都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ソフィ カル―最後のとき/最初のとき」 原美術館
原美術館
「ソフィ カル―最後のとき/最初のとき」
3/20-6/30
原美術館で開催中の「ソフィ カル―最後のとき/最初のとき」 のプレスプレビューに参加してきました。
写真と言葉によって様々な「物語」を紡ぐフランスの現代美術家、ソフィ・カル。最近ではテートやポンピドゥーでの個展、また2007年のヴェネツィアビエンナーレに参加するなどして注目を集めてきました。
そのソフィ・カルの個展が今、品川の原美術館で行われています。
作品はシンプルに写真と映像の二つ、「最後に見たもの」(2010)と「海を見る」(2011)です。
前者においてソフィは失明した人々の最後に見た景色を取材。後者においては初めて海を見た人たちを捉え、タイトルにもあるように「最後のとき」と「最初のとき」の記憶や物語を提示しました。
では展示の順に沿って「最初のとき」から。1階のギャラリー2で展開されるのが「海を見る」。全12面のスクリーンによる映像インスタレーションです。
ここでソフィは、トルコのイスタンブールでまだ一度も海を見たことがない人が、初めて海を見る様子を映像におさめています。
「海を見る」2011年、ヴィデオインスタレーション ADAGP, Paris 2013 Courtesy Galerie Perrotin, Hong Kong & Paris – Gallery Koyanagi, Tokyo
しかしながらイスタンブールといえば海に面する街。何故に海を見たことがない人がいるのか。そうした点もソフィの制作の動機の一つにあります。
きっかけは新聞です。ソフィはのイスタンブールに滞在した際、海に見たことがない人たちがいること、そしてその多くがトルコ内陸部出身で、いわゆる貧しい階層の人々だということを知ります。
元々、盲目の人の記憶を辿った連作「最後に見たもの」で『最後』を捉えていたソフィは、今度は対になる『最初』の瞬間をここに見出し、早速、現地のソーシャルワーカーに依頼。貧しい地区で海を見たことのない人を集め、彼らをテーマとした映像作品を作ることを決めました。
時間は僅か4分。海を前にした人の背中を淡々と捉え、最後にはこちらに振り返ってもらうという、実にシンプルな映像作品です。
「海を見る」2011年、ヴィデオインスタレーション ADAGP, Paris 2013 Courtesy Galerie Perrotin, Hong Kong & Paris – Gallery Koyanagi, Tokyo
この後ろから人を映すという手法、実は当初ソフィが考えていたものとはやや異なるのも興味深いところ。そもそも初めて海を見てもらうのに失敗、つまりは出演者に二度も三度も海を見せてしまうことは許されません。
実は初めは人と海の間にカメラを置きましたが、それでは常に見る人の顔の表情が映し出されてしまいます。それをソフィは出演者の親密な空間にカメラが入り過ぎたと考えました。
テレビの感動ドキュメンタリー番組のようになってはいけない。結局ソフィはあくまでも背中から捉え、最後にこちらへ振り返ってもらうことを思い付きます。そうすれば我々も彼ら彼女らと海を見ることが出来る、そして最後には海を見た眼差しも確認出来る。
「海を見る」2011年、ヴィデオインスタレーション ADAGP, Paris 2013 Courtesy Galerie Perrotin, Hong Kong & Paris – Gallery Koyanagi, Tokyo
ソフィは必ずしもモデルと親密な交流をせず、あくまでも観察者の視点から彼ら彼女らを見つめます。(そもそも出演者はクルド語のみしか話せず、通訳を介してもうまくコンタクト出来ないこともあったそうです。) そこに見る側、我々の感性なり解釈の入り込む余地があります。背中はかくも語り出すのか。実に簡潔なアプローチですが、作品は思いの他に雄弁でした。
さて続いては「最後のとき」へ。こちらも舞台はトルコ。現地の古い伝承で「盲目の街」と呼ばれるイスタンブールです。
「最後に見たもの」2010年、カラー写真 ADAGP, Paris 2013 Courtesy Galerie Perrotin, Hong Kong & Paris – Gallery Koyanagi, Tokyo
長年にわたり視覚や認識の問題を作品のテーマに据えてきたソフィは、イスタンブールにそのような言い伝えがあることを知り、写真とテキストによる連作、「最後に見たもの」を制作しました。
「最後に見たもの」2010年、カラー写真 ADAGP, Paris 2013 Courtesy Galerie Perrotin, Hong Kong & Paris – Gallery Koyanagi, Tokyo
この作品が大変に充実、そして洗練されています。と言うのも、まず盲目の人に目が見えなくなった経緯をインタビュー。最後に見た記憶はどのようなものであったのかを聞き、その場所をソフィが取材。写真におさめているのです。
最後のイメージは当然ながら多様。自宅でありパートナーであり、また街の時計台であり、さらには事故の現場であったりします。 また盲目になった経緯をあえて細かに写真と一緒に提示しないのもポイント。テキストはあくまでも出品リスト、ようは別に配布されるシートで追う形になっています。
「最後に見たもの」2010年、カラー写真 ADAGP, Paris 2013 Courtesy Galerie Perrotin, Hong Kong & Paris – Gallery Koyanagi, Tokyo
ちなみにこの作品が初めに発表されたイスタンブールではテキストを配ることもなかったとか。さらにはインタビューの時間は出演者毎に異なり、10数分から数時間、また時には一日中一緒にいてイスタンブールを案内してもらったこともあったそうです。
ソフィは「最後とは誰もが共有出来ない個別の瞬間、そしてそれは極めて詩的な時でもある。」と述べています。
なお会場では最初と最後を繋ぎあわせる試みとして「海」が。「盲目の人々」シリーズの一点には、ソフィの親しい友人でもある杉本博司の「海景」が組み合わされています。
「最後に見たもの」と作家ソフィ・カル
原美術館としては1999年の「限局性激痛」以来、14年のぶりの個展。また群馬県のハラミュージアムアークではアメリカのアーティスト、ミランダ・ジュライとの二人展も開催中。
「紡がれた言葉―ソフィ カルとミランダ ジュライ/原美術館コレクション」@ハラ ミュージアム アーク(3/16~6/26)
会期中には原美術館から群馬へ往復するバスツアーもあります。入館料込みのお得なプラン。リーズナブルです。
【バスツアー「ソフィ カルとハラ ミュージアム アーク」(予約制)】
開催日:4月20日(土)/5月18日(土)/6月15日(土) 計3回
*9:30原美術館出発 (原美術館展示鑑賞時間8:30~9:20) →19:00新宿解散(予定)
参加費:一般6500円、原美術館メンバーおよびご同伴者2名様まで5500円
*原美術館、ハラミュージアムアーク入館料、伊香保グリーン牧場入場料を含みます。
申込方法:Eメールにてお申し込みください。
*表題に[バスツアー申込]、本文にお名前、参加希望日、参加人数、ご連絡先電話番号を明記し、info@haramuseum.or.jpまでお送り下さい。追ってツアーの詳細をお知らせいたします。
最後と最後のときの物語。考えさせられるものも多く、また余韻の深く残る展覧会でした。
6月30日まで開催されています。
「ソフィ カル―最後のとき/最初のとき」 原美術館(@haramuseum)
会期:3月20日(水・祝)~6月30日(日)
休館:月曜日。(但し祝日にあたる4月29日、5月6日は開館。)4月30日、5月7日。
時間:11:00~17:00。*3月20日を除く水曜は20時まで。
料金: 一般1000円、大高生700円、小中生500円
*原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生の入館無料。20名以上の団体は1人100円引。
住所:品川区北品川4-7-25
交通:JR線品川駅高輪口より徒歩15分。都営バス反96系統御殿山下車徒歩3分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
「ソフィ カル―最後のとき/最初のとき」
3/20-6/30
原美術館で開催中の「ソフィ カル―最後のとき/最初のとき」 のプレスプレビューに参加してきました。
写真と言葉によって様々な「物語」を紡ぐフランスの現代美術家、ソフィ・カル。最近ではテートやポンピドゥーでの個展、また2007年のヴェネツィアビエンナーレに参加するなどして注目を集めてきました。
そのソフィ・カルの個展が今、品川の原美術館で行われています。
作品はシンプルに写真と映像の二つ、「最後に見たもの」(2010)と「海を見る」(2011)です。
前者においてソフィは失明した人々の最後に見た景色を取材。後者においては初めて海を見た人たちを捉え、タイトルにもあるように「最後のとき」と「最初のとき」の記憶や物語を提示しました。
では展示の順に沿って「最初のとき」から。1階のギャラリー2で展開されるのが「海を見る」。全12面のスクリーンによる映像インスタレーションです。
ここでソフィは、トルコのイスタンブールでまだ一度も海を見たことがない人が、初めて海を見る様子を映像におさめています。
「海を見る」2011年、ヴィデオインスタレーション ADAGP, Paris 2013 Courtesy Galerie Perrotin, Hong Kong & Paris – Gallery Koyanagi, Tokyo
しかしながらイスタンブールといえば海に面する街。何故に海を見たことがない人がいるのか。そうした点もソフィの制作の動機の一つにあります。
きっかけは新聞です。ソフィはのイスタンブールに滞在した際、海に見たことがない人たちがいること、そしてその多くがトルコ内陸部出身で、いわゆる貧しい階層の人々だということを知ります。
元々、盲目の人の記憶を辿った連作「最後に見たもの」で『最後』を捉えていたソフィは、今度は対になる『最初』の瞬間をここに見出し、早速、現地のソーシャルワーカーに依頼。貧しい地区で海を見たことのない人を集め、彼らをテーマとした映像作品を作ることを決めました。
時間は僅か4分。海を前にした人の背中を淡々と捉え、最後にはこちらに振り返ってもらうという、実にシンプルな映像作品です。
「海を見る」2011年、ヴィデオインスタレーション ADAGP, Paris 2013 Courtesy Galerie Perrotin, Hong Kong & Paris – Gallery Koyanagi, Tokyo
この後ろから人を映すという手法、実は当初ソフィが考えていたものとはやや異なるのも興味深いところ。そもそも初めて海を見てもらうのに失敗、つまりは出演者に二度も三度も海を見せてしまうことは許されません。
実は初めは人と海の間にカメラを置きましたが、それでは常に見る人の顔の表情が映し出されてしまいます。それをソフィは出演者の親密な空間にカメラが入り過ぎたと考えました。
テレビの感動ドキュメンタリー番組のようになってはいけない。結局ソフィはあくまでも背中から捉え、最後にこちらへ振り返ってもらうことを思い付きます。そうすれば我々も彼ら彼女らと海を見ることが出来る、そして最後には海を見た眼差しも確認出来る。
「海を見る」2011年、ヴィデオインスタレーション ADAGP, Paris 2013 Courtesy Galerie Perrotin, Hong Kong & Paris – Gallery Koyanagi, Tokyo
ソフィは必ずしもモデルと親密な交流をせず、あくまでも観察者の視点から彼ら彼女らを見つめます。(そもそも出演者はクルド語のみしか話せず、通訳を介してもうまくコンタクト出来ないこともあったそうです。) そこに見る側、我々の感性なり解釈の入り込む余地があります。背中はかくも語り出すのか。実に簡潔なアプローチですが、作品は思いの他に雄弁でした。
さて続いては「最後のとき」へ。こちらも舞台はトルコ。現地の古い伝承で「盲目の街」と呼ばれるイスタンブールです。
「最後に見たもの」2010年、カラー写真 ADAGP, Paris 2013 Courtesy Galerie Perrotin, Hong Kong & Paris – Gallery Koyanagi, Tokyo
長年にわたり視覚や認識の問題を作品のテーマに据えてきたソフィは、イスタンブールにそのような言い伝えがあることを知り、写真とテキストによる連作、「最後に見たもの」を制作しました。
「最後に見たもの」2010年、カラー写真 ADAGP, Paris 2013 Courtesy Galerie Perrotin, Hong Kong & Paris – Gallery Koyanagi, Tokyo
この作品が大変に充実、そして洗練されています。と言うのも、まず盲目の人に目が見えなくなった経緯をインタビュー。最後に見た記憶はどのようなものであったのかを聞き、その場所をソフィが取材。写真におさめているのです。
最後のイメージは当然ながら多様。自宅でありパートナーであり、また街の時計台であり、さらには事故の現場であったりします。 また盲目になった経緯をあえて細かに写真と一緒に提示しないのもポイント。テキストはあくまでも出品リスト、ようは別に配布されるシートで追う形になっています。
「最後に見たもの」2010年、カラー写真 ADAGP, Paris 2013 Courtesy Galerie Perrotin, Hong Kong & Paris – Gallery Koyanagi, Tokyo
ちなみにこの作品が初めに発表されたイスタンブールではテキストを配ることもなかったとか。さらにはインタビューの時間は出演者毎に異なり、10数分から数時間、また時には一日中一緒にいてイスタンブールを案内してもらったこともあったそうです。
ソフィは「最後とは誰もが共有出来ない個別の瞬間、そしてそれは極めて詩的な時でもある。」と述べています。
なお会場では最初と最後を繋ぎあわせる試みとして「海」が。「盲目の人々」シリーズの一点には、ソフィの親しい友人でもある杉本博司の「海景」が組み合わされています。
「最後に見たもの」と作家ソフィ・カル
原美術館としては1999年の「限局性激痛」以来、14年のぶりの個展。また群馬県のハラミュージアムアークではアメリカのアーティスト、ミランダ・ジュライとの二人展も開催中。
「紡がれた言葉―ソフィ カルとミランダ ジュライ/原美術館コレクション」@ハラ ミュージアム アーク(3/16~6/26)
会期中には原美術館から群馬へ往復するバスツアーもあります。入館料込みのお得なプラン。リーズナブルです。
【バスツアー「ソフィ カルとハラ ミュージアム アーク」(予約制)】
開催日:4月20日(土)/5月18日(土)/6月15日(土) 計3回
*9:30原美術館出発 (原美術館展示鑑賞時間8:30~9:20) →19:00新宿解散(予定)
参加費:一般6500円、原美術館メンバーおよびご同伴者2名様まで5500円
*原美術館、ハラミュージアムアーク入館料、伊香保グリーン牧場入場料を含みます。
申込方法:Eメールにてお申し込みください。
*表題に[バスツアー申込]、本文にお名前、参加希望日、参加人数、ご連絡先電話番号を明記し、info@haramuseum.or.jpまでお送り下さい。追ってツアーの詳細をお知らせいたします。
最後と最後のときの物語。考えさせられるものも多く、また余韻の深く残る展覧会でした。
6月30日まで開催されています。
「ソフィ カル―最後のとき/最初のとき」 原美術館(@haramuseum)
会期:3月20日(水・祝)~6月30日(日)
休館:月曜日。(但し祝日にあたる4月29日、5月6日は開館。)4月30日、5月7日。
時間:11:00~17:00。*3月20日を除く水曜は20時まで。
料金: 一般1000円、大高生700円、小中生500円
*原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生の入館無料。20名以上の団体は1人100円引。
住所:品川区北品川4-7-25
交通:JR線品川駅高輪口より徒歩15分。都営バス反96系統御殿山下車徒歩3分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「幸之助と伝統工芸」展、ブログ事前告知キャンペーン!
4月13日よりパナソニック汐留ミュージアムで始まる「開館10周年記念特別展 幸之助と伝統工芸」。
開館10周年記念特別展 「幸之助と伝統工芸」@パナソニック汐留ミュージアム(4/13~8/25)
パナソニックの創業者で実業家の松下幸之助が、日本の伝統文化に深い理解を示し、絵画や工芸品を蒐集していたばかりか、工芸団体の役員などを務めるなどの支援活動も行っていた。
まさに「経営の神様」である幸之助が、いかに日本の伝統、つまりは「日本のものづくり」にも携わっていたのか。知られざる幸之助と伝統工芸の関わりを紹介する展覧会です。
その「開館10周年記念特別展 幸之助と伝統工芸」展において、ブロガー、及びfacebookユーザー対象の事前告知キャンペーンがスタートしています。
富本憲吉「金銀彩色絵胴紐大鉢」 パナソニック株式会社蔵
参加方法は至って簡単。下記リンク先の専用サイトへアクセスし、所定のフォームへ申込事項を入力。その後、添付のチラシ画像及び、必須事項(展覧会名や期間など。)をブログなどにアップ。あとは展覧会への期待や思いなどを自由に記すだけです。
「開館10周年記念特別展 幸之助と伝統工芸 告知協力キャンペーン」
すると先着50名に展覧会のチケットをペアでプレゼント!
【紹介していただきたい内容】◯印は必須項目
◯展覧会名 開館10周年記念特別展 「幸之助と伝統工芸」
◯開会期日 2013年4月13日(土)~8月25日(日)
開館時間 午前10時より午後6時まで(ご入館は午後5時30分まで)
休館日 毎週水曜日
入館料 一般700円、大学生500円、中・高校生200円、小学生以下無料。
*65歳以上の方で年齢のわかるもの提示:600円
*20名以上の団体は各100円引。障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名までは無料。
◯会場 パナソニック汐留ミュージアム
住所 東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
◯公式サイト http://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/13/130413/
展覧会の詳細については既に同ミュージアムのWEBにもアップ。
「『開館10周年記念特別展』幸之助と伝統工芸展」プレスリリース@パナソニック汐留ミュージアム
特に上記リリースには展示構成、及び一部出品作などの情報も公開。なかには三輪休和に魯山人に楽家四代の一入らといった大家の名も。ちなみに出品総数は幸之助ゆかりの作家65名による90点。
石黒宗麿「彩晩秋壺」 パナソニック株式会社蔵
それこそパナソニックミュージアムだからこそ初めて実現した展覧会なのです。
【招待券プレゼントの条件】
1.展覧会の開催日前日までにブログ等のWEBサイトで本展をご紹介いただくこと。
2.ブログ等に手紹介する際には、◯項目及び添付した展覧会のチラシをご掲載いただくこと。
ちなみに本キャンペーンではチケットプレゼントの他、希望者5名に以下の講演会への招待も行われます。
【講演会「松下幸之助と伝統工芸」】
出演 森口邦彦(染色家、重要無形文化財「友禅」保持者)
聞き手 諸山正則(本展監修者、東京国立近代美術館主任研究員)
日時 4月14日(日)13:30~15:00(開場13:00)
【講演会「松下幸之助と茶道」】
出演 鵬雲斎千玄室(裏千家第十五代前家元)
日時 4月27日(土)13:00~14:00(開場12:30)
*会場はいずれもパナソニック東京汐留ビル5階ホール。
告知キャンペーンは先着順で開催前日の4月12日まで。ブログのジャンルは問いません。
炭谷一圭「芦鷺地文真形釜」 パナソニック株式会社蔵
お馴染み「猫アリーナ」のchariotさんも早速、告知キャンペーンに参加しておられます。「告知と言っても一体、どういう形で書けば良いのかわからない。」などという方、是非参考にしてみて下さい。
「幸之助と伝統工芸」展 予告 パナソニック汐留ミュージアム@猫アリーナ
それでは改めて「開館10周年記念特別展 幸之助と伝統工芸」展のブログ、facebook事前告知キャンペーン。
「開館10周年記念特別展 幸之助と伝統工芸 告知協力キャンペーン」
先着順で4/12までです。まずは奮ってご参加下さい!
【キャンペーン注意事項】
1.Twitterなどのミニブログは対象となりません。あらかじめご了承ください。
2.プレゼント発送は、掲載確認後随時発送させていただきます。
3.WEB掲載のご報告を受けた先着50名様となりますので、申込みされてもブログでのご掲載なければ、早くご掲載された方が優先となりますのでご注意ください。
*本展のPR担当の株式会社ウィンダム。ツイッターでは様々な展覧会情報の他、ブロガー企画の告知なども。要フォローです→@WindamArtPR
開館10周年記念特別展 「幸之助と伝統工芸」@パナソニック汐留ミュージアム(4/13~8/25)
パナソニックの創業者で実業家の松下幸之助が、日本の伝統文化に深い理解を示し、絵画や工芸品を蒐集していたばかりか、工芸団体の役員などを務めるなどの支援活動も行っていた。
まさに「経営の神様」である幸之助が、いかに日本の伝統、つまりは「日本のものづくり」にも携わっていたのか。知られざる幸之助と伝統工芸の関わりを紹介する展覧会です。
その「開館10周年記念特別展 幸之助と伝統工芸」展において、ブロガー、及びfacebookユーザー対象の事前告知キャンペーンがスタートしています。
富本憲吉「金銀彩色絵胴紐大鉢」 パナソニック株式会社蔵
参加方法は至って簡単。下記リンク先の専用サイトへアクセスし、所定のフォームへ申込事項を入力。その後、添付のチラシ画像及び、必須事項(展覧会名や期間など。)をブログなどにアップ。あとは展覧会への期待や思いなどを自由に記すだけです。
「開館10周年記念特別展 幸之助と伝統工芸 告知協力キャンペーン」
すると先着50名に展覧会のチケットをペアでプレゼント!
【紹介していただきたい内容】◯印は必須項目
◯展覧会名 開館10周年記念特別展 「幸之助と伝統工芸」
◯開会期日 2013年4月13日(土)~8月25日(日)
開館時間 午前10時より午後6時まで(ご入館は午後5時30分まで)
休館日 毎週水曜日
入館料 一般700円、大学生500円、中・高校生200円、小学生以下無料。
*65歳以上の方で年齢のわかるもの提示:600円
*20名以上の団体は各100円引。障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名までは無料。
◯会場 パナソニック汐留ミュージアム
住所 東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
◯公式サイト http://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/13/130413/
展覧会の詳細については既に同ミュージアムのWEBにもアップ。
「『開館10周年記念特別展』幸之助と伝統工芸展」プレスリリース@パナソニック汐留ミュージアム
特に上記リリースには展示構成、及び一部出品作などの情報も公開。なかには三輪休和に魯山人に楽家四代の一入らといった大家の名も。ちなみに出品総数は幸之助ゆかりの作家65名による90点。
石黒宗麿「彩晩秋壺」 パナソニック株式会社蔵
それこそパナソニックミュージアムだからこそ初めて実現した展覧会なのです。
【招待券プレゼントの条件】
1.展覧会の開催日前日までにブログ等のWEBサイトで本展をご紹介いただくこと。
2.ブログ等に手紹介する際には、◯項目及び添付した展覧会のチラシをご掲載いただくこと。
ちなみに本キャンペーンではチケットプレゼントの他、希望者5名に以下の講演会への招待も行われます。
【講演会「松下幸之助と伝統工芸」】
出演 森口邦彦(染色家、重要無形文化財「友禅」保持者)
聞き手 諸山正則(本展監修者、東京国立近代美術館主任研究員)
日時 4月14日(日)13:30~15:00(開場13:00)
【講演会「松下幸之助と茶道」】
出演 鵬雲斎千玄室(裏千家第十五代前家元)
日時 4月27日(土)13:00~14:00(開場12:30)
*会場はいずれもパナソニック東京汐留ビル5階ホール。
告知キャンペーンは先着順で開催前日の4月12日まで。ブログのジャンルは問いません。
炭谷一圭「芦鷺地文真形釜」 パナソニック株式会社蔵
お馴染み「猫アリーナ」のchariotさんも早速、告知キャンペーンに参加しておられます。「告知と言っても一体、どういう形で書けば良いのかわからない。」などという方、是非参考にしてみて下さい。
「幸之助と伝統工芸」展 予告 パナソニック汐留ミュージアム@猫アリーナ
それでは改めて「開館10周年記念特別展 幸之助と伝統工芸」展のブログ、facebook事前告知キャンペーン。
「開館10周年記念特別展 幸之助と伝統工芸 告知協力キャンペーン」
先着順で4/12までです。まずは奮ってご参加下さい!
【キャンペーン注意事項】
1.Twitterなどのミニブログは対象となりません。あらかじめご了承ください。
2.プレゼント発送は、掲載確認後随時発送させていただきます。
3.WEB掲載のご報告を受けた先着50名様となりますので、申込みされてもブログでのご掲載なければ、早くご掲載された方が優先となりますのでご注意ください。
*本展のPR担当の株式会社ウィンダム。ツイッターでは様々な展覧会情報の他、ブロガー企画の告知なども。要フォローです→@WindamArtPR
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「文谷有佳里 なにもない風景を眺める:赤と黒」 Gallery Jin Projects
Gallery Jin Projects
「文谷有佳里 なにもない風景を眺める:赤と黒」
3/13-4/6
Gallery Jin Projectsで開催中の文谷有佳里個展、「なにもない風景を眺める:赤と黒」へ行ってきました。
現在、上野の森美術館で行われているVOCA2013展にも選出された文谷有佳里。1985年に岡山で生まれ、2010年に東京芸大院の先端表現を修了。現在、愛知県で制作を続ける若いアーティストです。
文谷のドローイングと言えば、ともかく乱れ舞うような線のリズム、そしてその即興的な動きに大きな魅力がありますが、今回はこれまでの黒いペンに加え赤を使用。赤と黒という対比的な色を駆使し、絵画平面という空間を超えて、線自体が自律して運動して絡み合うかのような独自の世界を展開しています。
VOCAにおいて推薦委員の飯田志保子(インディペンデント・キュレーター)は、文谷について次のように評しています。
「文谷の作品は、カンディンスキーや武満徹が描いた図形楽譜の作曲的指示性を併せ持った、ドローイング、建築、音楽の総合芸術的な実践である。」(VOCA2013展図録P.79より転載。)
確かに純然たる抽象である文谷のドローイングも、即興や音楽というキーワードとともに、線と線が交差して、いつしか形を組上げていく建築的な構造を見ると、不思議と「何もない」はずの風景に何らかのイメージがわき上がってくるのではないでしょうか。
ひしめく曲線、うごめくユニットはまるで群衆のようです。そこへぐさりと大きく突き刺さる力強い直線はさながら舞台。また破線に点線も。放射状に進むかと思い気や、突如消失。まだ平行になって出現したりと様々。実にスリリングです。
なお今個展ではドローイングにあわせて、ギャラリー入口のガラス面にも作品を展開。
ガラスのドローイングとその向こうにある紙のドローイング。錯綜する線の動きとあいまって、より複層的な世界が作り上げられています。(ガラス面の作品は初日に公開制作で出来たものだそうです。)
VOCAでも大作を披露した文谷の今の活動。上野にほど近い、ここ末広町のアーツ千代田3331でも楽しむことが出来ました。
「VOCA展2013」@上野の森美術館(~3/30)
4月6日までの開催です。*Gallery Jinは3331の2階から地下1階へと移転しました。
「文谷有佳里 なにもない風景を眺める:赤と黒」 Gallery Jin Projects
会期:3月13日(水)~4月6日(土)
休廊:月曜、火曜日。
時間:12:00~19:00
住所:千代田区外神田6-11-14 3331Arts Chiyoda B108
交通:東京メトロ銀座線末広町駅4番出口から徒歩2分、東京メトロ千代田線湯島駅6番出口から徒歩4分、JR線御徒町駅南口から徒歩8分。
「文谷有佳里 なにもない風景を眺める:赤と黒」
3/13-4/6
Gallery Jin Projectsで開催中の文谷有佳里個展、「なにもない風景を眺める:赤と黒」へ行ってきました。
現在、上野の森美術館で行われているVOCA2013展にも選出された文谷有佳里。1985年に岡山で生まれ、2010年に東京芸大院の先端表現を修了。現在、愛知県で制作を続ける若いアーティストです。
文谷のドローイングと言えば、ともかく乱れ舞うような線のリズム、そしてその即興的な動きに大きな魅力がありますが、今回はこれまでの黒いペンに加え赤を使用。赤と黒という対比的な色を駆使し、絵画平面という空間を超えて、線自体が自律して運動して絡み合うかのような独自の世界を展開しています。
VOCAにおいて推薦委員の飯田志保子(インディペンデント・キュレーター)は、文谷について次のように評しています。
「文谷の作品は、カンディンスキーや武満徹が描いた図形楽譜の作曲的指示性を併せ持った、ドローイング、建築、音楽の総合芸術的な実践である。」(VOCA2013展図録P.79より転載。)
確かに純然たる抽象である文谷のドローイングも、即興や音楽というキーワードとともに、線と線が交差して、いつしか形を組上げていく建築的な構造を見ると、不思議と「何もない」はずの風景に何らかのイメージがわき上がってくるのではないでしょうか。
ひしめく曲線、うごめくユニットはまるで群衆のようです。そこへぐさりと大きく突き刺さる力強い直線はさながら舞台。また破線に点線も。放射状に進むかと思い気や、突如消失。まだ平行になって出現したりと様々。実にスリリングです。
なお今個展ではドローイングにあわせて、ギャラリー入口のガラス面にも作品を展開。
ガラスのドローイングとその向こうにある紙のドローイング。錯綜する線の動きとあいまって、より複層的な世界が作り上げられています。(ガラス面の作品は初日に公開制作で出来たものだそうです。)
VOCAでも大作を披露した文谷の今の活動。上野にほど近い、ここ末広町のアーツ千代田3331でも楽しむことが出来ました。
「VOCA展2013」@上野の森美術館(~3/30)
4月6日までの開催です。*Gallery Jinは3331の2階から地下1階へと移転しました。
「文谷有佳里 なにもない風景を眺める:赤と黒」 Gallery Jin Projects
会期:3月13日(水)~4月6日(土)
休廊:月曜、火曜日。
時間:12:00~19:00
住所:千代田区外神田6-11-14 3331Arts Chiyoda B108
交通:東京メトロ銀座線末広町駅4番出口から徒歩2分、東京メトロ千代田線湯島駅6番出口から徒歩4分、JR線御徒町駅南口から徒歩8分。
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「アーティスト・ファイル2013」 国立新美術館
国立新美術館
「アーティスト・ファイル2013」
1/23-4/1
国立新美術館で開催中の「アーティスト・ファイル2013」へいってきました。
開館以来、国内外の現代作家を個展形式で紹介するアーティストファイル。すっかり同館の現代アート展の定番ともなりましたが、今年は2年ぶりの開催。海外3作家を含む、計8名の作家が参加しています。
出品作家は以下の通りです。
ダレン・アーモンド(1971~英国、ロンドン在住)
東亭順(1973~東京、バーゼル在住)
ヂョン・ヨンドゥ(1969~韓国、ソウル在住)
利部志穂(1981~神奈川県、神奈川県在住)
國安孝昌(1957~北海道、茨城県在住)
ナリニ・マラニ(1946~インド、現パキスタン、ムンバイ在住)
中澤英明(1955~新潟県、岐阜県在住)
志賀理江子(1980~愛知県、宮城県在住)
それでは早速、順に印象に残った展示を簡単に。まずは韓国のヂョン・ヨンドゥ。絵画と写真でインスタレーションを展開するアーティストです。
ヂョン・ヨンドゥ「ワンダーランドよりお昼寝」2004年
クレヨンやペンで描いた子どもの絵と、そこに描かれたモチーフに似たような舞台の写真。明らかに互いに関係するような配置です。一体どのような意味があるのかと追っかけると実に巧妙。写真は子どもの描いた絵を元にヂョンが作り上げた架空の場所なのです。
ヂョン・ヨンドゥ「ワンダーランドよりお昼寝」2004年
つまり子どもの中にあるイメージを舞台上でヂョンが変換、それを写真に起こすという作業。タイトルも「シンデレラ」や「赤ずきん」といった物語から「歌手になりたい」というような一種の願望までと多様です。
面白いのはその両者のイメージが全て同一ではないこと。ヂョンが子どもの夢をまた別の形で表現。夢と現実、相互のイメージがない交ぜになって複層的に展開します。そこに今度は見る側の感性の入り込む余地が。とてもイメージを膨らませることの出来る作品だと感心しました。
さて新美の巨大なホワイトキューブ。それをとりわけ効果的に用いたのが國安孝昌です。ともかく積み上げられたブロックに木材、床から天井、そして壁面もいっぱいに埋め尽くす丸太。凄まじい重量感です。
アーティスト・ファイル2013展 國安孝昌展示風景
ブロックが土を焼いて作ったという陶製だそうですが、ともかく丸太もまるで花火を見るかのように大きく輪を描いて連なっています。この迫力。どこかプリミティブなエネルギーを感じさせながらも、何らかの祭祀を行う場のような荘厳な気配も漂っていました。
さて國安のインスタレーションが「剛」に「密」としたら、利部のそれは「柔」に良い意味での「粗」。あたかも空間からモノを引き算をして展開する利部のインスタレーションも極めて高い完成度を誇っています。
アーティスト・ファイル2013展 利部志穂展示風景
まず見事なのは空間を上下に分けた使い方。空間中央には何本ものパイプが横切り、上部にはフラッグを連想させるような三角形のモチーフが。そして下部にはお馴染みの「いらなくなったもの」、つまりはまさに打ち捨てられたようなビニールや針金、またぐるぐる巻きの紙などが一見ランダムに置かれています。
このモノ自体と空間と図像との複雑な関係。まるで一種の謎掛けのような展示ですが、そのモノや空間に身を置いていると、何物にも変え難いような心地よい感覚がわきあがってきます。
利部さん魅力を言葉にするのはすこぶる難しいのですが、言わば展示のキレはアーティストファイル中でも随一。簡単に立ち去ることを許しません。
なお作品は極めて繊細。思わず踏んでしまうような位置にも置かれています。それこそ見る者の感性、注意力を喚起させるような展示です。足元や身の回りに十分に気をつけてご覧ください。(出来れば人の少ない時間帯の観覧をおすすめです。)
宮城県名取市の北釜という場所の歴史と記憶と人々の生活を思いがけない手法で引き出した志賀利江子も充実しています。
志賀利江子「螺旋海岸」2010年
ちなみに思いがけないというのは写真ですが、単純にそれを壁面に並べているわけではありません。ここで志賀は写真を衝立て状に置き、観客の行く手を阻むように設置。その合間を歩いていると、いつしか実際の北釜を歩いているかのような錯覚すら覚えるのです。
志賀は2008年から北釜に住み込んで制作を続けているそうですが、住む者だからこそ分かり得るような土地の言わば臭い。それを作品から感じました。
ラストのダレン・アーモンドはまさに幻想的です。あえてネタバレしませんが、その淡くか弱い光に包み込まれた風景写真はまさに夢とも彼岸とも。この世のものとは思えないほどの美しさをたたえています。
ダレン・アーモンド「Fullmoon アイフェルにて2」2002年
山や森や水辺を包みこむ控えめな光の世界。すっと吸い込まれるような静寂の風景がここにありました。
いつもながらの個展形式ということで、全体に統一感があるわけでもありませんが、惹かれる作品も多く、非常に充実した展覧会だったのではないでしょうか。なお会場の展示はyoutubeの「アーティスト・ファイル2013」チャンネルに映像でアップされています。
「アーティスト・ファイル2013」youtubeチャンネル
貴重な制作風景、作家インタビューなどもあります。あわせてご覧ください。
アーティスト・ファイル2013展PR映像
4月1日まで開催されています。おすすめします。
「アーティスト・ファイル2013―現代の作家たち」 国立新美術館
会期:1月23日(水)~4月1日(月)
休館:火曜日
時間:10:00~18:00 *毎週金曜日は夜20時まで開館。*3/23(土)は「六本木アートナイト2013」開催にともない22時まで開館。*入場は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大学生500(300)円、高校生以下無料。
* ( )内は20名以上の団体料金。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
「アーティスト・ファイル2013」
1/23-4/1
国立新美術館で開催中の「アーティスト・ファイル2013」へいってきました。
開館以来、国内外の現代作家を個展形式で紹介するアーティストファイル。すっかり同館の現代アート展の定番ともなりましたが、今年は2年ぶりの開催。海外3作家を含む、計8名の作家が参加しています。
出品作家は以下の通りです。
ダレン・アーモンド(1971~英国、ロンドン在住)
東亭順(1973~東京、バーゼル在住)
ヂョン・ヨンドゥ(1969~韓国、ソウル在住)
利部志穂(1981~神奈川県、神奈川県在住)
國安孝昌(1957~北海道、茨城県在住)
ナリニ・マラニ(1946~インド、現パキスタン、ムンバイ在住)
中澤英明(1955~新潟県、岐阜県在住)
志賀理江子(1980~愛知県、宮城県在住)
それでは早速、順に印象に残った展示を簡単に。まずは韓国のヂョン・ヨンドゥ。絵画と写真でインスタレーションを展開するアーティストです。
ヂョン・ヨンドゥ「ワンダーランドよりお昼寝」2004年
クレヨンやペンで描いた子どもの絵と、そこに描かれたモチーフに似たような舞台の写真。明らかに互いに関係するような配置です。一体どのような意味があるのかと追っかけると実に巧妙。写真は子どもの描いた絵を元にヂョンが作り上げた架空の場所なのです。
ヂョン・ヨンドゥ「ワンダーランドよりお昼寝」2004年
つまり子どもの中にあるイメージを舞台上でヂョンが変換、それを写真に起こすという作業。タイトルも「シンデレラ」や「赤ずきん」といった物語から「歌手になりたい」というような一種の願望までと多様です。
面白いのはその両者のイメージが全て同一ではないこと。ヂョンが子どもの夢をまた別の形で表現。夢と現実、相互のイメージがない交ぜになって複層的に展開します。そこに今度は見る側の感性の入り込む余地が。とてもイメージを膨らませることの出来る作品だと感心しました。
さて新美の巨大なホワイトキューブ。それをとりわけ効果的に用いたのが國安孝昌です。ともかく積み上げられたブロックに木材、床から天井、そして壁面もいっぱいに埋め尽くす丸太。凄まじい重量感です。
アーティスト・ファイル2013展 國安孝昌展示風景
ブロックが土を焼いて作ったという陶製だそうですが、ともかく丸太もまるで花火を見るかのように大きく輪を描いて連なっています。この迫力。どこかプリミティブなエネルギーを感じさせながらも、何らかの祭祀を行う場のような荘厳な気配も漂っていました。
さて國安のインスタレーションが「剛」に「密」としたら、利部のそれは「柔」に良い意味での「粗」。あたかも空間からモノを引き算をして展開する利部のインスタレーションも極めて高い完成度を誇っています。
アーティスト・ファイル2013展 利部志穂展示風景
まず見事なのは空間を上下に分けた使い方。空間中央には何本ものパイプが横切り、上部にはフラッグを連想させるような三角形のモチーフが。そして下部にはお馴染みの「いらなくなったもの」、つまりはまさに打ち捨てられたようなビニールや針金、またぐるぐる巻きの紙などが一見ランダムに置かれています。
このモノ自体と空間と図像との複雑な関係。まるで一種の謎掛けのような展示ですが、そのモノや空間に身を置いていると、何物にも変え難いような心地よい感覚がわきあがってきます。
利部さん魅力を言葉にするのはすこぶる難しいのですが、言わば展示のキレはアーティストファイル中でも随一。簡単に立ち去ることを許しません。
なお作品は極めて繊細。思わず踏んでしまうような位置にも置かれています。それこそ見る者の感性、注意力を喚起させるような展示です。足元や身の回りに十分に気をつけてご覧ください。(出来れば人の少ない時間帯の観覧をおすすめです。)
宮城県名取市の北釜という場所の歴史と記憶と人々の生活を思いがけない手法で引き出した志賀利江子も充実しています。
志賀利江子「螺旋海岸」2010年
ちなみに思いがけないというのは写真ですが、単純にそれを壁面に並べているわけではありません。ここで志賀は写真を衝立て状に置き、観客の行く手を阻むように設置。その合間を歩いていると、いつしか実際の北釜を歩いているかのような錯覚すら覚えるのです。
志賀は2008年から北釜に住み込んで制作を続けているそうですが、住む者だからこそ分かり得るような土地の言わば臭い。それを作品から感じました。
ラストのダレン・アーモンドはまさに幻想的です。あえてネタバレしませんが、その淡くか弱い光に包み込まれた風景写真はまさに夢とも彼岸とも。この世のものとは思えないほどの美しさをたたえています。
ダレン・アーモンド「Fullmoon アイフェルにて2」2002年
山や森や水辺を包みこむ控えめな光の世界。すっと吸い込まれるような静寂の風景がここにありました。
いつもながらの個展形式ということで、全体に統一感があるわけでもありませんが、惹かれる作品も多く、非常に充実した展覧会だったのではないでしょうか。なお会場の展示はyoutubeの「アーティスト・ファイル2013」チャンネルに映像でアップされています。
「アーティスト・ファイル2013」youtubeチャンネル
貴重な制作風景、作家インタビューなどもあります。あわせてご覧ください。
アーティスト・ファイル2013展PR映像
4月1日まで開催されています。おすすめします。
「アーティスト・ファイル2013―現代の作家たち」 国立新美術館
会期:1月23日(水)~4月1日(月)
休館:火曜日
時間:10:00~18:00 *毎週金曜日は夜20時まで開館。*3/23(土)は「六本木アートナイト2013」開催にともない22時まで開館。*入場は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大学生500(300)円、高校生以下無料。
* ( )内は20名以上の団体料金。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
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DIC川村記念美術館はお花見日和
現在「BLACKS展」を開催中のDIC川村記念美術館。
お馴染みのロスコ・ルームしかり、アメリカ現代美術の膨大なコレクションを擁する美術館自体はもちろんのこと、30ヘクタールにも及ぶ広大な庭園の散策も楽しみの一つとなっています。
今年は春先に暖かい日が続いたせいか開花が早まりましたが、川村でもちょうど桜が見頃。というわけで、BLACKS展の再訪とともに、春の花で華やぐ庭園を散歩してきました。
まずはロータリーから遊歩道へ。しだれ桜がお出迎えしてくれました。
続いてモクレンも。
遊歩道沿いの桜もかなり咲いています。
都内ではそろそろ散り始めのソメイヨシノもここではもう少し楽しめそうです。
それではヘンリー・ムーアが最晩年に手がけた彫像、「ブロンズの形態」(1985)のある大広場へ向かいましょう。
桜とともに我らが千葉県の花、なのはながお出迎えしてくれます。ちなみにこのなのはな、県が昭和29年にNHKで公募したことに由来するとか。千葉観光では定番のお花です。
さて園内、計250本も桜が植えられているそうですが、ソメイヨシノばかりだけでないのが嬉しいところ。
全部で10種類。春と秋の2回咲くジュウガツザクラなども。また広場のオモイガワはまだ5分咲きほどでしょうか。
そして池に面してずらりと並ぶのがしだれ桜です。私の写真が拙いのが何とも残念ですが、実に見事。ほぼ満開でした。
ハクモクレンとの取り合わせもまた綺麗。
広大な園内、まだまだお花もたくさん。
三寒四温、少し肌寒い日も続きますが、春の雰囲気を楽しむことが出来ました。
ちなみに佐倉では4月6日から市内の「佐倉ふるさと広場」にてチューリップフェスタも。川村記念からは車での移動が必要になりますが、ドライブを兼ねて出かけられても良いのではないでしょうか。
なお色とりどりのお花とは一転、美術における黒の表現を写真、彫刻、絵画で提示する「BLACKS展」もいよいよ会期あと半月強ほど。4月14日までです。
「BLACKS展」@DIC川村記念美術館(プレビューに参加しました。)
特にアメリカの現代彫刻家、ニーヴェルスンの作品が圧巻。国内で殆ど初めてまとめて紹介される機会。お見逃しなきようおすすめします。
美術館の庭園の開花情報などについては同館のツイッターアカウント(@kawamura_dic)、もしくは「自然散策路」のWEBページをご覧ください。
「BLACKS ルイーズ・ニーヴェルスン|アド・ラインハート|杉本博司」 DIC川村記念美術館(@kawamura_dic)
会期:2月2日(土)~4月14日(日)
休館:月曜日。但し2/11は開館。2/12は休館。
時間:9:30~17:00(入館は16時半まで)
料金:一般1300(1100)円、学生・65歳以上1000(800)円、小・中・高生500(400)円。
*( )内は20名以上の団体。
住所:千葉県佐倉市坂戸631
交通:京成線京成佐倉駅、JR線佐倉駅下車。それぞれ南口より無料送迎バスにて30分と20分。東京駅八重洲北口より高速バス「マイタウン・ダイレクトバス佐倉ICルート」にて約1時間。(一日一往復)
お馴染みのロスコ・ルームしかり、アメリカ現代美術の膨大なコレクションを擁する美術館自体はもちろんのこと、30ヘクタールにも及ぶ広大な庭園の散策も楽しみの一つとなっています。
今年は春先に暖かい日が続いたせいか開花が早まりましたが、川村でもちょうど桜が見頃。というわけで、BLACKS展の再訪とともに、春の花で華やぐ庭園を散歩してきました。
まずはロータリーから遊歩道へ。しだれ桜がお出迎えしてくれました。
続いてモクレンも。
遊歩道沿いの桜もかなり咲いています。
都内ではそろそろ散り始めのソメイヨシノもここではもう少し楽しめそうです。
それではヘンリー・ムーアが最晩年に手がけた彫像、「ブロンズの形態」(1985)のある大広場へ向かいましょう。
桜とともに我らが千葉県の花、なのはながお出迎えしてくれます。ちなみにこのなのはな、県が昭和29年にNHKで公募したことに由来するとか。千葉観光では定番のお花です。
さて園内、計250本も桜が植えられているそうですが、ソメイヨシノばかりだけでないのが嬉しいところ。
全部で10種類。春と秋の2回咲くジュウガツザクラなども。また広場のオモイガワはまだ5分咲きほどでしょうか。
そして池に面してずらりと並ぶのがしだれ桜です。私の写真が拙いのが何とも残念ですが、実に見事。ほぼ満開でした。
ハクモクレンとの取り合わせもまた綺麗。
広大な園内、まだまだお花もたくさん。
三寒四温、少し肌寒い日も続きますが、春の雰囲気を楽しむことが出来ました。
ちなみに佐倉では4月6日から市内の「佐倉ふるさと広場」にてチューリップフェスタも。川村記念からは車での移動が必要になりますが、ドライブを兼ねて出かけられても良いのではないでしょうか。
なお色とりどりのお花とは一転、美術における黒の表現を写真、彫刻、絵画で提示する「BLACKS展」もいよいよ会期あと半月強ほど。4月14日までです。
「BLACKS展」@DIC川村記念美術館(プレビューに参加しました。)
特にアメリカの現代彫刻家、ニーヴェルスンの作品が圧巻。国内で殆ど初めてまとめて紹介される機会。お見逃しなきようおすすめします。
美術館の庭園の開花情報などについては同館のツイッターアカウント(@kawamura_dic)、もしくは「自然散策路」のWEBページをご覧ください。
「BLACKS ルイーズ・ニーヴェルスン|アド・ラインハート|杉本博司」 DIC川村記念美術館(@kawamura_dic)
会期:2月2日(土)~4月14日(日)
休館:月曜日。但し2/11は開館。2/12は休館。
時間:9:30~17:00(入館は16時半まで)
料金:一般1300(1100)円、学生・65歳以上1000(800)円、小・中・高生500(400)円。
*( )内は20名以上の団体。
住所:千葉県佐倉市坂戸631
交通:京成線京成佐倉駅、JR線佐倉駅下車。それぞれ南口より無料送迎バスにて30分と20分。東京駅八重洲北口より高速バス「マイタウン・ダイレクトバス佐倉ICルート」にて約1時間。(一日一往復)
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「VOCA展2013」 上野の森美術館
上野の森美術館
「VOCA展2013 現代美術の展望 新しい平面の画家たち」
3/15-3/30
上野の森美術館で開催中の「VOCA展2013 現代美術の展望 新しい平面の画家たち」へ行ってきました。
春の上野、桜の上野を舞台にしたVOCA展も今年で20回目。今回も学芸員やジャーナリストから推挙された40歳以下の若手作家の作品が集結。『平面』という一つのフォーマットを共通に、各作家が様々な表現を繰り広げています。
【受賞作家】
VOCA賞 鈴木紗也香「あの日の眠りは確かに熱を帯びていた」
VOCA奨励賞 柴田麻衣「Lakeside」、平子雄一「Lost In Thought」
佳作賞 大崎のぶゆき「shining mountain/climbing the world #03-1~03」、吉田晋之介「雨」
大原美術館賞 佐藤翠「Reflections of a closet」
瓜生祐子「curry and rice」/「pudding a la mode」 アクリル・鉛筆、綿布、パネル
ともかく『平面の今』を楽しめるのがVOCAの良いところ。まずは瓜生祐子の「curry and rice」と「pudding a la mode」から。遠目では白地に細い線と淡い色合いによる風景。しかし近づいてみると思いもよらないイメージが描かれていることがわかります。
瓜生祐子「pudding a la mode」 アクリル・鉛筆、綿布、パネル
なんとこれはティラミスやプディングなどの食品を拡大したもの。とすると山の崖だと思っていた層は実はケーキのスポンジ。確かに繊細なイメージながらも、どこか見る者の目を惑わしもする挑戦的な作品でもあります。
江川純太「明日、笑うだろうか?脳は次へと会話が進む」/「世界は次に進む。やめた。覗く我々は瞬間に気づく。」 油彩・カンヴァス
続いては江川純太の「明日、笑うだろうか?脳は次へと会話が進む」と「世界は次に進む。やめた。覗く我々は瞬間に気づく。」。その謎めいたタイトルと、ともかくビビットな色面がうごめきせめぎあう世界。モチーフは複雑怪奇、それこそ抽象ですが、よく見ていると個々の図像が緩やかに関わり合っているような印象も。どこか有機的です。
eitoeikoでの個展を何度か拝見し、その度に江川の変化(かつてはオールオーヴァー的なモチーフでした。)を見てきましたが、この粘性を帯びた濃密な空間にも魅力を感じました。
吉田夏奈「城山日出峰の目眩」 オイルパステル・クレヨン・紙
先へ進みましょう。こちらはあざみ野コンテンポラリーでも見事なインスタレーションを見せてくれた吉田夏奈。韓国済州島にある火山湾をモチーフとした風景を展開。美しい青みを帯びた湾が、まるでCGを思わせる三次元的な様相で描かれています。
文谷有佳里「なにもない風景を眺める」 ペン・韓紙
そして文谷有佳里のドローイング。写真図版などでは全く魅力が伝わりませんが、だからこそ実際の作品に接していただきたいもの。白い紙に黒のペンを半ば即興的に走らせ、凄まじく動的でかつ音楽的とも言えるイメージを形成。ともかくその激しく運動する線を目で追っていくと、いつしか紙の向こうにでも取り込まれてしまうかのような迫力があります。
山口英紀「うたたか」 紙本水墨
また同じく図版では良さをお伝えしにくいのが山口英紀です。作品名は「うたたか」。まるで水の粒のように支持体が壁面に浮遊する作品です。
山口英紀「うたたか」 紙本水墨 *拡大
既にご存知の方も多いかもしれませんが、山口の手にあるのは鉛筆でなく筆。つまり水墨画です。驚くほど精緻な墨のタッチにより重機などの工事現場を表現。解体中と建築中のビルなどが墨の掠れと滲みの向こうに広がっています。
さらにもう一点、図版で分かりにくい方をあえてプッシュ。それが和田真由子。国立国際美術館の「リアル・ジャパネスク」展にも出品のあったアーティストです。
和田真由子「リチャード3世」 鉛筆・アクリルガッシュ・アクリルメディウム・メディウム塗布シート・木枠
それこそ障子ならぶ木枠に白いシート。そしてタイトルに「リチャード3世」。一見、さっぱり伝わらないかもしれませんが、やはりこの方のアプローチは面白い。専門的な解説などは図録に当たっていただく他ありませんが、会場では少し斜め横から作品を見て下さい。とすると何かが浮かび上がる。あくまでも断片的ですが、見る側の想像力を喚起させるような手法。決して取っ付き易くはありませんが、とても巧妙だと思いました。
最後に私がとりわけ感銘した作品を。それが佳作賞を受賞した吉田晋之介の「雨」です。
吉田晋之介「雨」 油彩・キャンバス
暗鬱なグレーが上部を支配する中、強いブルーのストロークがうねるように乱れ、そこを何やらパイプやフレームのようなモチーフが見え隠れしている。そして彼方に望む4つの白い箱。凄まじき破壊的なエネルギーに満ちた空間。適切かどうかは分かりませんが、ここにどうしてもかの震災の津波と原発事故が投影されているように思えてなりません。
かつてのシェル美術賞やギャラリーMOMOでの展示でも印象に残った吉田の作品。しかしながら今回ほど強く胸に迫ったのは初めてでした。
さて今年は第20回目の記念すべき年。同館のギャラリーでは「VOCAの20年 1994-2012」 と題した過去の受賞作家の展覧会も開催。
さらには特設サイト「PLAYBACK VOCA 1994-2012」でこれまでのVOCA賞を振り返る試みも。
「PLAYBACK VOCA 1994-2012」
このサイトがなかなか充実しています。是非!
それにしてもまだ数年に過ぎませんが、私が現代美術に関心を持った頃から欠かさずに見ているのがこのVOCA展。ここで魅惑的な作品と出会い、その後ギャラリーの個展などを追っかけることも少なくありません。
VOCA展2013会場風景
春の上野の短期決戦です。会期中無休にて3月30日まで開催されています。
「VOCA展2013 現代美術の展望 新しい平面の画家たち」 上野の森美術館
会期:3月15日(金)~3月30日(土)
休館:会期中無休
時間:10:00~18:00(入場は閉館30分前まで)
料金:一般・大学生500円、高校生以下無料。インターネット割引券
住所:台東区上野公園1-2
交通:JR線上野駅公園口より徒歩3分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅徒歩5分。京成線京成上野駅徒歩5分。
注)写真は美術館の許可を得て撮影したものです。
「VOCA展2013 現代美術の展望 新しい平面の画家たち」
3/15-3/30
上野の森美術館で開催中の「VOCA展2013 現代美術の展望 新しい平面の画家たち」へ行ってきました。
春の上野、桜の上野を舞台にしたVOCA展も今年で20回目。今回も学芸員やジャーナリストから推挙された40歳以下の若手作家の作品が集結。『平面』という一つのフォーマットを共通に、各作家が様々な表現を繰り広げています。
【受賞作家】
VOCA賞 鈴木紗也香「あの日の眠りは確かに熱を帯びていた」
VOCA奨励賞 柴田麻衣「Lakeside」、平子雄一「Lost In Thought」
佳作賞 大崎のぶゆき「shining mountain/climbing the world #03-1~03」、吉田晋之介「雨」
大原美術館賞 佐藤翠「Reflections of a closet」
瓜生祐子「curry and rice」/「pudding a la mode」 アクリル・鉛筆、綿布、パネル
ともかく『平面の今』を楽しめるのがVOCAの良いところ。まずは瓜生祐子の「curry and rice」と「pudding a la mode」から。遠目では白地に細い線と淡い色合いによる風景。しかし近づいてみると思いもよらないイメージが描かれていることがわかります。
瓜生祐子「pudding a la mode」 アクリル・鉛筆、綿布、パネル
なんとこれはティラミスやプディングなどの食品を拡大したもの。とすると山の崖だと思っていた層は実はケーキのスポンジ。確かに繊細なイメージながらも、どこか見る者の目を惑わしもする挑戦的な作品でもあります。
江川純太「明日、笑うだろうか?脳は次へと会話が進む」/「世界は次に進む。やめた。覗く我々は瞬間に気づく。」 油彩・カンヴァス
続いては江川純太の「明日、笑うだろうか?脳は次へと会話が進む」と「世界は次に進む。やめた。覗く我々は瞬間に気づく。」。その謎めいたタイトルと、ともかくビビットな色面がうごめきせめぎあう世界。モチーフは複雑怪奇、それこそ抽象ですが、よく見ていると個々の図像が緩やかに関わり合っているような印象も。どこか有機的です。
eitoeikoでの個展を何度か拝見し、その度に江川の変化(かつてはオールオーヴァー的なモチーフでした。)を見てきましたが、この粘性を帯びた濃密な空間にも魅力を感じました。
吉田夏奈「城山日出峰の目眩」 オイルパステル・クレヨン・紙
先へ進みましょう。こちらはあざみ野コンテンポラリーでも見事なインスタレーションを見せてくれた吉田夏奈。韓国済州島にある火山湾をモチーフとした風景を展開。美しい青みを帯びた湾が、まるでCGを思わせる三次元的な様相で描かれています。
文谷有佳里「なにもない風景を眺める」 ペン・韓紙
そして文谷有佳里のドローイング。写真図版などでは全く魅力が伝わりませんが、だからこそ実際の作品に接していただきたいもの。白い紙に黒のペンを半ば即興的に走らせ、凄まじく動的でかつ音楽的とも言えるイメージを形成。ともかくその激しく運動する線を目で追っていくと、いつしか紙の向こうにでも取り込まれてしまうかのような迫力があります。
山口英紀「うたたか」 紙本水墨
また同じく図版では良さをお伝えしにくいのが山口英紀です。作品名は「うたたか」。まるで水の粒のように支持体が壁面に浮遊する作品です。
山口英紀「うたたか」 紙本水墨 *拡大
既にご存知の方も多いかもしれませんが、山口の手にあるのは鉛筆でなく筆。つまり水墨画です。驚くほど精緻な墨のタッチにより重機などの工事現場を表現。解体中と建築中のビルなどが墨の掠れと滲みの向こうに広がっています。
さらにもう一点、図版で分かりにくい方をあえてプッシュ。それが和田真由子。国立国際美術館の「リアル・ジャパネスク」展にも出品のあったアーティストです。
和田真由子「リチャード3世」 鉛筆・アクリルガッシュ・アクリルメディウム・メディウム塗布シート・木枠
それこそ障子ならぶ木枠に白いシート。そしてタイトルに「リチャード3世」。一見、さっぱり伝わらないかもしれませんが、やはりこの方のアプローチは面白い。専門的な解説などは図録に当たっていただく他ありませんが、会場では少し斜め横から作品を見て下さい。とすると何かが浮かび上がる。あくまでも断片的ですが、見る側の想像力を喚起させるような手法。決して取っ付き易くはありませんが、とても巧妙だと思いました。
最後に私がとりわけ感銘した作品を。それが佳作賞を受賞した吉田晋之介の「雨」です。
吉田晋之介「雨」 油彩・キャンバス
暗鬱なグレーが上部を支配する中、強いブルーのストロークがうねるように乱れ、そこを何やらパイプやフレームのようなモチーフが見え隠れしている。そして彼方に望む4つの白い箱。凄まじき破壊的なエネルギーに満ちた空間。適切かどうかは分かりませんが、ここにどうしてもかの震災の津波と原発事故が投影されているように思えてなりません。
かつてのシェル美術賞やギャラリーMOMOでの展示でも印象に残った吉田の作品。しかしながら今回ほど強く胸に迫ったのは初めてでした。
さて今年は第20回目の記念すべき年。同館のギャラリーでは「VOCAの20年 1994-2012」 と題した過去の受賞作家の展覧会も開催。
さらには特設サイト「PLAYBACK VOCA 1994-2012」でこれまでのVOCA賞を振り返る試みも。
「PLAYBACK VOCA 1994-2012」
このサイトがなかなか充実しています。是非!
それにしてもまだ数年に過ぎませんが、私が現代美術に関心を持った頃から欠かさずに見ているのがこのVOCA展。ここで魅惑的な作品と出会い、その後ギャラリーの個展などを追っかけることも少なくありません。
VOCA展2013会場風景
春の上野の短期決戦です。会期中無休にて3月30日まで開催されています。
「VOCA展2013 現代美術の展望 新しい平面の画家たち」 上野の森美術館
会期:3月15日(金)~3月30日(土)
休館:会期中無休
時間:10:00~18:00(入場は閉館30分前まで)
料金:一般・大学生500円、高校生以下無料。インターネット割引券
住所:台東区上野公園1-2
交通:JR線上野駅公園口より徒歩3分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅徒歩5分。京成線京成上野駅徒歩5分。
注)写真は美術館の許可を得て撮影したものです。
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「アートフェア東京2013」 東京国際フォーラム
東京国際フォーラム
「アートフェア東京2013」
3/22-3/24
東京国際フォーラムで開催中の「アートフェア東京2013」のオープニングプレビューに参加してきました。
国内最大のアートの見本市「アートフェア東京」も既に今年で8回目。有楽町の国際フォーラムを舞台に古今東西、古美術から現代美術、さらには海外などのギャラリーが集結。3日間限定にて様々な展示、そしてもちろん作品の販売が行われます。
会場構成、出展ギャラリーなどが毎年少しずつ変化するのも興味深いポイント。またお気に入りの作品を探しに歩き回りつつ、作家さんとの意外な出会いが出来るのもアートフェアならではのことです。
さて早速、今年ならではの企画からご紹介。
「山山居の細川護熙展」(S01)
2011年からはじまった「アーティスティック・プラクティス」では、政界引退後に文人として生きる細川護煕の特別展示が登場。細川氏の手がけたお茶碗に書がずらり。まさに悠々自適のご隠居生活。東屋の「隠居屋」とともに「美術と山居の暮らし」を提案しています。
「ディスカバー・アジア」(S06)
また昨年スタートした「ディスカバー・アジア」では東アジアの現代アートを紹介。フェア自体には出展しないミズマアートギャラリーなどが東アジアの若手アーティストの作品を展示しています。
「ヴィンテージフォトグラフィー」(S03)
さらに面白いのが写真から「ヴィンテージフォトグラフィー」です。禪フォトやタカイシイなど六本木でもお馴染みの写真系ギャラリーからヴィンテージフォトが。アラーキーに森山さんの他、19世紀のプリントなども。これまでいささか手薄感のあった写真についても見応えのある展示が行われています。
「角匠」(D17)
またいつもながらに古美術も充実。そもそもアートフェアと聞くと現代アートのみと思いがちですが、実は古美術系の画廊がかなり多く出展しています。うち「角匠」では歌麿に北斎などの軸画が何点か。剥き出しの展示で思わず仰け反ってしまいますが、これも作品。他には陶器などのブースも目立っていました。
さてそれでは私の特に関心のある現代美術から印象に残ったブースをいくつか以下に。
「村越画廊」(B12)ミヤケマイ
まずは村越画廊のミヤケマイさん。個展形式での展開で充実。新作の厨子から軸画、そして京都で納得のゆくまで探したという古木に鉄を組み合わせた立体作品などを展示。
ミヤケマイ作品
日本美術にミヤケさん一流の軽妙なセンスが加わり、いつもながらに可愛らしくもウイットに富んだ世界が広がっています。
「靖山画廊」(E09)神崎泰志
続いて靖山画廊の神崎泰志さん。いわゆる木彫の作品ですが、これがまた凄い。一見、楠を組み合わせて出来ているのかと思いきや何と一木造。「安全ピン」も見事に繋がっているのです。
神崎泰志作品
またピン然り、ファスナーなど、およそ木材という素材から連想しにくいものをあえて彫っているのも面白いポイント。技術と意外性の双方で楽しめる作品ではないでしょうか。
「ギャラリー戸村」(E08)冨田伊織
そしてギャラリー戸村の冨田伊織さん。2006年に北里大の水産学部を卒業された若手の作家。ご本人はツイッターも→(@shinsekai_th)既に写真集「透明標本」を刊行。ご存知の方も多いかもしれません。
「透明標本/冨田伊織/小学館」
それにしても色鮮やかな生物標本。元々、生物学研究で用いられる「透明骨格標本」を特殊な技術によって再生。赤紫と青の織りなすコスモス。まるで宝石のような美しさをたたえています。
「ART GALLERY X at Takashimaya」(F03)林茂樹
その他では百貨店としては最も現代美術の展示販売活動に積極的な高島屋のブースも。まさに日本橋や新宿の美術画廊Xのテイスト。ちなみに今回が初出展だそうです。裾野の広がりに期待がもたれます。
「TEZUKAYAMA GALLERY」(G10)タムラサトル
大阪のTEZUKAYAMA GALLERYからはお馴染みタムラサトルさんの金属のオブジェも。よく見ると大阪の文字が浮かび上がってくるではありませんか。
今年はアートフェアとミッドタウンのG-tokyoが同会期。さらに六本木アートナイトが重なるというスケジュール。思わず目移りしてしまいます。
古美術から現代美術までと間口の広いアートフェア。もちろん実際にギャラリーを歩いて回るのが一番ですが、やはりこの手のフェアでまとめて楽しめるのも嬉しいところです。
アートフェア東京2013は3月24日まで開催されています。
「アートフェア東京2011」(@ARTFAIRTOKYO_) 東京国際フォーラム(展示ホール1)
会期:3月22日(金)~3月24日(日)
休館:会期中無休。
時間:3/22日(金)11:00~21:00、3/23(土)11:00~20:00、3/24(日)10:30~17:00
料金:1-DAYパスポート2000円、3-DAYパスポート3500円。小学生以下無料。
住所:千代田区丸の内3-5-1
交通:JR線有楽町駅より徒歩1分。JR線東京駅より徒歩5分 (京葉線東京駅とB1F地下コンコースにて連絡)。東京メトロ有楽町線有楽町駅からB1F地下コンコースにて連絡。
注)写真はオープニングプレビュー時に主催者の許可を得て撮影したものです。
「アートフェア東京2013」
3/22-3/24
東京国際フォーラムで開催中の「アートフェア東京2013」のオープニングプレビューに参加してきました。
国内最大のアートの見本市「アートフェア東京」も既に今年で8回目。有楽町の国際フォーラムを舞台に古今東西、古美術から現代美術、さらには海外などのギャラリーが集結。3日間限定にて様々な展示、そしてもちろん作品の販売が行われます。
会場構成、出展ギャラリーなどが毎年少しずつ変化するのも興味深いポイント。またお気に入りの作品を探しに歩き回りつつ、作家さんとの意外な出会いが出来るのもアートフェアならではのことです。
さて早速、今年ならではの企画からご紹介。
「山山居の細川護熙展」(S01)
2011年からはじまった「アーティスティック・プラクティス」では、政界引退後に文人として生きる細川護煕の特別展示が登場。細川氏の手がけたお茶碗に書がずらり。まさに悠々自適のご隠居生活。東屋の「隠居屋」とともに「美術と山居の暮らし」を提案しています。
「ディスカバー・アジア」(S06)
また昨年スタートした「ディスカバー・アジア」では東アジアの現代アートを紹介。フェア自体には出展しないミズマアートギャラリーなどが東アジアの若手アーティストの作品を展示しています。
「ヴィンテージフォトグラフィー」(S03)
さらに面白いのが写真から「ヴィンテージフォトグラフィー」です。禪フォトやタカイシイなど六本木でもお馴染みの写真系ギャラリーからヴィンテージフォトが。アラーキーに森山さんの他、19世紀のプリントなども。これまでいささか手薄感のあった写真についても見応えのある展示が行われています。
「角匠」(D17)
またいつもながらに古美術も充実。そもそもアートフェアと聞くと現代アートのみと思いがちですが、実は古美術系の画廊がかなり多く出展しています。うち「角匠」では歌麿に北斎などの軸画が何点か。剥き出しの展示で思わず仰け反ってしまいますが、これも作品。他には陶器などのブースも目立っていました。
さてそれでは私の特に関心のある現代美術から印象に残ったブースをいくつか以下に。
「村越画廊」(B12)ミヤケマイ
まずは村越画廊のミヤケマイさん。個展形式での展開で充実。新作の厨子から軸画、そして京都で納得のゆくまで探したという古木に鉄を組み合わせた立体作品などを展示。
ミヤケマイ作品
日本美術にミヤケさん一流の軽妙なセンスが加わり、いつもながらに可愛らしくもウイットに富んだ世界が広がっています。
「靖山画廊」(E09)神崎泰志
続いて靖山画廊の神崎泰志さん。いわゆる木彫の作品ですが、これがまた凄い。一見、楠を組み合わせて出来ているのかと思いきや何と一木造。「安全ピン」も見事に繋がっているのです。
神崎泰志作品
またピン然り、ファスナーなど、およそ木材という素材から連想しにくいものをあえて彫っているのも面白いポイント。技術と意外性の双方で楽しめる作品ではないでしょうか。
「ギャラリー戸村」(E08)冨田伊織
そしてギャラリー戸村の冨田伊織さん。2006年に北里大の水産学部を卒業された若手の作家。ご本人はツイッターも→(@shinsekai_th)既に写真集「透明標本」を刊行。ご存知の方も多いかもしれません。
「透明標本/冨田伊織/小学館」
それにしても色鮮やかな生物標本。元々、生物学研究で用いられる「透明骨格標本」を特殊な技術によって再生。赤紫と青の織りなすコスモス。まるで宝石のような美しさをたたえています。
「ART GALLERY X at Takashimaya」(F03)林茂樹
その他では百貨店としては最も現代美術の展示販売活動に積極的な高島屋のブースも。まさに日本橋や新宿の美術画廊Xのテイスト。ちなみに今回が初出展だそうです。裾野の広がりに期待がもたれます。
「TEZUKAYAMA GALLERY」(G10)タムラサトル
大阪のTEZUKAYAMA GALLERYからはお馴染みタムラサトルさんの金属のオブジェも。よく見ると大阪の文字が浮かび上がってくるではありませんか。
今年はアートフェアとミッドタウンのG-tokyoが同会期。さらに六本木アートナイトが重なるというスケジュール。思わず目移りしてしまいます。
古美術から現代美術までと間口の広いアートフェア。もちろん実際にギャラリーを歩いて回るのが一番ですが、やはりこの手のフェアでまとめて楽しめるのも嬉しいところです。
アートフェア東京2013は3月24日まで開催されています。
「アートフェア東京2011」(@ARTFAIRTOKYO_) 東京国際フォーラム(展示ホール1)
会期:3月22日(金)~3月24日(日)
休館:会期中無休。
時間:3/22日(金)11:00~21:00、3/23(土)11:00~20:00、3/24(日)10:30~17:00
料金:1-DAYパスポート2000円、3-DAYパスポート3500円。小学生以下無料。
住所:千代田区丸の内3-5-1
交通:JR線有楽町駅より徒歩1分。JR線東京駅より徒歩5分 (京葉線東京駅とB1F地下コンコースにて連絡)。東京メトロ有楽町線有楽町駅からB1F地下コンコースにて連絡。
注)写真はオープニングプレビュー時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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東京国立博物館ミュージアムショップ移設リニューアルオープン
常設としては日本で最も古い東京国立博物館のミュージアムショップ。
1990年のオープン以来、長らく本館の地下1階にありましたが、このほど移転。同じく本館1階の第20展示室にリニューアルオープンしました。
さてまずは「20展示室」がどこなのか。20と聞いてすぐに場所ピタリと言い当てた方は相当のトーハク通。と言っても、実は至極目立つところ。何とエントランスからすぐ左手。あの大階段に向かって左横に続く展示室なのです。
これは非常に便利。もちろん移設前もその大階段下のフロアでしたが、今度は縦移動もなく、エントランスからスムーズにショップへ行くことが可能。また20展示室はちょうど常設、総合文化展の1階のラストに当たる箇所です。(近代美術、近代工芸と続く最後の展示室です。)
つまり入口すぐそばでもあり、また出口でもある展示室。ともかくもショップとしてはこの上ない場所に移設リニューアルされたというわけでした。
さていざショップへ。20展示室のスペースが全てショップに。面積自体は前よりもやや縮小したそうですが、天井高のある空間だからか、より開放的でかつ広々とした印象を与えられます。
白からグレーを基調とした実にスタイリッシュなショップへと生まれ変わりました。
もちろん照明から陳列棚も全て新調。空間全体で統一感のあるデザインに。取り扱い商品は8割が東博のオリジナル。基本的に移設前とほぼ同じ商品が並んでいますが、一部はリニューアルにあわせた新商品も。また今後も商品を入れ替えていくのだそうです。
さて今回のリニューアル、何が一番変わったかと言えば書籍の扱いでしょう。
実は書籍は中二階フロアと、そこへ伸びるスロープ「本の道」で展開。美術豪華本から過去展、また他館の図録、それに美術書籍などが全点開架で販売されています。
天井高のある空間だからこそ可能な中二階の書籍売場。レジのある一階からは「本の道」スロープ、もしくは階段での移動が必要(専用カゴがあると便利かも。)ですが、ともかく本がすらりと並ぶ様子はまるで図書館。
本の道のスロープを上がりきると本の丘へ。まるで崖のようにとてつもなく大きな棚がそびえ立ちます。
「かなり高い書棚で上の方が届かないのでは?」などという声も聞こえてくるかもしれませんが、ここは係の方に申し出ればサポートしていただけるサービスも。
元々東博のショップは書籍が充実していましたが、品揃えに関しては全く損なうことなく展開。日本・東洋美術に関する書籍がこれでもかというほど揃っています。その数、約4500種類。
さて壁へ見やると特徴的なモチーフが。何の文様かすぐにお分かりいただけないかもしれませんが、これも東博という建物に半ば敬意を払ってのデザイン。
実はこれ本館1階裏手、お庭を望める休憩室のタイルモザイクの文様なのです。
こちらです。↑
ちなみに手ぬぐいではこのタイルモザイクの意匠を取り込んだ新商品も。
またレターセットも一部新商品が導入されたそうです。
今回のリニューアルにあたってはともかく博物館の他の空間との連続性、ようはショップも一つの展示室として親しまれるように心がけたとのこと。もちろん展示室がそのままショップになるのは東博史上初めてです。
壁際にはずらりと休憩用の椅子も。ショップは展示室順路最後のスペースでもあるので重宝するのではないでしょうか。
日本で最も古い歴史を誇るミュージアムショップが仕掛けた今、日本で一番新しいミュージアムショップ。東博へお越しの際は是非ともお立ち寄り下さい。
東京国立博物館のミュージアムショップは2013年3月19日に移設オープンしました。
「博物館でお花見を」 東京国立博物館
会期:3月19日(火)~4月14日(日)
休館:月曜日
時間:9:30~17:00。4月の土・日・祝は18時まで。毎週金曜日は20時まで。(入館は閉館の30分前まで)
料金:一般600円(500円)、大学生400円(300円)、高校生以下無料。
* ( )内は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
1990年のオープン以来、長らく本館の地下1階にありましたが、このほど移転。同じく本館1階の第20展示室にリニューアルオープンしました。
さてまずは「20展示室」がどこなのか。20と聞いてすぐに場所ピタリと言い当てた方は相当のトーハク通。と言っても、実は至極目立つところ。何とエントランスからすぐ左手。あの大階段に向かって左横に続く展示室なのです。
これは非常に便利。もちろん移設前もその大階段下のフロアでしたが、今度は縦移動もなく、エントランスからスムーズにショップへ行くことが可能。また20展示室はちょうど常設、総合文化展の1階のラストに当たる箇所です。(近代美術、近代工芸と続く最後の展示室です。)
つまり入口すぐそばでもあり、また出口でもある展示室。ともかくもショップとしてはこの上ない場所に移設リニューアルされたというわけでした。
さていざショップへ。20展示室のスペースが全てショップに。面積自体は前よりもやや縮小したそうですが、天井高のある空間だからか、より開放的でかつ広々とした印象を与えられます。
白からグレーを基調とした実にスタイリッシュなショップへと生まれ変わりました。
もちろん照明から陳列棚も全て新調。空間全体で統一感のあるデザインに。取り扱い商品は8割が東博のオリジナル。基本的に移設前とほぼ同じ商品が並んでいますが、一部はリニューアルにあわせた新商品も。また今後も商品を入れ替えていくのだそうです。
さて今回のリニューアル、何が一番変わったかと言えば書籍の扱いでしょう。
実は書籍は中二階フロアと、そこへ伸びるスロープ「本の道」で展開。美術豪華本から過去展、また他館の図録、それに美術書籍などが全点開架で販売されています。
天井高のある空間だからこそ可能な中二階の書籍売場。レジのある一階からは「本の道」スロープ、もしくは階段での移動が必要(専用カゴがあると便利かも。)ですが、ともかく本がすらりと並ぶ様子はまるで図書館。
本の道のスロープを上がりきると本の丘へ。まるで崖のようにとてつもなく大きな棚がそびえ立ちます。
「かなり高い書棚で上の方が届かないのでは?」などという声も聞こえてくるかもしれませんが、ここは係の方に申し出ればサポートしていただけるサービスも。
元々東博のショップは書籍が充実していましたが、品揃えに関しては全く損なうことなく展開。日本・東洋美術に関する書籍がこれでもかというほど揃っています。その数、約4500種類。
さて壁へ見やると特徴的なモチーフが。何の文様かすぐにお分かりいただけないかもしれませんが、これも東博という建物に半ば敬意を払ってのデザイン。
実はこれ本館1階裏手、お庭を望める休憩室のタイルモザイクの文様なのです。
こちらです。↑
ちなみに手ぬぐいではこのタイルモザイクの意匠を取り込んだ新商品も。
またレターセットも一部新商品が導入されたそうです。
今回のリニューアルにあたってはともかく博物館の他の空間との連続性、ようはショップも一つの展示室として親しまれるように心がけたとのこと。もちろん展示室がそのままショップになるのは東博史上初めてです。
壁際にはずらりと休憩用の椅子も。ショップは展示室順路最後のスペースでもあるので重宝するのではないでしょうか。
日本で最も古い歴史を誇るミュージアムショップが仕掛けた今、日本で一番新しいミュージアムショップ。東博へお越しの際は是非ともお立ち寄り下さい。
東京国立博物館のミュージアムショップは2013年3月19日に移設オープンしました。
「博物館でお花見を」 東京国立博物館
会期:3月19日(火)~4月14日(日)
休館:月曜日
時間:9:30~17:00。4月の土・日・祝は18時まで。毎週金曜日は20時まで。(入館は閉館の30分前まで)
料金:一般600円(500円)、大学生400円(300円)、高校生以下無料。
* ( )内は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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「ジャパン・ビューティー 描かれた日本美人」 ニューオータニ美術館
ニューオータニ美術館
「知られざるプライベートコレクション ジャパン・ビューティー 描かれた日本美人」
3/16-5/26 *前期:3/16~4/21、後期:4/23~5/26
ニューオータニ美術館で開催中の「知られざるプライベートコレクション ジャパン・ビューティー 描かれた日本美人」へ行ってきました。
近代日本画の華と言えば美人画。明治から昭和にかけて人気を博した美人画は、それこそ松園、清方、深水の三巨匠を挙げるまでもなく、多くの画家たちによって描かれてきました。
本展ではそうした美人画に注目。また美人画を通して女性の美、さらには背景となる歴史、文学までに目を向けた内容となっています。
第1章 雪月花
第2章 四季の風情
第3章 心の内と外(情念と装い)
第4章 技芸と遊び
では最初の「雪月花」から。古来、日本人が大切にしてきた自然のモチーフ。当然ながら美人画でも主役を飾っています。
まずは大御所上村松園の「桜可里の図」。本展には数点の松園画が出ていますが、例えば「花筐」や「焔」へと繋がるような情念を思わせる作品が目立つのが特徴。本作でもやや蔭を感じるような仕草をしています。
北野恒富の「花之頃」は水紋の帯に黒の留袖が美しい一枚。桜の花びらがひらひらと舞っています。
上村松園「夏の美人」 *前期展示
自然の情景を捉えたと言えば、2章の「四季の風情」も同様。ここでも松園、「夏の美人」においてどこかエロティックな仕草を。お馴染みの簾の透け表現と美人の取り合わせ。胸を少し開いて赤い衣を見せています。
ちなみに本展では軸画だけでなく屏風絵も数点出品。京都の画家、吉川観方の「七夕の宵」は、風によってひらりと舞う短冊の端を子どもが追いかけるという動きのある一枚です。
さて今回、とても面白いのが3章の「心の内と外」。つまり女性の様々な想いを扱った作品です。
まずは長崎生まれの栗原玉葉。自身もキリシタンだったという彼女は、江戸時代にキリシタンの迫害の逸話を題材に表現。弾圧によって父母を失い、桜が咲いてから処刑を求めたという遊女、朝妻の姿を艶やかに描いています。
栗原玉葉「朝妻桜」大正7(1918)年 *通期展示
それがチラシ表紙を飾った「朝妻桜」です。胸には確かに十字架の姿が。下を向き、うつむいた表情。そして背景の垂れた桜。まさに彼女の悲しい行く末を予感させるような描写ではないでしょうか。
席を外して疲れた表情を見せた芸者を捉えた池田輝方の「芸者」も優れた一枚。華やかな花柳界の裏側を見事に表しています。
そして極めつけが増原宗一の「いれずみ」です。刺青と聞いて男性かと思いがちですが、ここは美人画の展示。モデルは言うまでもなく女性。しかも胸を露に浴槽の中でくつろぐ女性の刺青です。
これが強烈。温かいお湯で発色した赤い刺青が実に鮮やかに。それが水に泳いで身体に絡む黒い髪の毛や、女性自体の憂いを帯びた表情と相まって、どこか幽霊画を連想させるようなおどろおどろしい世界を表しています。
なおこの増原宗一しかり、先の栗原玉葉しかり、本展では必ずしも知名度が高いとは言えない日本画家が多いのも特徴。他では目にする機会の少ない作品ばかりです。
だからこそタイトルの「知られざるプライベートコレクション」。出品は浮世絵コレクター中右瑛氏による朝比奈文庫。普段あまり公開されることのない貴重なコレクションです。
またどこか暗鬱な大正デカダンスの作品が目立つのもポイント。北野恒富、甲斐庄楠音、岡本神草らのデロリ風も。また東京、大阪、京都の画家の個性を比較して見るのも一興でした。
池田蕉園「ほたる」 *後期展示
展示は前後期の二期制。ごく一部の作品を除き、会期中作品が入れ替わります。*前後期入館割引あり
前期:3月16日(土)~4月21日(日)
後期:4月23日(火)~5月26日(日)
知られざる個人コレクションで辿った、知られざる美人画の世界。かくも美人とは多様なのか。小さくともキラリと光る日本画展でした。
「もっと知りたい上村松園/加藤類子/東京美術」
5月26日まで開催されています。後期も通います!
「知られざるプライベートコレクション ジャパン・ビューティー 描かれた日本美人」 ニューオータニ美術館
会期:3月16日(土)~5月26日(日)*前期:3/16~4/21、後期:4/23~5/26
休館:月曜日(但し4/29、5/6は開館)。4/30、5/7は休館。
料金:一般800円、高・大生500円、小・中生300円
*宿泊者無料、20名以上の団体は各100円割引。前後期入館割引あり(一般1500円)
時間:10:00~18:00
住所:千代田区紀尾井町4-1 ホテルニューオータニ ガーデンコート6階
交通:東京メトロ銀座線・丸ノ内線赤坂見附駅D出口より徒歩5分。東京メトロ半蔵門線・有楽町線・南北線永田町駅7番出口より徒歩5分。
「知られざるプライベートコレクション ジャパン・ビューティー 描かれた日本美人」
3/16-5/26 *前期:3/16~4/21、後期:4/23~5/26
ニューオータニ美術館で開催中の「知られざるプライベートコレクション ジャパン・ビューティー 描かれた日本美人」へ行ってきました。
近代日本画の華と言えば美人画。明治から昭和にかけて人気を博した美人画は、それこそ松園、清方、深水の三巨匠を挙げるまでもなく、多くの画家たちによって描かれてきました。
本展ではそうした美人画に注目。また美人画を通して女性の美、さらには背景となる歴史、文学までに目を向けた内容となっています。
第1章 雪月花
第2章 四季の風情
第3章 心の内と外(情念と装い)
第4章 技芸と遊び
では最初の「雪月花」から。古来、日本人が大切にしてきた自然のモチーフ。当然ながら美人画でも主役を飾っています。
まずは大御所上村松園の「桜可里の図」。本展には数点の松園画が出ていますが、例えば「花筐」や「焔」へと繋がるような情念を思わせる作品が目立つのが特徴。本作でもやや蔭を感じるような仕草をしています。
北野恒富の「花之頃」は水紋の帯に黒の留袖が美しい一枚。桜の花びらがひらひらと舞っています。
上村松園「夏の美人」 *前期展示
自然の情景を捉えたと言えば、2章の「四季の風情」も同様。ここでも松園、「夏の美人」においてどこかエロティックな仕草を。お馴染みの簾の透け表現と美人の取り合わせ。胸を少し開いて赤い衣を見せています。
ちなみに本展では軸画だけでなく屏風絵も数点出品。京都の画家、吉川観方の「七夕の宵」は、風によってひらりと舞う短冊の端を子どもが追いかけるという動きのある一枚です。
さて今回、とても面白いのが3章の「心の内と外」。つまり女性の様々な想いを扱った作品です。
まずは長崎生まれの栗原玉葉。自身もキリシタンだったという彼女は、江戸時代にキリシタンの迫害の逸話を題材に表現。弾圧によって父母を失い、桜が咲いてから処刑を求めたという遊女、朝妻の姿を艶やかに描いています。
栗原玉葉「朝妻桜」大正7(1918)年 *通期展示
それがチラシ表紙を飾った「朝妻桜」です。胸には確かに十字架の姿が。下を向き、うつむいた表情。そして背景の垂れた桜。まさに彼女の悲しい行く末を予感させるような描写ではないでしょうか。
席を外して疲れた表情を見せた芸者を捉えた池田輝方の「芸者」も優れた一枚。華やかな花柳界の裏側を見事に表しています。
そして極めつけが増原宗一の「いれずみ」です。刺青と聞いて男性かと思いがちですが、ここは美人画の展示。モデルは言うまでもなく女性。しかも胸を露に浴槽の中でくつろぐ女性の刺青です。
これが強烈。温かいお湯で発色した赤い刺青が実に鮮やかに。それが水に泳いで身体に絡む黒い髪の毛や、女性自体の憂いを帯びた表情と相まって、どこか幽霊画を連想させるようなおどろおどろしい世界を表しています。
なおこの増原宗一しかり、先の栗原玉葉しかり、本展では必ずしも知名度が高いとは言えない日本画家が多いのも特徴。他では目にする機会の少ない作品ばかりです。
だからこそタイトルの「知られざるプライベートコレクション」。出品は浮世絵コレクター中右瑛氏による朝比奈文庫。普段あまり公開されることのない貴重なコレクションです。
またどこか暗鬱な大正デカダンスの作品が目立つのもポイント。北野恒富、甲斐庄楠音、岡本神草らのデロリ風も。また東京、大阪、京都の画家の個性を比較して見るのも一興でした。
池田蕉園「ほたる」 *後期展示
展示は前後期の二期制。ごく一部の作品を除き、会期中作品が入れ替わります。*前後期入館割引あり
前期:3月16日(土)~4月21日(日)
後期:4月23日(火)~5月26日(日)
知られざる個人コレクションで辿った、知られざる美人画の世界。かくも美人とは多様なのか。小さくともキラリと光る日本画展でした。
「もっと知りたい上村松園/加藤類子/東京美術」
5月26日まで開催されています。後期も通います!
「知られざるプライベートコレクション ジャパン・ビューティー 描かれた日本美人」 ニューオータニ美術館
会期:3月16日(土)~5月26日(日)*前期:3/16~4/21、後期:4/23~5/26
休館:月曜日(但し4/29、5/6は開館)。4/30、5/7は休館。
料金:一般800円、高・大生500円、小・中生300円
*宿泊者無料、20名以上の団体は各100円割引。前後期入館割引あり(一般1500円)
時間:10:00~18:00
住所:千代田区紀尾井町4-1 ホテルニューオータニ ガーデンコート6階
交通:東京メトロ銀座線・丸ノ内線赤坂見附駅D出口より徒歩5分。東京メトロ半蔵門線・有楽町線・南北線永田町駅7番出口より徒歩5分。
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「東日本大震災復興支援 若冲が来てくれました展 オリジナルグッズ」
現在、仙台市博物館で開催中の「プライスコレクション 若冲が来てくれました」展。
「若冲が来てくれました」@仙台市博物館(プレビューの様子をまとめてあります。)
仙台を皮切りに岩手、福島の東北三県を巡回。プライス夫妻がかの東日本大震災を前にして「何か出来ることがないか。」という強い想いから実現した企画です。
伊藤若冲「鳥獣花木図屏風」 全期間展示
実際にも作品を無償で貸与、またグッズの売上も一部、被災地へ寄付されるという復興支援の展覧会でもあります。
「若冲が来てくれました」(仙台展)ミュージアムショップ
その「若冲が来てくれました」展の特設ショップで販売されているのが、同じく震災の復興支援と結びついたオリジナルグッズ。実のところ私は普段、あまりショップで展覧会グッズを購入しませんが、今回ばかりは全く別。いくつかこちらでもご紹介致したいと思います。
「山ぶどう原液」田所(林)商店
まずは宮城県山元町の「山ぶどう原液」(1995円/600ml)から。製造元の田所(林)商店は津波によって工場設備から自宅まで流されてしまったという痛ましい状況に。しかしながら工場内に唯一残っていた一つのタンクが無事で何とか生産へ。出来た製品がこの手作り山ぶどうジュースというわけです。
右:伊藤若冲「葡萄図」
ラベルはプライスコレクションに因み、プライスさんが一番最初に買った若冲作の「葡萄図」のモチーフ。製品にぴったりのパッケージです。
「若冲トートバック」石巻工房
続いてはこちら。石巻工房の若冲トートバック(3990円)。震災後にデザイナーによって立ち上げられた石巻の「ものづくりの場」である工房の製品。トートバックは南三陸の仮設住宅のミシン工房のお母さんたちの手によって作られたものとか。モチーフは若冲の版画作品「玄圃瑤華」から取られています。
「つくることが生きること」@アーツ千代田3331(展示を見てきました。)
ちなみにこの石巻工房は現在、アーツ千代田3331で開催中の「東日本大震災復興支援 つくることが生きること展」にもブース出品中。
「つくることが生きること」(3331)から石巻工房
活動年表からプロジェクトの概要などをパネルで展示。ご覧のように紹介されていました。(上写真)
「東北三県地酒セット」
そしてラストは東北三県の地酒セット(2500円)。右から「純米酒 蒼天伝」(宮城県気仙沼市)、「純米吟醸 銀牡丹」(福島県岩瀬郡)、「特別純米酒 浜千鳥」(岩手県釜石市)の3本です。
ラベルはもちろんプライスコレクションの若冲作品から。なお気仙沼の「蒼天伝」の蔵元の男山本店は、本社屋はおろか倉庫まで津波で流されてしまったそうですが、唯一高台にあった酒蔵だけ無事だったため、何とか製造再開までにこぎつけたお酒なのだそうです。
これらはダイレクトに復興支援と結びつく商品。決して大きな金額ではありませんが、それでも買うことが直接、製造元の収益となります。
もちろん定番の一筆箋やファイルなども多数販売。こちらも先に触れたように一部収益が被災地へ寄付されるわけです。
「東日本大震災復興支援 若冲が来てくれました展」のオリジナルグッズ。通常の展覧会グッズとは一味も二味も異なります。
「若冲が来てくれました」(仙台展)ミュージアムショップ
販売は会場出口のミュージアムショップにて。是非とも足を止めてご覧ください!
「若冲が来てくれました展図録/日本経済新聞社」
「若冲が来てくれましたープライスコレクション 江戸絵画の美と生命」 仙台市博物館
会期:3月1日(金)~5月6日(月・祝)
休館:毎週月曜日。但し3/11、4/29、5/6は開館。
時間:9:00~16:45(入館は16:15まで)
料金:一般・大学生800円、高校生以下無料。*10名以上の団体は100円引。*割引券
住所:仙台市青葉区川内26
交通:仙台駅西口バスプール9番乗場710~720系統のバス(718系統を除く)で約10分、博物館・国際センター前下車徒歩3分。
注)会場内写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
「若冲が来てくれました」@仙台市博物館(プレビューの様子をまとめてあります。)
仙台を皮切りに岩手、福島の東北三県を巡回。プライス夫妻がかの東日本大震災を前にして「何か出来ることがないか。」という強い想いから実現した企画です。
伊藤若冲「鳥獣花木図屏風」 全期間展示
実際にも作品を無償で貸与、またグッズの売上も一部、被災地へ寄付されるという復興支援の展覧会でもあります。
「若冲が来てくれました」(仙台展)ミュージアムショップ
その「若冲が来てくれました」展の特設ショップで販売されているのが、同じく震災の復興支援と結びついたオリジナルグッズ。実のところ私は普段、あまりショップで展覧会グッズを購入しませんが、今回ばかりは全く別。いくつかこちらでもご紹介致したいと思います。
「山ぶどう原液」田所(林)商店
まずは宮城県山元町の「山ぶどう原液」(1995円/600ml)から。製造元の田所(林)商店は津波によって工場設備から自宅まで流されてしまったという痛ましい状況に。しかしながら工場内に唯一残っていた一つのタンクが無事で何とか生産へ。出来た製品がこの手作り山ぶどうジュースというわけです。
右:伊藤若冲「葡萄図」
ラベルはプライスコレクションに因み、プライスさんが一番最初に買った若冲作の「葡萄図」のモチーフ。製品にぴったりのパッケージです。
「若冲トートバック」石巻工房
続いてはこちら。石巻工房の若冲トートバック(3990円)。震災後にデザイナーによって立ち上げられた石巻の「ものづくりの場」である工房の製品。トートバックは南三陸の仮設住宅のミシン工房のお母さんたちの手によって作られたものとか。モチーフは若冲の版画作品「玄圃瑤華」から取られています。
「つくることが生きること」@アーツ千代田3331(展示を見てきました。)
ちなみにこの石巻工房は現在、アーツ千代田3331で開催中の「東日本大震災復興支援 つくることが生きること展」にもブース出品中。
「つくることが生きること」(3331)から石巻工房
活動年表からプロジェクトの概要などをパネルで展示。ご覧のように紹介されていました。(上写真)
「東北三県地酒セット」
そしてラストは東北三県の地酒セット(2500円)。右から「純米酒 蒼天伝」(宮城県気仙沼市)、「純米吟醸 銀牡丹」(福島県岩瀬郡)、「特別純米酒 浜千鳥」(岩手県釜石市)の3本です。
ラベルはもちろんプライスコレクションの若冲作品から。なお気仙沼の「蒼天伝」の蔵元の男山本店は、本社屋はおろか倉庫まで津波で流されてしまったそうですが、唯一高台にあった酒蔵だけ無事だったため、何とか製造再開までにこぎつけたお酒なのだそうです。
これらはダイレクトに復興支援と結びつく商品。決して大きな金額ではありませんが、それでも買うことが直接、製造元の収益となります。
もちろん定番の一筆箋やファイルなども多数販売。こちらも先に触れたように一部収益が被災地へ寄付されるわけです。
「東日本大震災復興支援 若冲が来てくれました展」のオリジナルグッズ。通常の展覧会グッズとは一味も二味も異なります。
「若冲が来てくれました」(仙台展)ミュージアムショップ
販売は会場出口のミュージアムショップにて。是非とも足を止めてご覧ください!
「若冲が来てくれました展図録/日本経済新聞社」
「若冲が来てくれましたープライスコレクション 江戸絵画の美と生命」 仙台市博物館
会期:3月1日(金)~5月6日(月・祝)
休館:毎週月曜日。但し3/11、4/29、5/6は開館。
時間:9:00~16:45(入館は16:15まで)
料金:一般・大学生800円、高校生以下無料。*10名以上の団体は100円引。*割引券
住所:仙台市青葉区川内26
交通:仙台駅西口バスプール9番乗場710~720系統のバス(718系統を除く)で約10分、博物館・国際センター前下車徒歩3分。
注)会場内写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「第7回 shiseido art egg 川村麻純展」 資生堂ギャラリー
資生堂ギャラリー
「第7回 shiseido art egg 川村麻純展」
3/5-28
資生堂ギャラリーで開催中の「第7回 shiseido art egg 川村麻純展」へ行ってきました。
久門剛史、ジョミ・キムと続いた「第7回 shiseido art egg」も最終回。2012年に東京芸大大学院の先端表現の修士課程を修了し、家族のコミュニケーションの問題を映像や写真で問う川村麻純が登場しています。
というわけで、展示も映像と写真。地下のメインフロアには2つの映像が。ともに「Mirror Portraits」(2013)と名付けられた作品です。
まず扱われるのは家族から「母と娘」の関係。向かい合う二面のスクリーンにはそれぞれ一人ずつ女性の姿が。手元にあるヘッドホンに耳を傾けると、何やら娘が母について語りかけるような内容。しかしながら果たしてその声の主は、今映し出されている女性のものかどうかは明らかではありません。
一見、二人が直に語り合うかのようなスタイル。実は種明かしをするとこの朗読はあくまでも他者によるもの。ただしエピソード自体は被写体本人のものという構造になっています。よってスクリーンのモデルとエピソードは第三者を介在することよって初めて繋がっているわけです。
ドキュメンタリーとフィクションの間で語られる母と娘の物語。かなり複層的です。またもう一点の映像作品は「母と娘」ではなく「姉妹」。ここでは母から見た自分と姉なり妹という、もう一つ別個の関係が加わっています。個を超えた女性全体の問題を抉るような手法。考えさせられるものがありました。
【第7回 shiseido art egg 展示スケジュール】
久門剛史展 1月8日(火)~31日(木)
ジョミ・キム展 2月5日(火)~28日(木)
川村麻純展 3月5日(火)~28日(木)
なお本展で「第7回 shiseido art egg」は終了します。4月には岡田利規、鴻池朋子、袴田京太朗の3氏の審査員により大賞が選出、同ギャラリーのWEBサイトで結果が発表されるそうです。あくまでも私感ですが、最初の久門さんの展示が一番印象に残りました。
3月28日まで開催されています。
「第7回 shiseido art egg 川村麻純展」 資生堂ギャラリー
会期:3月5日(火)~28日(木)
休館:毎週月曜日
時間:11:00~19:00(平日)/11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
「第7回 shiseido art egg 川村麻純展」
3/5-28
資生堂ギャラリーで開催中の「第7回 shiseido art egg 川村麻純展」へ行ってきました。
久門剛史、ジョミ・キムと続いた「第7回 shiseido art egg」も最終回。2012年に東京芸大大学院の先端表現の修士課程を修了し、家族のコミュニケーションの問題を映像や写真で問う川村麻純が登場しています。
というわけで、展示も映像と写真。地下のメインフロアには2つの映像が。ともに「Mirror Portraits」(2013)と名付けられた作品です。
まず扱われるのは家族から「母と娘」の関係。向かい合う二面のスクリーンにはそれぞれ一人ずつ女性の姿が。手元にあるヘッドホンに耳を傾けると、何やら娘が母について語りかけるような内容。しかしながら果たしてその声の主は、今映し出されている女性のものかどうかは明らかではありません。
一見、二人が直に語り合うかのようなスタイル。実は種明かしをするとこの朗読はあくまでも他者によるもの。ただしエピソード自体は被写体本人のものという構造になっています。よってスクリーンのモデルとエピソードは第三者を介在することよって初めて繋がっているわけです。
ドキュメンタリーとフィクションの間で語られる母と娘の物語。かなり複層的です。またもう一点の映像作品は「母と娘」ではなく「姉妹」。ここでは母から見た自分と姉なり妹という、もう一つ別個の関係が加わっています。個を超えた女性全体の問題を抉るような手法。考えさせられるものがありました。
【第7回 shiseido art egg 展示スケジュール】
久門剛史展 1月8日(火)~31日(木)
ジョミ・キム展 2月5日(火)~28日(木)
川村麻純展 3月5日(火)~28日(木)
なお本展で「第7回 shiseido art egg」は終了します。4月には岡田利規、鴻池朋子、袴田京太朗の3氏の審査員により大賞が選出、同ギャラリーのWEBサイトで結果が発表されるそうです。あくまでも私感ですが、最初の久門さんの展示が一番印象に残りました。
3月28日まで開催されています。
「第7回 shiseido art egg 川村麻純展」 資生堂ギャラリー
会期:3月5日(火)~28日(木)
休館:毎週月曜日
時間:11:00~19:00(平日)/11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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「ポール・デルヴォー展」 埼玉県立近代美術館
埼玉県立近代美術館
「ポール・デルヴォー展 夢をめぐる旅」
1/22~3/24
埼玉県立近代美術館で開催中の「ポール・デルヴォー展 夢をめぐる旅」へ行ってきました。
鹿児島、府中、下関、埼玉と全国巡回中のデルヴォー展。(以降、岡崎、秋田へと巡回。)
下記リンク先の府中展の感想にも書きましたが、知られざる初期作に目を向け、画業を一生涯に渡って見据えた回顧展。単に名品展ではない、デルヴォーの画業のエッセンスを提示する充実した展示となっています。
「ポール・デルヴォー展」@府中市美術館(昨年の府中展の感想です。)
関東の巡回は府中とここさいたま。実は私自身、巡回展を追っかけることは殆どありませんが、今回ばかりは別。もちろんデルヴォーが好きなこともありますが、埼近美だからこその出品作を回顧展の中で見たかったということもあります。
「森」1948年 埼玉県立近代美術館
それがまさに「森」。言うまでもなく埼玉県美のコレクションで本会場のみの展示。そしてまさにこれこそ私がデルヴォーに開眼した一枚。かつて常設で見て以来、デルヴォーを追っかけることになった作品です。
汽車に裸女、そして夜の森。まさにデルヴォーならではの幻想性に満ちあふれた世界が広がっています。率直なところ巡回先にも出して欲しかった気もしますが、やはりデルヴォーの筆ものった1950年前後の傑作。改めて魅惑的な作品だと感じました。
しかしながら興味深いのは本作の特異性。同館ニュース誌の「ソカロ」にもテキストがあるように、背後に広がる濃密な森林描写はおおよそデルヴォーらしからぬもの。と言うのも、彼の作品空間は基本的に古代を連想させる都市や室内などが多いのです。
しかもそれらはいずれも舞台のような奥行きを持っているのも特徴。ちなみにデルヴォーは画家を志す前にアカデミーで建築を学んでいます。
にも関わらずこの大森林。かき分けて進めば二度と帰れそうもないほど木々が鬱蒼と生い茂っています。そして裸女。デルヴォーの他の作品ではあまり表情を見せない女性が、ここではどこか恍惚としたようなうっとりした様子を浮かべています。
「トンネル」1978年 ポール・デルヴォー財団
「ソカロ」誌ではそこに最愛の女性タムとの17年ぶりの再会を読み取っていましたが、確かに他のデルヴォー画と見比べると明らかに個性的。画業を網羅する回顧展だからこそ浮かび上がってくる「森」の特異点。実に興味深いところでした。
「森」で長くなりました。さて本展、巡回展ということで、基本的には府中と同一内容。章立ても同じです。
第1章「写実主義と印象主義の影響」
第2章「表現主義の影響」
第3章「シュルレアリスムの影響」
第4章「ポール・デルヴォーの世界」
欲望の象徴としての女性、男性の居場所
生命の象徴としての骸骨
汽車、トラム、駅
建築的要素
ルーツとしての過去のオブジェ
フレスコ壁画
第5章「旅のおわり」
「グラン・マラドの水門」1921年 個人蔵
やはり面白いのはいわゆるデルヴォーがデルヴォーになった以前、つまりは印象派や表現主義の影響を受けていた作品群。「グラン・マラドの水門」(1921年)などはおおよそキャブションを確認しないとデルヴォーとは分かりません。
「タムの肖像」1949年 個人蔵
そして当然ながら展示の中核となるのが、生涯の伴侶タム。若かりしき頃、結婚を断念して別れ、20年後になって劇的に再会。そして生活をともにしたという運命の女性です。デッサンもいくつか出品されています。
さて埼玉会場の特徴としてはモチーフとなる汽車やランプなどの模型を作品と一緒に並べていること。デルヴォーは大変な汽車好きで、トラムを細かに描いたスケッチなどもありますが、例えば先ほどの「森」では、画中に出てくる汽車の模型「OB12」もあわせて紹介。他に手鏡なども。いずれもアトリエに残されていたものだそうです。
デルヴォーのアトリエにあった列車模型「OB12」 ポール・デルヴォー財団
これらの模型は府中展でも出ていましたが順路の最後でした。しかし埼玉では関連作品のすぐ隣に展示。絵と直接、見比べることが可能です。これが思いの外に楽しめました。
「カリュプソー」(1986年) ポール・デルヴォー財団
デルヴォーは晩年になって視力を失い、92歳になって最愛のタムを亡くしますが、その日を境に筆を置き、絵を描くことをやめてしまいます。晩年の「カリュプソー」(1986年)に何を見るのか。生涯にわたって愛したもの、夢見たものを自身のステージに立たせて描いたデルヴォー。その人生はタムの元へと旅だっていきました。
ところで所蔵家の健康上の理由により、当初からの出品が叶わず、会期中からの展示を検討してきた「バルコニー」は、結局、展示出来なくなりました。
「バルコニー」1948年 個人蔵(*非出品)
なお同館では「バルコニー」の観覧希望者の半券にスタンプを押すなどとして再入場可の措置をとっていましたが、今回出品不能になったのにも関わらず、そのスタンプを見せれば、再度入場することが出来るそうです。これはとても有り難い対応です。ありがとうございます。
出品作のうち半数は日本初公開。関東巡回のラストです。お見逃しなきようおすすめします。
3月24日まで開催されています。*埼玉展終了後、岡崎市立美術館(4/6~5/26)、秋田市立千秋美術館(7/20~9/1)へと巡回予定。
「ポール・デルヴォー展 夢をめぐる旅」 埼玉県立近代美術館(@momas_kouhou)
会期:1月22日(火)~3月24日(日)
休館:月曜日。但し2月11日は開館。
時間:10:00~17:30
料金:一般1100(880)円 、大高生880(710)円、中学生以下、65歳以上無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:さいたま市浦和区常盤9-30-1
交通:JR線北浦和駅西口より徒歩5分。北浦和公園内。
「ポール・デルヴォー展 夢をめぐる旅」
1/22~3/24
埼玉県立近代美術館で開催中の「ポール・デルヴォー展 夢をめぐる旅」へ行ってきました。
鹿児島、府中、下関、埼玉と全国巡回中のデルヴォー展。(以降、岡崎、秋田へと巡回。)
下記リンク先の府中展の感想にも書きましたが、知られざる初期作に目を向け、画業を一生涯に渡って見据えた回顧展。単に名品展ではない、デルヴォーの画業のエッセンスを提示する充実した展示となっています。
「ポール・デルヴォー展」@府中市美術館(昨年の府中展の感想です。)
関東の巡回は府中とここさいたま。実は私自身、巡回展を追っかけることは殆どありませんが、今回ばかりは別。もちろんデルヴォーが好きなこともありますが、埼近美だからこその出品作を回顧展の中で見たかったということもあります。
「森」1948年 埼玉県立近代美術館
それがまさに「森」。言うまでもなく埼玉県美のコレクションで本会場のみの展示。そしてまさにこれこそ私がデルヴォーに開眼した一枚。かつて常設で見て以来、デルヴォーを追っかけることになった作品です。
汽車に裸女、そして夜の森。まさにデルヴォーならではの幻想性に満ちあふれた世界が広がっています。率直なところ巡回先にも出して欲しかった気もしますが、やはりデルヴォーの筆ものった1950年前後の傑作。改めて魅惑的な作品だと感じました。
しかしながら興味深いのは本作の特異性。同館ニュース誌の「ソカロ」にもテキストがあるように、背後に広がる濃密な森林描写はおおよそデルヴォーらしからぬもの。と言うのも、彼の作品空間は基本的に古代を連想させる都市や室内などが多いのです。
しかもそれらはいずれも舞台のような奥行きを持っているのも特徴。ちなみにデルヴォーは画家を志す前にアカデミーで建築を学んでいます。
にも関わらずこの大森林。かき分けて進めば二度と帰れそうもないほど木々が鬱蒼と生い茂っています。そして裸女。デルヴォーの他の作品ではあまり表情を見せない女性が、ここではどこか恍惚としたようなうっとりした様子を浮かべています。
「トンネル」1978年 ポール・デルヴォー財団
「ソカロ」誌ではそこに最愛の女性タムとの17年ぶりの再会を読み取っていましたが、確かに他のデルヴォー画と見比べると明らかに個性的。画業を網羅する回顧展だからこそ浮かび上がってくる「森」の特異点。実に興味深いところでした。
「森」で長くなりました。さて本展、巡回展ということで、基本的には府中と同一内容。章立ても同じです。
第1章「写実主義と印象主義の影響」
第2章「表現主義の影響」
第3章「シュルレアリスムの影響」
第4章「ポール・デルヴォーの世界」
欲望の象徴としての女性、男性の居場所
生命の象徴としての骸骨
汽車、トラム、駅
建築的要素
ルーツとしての過去のオブジェ
フレスコ壁画
第5章「旅のおわり」
「グラン・マラドの水門」1921年 個人蔵
やはり面白いのはいわゆるデルヴォーがデルヴォーになった以前、つまりは印象派や表現主義の影響を受けていた作品群。「グラン・マラドの水門」(1921年)などはおおよそキャブションを確認しないとデルヴォーとは分かりません。
「タムの肖像」1949年 個人蔵
そして当然ながら展示の中核となるのが、生涯の伴侶タム。若かりしき頃、結婚を断念して別れ、20年後になって劇的に再会。そして生活をともにしたという運命の女性です。デッサンもいくつか出品されています。
さて埼玉会場の特徴としてはモチーフとなる汽車やランプなどの模型を作品と一緒に並べていること。デルヴォーは大変な汽車好きで、トラムを細かに描いたスケッチなどもありますが、例えば先ほどの「森」では、画中に出てくる汽車の模型「OB12」もあわせて紹介。他に手鏡なども。いずれもアトリエに残されていたものだそうです。
デルヴォーのアトリエにあった列車模型「OB12」 ポール・デルヴォー財団
これらの模型は府中展でも出ていましたが順路の最後でした。しかし埼玉では関連作品のすぐ隣に展示。絵と直接、見比べることが可能です。これが思いの外に楽しめました。
「カリュプソー」(1986年) ポール・デルヴォー財団
デルヴォーは晩年になって視力を失い、92歳になって最愛のタムを亡くしますが、その日を境に筆を置き、絵を描くことをやめてしまいます。晩年の「カリュプソー」(1986年)に何を見るのか。生涯にわたって愛したもの、夢見たものを自身のステージに立たせて描いたデルヴォー。その人生はタムの元へと旅だっていきました。
ところで所蔵家の健康上の理由により、当初からの出品が叶わず、会期中からの展示を検討してきた「バルコニー」は、結局、展示出来なくなりました。
「バルコニー」1948年 個人蔵(*非出品)
なお同館では「バルコニー」の観覧希望者の半券にスタンプを押すなどとして再入場可の措置をとっていましたが、今回出品不能になったのにも関わらず、そのスタンプを見せれば、再度入場することが出来るそうです。これはとても有り難い対応です。ありがとうございます。
出品作のうち半数は日本初公開。関東巡回のラストです。お見逃しなきようおすすめします。
3月24日まで開催されています。*埼玉展終了後、岡崎市立美術館(4/6~5/26)、秋田市立千秋美術館(7/20~9/1)へと巡回予定。
「ポール・デルヴォー展 夢をめぐる旅」 埼玉県立近代美術館(@momas_kouhou)
会期:1月22日(火)~3月24日(日)
休館:月曜日。但し2月11日は開館。
時間:10:00~17:30
料金:一般1100(880)円 、大高生880(710)円、中学生以下、65歳以上無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:さいたま市浦和区常盤9-30-1
交通:JR線北浦和駅西口より徒歩5分。北浦和公園内。
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「フランシス・ベーコン展」 東京国立近代美術館
東京国立近代美術館
「フランシス・ベーコン展」
3/8~5/26
東京国立近代美術館で開催中の「フランシス・ベーコン展」のプレスプレビューに参加してきました。
アイルランドに生まれ、欧米では20世紀を代表する画家として知られるフランシス・ベーコン(1909-1992)。しかしながら日本では数点しか作品が存在しないこともあり、必ずしも受容されているとは言えませんでした。
フランシス・ベーコン(1909-1992) *スライド図版
国内では約30年ぶりの回顧展です。イギリス、ドイツ、アメリカ、オーストラリアなどの美術館より33点の絵画が集結。またあわせてベーコンにインスパイアされた舞踏家の映像なども紹介し、ベーコン画における「身体性」に着目した展示となっています。
さてともかく歪んだ身体に奇異なモチーフ。「身体性」云々と言われても、なかなか取っ付きにくいのも事実です。しかしながらベーコンの作品、実際に前にすると、図版などでは到底伝わらない、とある魅力があることに気がつきます。
まずはそこから。企画担当の保坂健二朗さんとして「下手なのにうまい」と言わしめるベーコン。一体何がそうなのか。
ずばりベーコン独特の筆致による油絵の質感です。
右:「人体による習作」1949年 油彩・キャンバス ヴィクトリア・ナショナル・ギャラリー
左:「肖像のための習作」1949年 油彩・キャンバス シカゴ現代美術館
と言うのもベーコンはそもそも美術の専門教育を受けることなく、独学で絵を志しましたが、ともかく絵筆の使い方が独特。つまり水墨の掠れのような表現を油彩で行っているのです。その一例が「人体による習作」(1949年)。いわゆるベーコンに特徴的な骨格のない人物、まるで幽霊のようなシルエット。カーテンと身体、どちらが前で後なのか分からないほどの繊細なタッチで描いています。
またベーコン画の一つのキーワードとして挙げられるのが、言わば肉的な表現。つまり身体を捉える際に骨ではなく肉から入っていることです。
左:「ジョージ・ダイアの三習作」1969年 油彩・キャンバス ルイジアナ近代美術館
代表作「ジョージ・ダイアの三習作」(1969年)における顔面表現はまさに肉そのもの。塗りは驚くほどに細やかですが、質感自体には浮き上がるようなボリューム感があります。またそもそもベーコンの描く人物からしてどこか肉塊のようではないでしょうか。足も腕もはっきりしません。
右:「ファン・ゴッホの肖像のための習作V」1957年 油彩・砂・キャンバス ハーシュホーン美術館
左:「ファン・ゴッホの肖像のための習作VI」1957年 油彩・キャンバス アーツ・カウンシル・コレクション
それにベーコンは自身の求めるテクスチャーを出すために、布を画面に押し付けたりしていたとのこと。またゴッホに素材を求めたゴッホシリーズでは色彩実験と言えるほど鮮やかな色を表現。しかも一つ一つの色面は抽象的。つまり具象ながらも抽象のエッセンスを絵画に落とし込んでいます。
ベーコン画の絵具の美しさ、そして意外なほど奥行きのある三次元的空間は図版で全く分かりません。この点においても実際の作品を前にする価値が十分にあると言うものでした。
右:「座る人物像(枢機卿)」1955年 油彩・キャンバス ゲント市立現代美術館
左:「教皇のための習作VI」1961年 油彩・キャンバス ヤゲオ財団
さて質感表現に続き、モチーフについてもう少し。ベーコンは先にゴッホを挙げたのと同様、教皇やスフィンクスなど、いくつかのシリーズを手がけています。うち教皇はベラスケスの「教皇インノケンティウス10世の肖像」に由来。彼は50~60年代にかけて計45点以上の教皇像を描きました。
その中でも印象的なのは「叫ぶ教皇の頭部のための習作」(1952)。ともかく大きく口を開けた叫びの表現。ベーコンは40年代後半にもこうした叫ぶ人物を描きましたが、この吸い込まれるような口の中の闇。地の色とは異なる深い黒をあえて塗ることで、より鮮烈な効果を生み出していないでしょうか。
「叫ぶ教皇の頭部のための習作」と「戦艦ポチョムキン」のスティル *スライド図版
また本作は映画「戦艦ポチョムキン」の虐殺のシーンからとられたもの。アトリエには映画の写真も残されているそうです。また大きく口を開けた表現自体は、プッサンの「嬰児虐殺」から着想されているとか。絵画を見るだけではなかなか分かりにくいものの、先のスフィンクスやベラスケスのように、エジプトやバロックなどの古典の引用も数多く行われています。
さて最後にいくつかの人物画についての特徴を。それはベーコンはモデルに愛人たちを登場させているということです。
「ジョージ・ダイアの三習作」(一部)とジョージ・ダイア *スライド図版
例えば先に触れた「ジョージ・ダイアの三習作」はベーコン60年代の愛人。実はベーコン、80歳に至るまで10年毎に愛人が1人ずつ、計5名いたというエピソードでも知られるほどの豪傑。また「ジョン・エドワーズの肖像のための三習作」のジョンもベーコン70年代の愛人。ちなみに5人の愛人はいずれも男性です。
「ジョン・エドワーズの肖像のための三習作」とジョン・エドワーズ *スライド図版
50年代、男性同士の性交渉が禁止されていたイギリスでベーコンは男性の性をテーマにした作品を描いたことも。それはあえなく出品禁止になります。こうしたベーコン画におけるセクシャリティな面もまた考えるべきポイントだと言えそうです。
それにしても40点に満たない出品数に関わらず、大変な充足感。それは一つ一つの作品がフルサイズ、かなり大きいことにも由来しているかもしれません。とりわけラスト、ベーコンに特徴的な三幅対、トリプティックと呼ばれる一連のシリーズが並ぶ様子はまさに圧巻の一言です。
「フランシス・ベーコン展」会場風景(東京国立近代美術館)
それにしても絵画の中において溶け出し、次第に変容していくような身体。かの杉本博司をして「腐敗しながら蘇生していく」と言わしめたイメージ。肉的身体の向こうに見え隠れする何とも言い難いオーラ。檻に囚われているようでもあり放たれているようでもある。どこか暴力的でもあり、また他方で精神的でもあるような両極端の二面性。そしてその魔性的で怪奇的ですらある魅力。じっくりと対峙して格闘したい作品ばかりです。
「フランシス・ベーコン展」会場風景(東京国立近代美術館)
なおいずれの作品も金縁のガラスケースに収められていますが、これはベーコンの意向、つまり見る人と絵の間に隔たりを生むことを好んでいたからなのだそうです。それをこじ開けてでも見ていきたい絵画の深層。作品を前にして久々に神経が覚醒していくような感覚を味わいました。
ベーコン展の特設サイト「BACON'S WORLD」もゾクゾク更新中。また会期中、各種講演会などのイベントも盛りだくさんです。
【連続講演会 すべて参加すればあなたもベーコン通!】
3月22日(金) 18:30~19:30 「ベーコンについて 初級」桝田倫広(当館研究員)
3月30日(土) 14:00~15:30 「ベーコンについて 初級」保坂健二朗(当館主任研究員)
4月5日(金) 18:30~19:30 「ベーコンについて 中級」桝田倫広
4月13日(土) 14:00~15:30 「ベーコンについて 上級」保坂健二朗
会場:東京国立近代美術館講堂(地下1階) *先着140名
【映画「愛の悪魔」上映会 フランシス・ベーコンの魅惑的な生涯】
3月9日(土)、16日(土) 14:00~16:00 本展企画者によるミニレクチャーつき
会場:東京国立近代美術館講堂(地下1階) *先着140名。当日10時から1階受付で整理券配布
【トークイベント】
3月21日(木) 19:30~21:00 茂木健一郎氏(脳科学者)、聞き手:鈴木芳雄氏(編集者)
会場:京都造形芸術大学・東北芸術工科大学 外苑キャンパス *先着140名。
いずれも開場は開演の30分前。申込予約不要(一部整理券方式)、参加無料です。ちなみに連続講演会では初級がベーコンの人生と作品、中級が人生の部分を抜いたベーコンの絵画そのもの、上級が最新のベーコン研究の成果を発表する場になるとか。こちらに参加してみるのも面白いのではないでしょうか。
「美術手帖2013年3月号/フランシス・ベーコン」
5月26日までの開催です。私はおすすめします。*東京展終了後、豊田市美術館(2013/6/8~9/1)へと巡回。
「フランシス・ベーコン展」 東京国立近代美術館(@MOMAT60th)
会期:2013年3月8日(金)~5月26日(日)
休館:月曜日。但し3/25、4/1、4/8、4/29、5/6は開館。5/7(火)は休館。
時間:10:00~17:00(金曜日は20:00まで) *入館は閉館30分前まで
料金:一般1500(1100)円、大学生1100(800)円、高校生700(400)円。中学生以下無料
*( )内は20名以上の団体料金。3月と4月の土曜、日曜は高校生無料観覧日。(要学生証)
場所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
「フランシス・ベーコン展」
3/8~5/26
東京国立近代美術館で開催中の「フランシス・ベーコン展」のプレスプレビューに参加してきました。
アイルランドに生まれ、欧米では20世紀を代表する画家として知られるフランシス・ベーコン(1909-1992)。しかしながら日本では数点しか作品が存在しないこともあり、必ずしも受容されているとは言えませんでした。
フランシス・ベーコン(1909-1992) *スライド図版
国内では約30年ぶりの回顧展です。イギリス、ドイツ、アメリカ、オーストラリアなどの美術館より33点の絵画が集結。またあわせてベーコンにインスパイアされた舞踏家の映像なども紹介し、ベーコン画における「身体性」に着目した展示となっています。
さてともかく歪んだ身体に奇異なモチーフ。「身体性」云々と言われても、なかなか取っ付きにくいのも事実です。しかしながらベーコンの作品、実際に前にすると、図版などでは到底伝わらない、とある魅力があることに気がつきます。
まずはそこから。企画担当の保坂健二朗さんとして「下手なのにうまい」と言わしめるベーコン。一体何がそうなのか。
ずばりベーコン独特の筆致による油絵の質感です。
右:「人体による習作」1949年 油彩・キャンバス ヴィクトリア・ナショナル・ギャラリー
左:「肖像のための習作」1949年 油彩・キャンバス シカゴ現代美術館
と言うのもベーコンはそもそも美術の専門教育を受けることなく、独学で絵を志しましたが、ともかく絵筆の使い方が独特。つまり水墨の掠れのような表現を油彩で行っているのです。その一例が「人体による習作」(1949年)。いわゆるベーコンに特徴的な骨格のない人物、まるで幽霊のようなシルエット。カーテンと身体、どちらが前で後なのか分からないほどの繊細なタッチで描いています。
またベーコン画の一つのキーワードとして挙げられるのが、言わば肉的な表現。つまり身体を捉える際に骨ではなく肉から入っていることです。
左:「ジョージ・ダイアの三習作」1969年 油彩・キャンバス ルイジアナ近代美術館
代表作「ジョージ・ダイアの三習作」(1969年)における顔面表現はまさに肉そのもの。塗りは驚くほどに細やかですが、質感自体には浮き上がるようなボリューム感があります。またそもそもベーコンの描く人物からしてどこか肉塊のようではないでしょうか。足も腕もはっきりしません。
右:「ファン・ゴッホの肖像のための習作V」1957年 油彩・砂・キャンバス ハーシュホーン美術館
左:「ファン・ゴッホの肖像のための習作VI」1957年 油彩・キャンバス アーツ・カウンシル・コレクション
それにベーコンは自身の求めるテクスチャーを出すために、布を画面に押し付けたりしていたとのこと。またゴッホに素材を求めたゴッホシリーズでは色彩実験と言えるほど鮮やかな色を表現。しかも一つ一つの色面は抽象的。つまり具象ながらも抽象のエッセンスを絵画に落とし込んでいます。
ベーコン画の絵具の美しさ、そして意外なほど奥行きのある三次元的空間は図版で全く分かりません。この点においても実際の作品を前にする価値が十分にあると言うものでした。
右:「座る人物像(枢機卿)」1955年 油彩・キャンバス ゲント市立現代美術館
左:「教皇のための習作VI」1961年 油彩・キャンバス ヤゲオ財団
さて質感表現に続き、モチーフについてもう少し。ベーコンは先にゴッホを挙げたのと同様、教皇やスフィンクスなど、いくつかのシリーズを手がけています。うち教皇はベラスケスの「教皇インノケンティウス10世の肖像」に由来。彼は50~60年代にかけて計45点以上の教皇像を描きました。
その中でも印象的なのは「叫ぶ教皇の頭部のための習作」(1952)。ともかく大きく口を開けた叫びの表現。ベーコンは40年代後半にもこうした叫ぶ人物を描きましたが、この吸い込まれるような口の中の闇。地の色とは異なる深い黒をあえて塗ることで、より鮮烈な効果を生み出していないでしょうか。
「叫ぶ教皇の頭部のための習作」と「戦艦ポチョムキン」のスティル *スライド図版
また本作は映画「戦艦ポチョムキン」の虐殺のシーンからとられたもの。アトリエには映画の写真も残されているそうです。また大きく口を開けた表現自体は、プッサンの「嬰児虐殺」から着想されているとか。絵画を見るだけではなかなか分かりにくいものの、先のスフィンクスやベラスケスのように、エジプトやバロックなどの古典の引用も数多く行われています。
さて最後にいくつかの人物画についての特徴を。それはベーコンはモデルに愛人たちを登場させているということです。
「ジョージ・ダイアの三習作」(一部)とジョージ・ダイア *スライド図版
例えば先に触れた「ジョージ・ダイアの三習作」はベーコン60年代の愛人。実はベーコン、80歳に至るまで10年毎に愛人が1人ずつ、計5名いたというエピソードでも知られるほどの豪傑。また「ジョン・エドワーズの肖像のための三習作」のジョンもベーコン70年代の愛人。ちなみに5人の愛人はいずれも男性です。
「ジョン・エドワーズの肖像のための三習作」とジョン・エドワーズ *スライド図版
50年代、男性同士の性交渉が禁止されていたイギリスでベーコンは男性の性をテーマにした作品を描いたことも。それはあえなく出品禁止になります。こうしたベーコン画におけるセクシャリティな面もまた考えるべきポイントだと言えそうです。
それにしても40点に満たない出品数に関わらず、大変な充足感。それは一つ一つの作品がフルサイズ、かなり大きいことにも由来しているかもしれません。とりわけラスト、ベーコンに特徴的な三幅対、トリプティックと呼ばれる一連のシリーズが並ぶ様子はまさに圧巻の一言です。
「フランシス・ベーコン展」会場風景(東京国立近代美術館)
それにしても絵画の中において溶け出し、次第に変容していくような身体。かの杉本博司をして「腐敗しながら蘇生していく」と言わしめたイメージ。肉的身体の向こうに見え隠れする何とも言い難いオーラ。檻に囚われているようでもあり放たれているようでもある。どこか暴力的でもあり、また他方で精神的でもあるような両極端の二面性。そしてその魔性的で怪奇的ですらある魅力。じっくりと対峙して格闘したい作品ばかりです。
「フランシス・ベーコン展」会場風景(東京国立近代美術館)
なおいずれの作品も金縁のガラスケースに収められていますが、これはベーコンの意向、つまり見る人と絵の間に隔たりを生むことを好んでいたからなのだそうです。それをこじ開けてでも見ていきたい絵画の深層。作品を前にして久々に神経が覚醒していくような感覚を味わいました。
ベーコン展の特設サイト「BACON'S WORLD」もゾクゾク更新中。また会期中、各種講演会などのイベントも盛りだくさんです。
【連続講演会 すべて参加すればあなたもベーコン通!】
3月22日(金) 18:30~19:30 「ベーコンについて 初級」桝田倫広(当館研究員)
3月30日(土) 14:00~15:30 「ベーコンについて 初級」保坂健二朗(当館主任研究員)
4月5日(金) 18:30~19:30 「ベーコンについて 中級」桝田倫広
4月13日(土) 14:00~15:30 「ベーコンについて 上級」保坂健二朗
会場:東京国立近代美術館講堂(地下1階) *先着140名
【映画「愛の悪魔」上映会 フランシス・ベーコンの魅惑的な生涯】
3月9日(土)、16日(土) 14:00~16:00 本展企画者によるミニレクチャーつき
会場:東京国立近代美術館講堂(地下1階) *先着140名。当日10時から1階受付で整理券配布
【トークイベント】
3月21日(木) 19:30~21:00 茂木健一郎氏(脳科学者)、聞き手:鈴木芳雄氏(編集者)
会場:京都造形芸術大学・東北芸術工科大学 外苑キャンパス *先着140名。
いずれも開場は開演の30分前。申込予約不要(一部整理券方式)、参加無料です。ちなみに連続講演会では初級がベーコンの人生と作品、中級が人生の部分を抜いたベーコンの絵画そのもの、上級が最新のベーコン研究の成果を発表する場になるとか。こちらに参加してみるのも面白いのではないでしょうか。
「美術手帖2013年3月号/フランシス・ベーコン」
5月26日までの開催です。私はおすすめします。*東京展終了後、豊田市美術館(2013/6/8~9/1)へと巡回。
「フランシス・ベーコン展」 東京国立近代美術館(@MOMAT60th)
会期:2013年3月8日(金)~5月26日(日)
休館:月曜日。但し3/25、4/1、4/8、4/29、5/6は開館。5/7(火)は休館。
時間:10:00~17:00(金曜日は20:00まで) *入館は閉館30分前まで
料金:一般1500(1100)円、大学生1100(800)円、高校生700(400)円。中学生以下無料
*( )内は20名以上の団体料金。3月と4月の土曜、日曜は高校生無料観覧日。(要学生証)
場所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.9 小林正人+杉戸洋」 ギャラリーαM
ギャラリーαM
「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.9 小林正人+杉戸洋」
2/9-3/23
ギャラリーαMで開催中の「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.9 小林正人+杉戸洋」へ行ってきました。
キュレーターに東京国立近代美術館の保坂健二朗主任研究員を迎え、まさに「愛」をテーマに繰り広げられたαMの「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう」。
途中、田中功起のイベントを挟み、実に意欲的な展示が行われましたが、もう間もなくそのフィナーレを迎えようとしています。
トリを飾るのは小林正人(1957~)と杉戸洋(1970~)。ともにペインターとして十分なキャリアを積み、国内外のビエンナーレなどでも活躍するアーティストです。
さて絵画の展示。さも壁面に作品が整然と掲げられているのではないかと思うと、とても良い意味で期待を裏切られます。
というわけで、会場の様子から。何やら行く手を阻むように立ち並び、いや横たわり、さらにはあたかも打ち捨てられたように置かれているのが作品そのもの。フレームもキャンバスもおおよそ一般的な「絵画」のフォーマットをとどめていません。
うっかりすると踏みつけてしまいそうな場所にもおもむろに作品が。支持体も絵具も空間の至る所に。さながらαM全体が一つの三次元的な「絵画」のようです。
さも筆に乗り移った画家の愛が空間へ拡散。しかもこれらは杉戸の作品に小林が手を加えたり、杉戸が小林の取り組んだ絵を掛け替えたりしたもの。半ば両者のあうんの呼吸で作られた空間は二人の作品はおろか、画家そもものの境界すら曖昧にします。
そこに介在する我々鑑賞者。「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう」。一定の緊張感こそありながらも、ここには不思議と愛おしくなるような絵画空間が現れていました。
さて来年度のαMのスケジュールも既に発表済です。
「楽園創造ー芸術と日常の新地平 The Earthly Paradise」
2013年4月6日(土)~5月11日(土) 平川ヒロ
2013年5月25日(土)~6月29日(土) 池崎拓也
2013年7月13日(土)~8月24日(土) 上出惠悟(夏休み8/11~8/19)
2013年9月7日(土)~10日12日(土) コンタクトゴンゾ
2013年10月26日(土)~11月30日(土) 佐藤雅晴
2013年12月14日(土)~2014年2月1日(土) 安村崇(冬休み12/22~1/6)
2014年2月15日(土)~3月22日(土) 八幡亜樹
キュレーターは国立国際美術館の中井康之主任研究員。また内容もインスタレーション、映像、彫刻、そしてαMでは初めてとなる写真も。いずれも見逃せない展示となりそうです。
「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.9 小林正人+杉戸洋」は3月23日まで開催されています。
「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.9 小林正人+杉戸洋」 ギャラリーαM(@gallery_alpham)
会期:2月9日(土)~3月23日(土)
休廊:日・月・祝。
時間:11:00~19:00
住所:千代田区東神田1-2-11アガタ竹澤ビルB1F
交通:都営新宿線馬喰横山駅A1出口より徒歩2分、JR総武快速線馬喰町駅西口2番出口より徒歩2分、日比谷線小伝馬町駅2、4番出口より徒歩6分。
「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.9 小林正人+杉戸洋」
2/9-3/23
ギャラリーαMで開催中の「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.9 小林正人+杉戸洋」へ行ってきました。
キュレーターに東京国立近代美術館の保坂健二朗主任研究員を迎え、まさに「愛」をテーマに繰り広げられたαMの「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう」。
途中、田中功起のイベントを挟み、実に意欲的な展示が行われましたが、もう間もなくそのフィナーレを迎えようとしています。
トリを飾るのは小林正人(1957~)と杉戸洋(1970~)。ともにペインターとして十分なキャリアを積み、国内外のビエンナーレなどでも活躍するアーティストです。
さて絵画の展示。さも壁面に作品が整然と掲げられているのではないかと思うと、とても良い意味で期待を裏切られます。
というわけで、会場の様子から。何やら行く手を阻むように立ち並び、いや横たわり、さらにはあたかも打ち捨てられたように置かれているのが作品そのもの。フレームもキャンバスもおおよそ一般的な「絵画」のフォーマットをとどめていません。
うっかりすると踏みつけてしまいそうな場所にもおもむろに作品が。支持体も絵具も空間の至る所に。さながらαM全体が一つの三次元的な「絵画」のようです。
さも筆に乗り移った画家の愛が空間へ拡散。しかもこれらは杉戸の作品に小林が手を加えたり、杉戸が小林の取り組んだ絵を掛け替えたりしたもの。半ば両者のあうんの呼吸で作られた空間は二人の作品はおろか、画家そもものの境界すら曖昧にします。
そこに介在する我々鑑賞者。「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう」。一定の緊張感こそありながらも、ここには不思議と愛おしくなるような絵画空間が現れていました。
さて来年度のαMのスケジュールも既に発表済です。
「楽園創造ー芸術と日常の新地平 The Earthly Paradise」
2013年4月6日(土)~5月11日(土) 平川ヒロ
2013年5月25日(土)~6月29日(土) 池崎拓也
2013年7月13日(土)~8月24日(土) 上出惠悟(夏休み8/11~8/19)
2013年9月7日(土)~10日12日(土) コンタクトゴンゾ
2013年10月26日(土)~11月30日(土) 佐藤雅晴
2013年12月14日(土)~2014年2月1日(土) 安村崇(冬休み12/22~1/6)
2014年2月15日(土)~3月22日(土) 八幡亜樹
キュレーターは国立国際美術館の中井康之主任研究員。また内容もインスタレーション、映像、彫刻、そしてαMでは初めてとなる写真も。いずれも見逃せない展示となりそうです。
「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.9 小林正人+杉戸洋」は3月23日まで開催されています。
「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.9 小林正人+杉戸洋」 ギャラリーαM(@gallery_alpham)
会期:2月9日(土)~3月23日(土)
休廊:日・月・祝。
時間:11:00~19:00
住所:千代田区東神田1-2-11アガタ竹澤ビルB1F
交通:都営新宿線馬喰横山駅A1出口より徒歩2分、JR総武快速線馬喰町駅西口2番出口より徒歩2分、日比谷線小伝馬町駅2、4番出口より徒歩6分。
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「つくることが生きること」 アーツ千代田3331
アーツ千代田3331
「東日本大震災復興支援 つくることが生きること 東京展」
3/9-3/31
アーツ千代田3331で開催中の「東日本大震災復興支援 つくることが生きること 東京展」へ行ってきました。
東日本大震災から今日で丸二年。復興への道のりと今も続く原発事故。あくせくとした日常に追われながらも、かの震災の状況を思い起こさないことはありません。
もちろん各々によって震災への向き合い方は異なりますが、いわゆるアートを基点に、様々なジャンルで復興活動する方々のプロジェクトを紹介する展示が、今、末広町のアーツ千代田3331で行われています。
それが「つくることが生きること」東京展。中村政人をディレクターに擁するコマンドN(一般社団法人非営利芸術活動団体)が、震災後、3331を拠点にスタートした「わわプロジェクト」による展覧会です。
「明治三陸大海嘯の実態」リアス・アーク美術館
まずは過去の災害を見つめ直すことから。気仙沼のリアス・アーク美術館から出品されたのは、明治29年に三陸を襲った大津波を伝える報道画。当時の大衆紙「風俗画報」が、明治三陸地震を取材して絵に表したものです。
「明治三陸大海嘯の実態」から「かがり火の為に命を拾い得たるの図(釜石町)」
津波に呑まれる人々や被災住民の様子などを劇画風に描写。光景がかの震災に重なります。
なお同美術館は震災の被害を受けて休館。2012年夏に一部再開した後、気仙沼と南三陸町の被災の記録と調査を行っています。繰り返された津波被害。被災地の美術館としてかの災害をどう後世に伝えるのか。その活動にも注目すべきところかもしれません。
新潟大学工学部岩佐研究室「仮設のトリセツ」
さて震災が『現在進行形』だと再認識させられるのは、今なお多くの方が避難されているという現実です。まだ10万名以上の方が仮設住宅で暮らしておられることをご存知でしょうか。
新潟大学工学部岩佐研究室「仮設のトリセツ」
新潟大学工学部岩佐研究室の「仮設のトリセツ」では、震災後に建設された仮設住宅、約53000戸を1000分の1スケールで表現。一口に仮設といえども、様々なタイプや機能があることが分かります。また空き住戸数などもパネルで紹介していました。
「東北・被災地の復興リーダーが語る『わわプロジェクト』」
そして被災地の状況をさらに一歩踏み込んだ形で知ることが出来るのが、東北各地で復興に向けて活動する方々の映像メッセージです。2年たって復興がどう進んでいるのか、また何が問題なのか。報道などで見聞きするよりもリアルにかつダイレクト。強く訴えかけられました。
「ワタノハスマイル」
さてこの展示で私が特に印象深かったのが「ワタノハスマイル」。石巻の小学校の校庭に流れ着いたガレキなり廃材を、同市内の渡波(ワタノハ)地区の子どもたちが自由にくっつけてオブジェにしたというプロジェクトです。
「ワタノハスマイル」
これが驚くほどに創造性に満ちあふれています。
「ワタノハスマイル」
街の残骸、被害を直接的に伝え、ある意味で悲しみの記憶でもある廃材。それが子どもたちの手によって楽し気なオブジェに生まれ変わる。簡単に「悲しみから喜びへ。」と受け止めてはならないかもしれませんが、この逞しき創造力にはどこか『未来への希望』を感じてなりませんでした。
畠山直哉「陸前高田(2011)/気仙川(2002-2010)」デジタル・スライドショー
その他には3.11の以前と以降の陸前高田の風景を表裏のスクリーンで写した畠山直哉のスライド作品も。言うまでもなく畠山は陸前高田の出身。まさに一昨年の写真美術館の個展「Natural Stories」でも、同様に被災地を捉えたシリーズを出品していました。
「3.11メモリアルプロジェクト」から
また津波によって壊された公共物などがそのまま展示。原形をとどめず、ひしゃげて歪みきった道路標識の姿。何とも言い難い恐怖を覚えました。
細川剛の「変わらない風景、はじまりの風景」
ラストは三陸沿岸部と被災地を写して歩いた写真家の細川剛の「変わらない風景、はじまりの風景」シリーズです。あくまでも静かにゆっくりとした「はじまり」の姿。だからこそのしかかる被害の大きさ。希望を持ちつつも、改めて現実を直視すべきであることを強く感じました。
初めにも触れたように今日で震災2年目。今月は国内各地でも震災に関する様々な催しが行われています。その中で「つくることが生きること」は必ずしも目立つものではありません。
しかしながらここにあるのは、いずれも地に足を向けた復興支援プロジェクトの姿。阪神や古くは関東大震災に関する展示もあります。過去と現在。そして来るべき未来の災害。この場を僅かながら共有することだけでも、意味があるのではないかと思いました。
「つくることが生きること 東京展」会場風景
あの日何を考え、その後の状況から何を行動し、何を学んだのか。率直なところ、あの震災について、このブログで云々することの無力感は否めません。それでもあえて冷静に見つめ直したい東日本大震災の被害と復興の状況。その一つの切っ掛けになる展示ではないでしょうか。
「東日本大震災復興支援 つくることが生きること」イベントスケジュール
3月31日までの開催です。入場は無料でした。
「ADBOAT PROJECT」*会期終了後、この船が実際に三陸の海に出て漁をするそうです!
「東日本大震災復興支援 つくることが生きること 東京展」 アーツ千代田3331(@3331ArtsChiyoda) メインギャラリー
会期:3月9日(土)~3月31日(日)
休館:火曜日
時間:12:00~19:00 入場は閉場の30分前まで。
料金:無料
場所:千代田区外神田6-11-14 アーツ千代田3331 1階
交通:東京メトロ銀座線末広町駅4番出口より徒歩1分、東京メトロ千代田線湯島駅6番出口より徒歩3分、都営大江戸線上野御徒町駅A1番出口より徒歩6分、JR御徒町駅南口より徒歩7分。
「東日本大震災復興支援 つくることが生きること 東京展」
3/9-3/31
アーツ千代田3331で開催中の「東日本大震災復興支援 つくることが生きること 東京展」へ行ってきました。
東日本大震災から今日で丸二年。復興への道のりと今も続く原発事故。あくせくとした日常に追われながらも、かの震災の状況を思い起こさないことはありません。
もちろん各々によって震災への向き合い方は異なりますが、いわゆるアートを基点に、様々なジャンルで復興活動する方々のプロジェクトを紹介する展示が、今、末広町のアーツ千代田3331で行われています。
それが「つくることが生きること」東京展。中村政人をディレクターに擁するコマンドN(一般社団法人非営利芸術活動団体)が、震災後、3331を拠点にスタートした「わわプロジェクト」による展覧会です。
「明治三陸大海嘯の実態」リアス・アーク美術館
まずは過去の災害を見つめ直すことから。気仙沼のリアス・アーク美術館から出品されたのは、明治29年に三陸を襲った大津波を伝える報道画。当時の大衆紙「風俗画報」が、明治三陸地震を取材して絵に表したものです。
「明治三陸大海嘯の実態」から「かがり火の為に命を拾い得たるの図(釜石町)」
津波に呑まれる人々や被災住民の様子などを劇画風に描写。光景がかの震災に重なります。
なお同美術館は震災の被害を受けて休館。2012年夏に一部再開した後、気仙沼と南三陸町の被災の記録と調査を行っています。繰り返された津波被害。被災地の美術館としてかの災害をどう後世に伝えるのか。その活動にも注目すべきところかもしれません。
新潟大学工学部岩佐研究室「仮設のトリセツ」
さて震災が『現在進行形』だと再認識させられるのは、今なお多くの方が避難されているという現実です。まだ10万名以上の方が仮設住宅で暮らしておられることをご存知でしょうか。
新潟大学工学部岩佐研究室「仮設のトリセツ」
新潟大学工学部岩佐研究室の「仮設のトリセツ」では、震災後に建設された仮設住宅、約53000戸を1000分の1スケールで表現。一口に仮設といえども、様々なタイプや機能があることが分かります。また空き住戸数などもパネルで紹介していました。
「東北・被災地の復興リーダーが語る『わわプロジェクト』」
そして被災地の状況をさらに一歩踏み込んだ形で知ることが出来るのが、東北各地で復興に向けて活動する方々の映像メッセージです。2年たって復興がどう進んでいるのか、また何が問題なのか。報道などで見聞きするよりもリアルにかつダイレクト。強く訴えかけられました。
「ワタノハスマイル」
さてこの展示で私が特に印象深かったのが「ワタノハスマイル」。石巻の小学校の校庭に流れ着いたガレキなり廃材を、同市内の渡波(ワタノハ)地区の子どもたちが自由にくっつけてオブジェにしたというプロジェクトです。
「ワタノハスマイル」
これが驚くほどに創造性に満ちあふれています。
「ワタノハスマイル」
街の残骸、被害を直接的に伝え、ある意味で悲しみの記憶でもある廃材。それが子どもたちの手によって楽し気なオブジェに生まれ変わる。簡単に「悲しみから喜びへ。」と受け止めてはならないかもしれませんが、この逞しき創造力にはどこか『未来への希望』を感じてなりませんでした。
畠山直哉「陸前高田(2011)/気仙川(2002-2010)」デジタル・スライドショー
その他には3.11の以前と以降の陸前高田の風景を表裏のスクリーンで写した畠山直哉のスライド作品も。言うまでもなく畠山は陸前高田の出身。まさに一昨年の写真美術館の個展「Natural Stories」でも、同様に被災地を捉えたシリーズを出品していました。
「3.11メモリアルプロジェクト」から
また津波によって壊された公共物などがそのまま展示。原形をとどめず、ひしゃげて歪みきった道路標識の姿。何とも言い難い恐怖を覚えました。
細川剛の「変わらない風景、はじまりの風景」
ラストは三陸沿岸部と被災地を写して歩いた写真家の細川剛の「変わらない風景、はじまりの風景」シリーズです。あくまでも静かにゆっくりとした「はじまり」の姿。だからこそのしかかる被害の大きさ。希望を持ちつつも、改めて現実を直視すべきであることを強く感じました。
初めにも触れたように今日で震災2年目。今月は国内各地でも震災に関する様々な催しが行われています。その中で「つくることが生きること」は必ずしも目立つものではありません。
しかしながらここにあるのは、いずれも地に足を向けた復興支援プロジェクトの姿。阪神や古くは関東大震災に関する展示もあります。過去と現在。そして来るべき未来の災害。この場を僅かながら共有することだけでも、意味があるのではないかと思いました。
「つくることが生きること 東京展」会場風景
あの日何を考え、その後の状況から何を行動し、何を学んだのか。率直なところ、あの震災について、このブログで云々することの無力感は否めません。それでもあえて冷静に見つめ直したい東日本大震災の被害と復興の状況。その一つの切っ掛けになる展示ではないでしょうか。
「東日本大震災復興支援 つくることが生きること」イベントスケジュール
3月31日までの開催です。入場は無料でした。
「ADBOAT PROJECT」*会期終了後、この船が実際に三陸の海に出て漁をするそうです!
「東日本大震災復興支援 つくることが生きること 東京展」 アーツ千代田3331(@3331ArtsChiyoda) メインギャラリー
会期:3月9日(土)~3月31日(日)
休館:火曜日
時間:12:00~19:00 入場は閉場の30分前まで。
料金:無料
場所:千代田区外神田6-11-14 アーツ千代田3331 1階
交通:東京メトロ銀座線末広町駅4番出口より徒歩1分、東京メトロ千代田線湯島駅6番出口より徒歩3分、都営大江戸線上野御徒町駅A1番出口より徒歩6分、JR御徒町駅南口より徒歩7分。
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