


松林桂月「春雪」 19~20世紀(明治~昭和時代)

練馬区立美術館の回顧展を思い出しました。松林桂月です。作品は「春雪」。南天でしょうか。赤い実をつけた枝葉には雪がかぶっています。良く見ると枝の先にはおそらく雀と思われる鳥がちょこんとのっていました。葉や枝の色彩にはニュアンスがあり、時に向こうが透けて見えるほど薄塗りです。傑作の「春宵花影」を彷彿させはしないでしょうか。実に幻想的でした。

さて今年は琳派400年の琳派イヤー、本展においても琳派の作品を見逃すことは出来ません。


鈴木其一「四季花鳥図」 19世紀(江戸時代)

それが鈴木其一の「四季花鳥図」です。右に春夏、左に秋冬の草花を配した作品、そして草むらに隠れるように鶏やひよこ、それに鴛鴦などが描かれています。つまり親子や夫婦の睦まじい姿を表したもの。質の高い絵具を使ったと言われる通り、状態も良好です。眩い金地に黄色の向日葵。細部の描写にも緩みがありません。また良く見ると葉が一部うねっています。単に写実に留まらない、どこか生々しさを伴った、其一ならでの屏風と言えるかもしれません。


鈴木其一「四季花鳥図」 19世紀(江戸時代) *部分

荒木十畝の「四季花鳥」も画面の装飾性という点においては琳派的と呼べるのではないでしょうか。


荒木十畝「四季花鳥」 1917(大正6)年

そもそも画家自身が光琳を意識したとも語った作品、4幅の大画面には色とりどりの草花がこぼれ落ちんとばかりに描かれています。葉脈の金も眩い。ちなみにこの作品は山種美術館のコレクションで最も縦に長いそうです。ゆえにケースも本作が入るように設計されました。


速水御舟「翠苔緑芝」 1928(昭和3)年

人気の「翠苔緑芝」も展示中です。金地屏風の大作、ともかくは樹木に紫陽花の配置など、半ば大胆なまでに平面化した構成に目を奪われますが、やはり可愛らしいのは小動物です。うつぶせになって背伸びするうさぎ、これは実際にリラックスする時によく見せるポーズだそうです。


速水御舟「翠苔緑芝」 1928(昭和3)年 *部分

紫陽花にも注目です。というのも少し焦げているようにも見えます。何でもこれは胡粉に重曹を混ぜ、火をつけてあぶったとも言われているとか。花の質感表現を徹底して追求したゆえのことなのでしょう。


速水御舟「翠苔緑芝」 1928(昭和3)年 *部分

ちなみに枇杷や紫陽花、そして猫やうさぎは、本作を描いた頃に御舟が住んだ目黒の家にあったものだと言われています。身近な素材を用いて、かくも大胆な空間を作った御舟の才知。常に変化し続けた御舟ならでは先取性に富んだ作品だと言えそうです。


左:奥村土牛「兎」 1947(昭和22)年頃

最後にもう一匹、可愛らしいうさぎをあげておきましょう。土牛の「兎」です。山種美術館でも人気の名品、うさぎの種はカイウサギと呼ばれるもので、上で触れた「翠苔緑芝」のそれと同じだそうです。

瑞々しい色彩感、身体の部分は得意のたらし込みでしょうか。仄かに滲んでいます。朱色の芥子を前に彼方を見つめるうさぎは何を想うのでしょうか。瞳は限りなく澄んでいました。


速水御舟「桃花」 1923(大正12)年頃

もう間もなく3月。既に梅は咲き、めじろの鳴き声が聞こえる季節ではありますが、それでもまだ寒い日も続きます。なかなか頻繁にお花見とはいかないかもしれません。


田能村直入「百花」 1869(明治2)年 *部分

それを山種美術館では日本画の世界で先取り出ます。まさに百花繚乱、もちろん夏や秋の花もありますが、一足先に「春」に特有の華やいだ気分を味わえるような展覧会でした。

4月12日まで開催されています。

「花と鳥の万華鏡ー春草・御舟の花、栖鳳・松篁の鳥」 山種美術館@yamatanemuseum
会期:2月11日(水・祝)~4月12日(日)
休館:月曜日
時間:10:00~17:00 *入館は16時半まで。
料金:一般1000(800)円、大・高生800(700)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *きもの割引:着物で来館すると団体割引料金を適用。
住所:渋谷区広尾3-12-36
交通:JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅2番出口より徒歩約10分。恵比寿駅前より都バス学06番「日赤医療センター前」行きに乗車、「広尾高校前」下車。

注)写真はブロガー内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「国宝『檜図屏風』修理後初公開」 東京国立博物館

東京国立博物館・本館2室
「国宝『檜図屏風』修理後初公開」
2/17~3/15



東京国立博物館で公開中の「檜図屏風」を見てきました。

桃山の絵師、狩野永徳が晩年に描いたと言われる「檜図屏風」。画面を貫く巨木の迫力はほかに代え難く、時に身悶えとも称される姿は、もはや檜自体に魂が宿っているかのような凄みがあります。

最近では2011年の「初もうで展」に出品がありました。ご記憶の方も多いかもしれません。

以来、約4年ぶりの公開です。東博本館の国宝室にて「檜図屏風」が公開されています。


国宝「檜図屏風」 狩野永徳 安土桃山時代 天正18(1590)年 紙本金地着色 4曲1双 東京国立博物館

さて「檜図屏風」、一目見るだけでも、以前と趣きが違うことがお分かりいただけるのではないでしょうか。

というのも8曲1隻から4曲1双に改装されているのです。しかも屏風のように折り曲げられているのではなく、襖絵のように立っています。それゆえか印象がかなり異なりました。


国宝「檜図屏風」 狩野永徳 安土桃山時代 天正18(1590)年 部分 東京国立博物館

結論から述べると「檜図屏風」は2012年秋から2014年春にかけて大規模な修理が行われました。元々、素人目からしても傷みの激しかった同屏風、修理の際には「下張りを施し、亀裂や浮きの補修、汚れの軽減」(「檜図屏風 平成の大修理」パンフレットより)などの作業が行われたそうです。


国宝「檜図屏風」 狩野永徳 安土桃山時代 天正18(1590)年 部分 東京国立博物館

また屏風は本来4面の襖だったものを8曲1隻にしていたため、左右の図柄の繋がりにズレが発生していました。今回の修復では元来の襖の形態に戻すことも視野に入れていたそうです。結果的に4曲1双の屏風に生まれ変わりましたが、図柄の接続に関してはより自然な形となりました。

また修理において屏風裏から墨書きが発見されたほか、唐紙の模様についても一部新しい発見があったそうです。

こうした修理のプロセスについては本館1階インフォメーションで配布中のパンフレット「檜図屏風 平成の大修理」が大変に参考になります。


パンフレット「国宝 檜図屏風 平成の大修理」

見開きの大きな図版なども付いています。何とも豪華版。これで無料です。

「国宝 檜図屏風 平成の大修理」(東京国立博物館)

パンフレットは東博のWEBからもダウンロードすることが出来ます。あわせてご覧下さい。

「檜図屏風」は私が日本美術に関心を持った頃、書籍の図版で見て、一目でその異様なまでの迫力に心奪われた作品です。

初めて実物を見たのは2007年。京都国立博物館で行われた「狩野永徳展」でのことでした。


国宝「檜図屏風」 狩野永徳 安土桃山時代 天正18(1590)年 右 東京国立博物館

まるで両手を力強く振り回さんとばかりに枝を広げる檜の姿。幹はもはや屏風を破ろうとするのように激しく天をついています。


国宝「檜図屏風」 狩野永徳 安土桃山時代 天正18(1590)年 左 東京国立博物館

左右で空間にかなり違いがあります。と言うのも幹の貫く右隻は余白が少なく、枝や葉を含めて密であるのに対し、左隻は細い枝が雲霞を鋭く裂くほかは、水や岩が描かれるなど粗でもある。視点は一度、根元のある地点から幹を辿って上にあがり、その後は枝葉を経由しながら、水辺の下方や岩山の上方へと向けられます。幹の押し上げる上下こそ狭いものの、左右は広い。思いの外に余裕があります。

なお現在、東洋館のミュージアムシアターでは「国宝 檜図屏風と狩野永徳」が上映されています。



TNM&TOPPANミュージアムシアター 国宝「檜図屏風と狩野永徳」
上演期間:2015年1月4日(日)~4月26日(日)
土・日、祝・休日 11:00/13:00/15:00
水・木・金曜   13:00/15:00
○所要時間40分 ○各回定員90名

この日は時間の都合で観覧出来ませんでしたが、シアターの上映は屏風公開終了後、4月末まで行われています。修復の新知見などについても触れているそうです。あわせて見るのも面白いのではないでしょうか。


東京国立博物館・本館2階国宝室

新たに甦った「檜図屏風」。色彩が鮮やかになったことで、以前よりも若々しく、また俊敏であり、なおかつ華やかさが増したようにも見えます。久々に向き合いましたが、やはりこれほど強い印象を与える作品はなかなかありません。時間を忘れて見入りました。

「もっと知りたい狩野永徳と京狩野/東京美術」

本館国宝室、一ヶ月限定です。3月15日まで公開されています。おすすめします。

「国宝『檜図屏風』修理後初公開」 東京国立博物館・本館2室(@TNM_PR
会期:2月17日(火)~3月15日(日)
休館:月曜日。但し1月12日(月・祝)は開館。
料金:一般620円(520円)、大学生410円(310円)、高校生以下無料。
 * ( )内は20名以上の団体料金。
 *特別展「みちのくの仏像展」のチケットでも観覧可。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで) 
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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「チームラボ展」にて「最新作品プレス発表会&特別内覧会」が開催されます

日本科学未来館で開催中の「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」。



デジタルの領域を基盤に、アートやネットメディア、それにデザインなどの分野で多彩に活動するチームラボ。インタラクティブな作品も盛りだくさんです。その世界観を全身で体感することが出来ます。

「チームラボ展」 日本科学未来館(はろるど)

昨年11月末から始まった展覧会は既に3ヶ月目に突入。当初の予定は3月1日まででしたが、好評のため会期は大幅に延長。後期として3月7日から5月10日の間も展示が行われます。

また後期からは最新作「Floating Flower Garden/浮遊する庭園」(仮)も出展。「お絵かきふなっしー」が復活するなど、一部の展示がリニューアルされます。



後期初日の前日のイベントです。「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」にてSNSユーザー向けにWEB内覧会が開催されます。

[日本科学未来館「チームラボ展」最新作品プレス発表会&特別内覧会 開催概要]
・日時:2015年3月6日(金) 17:00~20:00
・会場:日本科学未来館(東京都江東区青海2-3-6)
・スケジュール
 17:00~ 受付開始
 17:30~17:50 プレス発表会 チームラボ代表 猪子寿之
 18:00~ 特別観覧会
 20:00  観覧会終了
 *最新作品の内覧は混雑を緩和するために時間割制とさせていただきます。
・定員:50名
・参加資格:ブログ、Faceboook、Twitterアカウントをお持ちの方。ブログの内容は問いません。
・参加費:無料
・申込方法:専用申込みフォームより→https://admin.prius-pro.jp/m/win/form.php?f=4
・申込締切:先着順にて受け付けます。定員に達し次第、申し込みを締め切りとさせていただきます。詳細については、返信メールでお知らせいたします。

 

内覧会開催日時は3月6日(金)の17時半より。(受付開始は17時)閉館後の貸し切りでの観覧です。(一般招待客及び、プレス関係者も含みます。)参加資格はブログ、Faceboook、Twitterアカウントをお持ちの方で、展示の感想なり魅力をご紹介いただける方です。

[参加の特典]
1.後期開幕日、前日(3月6日)に開催する「特別内覧会」です。
2.チームラボ代表:猪子寿之氏の「プレス発表会」にご出席いただけます。
3.最新作はもちろん、他の作品も内覧・体験いただけます。
4.Miraikan Shop(企画展グッズ等)の営業を20時まで延長します。
5.本企画展は展示室内の撮影が行えます。*注意事項有り

定員は50名。先着順での受付です。定員に達し次第、締切となります。詳細については、事務局より返信メールでお知らせがあります。

なお当日は内覧会に先立ち、チームラボ代表の猪子寿之さんによるプレス発表会に参加することが出来ます。



連日多くの方で賑わうというチームラボ展。実際に開幕一ヶ月で10万名もの入場者を数えました。また2月15日には最大で120分の入場待ち時間が発生したそうです。

企画展「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」混雑状況のご案内(日本科学未来館)

そのチームラボ展を閉館後に観覧出来るチャンスです。また新作の公開もあり、一度見た方も楽しめるのではないでしょうか。

なお「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」は、いわゆるアートの展示(踊る!アート展)と、主に子どもたちを対象に全国各地を巡るプロジェクト(学ぶ!未来の遊園地)との二つからなる展覧会です。

うち「学ぶ!未来の遊園地」はここ科学未来館と一部平行して全国巡回中。今回新たに山口の「シーモールホール」でも開催が決まりました。

[チームラボ 学ぶ!未来の遊園地 今後の予定]
・シーモール下関専門店街「シーモールホール」(山口) 2015年3月21日~4月5日
http://kids.team-lab.com/contents/lp/seamall.html
・仙台TICビル(宮城)  2015年3月21日~5月10日
http://kids.team-lab.com/event/sendaitic/
・モザイクモール港北(神奈川) 2015年3月7日~5月10日
http://kids.team-lab.com/contents/lp/mozaiku.html
・トキハ別府店(大分) 2015年3月27日~5月10日
http://kids.team-lab.com/event/tokiha_beppu/
・ナガシマスパーランド 「スーパードーム」(三重) 2015年3月21日~5月10日
http://kids.team-lab.com/event/nagashima2015/
・東京サマーランド(東京) 2015年4月25日~5月31日
http://kids.team-lab.com/event/summerland/

SNSユーザ向けの「チームラボ展 最新作品プレス発表会&特別内覧会」。3月6日(金)の17時半スタート。会場は臨海副都心の日本科学未来館です。

専用申込みフォーム→https://admin.prius-pro.jp/m/win/form.php?f=4

「チームラボって、何者?/マガジンハウス」

受付は既に始まっています。50名限定、先着順です。興味のある方は申込まれてはいかがでしょうか。

「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」 日本科学未来館@miraikan
会期:2014年11月29日(土)~2015年5月10日(日)*会期延長。
休館:毎週火曜日。但し12/23(火・祝)、及び2015/1/6(火)は開館。年末年始(12/28~1/1)。展示替え期間(3/2~3/6)。
時間:10:00~17:00
 *3/7以降の土・日・祝日は19時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで
料金:大人1800円、中人(小学生~18歳)1200円、小人(3歳~小学生未満)900円。
 *中人は土曜のみ1100円。
 *リピーター割引あり。
住所:江東区青海2-3-6
交通:新交通ゆりかもめテレコムセンター駅下車徒歩約4分。船の科学館駅下車徒歩約5分。東京臨海高速鉄道りんかい線東京テレポート駅下車徒歩約15分。
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「押江千衣子 新作展」 西村画廊

西村画廊
「押江千衣子 新作展」
2/4-3/7



西村画廊で開催中の「押江千衣子 新作展」を見てきました。

1969年に大阪に生まれ、1995年に京都市立芸術大学大学院を卒業。2001年にはVOCA賞を受賞した画家、押江千衣子。

私が最近、作品を見たのは昨年の武蔵野美術大学美術館です。倉敷の大原美術館の現代美術コレクションを紹介する「オオハラ・コンテンポラリー・アット・ムサビ」 でのことでした。

「オオハラ・コンテンポラリー・アット・ムサビ」  武蔵野美術大学美術館(はろるど)

同ギャラリーでは約7年ぶりとなる新作の個展です。主に植物をモチーフとしたペインティング5点とドローイング10数点。力強い筆致によって描かれた瑞々しい野菜や植物などが空間を彩っています。

さて押江、旧作ではランドスケープとでも言うのか、街や山の景色を俯瞰した構図で捉えた作品がありましたが、今回はあくまでも植物限定。しかもその多くがより身近な素材である野菜というモチーフです。

とりわけ目立つのがたまねぎです。「ひげね」と題された一枚、ずばりたまねぎを正面から描いています。ちょうど画面の上半分が葉のつけね、つまりは食する部分、そして下半分が根です。何本もの根がとぐろをまいては四方八方へのびています。

こうした植物は日頃、押江が家庭菜園で育てている野菜だそうです。収穫したたまねぎを吊り下げていたら、根が四方八方に広がっていることに気が付き、たまねぎが食品ではなく、生き物であることが分かった。そう押江は述べています。(下記リンク先より)

「押江千衣子 OSHIE Chieko」 (西村画廊)

しかし一見、穏やかな作風ではありますが、たまねぎの根のストロークしかり、植物を象る筆致には迫力があります。絵具をキャンバスへ強くめり込ませるように引いています。

DM表紙の「ぎぼし」はたまねぎの花をイメージした作品だそうです。先の「ひげね」しかり、対象をあくまでも写実的に捉えていますが、どこか様式化したような味わいがあるのも興味深いところ。必ずしも単純に具象的だとは言い切れません。

ドローイングも魅惑的ではないでしょうか。トマトやスイカなどを同じく瑞々しい色遣いで描いています。また唯一の人物、赤ん坊を描いた作品も目を引きました。何でも押江は2011年に長女を出産したそうです。母が子を優しく見る眼差し。それを反映した作品かもしれません。

壁一面、たくさんの紙を繋げては植物を象った大作も見応えがありました。花は薔薇でしょうか。鮮やかな緑や赤の色彩が目に染みます。生命感に満ちあふれていました。

[フェイス21世紀]:押江千衣子(Art Annual online)

久々の新作個展、7年前の西村での展示を思い出しました。変わらない魅力が確かにあります。

「押江千衣子目をすます/求龍堂」

3月7日まで開催されています。

「押江千衣子 新作展」 西村画廊
会期:2月4日(水)~3月7日(土)
休廊:日・月・祝日
時間:10:30~18:30
住所:中央区日本橋2-10-8 日本橋日光ビル9階
交通:東京メトロ銀座線・日本橋駅・東西線B1、C4出口より徒歩2分。都営浅草線 日本橋駅D3出口より徒歩2分。
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「キャプテン・クック探検航海とバンクス花譜集展」 Bunkamura ザ・ミュージアム

Bunkamura ザ・ミュージアム
「キャプテン・クック探検航海と『バンクス花譜集』展」
2014/12/23-2015/3/1



Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「キャプテン・クック探検航海と『バンクス花譜集』展」を見てきました。

「英国自然科学界の巨人」(展覧会サイトより)ことジョゼフ・バンクス(1743-1820)。1768年からのキャプテン・クックによる太平洋航海に同行します。科学班のリーダーとしてオーストラリアや南太平洋の島々で様々な植物を採集し、後に「バンクス花譜集」と呼ばれる植物画集を残しました。

ちらし表紙の「バンクシア・セラータ」からして精緻極まりない描写が目を引くもの。特に葉脈の立体感、細かなテクスチャーは目を見張ります。出品は花譜集より選ばれた120点です。南の島の草花を描いた植物画がBunkamuraのスペースを美しく彩っていました。

ところで私自身、実は展覧会を見る前は花譜集のみの展示、それがひたすらに並んでいるのだろうと思い込んでいました。


「腰布(更紗)」 インドネシア共和国、ジャワ 国立民族学博物館

大きな誤解でした。何も花譜集だけではありません。ここにはクックやバンクスらが探検航海で辿ったストーリーがあります。さらには彼らの滞在したポリネシア諸島やオーストラリアの先住民族についての資料もあるのです。

いきなり世界地図こと「万国全図」がお目見えします。そして「船上ベル」や「携帯用地球儀」、「星図」と並ぶ。いずれも航海用の用具です。クック船長一行が乗り込んだのはエンデヴァー号。模型も展示されています。乗組員は90名でした。表向きの目的はタヒチ島での金星観測(太陽面通過)だったそうです。結果的に航海は3年にも及びました。

イギリスのプリマスを出て南米を経由、ホーン岬を経由して最初に到達したのはソサエティ・アイランズ。いわゆるタヒチ島を中心とした太平洋上の群島です。


「テスペシア・ポプルネア 『バンクス花譜集』より(ソサエティ・アイランズ)」 Bunkamuraザ・ミュージアム

そこで採取された植物画です。一例は「ガルデニア・タイテンシス」、ゴーギャンの絵画にも描かれた植物です。ちなみに花譜集の原画のスケッチを行ったのは画家のシドニー・パーキンソン。もちろん花譜集の刊行に尽力したのはバンクス自身ですが、そもそもパーキンソンが草花をスケッチしなくては生まれなかったものでもあります。船長クックとバンクス、そして画家パーキンソン。この3名が展覧会の主人公と言えるかもしれません。

注目すべきは民族資料です。ポリネシアの神像やカヌーの模型、また先住民の使用していた籠や釣り針、それに腰布などがずらり。貝製の美しい首飾りも目を引きます。

花譜集と資料を見比べられるのもポイントです。例えばタヒチで戦いのシンボルとされていた「カスアリーナ・エクィセティフォリア」、その硬い木材は武器やこん棒として利用されていたそうですが、会場には元の植物画とこん棒が並んで展示されています。


「クリアントゥス・プニケウス 『バンクス花譜集』(ニュージーランド)」 Bunkamuraザ・ミュージアム
 
タヒチの次に向かったのは、ニュージーランド、そしてオーストラリアでした。ニュージーランドではクックが初めて詳細な地図を作成。そしてオーストラリアでは東海岸を初めて「発見」したヨーロッパ人となります。


「デプランケア・テトラピュラ」 『バンクス花譜集』より(オーストラリア)」Bunkamuraザ・ミュージアム

パーキンソンはニュージーランドで200点もの植物画を描きます。うち180点が花譜集に採用されました。ちなみに花譜集は全部で743点。その半分がオーストラリアで描いた植物画だそうです。

それにしても登場する植物、様々な謂れがあるのも興味深いところです。例えばニュージーランドの「ブラキュグロッテッス・レパンダ」、これは薬用植物として葉をトイレットペーパーとして用いたとか。また後に滞在するジャワの「サルコロブス・グロボースス」はデング熱の治療に利用されました。草花は単に愛でられるだけでなく、採取されては、人々の生活の道具としても用いられます。


「樹皮画」 オーストラリア、アボリジニ 野外民族博物館リトルワールド

マオリ、アボリジニの民族資料も面白いもの。特に細かな線刻が美しいマオリのオールをはじめ、アボリジニの「樹皮画」が印象に残りました。パーキンソン自身もマオリの装身具に魅了されたそうです。

さて3年にも及ぶ航海。皆が全て帰還出来たわけではありません。何とパーキンソンもこの後のジャワで亡くなります。というのも当時のバタヴィアの衛生状況は劣悪で、乗組員に赤痢やマラリアが流行。30名以上もの死者を出します。そこでパーキンソンも命を落としてしまうのです。


「クレロデンドルム・パニクラートゥム 『バンクス花譜集』より(ジャワ)」 Bunkamuraザ・ミュージアム

よって花譜集におさめられた最後の植物画はジャワで描かれたものでした。一方でバンクスはクックとともに無事帰国。直ぐさま花譜集の出版を計画しますが、資金の欠乏などにより挫折。結果的に生前に花譜集が発行されることはありませんでした。

花譜集が発行されたのは最近、何と1980年代になってからのことです。大英博物館に残されていた銅版を元に100部限定で出版。クックの太平洋探検航海から約250年、ようやく「バンクス花譜集」が完成しました。


「戦闘用カヌー(模型)」ニュージーランド、マオリ 国立民族学博物館

なお資料に関しては大阪の国立民俗学博物館からも多く作品がやって来ています。植物好きの方はもちろん、民族学に関心のある方にも楽しめるのではないでしょうか。


「ミュージアムカフェマガジン」2月号 特集「さあ、植物旅行に出かけよう」

ミュージアムカフェマガジン2月号の特集がバンクス花譜集でした。かの荒俣宏さんが花譜集の魅力はもちろん、バンクスやパーキンソンらの探検について熱く語っています。こちらも要チェックです。

思いがけないほど面白い展示でした。3月1日までの開催です。おすすめします。

「キャプテン・クック探検航海と『バンクス花譜集』展」 Bunkamura ザ・ミュージアム
会期:2014年12月23日(火・祝)~2015年3月1日(日)
休館:1月1日(木・祝)、1月26日(月)。
時間:10:00~19:00。毎週金・土は21:00まで開館。入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1300(1100)円、大学・高校生900(700)円、中学・小学生600(400)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:渋谷区道玄坂2-24-1
交通:JR線渋谷駅ハチ公口より徒歩7分。東急東横線・東京メトロ銀座線・京王井の頭線渋谷駅より徒歩7分。東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線・東京メトロ副都心線渋谷駅3a出口より徒歩5分。
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「没後30年 ロベール・クートラス展」 渋谷区立松濤美術館

渋谷区立松濤美術館
「1930-1985 没後30年 ロベール・クートラス展 夜を包む色彩 カルト、グワッシュ、テラコッタ」
2/8-2/22、2/28-3/15



渋谷区立松濤美術館で開催中の「没後30年 ロベール・クートラス展」を見てきました。

パリに生まれ、芸術家を志しながらも、二度も画廊との契約を解約。一時は極貧の生活を続けては、夜な夜なタロットカード大のボール紙に絵を描き続けた画家、ロベール・クートラス(1930-1985)。

決して知名度があるとは言えませんが、生前にも都内で個展が行われたほか、日本語での作品集も出版されるなど、必ずしも無名の画家というわけではありません。

出品は約150点ほどです。画家を代表するタロットカード大の「カルト」と呼ばれる連作のほか、グワッシュの小品、それにテラコッタなどが展示されています。


ロベール・クートラス「カルト 僕の夜」 1970年代以降 油彩、紙

さて目につくのはその「カルト」、いずれも「僕の夜」と名付けられた作品です。タロットカード、ちょうどiPhoneサイズとも言って良いかもしれません。素材はいずれもボール紙です。兎のような小動物をはじめ、草花、また人物や顔、はたまたトランプのクローバーのようなモチーフなどが描かれています。それに文字を殴り描きしたような図柄も目につきました。

基本的には具象ですが、時には抽象的でかつデザイン的です。宙に浮かぶのは天使でしょうか。口から何か吹き出しています。一方で耳の尖った悪魔のような動物を描いた作品もありました。

ある意味で拙いと言えるような描写、ふと中世美術を思い出しました。実際、クートラスは20歳の頃、石工として教会の修復現場で働いた経験があり、ロマネスク美術に憧れを持っていたそうです。その仕事はすぐに辞めてしまいますが、「カルト」における、どこか原初的でかつ宗教的なイメージは、やはり中世美術を志向してゆえのことかもしれません。


ロベール・クートラス「カルト 僕の夜」 1970年代以降 油彩、紙

クートラスは23歳にリヨンの美術学校に入学し、様々なコンクールに出品してはいくつかの賞を受賞。29歳の時には初めてパリの画廊と契約します。制作のためにヴェニスやカンヌに滞在したこともあったそうです。

しかしながらクートラスを「現代のユトリロ」と売り出した画廊に嫌気が差します。そして僅か1~2年で契約を解除してしまいました。その後は日々の食事にも困るほどの極貧生活に突入。7年間もパリの安ホテルや屋根裏部屋を渡り歩き、結果的には自身が「金の太陽の部屋」と呼んだ住居に移り住みます。そこで制作を続けながら生涯を過ごしました。


ロベール・クートラス「カルト 僕の夜」 1970年代以降 油彩、紙

「カルト」の制作に没頭したのもこの頃です。ボール紙はその辺で拾ってきたもの。厚紙を小さく切っています。一時は別の画廊と契約したこともあり、昼間に絵画などを制作しては、夜に「カルト」に専念したそうです。だからこそ「僕の夜」と名付けたのでしょう。最終的には何と6000枚も制作します。

「カルト」には闇夜で物思いに耽るようなクートラスの精神世界が反映されているのかもしれません。ある意味ではイコンです。ただ必ずしも暗鬱で重々しいというわけではなく、むしろ民画を見るかのように微笑ましく、時には聖母像を思わせる優し気な雰囲気をたたえた図像も少なくありませんでした。


ロベール・クートラス「無題」 1973年頃 油彩、紙

15歳で自殺未遂をはかって3週間も意識不明に陥ったり、二度目に契約した画廊も「黒い獣」が暴れ出したとして解除するなど、ともかく人生の様々なエピソードにも事欠かないクートラス。私自身は事前に全く知らず、実は殆ど偶然に通りすがりで見ましたが、思いの外に心惹かれる展覧会でした。


ロベール・クートラス「月に抱かれた男」 1978年 油彩、キャンバス

会期が2つに分かれていますが、展示替えはありません。2/23~2/27の間はお休みです。ご注意下さい。

美術館公募展、及び小中学生絵画展と共催の展覧会です。入場は無料でした。

「僕の夜:ロベール・クートラス作品集/エクリ」

3月15日まで開催されています。

「1930-1985 没後30年 ロベール・クートラス展 夜を包む色彩 カルト、グワッシュ、テラコッタ」 渋谷区立松濤美術館
会期:2月8日(日)~22日(日)、2月28日(土)~3月15日(日)
休館:月曜日。2/12(木)、2/23(月)~2/27(金)。
時間:9:00~17:00 *最終入館は16時半まで。
料金:無料。
 *「2015松濤美術館公募展」(2/8~2/22)及び「第33回渋谷区小中学生絵画展」(2/28~3/15)も観覧可。
場所:渋谷区松濤2-14-14
交通:京王井の頭線神泉駅から徒歩5分。JR線・東急東横線・東京メトロ銀座線、半蔵門線渋谷駅より徒歩15~20分。
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「第9回 shiseido art egg 飯嶋桃代展」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「第9回 shiseido art egg 飯嶋桃代展」
2/6-3/1



資生堂ギャラリーで開催中の「第9回 shiseido art egg 飯嶋桃代展」を見てきました。

銀座の地下の「海」には古食器による「氷河」の欠片が浮いています。

1982年に神奈川に生まれ、2011年には女子美術大学大学院美術研究科美術専攻博士後期課程を修了。近年、主に都内のギャラリーにて作品を発表する作家、飯嶋桃代。

つい昨年には馬喰町のαMでも個展がありました。ご覧になった方も多いかもしれません。

「パランプセスト―重ね書きされた記憶/記憶の重ね書き vol.1 飯嶋桃代」@ギャラリーαM
2014年5月24日(土)~6月21日(土)

さて写真のとおり照明の落とされた展示室に並ぶのは10個のオブジェ、「開封のイエ」と名付けられた作品です。


「開封のイエーFragments of glacier」 2014~2015年(一部、2009年)

先に古食器と書きましたが、遠目ではどこに食器があるのか分かりません。白く、美しい光を放つオブジェ。「イエ」とあるように確かに箱、家のような形をしていました。


「開封のイエーFragments of glacier」 2014~2015年(一部、2009年)

視線を落とし、作品に限りなく近づいてみました。すると何かが無数に埋め込まれていることが分かります。これが食器です。表面をスパッと切り取られた食器の欠片、茶碗でしょうか。丸みを帯びているものもあります。大きさはまちまちです。平たいものから深皿まで、ともかく無数の食器が固まっていました。

種を明かすと、先に型をつくり、食器を入れます。その後にパラフィンワックス、ようは石蝋を流し込んで固める。その後に切断するそうです。つまり断面に見える食器は成型後に切り取られたものです。また基本的に「イエ」は七角形に仕上げられます。


「開封のイエーFragments of glacier」 2014~2015年(一部、2009年)

そして食器はいずれも使い古されたもの。おそらくはかつて「家族の記憶で満たされた」(解説より)であろう食卓の場にあった器ばかりです。

ギャラリーαMで見た際の「イエ」は色がついていましたが、今回はほぼ白一色。ワックスの色そのものです。それゆえかより真夜中の海に浮かぶ氷河のように見える。飯嶋自身も氷山をイメージした展示だとも語っています。

「以前、馬喰町のαMギャラリーで展示したとき、家の作品が並ぶ様子が漂流した氷山みたいに見えたんです。その感覚が今回の展示につながっています。」飯嶋桃代 *下記インタビュー記事

「家族という共同体への批判的な眼差し 飯嶋桃代インタビュー」(CINRA.NET)

奥のスペースでは「Singular」と題する古食器を用いたインスタレーションが展示されていました。


「Singular(s)ー光/水 器をみたすもの」 2015年

鉄製の細いスタンドの上に整然と並ぶ古食器たち。良く見ると下に明かりがあり、Singular、つまり単数という単語が浮かび上がっていることがわかります。

飯嶋の制作の主題は「家族の記憶」だそうです。無造作に転がる「イエ」や断面に切り取られた古食器には、現代の家族の在り方を問い直す意味もこめられている。漠然とそう感じました。



【第9回 shiseido art egg 展示スケジュール】
川内理香子展 1月9日(金)~2月1日(日)
飯嶋桃代展 2月6日(金)~3月1日(日)
狩野哲郎展 3月6日(金)~3月29日(日)

3月1日まで開催されています。

「第9回 shiseido art egg 飯嶋桃代展」 資生堂ギャラリー
会期:2月6日(金)~3月1日(日)
休廊:毎週月曜日
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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「イスラーム展」 東洋文庫ミュージアム

東洋文庫ミュージアム
「もっと知りたい!イスラーム展」
1/10-4/12



東洋文庫ミュージアムで開催中の「もっと知りたい!イスラーム展」を見て来ました。

日頃、イスラム教諸地域に関する報道を見聞きしない日はありませんが、その一方でどれほど詳しく知っているかと問われると、答えに窮してしまうのも事実です。ともすると誤解や偏見も多いのではないでしょうか。日本人にとってイスラム教は必ずしも身近な存在とは言えません。

そうしたイスラム教を資料によって紹介する展覧会です。出品は「コーラン」の書写から契約文書、またイスラムに関する絵画や日本語での文献など40点弱。中でもイスラム教の発展、つまりどのようにして世界へ広まっていったのかに着目しています。

館内の撮影が出来ました。


「コーラン」 1371-72年頃書写

「コーラン」です。言うまでもなくイスラム教の聖典、展示品は14世紀に現在のシリアで書写されたものです。アラビア語の書体は見るからに美しい。各節の区切りは金の絵具で描かれた梅の花で示されています。また所々の赤い記号は発声の際の注意点を表しているそうです。


「祝祭の書」 1720年(2000年複製)

オスマン帝国の皇子の割礼を祝うためのお祭りを描いたのが「祝祭の書」です。ここでは贅沢な宴会やパレード、さらには花火やサーカスまでが行われたとか。王の権勢を示す意味もあったのでしょう。派手なお祭りです。当時のイスラムの風俗を伝える重要な資料でもあります。


「結婚契約書」 1721年 フェズ

イスラムにおける結婚は男女の契約です。婚姻時に交わした「結婚契約書」には、結納金や贈り物、財産権はおろか、離婚した際の慰謝料などの条件までが記されています。また写真では分かりにくいかもしれませんが、ここでも金の絵具によって華麗な装飾が施されていました。

早くも14世紀の段階でイスラムは中東地域はおろか、北アフリカ、中央アジア、それに東南アジアまでの広がりを見せます。


イブン=バットゥータ「大旅行記」 1355年成立(1877年パリ刊)
 
当時のイスラム世界を旅したのがイブン・バットゥータです。モロッコから出発し、エジプトやトルコにシリア、そしてアラビア半島から東アフリカ、さらにカザフスタンやインド、インドネシア、遠くは中国などを巡り歩きます。足掛け30年にも渡る大旅行です。その旅行記が出品されています。

アジアにおけるイスラム伝播についての展示も重要です。日本と中国、どちらが先に本格的なコーランの全文訳をしたのかご存知でしょうか。


坂本健一「コーラン経」 1920年 東京刊

答えは日本です。坂本健一が1920年に和文に訳した「コーラン経」が最初の完訳。アラビア語の原典ではなく、英訳のコーランを日本語に訳しました。

中国ではその和文コーランを1927年に訳したのが最初です。ただしその後の1932年、王静斎がアラビア語から初めての中国語にコーランを全訳します。


王静斎「古蘭経訳解」 1932年 北京刊

ちなみに王静斎は中国人ムスリムです。宗教指導者としても活動し、当時の中国イスラム社会におけるリーダ的な存在でもありました。


「イスラーム展」解説パネル

総じて解説パネルが非常に充実しています。良く耳にするスンニ派とシーア派などのイスラムの宗派、いわゆるイスラム原理主義の運動、さらには先にも触れたイスラムの世界的伝播の経緯などについて細かに触れています。全て読むと、イスラム教についての知識を一通り頭に入れることが出来るかもしれません。


「オリエントホール」展示室風景

1階のオリエントホールでは英仏訳のコーランやイスラム研究書なども展示されていました。


J.グールド「アジアの鳥類」 1850-83年 ロンドン刊

また東洋文庫の名品セクションでは国宝の「文選集注」なども出品。それにイギリスの鳥類学者が19世紀に著した「アジアの鳥類」なども目を引きました。何とも美しい表紙ではないでしょうか。


「モリソン文庫」展示室風景

東洋文庫の「もっと知りたい!イスラーム展」。イスラム教を知るための取っ掛かりになりそうです。

4月12日まで開催されています。

「もっと知りたい!イスラーム展」 東洋文庫ミュージアム@toyobunko_m
会期:1月10日(土)~4月12日(日)
休館:火曜日。但し祝日の場合は開館。翌日休館。
時間:10:00~19:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般900円、シニア800円、大学生700円、中学・高校生600円、小学生290円。
 *入館割引券あり
住所:文京区本駒込2-28-21
交通:都営地下鉄三田線千石駅A4出口から徒歩7分。JR線・東京メトロ南北線駒込駅(JR線南口、南北線2番出口)から徒歩8分。
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「タイルが伝える物語」 IXILギャラリー

IXILギャラリー
「タイルが伝える物語ー図像の謎解き展」
2014/12/4-2015/2/21



リクシルギャラリーで開催中の「タイルが伝える物語ー図像の謎解き展」を見てきました。


右:陶板画「聖母子像」 ドイツ KPMベルリン製 19世紀

いきなりですが、上の写真の聖母子像、まるで油絵具による絵画に見えはしないでしょうか。

実際は陶板画です。19世紀はドイツのベルリンで制作されたもの。原画は16世紀のラファエロを参照していると考えられています。

こうした陶板を含むタイル画を集めた展覧会です。その数は約70点。愛知県常滑市の「世界のタイル博物館」(INAXライブミュージアム)のコレクションがやってきています。会場をヨーロッパ、中国、イスラムの3つにわけ、諸地域で多様に広まったタイル画を紹介していました。


白地藍彩聖書場面タイル オランダ 19世紀

まずはヨーロッパです。やはり目立つの聖書の主題、例えば創世記のハガルの追放の場面です。タイル地に聖書の各場面を描き分けています。オランダの作品です。プロテスタントの影響も色濃い同国、タイルの絵を子どもに見せながら聖書の読み聞かせをしていたとも言われています。


物語を描いたタイル

そもそもヨーロッパで一番早くタイルが住居に使われたのがオランダでした。タイルに描かれた聖書の物語は身近な生活の場に根ざします。一方でイギリスはより装飾的なタイルが隆盛。動物や植物、人物のポートレートや観光地の風景、さらにはシェイクスピア劇の一場面など、ありとあらゆるモチーフが描かれました。


染付陶板「山水」 中国 17~20世紀(清代)

続いては中国です。古くから焼物の文化があった中国でも建築物にタイルが多用されます。染付けの陶板に描かれたのは「山水」の風景、清の時代の桃源郷のモチーフです。


「二十四孝」 中国

また墓室にもタイルが用いられたそうです。儒教思想に基づく「二十四孝」なども目を引くかもしれません。

最後はイスラムです。そしてこれが色彩鮮やかで大変に美しい。私も一番惹かれたのがイスラムのタイルでした。

イスラムのタイルは大きくわけて2パターンあります。一つはモスクなどの宗教施設を飾るもの。ここでは偶像禁止の観点から幾何学や唐草模様が用いられます。一方で宮殿や世俗的な施設では人物や動物のモチーフが好まれました。本展でも後者のタイルが紹介されています。


多彩物語図組絵タイル「ホスローとシーリーン」 イラン 18~19世紀

「ホスローとシーリーン」はどうでしょうか。ペルシャの恋愛叙事詩のワンシーンを描いたタイル。原作は12世紀のペルシャの詩作ですが、これはイスラムを代表する恋物語として知られているとか。よく絵画に描かれるそうです。


多彩野宴図組絵タイル イラン 18世紀

貴人の遊楽の様子です。「多彩野宴図組絵タイル」は王の宮殿を飾りました。コーランに出てくる楽園とも言われる場面、飲み物を捧げるのは若き男性です。そして貴人も手を振り上げれては馨しいポーズを見せる。何とも艶やかではないでしょうか。


多彩レリーフ動植物像タイル「王書」 イラン 19世紀

そのほかイラン最大の叙事詩をの場面を描いた「王書」なども興味深い。先の「ホスローとシーリーン」しかり、ともかく発色の良い青藍が目に染みます。


「タイルが伝える物語」会場風景

洋の東西のタイル画を一揃え見られる展覧会です。京橋リクシルの小さなスペースではありますが、思いの外に楽しめました。

入場は無料です。2月21日まで開催されています。

「タイルが伝える物語ー図像の謎解き展」 IXILギャラリー
会期:2014年12月4日(木)~2015年2月21日(土) 
休廊:水曜日。年末年始。
時間:10:00~18:00
住所:中央区京橋3-6-18 LIXIL:GINZA2階
交通:東京メトロ銀座線京橋駅より徒歩1分、東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅7番出口より徒歩3分、都営浅草線宝町駅より徒歩3分、JR線有楽町駅より徒歩7分
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「燕子花と紅白梅 光琳アート」 MOA美術館

MOA美術館
「尾形光琳300年忌記念特別展 燕子花と紅白梅 光琳アート 光琳と現代美術」
2/4-3/3



MOA美術館で開催中の「尾形光琳300年忌記念特別展 燕子花と紅白梅 光琳アート 光琳と現代美術」を見てきました。

没後300年忌を迎えた尾形光琳の畢竟の大作、「燕子花図屏風」と「紅白梅図屏風」を同時に紹介する展覧会。両屏風が揃うのは何と56年ぶりのことです。会場は二会場制、熱海のMOA美術館と東京の根津美術館です。そして先行するのがMOA美術館でした。

「燕子花と紅白梅」 記者発表会 *展覧会の概要についてまとめてあります。

ところで両展示、「燕子花」と「紅白梅」の同時公開こそ共通しますが、ほかの内容は全くと言って良いほど異なっています。MOA美術館では二屏風を起点に、光琳100年忌、200年忌で紹介された作品を展観。さらに光琳の影響の伺える近現代美術を俯瞰しています。

美術館より特別に撮影の許可をいただきました。


「燕子花と紅白梅 光琳アート」展示室風景

いきなり目玉の登場です。会場入口すぐに並ぶのが、かの二大国宝、光琳の「燕子花図屏風」と「紅白梅図屏風」です。上の写真の向かって左が前者、二屏風がちょうど向かい合うように展示されています。

「紅白梅図屏風」は光琳のいわゆる画風大成期の時期の作品です。中央には水流が末広がりの構図をつくり、右に若い紅梅、そして左にやや大振りの老いた白梅が対峙します。梅の背景は金箔、対して中央の水流は銀箔です。流水紋に関しては諸説ありましたが、現在では硫黄で硫化させて描いたと考えられています。


尾形光琳「紅白梅図屏風」 江戸時代・18世紀 紙本金地着色 2曲1双 MOA美術館

実は私、この作品を初めて見ました。図版では色にあせて見えたこともあったものの、実物は思いの外に華やかで美しい。ともかく目につくのは水流です。特に右隻は画面の半分近くを水流が占めています。紅梅は枝を軽やかに振り上げて生気があり、一方で白梅は視線を下に落としつつも、突如枝を鋭角的に振り上げては緊張感を生み出しています。

左右は一見、明快なまでに対比的ですが、紅白梅の配置や描写は意味ありげで、何か擬人的ないし象徴的な意味合いをも勘ぐらせるような面もあります。それにしても斬新な構図感です。水流紋の描写に先例はあるのでしょうか。ぐるりと何重にもとぐろを巻く。それ自体が生きているようでもありました。


尾形光琳「燕子花図屏風」 江戸時代・18世紀 紙本金地着色 6曲1双 根津美術館

そして反対側にあるのが「燕子花図屏風」です。こちらは壮年期の光琳の描いたもの。「紅白梅図屏風」に比べればシンプルな構図です。しかしながらシンプルなゆえにこそ一つの図像として浮かび上がるような強さがあります。反復する燕子花の花群はリズミカルです。ただここでも左右で余白や構図にかなり違いがあり、良く指摘されるように、おそらくは俯瞰する視点の位置が異っているなど、どこかトリッキーでもあります。

さて「燕子花図屏風」と「紅白梅図屏風」の対峙する空間、実はもう一つ重要な作品がありました。それが「四季草花図巻」です。

いわゆる光琳の江戸下りの時期に制作された図巻、年代としては「燕子花図屏風」と「紅白梅図屏風」の間です。大名家へ贈るために描いたとされています。


尾形光琳「四季草花図巻」 宝永2(1705)年 紙本墨画淡彩 4面 個人蔵

既に熟練した水墨の技を駆使して描かれた美しい草花、牡丹や立ち葵などの花の色彩にも驚くほどの透明感がありました。それにしてもこの三点、見比べるだけでも光琳の画風の幅広さが分かるというもの。光琳は一言にデザイン的云々とも語られますが、それだけで括るわけにはいきません。「燕子花屏風」から「四季花鳥図巻」、そして「紅白梅図屏風」へと画風がどのように変化し、またいずれに共通する部分があるのか。それらを代表的な三点で見比べることが出来ました。

豪華三作品の展示に続いては、光琳没後、100年と200年忌の出来事を紹介します。良く知られるように100年忌には抱一が遺墨展と法要を行いました。そして「光琳百図」を編纂。光琳を顕彰しつつ作品を整理し、その画業を世に広めました。

一方、200年忌が行われたのは大正時代のことです。中心になったのは意外にも当時の三越呉服店でした。この頃に三越は、装飾芸術の大家として西洋から逆輸入されていた光琳の存在に目を付け、いわゆる光琳模様と呼ばれるデザインを盛んに宣伝していきます。

そして「光琳祭」と呼ばれる遺墨展を開催。おそらくは初めて東京で「紅白梅図屏風」が公開されました。


尾形光琳「槙楓図屏風」 江戸時代・18世紀 紙本金地着色 6曲1双 東京藝術大学

本展に並ぶのも、100年忌、及び200年忌の遺墨展などに出た作品です。例えば「槙楓図屏風」は200年忌の遺品展に展示されたもの。光琳はここで宗達の「槇楓図」を模しながら、より平面を志向した構成を取り入れています。

抱一による光琳顕彰こそ知られますが、三越の200年忌はあまり知られていないかもしれません。その辺を補うためのパネルの展示もありました。ここは参考になりそうです。

後半は近現代美術です。ずばりタイトルに掲げられるのは「光琳を現代にいかす」。明治以降の画家や工芸家らが、いかにして光琳、及び琳派の作品を汲み取っては、自己の表現へと転化させていったのか。それを一気に追っていきます。春草、雪佳、栖鳳、御舟、又造、龍子、平八郎、さらには時代を超えて現代アーティストらの作品を俯瞰していました。


左手前:浅井忠(図案)、杉林古香(作)「鶏梅蒔絵文庫」 明治39(1906)年 東京国立近代美術館
奥:菱田春草「落葉」 明治42(1909)年 紙本着色 6曲1双 福井県立美術館


まずは菱田春草の「落葉」です。連作5点のうちのいわゆる福井本、構図は先に展示されていた光琳の「槙楓図屏風」を参照しています。朧げな大気の満ちた空間に立ち並ぶ木々、視点は低く、まさに大地に散る落葉を向いています。繊細な線描は春草の得意とするところです。どちらかと言えば光琳よりも抱一といった江戸琳派のエッセンスが強いかもしれません。


川端龍子「八ツ橋」 昭和20(1945)年 絹本金地着色 6曲1双 山種美術館

光琳の「燕子花図屏風」と同様、神坂雪佳の「杜若図屏風」や川端龍子の「八ツ橋」も、伊勢物語の東下りを主題とした琳派得意の主題と言えるでしょう。まるでむせ返るように生気溢れた花群は龍子ならではの表現ですが、実際のところ龍子自身も光琳に傾倒していたことを認めているそうです。


左より:田中一光「JAPAN(展覧会)」 昭和61(1986)年 シルクスクリーン・ポスター 
中央:田中一光「グラフィックアート博物館展」 平成2(1990)年 オンセット・ポスター

右:田中一光「ミュージック・トゥデイ 1973-92」 平成10(1998)年 シルクスクリーン・ポスター *所蔵はいずれも東京国立近代美術館

ちなみに本章における「光琳を現代にいかす」とは、MOA美術館の創設者の岡田茂吉が、五浦にて岡倉天心から直接聞いた言葉です。そのほか其一の画を直接取り込んだような加山又造の「群鶴図」をはじめ、もはや抽象と言っても良い福田平八郎の「漣」、さらにはグラフィックデザイナーの田中一光による展覧会ポスターなど見どころも多い。とくに「漣」や一光のポスターは、良く指摘される琳派のいわゆるデザイン的な感覚をさらに昇華させています。これぞ琳派を「現代にいかした」とは言えないでしょうか。

ラストは今に生きる現代アートです。杉本博司は本展のために「月下紅白梅図」を新たに制作しました。

最近、新たに取り入れたというプラチナ・パラディウム・プリントによる作品、モチーフはもちろん「紅白梅図屏風」です。


杉本博司「月下紅白梅図」 平成26(2014)年 プラチナ・パラディウム・プリント 2曲1双
 
紅白梅図の舞台を真夜中に設定し、月明かりのみに照らされた際、果たして「紅白梅図屏風」はどのように見えるのでしょうか。いわゆる本歌取りの精神です。仄かに光るのはプラチナの波紋です。馨しき梅の響宴はより妖しく幻想的な世界に置き換わりました。


福田美蘭「風神雷神図」 平成25(2013)年 パネル、アクリル絵具 1面 個人蔵
 
福田美蘭の「風神雷神図」も面白い。見ての如く琳派のアイコンと化した「風神雷神図屏風」に着想を得た作品です。何でもかのフランシス・ベーコンが琳派の絵師だったらどう描くかと考えては制作した作品だとか。確かにどこか肉的でかつシュールな身体表現はベーコンそのものかもしれません。そして考えてみれば、風神雷神自体もほかの宗達画に比べ肉体の表現が際立っています。


会田誠「美しい旗」 平成7(1995)年 襖、蝶番、木炭、自家製絵具、アクリル絵具 2曲1双 高橋コレクション

会田誠の「美しい旗」も同じ「風神雷神図屏風」を参照した作品です。日韓の女子高生がそれぞれ国旗を手に対峙する作品、そういえば光琳の「紅白梅図屏風」や抱一の「夏秋草図屏風」といった代表作も同じ二曲一双の形式でした。風神雷神、紅白梅、そして夏秋草の琳派三変奏に対する会田なりのオマージュとも言えるのかもしれません。


手前:村上隆「ルイ・ヴィトンのお花畑」 平成15(2003)年 木、シルク、酸性染料、箔、金属、プラチナ、紙 6曲1双 高橋コレクション

振り返れば実は冒頭の「紅白梅図屏風」にも、とある現代アートが潜んでいました。それがさり気ないようでいて、作家ならではの機知に富んでいるわけですが、ここではあえてネタバレを避けます。是非とも会場で確認して下さい。

カタログの情報です。本展の図録を兼ねる「光琳ART」が角川出版学芸から刊行されています。手頃なA6サイズです。そのため図版は小さめですが、反面に読み物、論考がかなり充実しています。

「光琳ART 光琳と現代美術/角川学芸出版」

全220頁のうち論考は70頁超です。特に抱一研究でお馴染みの玉蟲先生の「光琳観の変遷」や、「紅白梅図屏風」を科学調査した中井泉氏の論文は読み応えがあります。また本展の流れに沿った形で琳派の系譜を追った山下裕二先生のインタビュー記事のほか、杉本の新作の製作技法を旧作の展開から論じた鈴木芳雄さんのテキストも大いに鑑賞の参考となりました。

「琳派はまさに装飾の世界、ただ琳派と一括りにすれども、光悦と光琳は全く違った世界でもあります。世の中の括り、総括される言葉はいつも矛盾を含んだ概念であります。」 樂吉左衛門 「光琳ART」図録「砕動風鬼」より

展覧会をテキストの面からも補強するカタログ「光琳ART」、一般書籍の扱いです。先に一度、書店で手にとってみるのも良いかもしれません。


手前:樂吉左衛門「焼貫黒樂茶碗 飛空作雨聲」 平成18(2006)年 佐川美術館

会期早々、8日の日曜の午後に出かけましたが、館内はさすがに賑わっていました。ただ熱海の夜は早いのか、閉館1時間前、15時半を過ぎると、かなり空いてきました。(16時以降は人もまばらでした。)しかしながら何せ僅か1ヶ月ほどの展覧会です。またこれから梅も見頃を迎えます。後半に向けては相当に混雑してくることも予想されます。まずは時間に余裕をもってお出かけください。


光琳屋敷(梅の見頃は少し先と言ったところでした。)

光琳を起点に現代までの琳派の系譜を追う「燕子花と紅白梅 光琳アート」展。チャレンジングな展覧会であることは間違いありません。琳派受容史の一つのターニングポイントとさえなり得るのではないかと思いました。


MOA美術館より海を望む

「光琳アート」展 連日多くのお客様にお越しいただいております。土日祝日は切符売場が混雑する可能性がございますので、「前売り券」をご利用ください。詳しくはHP「お得な前売券情報」をご覧ください。http://t.co/ooKkEBMKwP (@moa_museumアカウントより)

3月3日まで開催されています。もちろんおすすめします。

「尾形光琳300年忌記念特別展 燕子花と紅白梅 光琳アート 光琳と現代美術」 MOA美術館@moa_museum
会期:2月4日(水)~3月3日(火)
休館:会期中無休。
時間:9:30~16:30 *入館は16時まで。
料金:一般1600円、65歳以上1200円、大学・高校生800円、中学生以下無料。
 *団体割引1300円。
住所:静岡県熱海市桃山町26-2
交通:JR線熱海駅8番乗り場より伊豆東海バスMOA美術館行にて終点下車。熱海駅よりタクシー5分。

注)写真は美術館の特別な許可を得て撮影したものです。
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ブルーノ・タウト「熱海の家」、隈研吾「水/ガラス」

ブルーノ・タウト設計「熱海の家」と隈研吾設計の「水/ガラス」を見てきました。


旧日向別邸ブルーノ・タウト「熱海の家」
http://www.city.atami.lg.jp/shisetsu/bunka/1002036/1002047.html

ドイツ人建築家のブルーノ・タウトの残した国内唯一の建築物こと「熱海の家」。実業家の日向利兵衛が1936年に別邸として建てました。

建物は地上2階、地下1階の3層構造です。地上部分は銀座和光や東博本館を手がけた渡辺仁が担当。地下をブルーノ・タウトが設計しました。

現在は熱海市の所有。重要文化財です。2005年から一般公開されています。


「熱海の家」入口。地上の母屋は和風建築です。

場所は熱海駅から徒歩10分弱です。狭く急な坂道をあがった崖地の上にあります。日向は建設当時、温泉付きの分譲地だったこの地を購入しました。また崖の上だからかともかく見晴らしが良い。眼下に海を一望出来ます。この日はあいにくの天候でしたが、晴れていれば初島、大島はおろか、房総半島まで見渡せるそうです。

「日向家熱海別邸保存会」 *建築について細かい解説があります。

見学は完全予約制。しかも土日のみ、各日6回、1回10名程度の完全入れ替え制です。見学の所要時間は約1時間です。はじめに上の母屋でガイダンス用の映像DVDを15分ほど見た後、タウトの設計した地下へと移動。同行するガイドの解説を聞きながら、所定のグループで見学するという流れでした。なお地下室部分は一切撮影出来ません。


「熱海の家」母屋より海を望む。(この庭の下がタウト設計の地下室です。)

一階母屋の前庭部分の真下がタウトによる地下室です。地下室といえども、崖地を利用しているため、海側の面は全て開口部です。ゆえに海を眺めることが出来ます。


「熱海の家」内部(公式サイトより)

構造は縦長、3部屋続きです。手前からピンポン室(社交室)、洋室、和室と並びます。随所にはタウトが至極感心したという日本建築、ようは和のエッセンスが詰まっていますが、その感性は非常に独特でした。例えば照明です。ピンポン室の天井には何と100個以上もの電球がぶら下がっています。そして洋室や和室にはひな壇があり、その上にもまるでステージのような空間があります。

ほかにも間接照明や折りたたみ式のガラス窓、また蔀戸のブラインドなども目を引くのではないでしょうか。床や天井の模様も常に変化があります。一つとして同じ景色がありません。

タウトは3室をベートーベン、モーツァルト、バッハの音楽に例えたそうです。3室に通底するのはタウトの感性のみです。もちろん空間に連続性こそありますが、それ以外にあまり共通項はありません。それぞれに個性的な部屋が広がっています。


「熱海の家」横から海方向を見る。

素材は竹が目立ちました。施工は宮大工だそうです。それゆえか傷みこそあるものの、80年前の建物とは思えないほどに状態が良い。また細部の意匠が驚くほど凝っているのも特徴です。竹を加工したり、天井の板組みの高さに変化を付けたり、階段の中央部をわざとへこませるなど、ともかく細部の細部までタウトのこだわりを見て取れます。

隈研吾設計の「水/ガラス」はタウトの「熱海の家」の隣にありました。

建築は1995年です。元々はある企業のゲストハウスとして建てられたそうですが、現在は一般向けの宿泊施設です。高級旅館「ATAMI 海峯楼」として運営されています。

「ATAMI 海峯楼」は全4室。基本的には宿泊客だけしか入れません。ただし事前に問い合わせをすれば、部屋が空いている場合のみ、見学することが出来ます。また撮影も可能です。スタッフの方が丁寧に案内して下さいました。


隈研吾「水/ガラス」(ウォーターバルコニー)

「水/ガラス」は全面ガラス張りでした。その名も「ウォーターバルコニー」。宿泊客のうち1組のみ利用出来るという贅沢なフロア、床面は楕円形です。周囲には水がはられています。

手前から見ると水盤と海が連続しているようにも見えます。そしてガラスの質感も美しい。椅子の背もたれもガラスです。

この水の縁側は隈がタウト建築へのオマージュとして設計したとか。またそもそも「水/ガラス」自体、隈が水という素材に関心を持つ切っ掛けになった建物でもあります。

「水を見せると言った途端に、建築がこれまでとは違った生命観を帯びるということに気づいて、インテリアに水のカーテンをつくろうと思ったのです。」 隈研吾 *「雨のみちデザイン」より


「ATAMI 海峯楼」客室

一部の客室も見学出来ました。さすがに高級旅館とあって雰囲気も素晴らしい。館内には千住博の絵画や狩野智宏のガラスオブジェなども展示されています。また和室、洋室、またスイートのいずれの客室からも海を望むことが出来ました。


「ATAMI 海峯楼」大広間

大広間には熱海の松と海をモチーフとした襖絵が飾ってありました。(筆は徳力富吉郎)可動式です。開くと海の景色が広がります。


「ATAMI 海峯楼」ラウンジ

なお今回の見学の予約はブログ「今日の献立」のKINさんが手配して下さいました。

ブルーノ・タウト「熱海の家」隈研吾「水/ガラス」@今日の献立ev.

国内唯一のタウト建築はさすがに一見の価値があります。隣り合う「熱海の家」と「ATAMI 海峯楼」内の「水/ガラス」。隈のオマージュは果たしてタウトに届いたのでしょうか。

ともに飛び込みでの見学は出来ません。見学の際はあらかじめ両施設までお問い合わせ下さい。

旧日向別邸ブルーノ・タウト「熱海の家」
URL:http://www.city.atami.shizuoka.jp/page.php?p_id=641(予約方法について記載あり。)
住所:静岡県熱海市春日町8-37
交通:JR線熱海駅より徒歩10分。
料金:大人300円、中高生200円、小学生以下無料。
開館:毎週土・日、及び祝祭日。(平日は休み)
時間:9:30~16:30。最終入館は15時。
 *9:30、10:30、11,30、13:00、14:00、15:00の入れ替え制。各回定員10人。
電話:0557-81-2747(開館日のみ)

「ATAMI 海峯楼」
URL:http://www.atamikaihourou.jp/
住所:静岡県熱海市春日町8-33
交通:JR線熱海駅より徒歩10分。
電話:0557-86-5050
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「ゲート モニカ・ソスノフスカ展」 メゾンエルメス

メゾンエルメス
「ゲート モニカ・ソスノフスカ展」 
1/20-3/31



メゾンエルメスで開催中の「ゲート モニカ・ソスノフスカ展」を見てきました。

1972年にポーランドで生まれ、現在はワルシャワで活動するアーティスト、モニカ・ソスノフスカ。何でも日本では初めての個展だそうです。

さてタイトルは「ゲート」。ともかく目に飛び込んでくるのは巨大なスチールのオブジェです。高さは一体何メートルあるのでしょうか。いずれも天井付近から宙吊りになっています。ただしスチールはその殆どがぐちゃぐちゃに曲がっています。適切な表現ではないかもしれませんが、まるで災害による瓦礫のようでもありました。元々、意図してこのような姿に成型したのか、それとも何らかの原型があり、力を加えて出来たものなのか。はじめはどちらか判別すらつきませんでした。

しかしながら良く見ると歪んだオブジェに何らかの形、言い換えれば元にあり得るイメージが残されていることに気がつきました。結論から言えばこれらはタイトルの如く「ゲート」、まさしく門扉や防犯用の格子を模したものです。いわゆる工業的なプロセスにより一度生み出されたゲートをあえて曲げて提示する。もはや本来の機能はありあせん。



ソスノフスカはかねてより建築に興味をもっていたそうです。そしてこれらのゲートも彼女の故郷、ポーランドではよく見られるものであるとのこと。建築物を歪ませては新たな構造物、オブジェを生み出しています。

それにしても硬いスチールにも関わらず、ゲートはまるで糸や布が包まったかのように垂れています。力を加えることで素材の本来的な質感を変えていました。

ふと破壊という言葉が頭に浮かびました。いわゆる美しいとは言い難いものがあります。ずたずたになったゲートが吊られた姿、しばらく眺めていると、何やら不穏でかつ死の気配が漂っているような気がしてなりませんでした。

「造形として佇む建築、銀座メゾンエルメスの展覧会」(エキサイトイズム) *会場内の写真が掲載されています。

3月31日まで開催されています。

「ゲート モニカ・ソスノフスカ展」 メゾンエルメス
会期:1月20日(火)~3月31日(火)
休廊:会期中無休。
時間:11:00~20:00 *日曜は19時まで。入場は閉場の30分前まで。
料金:無料
住所:中央区銀座5-4-1 銀座メゾンエルメス8階フォーラム
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅B7出口すぐ。JR線有楽町駅徒歩5分。
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「THE 琳派ー極めつきの畠山コレクション」 畠山記念館

畠山記念館
「開館50周年記念 THE 琳派ー極めつきの畠山コレクション」
1/17-3/15



畠山記念館で開催中の「開館50周年記念 THE 琳派ー極めつきの畠山コレクション」を見てきました。

定評のある畠山の琳派コレクション。まとめて公開されるのは2007年の「琳派 四季のきょうえん」以来のことではないでしょうか。

おおよそ8年ぶりとなる琳派展です。光悦、宗達、光琳、乾山、そして抱一、其一など、館蔵の琳派作品、約50件(展示替えあり)を展示しています。


酒井抱一「風神雷神図」18~19世紀 展示期間:1/17~2/12

冒頭は抱一でした。「風神雷神図」です。双幅の軸画、かの宗達、光琳はもちろん、抱一も屏風に描いたモチーフですが、何かと比較されることの多い屏風よりも抱一らしさの出た作品です。互いに視線をあわす風神と雷神、縦長の空間を活かしてか対角線上に配置しています。風神も雷神も表情は豊かです。もはやコミカルと言っても良いでしょう。諧謔味があります。微笑ましいほどでした。

光悦の「扇面月兎画賛」が絶品です。伝世品の少ない光悦の絵画の一つ、金箔を月、緑青の一部を大地に見立ています。何とも洗練された構図感ではないでしょうか。そして白兎の躍動感も素晴らしい。振り返っては空を見上げています。兎の周囲の秋草も可憐でした。


酒井抱一「十二ヶ月花鳥図」(1月) 18~19世紀 展示期間:1/17~2/1

抱一の「十二ヶ月花鳥図」のいわゆる畠山本が出ていました。ただしスペースの都合もあるのでしょう。残念ながら出品は3点のみです。時候にもあわせた1月から3月の図が展示されています。

季節の草花に小鳥の組み合わせ。抱一得意の画題でもありますが、ともかく感心するのは鳥たちの動きです。一月や二月では鶯や雲雀が嘴を開いて鳴いています。そして配置も絶妙です。一月の梅の枝は上からやや後ろへ奥行きをもってのびるように描かれています。余白が空間へ変わる瞬間です。また小鳥の目線を追うと空間に動きも生まれます。

乾山では「紫陽花百合図」と「立葵図」に惹かれました。ともに正面性の強い構図です。丸みを帯びた百合はいかにも乾山と言ったところでしょう。胡粉の盛られた紫陽花はまるでモザイク画のようでもありました。


本阿弥光悦書・俵屋宗達下絵「金銀泥四季草花下絵古今集和歌巻」17世紀 全3期で巻替えあり

宗達下絵、光悦書の「金銀泥四季草花下絵古今和歌巻」も素晴らしいもの。宗達一流の水墨の技を駆使した「騎牛老子図」や「蓮池水禽図」も見応えがあります。


本阿弥光悦「赤楽茶碗 銘雪峯」17世紀 通期展示 

光悦の「赤楽茶碗 銘雪峯」も忘れられません。小振りでやや丸みのある赤楽、口から胴にかけて大きな火割れがありますが、光悦はそこを金粉で繕い、雪解けの渓流になぞらえた。だからこその「雪峯」です。何という見立てでしょうか。

口縁付近からうっすらかかる白釉も雪を連想させます。また白を雲とすれば、火割れはさも天地を裂く稲光のようにも見える。一つの器から実に趣き深い世界が生まれていました。


尾形光琳「躑躅図」18世紀 展示期間:2/24~3/15

さて展示替えの情報です。*出品リスト(PDF)

第1期:1/17~2/1
第2期:2/3~2/22
第3期:2/24~3/15

通期で展示されるのは一部の工芸のみです。絵画は全て入れ替わります。ご注意下さい。



2007年の琳派展で販売されていた図録と同じものが販売されていました。新たに作られたものではありませんが、図版、解説ともに充実。畠山の琳派コレクションを一揃え知るのには最良の一冊です。手に入れておくのも良いかもしれません。

「琳派 最速入門:永遠に新しい、日本のデザイン/小学館」

落ち着いた畠山のスペースで見る琳派コレクション。点数は決して多くなく、何度か見た作品も少なくありませんが、良い物はいつ見ても良い。琳派好きには嬉しい展覧会でした。



3月15日まで開催されています。

「開館50周年記念 THE 琳派ー極めつきの畠山コレクション」 畠山記念館
会期:1月17日(土)~3月15日(日)
休館:月曜日、2月13日(金)。
時間:10:00~16:30(入館は16時まで)
 *最終日は17:00(17:30閉場)まで開場。
料金:一般500(400)円、学生350(300)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:港区白金台2-20-12
交通:都営浅草線高輪台駅A2出口より徒歩5分。東京メトロ南北線・都営三田線白金台駅1番出口より徒歩10分。
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トークイベント「19世紀フランス美術の流れを知ると、絵画がぐっと近くなる!」が開催されます

2013年10月に誕生した美術館情報フリーマガジンの「ミュージアムカフェマガジン」。ほぼ毎月の発行です。既に創刊から1年を経過し、本年の2月でVol.16(2月号)を迎えました。



美術館・博物館情報サイト「ミュージアムカフェ」
http://www.museum-cafe.com(Web・モバイル共通)
ミュージアムカフェ事務局:@museumcafe

「ミュージアムカフェマガジン」初のイベントです。2月25日(水)の19時より「19世紀フランス美術の流れを知ると、絵画がぐっと近くなる!」と題したトークイベントが行われます。

[ミュージアムカフェ マガジン イベントvol.1 19世紀フランス美術の流れを知ると、絵画がぐっと近くなる!]
スピーカー:藤原えりみ氏(美術ジャーナリスト)×鈴木芳雄氏(編集者)
日程:2月25日(水)19:00~20:30 (受付開始18:00)
会場:ブリヂストン美術館1階ホール(中央区京橋1-10-1)
アクセス:JR線東京駅より徒歩5分、東京メトロ銀座線京橋駅6番出口より徒歩5分。
定員:130席(事前予約制)
料金:無料

会場はブリヂストン美術館1階のホールです。現在、同館では、建て替え休館前の最後の展覧会となる「ベスト・オブ・ザ・ベスト」展を開催中。定員は130名です。メールでの事前予約制、先着順での受付となります。

[参加方法]
申込受付期間:2月6日(金)~2月25日(水)12:00
メールでの申込:event@museum-cafe.com(イベント申込専用アドレス)
メールの件名に【トークイベント参加】と明記いただき、
1.参加希望人数
2.参加される方のお名前(全員分) 
3.連絡先(日中ご連絡のつく電話番号、代表者のみ)
4.メールアドレス
をお送りください。
*「予約完了」のメールの返信をもって、参加申し込み完了となります。希望者多数の場合は、お断りする場合がございます。ご了承ください。


「ベスト・オブ・ザ・ベスト」
ブリヂストン美術館
1月31日(土)~5月17日(日)

登壇されるのは美術ジャーナリストの藤原えりみさんと編集者の鈴木芳雄さん。「ベスト・オブ・ザ・ベスト」でも中核となる印象派をはじめ、東京都美術館で開催中の「新印象派」までの流れを含む、19世紀のフランス美術全般について語って下さいます。

[トーク内容]
2/25発行のvol.17(3月号)にて巻頭特集で取り上げる「ベスト・オブ・ザ・ベスト」(ブリヂストン美術館)、さらに現在配布中のvol.16(2月号)で紹介している「新印象派ー光と色のドラマ」(東京都美術館)の時代背景でもある、19世紀フランス美術の流れを中心としたトークを展開、各展覧会の見どころはもちろん、知って損はない西洋美術の歴史を紐解いていきます。


「新印象派ー光と色のドラマ」
東京都美術館
1月24日(土) ~3月29日(日)


「画面を埋め尽くす色彩の輝き」(新印象派展特集) Vol.15

ちなみに「ベスト・オブ・ザ・ベスト」はミュージアムカフェマガジンの3月号の巻頭特集で取り上げられます。また「新印象派展」に関しても現在配布中の2月号で紹介されています。そちらのテキストも藤原えりみさんでした。

なお当日はミュージアムカフェマガジンの3月号をいち早く手に入れられる上、イベント受付開始時間(18時)からトーク開始(19時)まで「ベスト・オブ・ザ・ベスト」展の観覧を自由に出来るそうです。つまり18時から19時の間はイベント参加者のみの貸し切り観覧となります。(観覧には通常の料金がかかります。トークは無料です。)


ミュージアムカフェマガジンVol.1~Vol.16一覧

それにしてもミュージアムカフェマガジン、創刊号の仏頭展にはじまり、シャヴァンヌ、ヨコハマトリエンナーレほか、鳥獣戯画や庭園美術館のリニューアルなど、様々な展覧会の情報や美術の読み物を提供してきました。


辛酸なめ子「ホイッスラーのモテアート」 Vol.15

最近では辛酸なめ子さんがホイッスラーを漫画で書き下ろした「ホイッスラーのモテアート」も話題になりました。そちらを見てホイッスラーに関心を持ったという方も少なくないかもしれません。私もその一人でした。


「さあ、植物旅行に出かけよう」 Vol.16

ちなみに現在配布中の2月号は「さあ、植物旅行に出かけよう」と題したポタニカルアート特集です。作家で博物学者でもある荒俣宏さんが、バンクス花譜集について熱く、また楽しく語って下さっています。

ミュージアムカフェマガジンは全国200の美術館のほか、都内のカフェなどで配布されていますが、如何せんフリーマガジンということで、なくなってしまうのも早いもの。なかなか見当たらないという声も少なくありません。

スマートフォンをお持ちの方はアプリ「ミュージアムカフェ」からダウンロードして読むことも可能です。こちらももちろん無料です。一度試してみてはいかがでしょうか。



【Androidアプリ】「ミュージアムカフェ」
価格:無料  対応機種:Android OS 3.0以降
ダウンロード:Google Playからダウンロード
ジャンル:ライフスタイル
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.kosaido.musiumcafe

【iOSアプリ】「ミュージアムカフェ」
価格:無料  対応機種:iPad、iPhone、iPod touch
ダウンロード:AppStoreからダウンロード
ジャンル:ライフスタイル
http://itunes.apple.com/jp/app/id321825497?mt=8

ブリヂストン美術館で行われるミュージアムカフェマガジン初のトークイベント、「19世紀フランス美術の流れを知ると、絵画がぐっと近くなる!」。受付は既に始まっています。概要や申込については以下のサイトをご覧下さい。

「ミュージアムカフェ マガジン イベントvol.1 19世紀フランス美術の流れを知ると、絵画がぐっと近くなる!」(参加受付サイト)

「コレクション展 ベスト・オブ・ザ・ベスト」 ブリヂストン美術館
会期:1月31日(土)~5月17日(日)
時間:10:00~18:00(毎週金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休館:月曜日。
料金:一般800(600)円、65歳以上600(500)円、大・高生500(400)円、中学生以下無料
 *( )内は15名以上団体料金。
 *100円割引券
住所:中央区京橋1-10-1
交通:JR線東京駅八重洲中央口徒歩5分。東京メトロ銀座線京橋駅6番出口徒歩5分。東京メトロ銀座線・東西線、都営浅草線日本橋駅B1出口徒歩5分。
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