『隔週刊 古寺行こう』刊行記念 オンライン配信「興福寺 寺宝をめぐる旅」

3月8日に1号『法隆寺』と2号『東寺』が同時発売された小学館『隔週刊 古寺行こう』(全40巻)。その刊行を記念した文化講演会「興福寺 寺宝をめぐる旅」が、YouTubeの小学館チャンネルにて動画配信されています。



文化講演会「興福寺 寺宝をめぐる旅」オンライン配信
第1回「奈良時代の建築」編
第2回「奈良時代の仏像」編
第3回「鎌倉時代の建築」編
第4回「鎌倉時代の仏像」編
https://dps.shogakukan.co.jp/jihowomegurutabikofukuji

案内役をつとめるのは、『隔週刊 古寺行こう』でもコラム「寺院建築の見方」を連載中の橋本麻里さん。動画は全部で4本で、各回約10分ほどの内容です。いずれもYouTubeより無料にて視聴できました。



まず第1回の「奈良時代の建築」では、2018年に再建された中金堂を背景に、興福寺寺務老院の多川俊映さんを迎え、すべての自然や肉体といった存在も心の現れであるという唯心、つまり法相の教えについて紹介していました。また五重塔の調査や西金堂の発掘など、今後の再建事業についても触れていて、天平のすがたを取り戻そうとする興福寺の取り組みについて知ることができました。



第2回の「奈良時代の仏像」は、食堂の跡地に建てられた国宝館へと場所を移し、創建時の奈良時代に作られた『八部衆』や『十大弟子』の性格や構造について、橋本さんが分かりやすく解説していました。

また興福寺の代名詞である『阿修羅像』についても触れていて、顔の特徴や細かな胸飾りなどにも注目した臨場感のある映像とともに、仏像をつぶさに鑑賞することもできました。私も興福寺へは何度も訪ねたことがありますが、当時の記憶が蘇るような内容だったかもしれません。



南都焼き討ちによって伽藍の大半を焼失し、復興のなされた鎌倉時代の建築や仏像について解説する、第3回と「鎌倉時代の建築」と第4回「鎌倉時代の仏像」も興味深い内容ではないでしょうか。



そのうち第4回「鎌倉時代の仏像」では、再び国宝館へと移動し、食堂時代から同じ位置に立つ『千手観音菩薩立像』や力強い造形を見せる『金剛力士像』の来歴や造形の特徴について紹介していて、銅版を切り抜いて眉を作ったという『龍燈鬼・天燈鬼立像』のユーモラスなすがたにも魅せられました。

またかつて西金堂が炎上した際、首から上のみを切り取って救い出したという『仏頭』のエピソードも印象に深いかもしれません。いずれの映像を通して見ると、創建者の藤原不比等の時代にさかのぼり、焼き討ちによって灰燼に帰すも、その後、現在に至るまで再建を続ける興福寺の歴史そのものが浮き彫りになるようでした。

すべての映像とも登録は不要で、簡単に視聴できるのも嬉しいポイントでした。また各10分の内容も程よく、気軽に楽しむことができました。



なお『隔週刊 古寺行こう』は創刊号に続き、3月29日には第3号「東大寺」が発売されました。興福寺については4月12日発売予定の第4号にて特集されるとのことで、そちらも楽しみにしたいと思います。


『隔週刊 古寺行こう』刊行記念 文化講演会オンライン配信「興福寺 寺宝をめぐる旅」は、2023年3月31日まで無料で配信されています。

『隔週刊 古寺行こう』
公式サイト:https://www.shogakukan.co.jp/pr/koji/
Twitter:https://twitter.com/koji_ikou
Facebook:https://www.facebook.com/kojiikou
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『遠藤利克』 SCAI THE BATHHOUSE

SCAI THE BATHHOUSE
『遠藤利克』 
2022/3/8~5/14



SCAI THE BATHHOUSEで開催中の『遠藤利克』を見てきました。

1950年に生まれた彫刻家の遠藤利克は、鉄や木、それに火や水といった素材を使って作品を制作し、国内外の美術館やギャラリーにて作品を発表してきました。

その遠藤のスカイザバスハウスとしては7年ぶりの個展が今回の展示で、会場には主に2つの『空洞説』の彫刻が公開されていました。


床:『空洞説ー鏡像の柩』(2022年) 、壁:『空洞説ー鉛の柩』(2022年)

まず否応なしに目を引くのが、床に置かれた『空洞説ー鏡像の柩』で、直方体の木のオブジェが黒焦げになったすがたを見せていました。またちょうど受付にて彫刻が燃える様子がタブレットにて映されていましたが、それこそ作品を焼成した時の記録映像かもしれません。


『空洞説ー鉛の柩』 2022年

そして床の柩を見下ろすように壁に設置されたのが、鉛の板で出来た『空洞説ー鉛の柩』でした。こちらは同じく柩とあるものの、中はがらんと空いていて、何も置かれていませんでした。

『空洞説ー鏡像の柩』にて興味深いのは、素材に木と火、それに鏡と記されていることでした。しかし黒く炭化した作品のどこを見ても鏡の存在は分からず、そもそも中がどのように作られているかわかりませんでした。



実際のところ『空洞説ー鏡像の柩』の内部に鏡が用いられているとのことでしたが、そもそも作家本人しかすがたを見たことがなく、他の誰かが確認することは叶いませんでした。まさに見る者の想像力に委ねられている作品なのかもしれません。


『空洞説ー鏡像の柩のためのプラン9』 2022年

しかし『空洞説ー鏡像の柩のためのプラン9』とした小品では、棺の上部が空いていて、中に溶けたような鏡が散っていることが見て取れました。言ってみれば、このプランと題する作品こそ、『空洞説ー鏡像の柩』の内部を想像させるものなのかもしれません。

遠藤の展示として思い出すのは、2017年に埼玉県立近代美術館にて開かれた『遠藤利克展ー聖性の考古学』と題した個展でした。


そこでは直径4メートルほどの円筒状の作品や、展示室外の吹き抜けにも舟のようなかたちをした作品を展示していて、あたかも空間を支配するかのような圧倒的な量感を見せていました。

実に関東では26年ぶりの美術館での個展とのことでしたが、改めて大きなスペースにて作品を見る機会があればと思いました。


『空洞説ー鉛の柩のためのプラン7』 2022年


Penオンラインにも展示の様子を寄稿しました。

黒く焦げた柩と鉛の空体に込められた意味とは?日本を代表する彫刻家、遠藤利克の個展が開催中|Pen Online

予約は不要です。5月14日まで開催されています。

『遠藤利克』 SCAI THE BATHHOUSE@scai_bathhouse
会期:2022年3月8日(火)~5月14日(土)
休廊:日・月・祝。
時間:12:00~18:00
料金:無料
住所:台東区谷中6-1-23 柏湯跡
交通:JR線・京成線日暮里駅南口より徒歩6分。東京メトロ千代田線根津駅より徒歩7分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?』 ポーラ美術館

ポーラ美術館
『ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?』
2021/9/18~2022/3/30



ポーラ美術館で開催中の『ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?』を見てきました。

アメリカの現代美術家のロニ・ホーン(1955年〜)は、彫刻、写真、ドローイングを手がけ、とりわけたびたび訪問するアイスランドの自然を主題とした作品を発表してきました。

そのホーンの国内の美術館として初めての個展が『ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?』で、1980年代より約40年のキャリアにおいて制作された作品が公開されていました。


「ガラス彫刻」シリーズ

まず何よりも目を引くのがガラスの彫刻のシリーズで、窓から自然を取り込む展示室の中に、丸く平べったい8つの作品が置かれていました。


「ガラス彫刻」シリーズ

いずれの表面も水をたたえたようなすがたを見せていて、天井や鑑賞者、あるいは戸外の風景などを写し出していたものの、実際の水は一切なく、あくまでもガラスの表面に写り込んだものでした。


「ガラス彫刻」シリーズ

長い時間かけて鋳造されたはガラスの彫刻は、1つ1つが数百キログラムもの重量があり、それこそレンズのように光を拡散していました。まるで海の浮かぶ氷河の氷のようなイメージも連想するかもしれません。


『エミリのブーケ』 2006〜2007年

それに続く6本の角柱からなるのが『エミリのブーケ』と題した作品で、アメリカの詩人、エミリ・ディキンスンの書いた手紙の言葉から選ばれた一節が刻まれていました。


『エミリのブーケ』、『ゴールド・フィールド』

その『エミリのブーケ』の横の床には、1枚の薄い『ゴールド・フィールド』が敷かれていて、戸外の風景を取り込みつつ輝かしい光を放っていました。壁に立てかけられた『エミリのブーケ』とのシルバーとの色のコントラストや、垂直と平面の対比も興味深いかもしれません。


『トゥー・プレイス』 1989年〜

ホーンが初めてアイスランドを訪ねたのは1975年のことで、自然豊かな環境などに魅せられると、以来、定期的に滞在しながら制作を行ってきました。そのうち『トゥー・プレイス』は、アイスランドの灯台にて描いた水彩ドローイングや同地で撮影した風景や人物といった写真が収められていて、現在に至るまで休むことなく刊行されてきました。

またアイスランドの地図といった印刷物や島のかたちをドローイングになぞらえた作品も制作していて、まさに島の地誌そのものを自らの表現へと昇華させていました。


『円周率』 1997年/2004年

北アイスランドで7年間に渡り撮影された45点の写真から構成されたのが『円周率』と題した作品で、壁の少し高い位置に空間を取り囲むように展示されていました。


『円周率』 1997年/2004年

そこには羽毛を集めることを生業とするビョルンソン夫妻を中心に、彼らの家や窓の風景、また野生動物の剥製などが写されていて、中には夫妻が毎日見るというアメリカのメロドラマを映したテレビ画面も登場していました。アイスランドの土地とそこで生きる夫妻の日常そのものが、美しくも刹那的に捉えられていたのではないでしょうか。


『静かな水(テムズ川、例として)』 1999年

一見、何気ない川の水面を写したように思える、全15点の写真作品も面白いかもしれません。それらはすべてロンドンのテムズ川を写していたものの、天候や時間にもよるのか、水の色や表情は一様ではありませんでした。


『静かな水(テムズ川、例として)』 1999年

そして目を凝らすと水の面には点のような細かな数字が配置されていて、写真の下部に脚注のように示された文章と結びついていました。そこには波立つ水面が引き起こす感情をはじめ、ディキンスンの詩文などが引用されていて、ホーンのテキストが散文のように綴られていました。


『静かな水(テムズ川、例として)』 1999年

タイトルに『水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?』とありましたが、水を前にしてこれほどさまざまな感興が引き起こされること自体が新しい体験として受け止められるかもしれません。


「大型ドローイング作品」

さて今回の個展で私が最も印象に深かったのが、ホーンが1982年から「日々呼吸するように」(解説よりう)にして描いているドローイングでした。


「大型ドローイング作品」

そのうち高さ三メートルにも及ぶドローイングは、抽象、あるいは地図とも島のかたちにも見えるような餅チーフをかたどっていて、まるでホーンの思考から手の運動の跡が残されているようでした。


「大型ドローイング作品」

そして細部へ目を転じると、小さな記号や印、また紙の切れ目が見て取れて、一度ばらばらに切られ、あらためて組み合わされたものであることが分かりました。それこそ千切り絵のようにホーンの膨大な手仕事がなし得た業といえるのではないでしょうか。


「犬のコーラス」

こうした分断し、再び繋ぐコラージュの手法は、鮮やかな色彩を伴いつつ言葉を引用した作品にも使われていて、たとえば『犬のコーラス』ではシェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』の台詞や慣用句が引用されていました。


『あなたは天気 パート2』 2010〜2011年

ラストを飾るのは、1人の女性を撮り続けた100枚ものポートレートのシリーズでした。これらはアイスランドの温泉にて女性の表情の変化を記録したもので、「曇った顔」や「気が晴れる」といった気象を顔の表情から見立てていました。


『鳥葬(箱根)』 2017〜2018年

さらにホーンは今回、展示室に加えて、屋外の森の遊歩道においても『鳥葬』と題した大型の彫刻作品を公開していました。ちょうど私が出向いた際は前日に降った雪が残っていて、彫刻の表面には氷と水がわずかに溜まっていました。


『鳥葬(箱根)』 2017〜2018年

おそらく晴れていれば森の緑や空の青などを映していたのかもしれませんが、水や氷、そして微かに映り込む樹木などが描く複雑なテクスチャーに見入りました。


何よりもガラスの彫刻が目立っていたのも事実ですが、アイスランドの地誌やアメリカのディキンスンの詩文の引用など、大変に引き出しと読み解きの多い展示といえるかもしれません。それに彫刻からコラージュ的なドローイング、また写真と多様なメディアを駆使しているのも深く印象に残りました。



会期末を迎え、会場内も盛況でした。3月30日まで開催されています。

『ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?』 ポーラ美術館
会期:2021年9月18日(土)~2022年3月30日(水)
休館:会期中無休。
時間:9:00~17:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1800円、65歳以上1600円、大学・高校生1300円、中学生以下無料。
住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
交通:箱根登山鉄道強羅駅より観光施設めぐりバス「湿生花園」行きに乗車、「ポーラ美術館」下車すぐ。小田急線・箱根登山鉄道箱根湯本駅より箱根登山バス「ポーラ美術館」(桃源台線)行きに乗車、「ポーラ美術館」下車すぐ。(所要時間約40分)有料駐車場(1日500円)あり。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『千田泰広 ― 視野の外は何色か?』 ギャラリーエークワッド

ギャラリーエークワッド
『千田泰広 ― 視野の外は何色か?』
2022/3/3~5/26



ギャラリーエークワッドで開催中の『千田泰広 ― 視野の外は何色か?』を見てきました。

1977年生まれのアーティストの千田泰広は、「空間の知覚」などを主題にインスタレーションを制作し、国内外の芸術祭や展覧会などで作品を発表してきました。

その千田の個展が『視野の外は何色か?』で、いずれも光を素材にした『Myrkviðr(ミュルクヴィズ)』と『0.04』のインスタレーションなどを展示していました。



まずはじめに展開するのが『Myrkviðr(ミュルクヴィズ)』で、回転する光源に応じて無数の屈折光が真っ暗闇の空間へと広がる作品でした。

その光は細かく砕いた粒子のように空間全体へと拡張していて、暗黒の宇宙から星々の明かりを見るかのようでした。また光の粒が体にまとわりつくような錯覚にも囚われて、そもそも一体全体どのような構造で光が放たれているか見当すらつきませんでした。



これらはテグスを真っ暗な空間へ無数に張り、小さなLEDから光を照射したもので、光源が回転していることから、光が生き物のように動くようにできていました。



しばらくして目が慣れるとテグスや光源の存在に気づくものの、光の粒が伸縮を伴いながらうごめいていくようで、神秘的とも呼べる空間が築かれていました。なおタイトルの『ミュルクヴィズ』とは、北欧神話などに登場する黒い森や暗い森を意味していて、それこそ暗い森の奥深くへ立ち入って光を探すように、しばし浮遊する光に身を委ねました。



もう1点の『0.04』は、LEDの光源と水を用いたインスタレーションで、上から落ちていく水の滴を透過した光が、純白の空間の床面に雲のような環を描いていました。



この作品を千田自身は「光の鹿威し」と呼び、タイトルの0.04は水1粒の体積を表していましたが、ひたすら繰り返しながら落ちる水の軌跡と床の波紋は美しくもはかなく感じられました。

『Myrkviðr(ミュルクヴィズ)』と『0.04』ともに、繊細の極みともいえるようなインスタレーションだったかもしれません。その光景を手持ちのスマホの写真にておさめるのは困難でした。

入場時に検温や手指の消毒のほか、氏名や連絡先を記入する必要があります。5月26日まで開催されています。

『千田泰広 ― 視野の外は何色か?』 ギャラリーエークワッド
会期:2022年3月3日(木)~5月26日(木)
休廊:日曜・祝日。4月29日(金)、5月1日(日)~5月5日(木)。
時間:10:00~18:00。*土曜・最終日は17時まで。
料金:無料。
住所:江東区新砂1-1-1 竹中工務店東京本店1階。
交通:東京メトロ東西線東陽町駅3番出口徒歩3分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ウィークリーブック『隔週刊 古寺行こう』 小学館

依然としてコロナ禍が続くも、18都道府県に適用されていたまん延防止等重点措置も解除され、この春は遠方への旅行を考えている方も多いかもしれません。



そうした中、全国の古刹を案内するウィークリーブック『隔週刊 古寺行こう』が、小学館より刊行されました。

『隔週刊 古寺行こう』
公式サイト:https://www.shogakukan.co.jp/pr/koji/
Twitter:https://twitter.com/koji_ikou
Facebook:https://www.facebook.com/kojiikou



『隔週刊 古寺行こう』は、全40巻、約130のお寺を1年半にわたって取り上げるもので、3月8日に1号『法隆寺』と2号『東寺』が同時発売されました。※3号『東大寺』は3月29日発売。以降隔週火曜日発売予定。

まず目立つのが誌面4ページ分の引き出しページを用いた「寺宝ギャラリー」で、1号『法隆寺』では『救世観音』と『涅槃像土』が極めて精細な写真にて掲載されていました。いずれも写真家の三好和義さんによって撮影され、『救世観音』に至っては実物大でした。



通常の拝観では暗くて分かりにくい『涅槃像土』も、目の前にて覗きこんでいると錯覚するほどリアルに写されていて、横たわる釈迦の周りで嘆き悲しむ仏弟子のすがたを臨場感をもって見ることができました。これほど繊細な写真で『涅槃像土』が捉えられたことは、ひょっとすると過去になかったかもしれません。



そして伽藍、仏像、宝物なども拡大写真を用いながら丁寧に解説されていて、お寺の見どころを分かりやすく知ることができました。小学館のウィークリーブックでは、以前、全国の国宝を紹介した『週刊 ニッポンの国宝100』も充実していましたが、それと比べてもテキストに厚みが増しているようにも思えました。


第1号『法隆寺』では「斑鳩の古刹をめぐる」と題し、中宮寺や法輪寺、法起寺についても解説していて、あわせて「旅の栞 斑鳩の里」として斑鳩の宿やカフェも紹介していました。私もかつて法隆寺を訪ねた際、法輪寺や法起寺へ歩いて巡ったことがありましたが、誌面に記載されていたレンタルバギーでドライブするのも面白いのではないでしょうか。



実際に現地へ赴いて有用なのが、巻末の「境内地図」と「広域マップ」で、特に「境内地図」はQRコードよりスマホへ閲覧することも可能でした。(※)また第1号『法隆寺』の別冊付録の「京都・奈良行事カレンダー」もGoogleカレンダーへと行事予定を共有することができました。こうした誌面からスマホへと連動するのも『隔週刊 古寺行こう』の新たな取り組みと言えるかもしれません。※小学館IDアカウントが必要

この他、橋本麻里さんの「寺院建築の見方」や田中ひろみさんの「仏像のフシギ」といった連載も充実していました。ともかく美しい写真にばかり見惚れてしまいますが、豊富なテキストとじっくり向き合うのも『隔週刊 古寺行こう』の楽しみ方の1つとなりそうです。



さて現在、公式ツイッターでは、好きなお寺や思い出のお寺などを自由に発信する「#推し古寺」のキャンペーンが行なわれていますが、私が『隔週刊 古寺行こう』の古刹の中で特に推したいのが、一昨年に訪ね歩いた奈良の室生寺です。



奈良盆地の東、宇陀市内の山中に位置する室生寺は、「女人高野」とも呼ばれ、多くの人々の信仰を集めてきました。



金堂や弥勒堂、また本堂などは緑深い山中に点在していて、とりわけ石段の上にすがたを現す五重塔の美しさには目を見張るものがありました。



また山の緑の匂いとともに、湿り気を帯びた空気が全身に染み渡るかのようで、自然と一体化したような佇まいも強く印象に残りました。※『隔週刊 古寺行こう』では第8号にて長谷寺とあわせて掲載予定。

なお小学館では過去に2度、『週刊 古寺をゆく』(2001年創刊)と『週刊 古寺を巡る』(2007年創刊)を刊行していて、累計実売数は1400万部を記録しました。


今回の『隔週刊 古寺行こう』は、約15年ぶりとなる新たな「古寺シリーズ」となりますが、情報や知見の更新はもとより、撮り下ろし写真やスマホとの連動など新たな試みがなされているのは言うまでもありません。



来年9月にかけて130のお寺を紹介する『隔週刊 古寺行こう』を読みながら、全国の古刹を巡るのも良いのではないでしょうか。まずは書店などにて手にとってご覧ください。

『隔週刊 古寺行こう』
出版:小学館
発売日:2022/3/8
価格:1号『法隆寺』、2号『東寺』同時創刊 特別価格各490円(税込)
内容:実売累計1400万部を超えたウイークリーブックの名作、「古寺」シリーズの第3弾が、15年ぶりに装いも新たに創刊します。
コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )

特別展『空也上人と六波羅蜜寺』 東京国立博物館

東京国立博物館 本館特別5室
特別展『空也上人と六波羅蜜寺』
2022/3/1~5/8



東京国立博物館 本館特別5室にて特別展『空也上人と六波羅蜜寺』が開催されています。

鎌倉時代の肖像彫刻の傑作である『空也上人立像』(六波羅蜜寺蔵)が、約半世紀ぶりに東京へとやって来ました。

『空也上人立像』とは上人が世をさってから約200年経ったのち、仏師運慶の四男である康勝の手によって造られた立像で、上人が念仏を唱えて市中を歩く様子を写実的に表しました。

また空也上人が「南無阿弥陀仏」の名号を唱えると、1つ1つの声が阿弥陀如来の姿に変じたという逸話を立体化していて、口から小さな阿弥陀立像が6体現れ出るすがたを象りました。

そのユニークな造形に目を奪われると同時に、痩身の体つきや血管の浮き出た足、また草鞋の擦り減ったようすなども極めて精緻に表されていて、まさに小人の生写しを目の当たりにするかのようでした。



通常『空也上人立像』は、六波羅蜜寺において正面からのみ拝観できませんが、今回は独立したガラスケースに収められているため、360度の方向から鑑賞することができました。暗がりの空間の中、やや強めの照明により、細部がクリアに浮かび上がっていたかもしれません。

着衣の表現がかなり硬質に思えましたが、これは鹿の皮の衣を着ていたという上人の言い伝えを造形化していると指摘されているそうです。ともかく有名な像だけに図版などで目にする機会は少なくありませんが、実際に見ると感慨深いものがありました。

さて今回の展覧会では『空也上人立像』にあわせて、平安から鎌倉時代への六波羅蜜寺所蔵の仏像も公開されていて、とりわけ『薬師如来坐像』を中心に上人が発願したとされる『四天王立像』が横に並ぶ光景は壮観でした。この他、定朝作とも伝えられる『地蔵菩薩立像』の端正な体つきも魅惑的だったかもしれません。

会場の本館5室の横の本館11室においても、同寺所蔵の仏像が展示されていました。お見逃しなきようおすすめします。


特別展『空也上人と六波羅蜜寺』についてPenオンラインにも寄稿しました。*プレス内覧会での取材のために写真も掲載しました。

空也上人が東京にやってきた! 東京国立博物館の特別展『空也上人と六波羅蜜寺』で祈りたい世の安寧|Pen Online



5月8日まで開催されています。

特別展『空也上人と六波羅蜜寺』@kuya_rokuhara) 東京国立博物館 本館特別5室(@TNM_PR
会期:2022年3月1日(火)~5月8日(日)
休館:月曜日。*ただし3/21(月・祝)、3/28(月)、5月2日(月)は開館。
時間:9:30~17:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1600円、大学生900円、高校生600円。
 *事前予約(日時指定券)を推奨。
 *当日に限り総合文化展も観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR線上野駅公園口・鶯谷駅南口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄京成上野駅より徒歩15分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『AC部 異和感ナイズ展』 クリエイションギャラリーG8

クリエイションギャラリーG8
『AC部 異和感ナイズ展』
2022/2/22~3/30



クリエイションギャラリーG8で開催中の『AC部 異和感ナイズ展』を見てきました。

1999年に結成されたクリエイティブチームのAC部は、長く映像制作を手がけ、TV番組やアニメ映画、またWeb上などにてさまざまな作品を発表してきました。

そのAC部が20年にわたって追い求めてきた「違和感」をテーマとしたのが『AC部 異和感ナイズ展』と題した展示で、会場には過去の制作からペインティング、映像、また参加型のインスタレーションなどの作品が公開されていました。



まず最初の部屋では過去の制作プロセスが紹介されていて、1999年から2018年頃へと至るAC部のアイデアや方法論の変遷を伺うことができました。



また「関節ジオメトリックス技法」や「素材スターシステム」などと付けられた各手法のの資料には、映像のイメージとともにQRコードが掲載されていて、スマホに取り込んではyoutubeの動画を閲覧することも可能でした。



こうした作品とともに展示されていたのが、一枚のキャンバス、また絵筆や絵具、さらにモニターなどからなる『価値観査定機 Secondary’s』でした。



これは来場者が絵筆をとり、好きな色をつけてはキャンバスへと書き込むことのできる参加型のインスタレーションで、モニターには独自のアルゴリズムによって美的価値が査定された「絵画」の金額が表示されていました。



そしてキャンバスへと線を加えたり、モチーフを加えると金額が上下していて、常に価値が変動していきました。また必ずしも価格が上がるだけでなく、下がる場合があるというのも面白いのかもしれません。



私が出向いた際は会期早々だったため、余白も多く残っていましたが、現在は色やモチーフがキャンバスを埋めているとのことです。会期終了までに一体、絵の価値はどのように変わっていくのでしょうか。



2つ目の展示室では、AC部が『価値観査定機 Secondary’s』を用いて制作したというペインティングが何点か並んでいて、カフェや飲食店のカウンター、またビーチ横と思しく空間を走る車や盆栽などのモチーフが色彩豊かに描かれていました。



ただしいずれのペインティングとも具象的でありながら、色の面や線が分離、つまり複数のレイヤー状に分かれているように表現されていて、三次元的な空間が築かれていました。



その奥の展示室では、一連のペインティング作品をアニメーション化した映像が投影されていて、軽快なBGMとともにイメージが3D状に回転するようにして展開していました。まさにペインティングの視点が空間全体へと拡張していて、あたかも絵と映像が入れ子構造のように入れ替わっているようでした。


違和感を追い続ける「AC部」とは? シュールで遊び心に満ちた『異和感ナイズ展』が楽しい!|Pen Online

なおタイトルが「違和感」ではなく「異和感」としているのも興味深いかもしれません。さまざまなズレが生み出す不思議な違和感が楽しく感じられる展覧会でした。



予約は不要です。3月30日まで開催されています。*写真はいずれも『AC部 異和感ナイズ展』展示作品。撮影も可能です。

『AC部 異和感ナイズ展』 クリエイションギャラリーG8@g8gallery
会期:2022年2月22日(火)~3月30日(水)
休館:日・祝日。 
時間:11:00~19:00。
料金:無料。
住所:中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル1F
交通:JR線新橋駅銀座口、東京メトロ銀座線新橋駅5番出口より徒歩3分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『Nakayama AIR Exhibition 〜此岸に浮かぶ筏〜』 中山法華経寺

中山法華経寺
『Nakayama AIR Exhibition 〜此岸に浮かぶ筏〜』 
2022/3/12〜3/27



千葉県市川市中山エリアを舞台とするアーティスト・イン・レジデンスプログラムの成果発表として、中山法華経寺にて『Nakayama AIR Exhibition 〜此岸に浮かぶ筏〜』が開かれています。



ここではレジデンスに参加した大槌秀樹と川田龍、およびワークショップを展開した大川友希をはじめ、東弘一郎、大塚理司、原倫太郎の計6名のアーティストが、境内と堂内の数カ所にて作品を公開していました。



京成中山駅より緩やかな坂を上がり、立派な山門を抜けると出迎えてくれるのが、大川友希による『記憶の道』と題したのぼりのインスタレーションでした。



いずれも地域の市民から譲り受けた古着を用い、ワークショップにて制作された布のパーツを大川が繋げたもので、模様も色もさまざまな古着の端切れが参道を彩っていました。



それらは抽象的パターンを伴いつつ、中にはキャラクターがプリントされた布もあって、一つとして同じかたちのものはありませんでした。一連のパーツは大川自身が市内の幼稚園などへ出向いて作られ、2月からは市内のスタジオにてのぼり制作のワークショップも行われました。



参道に続いて改修工事中の祖師堂を前に展開していたのが、東弘一郎の『自連車』と題したオブジェと川田龍の宗教祭壇画を題材とした作品でした。



そのうちの『自連車』とは、自転車を用いた体験型の可動式の彫刻作品で、先頭のペダルを回すと後ろに連なるタイヤも連動する仕組みとなっていました。いずれの自転車も地域の人々より提供を受けたもので、ちょうど私が出向いた際も、子どもたちが入れ替わり立ち替わりペダルを回そうとチャレンジしていました。



また同じく境内では大塚理司が、藁で編んだ祈りを主題とした『祈りの形象』とした彫刻を展示していて、あたかも以前からこの地に建てられていたような遺物のような佇まいを見せていました。



ラストの2名の作品は境内奥の通常非公開の堂内にて展示されていて、原倫太郎は暗がりの空間の中で『法華経寺のための空間ドローイング」と題した大掛かりな作品を見せていました。



ここでは畳と襖に囲まれた広間の中、お堂や建物を象ったような構造物に光る糸が張り巡らされていて、糸は絶え間なく動いていました。



この他、法華経寺の勤行の様子に取材した大槌秀樹の『神々と共に/祈りの灯』を目立っていたのではないでしょうか。同寺では毎年冬、全国から約100名の僧侶が集い、100日間も厳しい修行が続く日蓮宗大荒行堂で知られていますが、まさに法華経寺の歴史や活動を踏まえた作品と言えるかもしれません。



日蓮宗の大本山の中山法華経寺は、重要文化財の五重塔や法華堂などからなる広い境内を有していて、国宝の『立正安国論』などを納めた伊東忠太設計による聖教殿といったユニークな建物も存在しています。



今月末頃には境内の桜も見ごろを迎えそうですが、お寺への拝観を兼ねて出かけるのも良さそうです。


観覧は無料です。3月27日まで開催されています。*屋内展示の入場時間は15時45分まで。

『Nakayama AIR Exhibition 〜此岸に浮かぶ筏〜』@NakayamaAIR) 中山法華経寺
会期:2022年3月12日(土)〜3月27日(日)
休館:会期中無休。
時間:9:30~15:45 
 ※屋内展示入場時間
料金:無料
住所:千葉県市川市中山2-10-1
交通:京成本線京成中山駅より徒歩5分。JR線下総中山駅より徒歩10分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『デザイン・ダイアローグ メゾン・エ・オブジェ・パリ展』 日本橋高島屋S.C. 本館8階ホール

日本橋高島屋S.C. 本館8階ホール
『デザイン・ダイアローグ メゾン・エ・オブジェ・パリ展』 
2022/3/3〜3/21



日本橋高島屋S.C. 本館8階ホールで開催中の『デザイン・ダイアローグ メゾン・エ・オブジェ・パリ展』を見てきました。

世界最高峰のインテリアとデザインの国際見本市として知られる『メゾン・エ・オブジェ・パリ展』が、展覧会として編集され、日本へとやって来ました。

それが『デザイン・ダイアローグ メゾン・エ・オブジェ・パリ展』で、会場には同見本市にて顕彰されたデザイナーなどの作品が3つのブースに分けて展示されていました。



まず初めは過去25年にわたって見本市において表彰されたデザイナーの作品を紹介する「DESIGNER OF THE YEAR(デザイナー・オブ・ザ・イヤー)」で、21名による主に椅子と照明が並んでいました。



フランスやドイツのデザイナーなどの作品が目立つ中、日本の吉岡徳仁や佐藤オオキらも受賞を果たしていて、吉岡によるガラスを用いた球体の照明も一際美しく感じられました。



これに続くのが「What`s New?(ホワッツ・ニュー)」と題したインスタレーションで、「自然の要素」をテーマに、今回の全体装飾を担うエリザベス・ルリッシュによって選ばれた約200点もの家具が並んでいました。



それらはリビングやダイニングルームなどから、自然や宇宙を連想させるような空間へと展開していて、椅子やテーブル、食器、ラグ、照明、オブジェといったさまざまな製品が、1つの小宇宙を築くようにして置かれていました。



いずれもスタイリッシュでありつつユニークな作品ばかりで、どういったシーンで使うのかについて想像を巡らせるのも楽しいかもしれません。



ラストは「RISING TALENT AWARD(ライジングタレントアワード)」とした展示が行われていて、日本とフランスの若手クリエイターの作品がちょうど向かい合うように並んでいました。



この「RISING TALENT AWARD」とは創設以来、レバノンや中国、アメリカなどのデザイナーを毎年開催国を決めて表彰してきたもので、2020年はフランス、そして2022年は日本が開催地となりました。



この他、かつて高島屋で開催されたシャルロット・ペリアン展「選擇・傳統・創造」(1941年)や「ル・コルビュジェ、レジェ、ぺリアン三人展」(1955年)など公開された家具も見どころではないでしょうか。

パリから日本へ。東京・京都・名古屋の3会場で開催!『デザイン・ダイアローグ メゾン・エ・オブジェ・パリ展』で楽しむ最先端のデザイン | イロハニアート

各作品にQRコードがついていて、スマホで読み取るとデザイナーやブランドのサイトにアクセスすることも可能でした。また会場の日本橋高島屋の家具・和洋食器売り場にて、一部のデザイナーの作品が展示販売されているのも、デパートならではの企画といえるかもしれません。


3月21日まで開催されています。なお東京での展示を終えると、京都高島屋7階7階グランドホール(4月28日〜5月9日)、ジェイアール名古屋タカシマヤ10階特設会場(8月17日〜8月30日)へと巡回します。

『デザイン・ダイアローグ メゾン・エ・オブジェ・パリ展』 日本橋高島屋S.C. 本館8階ホール
会期:2022年3月3日(木)〜3月21日(月・祝)
休館:会期中無休。
時間:10:30~19:30 
 ※最終日は16時まで
 ※入館は閉館の30分前まで
料金:一般・大学・高校500円、中学生以下無料
住所:中央区日本橋2-4-1
交通:東京メトロ銀座線・東西線日本橋駅B1出口直結。都営浅草線日本橋駅から徒歩5分。JR東京駅八重洲北口から徒歩5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『オルタナティブ! 小池一子展』 アーツ千代田3331

アーツ千代田3331 1階メインギャラリーほか
『オルタナティブ! 小池一子展 アートとデザインのやわらかな運動』
2022/1/22〜3/21



アーツ千代田3331で開催中の『オルタナティブ! 小池一子展 アートとデザインのやわらかな運動』を見てきました。

1936年生まれの編集者でコピーライターの小池一子は、1980年代よりアートの現場へと活動の幅を広げ、日本初のオルタナティブ・スペースである「佐賀町エキジビット・スペース」を開設しました。

その小池の仕事を振り返るのが『オルタナティブ! 小池一子展 アートとデザインのやわらかな運動』で、あわせて同時代の芸術家やクリエイターらの活動も紹介されていました。



まずはじめは「中間子」と題した展示で、小池の編集、翻訳、コピーライト、企画、キュレーションなどの仕事が紹介されていました。そのうち目を引くのが田中一光との仕事やPARCO、西武美術館の展覧会や西友の広告で、会場を埋め尽くさんとばかりにポスターなどが並んでいました。

また現在も小池がアドバイザリーボードを務める無印良品のポスターも多く紹介されていて、コピーライターとして関わった当初から「くらしの良品研究所」を基点とする制作を見ることができました。

なお「中間子」とは、日本初のノーベル賞の主題「中間子」論に着想し、何かと何かを結びつけて新しい価値を生む小池の仕事を象徴して名付けられました。さまざまな領域を横断しつつ、クリエイターらと関わりながら活動を続ける小池にふさわしい言葉だったのではないでしょうか。



この「中間子」に続くのが「佐賀町」で、1983年に東京・永代橋横に誕生したオルタナティブ・スペース「佐賀町エキジビット・スペース」に関する展示でした。



ここでは過去に同スペースで行われた展覧会やイベントを撮影した写真と、カタログやリーフレットといった印刷媒体とともに、実際に展示を行った一部の作品が公開されていて、2000年に閉廊した17年間の「佐賀町エキジビット・スペース」での活動と歴史を目の当たりにできました。

こうした一連の展示に加え、とても興味深く思えたのが特別映像作品「オルタナティブ!」でした。


映像では大竹伸朗と森村泰昌、杉本博司などのアーティストをはじめ、小柳敦子といったギャラリストらが小池について語っていて、時折本人の発言を交えながら、小池の人間像や仕事観など浮き彫りになっていました。いずれの人物とも小池と旧知の仲とのことでしたが、証言は時に生々しくユーモアもあり、また小池への愛にも満ちていました。約9分ほどの内容ですが、まさに必見の映像だったかもしれません。



会期途中より数カ所のスポットのみ撮影が可能となりました。

「sagacho archives」(B1F B110)での内藤礼『地上にひとつの場所を 1991/2022』の鑑賞は完全予約制です。予約方法は3331の公式ページをご覧ください。



3月21日まで開催されています。

『オルタナティブ! 小池一子展 アートとデザインのやわらかな運動』 アーツ千代田3331@3331ArtsChiyoda) 1階メインギャラリーほか
会期:2022年1月22日(土)〜3月21日(月・祝)
休館:会期中無休
時間:11:00~19:00
 *最終入場は18:30まで。
料金:一般1000円、シニア・大学生800円、高校生以下無料。
場所:千代田区外神田6-11-14 アーツ千代田3331
交通:東京メトロ銀座線末広町駅4番出口より徒歩1分、東京メトロ千代田線湯島駅6番出口より徒歩3分、都営大江戸線上野御徒町駅A1番出口より徒歩6分、JR御徒町駅南口より徒歩7分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり』 目黒区美術館

目黒区美術館
『木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり』
2022/2/19~3/27



目黒区美術館で開催中の『木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり』を見てきました。

報道写真やポートレートの名手として知られる木村伊兵衛は、戦後に日本人写真家として初めてヨーロッパを取材すると、アンリ・カルティエ=ブレッソンらと交流しては、パリの街をカラーフィルムにて撮影しました。

その木村のパリでの写真を公開するのが『木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり』で、カラースナップ写真131点に加え、1910年から50年にかけてパリ留学を経験した画家らの作品が紹介されていました。

まず冒頭で目を引くのが、1階の受付奥に並ぶ木村のパリの街を捉えた写真で、あわせて井手宣通の『モンマルトル(巴里)』と近藤吾朗の『サン・ミッチェル通り』といったほぼ同時代の油彩画が隣りに展示されていました。まさに写真と絵画の双方にて、1950年代のパリの光景が響き合うすがたを楽しめるかもしれません。


続く2階では木村の写真が、「パリの街角」、「素顔のパリっ子」、「安らぐパリ」、「華やぐパリ」の4つのテーマに分けて展示されていて、木村が何気ない街角や庶民のすがた、また人々の親密な雰囲気といったパリのさまざまな表情を写している様子を目の当たりにできました。

一部の写真には、「年寄りは全部といっていいほど、写真のような黒い服装をしている。」や「日本の甘栗のような焼き栗をパリの人は好んでたべる。」などの木村の短いコメントが付されていて、パリの街や人々の様態を観察した心のうちを伺うこともできました。

またパリの街の印象だけでなく、「カラーで人間を写す場合は動きを巧く狙わないといけない。」といった技術的な内容が記されているのも興味深いかもしれません。木村は愛用のライカと開発されて間もない国産のカラーフィルムにてパリを撮影しましたが、フィルムの特性でもあった低感度の淡い色彩とコントラストを活かし、パリの空気や光の色までも繊細に捉えました。

そうした作品として『霧の夜、モンパルナス、パリ』や『赤い霧、モンパルナス、パリ』なども魅惑的かもしれません。木村自身、「霧の夜はネオンや電灯が霧でそまって、変った雰囲気が出る。」とコメントしていますが、幻想的な光景もカラーならではの持ち味のように思えました。

木村の写真に続き、最後にまとめて展示されているのが、パリ留学を経験した画家らの作品でした。いずれも目黒区美術館のコレクションで、荻須高徳の『パリのカフェ』や岡田謙三の『セーヌ河』といった油彩画だけでなく、小川千甕の『ルーブルのほとり』などの水彩、または同じく小川の『渡欧期のスケッチブック』といった鉛筆の作品など幅広いジャンルが揃っていました。

1950年代のパリは当時の著名な写真からがこぞって撮影しているものの、多くはモノクロで占められていて、カラーで捉えた木村の写真は比較的珍しいそうです。一連の写真を通して見ると、パリでの撮影を楽しんでいる木村の心持ちが伝わってくるかのようでした。


木村伊兵衛のカラー写真でめぐる1950年代のパリ。目黒区美術館で開催中の『木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり』展|Pen Online

3月27日まで開催されています。

『木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり』 目黒区美術館@mmatinside
会期:2022年2月19日(土)~3月27日(日)
休館:月曜日。但し3月21日(月祝)は開館、3月22日(火)は休館。
時間:10:00~18:00
 *入館は17時半まで。
料金:一般800(600)円、大高生・65歳以上600(500)円、小中生無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:目黒区目黒2-4-36
交通:JR線、東京メトロ南北線、都営三田線、東急目黒線目黒駅より徒歩10分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

特別展 『ポンペイ』 東京国立博物館 平成館

東京国立博物館 平成館
特別展 『ポンペイ』 
2022/1/14~4/3



東京国立博物館 平成館で開催中の特別展 『ポンペイ』のプレス内覧会に参加してきました。

西暦79年、ヴェスヴィオ山の噴火によって埋没した都市ポンペイには、数多くの考古遺物が残され、現在に至るまで発掘と調査活動が続いてきました。


左:ポリュクレイトス『槍を持つ人』 前1〜後1世紀(オリジナルは前450〜前440年)

そのポンペイから出土した品が集まったのが特別展『ポンペイ』で、いずれもナポリ考古学博物館の所蔵作品約150点が公開されていました。

今回のポンペイ展では、彫像やフレスコ画、また壺や装身具から医療用具や工具、食器などの日用品といった幅広い考古資料が展示されていて、それらを通してポンペイに住んでいた人々の暮らしを垣間見ることができました。


『ビキニのウェヌス』 前1〜後1世紀

はじめはポンペイの街を公共施設や宗教の観点から紹介していて、ギリシア彫刻の均整的な美を伝える『槍を持つ人』や女神ウェヌスを表現した『ビキニのウェヌス』といった大理石像に魅せられました。


『フォルムの日常風景』 62〜79年

『フォルムの日常風景』はポンペイの街のフォルムを表したフレスコ画の一部で、金物などを売る商人や品物を見定める人々などが描かれていました。フォルムは市場や神殿などが建つ街の中心で、露天の店が連なり、多くの人で賑わっていました。


『ブドウ摘みを表わした小アンフォラ(通称「青の壺」)』 1世紀前半

ポンペイの市民の暮らしを伝える文物も充実していて、中でもカメオ・ガラスと呼ばれる技法で作られた『ブドウ摘みを表わした小アンフォラ(通称「青の壺」)』が目立っていました。また『エメラルドと真珠母貝のネックレス』などの装飾品もまばゆい光を放っていて、ポンペイの裕福な人々の嗜好を見られました。


『ヘルマ柱型肖像 (通称「ルキウス・カエキリウス・ユクンドゥスのヘルマ柱」)』 前1〜後1世紀

とはいえ、当時のポンペイには人口4分の1とも言われるほど奴隷が存在していて、奴隷出身の一家が街の有力者になったことを示す『ヘルマ柱型肖像 (通称「ルキウス・カエキリウス・ユクンドゥスのヘルマ柱」)』などにも目を引かれました。


左から『南ガリア製の陶器の杯』(1世紀)、『目玉焼き器、あるいは丸パン焼き器』(1世紀)、『アヒルのケーキ型』(1世紀)

ポンペイの市民の息遣いが最も感じられるのは、日常的に使われた道具類で、動物を象った『アヒルのケーキ型』や、まるでたこ焼き器のような『目玉焼き器』も印象に残りました。


『パン屋の店先』 50〜79年

またポンペイには30軒以上のパン屋があったとされていて、街角でパンを焼く店を描いた『パン屋の店先』なども展示されていました。ナイフの切り込みまでが残る炭化したパンも、当時を伝える生々しい資料といえるかもしれません。


左から『膣鏡』(1世紀)、『薬箱』(1世紀)、『外科器具入れ(箱入薬石、スプーン、探り針など)』(1世紀)

『外科器具入れ(箱入薬石、スプーン、探り針など)』といった、傷病の処置や外科手術に用いられた道具類も何点か公開されていて、そのうちいくつかは20世紀に至るまでほとんど形を変えていませんでした。


『家の模型』 1861年

ポンペイの繁栄の歴史を示す「ファウヌスの家」、「竪琴奏者の家」、「悲劇詩人の家」の3軒の邸宅の一部再現展示も見どころかもしれません。


『踊るファウヌス』 前2世紀

「ファウヌスの家」とは前2世紀にさかのぼる邸宅で、主にヘレニズム美術のモザイク装飾が残されました。ワニやマングースなどが描かれた『ナイル川風景』や、サテュロスを躍動感のある形にて表した『踊るファウヌス』などが目を引くかもしれません。


「竪琴奏者の家」展示風景

ポンペイがローマ化し、ローマ文化が黄金時代を迎えた頃の「竪琴奏者の家」においては、中庭の噴水の光景が再現されていて、イヌやイノシシを写実的に表現したブロンズの彫刻などが展示されていました。


「悲劇詩人の家」展示風景

最も年代が新しい「悲劇詩人の家」には、噴火直前に描かれたフレスコ画などが知られていて、邸宅を模した空間の中、比較的保存状態の良い『イフィゲネイアの犠牲』などを見ることができました。


『猛犬注意』 1世紀

「悲劇詩人の家」などに複数確認され、訪問者に番犬がいることを注意喚起した『猛犬注意』のモザイク画も興味深いかもしれません。この他では、大型のスクリーンによる高精細映像の投影など、臨場感のある空間演出も行われていて、それこそ2000年前にタイムスリップしたかのような気分も得られました。


特別展 『ポンペイ』 より8K映像「アレクサンドロス大王のモザイク」

WEBメディア「イロハニアート」にもポンペイ展の様子をご紹介しました。

過去最大のスケール!特別展 『ポンペイ』で体感する古代ローマの人々のリアルなくらし | イロハニアート

会場内は撮影が可能です。ただしフラッシュ、三脚等は使用できません。また状況により中止、あるいは条件が変更となる場合があります。ご注意ください。


『エウマキア像』 1世紀初頭

3月4日(金)より、金曜、土曜、日曜、祝日の開館時間が18時まで延長されました。*総合文化展は17時閉館。


4月3日まで開催されています。なお東京での展示を終えると、京都市京セラ美術館(2022年4月21日~7月3日)、九州国立博物館(2022年10月12日~12月4日)、ほか1会場(宮城)へ巡回します。*写真の所蔵先はすべてナポリ国立考古学博物館

特別展 『ポンペイ』@pompeii2022) 東京国立博物館 平成館(@TNM_PR
会期:2022年1月14日(金)~4月3日(日)
休館:月曜日。*ただし3/21(月・祝)、3/28(月)は開館。3/22(火)
時間:9:30~17:00
 *3月4日(金)より、金曜、土曜、日曜、祝日は18時まで。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般2100円、大学生1300円、高校生900円。
 *事前予約(日時指定券)を推奨。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR線上野駅公園口・鶯谷駅南口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄京成上野駅より徒歩15分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『生誕110年 香月泰男展』が練馬区立美術館にて開催されています

1911年に生まれ、戦争とシベリアでの抑留生活を送った画家、香月泰男は、その体験を帰国後に「シベリア・シリーズ」として描くと、多くの人々の心を捉えました。



現在、香月の生誕110年を記念した回顧展が、練馬区立美術館にて行われています。その展覧会の内容についてイロハニアートへ寄稿しました。

「生きることは、私には絵を描くことでしかない。」戦争とシベリア抑留の壮絶な体験を描いた画家、香月泰男の人生のあゆみ | イロハニアート

まず展示では「逆光のなかのファンタジー」と題し、若い香月が描いた作品が並んでいて、ピカソの影響下や叙情的な作風の絵画を見ることができました。

1943年に入隊した香月は、当時の満州国へ動員されたのちに敗戦を迎えると、シベリアへと移送され、クラスノヤルスク地区セーヤ収容所などで抑留生活を送りました。結果として帰国を果たしたのは1947年のことで、戦中にも僅かに作品を描いていたものの、画家としての本格的な制作は約4年半中断されることになりました。

帰国後の1950年頃からは、台所の食材や庭の草花といった身近なモチーフを描いていて、「台所の画家」とも呼ばれるようになりました。と同時に、ヨーロッパを訪ねたり、絵具の技法の研究に取り組むと、方解末を混ぜた黄土色の下地に木炭粉を擦り付けていく自らの技法を考案しました。

そうした技法を用いて描かれたのが、兵役と抑留の経験をもとにした「シベリア・シリーズ」で、会場では一連の作品を自らの体験した順番ではなく、制作年代順に並べて展示されていました。

白と黒といった限定的な色による「シベリア・シリーズ」も、1960年代末頃からは『青の太陽』や『業火』といった赤や青を取り入れた作品も描かれ、主題も体験に近いものから情景を俯瞰するようなものへと変化していきました。このほか、ヨーロッパやインド洋などの島へと取材して描いた色彩の明るい作品も、香月の意外な一面を伺わせるかもしれません。

私自身、美術に関心を抱いた頃、東京国立近代美術館のコレクション展にて『水鏡』に出会い、なんとも不思議な絵画世界に心を惹かれ、いつか回顧展に接したいと思っていました。



今回は「シベリア・シリーズ」にとどまらず、画業の大半を網羅していて、あたかも香月の人生をたどるように作品を追うことができました。まさに質量ともに不足ない回顧展の決定版と呼んで差し支えないかもしれません。


イロハニアートの記事では許可を得て作品の写真を掲載しましたが、香月の重厚な画肌の質感は写真画像では到底伝わりません。実際の絵画を前にして改めて絵具の独特な感触に深く見入るものがありました。



3月27日まで開催されています。おすすめします。

『生誕110年 香月泰男展』 練馬区立美術館@nerima_museum
会期:2022年2月6日(日)~3月27日(日)
休館:月曜日。ただし3月21日(月・祝)は開館し、3月22日(火)は休館。
時間:10:00~18:00 *入館は閉館の30分前まで
料金:大人1000円、大・高校生・65~74歳800円、中学生以下・75歳以上無料。
 *ぐるっとパス利用で500円。
住所:練馬区貫井1-36-16
交通:西武池袋線中村橋駅より徒歩3分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

2022年3月に見たい展覧会【空也上人と六波羅蜜寺/本城直季/カラーフィールド】

今年は関東でもかなり寒い日が続きましたが、3月に入る少し前から暖かくなってきました。日差しはすでに春を感じさせます。



先月は開幕が延期されていた『フェルメールと17世紀オランダ絵画展』と『メトロポリタン美術館展』が相次いではじまり、ともに質量ともに充実した内容で多くの美術ファンの注目を集めています。特に『メトロポリタン美術館展』は全編がほぼハイライトといっても良いほどのラインナップで、大変に見応えがありました。

3月も注目したい展覧会が目白押しです。今月に見たい展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・『特別展 春日神霊の旅 -杉本博司 常陸から大和へ』 神奈川県立金沢文庫(1/29~3/21)
・『デザイン・ダイアローグ メゾン・エ・オブジェ・パリ展』 日本橋高島屋S.C. 本館8階ホール(3/3~3/21)
・『季節をめぐり、自然と遊ぶ~花鳥・山水の世界~』 大倉集古館(1/18~3/27)
・『よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―』 サントリー美術館(1/26~3/27)
・『ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?』 ポーラ美術館(2021/9/18~2022/3/30)
・『VOCA展2022 現代美術の展望—新しい平面の作家たち』 上野の森美術館(3/11~3/30)
・『はじまりから、いま。 1952ー2022 アーティゾン美術館の軌跡―古代美術、印象派、そして現代へ』 アーティゾン美術館(1/29~4/10)
・『ミロコマチコ いきものたちはわたしのかがみ』 横須賀美術館(2/11~4/10)
・『開館55周年記念特別展 上村松園・松篁 —美人画と花鳥画の世界—』 山種美術館(2/5~4/17)
・『建部凌岱展 その生涯、酔たるか醒たるか』 板橋区立美術館(3/12~4/17)
・『21_21 DESIGN Future SIGHT』 21_21 DESIGN SIGHT(2021/12/21~2022/5/8)
・『浅田政志展』 水戸芸術館(2/19~5/8)
・『空也上人と六波羅蜜寺』 東京国立博物館(3/1〜5/8)
・『春の江戸絵画まつり ふつうの系譜 「奇想」があるなら「ふつう」もあります―京の絵画と敦賀コレクション』 府中市美術館(3/12~5/8)
・『没後50年 鏑木清方展』 東京国立近代美術館(3/18~5/8)
・『アイラブアート16 視覚トリップ展  ~ウォーホル、パイク、ボイス 15人のドローイングを中心に~』 ワタリウム美術館(1/22~5/15)
・『開館40周年記念展 扉は開いているか ―美術館とコレクション1982-2022』 埼玉県立近代美術館(2/5~5/15)
・『上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー』 三菱一号館美術館(2/18~5/15)
・『第25回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展』 川崎市岡本太郎美術館(2/19~5/15)
・『丸山コレクション 西アジア遊牧民の染織 塩袋と伝統のギャッベ展』 たばこと塩の博物館(2/26~5/15)
・『本城直季 (un)real utopia』 東京都写真美術館(3/19~5/15)
・『北斎花らんまん』 すみだ北斎美術館(3/15~5/22)
・『ダミアン・ハースト 桜』 国立新美術館(3/2~5/23)
・『Chim↑Pom展:ハッピースプリング』 森美術館(2/18~5/29)
・『吉阪隆正展 ひげから地球へ、パノラみる/生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展』 東京都現代美術館(3/19~6/19)
・『シダネルとマルタン展』 SOMPO美術館(3/26~6/26)
・『カラーフィールド 色の海を泳ぐ』 DIC川村記念美術館(3/19~9/4)

ギャラリー

・『AC部「異和感ナイズ展』 クリエイションギャラリーG8(2/22~3/30)
・『渡辺豪 所在について』 ANOMALY(3/5~4/2)
・『泉太郎』 Take Ninagawa(2/26~4/9)
・『山口藍展 山あいの歌』 ミヅマアートギャラリー(3/9~4/9)
・『Museum of Mom's Art ニッポン国おかんアート村』 東京都渋谷公園通りギャラリー(1/22~4/10)
・『ポーラ ミュージアム アネックス展 2022 後期』 ポーラ ミュージアム アネックス (3/18~4/17)
・『Soul ジェーン エヴリン アトウッド展』 シャネル・ネクサス・ホール(3/30~5/8)
・『遠藤利克』 SCAI THE BATHHOUSE(3/8~5/14)
・『千田泰広 ― 視野の外は何色か?』 ギャラリー・エー・クワッド(3/3~5/26)
・『万物資生|中村裕太は、資生堂と   を調合する』 資生堂ギャラリー(2/26~5/29)

まずは仏教美術です。東京国立博物館本館特別5室にて『空也上人と六波羅蜜寺』がはじまります。



『空也上人と六波羅蜜寺』@東京国立博物館(3/1〜5/8)

平安京に疫病が流行した際、念仏を広めた空也上人は、現在の六波羅蜜寺にあたる西光寺を創建し、市井の人々から深い信仰を集めてきました。

その空也上人を象った『空也上人立像』を公開するのが『空也上人と六波羅蜜寺』で、六波羅蜜寺に伝わる平安・鎌倉時代の仏教彫刻が一堂に展示されます。『空也上人立像』が東京で出展されるのは約半世紀ぶりのことで、上人のすがたを写実的に象りながら、口から6体の阿弥陀仏が現れたという伝承を表現したユニークな造形にも改めて注目が集まりそうです。

続いては写真の展覧会です。東京都写真美術館にて『本城直季 (un)real utopia』が開かれます。



・『本城直季 (un)real utopia』@東京都写真美術館(3/19~5/15)

1978年に東京に生まれた本城直季は都市をジオラマのように撮影する作品で知られ、2006年には『small planet』で第32回木村伊兵衛写真賞を受賞するなどして評価されてきました。

その本城の初の大規模個展が『本城直季 (un)real utopia』で、未公開シリーズを含む約200点の作品が紹介されます。本城といえば、昨年に千葉市にて開かれた『写真芸術展 CHIBA FOTO』にも参加し、コマ撮りの映像を公開するなど新たな展開を見せていましたが、今回の個展でもさらなる次への表現が示されるのかもしれません。

ラストはアメリカの抽象絵画の展覧会です。DIC川村記念美術館にて『カラーフィールド 色の海を泳ぐ』が行われます。



・『カラーフィールド 色の海を泳ぐ』@DIC川村記念美術館(3/19~9/4)

「色彩による面の領域が画面のなかで大きな割合を示す絵画」(出典:artscape.jp)カラーフィールドは、1950年末から60年代にかけてのアメリカで発展し、のちの美術界にも大きな影響を与えました。

そうしたカラーフィールドに着目したのが『カラーフィールド 色の海を泳ぐ』で、フランク・ステラ、モーリス・ルイス、ヘレン・フランケンサーラーといった9作家による50作品が展示されます。アメリカ抽象絵画のコレクションで定評のある同館にはカラーフィールドの作品が所蔵されていますが、今回は世界でも良質なカラーフィールドの作品を有するカナダのマーヴィッシュ・コレクションより約40点が初めて来日します。ロスコルームなどのコレクション展とあわせて楽しむことができそうです。

WEBメディア「イロハニアート」でも3月のおすすめの展覧会をご紹介しました。

春の江戸絵画まつりから鏑木清方、それにシダネルとマルタンまで。3月に見たいおすすめ展覧会5選 | イロハニアート

新型コロナウイルス感染症の影響などにより、各展覧会の会期が変更になる場合があります。最新の情報についてはWEBサイトにてご確認ください。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )