「手の痕跡」 国立西洋美術館

国立西洋美術館
「手の痕跡 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描」
2012/11/3-2013/1/27



国立西洋美術館で開催中の「手の痕跡」展へ行ってきました。

西美の彫刻コレクションの中核であるロダン。常設でもお馴染みなだけに、単純に作品を見る機会は多いと言っても差し支えありません。

しかしながらスペースの都合もあるのか、日常的にはコレクションのごく一部のみの展示。意外とまとまって楽しめることはありませんでした。


「手の痕跡」展示室風景

まさにロダンファン待望の展覧会です。西美のロダン、及びブールデルの彫刻、素描、版画が一挙90点も公開。常設ではなく、企画展示室の空間を用い、ロダン、ブルーデル彫刻の諸相を見る仕掛けとなっていました。

構成は以下の通りです。

第1章 「古代彫刻やルネサンス彫刻からの影響」
第2章 「肖像・頭部彫刻」
第3章 「人体の動勢表現」
第4章 「記念像制作」
第5章 「素描と版画」


さて展示は一部を除き、全て西美の所蔵。よって常設同様、写真の撮影が可能です。というわけで以下、簡単に会場の様子を写真とともにご紹介します。


オギュスト・ロダン「青銅時代」1877年 ブロンズ 松方コレクション

はじめはロダンの「青銅時代」(1877)から。1875年からのイタリア旅行で目にしたミケランジェロの作品に刺激を受け、制作されたといわれる作品です。


オーギュスト・ロダン「アンリ・ロシュフォールの胸像」1884年 ブロンズ 松方コレクション

また時代を下って「アンリ・ロシュフォールの胸像」(1884年)も。他方面で交流のあったロダンですが、そのうちの一人、美術批評家であるロシュフォールを象ったものです。まさにモデルの人格性を強く感じる迫力ある作品、後に頭部を少し前に出すことで、より知的な表情を追求したというエピソードでも知られていました。


オーギュスト・ロダン「ネレイスたち」1887年 ブロンズ 松方コレクション

ところで展示を観覧した日は11月の「FAN DAY」、無料開放日。展覧会を楽しむための様々なプログラムが開催されていましたが、うち特に面白かったのが「びじゅつーる」と呼ばれる人形です。


オーギュスト・ロダン「エヴァ」1881年 ブロンズ 東京国立博物館

実に簡単な布製の人形ですが、これが実に器用。手足の関節だけでなく、頭部なども動かすことが可能。彫刻と同じポーズをとらせることにより、ロダンの造形美術を体感的に知ることが出来るという優れものでした。


オーギュスト・ロダン「接吻」1882-87年頃 ブロンズ 松方コレクション

ご覧の通り「びじゅつーる」での彫刻鑑賞。時に官能性に満ちあふれ、激しい動きをするロダンの彫刻、「びじゅつーる」で追いかけても、言わばアクロバットな動的表現がいかに特異かということがよく分かりました。


第5章「素描と版画」展示室風景

もちろん会場では彫刻以外に素描などもあわせて展示。


「彫刻の魅力を探る」展示室風景

また階下、B3の企画展示室では、芸大との協力により「Fun with Collection 2012 彫刻の魅力を探る」というミニ企画も。


「彫刻の魅力を探る」展示室風景

彫刻の技法、素材、道具などが分かりやすく紹介されていました。

残念ながら「びじゅつーる」は期間限定、「FAN DAY」のみでの貸出でしたが、今後は常設でも手軽に利用出来ればと思いました。


オーギュスト・ロダン「国の護り(武器をとれ)」1879年 ブロンズ 松方コレクション

2013年1月27日まで開催されています。

「手の痕跡 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描」 国立西洋美術館
会期:2012年11月3日(土・祝)~2013年1月27日(日)
休館:月曜日。但し12月24日、1月14日は開館。(12月25日、1月15日は休館。)年末年始(12/28~1/1)。
時間:9:30~17:30 *毎週金曜日は20時まで開館。
料金:一般800(600)円、大学生400(200)円、高校生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園7-7
交通:JR線上野駅公園口より徒歩1分。京成電鉄京成上野駅下車徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅より徒歩8分。
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「多賀新 線描の魔術師」 市川市芳澤ガーデンギャラリー

市川市芳澤ガーデンギャラリー
「多賀新 線描の魔術師」
11/3-12/16



市川市芳澤ガーデンギャラリーで開催中の「多賀新 線描の魔術師」へ行って来ました。

1946年に北海道で生まれ、現在は市川市在住、緻密な線描を駆使して幻想的な銅版画を制作する多賀新。春陽堂「江戸川乱歩シリーズ」の表紙の仕事をご存知の方もおられるかもしれません。

本展ではそうした初期の銅版から最新の鉛筆画、約70点にて、多賀新の画業を紹介します。

構成は以下の通りでした。

1.江戸川乱歩の世界
2.変容と幻想
3.エロスから聖なる世界へ
4.そして浄土へ


冒頭は多賀を世に知らしめた70年代、春陽堂「江戸川乱歩シリーズ」。その装丁の銅版です。


「虚飾」1981年 エッチング

同シリーズ全部で30点ありますが、うち14点を多賀が担当。闇に光を操ってまさに妖艶、一目で頭に焼きつく強烈なイメージの作品を展開しました。

ちなみにこの一連のシリーズ、必ずしも表紙のために描かれたわけではなく、元々書き溜めていたものだとか。

そもそも多賀は少年時代から乱歩にシンパシーを抱いていたそうです。時に猟奇的なまでの多賀のモチーフ、その源泉にはやはり乱歩がいたのかもしれません。


「女と止揚」1974年 エッチング

さて若い頃から人体、また解剖図に興味を持っていたという多賀。次第に人の肉体と動植物を融合させた独特のイメージを確立します。

そもそも彼はデューラーに触発されドイツへ渡り、その後インドへ。そこでインドの死生観、また仏教に強く影響を受けたという異色の経歴を持っています。


「食傷」1978年 エッチング

脚を生やし、生々しい鱗をまとった腹から卵とも眼球ともつかぬ物体を晒す「食傷」(1978)からは、多賀ならではの奇怪で時にグロテスクな表現を見て取れるのではないでしょうか。


「夢魂」1994年 エッチング

また艶かしいエロスを精神的な世界と融合させようとしたのも多賀の試み。長い髪を振り乱しながら、白い裸体を露わにした女性を描く「夢魂」(1993)も、どこか深海へ沈み込んで瞑想をするかのような独特の静けさをたたえています。

魑魅魍魎なまでに映る多賀の夢幻世界、そのイメージはまさに多種多様。乱歩はもとより、頻出する仏教的なイメージ、はたまたピアズリーの妖しさやルドンの闇をも喚起させます。

線の物理的な密度しかり、複雑怪奇なモチーフしかり、銅版の小画面ながらも、ともかく一点一点に大変な迫力がありました。

さてそうした多賀に一大転機が。52歳で食道ガンを患い、闘病生活を経た彼は、より仏教的な世界への傾斜を強めていきます。


「馬頭観音」2011年 鉛筆

近作に至るまで、展示後半に並ぶのはそれこそ仏画。どこか妖艶ながらも、正面から端正に捉えた菩薩像の数々です。

図版で見ても一目瞭然、表現は大きく変化。怪奇性は消え去り、ゆとりある空間にて緩やかな線描が展開。当然ながら作品も優美でかつ温和な表情をとっています。


「仏涅槃図」2012年 鉛筆

ラストは制作中の「仏涅槃図」が。魔界を見つめ続けた多賀は、いつしか聖なる世界を志向していました。

「ペテン師と空気男/江戸川乱歩文庫/春陽堂書店」

なお会場では銅版の原板や道具、また彼の手掛けた松本零士著の「ニーベルングの指輪」の装丁なども紹介されています。それにミュージアムショップでは春陽堂の乱歩シリーズ文庫版の販売も。これが何と全てサイン入りです。早速、私も購入しました。

「人間椅子/江戸川乱歩文庫/春陽堂書店」

決して大きなスペースではありませんが、多賀の今と昔の仕事、そして変化を知ることの出来る充実した回顧展と言えるのではないでしょうか。



12月16日まで開催されています。

「多賀新 線描の魔術師」 市川市芳澤ガーデンギャラリー
会期:11月3日(土)~12月16日(日)
休館:月曜日
時間:9:30~16:30
料金:一般500円、中学生以下無料。
住所:千葉県市川市真間5-1-18
交通:JR線市川駅より徒歩16分、京成線市川真間駅より徒歩12分。*市川駅北口に「市営無料レンタサイクル」(市川第6駐輪場)あり。
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「スター・クルーズ・プラネタリウム」 森アーツセンターギャラリー

森アーツセンターギャラリー
「スター・クルーズ・プラネタリウム」 
2012/11/23~2013/2/11



森アーツセンターギャラリーで開催中の「スター・クルーズ・プラネタリウム」のプレスプレビューに参加してきました。

一昨年、昨年、期間限定で開催された「スカイ プラネタリウム」シリーズ。希代のプラネタリウム・クリエイター大平貴之氏をプロデューサーに迎え、東京の天空、森タワーの52階にて、美しき星空を楽しめるイベントとして人気を集めました。


「土星ステーションへの旅」

今年はその「スカイ プラネタリウム」がパワーアップ。まさに「クルーズ」とあるように地球から土星、そして宇宙の果てへの宇宙旅行をしながら、世界一先進的なプラネタリウムとも呼ばれる「MEGASTAR」を体験出来る仕掛けとなっています。


「土星ステーションへの旅」

というわけで早速、宇宙旅行へ出発!宇宙船に乗り込み、いざ土星の衛星タイタンの上に浮かぶ宇宙ステーションへ。光の10分の1のスピードをもってすれば土星などあっという間。


「土星ステーションへの旅」

雄大な土星の輪をぐるりと一周、横目に見やりながら、無事宇宙ステーションに到着しました。

さて土星旅行の次は「新 3D SKY WALK」、その名の通り、ウォークイン方式の立体3D星図です。


「新 3D SKY WALK 太陽系から銀河系の果てまで」

ここでは星空が発光体で表現され、その中を行き交うことが可能。さながら宇宙遊泳です。またオリオン座や北斗七星などもリアルに再現。しかも星同士の位置も正確に表されているため、各星座内での星々の距離関係が分かるのもポイントです。

オリオン座で一番我々から遠い星はどれかご存知でしょうか。それも「新 3D SKY WALK」では一目瞭然、体感的に知ることが出来るというわけでした。


「未知なる地球への帰還」

さらに続いてはもう一つの宇宙旅行、今度は137億光年彼方の宇宙の果てへの旅。宇宙船は一気に準光速、さり気なくかなりのスタートレックファンの私としてはワープドライブを想像してしまいますが、それはともかくあっという間に太陽系を脱し、銀河の果てへ。つかの間の深宇宙への旅をフルCGで楽しめました。


「MEGASTAR 荘厳なる星空」

ラストはもちろん目玉のプラネタリウムの「MEGASTAR」。決して広い空間の投影ではありませんが、ともかくも再現された星の数、その細かさに驚かされること請け合いです。


会場内風景

ともかく宇宙には星が満ちあふれています。都会からは殆ど見えなくなってしまった無数の星々。しかしながらこのプラネタリウムを通すことで、改めて人知を超えた宇宙の驚異的なスケールに圧倒されました。


「スワロフスキー・エレメントの輝きあふれるジュエリー展」@東京シティービュー
会期:2012年11月22日(木)~12月2日(日)


六本木ヒルズもいよいよクリスマスモード。寒い冬の夜に想いを馳せる宇宙への憧れ。この時期にぴったりのロマンテックなイベントだと言えそうです。



2013年2月11日まで開催されています。

「スター・クルーズ・プラネタリウム」 森アーツセンターギャラリー
会期:2012年11月23日(金・祝)~2013年2月11日(月・祝)
休館:会期中無休
時間:11:00~22:00(金・土・休前日は23時まで) *12/31(月)~1/3(木)は22時まで。入館は閉館時間の30分前まで。
料金:一般2000円、高・大学生1500円、中学生以下(4歳まで)800円。
 *東京シティビュー入館料を含む。
住所:港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
交通:東京メトロ日比谷線六本木駅1C出口徒歩5分(コンコースにて直結)。都営地下鉄大江戸線六本木駅3出口徒歩7分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「さわひらき展 Whirl」 神奈川県民ホールギャラリー

神奈川県民ホールギャラリー
「さわひらき展 Whirl」
10/23-11/24(会期終了)



神奈川県民ホールギャラリーで開催された「さわひらき展 Whirl」へ行ってきました。

私が現代美術に接した頃から好きなアーティストの一人であったさわひらき。これまでも都内のギャラリーの他、美術館のグループ展など、作品を何度か追っかけてきたつもりでした。

しかしながら今回ほどのスケールの個展に接したのは初めてです。神奈川県民ホールギャラリーの広々としたスペースには大小様々、2000年代半ばから最新の映像作品が、まさに散りばめられるようにして展示されていました。


「Out of the Blue」(2008)

ともかく前々からチェックしていたこともあり、早々に出向くつもりでしたが、なぜか会期末、最終日の観覧になってしまいました。よって展示は既に終了。というわけで写真メインで簡単に展示の様子を記録しておきたいと思います。(会場内は写真撮影が可能でした。)


「airliner」(2003)

まずは順を追って第1展示室の「airliner」(2003)から。お馴染みの小さな飛行機の舞う映像作品、大きなスクリーンでの展開かと思いきや、小さなディスプレイ。そっと寄り添っての鑑賞です。この何か小さな玉手箱を愛でているような感覚、さわひらきの映像の一つの醍醐味かもしれません。

ちなみに玉手箱と言えば地下、ロビー、ガラス越しに外の階段も映るスペースでの「For SAYA」(2010)も同様です。


「For SAYA」(2010)

窓辺、しかも床へ直置きされた極小のディスプレイには、ひたすらに、それでいて軽やかに飛び跳ねる女性のシルエットの姿が。


「Souvenir study 1」(2012)

初めにも触れたように県民ホールギャラリーというと、ともかく広いスペースという印象があったので、そこへあえてこうした小さな作品を介入させていくセンスにも感心させられました。


「Going Places Sitting Down」(2004)

とは言え、大作も充実しているのもまたポイントかと。地下では大きな三面スクリーンを用いての「Going Places Sitting Down」(2004)が展開。極めて親密感のある室内空間、その中を木馬たちが緩やかに、また限りなく静かに移動。夢なのか現実なのか、その間の曖昧でかつ奇妙な感覚。スクリーンの異界へ吸い込まれるように見入ってしまいました。

ハイライトは最も広い700平米のスペースを有する、同ギャラリーでもとりわけ個性的な第5展示室での「Hako」(2007)に他なりません。


「Hako」(2007)

独立した大型の6面スクリーンによる「Hako」は、2008年の国立新美術館での「アーティストファイル」にも展示されたもの。さわはそれを新たに一部組み替え、スペースを活かしきった、よりスケール感のある内容へと深化させました。


「Hako」(2007)

入口から進んでまず印象的なのは、殆どのスクリーンが後ろを向いていること。暗がりの空間の中へ中へと入り、振り返ることで、初めて映像が開けてくるという仕掛けです。

またスクリーンを一度に全て俯瞰して見るのはほぼ不可能。海、神社、家屋、そして花火に、リアルな時間を刻む古時計。それらのイメージが断片的に、しかしながらどこか連環するかのように次々と映し出されていきます。


「Hako」(2007)

ちなみに先ほど深化と記したのにはもちろん理由が。実は階段を上がっての2階にもう一つの映像が追加で設置され、それが1階の6面スクリーンと相対する関係になっています。

さわひらき Whirl


それにしても映し出される原発建屋の何とも言い難い存在感。本作はかの3.11の前に制作された作品ですが、あの災害を経由すると、また印象は大きく異なって来るのではないでしょうか。

ちなみに一見、海面へ自然に鳥が群れているように見える光景も、実は原発の冷却水の放出による波しぶきです。それは海水温と比べて高いために魚が集結、だからこそ映像にもあるように餌を狙った鳥たちが集まるとのことでした。


「Souvenir study 2」(2012)

限定300部の図録、既に在庫僅少でしたが、何とか駆け込みで購入しました。私にとって夢を喚起させ、現実とは何かを終始考えさせられるさわひらきの映像作品。このスケールでの展示に接することが出来て感無量でした。

展示は終了しました。

「さわひらき展 Whirl」 神奈川県民ホールギャラリー@kanaken_gallery
会期:10月23日(火)~11月24日(土)
休館:会期中無休
時間:10:00~18:00 *10/27、11/3、10、17、24の土曜日は19時まで。
料金:一般700円、学生・65歳以上500円、高校生以下無料。
 *10名以上の団体は100円引。
住所:横浜市中区山下町3‐1
交通:みなとみらい線日本大通り駅3番出口より徒歩約6分。JR線関内、石川町両駅より徒歩約15分。横浜市営地下鉄関内1番出口より徒歩約15分。
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「図録放出会(art circule)Vol.2」 BoConcept新宿店

BoConcept新宿店
「図録放出会(art circule)Vol.2」
11/23 12:00~18:00



BoConcept新宿店で開催された「第二回 アート好きによるアート好きのためのチャリティーイベント 図録放出会」に参加してきました。

昨年5月、東日本大震災のチャリティーとして企画された「図録放出会」。アート好きが展覧会図録を持ち寄り、販売、売上を全て震災の義援金として寄付するイベントとして行われました。



あれから1年半。ついに昨日、11月23日、第二弾が。場所を前回の赤坂ではなく新宿のBoConceptへ。デンマーク生まれのインテリアショップです。



店内はセンスの良い家具に囲まれた広々とした空間。そこにあらかじめ持ち寄られた図録、1千冊近くがご覧の通りずらりと勢揃い。壮観です。



企画はお馴染み「フクヘン。」こと鈴木芳雄さんに「青い日記帳」のTakさん、そして立案から全体のプロデュースを手がけられた@sorciere4さん。私はあくまでも助手、雑用係。足手まといにならないようにお手伝いさせていただきました。



それにしても12時スタートから大勢の方がいらっしゃり、両手に図録をたくさんかかえて購入される方の多いこと。スタートダッシュの盛況ぶり。



そして今回はメインイベントとしてフクヘンさんとTakさんのトークショーも。スライドを交えながら、一風変わった図録やレアな図録のお話、そして先だってパーティーの行われた「ハーブ&ドロシー 50×50」など盛りだくさん。



しかも最後はレア図録のオークションも。私も一冊落札。あっという間の1時間でした。

図録放出会の結果については改めてご主催の「青い日記帳」から発表があるかと思いますが、来場者は数百人、また売上は40万円超を記録したとか。



それらは全て「東日本大震災被災文化財復旧支援 Save Our Culture」に寄付されるそうです。

それにしても@fukuhenさん、@taktwiさん、また@sorciere4さんはもちろん、会場のBoConceptの方から、図録のために手作りのカバンを作って下さった方、それに会計や整理係などを担当した有志など、端から見ていても分かるほどに見事なネットワーク。また美術館や出版社の方の多大なご協力もあったそうです。

この「アート好きによるアート好きのための」イベント、大きく成功したと言って間違いありません。



ツイッターのハッシュタグ「#図録」で検索されるとリアルタイムでの熱気が伝わるかと。また@riocamposさんがつぶやきをまとめて下さいました。

「第2回:アート好きによるアート好きのための図録放出会まとめ」をトゥギャりました。

ちなみに今年来られなかった方にも朗報が。また来年、第三回の企画もあるとのことです。そちらも微力ですがお手伝い出来ればと思いました。
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「ブリヂストン美術館ナイト」を開催!

先週、【先行告知】としてお知らせした「ブリヂストン美術館ナイト」。 今年60周年を迎えたブリヂストン美術館を締めくくるのに相応しいイベントとして準備中でした。



と言うわけで、ここに正式決定!「ブリヂストン美術館ナイト」が12月2日(日)、17:30から開催されます!

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【ブリヂストン美術館ナイト】 12月2日(日)17:30~20:00

1、トークイベント「ブリヂストン美術館開館60周年を振り返って」17:30~19:00 

 第一部
  「学芸員対談 ブリヂストン美術館VS 三菱一号館美術館」
  出演:ブリヂストン美術館学芸員 賀川恭子 / 三菱一号館美術館学芸員 阿佐美淑子

 第二部
  「アートブロガーを交えての意見交換会」
  会場の皆様からの意見を交えながら、開館60周年を迎えたブリヂストン美術館を振り返ります。
  出演:「青い日記帳」T a k / はろるど / 6次元 中村邦夫 

 *司会・進行:ブリヂストン美術館学芸課長 新畑泰秀

2、特別内覧会・懇親会 19:00~20:00

 ブリヂストン美術館60周年の最後を締めくくるコレクション展「気ままにアートめぐり」展をご鑑賞いただきます。館内の一部の部屋は、写真撮影が可能です。また一階ティールームにおきまして、参加者と当館学芸員との懇親会を行います。

・日時:2012年12月2日(日)17:30~20:00(受付:16:00~)
 *受付を設置する16時以降であれば、イベント前に展示室をご鑑賞いただけます。先に受付を済ませて下さい。(ただし、写真撮影はできません。)
・参加費:500円(当日受付でお支払い下さい。)
・当日イベント受付:ブリヂストン美術館1Fホール内
・人数:100名(先着順)
・参加条件:ブログ、ツイッター、Facebookのいずれかのアカウントをお持ちの方
・申込方法:本名の他、ブログ、ツイッター、Facebookのアカウントを明記の上、以下のアドレス宛にお申し込み下さい。
 bmanight@bridgestone-museum.gr.jp

受付が完了しましたら、メールを返信いたします。イベント当日は受付完了メールのプリントアウトか、その画面を受付にてご呈示下さい。

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定員100名に達しました。お申込みを締め切らせて頂きます。

概要は上記の通り。まず前半のトークイベントではブリヂストン美術館の新畑学芸課長を司会役に、同館の賀川学芸員と三菱一号館の阿佐美学芸員による対談が。

若い世代の学芸員による異色の組み合わせ、貴重なお話が伺えるのではないでしょうか。

また第二部としては「意見交換会」と題し、美術館とブロガー、SNSユーザーの対話も実現。

青い日記帳のたけさん(@taktwi)と、6次元の中村さん(@6jigen)、そして不肖私はろるど(@harold_1234)が、会場の皆さんとともに、60周年を迎えた美術館の歴史を振り返りかえります。

なお「意見交換会」では学芸員さんへの質問タイムも。また「ブリヂストン美術館この一点!」ということで、会場の皆さまから作品を挙げていただこうという企画も行う予定。学芸員さんへのご質問はもとより、好きなブリヂストン美術館のコレクション、また過去の印象に残った展覧会などを事前に用意していただけると有難いです!


「気ままにアートめぐり 印象派、エコール・ド・パリと20世紀美術」(10/26~12/24)

その後は、現在展示中のコレクション展「気ままにアートめぐり」の特別内覧会、カフェでの懇親会も。会場内も一部撮影出来ます。

なお特別内覧会と懇親会は同時進行。観覧の時間が足りないのではないかという方は、概要にも記載があるように、イベントの前16時から館内に入場可能です。先に前もって展示をご覧になるのも良いかもしれません。(但し特別内覧会時以外は撮影不可。)

さてお申し込みについては概要にも記載がありますが、美術館のイベント専用アドレス(bmanight@bridgestone-museum.gr.jp)へメールで。

参加費は500円。対象はジャンルを問わず、ブログ、ツイッター、Facebookアカウントをお持ちの方です。

受付は先着順!それではお申し込みご応募ありがとうございました。)お待ちしております!
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「フランシス・ベーコン展」 記者発表会

東京国立近代美術館で開催予定のフランシス・ベーコン展の記者発表会へ行ってきました。


「フランシス・ベーコン展」記者発表会(11/22。東京国立近代美術館。)

アイルランド生まれの芸術家、フランシス・ベーコン(1909-1992)。欧米ではピカソと並び、20世紀を代表する画家と称されるものの、日本では決して知名度が高いとは言えません。

それもそのはず、国内にあるベーコンの絵画は全部で5点のみ。しかも大規模な回顧展はベーコンの生前、1983年に開催されて以来、一度も行われたことがありません。


フランシス・ベーコン(1909-1992)

そうしたベーコンの受容に変革をもたらすであろう展覧会。いよいよ30年ぶりに来春、東京国立近代美術館(豊田市美術館へ巡回。)で開催されます。

「フランシス・ベーコン展」@東京国立近代美術館(2013/3/8~5/26)

しかも没後としてはアジアで初めて。イギリス、ドイツ、アメリカ、オーストラリアなどの美術館、またはあまり出品されることのない個人のコレクション、あわせて約35点強が一堂に会することになりました。

さて一言に回顧展とはいえども、単純に時系列で画業を追うわけではないのも重要なポイントです。キーワードは「身体」。ベーコンの作品において極めて重要な身体性に着目しています。

[展覧会の構成]
1.移りゆく身体
2.捧げられた身体
3.物語らない身体
4.エピローグ:ベーコンに基づく身体


というわけで以下、担当の保坂健二朗学芸員の解説に沿って、展覧会の内容を簡単にまとめてみます。


ベーコンのアトリエ

まずは冒頭から。1940年代、第二次大戦の悲惨な状況下において、人間の存在をはかなく、また一定の場所に留まらない『移りゆく身体』と捉えたベーコンは、この時代に言わば亡霊とも受け取れる作品を発表します。


ベーコンの「ピカソ的な身体表現」

その移ろいは極めて多様、一例を挙げればモチーフにおける『人間と動物』、また『リアルとフィクション』、それに『彼岸と此岸』という点ではないでしょうか。


「人物による習作」1949年 ヴィクトリア・ナショナル・ギャラリー

具体的には「人物による習作」(1949)。キャンバス上に開くカーテンはまさに彼岸と此岸の間、それを身体が行き来する様が描かれています。


「肖像のための習作」1949年 シカゴ現代美術館 

また檻のような構造体を同じく亡霊のような身体が消えゆく「肖像のための習作」(1949)でも同様です。


右:「叫ぶ教皇の頭部のための習作」1952年 イエール・ブリティッシュ・アート・センター
左:エイゼンシュテイン監督「戦艦ポチョムキン」から


ちなみにこうした「叫び」ともとれるように大きく口をあけた人物。例えばエイゼンシュテインの映画、「戦艦ポチョムキン」で銃を向けられて叫ぶ女性の姿を引用しているとか。


ベーコンのスタジオから発見されたスクラップ『物質化の現象』より

このようにベーコンは制作において写真や映像をかなり参照しています。本展ではそうしたスクラップ資料もあわせて紹介されるそうです。


「ファン・ゴッホの肖像のための習作6」1957年 アーツ・カウンシル

ちなみに展示の一つハイライトであるのが「スフィンクス」のシリーズ。ベーコンは50年代後半にはゴッホのイメージを取り込み、色を次第に回復させていきますが、人間と神、また男性と女性の間にある「スフィンクス」を重要なモチーフとしました。


右:「スフィンクス ミュリエル・ベルチャーの肖像」1979年 東京国立近代美術館 他

本展ではその「スフィンクス」を一挙4点公開。同時に4点が並ぶのは世界で初めてだそうです。


トリプティックという形式のイメージソース

さてベーコン画を語る上で重要なキーワードを挙げましょう。それが『トリプティック』、つまりは一般的にキリスト教の教会飾りに用いられることの多い三連祭壇画です。


「ジョージ・ダイアの三習作」1969年 ルイジアナ近代美術館

ベーコンは雑誌の連続するワンシーンなどをモチーフへ取り込み、こうした三幅対の絵画をいくつか描きました。

その最も重要な作品と言えるのが、ニューヨーク近代美術館の「三幅対」(1991)に他なりません。


「三幅対」1991年 ニューヨーク近代美術館

実はこの作品、同館がコレクションする際に他のベーコンの絵画を売却したとも言われているとか。もちろんこのベーコンの描いた最晩年、最後の『トリプティック』も来日します。


インテリア・デザイナーとしてのベーコン

ところでベーコンについて興味深いエピソードを一つ。それは彼が画家になる前、家具デザイナーを志していたということです。

それらはコルビュジエの影響が強かったとされていますが、ベーコン画における室内空間の描写にも反映した可能性があるとの指摘もなされています。


写真(マイブリッジ)とベーコン

またマイブリッジと呼ばれる連続写真から人体の運動を分析、抽出して絵画に起こしたことも。晩年は構造が複雑、ねじれた空間も複数登場し、人物同士の関係も曖昧になっていきました。

最後にベーコンの作品の特徴付ける保坂学芸員の言葉をご紹介。

「人物像と、神経組織に対して、より暴力的に、そして痛烈に、もたらす試み。」

人間を痛みを持って知ろうとする試み。それは見る側の感性、また神経をも強く刺激します。別の言い方をすれば極めて主体的に実存へ向き合った画家とも言えるのかもしれません。


ペーター・ヴェルツ

なお展覧会ではエピローグとしてベーコンにインスピレーションを受けて制作されたダンスの映像もあわせて紹介。ベーコン画の身体性と前衛的ダンスの関係を探る試みも注目されそうです。

初めにも触れたように海外では非常に高い評価を受けています。とりわけ作品の評価額は高騰、オークションでは数千万ドルで作品が落札されたこともありました。また2008年には回顧展がテート、プラド、メトロポリタンを巡回。それぞれ約25万名もの観客を集めました。


「三つの人物像と肖像」1975年 テート・ギャラリー

剥き出しの人間、言わばベールを全て取っ払った身体を見つめたベーコン。時に目を背けたくなるほどに奇怪、そして肉感的でなおかつ、恐怖を覚えるほどの残酷な感情を見て取れないでしょうか。

しかしながら今こそそれから目を背けることは出来ないはず。図版でも一度見たら忘れられない強烈なイメージです。実際の絵画と向き合った時に受ける衝撃は如何なるものか。それを半ば楽しみにしながら、来春の開幕を心待ちにしたいと思います。

フランシス・ベーコン展は2013年3月8日に東京国立近代美術館ではじまります。

*東京展終了後、豊田市美術館(2013/6/8~9/1)へと巡回。展示は同一内容。



「フランシス・ベーコン展」 東京国立近代美術館
会期:2013年3月8日(金)~5月26日(日)
時間:10:00~17:00(金曜日は20:00まで) *入館は閉館30分前まで
休館:月曜日(但し、3月25日、4月1日、4月8日、4月29日、5月6日は開館)、5月7日(火)は休館。
主催:東京国立近代美術館、日本経済新聞社
会場:東京国立近代美術館
後援:ブリティッシュ・カウンシル、アイルランド大使館ほか
料金:一般1500(1300)円、大学生1100(900)円、高校生700(500)円。中学生以下無料
 *( )は前売券。2013年1月8日から3月7日まで販売予定。

*関連リンク(3/7のプレビューに参加してきました)
「フランシス・ベーコン展」@東京国立近代美術館
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「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.6 衣川明子」 ギャラリーαM

ギャラリーαM
「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.6 衣川明子」
9/21-10/20



ギャラリーαMで開催中の「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.6 衣川明子」へ行ってきました。

キュレーターの保坂健二朗が「見るよりも対峙すべき。」と述べた衣川明子の人物画。確かに何れの作品を前にしても、有無を言わさぬ目力、その迫力に後ずさりしてしまいそうになります。



展示されているのは、中性的とも取れる女性。もしくは猫と人の狭間に立つような不思議な動物を捉えた絵画です。

おおよそグレーのトーンに沈み込む一連の作品はただひらすらに寡黙です。

それでいながら初めにも触れたように、こちらを突き刺すように見やる強い目線。どこか迷い、また悲しげなようでいながら、その奥には確固たる意思が潜んでいるように思えてなりません。

タッチは比較的軽やか、色は時にかすれ、またステイニングを連想させるような瑞々しさも持ち得ています。



作家は色を予め限定。支持体も通常は綿布、そして重ねて塗る時は麻を用いているのだそうです。

モチーフやテーマこそ異なるものの、人物のどこか虚ろで夢幻的な様子は、何やらシャガールに登場する女性を思わせる面も。

特定のモデルによらず、あくまでも自身の中にあるイメージの体現としての女性だそうですが、しばし前で「対峙」していると、何やら彼岸の世界にでも吸い込まれてしまうような気さえしました。

「顔には、意識や感情といったあやふやなものを見ることができる不安定なところがある。向かい合っているうちに、今思い浮かべている記憶や感覚が誰に対してのものだったのかわからなくなる。」衣川明子

「オープニングトーク 衣川明子x保坂健二朗」(10/27)

11月24日まで開催されています。

「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.6 衣川明子」 ギャラリーαM@gallery_alpham
会期:10月27日(土)~11月24日(土)
休廊:日・月・祝。
時間:11:00~19:00
住所:千代田区東神田1-2-11 アガタ竹澤ビルB1F
交通:都営新宿線馬喰横山駅A1出口より徒歩2分、JR総武快速線馬喰町駅西口2番出口より徒歩2分、日比谷線小伝馬町駅2、4番出口より徒歩6分。
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「TRANS ARTS TOKYO」 旧東京電機大学校舎11号館

旧東京電機大学校舎11号館
「TRANS ARTS TOKYO」 
10/21-11/25



旧東京電機大学校舎11号館で開催中の「TRANS ARTS TOKYO」へ行ってきました。

再開発のため、もうまもなく解体される神田の東京電機大のビルで展開中の「TRANS ARTS TOKYO」(トランス・アーツ・トーキョー)。



地下2階から17階のほぼ全フロアを用い、ファッション、アニメ他、必ずしもアートに捉われないジャンルの展示、制作、シンポジウムなどが行われています。

というわけで、遅ればせながら私も見学。写真メインで恐縮ですが、その模様をごく簡単にまとめておきます。

まずは上階から。15階では東京芸術大学の学生、もしくは卒業生による公開制作、その名も「東京藝術大学 絵画科 油画専攻 OPEN LABO」が展開中。私が出向いた時もちょうどαMでの展示が印象的だった村山悟郎さんが制作されていました。



あとはTALIONの展示も光った小林史子さんも。実は小林さんは油画のご出身。今回もご覧の通り、おそらくは備品の椅子を大胆に取り込んでの展示を繰り広げていました。



続いて階下、14階です。Chim!Pomのリーダー、卯城竜太率いる「天才ミュージアム!」が。



このハチャメチャ感。「アートであれば何でありの異種格闘技戦。」をテーマにした凄まじいエネルギーが渦を巻きます。取り壊しなどお構いなし。時に壁をぶち抜いてまでの展示はまさに『廃墟』だからこそ成り立つのかもしれません。



さて13階のテーマは建築、16組の建築家が領域を横断しての建築の在り方を指し示します。



東北各地に巡回予定のテント状のコンサートホール「アーク・ノヴァ」の模型も。デザインはカプーアでした。



駆け足で進みましょう。10階は「アーツ千代田3331」に入居するギャラリーを中心としたアートフェア「TAT」が。お馴染みのMORI YU GALLERYなどが主に若手作家を紹介。



9階ではジャンルにとらわれないアートの掘り出し物をそれこそ発掘する「トランス・その他・ら・エキスプレス。」。リクシルの「ですよねー」展の記憶も新しいいくしゅんの展示なども。



7階は再び東芸大、油画博士有志展「Dr.YOUSEE」。菅良平さんの大作も目を引きます。



どんどん降りて5階へ。まるでお化け屋敷かと見間違えるような会場が「どくろ興業」。アートコレクターの岡田聡氏が代表をつとめるアーティストグループです。



これが本当にゾクゾクするくらい薄気味悪く、また耽美的でかつ退廃的な内容です。



14階の「天才ミュージアム」と並び、自由奔放、空間を破壊してまでの迫力あるインスタレーションを楽しめました。



3階から2階では神田の地とアートを結びつけるプロジェクトも。神田の人達と交流して出来たという椿昇さんの作品の他、神田の昔の写真や神田っこのインタビュー集なども紹介されていました。



ともかく全館規模での大変なボリュームです。私の時間の都合もあり、観覧は平日、館内もひっそりとしていましたが、主に土日では各所にてシンポジウムなど、多種多様なイベントが活発に行われています。

「TRANS ARTS TOKYO」イベントスケジュール

チケットが500円のパスポート制です。確かにこの膨大なプロジェクトに参画するには、何度か足を運ぶ必要がありそうです。

火曜がお休みですが、月曜休という展示もありました。また最上階のカフェは土日のみの営業です。ご注意下さい。



なお展示は期間限定ですが、この試みは何も建物の解体とともに終わるわけではありません。全ては2017年にオープン予定の「神田コミュニティアートセンター」への一つの足がかり。

神田コミュニティアートセンター構想とは

今後の神田のアートシーン、末広町の3331とあわせて注目したいところです。

11月25日まで開催されています。

「TRANS ARTS TOKYO」 旧東京電機大学校舎11号館
会期:10月21日(日)~11月25 日(日)
休館:火曜日
時間:12:00~19:00 (最終入場は18:30)
料金:500円(パスポート制。会期中何度でも入場可。)
住所:千代田区神田錦町2-2
交通:都営新宿線小川町駅、東京メトロ千代田線新御茶ノ水駅、東京メトロ丸の内線淡路町駅B7出口より徒歩4分。都営三田線神保町駅A9出口徒歩6分。
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「琳派芸術2」 出光美術館

出光美術館
「琳派芸術2」
10/27-12/16



出光美術館で開催中の「琳派芸術2」へ行って来ました。

昨年春、抱一の生誕250年を記念して行なわれた「琳派芸術」展。

琳派好きの私も早々に出かけましたが、第二部の会期途中に東日本大震災が発生。その後の様々な影響により打ち切りとなってしまいました。

以来、約一年半、ここに復活。その名も「琳派芸術2」と題した展覧会が始まっています。

とは言え、内容に変更があるのもポイントかと。前回展の第二部、つまりは同じく江戸琳派に焦点を当てながらも、例えば草花図に注目するなど、構成を刷新。また他館からの借入れ作品を新たに加え、抱一周辺、前後までを視野に入れた展示となっていました。

まず冒頭は抱一の「風神雷神図屏風」から。言うまでもなく宗達から光琳、そして抱一へと受け継がれた、琳派変奏の代名詞としても知られる作品です。


酒井抱一「風神雷神図屏風」(左隻) 江戸時代 出光美術館

出光ではかつてこの三作を一同に並べ、比較するという意欲的な展示を行ったこともありましたが、今回は抱一作のみの出品です。

どうしてもオリジナルの宗達作と比べると分が悪くなるのかもしれませんが、これ一つで捉えれば実にコミカルで軽妙。それこそ神々を地に降ろし、親しみやすい姿へと置き換えています。

また変奏としては抱一の「八ツ橋図屏風」も同様です。


酒井抱一「八ツ橋屏風」(右隻) 江戸時代 出光美術館

こちらは根津美術館の「KORIN展」で元になる光琳のメトロポリタン本がやってきたことでも話題となりましたが、抱一は花群を半ば整理、緑青のたらしこみもたっぷりと用い、全体として温和な表情をとる作品へと転化させています。

しかしながら抱一の個性が発揮されているのは、やはり明確な元作を持たない、ようはオリジナルのモチーフでしょう。

青みがかった銀色の中で、可憐に、そして儚げに咲く紅白梅。「紅白梅図屏風」こそ、本展の抱一の屏風絵のハイライトに他なりません。


酒井抱一「紅白梅図屏風」(左隻) 江戸時代 出光美術館

ちなみにこの作品、屏風を折りたたむ際、紅梅の顔料の写る部分が通常と逆になることから、何かの裏絵ではないかという指摘もあるとか。

また一見、左右で同じように描かれているように思える梅も、紅梅は枝ぶりが強く、一方での白梅は流麗でかつシャープ。メリハリが付いている点も見逃せません。

また展示は前後しますが、光琳も得意とした燕子花を取り込んだ、文字通り「燕子花図屏風」も、抱一ならではの作品です。


酒井抱一「燕子花図屏風」 1801年 出光美術館

霞の漂う空間で円を描くように群れるカキツバタ、そののびる一枚の葉の上には静かに羽を休める蜻蛉、そして隠されるように潜む白い花。比較的、早い段階の作品ですが、琳派的なデザイン感覚云々ではなく、抱一一流の深い情緒性を味わうことが出来ました。

さて本展でははじめにも触れたように、草花図を通して、琳派の先駆けを紹介しているのも特徴です。そもそも伊年印の例を挙げるまでもなく、琳派の絵師は「草花図」のモチーフを好んで取り上げました。

ここで面白いのが、喜多川相悦の「四季草花図貼付屏風」(前期展示)と、伝光琳の「秋草図屏風」です。


喜多川相悦「四季草花図貼付屏風」 江戸時代 出光美術館

相悦作はそれまでの宗達工房作に見られるような草花を単体で大きくクローズアップすることなく、繊細なタッチで四季の草花を均等に描いています。


伝尾形光琳「秋草図屏風」 江戸時代 サントリー美術館(前期展示)

これに倣ったのが光琳です。葉を金泥で表すのはいかにも光琳風といった趣きがありますが、全体としては相悦作のような落ち着きある草花図を描いています。

また抱一以前で重要なのは、立林何げいと俵屋宗理、共に18世紀半ばから後半にかけて江戸で活躍した絵師です。


俵屋宗理「朝顔図」(部分) 江戸時代 細見美術館(前期展示)

中でも一押しは宗理の「朝顔図」(前期展示)、江戸初期に園芸種として人気を博した植物です。濃紺の朝顔からのびる細い蔓、そして葉の柔らかな質感、確かに抱一画を連想させる面がないでしょうか。

またこうした瀟洒な作風とあわせ、新奇で機知に富む題材を取り込んだのも江戸琳派。そこは何と言っても其一の独擅場です。


鈴木其一 「蔬菜群虫図」 江戸時代 出光美術館

「蔬菜群虫図」(後期展示)の例を挙げるまでもありませんが、今回はこうした其一画もいくつか展示されています。


鈴木其一「暁桜・夜桜図」(右幅) 江戸時代 黒川古文化研究所(前期展示)

また其一では一点、「暁桜・夜桜図」(前期展示)も是非挙げておきたいところです。この朝日を浴びて静かに咲く桜の花、古径や御舟といった近代日本画に通じるものがないでしょうか。


鈴木其一「暁桜・夜桜図」(左幅) 江戸時代 黒川古文化研究所(前期展示)

また闇夜にも注目。月光に照らされた桜は何とも趣き深く、全てシルエットとして描かれています。

銀を得意とした抱一画にも頻出する月夜の世界。夜の表現は江戸琳派の好んだ画題でもありますが、一見地味ながらも、そこには其一の豊かな才能が現れていました。

「もっと知りたい酒井抱一/玉蟲敏子/東京美術」

会期中、一度展示替え、巻き替えがあります。

「琳派芸術2」展出品リスト(PDF) 前期:10/27~11/18 後期:11/20~12/16

前期は残すところあと僅か、まだの方はお急ぎ下さい。

12月16日まで開催されています。

「琳派芸術2」 出光美術館
会期:10月27日(土)~ 12月16日(日)
休館:月曜日
時間:10:00~17:00 毎週金曜日は19時まで開館。
料金:一般1000(800)円、高・大生700(500)円、中学生以下無料(但し保護者の同伴が必要。)
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階
交通:東京メトロ日比谷線・千代田線、都営三田線日比谷駅、東京メトロ有楽町線有楽町駅、帝劇方面出口より徒歩5分。JR線有楽町駅国際フォーラム口より徒歩5分。
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【先行告知】 「ブリヂストン美術館ナイト 60周年後夜祭」(仮)を開催!

今年、開館60周年を迎えたブリヂストン美術館

定評のある西洋絵画コレクションはもちろん、これまでにはない音楽と美術の関係を問うドビュッシー展など、まさにメモリアルに相応しい意欲的な展覧会が続きました。


「気ままにアートめぐり 印象派、エコール・ド・パリと20世紀美術」(10/26~12/24)

現在は、コレクション展「気ままにアートめぐり 印象派、エコール・ド・パリと20世紀美術」を開催中。お馴染みモネ、ルノワールから、実は同館のコレクションの中核でもある戦後の抽象絵画までが展示されています。

さてそうした60周年締めるのにサプライズの企画が。



それが「ブリヂストン美術館ナイト 60周年後夜祭」(仮)

日時は12月2日(日)の17:30から。(20時までを予定。)

他館からゲストをお迎えしての学芸員さんの対談の他、観客参加型のトークショー、そして特別鑑賞会、さらにはミニパーティまでが付くという盛りだくさんの企画。

定員は100名。対象は今のところブログ、ツイッター、Facebookアカウントをお持ちの方になる予定です。

イベントの詳細はまた後日。来週、早々にもお伝え出来ると思います。(特報映像CMも出来るかも?!)

それでは12月2日(日)夕方以降、是非とも予定をあけておいて下さい!
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「チョコレート展」 国立科学博物館

国立科学博物館
「チョコレート展」 
2012/11/3-2013/2/24



国立科学博物館で開催中の「チョコレート展」のプレスプレビューに参加してきました。

誰もが大好きチョコレート。日頃、持ち歩いているという方もおられるかもしれませんが、意外なことにその歴史、また製法などはあまり知られていません。

そこで登場したのが科博のチョコレート展。そうしたチョコレートをカカオの歴史から紐解き、取り巻く文化、さらには製造工程までを体感的に知ることが出来ます。


「プロローグ」チョコレート・ゲート

まずはプロローグ、早速出迎えてくれるのがチョコレートの巨大ゲートです。写真を見ても分かりにくいかもしれませんが、近付けば全て本物のチョコレートで出来ていることが分かります。


チョコレート製の機関車

それに脇に目を向けると科博でお馴染みのシロナガスクジラのチョコレート仕立てが。精巧な機関車もチョコレート製でした。


ZONE1「チョコレートの原点~カカオ」

さてさらに奥へ。中央には大きな木がそびえ立ちます。これがまさしくチョコレートの原料のカカオ。実はカカオは一年間に何千もの花を付けるものの、実になるのは僅かだとか。


「カカオの実」各種

展示ではそうしたカカオの実を触ることも出来ました。

続いてはカカオからチョコレートの史的変遷、今から4000年前、中米の古代文明マヤに遡ります。


ZONE2「チョコレートをめぐる歴史」マヤ、アステカ文明

当時のチョコレートは飲料です。カカオは神聖なもの、時に神への捧げものとして珍重されていました。そして紀元後200~600年頃には中米全域にカカオが広まり、さらに15世紀のアステカ文明へと至ります。


グアテマラ「土器」600-800年(複製)他

また面白いのは通貨としても用いられていたことです。アステカの支配者はカカオの成育地に住む人たちに年貢としてカカオを要求します。展示では当時使われたカカオの容器などのレプリカが紹介されていました。


ZONE2「チョコレートをめぐる歴史」ヨーロッパへ

さてチョコレートといえば本場はヨーロッパ、言うまでもなくカカオが西欧に渡ったのは、スペインがアステカを滅ぼした16世紀のことです。

この時に初めて我々の知る甘いチョコレートが誕生、スペイン人はカカオに砂糖を加えることを思いつき、以来フランスからヨーロッパ全域にチョコレート文化が広がりました。


「チョコレートポット/チョコレートカップ」のコレクション

18世紀から現在までのチョコレートポットやチョコレートカップもずらり。陶製や銀製と様々ですが、国や地域によりデザインが違うのも興味深いところでした。


「チョコレートポット/チョコレートカップ」のコレクション(拡大)

さて飲料だったチョコレートが固形になったのは何時のことでしょうか。

その答えは1847年のイギリス。ジョセフ・フライという人物が、カカオマスにココアバターを混ぜた固形チョコレートの原型を発明しました。

チョコレートが日本に渡って来たのは江戸後期、ご覧の通り、今では様々なお菓子メーカーから多種多様なチョコレート製品が生み出されています。


ZONE3「チョコレートと日本」

会場では森永、明治、不二家など、各メーカーのチョコレート製品のパッケージ、またポスターがいくつも展示。


ZONE3「チョコレートと日本」チョコボール

1967年に発売されたチョコボールのデザインなどは懐かしいと感じる方もおられるのではないでしょうか。そう言えば私もおもちゃの缶詰を目的に、一生懸命に食べたものでした。


ZONE4「チョコレートができるまで」

ラストは科博にチョコレート工場が出現。ずばり「チョコレートが出来るまで」と題し、カカオからチョコレートへの製造過程が紹介されています。

ここではカカオ豆になったつもりでいざ進入。体験コースの表示に従いながら風選、焙しょう、磨砕などの工程を追いかけましょう。


「風選」ウィノーイング

ちなみに展示はちょっと凝った作り、強い風をカカオ豆へ当てて外皮を飛ばす風選では実際に風も出ています。

また面白いのは調温と呼ばれる工程。チョコレートに含まれるココアバターは極めてデリケートな性質のため、安定した結晶にするためには三段階に温度を調整する必要があるとか。


「調温」テンパリング

初めは50度、次に25度、最後は30度、そして冷却です。またココアバター30度になると溶け出す、つまり口に含んだ時に溶け始めるという性質を持っています。ここもココアバターになったつもりで、それぞれに設定された温度スペースを通りました。


チョコレート製の「トリケラトプス」

出口にはチョコレートのビンテージコレクションや大きな恐竜も。もちろんこれもチョコレート製、言われなければ分からないほど精巧に出来ています。

ショップには展覧会オリジナルのチョコレートから、通常、通販のみでしか手に入らないチョコレートなどがずらり。


特設ショップ「巨大チョコレート」

驚きなのがこちらのチョコ、横30センチ以上はあろうかという巨大サイズ、価格もなんと17850円です。もちろん業務用。小売されることはまずないそうですが、展覧会にあわせて特別に販売されたとのことでした。

会場内での試食などは一切ありません。科博らしい実直でかつ学究的にチョコレートに向き合った展覧会です。

2013年2月24日まで開催されています。

「チョコレート展」 国立科学博物館
会期:2012年11月3日(土・祝)~2013年2月24日(日)
休館:毎週月曜日。但し12月25日は開館。年末年始(12/28~1/1)。
時間:9:00~17:00。金曜は20時まで。
料金:一般・大学生1400(1200)円、小・中・高校生600(500)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。金曜限定ペア得ナイト券2000円。(2名同時入場。17時以降。)
住所:台東区上野公園7-20
交通:JR線上野駅公園口徒歩5分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成線京成上野駅徒歩10分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「須田悦弘展」 千葉市美術館

千葉市美術館
「須田悦弘展」
10/30-12/16



千葉市美術館で開催中の「須田悦弘展」へ行って来ました。

いつの展示か、部屋の片隅に転がる椿を「発見」して以来、その可憐な美しさに惚れた須田悦弘の木彫。そしていよいよファン待望、しかも古美術とのコラボも併せ持った一大個展が千葉市美術館ではじまりました。


「バラ」2012年 木に彩色

もちろん須田と言えば、美術館の空間をそのまま活かし、おおよそ作品を展示しないような場所にもさり気なく設置。それを見る側の我々が歩いて探し回るのも鑑賞の醍醐味です。

本展でも出品リストこそあれども、個々の作品がどういう場所に置かれているかは具体的に明示されていません。

よってここでは「ネタバレ」を極力避けるため、誰もが目に付くところに置かれた作品のみを紹介、それ以外は挙げないようにします。

前振りが長くなりました。では早速、順路に沿って8階の展示室から。


「睡蓮」(展示外観)2002年 アサヒビール大山崎山荘美術館

ぐっと照明の落とされた暗室に置かれているのが、ウォークイン方式、作品を展示するために作られたボックスです。


「睡蓮」2002年 アサヒビール大山崎山荘美術館

実は須田はキャリア初期、個展のための貸画廊が決まらなかったため、リアカーのような箱を作って駐車場に停め、そこの中で作品を見せるという方法を考えつきました。


右:「東京インスタレーション」(展示外観)1994年 山梨県立美術館
左:「銀座雑草論」(展示外観)1993年 山梨県立美術館


その一つである最初期の「銀座雑草論」もご覧の通り。老朽化のため内部に入ることは叶いませんが、全面の金箔にあしらわれた雑草の空間は、まるで秀吉の好んだ黄金の茶室風です。


「銀座雑草論」(内部)1993年 山梨県立美術館

こうした専用の建造物の作品は全部で5点。同じく屋外の駐車場で発表した「東京インスタレーション」(1994)から、全面漆塗りの最新作「芙蓉」(2012)までに至ります。

なおこれらは靴を脱いで入る必要があります。美術館のサイトにも記載されていますが、靴は着脱の簡単ものがおすすめです。


「展示室4」(8階)風景

それにいつもながら、一見「何もない!」と思ってしまう空間にも小さな作品が幾つか潜んでいました。大きな荷物の持込みも基本的にNGです。ご注意下さい。

さて続いては一つ下の7階ではなく、エレベーターで一気に1階へ。


「さや堂」(1階)風景

こちらが個展の第2会場、さや堂ホール。昭和2年に建てられた旧川崎銀行千葉支店を再現したネオ・ルネサンス様式の空間です。


「マグノリア」2009年

こちらには中央のステージに展示された「マグノリア」以外に3点、つまり計4点の作品が。もちろんネタバレ厳禁。上を見上げ、足元に注意し、さらに裏へと回りながら探して当てて下さい。

それでは再びエレベーターで上へ。先ほど飛ばした7階へ進みましょう。

こちらが須田プロデュース、その名も「須田悦弘による日本の美」。つまりは須田自らセレクトした千葉市美の日本美術コレクションと、自作の木彫を組み合わせた展示に他なりません。


「須田悦弘による日本の美」展示室(浮世絵)風景

冒頭は千葉市美の誇る浮世絵各種。須田がデザインしたボックスの上に浮世絵が置かれています。つまり通常、壁に掛けられる浮世絵を下に見やる仕掛けです。


展示されている浮世絵

巧みなライティングの効果もあるのか、雲母の輝きなど、より浮世絵が映えているのも嬉しいところですが、モチーフ自体も道具や花など、どこか彼自身の木彫を連想されるものが多いのではないでしょうか。

続いては屏風絵との取り合わせ。「椿図屏風」では屏風の下にそっと一輪の椿が。もちろんこれはお得意の方法、あたかも屏風から椿がこぼれ落ちたかのように見せる、いわば見立ての展示です。


長沢盧雪「花鳥蟲獣図巻」1795年 紙本着色一巻 千葉市美術館

7階展示室では一点、発見難易度の高い作品もありますが、他にも蘆雪の描く雀の下に転がるとある小さな粒など、まさに愛おしい木彫が古美術と見事に関係し合っています。


「泰山木:花」1999年

作られた空間とそのままの空間。解説ではそれを「空間を作り出す」と「空間を見いだす」と呼んでいましたが、その二つの空間を交互に展開させ、さらに古美術を、また時には探して歩く観客までをも取り込んだインスタレーションだと言えるのではないでしょうか。

会場内は寄託作品(須田の作品1点、及び屏風絵3点。)を除き撮影が可能です。なおウォークインの作品はほぼ一人ずつしか入れません。時間によっては若干の列も発生していました。

11月11日に行われた公開制作の様子を別途まとめてあります。

「須田悦弘公開制作」 千葉市美術館

虫食いの葉など、木彫自体のどこか儚げな表情と、展示が終わってしまえば消えてしまう空間。この作品、場所だからこその成り立つ一期一会の展示、これぞ須田悦弘の魅力です。存分に味わうことが出来ました。


「芙蓉」2012年

12月16日までの開催です。もちろんおすすめします。

「須田悦弘展」 千葉市美術館
会期:10月30日(火)~ 12月16日(日)
休館:11月5日(月)、12月3日(月)
時間:10:00~18:00。金・土曜日は20時まで開館。
料金:一般1000(800)円、大学生700(560)円、高校生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
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「須田悦弘公開制作」 千葉市美術館

千葉市美術館
「須田悦弘 公開制作」
11/11 10:00~17:00



千葉市美術館で行われた「須田悦弘 公開制作」を見てきました。

同館で開催中の須田悦弘さんの個展、11月11日は唯一の公開制作日。実際に須田さんが朝の10時から作品を制作し、完成後に会場内へ設置を行うという企画です。

実は先週も展示を見たばかりですが、須田さんの制作のお姿を間近で見られるという滅多にないチャンス。というわけで、早速出かけてきました。


「須田悦弘公開制作」会場風景

美術館へ到着したのは15時頃。公開制作の会場は展示室内ではなく、11階のホール。制作台の周りには20名ほどの観客が。近づくと須田さんがノミを手にしながら木片と向き合っていました。

作品は事前のアナウンスにもあったように「雑草」、既に須田さんが300種類も作られたというお馴染みのものです。


ノミを片手に「雑草」を制作中の須田さん。

制作中は集中を邪魔しては申し訳ないと思い、お声がけすることはもちろん、写真を撮るのも控えるつもりでしたが、須田さんの方から笑顔で「あまりじっと見られるのも怖いから、色々質問して下さいね。(笑)」との優しい言葉が。大変に気さくな方です。


制作中に質問に答える須田さん。

というわけで、時折、観客とお話しながら、和やかな雰囲気で制作が進んでいきました。


制作台(休憩中に撮影)

ちなみに「雑草」シリーズ、これまでに何度か本物の雑草だと勘違いされ、展覧会などで撤去されたこともあるそうです。


使用されていたノミや筆など。

具体的には横浜美術館や山梨県立美術館では摘まれ、さらにモスクワで展示をした時は、オープン前、清掃の方にモップで壊されてしまったとか。また直島では、いわゆる偉い方が「あんなところに雑草が!管理がなってない!」と怒ったというエピソードも残っているそうです。


制作台の上にあった雑草の写真。制作中、何度か参照されていました。

素材にあたる木は朴、ほおのきです。非常に柔らかい性質を持つため、加工がし易いとのこと。よって須田さんは殆どの作品でこの朴を使用しています。


制作途中の「雑草」

私も実際に触らせていただきましたが、確かに軽く、それでいて滑らか。また少し温かみのあるような気もしました。

さて一度、展示を拝見し、終了予定の17時頃に再び公開制作へ戻ると、ちょうど最後の仕上げ、着彩の工程に。


着彩の工程を終えた須田さん。

完成して10分ほど乾かし、いざギャラリーを引き連れて会場へ。無事、某所に設置され、一連の公開制作は終わりました。

その様子も写真に撮りましたが、ネタバレです。まだの方はご覧にならない方が賢明です。

「須田悦弘公開制作」作品設置シーン(写真1写真2) 注意*ネタバレあり! 

差し支えなければ、展示へ行かれた方のみ、上記リンクをご参照下さい。


「泰山水:花」1999年 木に彩色 千葉市美術館

ところで須田さんの制作を前にすると、それこそ指先が木片にくっ付いているではないかと思うほど、素材と一体化。またノミもぐっと身体に引き寄せています。「雑草」という小さな作品ながらも、まさに全身で作り上げているような印象を受けました。

展覧会の感想はまた別途まとめたいと思います。

「須田悦弘展」 千葉市美術館
会期:10月30日(火)~ 12月16日(日)
休館:11月5日(月)、12月3日(月)
時間:10:00~18:00。金・土曜日は20時まで開館。
料金:一般1000(800)円、大学生700(560)円、高校生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
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「ZESHIN 柴田是真の漆工・漆絵・絵画」 根津美術館

根津美術館
「ZESHIN 柴田是真の漆工・漆絵・絵画」
11/1-12/16



根津美術館で開催中の「ZESHIN 柴田是真の漆工・漆絵・絵画」のプレスプレビューに参加してきました。

「漆絵」を発明し、漆工芸のみならず、絵画においても独自の地位を確立した希代の蒔絵師、柴田是真(1807~1891)。その卓越した技術、意表を突くデザインは、最近になっても大いに注目されているところです。


「ZESHIN展」展示室風景

本展ではそうした是真の業績を約120点の作品で紹介。しかもうち47点が初公開です。それに近年の是真展では海外コレクションの出品が多かった中、今回は全てが国内の所蔵。こうした国内の作品のみで構成された是真展は何と30年ぶりとのことでした。

さて是真、その見どころなり魅力を一言で表せば、若冲ならぬ「神は細部に宿る」です。

ともかく細部、細部へと目を凝らして下さい。すると一見、変哲のないような工芸品なり絵画に、驚くほどの技が込められていることが分かるのです。

まずはその代表例の「大橘蒔絵菓子器」です。蓋の表には、江戸時代に東南アジアからもたらされた果物のザボンを、細かな蒔絵に螺鈿を敷き詰めて表現しています。


「大橘蒔絵菓子器」 中野邸美術館

そしてここでは漆の塗りにも要注目。まずは黒い部分から。実は通常の漆塗りの工程とはやや異なり、磨きをより際立たせた方法を用いています。

また茶色の箇所は銅の質感を模した是真の得意の技法。またブロンズを模した青銅塗りも使われています。

これらをまとめて「変塗」(かわりぬり)と呼びますが、言わば限定された漆の色を解放し、カラフルな色を表現したのも、是真の業績の一つなのです。

続いて「烏鷺蒔絵菓子器」も。互い違いになった箱に烏と鷺の対峙する様子を描いています。


「烏鷺蒔絵菓子器」 東京国立博物館

この烏は黒蒔絵、そして鷺はやや変色していますが銀です。烏と鷺は御伽草子の「鴉鷺合戦」にも登場する伝統なモチーフですが、是真はそれをモダンな変わり箱に落とし込み、斬新な作品へと転化させました。

ちなみに是真は授業時代から蒔絵師を志しますが、一時は絵画修行のため、四条派に弟子入りしています。さらに彼はこれまで分業だった下絵と漆工を一体化。双方とも自ら手で行いました。


「ZESHIN展」展示室風景

まさにこれこそ近代工芸の先取りでもありますが、彼が漆工、絵画の双方に通じていたからこそ、これほどの業績を残せたと言えるのかもしれません。

さて是真の技の核心へと進みましょう。それが漆による絵画、つまりは漆絵に他なりません。

やはり一押しは「漆絵花瓶梅図」。トリックアートとしても紹介されることもある作品です。


「漆絵花瓶梅図」明治14年(1881) 板橋区立美術館

さて何故これがトリックなのか。種明かしをしてしまえば、木の上に漆で花瓶を描いた、ようは板絵に見えるのも、実は全て紙に漆、ようは全てが漆絵であるのです。

つまり紙の上に変塗の紫檀塗りによって木の質感を再現、そしてさらに漆で花瓶や花を描いています。


「漆絵画帖」 三隅悠コレクション 他

もちろん木枠に見える額も漆絵。また展示では「漆絵画帖」など、小品ながらもまさに軽妙洒脱、見ごたえのある漆絵が何点も登場していました。

さてトリックと言えばもう一点、伝光琳の硯箱を模した「業平蒔絵硯箱」も重要です。


左:伝尾形光琳「業平蒔絵硯箱」 根津美術館
右:柴田是真「業平蒔絵硯箱」 根津美術館


有難いことに展示では伝光琳作と是真の作品を見比べることが出来ますが、単にそのまま写したというわけではないのがポイントです。

伝光琳作では錫の板を貼った狩衣や扇の骨の部分を、是真は錫の粉などを用いた蒔絵で表現。自らの技術を示しています。

しかももう一つ面白いところが。両作を良く見比べて下さい。経年劣化によって変色した伝光琳作の錫の板の錆び、それまでを再現していることが見て取れないでしょうか。

何と是真は既に錆びていた錫の質感を漆で表現しているのです。この創意工夫、そして発想力、強く感心させられました。

ラストに私の一押しの作品を。それが蒔絵額から一点、「月薄鈴虫蒔絵額」です。


「月薄鈴虫蒔絵額」明治10年(1877) 三隅悠コレクション

写真はおろか、実物を見ても驚くほどに闇に覆われた一枚、黒をこれほど大胆に取り込んでいることからしても特異ですが、これまたよくよく目を凝らすと満月に照らされて佇む鈴虫の姿が。

実は鈴虫はもう一匹、薄にも止まっていますが、これほど秋の情緒をどこか物悲しく、また儚げに表した作品はそうありません。

是真というとデコラティブな工芸というイメージもあるかもしれませんが、単にそれだけではない、是真の言わば詩心を見るかのような作品でした。


「ZESHIN展」展示室風景

会期中、一部展示替えがあります。

「ZESHIN展」出品リスト(PDF) 前期:11/1~11/25、後期:11/27~12/16

12月16日まで開催されています。これはおすすめします。

「ZESHIN 柴田是真の漆工・漆絵・絵画」 根津美術館@nezumuseum
会期:11月1日(木)~12月16日(日)
休館:月曜日
時間:10:00~17:00
料金:一般1200円、学生(高校生以上)1000円、中学生以下無料。
住所:港区南青山6-5-1
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A5出口より徒歩8分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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