2011年 私が観た展覧会 ベスト10

ギャラリー編に引き続きます。私が今年観た展覧会の中で印象に残ったものをあげてみました。

「2011年 私が観た美術展 ベスト10」

1.「五百羅漢展 狩野一信」 江戸東京博物館



率直なところ抱一展と迷いましたが、一点一点の作品の密度、そしてスケール、はたまた展示の美しさからも一番に挙げたいのが五百羅漢です。震災で延期となり、開催の行方も懸念されましたが、実現に向けて奔走された方々のご努力にも頭が下がります。まさに一期一会というべき展覧会でした。

2.「酒井抱一と江戸琳派の全貌」 千葉市美術館



メモリアルだからこそ実現した過去最大の抱一展、結局毎週のように通っていたかもしれません。もうあと何点かの代表作が加わっていればと思ったのも事実ですが、私にとってかけがえのない絵師である抱一の魅力を改めて堪能することが出来ました。

3.「特別展 写楽」 東京国立博物館



今年のトーハクも密教美術展など、非常に見応えのある展示が続きましたが、やはりこの写楽展は忘れることが出来ません。僅か10ヶ月の間、まさに社会を駆け抜けて一世を風靡した写楽の全てが集まっていました。

4.「名物刀剣展」 根津美術館



この展覧会で刀に目覚めたような気がします。白く銀色に妖しく刀の煌めきは未だ脳裏から離れません。その美しさには背筋がゾクゾクしました。

5.「トゥールーズ=ロートレック展」 三菱一号館美術館



ロートレックの魅力、そして真髄を初めて見知ったかもしれません。これまで見たこともないような極上の状態のリトグラフ群は画家の才能を明らかにするのに相応しいものでした。

6.「瑛九展」 埼玉県立近代美術館/うらわ美術館



初期から晩年まで網羅された作品群、そして人物像、さらには制作の背景等、一画家の回顧展のお手本とも言えるような内容だったのではないでしょうか。見終えた後の充足感は並大抵ではありませんでした。

7.「高嶺格 とおくてよくみえない」 横浜美術館



一見、奇を衒ったようにも見えますが、美術とは、そして表現とは何なのかという問題などについて、言わば戦略的に問いかけていた展示だったのではないでしょうか。決して使いやすいとは言えない浜美の空間をうまく用いていたのも好印象でした。

8.「モダン・アート,アメリカン」 国立新美術館



コンテンポラリー一辺倒ではない、印象派に始まるアメリカ人の知られざる美術家たちを丹念に紹介した好企画です。ダヴ、スローンらといった画家に出会えたのも大きな収穫でした。

9.「青木繁展」 ブリヂストン美術館



その名前と代表作こそ知れども、これまで断片的にしか追えなかった画家の全体像を知る良い機会となりました。作品はもちろんのこと、病気で衰弱した晩年、死を覚悟して母へ宛てた手紙は心を強く打ちました。

10.「包む - 日本の伝統パッケージ展」 目黒区美術館



日本人が古くから大切にしてきた美意識を再発見出来るような展示ではなかったでしょうか。一つ一つの「包み」にこめられた技、そして宿る魂のようなものにも圧倒されました。

次点.「MOTコレクション 特集展示:石田尚志」 東京都現代美術館

またベストには入れなかったものの、特に感銘を受けた展覧会は以下の通りです。

「ぬぐ絵画」 東京国立近代美術館
「畠山直哉 Natural Stories」 東京都写真美術館
「春日の風景」 根津美術館
「野見山暁治展」 ブリヂストン美術館
「日常/ワケあり」 神奈川県民ホールギャラリー
「アンリ・ル・シダネル展」 埼玉県立近代美術館
「松戸アートラインプロジェクト2011」 松戸駅西口周辺
「モダン・アート,アメリカン」 国立新美術館
「伊東深水展」 平塚市美術館
「松岡映丘展」 練馬区立美術館
「所沢ビエンナーレ引込線 2011」 所沢市生涯学習推進センター/旧所沢市立第2学校給食センター
「彫刻家エル・アナツイのアフリカ」 埼玉県立近代美術館
「空海と密教美術展」 東京国立博物館
「橋口五葉展」 千葉市美術館
「森と芸術」 東京都庭園美術館
「アンフォルメルとは何か?」 ブリヂストン美術館
「不滅のシンボル 鳳凰と獅子」 サントリー美術館
「魅惑のモダニスト 蕗谷虹児展」 そごう美術館
「江戸の人物画 姿の美、力、奇」 府中市美術館
「香り かぐわしき名宝」 東京藝術大学大学美術館
「MOTアニュアル2011」 東京都現代美術館
「グランヴィル - 19世紀フランス幻想版画展」 練馬区立美術館
「福富太郎コレクション 近代日本画にみる女性の美」 そごう美術館
「イメージの手ざわり展」 横浜市民ギャラリーあざみ野
「運慶 - 中世密教と鎌倉幕府 - 」 神奈川県立金沢文庫
「カンディンスキーと青騎士」 三菱一号館美術館
「大正イマジュリィの世界」 渋谷区立松濤美術館

いかがでしょうか。みなさまのベストも教えていただけると嬉しいです。TBとコメントをお待ちしております。

さて今年は3月に震災がありました。あの惨状を前して日常とは何なのかということを自問しなかったことはありません。それに地震災害はもとより、原発事故や節電等、実際の生活もあの日を区切りに変化した部分も多くありました。またそうした状況下で美術を見て拙い感想を書くというブログを続けていくことに色々と迷いがあったのも事実です。更新も滞りました。

今までは当たり前だった平穏無事ということが今年ほど切に感じられたことはありません。実際に今この瞬間も、年末年始、何事もなく無事、平和に送られればと、どこか頭の片隅で思っている自分に気がつきます。月並みで恐縮ですが、今回ほどこの言葉を心から願って言うこともありません。どうか本当に良いお年をお迎え下さい。

この美術と向き合うことの出来る日常を大切にしながら、また来年も良い出会いがあることに期待して、さらに希望をもって年内の更新を終わります。本年もどうもありがとうございました。

*過去の展覧会ベスト10
2010年2009年2008年2007年2006年2005年2004年その2。2003年も含む。)

*関連エントリ
2011年 私が観たギャラリー ベスト10
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2011年 私が観たギャラリー ベスト10

年末恒例のベスト10企画です。今年一年、私が観たギャラリーより特に印象に深かった10個の展示をあげてみました。

「2011年 私が観たギャラリー ベスト10」

1.「第5回 shiseido art egg 今村遼佑」 資生堂ギャラリー



2.「成層圏 vol.5 風景の再起動 宮永亮」 ギャラリーαM



3.「ライアン・ガンダー展」 メゾンエルメス



4.「椛田ちひろ個展」 アートフロントギャラリー



5.「小林史子 Mistletoe」 INAXギャラリー2



6.「森淳一 trinitite」 ミヅマアートギャラリー



7.「Shuffle | シャッフル」 白金アートコンプレックス



8.「山田純嗣展 絵画をめぐって」 日本橋高島屋美術画廊X



9.「妖怪奇譚 金子富之展」 日本橋高島屋美術画廊X



10.「油絵茶屋再現」 浅草寺境内



次点.「青秀祐 マルチロール・ファイター」 eitoeiko

あくまでも私の主観なので順番に深い意味はありませんが、さり気なく置かれた小さなオブジェに生命の息吹を与え、無の空間に驚くべき想像力豊かな世界を現出させた資生堂の今村の個展は今も忘れられません。トリエンナーレに関しては至極残念でしたが、まずはこの個展を第一にしたいと思います。

風景を解体、再生、そしてインスタレーションとして再構成させた宮永のαMの個展も、映像表現の在り方を根本から考え直させられるような内容だったと言えるのではないでしょうか。所々、残像のように浮かび上がる被災地の光景も心に突き刺さりました。

エルメスのガンダー、またINAXの小林史子のインスタレーションも非常に示唆的です。また椛田ちひろと山田純嗣の個展は、これまでの作家の集大成とともに、次の展開を見定めるような内容で見応えがありました。

彫刻が持ち得るであろう可能性を強く引き出したのはミヅマの森淳一展です。また原爆をテーマに据え、写真など、他のメディアからのアプローチを取り入れた展示構成も秀逸でした。

ただならぬ妖気の漂う金子富之の絵画は多くの方に強い印象を与えたのではないでしょうか。率直なところジパング展の際にさり気なく寄ったつもりでしたが、その展示をゆうに上回るほどのインパクトがありました。

白金シャッフル、浅草寺の油絵茶屋は、その展示自体はもとより、企画の妙味にも感心させられることの多い展覧会でした。また油絵茶屋は期間限定でのクローズが惜しまれます。何とか浅草寺以外でも展示される機会があればと思いました。

次点はeitoeikoの青秀祐展です。戦闘機という素材、またそれを模型だけでなく、平面などに展開する意外性もまた魅力ではないでしょうか。航空科学博物館での個展に伺えなかったのは心残りでした。

最後になりましたが、今年も多くの有意義な出会いがありました。改めまして素晴らしい作品を見せて下さった作家さんをはじめ、色々とご配慮下さった画廊の方々に深く感謝申し上げます。本当にどうもありがとうございました。

それでは展覧会編に続きます。

*過去のギャラリー・ベスト10
2010年2009年2008年2007年
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「フェルメールからのラブレター展」 Bunkamura ザ・ミュージアム

Bunkamura ザ・ミュージアム
「フェルメールからのラブレター展」
2011/12/23-2012/3/14



Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「フェルメールからのラブレター展」のプレスプレビューに参加してきました。

このところ日本に作品がやってくることも多いフェルメールですが、1つの展覧会で同時に3点の作品が展示されることはそう滅多にあるわけではありません。

キーワードはタイトルにもあるラブレターです。フェルメールの中でも手紙を書くモチーフをとる作品から3点、「手紙を書く女」と「手紙を書く女と召使い」、そして日本初公開となる「手紙を読む青衣の女」が一同に公開されました。

構成は以下の通りです。

・人々のやり取り - しぐさ、視線、表情
・家族の絆、家族の空間
・手紙を通したコミュニケーション
・職業上の、あるいは学術的コミュニケーション


作品はフェルメールと同時代の17世紀オランダ絵画で占められています。点数は全部で約40点ほどでした。



ともかくフェルメールとあるので、当然ながらそちらばかりに注目が向いてしまいますが、単純なフェルメールの名品展ではないのも今回のポイントかもしれません。

展覧会を貫くテーマが明確です。ずばりそれは『コミュニケーション』です。手紙はもちろん、人の目つきや仕草にはじまり、家族間の結婚の問題、また教師と生徒などの教育、さらには弁護士などのコミュニケーションをモチーフとした作品ばかりが集められています。

そもそも17世紀オランダは識字率が高く、手紙のやり取りも活発だったということですが、こうした絵画を通し、彼の時代のコミュニケーションの有り様を浮き上がらせるような内容だと言えるかもしれません。

今回の展覧会においてフェルメールと並び、見逃すことの出来ない画家と言えば、ピーテル・デ・ホーホ、ヤン・スーテン、そしてヘリット・ダウの3名を挙げられるのではないでしょうか。

まずはホーホです。そもそも彼はフェルメールと全く同じ時期にデルフトに滞在したため、両者の間に交流があったのではないかとも推測されていますが、確かに中庭や室内空間の構図感は、フェルメールとかなり共通する部分があるかもしれません。


右、ピーテル・デ・ホーホ「室内の女と子供」1658年 アムステルダム国立美術館
 
そのホーホの4枚の作品の中でも印象的なのは「室内の女と子供」(1658年)です。デルフトで多く見られたという赤と黒のタイル、そして開け放たれた扉の向こうへと続く室内空間、そして登場する母子の間に流れる静かでゆったりとした時間は、まさにフェルメールを連想させるのではないでしょうか。

一方、同じく家庭を描きながらも、もっと動きのある人物表現を見せるのがヤン・スーテンです。スーテンは日常における行き過ぎた振る舞いを半ば諌めるような道徳的主題をとる作品を多く残しました。


右、ヤン・スーテン「老人が歌えば若者は笛を吹く」1670-75年頃 フィラデルフィア美術館

中でも面白いのが「老人が歌えば若者は笛を吹く」(1670-75年頃)です。このタイトルは当時のオランダの諺、若者は年長者を手本とするという意味を持っていますが、画題にあえて暴飲暴食する年長者を描くことで、スーテンはそれを皮肉めいた形で諌めています。宴に夢中となり、飲めや歌えと大騒ぎをする人々の声までが伝わってくるかのような一枚でした。


ヘリット・ダウ「執筆を妨げられた学者」(左)1635年頃、「羽根ペンを削る学者」(右)1628-31年頃 ともに個人蔵

また15歳でレンブラントの弟子となったダウの作品からは、それこそフェルメールに匹敵するほどの細部の緻密な描写が目を引くのではないでしょうか。「執筆を妨げられた学者」(1635年頃)では、ペンを片手にこちらをふと見やる学者の姿が表されていますが、その周囲の事物、たとえば地球儀や砂時計、またその中の砂などが極めて注意深く描かれています。

このダウやフェルメールしかり、今回に出品のオランダ風俗画は総じて小品が多めです。細かい部分を確認するために単眼鏡があっても良いかもしれません。



さて主役のフェルメールは展覧会中盤につくられたスペースに三方向、それぞれ一つの壁面に1点ずつ展示されています。


ヨハネス・フェルメール「手紙を読む青衣の女」1663-64年頃 アムステルダム国立美術館

中央が日本初公開の「手紙を読む青衣の女」(1663-64年頃)です。本作はフェルメールの得意とするラピス・ラズリの青色が効果的に用いられていますが、それが今回、修復という手段を経て、さらにより際立ちました。

また壁面の白い壁の光の陰影、部分的に青色を用い、左から右へと進む光を示している箇所も見逃せません。そしてその光はテーブルの上の真珠にもあたり、美しい輝きを放っていました。


ヨハネス・フェルメール「手紙を書く女」1665年頃 ワシントン・ナショナル・ギャラリー

それに「手紙を描く女」(1665年)ではフェルメールならではの卓越した光の描写、例えれば空気をまとった柔らかな光とも言えるような表現を見ることが出来ます。


ヨハネス・フェルメール「手紙を書く女と召使い」1670年頃 アイルランド・ナショナル・ギャラリー

「手紙を書く女と召使い」(1670年頃)ではもう少し画面に透明感がありますが、窓から入ってきてカーテンにあたり、ぼんやりと明るくなった光の繊細な移ろいなどは見逃すことが出来ません。

ところでBunkamuraザ・ミュージアムではリニューアルにともないLED照明を一部導入しました。既に京都、また宮城と巡回してきた展覧会ですが、また異なった照明環境で楽しむのも良いのではないでしょうか。

なお会場では「手紙を読む青衣の女」の修復に関する映像のコーナーもあります。図録にも詳細な論文が掲載されていましたが、修復前と修復後の違いについても理解を深めることが出来ました。



それにしても現在、世界に30数点のみしかないフェルメールのうち、一挙に3点が揃う展覧会です。混まないはずがありません。会期早々、この年末年始か、なるべく早めの金曜、土曜の夜間にご覧になられることをおすすめします。なお展覧会会期は元日を除いて無休です。

「もっと知りたいフェルメール/小林頼子/東京美術」

2012年3月14日まで開催されています。

「フェルメールからのラブレター展」 Bunkamura ザ・ミュージアム
会期:2011年12月23日(金・祝)~2012年3月14日(水)
休館:1月1日。それ以外は会期中無休。
時間:10:00~19:00。毎週金・土は21:00まで開館。
住所:渋谷区道玄坂2-24-1
交通:JR線渋谷駅ハチ公口より徒歩7分。東急東横線・東京メトロ銀座線・京王井の頭線渋谷駅より徒歩7分。東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線・東京メトロ副都心線渋谷駅3a出口より徒歩5分。

注)会場の写真の撮影は主催者の許可を得ています。
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お正月は美術館と博物館 2012

先日、東京近辺の年末年始の美術館の休館情報をまとめましたが、それに関連して、年始に様々なイベントが用意されているところがあります。新春の美術館、博物館のイベント情報をまとめてみました。

【東京国立博物館 『博物館に初もうで』 北京故宮博物院200選展 1/2~】



新年特別公開(1月2日~15日。総合文化展にて国宝「秋冬山水図」、重文「風神雷神図屏風」などを展示。)
特集陳列「天翔ける龍」(1月2日~1月29日。本館特別1室、2室にて展示。)
開館140周年記念セレモニー(1月2日、10時より鏡開き。ゲストに女優の中谷美紀。)
開館140周年記念プレゼント(1月2日~9日。各先着1400名に土偶ストラッププレゼント。)
ミュージアムショップ美術書バーゲンセール(1月2日~9日)
ショップ、シアター、レストランからの各種プレゼント企画あり。
和太鼓演奏、獅子舞、 金龍の舞の各イベントあり。

【東京都写真美術館 『写美のお正月』 1/2~】

1月2日は全展覧会無料。1月3日は入場料2割引。
新春フロアレクチャー(出品作家及び学芸員が展示解説。1月2日、3日。各11時半、14時よりスタート。)
おめでとう写美クイズ(空くじなし)
ナディッフバイテン福袋3000円を限定25個で販売。(約2万円相当。)
しゃび雅楽(1月2日、3日。それぞれ13時、15時から。無料。)

【江戸東京博物館 『えどはくでお正月』 平清盛展~ 1/2~】



1月2日、3日は常設展観覧無料。
1月4日~6日は常設展先着200名に「江戸城年始登城風景絵はがき」をプレゼント。
えどはく寄席/邦楽演奏(1月2日~1月9日。5階常設展示室、中村座前にて。)
江戸売り声(1月2日。宝船絵を配布。)
辰年書き初め体験(1月2日、3日。11時より15時半まで。5階体験コーナーにて無料。)
組上絵であそんでみよう→チラシ
ギボちゃん、ぶらぶら町人、タワー・ダンサーズの記念写真、パフォーマンスイベント。

【東京国立近代美術館 ぬぐ絵画展 1/2~】



1月2日は常設展(工芸館を含む)観覧無料。ぬぐ絵画展は特別割引。
初日に来場した場合、同館オリジナルグッズまたは過去展覧会の図録のいずれか1点をプレゼント。(数量限定)

【東京都現代美術館 建築、アートがつくりだす新しい環境/ゼロ年代のベルリン展 1/2~】



1月2日、3日は常設展、及び「クラウドスケープ」が無料。
両日先着50名に美術館オリジナルグッズをプレゼント。

【ブリヂストン美術館 パリへ渡った石橋コレクション 1/7~】



1月8日は無料開館日。学芸員による展示解説、及び島田館長による特別講演あり。

【山種美術館 ザ・ベスト・オブ・山種コレクション後期展示 1/3~】



1月3日には先着45名にプレゼント。また当日入館の場合はもれなく絵葉書1枚と、甘酒の無料サービス。

【川村記念美術館 コレクション展 1/2~】

1月2日、3日は先着50名様にお年賀として粗品を進呈。
1月31日までに友の会に入会した場合は収蔵品カレンダーをプレゼント。

【ポーラ美術館 レオナール・フジタ展 無休~1/15】

1月2日は無料開館日。
当日アンケートに答えた場合、抽選で30名にオリジナルカレンダーをプレゼント。

以上です。まず入館料についての特典ではともかく1/2の写美全館の無料が目を引きます。毎年、結構混雑しますが、ストリート・ライフをはじめとする3展示が全てフリーだけに、やはり狙っている方も多いのではないでしょうか。

また企画展で無料なのは、ポーラ美術館の「レオナール・フジタ展」(1/2)とブリヂストン美術館の「パリへ渡った石橋コレクション」展(1/8)です。その他、常設では江戸博、東近美、都現美がそれぞれ1/2と1/3(東近美は2日のみ)が無料となります。

最後はやはりトーハクです。来年は開館140周年ということで、毎年恒例の「博物館に初もうで」展も、セレモニーを開催するなどしてパワーアップしています。



そしてそこに重なるのが、ちょうど2日にスタートする「北京故宮博物院200選展」です。直前まであまり情報がなく、半ばサプライズ的に登場した大型展ですが、何と言っても今まで中国国外に一度も出たことがなかったという神品「清明上河図」がやってくることもあり、ここに来て俄然、注目が集まっているのではないでしょうか。

同展の公式WEBサイト「清明上河図であそぼう!」でも、その見どころが事細かに紹介されていますが、展示期間も限定されるだけに、初日狙いの方も多いかもしれません。

ちなみに「清明上河図」は無事来日し、本日、報道陣に先行公開されたそうです。(またリストも公開されました。)

国外初出品の「清明上河図」、トーハクへ来たる!(1089ブログ)

これは期待が高まります。ともかく新春はこの「清明上河図」の話題でもちきりとなるかもしれません。私も初日に伺うつもりです。

皆さんのお正月の「美術館初め」はいかがでしょうか。なおお出かけの際は改めて各美術館・博物館のサイトなどをご覧ください。

*関連エントリ(美術館の年末年始の休館情報はこちらへ。)
年末年始の「美術館・博物館」休館情報 2011/2012
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「成層圏 vol.6 村山悟郎」 ギャラリーαM

ギャラリーαM
「成層圏 vol.6 村山悟郎」 
2011/12/17-2012/2/4



ギャラリーαMで開催中の「成層圏 vol.6 村山悟郎」へ行ってきました。

展示概要、作家プロフィールについては同ギャラリーWEBサイトをご参照下さい。

vol.6 村山悟郎 Goro MURAYAMA

現在、東京芸術大学大学院修士課程美術研究科絵画専攻に在籍中の村山ですが、最近ではMOTコレクション(2009年)への出品があった他、資生堂ギャラリー(2010年アートエッグ)で個展を開催しました。

さてその資生堂ギャラリーでは刺繍を取り入れた、言わば「編まれた絵画」が印象に残りましたが、今回はそうした刺繍的な作品2点と、壁画に直接ドローイングを施した2点、計4点の作品が展示されています。


「学習的ドリフト」 織った綿紐にアクリリックペインティング

まず目に飛び込んでくるのが、「学習的ドリフト」と題された刺繍的な作品です。これは素材に『織った綿紐』と記載があるように、村山自身が縦糸と横糸を絡め合わせ、一つの支持体を作り上げながら、そこに色を断片的に配していくというものですが、その展開、ようは天井から床面へと進んでいく平面は、まさに増殖と言うべき有機的な広がりを持ち合わせてはいないでしょうか。

上から段々に連なる白い平面、そして伸びる紐、また点々と断片的に塗られた蛍光色など、それこそ色鮮やかな鳥が羽ばたいているかのような姿も魅力的ではありますが、村山の作品においては制作における一定の様式があるというところも見逃してはいけないのかもしれません。


「学習的ドリフト」(部分) 織った綿紐にアクリリックペインティング

実は村山は制作に先立ち、たとえば糸の組み合わせ、また色数、そしてその面の広がり方などについてのルールを決めています。つまり実際の作品はそのパターン化された様式の反復行為によって出来上がっているというわけでした。

また村山は支持体そのものを変化、生成させていく過程を通して、本来的な絵画の決定要因である支持体の形態から、言わば作品をそのものを解き放っていくということを目指しています。ようは支持体をドローイングと同時に作ることで、その両者にある対立軸のようなものを取っ払っていくということでした。

その発想の原点には、生命システムにおける自己生成、自己形成を論じた「オートポイエーシス」の概念があるそうです。その詳細には踏み込みませんが、オートポイエーシスの構成要素を村山の制作、たとえばキャンバス面やドローイングに当てはめた時、それが一つのルールのもとに自ら生成、円環的に組上げられていくという観点は、確かにシステムの概念に近い部分があるのかもしれません。


「ドローイング/カップリング」 鉛筆、ペン

一方、壁画の「ドローイング/カップリング」にもまたルールが存在します。これは基本的に作家とパートナーの二人一組で制作されたもので、元々のドローイングの線の領域、基本的な単位(形)は自らが指定、そこにパートナーが色をつけるという方法がとられています。


「ドローイング/カップリング」(部分) 鉛筆、ペン

またその過程でエラー、つまりミスが生じることがあるそうですが、それはそのまま残し、エラーによってまた次の新たなパターンを獲得しているのだそうです。エラーがない状態では幾何学模様が続き、エラーが生じるとそこに形の揺らぎが生じ、結果、こうした作品が出来上がったとのことでした。

さて作家とキュレーターの田中正之、そしてオートポイエーシスを論じる研究者の河本英夫(東洋大学文学部教授)のトークイベントが、会期中に開催されます。

トークイベント 2012年1月14日(土)13時30分~15時半
「アートとオートポイエーシスは出会えるか」 田中正之x村山悟郎x河本英夫


そちらを聞かれるのも良いのではないでしょうか。私も出来れば参加するつもりです。

「オートポイエーシス―第三世代システム/河本英夫/青土社」

2012年2月4日まで開催されています。 *年末年始は休廊:12/25~1/9

「成層圏 vol.6 村山悟郎」 ギャラリーαM@gallery_alpham
会期:2011年12月17日(土)~2012年2月4日(土)
休廊:日・月・祝。年末年始(12/25~1/9)
時間:12:00~18:00
住所:千代田区東神田1-2-11 アガタ竹澤ビルB1F
交通:都営新宿線馬喰横山駅A1出口より徒歩2分、JR総武快速線馬喰町駅西口2番出口より徒歩2分、日比谷線小伝馬町駅2、4番出口より徒歩6分。
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「ライアン・ガンダー展」 メゾンエルメス

メゾンエルメス
「ライアン・ガンダー - 墜ちるイカロス:失われた展覧会 - 」
2011/11/13~2012/1/29



メゾンエルメスで開催中のライアン・ガンダー個展、「墜ちるイカロス:失われた展覧会」へ行ってきました。

1976年にイギリスで生まれ、ロンドンで活躍するガンダーは、今年のヴェネチア・ビエンナーレや横浜トリエンナーレでも評判となりましたが、まさかここまでエルメスの空間大きく変化させるとは思いませんでした。

と言っても、何らかの大掛かりなインスタレーションがあるわけではありません。床には肖像画のスケッチやガラスの破片が無数に散乱、また何やら錆び付いた金属の箱がごろんと転がり、さらには壁面には暗幕が掲げられているなどに過ぎません。まずは会場に足を一歩踏み入れた途端、一体何が展開されているのかと気になって仕方ありませんでした。

そしてまさしくその意味あり気に置かれた事物、ようは作品こそが、言わばライアンが来場者に向かって巧妙に仕掛けた一つの罠に他なりません。一見、あまりにも唐突に登場する箱や暗幕に意味が開けてきた時、突如、空間全体が知的遊戯とも言えるようなアイデアに満たされていることが分かります。

それこそ謎解きをするかのように作品を探し、さらにはそれを包みこむかのようにあるフィクションを見出すことこそ、この展覧会の醍醐味というわけでした。

その種は是非とも会場で味わっていただきたいところですが、あえて一つだけとするなら、一つのモニターを用いた「そしてあなたは変わるだろう」(2011年)をあげないわけにはいきません。

ここでは一人の女性がこのエルメスの空間にて一生懸命、何らかの作品の解説をする姿が映し出されています。しかしながらすぐに見て分かる通り、彼女の背景には一つの作品もないがらんとした空間そのものしかありません。

何もない床を指差して解説するなど、実際にはない作品をさもあるようにして振る舞っている様子を追うと、いつしかそこにはないはずの一つの展覧会のイメージが浮かび上がってくるのではないでしょうか。

実はこの女性はエルメスのキュレーターで、解説している展覧会はかつてここで行われたサラ・ジーの個展というわけでした。ここにタイトルにもある「失われた展覧会」が想像上の産物として甦ります。見る側の想像力を喚起させ、パラレルな世界を立ち上がらせるガンダーの魅力ここにありとでも言えるような作品でした。

また表題の「墜ちるイカロス」(2011)も、鑑賞者にそれこそ「もうひとつの現実」(展覧会の覚書より引用)を浮き上がらせる装置なのかもしれません。無味乾燥な白い壁とぽつんと打たれた釘を眺めていた時、普段自分が展覧会で見ているものがいかに不確かであやふやなものなのかと感じられてなりませんでした。

展覧会の写真がGQ JAPANのWEBサイトにアップされています。

「ライアン・ガンダー展がメゾンエルメス8階フォーラムにて開催中」@GQ JAPAN

またガンダーのインタビュー記事がART iTに載っていました。

「ライアン・ガンダー展 プレスカンファレンスインタビュー」@ART iT

あわせてご覧ください。

2012年1月29日までの開催です。これはおすすめします。

「ライアン・ガンダー - 墜ちるイカロス:失われた展覧会 - 」 メゾンエルメス8階フォーラ
会期:2011年11月03日(木)~2012年01月29日(日)
休廊:1月1日、1月2日。
時間:11:00~20:00 *日曜は19時まで。
住所:中央区銀座5-4-1
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅B7出口すぐ。JR線有楽町駅徒歩5分。
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年末年始の「美術館・博物館」休館情報 2011/2012

今年も残すところあと僅かですが、ここで一都三県(東京・神奈川・埼玉・千葉)の美術館、博物館の年末年始の休館情報をまとめてみました。

上野

・国立西洋美術館 12/28~1/1休
 「ゴヤ展」(~1/29)
・国立科学博物館 12/28~1/1休
 「ノーベル賞110周年記念展」(~1/22)
 *「辰年のお正月」:標本資料よりタツに関するものを紹介。1/2、3はミュージアムショップでのプレゼントなど。
・東京国立博物館 12/26~1/1休
 「北京故宮博物院200選」(1/2~)
 *「博物館に初もうで」:新年特別公開、記念セレモニー、お年玉プレゼント、和太鼓演奏、獅子舞など各種イベント多数あり。
・東京藝術大学大学美術館 ~1/29休
 「第60回東京藝術大学卒業・修了作品展」(1/29~)
・上野の森美術館 12/29~1/1休
 「森仁志のあゆみ展」(~1/5)
・東京都美術館 大規模改修工事のため長期休館

丸の内・京橋・日本橋・竹橋・新橋

・東京国立近代美術館 12/28~1/1休
 「ぬぐ絵画」(~1/15)
 *「お年玉企画」:1/2は所蔵作品展無料、「ぬぐ絵画展」の入場料は割引。当日、本館、工芸館に来場した場合、オリジナルグッズか図録1点プレゼント。(数量限定)
・出光美術館 12/19~1/6休
 「三代 山田常山」(1/7~)
・ブリヂストン美術館 12/26~1/6休
 「パリへ渡った石橋コレクション 1962年、春」(1/7~)
 *1/8は無料開館
・三井記念美術館 12/26~1/2休
 「三井家伝来 能面と能装束」(~1/28)
・三菱一号館美術館 12/26~1/16休
 「ルドンとその周辺展」(1/17~) 
・パナソニック電工汐留ミュージアム 12/21~1/13休
 「今和次郎 採集講義展」(1/14~)

六本木・虎ノ門・赤坂・青山

・国立新美術館 12/20~1/10休
 「DOMANI・明日展」(1/14~)、「野田裕示展」(1/18~)
・森美術館・森アーツセンターギャラリー 無休
  森美「メタボリズム展」(~1/15)、森アーツ「歌川国芳展」(~2/12)
・サントリー美術館 12/30~1/1休
 「広重・東海道五拾三次展」(~1/15)
・大倉集古館 12/19~1/1休
 「鼻煙壺 沖正一郎コレクション展」(1/2~)
・泉屋博古館分館 ~1/6休
 「中国青銅芸術の粋」(1/7~)
・ニューオータニ美術館 12/26~31休 
 「新春展」(1/1~)
・根津美術館 12/26~1/6休
 「百椿図 椿をめぐる文雅の世界」(1/7~)

木場・両国

・江戸東京博物館 12/26~1/1休
 「平清盛展」(1/2~)
 *「えどはくでお正月」:1/2、3は常設観覧無料。1/4~6は先着200名に絵はがきプレゼント。また寄席、邦楽演奏イベントあり。
・東京都現代美術館 12/29~1/1休
 「建築、アートがつくりだす新しい環境」(~1/15)、「ゼロ年代のベルリン」(~1/9)
 *1/2、3は常設無料。両日先着50名にオリジナルグッズをプレゼント。

品川・目黒・恵比寿

・原美術館 12/12~1/6休
 「ジャン=ミシェル オトニエル展」(1/7~)
・目黒区美術館 12/28~1/4休
 「めぐろの子どもたち展」(1/14~)
・東京都写真美術館 12/29~1/1、1/4休
 「ストリート・ライフ/新進作家展Vol.10」(~1/29)
 *「写美のお正月」:1/2は入場無料、1/3は観覧2割引。雅楽、レクチャー、クイズイベントなどあり。
・松岡美術館 12/21~1/4休
 「女性美展」(1/5~)
・山種美術館 12/26~1/2休
 「ザ・ベスト・オブ・山種コレクション後期」(1/3~)
 *1/3は先着45名にオリジナルグッズをプレゼント。また入館者全員に絵はがき、甘酒のサービス。
・東京都庭園美術館 リニューアルのため長期休館

新宿・初台

・損保ジャパン東郷青児美術館 12/28~1/6休
 「日本赤十字社所蔵アート展」(1/7~) セガンティーニ展は12/27まで。
・東京オペラシティアートギャラリー 12/26~1/13休
 「難波田史男の15年」(1/14~)

渋谷

・渋谷区立松濤美術館  12/29~1/3休
 「渋谷ユートピア」(~1/29)
・Bunkamuraザ・ミュージアム 1/1休
 「フェルメールからのラブレター展」(~3/14)

板橋・練馬

・板橋区立美術館 12/29~1/3
 「池袋モンパルナス展」(~1/9)
・練馬区立美術館 12/29~1/3休
 「森井荷十コレクション展」(1/8~)

世田谷

・静嘉堂文庫美術館 ~2/3休
 「サムライたちの美学」(2/4~)
・世田谷美術館、五島美術館 改修工事のため長期休館

多摩地区

・三鷹市美術ギャラリー ~1/6休
 「フェアリー・テイル」(1/7~) 
・府中市美術館 12/29~1/3休
 「石子順造的世界」(~2/26)
・町田市立国際版画美術館 12/28~1/4休
 「新収蔵展/田中陽子展」(1/5~)
・八王子夢美術館 12/29~1/3休
 「版画に見る印象派」(~1/29)
・村内美術館 12/28~1/2休

神奈川

・横浜美術館 12/29~1/3休
 「松井冬子展」(~3/18)
・神奈川県立近代美術館(葉山・鎌倉) 12/29~1/3休
  葉山館「ペリアン展」(~1/9)、鎌倉館「ベンシャーン展」(~1/29)
・そごう美術館 12/29~1/1休
 「後藤純男展」(1/2~)
・横須賀美術館 12/29~1/3休
 「児童生徒造形作品展」(1/14~)
・ポーラ美術館 無休
 「レオナール・フジタ展」(~1/15)
 *1/2は無料開館 
・平塚市美術館 改修工事のため長期休館

埼玉

・埼玉県立近代美術館 12/27~1/6休
 「アンリ・ル・シダネル展」(~2/5)
・うらわ美術館 12/27~1/4休
 「アートとブックのコラボレーション展」(~1/22)

千葉

・千葉市美術館 12/29~1/3休
 「瀧口修造とマルセル・デュシャン」(~1/29)
・DIC川村記念美術館 12/25~1/1休
 「コレクション展」(~1/13)
・国立歴史民俗博物館 12/27~1/4休
 「風景の記録展」(~1/15)
・ホキ美術館 12/30~1/1休
 「存在の美展」(~5/20)

以上です。年末年始に加え、展示替えのために、やや長い休館期間となる美術館もあるようです。一方で森美術館とポーラ美術館は年末年始のお休みがありません。またお休みが短いのがフェルメール展開催中のBunkamura・ザ・ミュージアムです。元日以外は全て開館します。



「博物館に初もうで」@東京国立博物館 2012/1/2~1/29 *イベント・セレモニーは1/2、3。

お正月企画ではやはり東京国立博物館の「博物館に初もうで」が話題を集めるのではないでしょうか。私もここ数年はいつも、2日にトーハクへ行っていますが、今年は何と言っても話題の「清明上河図」がやってくる「特別展 北京故宮博物院200選展」の初日と重なります。



「特別展 北京故宮博物院200選展」@東京国立博物館 2012/1/2~2/19 *「清明上河図」の展示期間は1/2~24。

毎年、初もうで展はそう滅多に混雑することはありませんが、今回はひょっとすると大変なことになるのかもしれません。

また2日には写美全館、ポーラ美術館、及び東近美と都現美の常設展が無料になります。さらに8日はブリヂストン美術館が無料です。こちらを狙っている方も多いのではないでしょうか。

記載ミスなどあるかもしれません。お出かけの際は改めて各美術館・博物館のWEBサイトをご参照下さい。

*関連エントリ(美術館のお正月企画などをまとめてあります。)
お正月は美術館と博物館 2012
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フェルメールからのラブレター展(東京 Bunkamura)、開幕!

いよいよ、本日12月23日よりBunkamura ザ・ミュージアムにて「フェルメールからのラブレター展」が始まります。



既に先行した京都、仙台でも大きな話題となりましたが、ともかく今回の目玉は、日本初公開の「手紙を読む青衣の女」の他、フェルメールの3点の作品に他なりません。


ヨハネス・フェルメール「手紙を読む青衣の女」1663-64年頃 アムステルダム国立美術館

特に「手紙を読む青衣の女」は、2010年より約1年間、現地にて修復が行われた後、オランダ本国を含め、初めて展示される作品です。フェルメールの得意とする繊細な光の描写がより美しい形で蘇りました。


ヨハネス・フェルメール「手紙を書く女と召使い」1670年頃 アイルランド・ナショナル・ギャラリー

総出品数は約50点、その全てが17世紀オランダ風俗画ですが、展覧会タイトルに『ラブレター』とあるように、手紙にまつわる作品が多いのも特徴です。



それにしてもこのラブレター展を皮切りに、来年の東京都美術館でのマウリッツハイス展(真珠の耳飾りの少女)、そして国立西洋美術館でのベルリン国立美術館展(真珠の首飾りの少女)と、フェルメール絡みの展覧会が続きます。



マウリッツハイス美術館展記者発表会(拙ブログ)
フェルメール「真珠の首飾りの少女」初来日決定。(弐代目・青い日記帳)

既にフェルメールは押しも押されぬ大人気の画家ですが、その熱気もまたさらに高まってくるのかもしれません。


ヨハネス・フェルメール「手紙を書く女」1665年頃 ワシントン・ナショナル・ギャラリー

さて本日、展示に先立って行われたプレス内覧会に参加してきました。その内容についてはまた後日まとめます。

「フェルメールからのラブレター展」 Bunkamura ザ・ミュージアム
会期:2011年12月23日(金・祝)~2012年3月14日(水)
休館:1月1日のみ
時間:10:00~19:00。12/30、12/31を除く毎週金・土曜日は21:00まで。(入館は各30分前まで)
主催:Bunkamura、テレビ朝日、朝日放送、博報堂DYメディアパートナーズ
協力:朝日新聞社
協賛:大和ハウス工業株式会社



フェルメールと名の付いた展覧会で混まなかった例は殆どありません。京都展も会期末は大変な行列が出来たと聞きました。まずはいつも以上にお早めの観覧をおすすめします。

注)写真の撮影と掲載は主催者の許可を得ています。
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「カンノサカン個展 クォンタイズ」 ラディウム-レントゲンヴェルケ

ラディウム-レントゲンヴェルケ
「カンノサカン個展 クォンタイズ」
12/2-12/24

ラディウム-レントゲンヴェルケで開催中の「カンノサカン個展 クォンタイズ」へ行ってきました。



カンノサカンと言えば、光沢感のある支持体をバックに、自由な線があたかも空間を舞うかのように進む平面の印象が強くありましたが、今回の新作はそこから大きく深化したと言えるのではないでしょうか。

一目見て驚かされるのは、その有機的でかつ即興的だった平面に、何らかの幾何学的な図像が浮かび上がっていることです。



うねり、またひしめき合う線は時にスパッと切られ、それによって個々のグリットは別のものとして自立しています。線は全体を構築する形に支配されています。そのイメージは三次元的ですらありました。

また色も多様です。偏光パールを用いたという大作からはまさに七色の光が発せられています。ここは見る角度をかえて楽しみたいところでした。



これまでにも何度か作品に変化を加えてきたカンノサカンですが、今回ほど意表を突かれたことはなかったかもしれません。要注目です。

12月24日まで開催されています。

「カンノサカン個展 クォンタイズ」 ラディウム-レントゲンヴェルケ
会期:12月2日(金)~12月24日(土) 
休廊:日・月・祝
時間:12:00~20:00
住所:中央区日本橋馬喰町2-5-17
交通:JR馬喰町駅より徒歩4分、JR・都営浅草線浅草橋駅より徒歩4分。
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「青木良太展」 六本木ヒルズA/D GALLERY

六本木ヒルズA/D GALLERY
「青木良太展」
2011/12/6-2012/1/10

六本木ヒルズA/D GALLERYで開催中の「青木良太展」へ行ってきました。



メタボリズムや国芳展でも大いに盛り上がる森美術館、森アーツセンターギャラリーですが、その玄関口、チケットブースのある森タワー3階「アート&デザインストア」にて、新進気鋭の陶芸家の個展が開かれていることをご存知でしょうか。



それが青木良太展です。青木は一度、TBSの情熱大陸でも特集されたのでそちらで名前を知った方も多いかもしれません。1978年に富山で生まれ、和をテーマとした食器を作り続けてきた青木は、既に国内外のギャラリーで展示を重ねてきましたが、かねてよりヒルズのストアにて作品を販売していた縁もあり、ここA/D GALLERYで個展を開催することになりました。



写真を見ても一目瞭然、ホワイトキューブにも映えるカラフルな器の美しさにひかれる方も多いのではないでしょうか。青木は陶という素材にこだわりながらも、釉薬の研究に取り組むなどして、多様な質感をたたえた器を制作してきました。



薄手でかつ緩やかな曲線、また軽やかでシンプルな造形は、それこそルーシー・リーやコパーを思わせる面もあるかもしれません。白や黒やシルバーはもとより、時に蛍光色とも見間違えるような鮮烈な色味を取り込む点も、また青木の魅力ではないでしょうか。まさに洗練という言葉がぴったりでした。



また今回の個展とあわせ、もう一つ興味深いのが、ショップ内で展開された青木のコーナーです。こちらもギャラリーの作品と同様、全て購入可能ですが、お値段も数千円からと実にお手頃な器が揃っています。こうしたコーヒーカップや小皿などを、言わば日常的に愛でるのも良いかもしれません。



ちなみに青木はフリスクが大好きとのことで、なんと「フリ出し」と呼ばれるフリスク専用の器まで制作しています。こちらは茶道具の棗を思わせるデザインではないでしょうか。



またステックタイプのフリスク入れには、PORTERと提携し、布製のカバーも販売されています。吉田カバンのWEBサイトでも紹介されていました。

陶芸家 青木良太×PORTER

かつて代官山のTKGで見た密教法具を連想させるオブジェも神秘的でしたが、こちらは基本的に器メインの展示です。気軽に楽しめました。

2012年1月10日まで開催されています。

「青木良太展」 六本木ヒルズA/D GALLERY
会期:2011年12月06日 ~ 2012年01月10日
休廊:無休
時間:12:00~20:00
住所:港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー ウェストウォーク3F
交通:東京メトロ日比谷線六本木駅1C出口徒歩5分(コンコースにて直結)。都営地下鉄大江戸線六本木駅3出口徒歩7分。

注)写真の撮影と掲載は主催者の許可を得ています。
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「森淳一 trinitite」 ミヅマアートギャラリー

ミヅマアートギャラリー
「森淳一 trinitite」
11/24-12/24



ミヅマアートギャラリーで開催中の森淳一個展、「trinitite」へ行ってきました。

展示概要、作家プロフィールなどは同ギャラリーのWEBサイトをご覧ください。

「森淳一:trinitite」/プロフィール@ミヅマアートギャラリー

1996年に東京芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了後、現在、同大学で准教授をつとめる森淳一は、これまでvoid+での個展の他、ジパング展、MOTアニュアル展(ともに2010年)などのグループ展に参加してきました。なおミヅマでの個展は今回が初めてだとのことです。

さてミヅマのメインのホワイトキューブにそびえ立つ一体の木彫像を見て、その何とも言い難い迫力、また神秘的なまでの姿に、思わず息をのんだ方も多いのではないでしょうか。

三面の一体、亡骸となった顔を三方に向け、何とか毅然に振る舞わんとばかりに立っているのは、展覧会タイトルにもなった「trinitite」と呼ばれる人物の立像でした。

茶色に焦がれた皮膚の表面は爛れ、また目は窪み、さらに歯が剥き出しになっているほどぼろぼろに朽ち果てていますが、よく見るとそれこそ仏像を思わせるかのような隆々たる襞を靡かせた下半身の着衣にまで、細かな穴があいていることが見て取れるではありませんか。

一体、この像は何を表しているのか、そしてここに漂う死の気配は何に由来するのかということを強く思わざるにはいられませんでした。

その答えは同じく作品タイトルにありました。詳細は上記ギャラリーのリンク先をご参照いただきたいところですが、「trinitite」とは1945年にアメリカで起きた人類初の核実験、トリニティ実験の際に生成した人工鉱物の名を指し示しています。そしてそれと同種の爆弾が長崎に投下されました。

つまり原爆がテーマです。長崎に生まれた作家の森は、この痛ましい事件に目を向け、今回、改めて原爆と向き合う一連の作品に取り組みました。

そしてその『一連の作品』と言うのには訳があります。作品は「trinitite」にとどまりません。長崎の教会の被爆マリアをモチーフとした顔像「shadow」の他、また原爆実験で用いられた研究所を模した写真など、森は様々なアプローチをとることで、この原爆というテーマを複層的に掘り下げていきました。

和室に置かれた「shadow」から発せられた受ける哀しみとも苦しみともとれる感情は、まさに原爆の悲劇性を告発しているのではないでしょうか。また先の「trinitite」同様、マリアも中がくり抜かれています。その闇の深淵さには思わず吸い込まれてしまうほどでした。

元々、森の作品は、その彫像自体の技巧云々だけでも十分に見応えがありますが、今回はテーマの設定、また多様な表現など、展示全体として捉えても高い完成度だったと言えるのではないでしょうか。比較は意味をなしませんが、あえて言えば、少なくとも私の印象は、2010年に拝見したアニュアル展をゆうに上回りました。



なお会期末、12月23日の祝日金曜日には、ジャーナリストの高瀬毅氏とのトークイベントがあるそうです。

森淳一×高瀬毅氏 対談 「残像-ナガサキ」
日時:2011年12月23日(祝・金) 14時~(1時間半程を予定。)
場所:ミヅマアートギャラリー
無料/予約不要 *23日は祝日開廊。(11時~17時)

もはや神々しいとさえ言える「trinitite」の姿は、未だ頭から離れることがありません。是非、会場へ足を運んでみて下さい。

12月24日までの開催です。断然におすすめします。

「森淳一 trinitite」 ミヅマアートギャラリー
会期:11月24日(木)~12月24日(土)
休廊:日・月・祝
時間:11:00~19:00
住所:新宿区市谷田町3-13 神楽ビル2階
交通:東京メトロ有楽町線・南北線市ヶ谷駅出口5より徒歩5分。JR線飯田橋駅西口より徒歩8分。
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「没後150年 歌川国芳展」 森アーツセンターギャラリー

森アーツセンターギャラリー
「没後150年 歌川国芳展」
2011/12/17~2012/2/12 *前期:2011/12/17~2012/1/17、後期:2012/1/19~2/12



これぞ国芳展の決定版です。森アーツセンターギャラリーで開催中の「没後150年 歌川国芳展」のプレスプレビューに参加してきました。

さすがに人気の浮世絵師ということもあり、古くは東京ステーションギャラリーでの暁斎との二人展、また最近では府中市美術館での展示など、折に触れて見る機会もあった国芳ですが、今回ほどのスケールで開催されたことは今まで殆どありませんでした。



出品数は怒涛の全400点です。(前後期で総入れ替え。)会場には新発見、初公開を含む、主に国内の個人蔵の肉筆、版本、そして錦絵がずらりと勢揃いしていました。

章立ては以下の通りです。

第1章「武者絵」 みなぎる力と躍動感
第2章「説話」 物語とイメージ
第3章「役者絵」 人気役者のさまざまな姿
第4章「美人画」 江戸の粋と団扇絵の美
第5章「子ども絵」 遊びと学び
第6章「風景画」 近代的なアングル
第7章「摺物と動物画」 精緻な彫と摺
第8章「戯画」 溢れるウィットとユーモア
第9章「風俗・娯楽・情報」

簡潔で分かりやすいテーマ別の構成です。国芳を人気浮世絵師へと引き上げた「水滸伝」シリーズなどの役者絵を筆頭に、美人画や風景画、そして動物画や戯画などへと続いていました。

冒頭の武者絵から奇想の国芳全開モードです。1827年に出版された「通俗水滸伝豪傑百八人之一個」は、当時の水滸伝ブームにものり、それまであまり注目されなかった国芳を一大スターへとのしあげました。

また前半で注目したいのは、ど迫力ワイド画面の大判3枚綴りのシリーズです。


左、「宮本武蔵の鯨退治」 右、「相馬の古内裏」

おなじみの「相馬の古内裏」と「宮本武蔵の鯨退治」の揃い踏みに思わずぞくぞくしてしまったのは私だけでしょうか。

なお写真ではわかりにくいかもしれませんが、今回の出品作の状態はかなり良好です。国芳といえば、とかく大胆極まりない構図と、それこそ目に突き刺さんばかりの鮮やかな色に魅力があるだけに、美しい摺が揃っているというのもまた嬉しいところでした。



それに細かいところかもしれませんが、役者絵や説話など、とりわけ極彩色を多用した作品のコーナーの壁は黒です。その色味が効果的に引き立ちます。画面にぐいぐいと引き込まれました。

さて国芳といえば金魚、そして猫を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、そこでも特に注目すべき作品がいくつかあります。

それがともに新発見、初公開となる「金魚づくし」(注:後期展示)と、猫に由来するたとえを戯画に仕立てた「たとゑ尽の内」の三枚組です。

「金魚づくし」ではこれまで確認されていた8例の他に新たにイタリアで見つかったもう1例が、またバラバラに3枚別れていた「たとゑ尽の内」が初めて一枚物として展示されました。



これまでにも国芳展は何度かあったため、ともすると既視感を覚えてしまうかもしれませんが、今回はこうした新出を含む、あまり見たことのない珍しい作品があるのもポイントではないでしょうか。

ともかく大変なスケールの展示であるので、内容を細かに追っていくとキリがありませんが、私として興味深かったのは風景画における国芳の先取性です。

幕末という時代もありますが、国芳はオランダの銅版画挿絵をもとに、いくつかの洋風風景画を描きました。


左、「近江の国の勇婦於兼」

会場ではその例として、元になった銅版画のパネルと国芳の実際の版画が比較展示されています。この「近江の国の勇婦於兼」の背景の山々はニューホフの銅版画に由来するそうですが、パネルと見比べても元絵の描写にかなり迫っているのではないでしょうか。



また錦絵ではなく摺物、ようは私的な注文制作の非売品の版画の他、肉筆も数点出ている点も見逃せません。


左、「しんば連 魚かし連 市川三升へ送之」 右、「花車 五節句賛」

摺物ならではの繊細な描線、そして瑞々しい色をじっくりと味わうことが出来ました。


左、「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」 右、「としよりのよふな若い人だ」

諧謔味こそ国芳画の真骨頂なのかもしれません。ちらし表紙の「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」などのはめ絵から影絵に文字絵、そして彼の愛した動物、とりわけ猫らの登場する一連の戯画は、やはり展覧会のハイライトと言えるのではないでしょうか。

この膨大な出品作を前にするとあれこれ迷ってしまいますが、もし国芳この一点とするならやはり「宮本武蔵の鯨退治」をあげたいと思います。

画面か飛び出してくるといわんばかりの躍動感溢れる鯨の迫力は比類がありません。そういえば私が国芳を初めて意識したのは、いつぞやの展示でこの作品を見てからのことでした。 ちなみに前期中はこの鯨をモチーフとした力作がもう一点、出品されています。そちらも是非探してみて下さい。



なお初めにも触れましたが、展示はごく一部を除き、会期途中で作品がほぼ全て入れ替わります。 (出品リスト

前期:2011年12月17日(土)~2012年1月17日(火)
後期:2012年1月19日(木)~2月12日(日)

前後期の二期制です。十分にご注意下さい。

細かく区切ったパーティションも浮世絵の展示によく合っているのかもしれません。作品の量からしても、森アーツとしては異例とも言えるほど濃密な空間が出来上がっています。六本木と国芳の組み合わせは悪くありません。若い客層が多いだけに、他の博物館なりでの浮世絵展とはまた違った話題を集めるのではないでしょうか。 なお先行した大阪展では約12万名もの入場者が押し掛けたそうです。



画面の小さな浮世絵、とりわけ細部にウイットに富んだ工夫をこらす国芳画のことです。遠くから眺めてもあまり面白くありません。空いている環境がベストです。まずは会期のはじめか、比較的混雑しない夜間で観覧されることをおすすめします。なお今回の展観で森アーツセンターは火曜日を除き、連日20時まで開館しています。

「もっと知りたい歌川国芳/東京美術」

なおキャプションはあまり付いていません。一点一点の解説は図録に当たった方が良さそうです。

2012年2月12日までの開催です。ずばりおすすめします。

「没後150年 歌川国芳展 幕末の奇才浮世絵師」 森アーツセンターギャラリー
会期:前期、2011年12月17日(土)~2012年1月17日(火)。後期、2012年1月19日(木)~2月12日(日)。
休館:2012年1月18日(水)*展示替え日
時間:11:00~20:00 *但し火曜日は17時まで。
住所:港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
交通:東京メトロ日比谷線六本木駅1C出口徒歩5分(コンコースにて直結)。都営地下鉄大江戸線六本木駅3出口徒歩7分。

注)写真の撮影と掲載は主催者の許可を得ています。
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「福島淑子展 spring snow」 GALLERY MoMo 六本木

GALLERY MoMo 六本木
「福島淑子展 spring snow」
11/26-12/24



GALLERY MoMo 六本木で開催中の福島淑子個展、「spring snow」へ行ってきました。

展示概要、作家プロフィールなどは同ギャラリーのWEBサイトをご覧ください。

「福島淑子展 spring snow」@開催中の展覧会 六本木

2009年に武蔵野美術大学の造形学部油絵学科を卒業後、2007年にはシェル美術賞のグランプリを受賞、また主にここギャラリーモモで個展を重ねてきました。



さて軟体とでも称せるような個性的な人物を描く福島ですが、今回の一連の新作がこれまでよりもどこか物憂げな印象がしたのは私だけでしょうか。

お馴染みの暗がりのある空間を背景に登場する子どもたちは、いずれもが虚ろな表情で前を見据え、また時には鋭い目線をもってこちらを見据えています。



簡素化された造形はまさに図像的とも言えるような人物を象っていますが、その表情に言わば子どもらしからぬ迷いやためらいの表情が感じられてなりません。



とりわけややうつむき加減の一人の少年の姿が忘れられませんでした。彼は一体、何を思って、その潤んだ瞳を下へ向けているのでしょうか。

以前、2007年のシェル展などで拝見した時は、歪んだ人物のシュールな表現が印象的でしたが、今回の近作、また最新作は、人物そのもののフォルムがかなり明瞭になってきています。それこそ個々に登場する人物の面持ち、また思いをダイレクトに示すように変化しているのかもしれません。

12月24日まで開催されています。

「福島淑子展 spring snow」 GALLERY MoMo 六本木
会期:11月26日(土)~ 12月24日(土)
休廊:日・月・祝
時間:12:00~19:00
場所:港区六本木6-2-6 サンビル第三 2階
交通:東京メトロ日比谷線六本木駅1b出口からすぐ(麻布警察署裏)。東京メトロ日比谷線・都営地下鉄大江戸線六本木駅3番出口より徒歩3分。
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「アンリ・ル・シダネル展」 埼玉県立近代美術館

埼玉県立近代美術館
「アンリ・ル・シダネル展」
2011/11/12-2012/2/5



20世紀初頭、フランスで活躍したアンティミストの画家、アンリ・ル・シダネル(1862~1939)の画業を展観します。埼玉県立近代美術館で開催中の「アンリ・ル・シダネル展」へ行ってきました。

フランスで「親愛」や「親密」を意味するというアンティームですが、シダネルは身の回りの自然、草木や花々、そして日常の風景などを一生涯に渡って抒情的に描き続けました。

この展覧会ではそうしたシダネルの画業を、主に彼が生活し、また旅した地域にスポットを当てて振り返ります。 フランス、オランダ、及び日本国内の美術館より集められた約70点の油彩画、及びリトグラフが一堂に会していました。

展覧会の構成は以下の通りです。

第1章 自画像
第2章 エタプル
第3章 人物像
第4章 オワーズ県の小さな町々
第5章 取材旅行
第6章 ブルターニュ地方
第7章 ジェルブロワ
第8章 食卓
第9章 ヴェルサイユ


旅する画家とも称されるシダネルですが、父は船乗りであるなど、海と密接に関わっていた一家で育ちます。 1862年にモーリシャスで生まれた彼は10歳の時にフランスへ移住し、1880年にはカバネルの私塾へと入門しました。

若かりしシダネルの才能を伺えるのは、冒頭に展示された16歳の頃の自画像です。ここで彼は鉛筆によって極めて写実的に自身の姿を捉えています。柔らかいタッチによる髪の毛をはじめ、巧みな陰影で生み出された立体感など、早くも画家として自立し得るかのような表現力で驚かされました。

旅するシダネルが最初に見つけた土地はピカルディ地方、北海にほど近いエタプルです。ここで彼は今後、生涯追い求めることになる『微妙な光』に反応、またミレーの感傷的な写実表現に影響されて、早くも独自の画風を展開していきました。

またシダネルで重要なのは象徴主義との関わりです。彼は光の効果、とりわけ夕方の光に着目して様々な風景を描きましたが、1898年にはロダンバックの「死の都」でも有名なブリュージュに滞在し、象徴派的な表現を吸収していきました。

元々、シダネルはモネ、スーラなど、印象派から新印象派に学んだ画家です。もちろんそれは確かに光の取り込み方や色彩感などでも見てとれますが、やはり表現の志向としては象徴派として捉えても差し支えないのかもしれません。


「月明かりのなか輪舞」 1899年 個人蔵

そうしたシダネルの象徴派的な側面を伺わせるのが、「月明かりのなか輪舞」(1899年)です。得意とする薄暗い月明かりのもと、何やら輪になって踊る女性たちが描かれていますが、どこかラトゥールやカリエールのような印象を与えるのではないでしょうか。

この静謐でかつ幻想的な作風こそ、シダネルの真骨頂といえるのかもしれません。

そして何と言ってもシダネルの描いた風景で忘れられないのが水辺、とりわけ街の運河を表した作品群です。


「運河(アミアン)」 1901年 個人蔵

「運河(アミアン)」(1901年)では運河越しに佇む街の夕景が描かれています。うっすらと紫色がかった空をはじめ、水面に映る街などは、いかにもシダネルならではの表現ですが、人気のない街の中にも窓から明かりがこぼれ、それがどこか温かみのある印象を与えているのも重要なところです。


「運河(ムイ)」 1904年 個人蔵

またシダネルは水辺の街を好んで旅しましたが、うちワイルドが幽閉されたベルヌーヴァルにも滞在し、そこでワイルドへのオマージュとなる「月明かり」(1903年)も制作しました。

またシダネルは1914年、ビエンナーレにも参加するために、ブリュージュと同様、運河の張り巡らされた水の街ヴェネツィアへと向かいました。

月明かりと運河、そして人気のない街における窓からこぼれた明かりこそ、シダネルの十八番と言えるかもしれません。

さて旅人シダネルにおいて最も重要な街とは、かつてフランスとイギリスが500年にも渡って覇権を争った地としても有名なジェルブロワです。


「教会の下の家、黄昏(ジェルブロワ)」 1934年 トロワ美術館

彼は1901年、中世の影を色濃く残すこのパリ北方の村に住居を構え、自宅の庭はおろか、村全体を薔薇で覆い尽くそうと努力しました。

というわけで、展覧会の後半は薔薇です。時に空間を埋め尽くさんとばかりに咲き誇る薔薇を取り込んだ作品が数多く登場します。


「離れ屋(ジェルブロワ)」 1927年 ひろしま美術館

ちらし表紙を飾る「離れ屋(ジェルブロワ)」(1927年)の美しさに目を奪われた方も多いのではないでしょうか。

それこそ明かりの灯る東屋を取り囲むかのように薔薇が咲き乱れています。薔薇と建物とが調和するかのような、言わば生活と自然とが親密な関係を結んでいる光景こそ、シダネルの求めた理想郷だったのかもしれません。

またアンティミストとしてのシダネルは、この後半生の方が強く出ています。

彼はジェルブロワの中庭のテラスで好んで食事をとったそうですが、その食卓を何点も描きました。


「室内(ジェルブロワ)」 1903年 ブローニュ=シュル=メール、シャトー美術館

もちろんそこにはこれまでと同様、人は殆ど描かれていません。また時に室内の食卓も描きましたが、残されたテーブルの上のグラスや皿に瓶など、どこかいないはずの人の気配の名残を感じさせる静謐な風景は、かのハンマースホイを思わせるものすらありました。


「青いテーブル(ジェルブロワ)」1923年 ラーレン(オランダ)、シンガー美術館

初めにも触れたスーラの表現云々は、この時期の作品からも見てとることが出来るかもしれません。 「青いテーブル(ジェルブロワ)」(1923年)における点描的表現はかなり大胆と言えるのではないでしょうか。

また晩年、ヴェルサイユを愛したシダネルはかの地をたくさん描きましたが、宮殿には目もくれず、ただひたすらに庭のみに関心を向けていたそうです。

そしてこの時期の作品で衝撃的なのが「月夜」(1929年)に他なりません。地平にヴェルサイユの庭の円形の噴水を描き、その上め高らかにのぼる月、そして明かりは、まさしく神々しいまでの威厳に満ち溢れていました。


「広場(ブリュッセル)」1934年 ラーレン(オランダ)、シンガー美術館

これまでにもシダネルは象徴派展などで単発的に見る機会がありましたが、こうした回顧展は何と日本では初めてとのことです。象徴派好きにとってはたまらない展覧会でもありました。

なお本展は巡回展です。埼玉展以降、以下のスケジュールで巡回します。

京都展:美術館「えき」KYOTO 2012年3月1日~4月1日
東京展:損保ジャパン東郷青児美術館 2012年4月14日~7月1日
広島展:ひろしま美術館 2012年7月7日~9月2日

交通便利な新宿の損保で見るのももちろん良いかもしれませんが、ここは自然、花を描き続けたシダネルの展覧会です。 周囲を緑に囲まれた埼玉県美には相応しい企画だと言えるのではないでしょうか。スペースにも余裕があります。ゆったりとした気持ちでシダネルの美しい絵画を楽しむことが出来ました。

来年、2012年の2月5日までの開催です。おすすめします。

「アンリ・ル・シダネル展」 埼玉県立近代美術館
会期:2011年11月12日(土)~2012年2月5日(日)
休館:月曜日。但し11月14日、1月9日は開館。年末年始(12月27日~1月6日)
時間:10:00~17:30
住所:さいたま市浦和区常盤9-30-1
交通:JR線北浦和駅西口より徒歩5分。北浦和公園内。
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「興梠優護 boiling point」 CASHI

CASHI
「興梠優護 boiling point」
12/2-12/24

CASHIで開催中の興梠優護個展、「boiling point」へ行ってきました。


「/ 03」2011 oil on canvas

展示概要、及び作家プロフィールについてはギャラリーWEBサイトをご覧ください。

興梠優護「boiling point」/プロフィール@CASHI

2008年に東京藝術大学大学院の美術研究科絵画専攻版画研究領域を修了後、主に都内の画廊での個展やグループ展などに出品を重ねてきました。

さて時にネット上のポルノ画像を引用し、裸体の女性などを色彩を溶け込ませるかのようなタッチで描く興梠(こひろぎ)ですが、その魅力はまたここにきて高まっているのかもしれません。

元々、クリーム色を基調とした色彩の渦、そしてイメージの流れ出すようなタッチ、さらにどこか抽象を思わせる色面そのものに、他のペインターには見ることのない独自性を感じましたが、それはより複雑にかつ大胆になっていたのではないでしょうか。


「□ 04」2011 oil on canvas

背景も全てが渾然一体、色と形が溶解して出来たヌードの女性は、それこそポルノ由来もあってか、まさに剥き出しのエロス、言わば過剰なまでに生々しい性のエネルギーが発露しています。

しかしながらその他、人物以外の素材を取り込んだ作品など、モチーフ自体にもバリエーションが豊富になっている点も見逃せません。いわゆる官能一本ではない、先にも触れた表現における抽象としての面白さもあるのではないでしょうか。

として見ると、表面にはいくつかの処理が施され、より深みのある画面が追求されているのが分かるかもしれません。あたかもリヒターの絵画を思わせる部分も散見されました。


「/ 02」2011 oil on canvas

しかしモチーフを通り越してタッチ自体、言い換えればその筆の動きと色そのものがこれほど肉感的であるのもあまり例がないかもしれません。それこそ絵具そのものがキャンバス上で身悶えしているかのようでした。

2008年、同ギャラリーでの二人展で作品と初めて出会った時も、ただならぬ気配に驚いたものでしたが、再びまとまった形で見ることが出来て喜びもひとしおでした。

12月24日まで開催されています。おすすめします。

「興梠優護 boiling point」 CASHI
会期:12月2日(金)~12月24日(土)
休廊:日・月・祝
時間:11:00~19:00
住所:中央区日本橋馬喰町2-5-18
交通:JR線・都営浅草線浅草橋駅A2出口より徒歩4分。JR線馬喰町駅・都営新宿線馬喰横山駅C4出口より徒歩4分。
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