「柴又 FU-TEN(ふーてん)」にアートルームが誕生しました

「楽活」に、柴又のゲストハウス、「柴又 FU-TEN(ふーてん)」について寄稿しました。



下町情緒溢れる柴又にアートルームが誕生。ゲストハウス「柴又 FU-TEN(ふーてん)」に泊まりたいっ!
https://rakukatsu.jp/shibamata-artroom-20180619/


「柴又 FU-TEN(ふーてん)」とは、2017年、柴又帝釈天に近い場所に、葛飾区の職員寮をリノベーションして出来たゲストハウスで、正式名を「Shibamata FU-TEN Bed and Local」と呼びます。



「SHIBAMATA FU-TEN BED & LOCAL」
http://shibamatafuten.com




全室個室ながらも、シャワー、トイレは共有で、さらに共用キッチンや24時間利用可能なラウンジもあり、ホステル的な性格も持ち合わせています。



客室はほぼツインで、価格も一泊一室4000円から5000円前後(1人あたり)と、リーズナブルに設定されています。若い方を中心に、外国のお客さまの利用も少なくないそうです。



その「柴又 FU-TEN(ふーてん)」に、今年6月、14名の現代アーティストが制作したアートルームが誕生しました。



それぞれのアーティストは、当地の地誌や人々を見据え、思い思いに「柴又」を表現していて、壁面から天井にまで作品を展開していました。1人のアーティストが、各客室の1室を全てを手がけていて、全14室のアートルームが作られました。



なおアートルームは、完成後、通常の営業に入ったため、部屋のみを見学することは叶いません。原則、宿泊者のみが立ち入ることが出来ます。



「SHIBAMATA to art」
http://art.shibamatafuten.com




制作に際しては、クラウドファンティングで資金集めが行われ、葛飾区長も応援コメントを寄せるなど、行政からもアプローチもなされました。また、地域の方との交流イベントなども開催されているそうです。



柴又地区初のゲストハウスである「柴又 FU-TEN(ふーてん)」に誕生したアートルーム。今後、柴又の交流の拠点として注目されていくのかもしれません。


「SHIBAMATA FU-TEN BED & LOCAL」
施設名:柴又ふーてんベッドアンドローカル
住所:〒125-0052 東京都葛飾区柴又7-12-19
交通:京成金町線柴又駅より徒歩7~8分。
宿泊料金:2名和室・洋室(1室当たり)8000円前後。その他、オプションプラン、学割プランなどあり。
公式サイト:http://shibamatafuten.com
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2018年7月に見たい展覧会〜琉球・縄文・サマーフェス

関東は、平年より20日以上も早く梅雨が明け、夏がやって来ました。突然の猛暑で、身体を崩されている方もおられるかもしれません。

春先に代わり、夏から秋へ向けての新たな展覧会もはじまっています。7月に見たい展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「人麿影供900年 歌仙と古筆」 出光美術館(~7/22)
・「江戸の悪 PARTⅡ」 太田記念美術館(~7/29)
・「ダイアン・クライスコレクション アンティーク・レース展」 渋谷区立松濤美術館(~7/29)
・「生誕120年 中村忠二展」 練馬区立美術館(~7/29)
・「ゆらぎ ブリジット・ライリーの絵画」 DIC川村記念美術館(~8/26)
・「名作展 ベストセレクション 龍子記念館の逸品」 大田区立龍子記念館(~8/26)
・「没後40年 濱田庄司展」 世田谷美術館(~8/26)
・「小瀬村真美:幻画~像(イメージ)の表皮」 原美術館(~9/2)
・「金剛宗家の能面と能装束」 三井記念美術館(~9/2)
・「三沢厚彦 ANIMALS IN YOKOSUKA」 横須賀美術館(~9/2)
・「縄文—1万年の美の鼓動」 東京国立博物館(7/3~9/2)
・「浦沢直樹展 描いて描いて描きまくる!—埼玉の巻」 埼玉県立近代美術館(7/7~9/2)
・「第7回 新鋭作家展 見しらぬ故郷/なじみの異郷」 川口市立アートギャラリー・アトリア(7/14~9/2)
・「琉球 美の宝庫」 サントリー美術館(7/18~9/2)
・「ルーヴル美術館展 肖像芸術」 国立新美術館(~9/3)
・「水を描く—広重の雨、玉堂の清流、土牛のうずしお」 山種美術館(7/14~9/6)
・「フィンランド陶芸—芸術家たちのユートピア」 目黒区美術館(7/14~9/6)
・「生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。」 東京ステーションギャラリー(7/14~9/9)
・「巨匠たちのクレパス画展 日本近代から現代まで」 東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(7/14~9/9)
・「木版画の神様 平塚運一展」 千葉市美術館(7/14~9/9)
・「没後50年 河井寬次郎展」 パナソニック汐留ミュージアム(7/7~9/16)
・「ゴードン・マッタ=クラーク展」 東京国立近代美術館(~9/17)
・「ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界」 三菱一号館美術館(~9/17)
・「ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力」 東京都庭園美術館(~9/17)
・「モネ それからの100年」 横浜美術館(7/14~9/24)
・「イサム・ノグチ—彫刻から身体・庭へ」 東京オペラシティアートギャラリー(7/14~9/24)
・「杉浦邦恵 うつくしい実験」 東京都写真美術館(7/24〜9/24)
・「昆虫」 国立科学博物館(7/13~10/8)
・「BENTO おべんとう展—食べる・集う・つながるデザイン」 東京都美術館(7/21~10/8)
・「内藤 礼―明るい地上には あなたの姿が見える」 水戸芸術館(7/28〜10/8)
・「没後50年 藤田嗣治展」 東京都美術館(7/31~10/8)
・「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」 21_21 DESIGN SIGHT(~10/14)
・「デザインあ展 in TOKYO」 日本科学未来館(7/19~10/18)
・「ルドン ひらかれた夢—幻想の世紀末から現代へ」 ポーラ美術館(7/22~12/2)

ギャラリー

・「土屋信子 30 Ways To Go To The Moon」 SCAI THE BATHHOUSE(~7/14)
・「今津景 Measuring Invisible Distance」 山本現代(~7/14)
・「マッシモ・ヴィターリ写真展」 スパイラルガーデン(7/10〜16)
・「宮永愛子展 life」 ミヅマアートギャラリー(~7/21)
・「第12回 shiseido art egg 佐藤浩一展」 資生堂ギャラリー(7/6~7/29)
・「日本のグラフィックデザイン2018」 東京ミッドタウン・デザインハブ(~7/31)
・「柳原照弘展 Layerscape」 クリエイションギャラリーG8(7/4~8/7)
・「絵と、 vol.2 藤城嘘」 ギャラリーαM(~8/10)
・「現代陶芸 ‘90s」 ギャラリー小柳(7/5〜8/25)
・「野口哲哉~中世より愛をこめて」 ポーラ・ミュージアム・アネックス(7/13〜9/2)
・「HARUMI YAMAGUCHI×YOSHIROTTEN Harumi's Summer」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(7/6~8/25)
・「藤村龍至展」 TOTOギャラリー・間(7/31〜9/30)

色鮮やかなチラシ表紙も目を引きました。サントリー美術館にて「琉球 美の宝庫」展がはじまります。



「琉球 美の宝庫」@サントリー美術館(7/18~9/2)

これは、400年以上にわたり、東アジアで繁栄した琉球王国に因む文化財を紹介する展覧会で、紅型や琉球絵画、さらに螺鈿などによって象られた漆芸作品が、一堂に展示されます。

2006年に国宝に指定された「琉球国王尚家関係資料」が公開されるのも見どころで、「玉冠」(付簪)や「美御前御揃」など、那覇市歴史博物館からも、貴重な作品がやって来ます。


琉球美術のコレクションを有するサントリー美術館では、過去にも数回、沖縄に関する展覧会を開いていて、今回の「琉球 美の宝庫」は、2012年の「紅型 BINGATA―琉球王朝のいろとかたち」以来の開催となります。より幅広く琉球美術を展観するだけに、見応えのある内容になりそうです。

この夏の日本美術に関する大型展では、一番、注目を集めるかもしれません。東京国立博物館で「縄文—1万年の美の鼓動」が開催されます。



「縄文—1万年の美の鼓動」@東京国立博物館(7/3~9/2)

おおよそ1万年続いた縄文時代には、草創期から晩期へ至るまで、日本の各地にて、編籠や土器、土偶のほか、様々な道具が生み出されました。それを網羅して見せるのが、「縄文—1万年の美の鼓動」で、全国の博物館や郷土館より、実に200点以上もの資料が集まります。


国宝の6件の土偶が全て揃うのは、史上初めてでもあるそうです。(展示替えあり。)

今年も夏のイベントの季節がやって来ました。東京国立近代美術館にて「MOMATサマーフェス」が開催されます。



「MOMATサマーフェス」@東京国立近代美術館(7/20〜9/17)

「MOMATサマーフェス」は、展覧会を中心に、会期中、ワークショップなどを行うイベントで、毎週金曜、土曜は夜9時まで開館するほか、ガーデン・カフェでは、レストラン「ラー・エー・ミクニ」によるビアバーが開設されます。


また、夏限定の「フライデー・ナイトトーク」なども行われ、常設展では、毎週金曜、土曜に限り、17時以降、割引料金で観覧も出来ます。さらに、夏休みには、小学生を対象とした特別プログラムも実施されます。

上野でも期間限定でビアガーデンがオープンします。東京国立博物館にて「トーハク BEER NIGHT!」が開催されます。

「トーハク BEER NIGHT!」@東京国立博物館(7/27~7/28、8/3〜4)


今年は、平成館前庭より本館前広場へと会場を移し、縄文展とのコラボレーションや、キッチンカーのメニューが増えるなど、昨年よりスケールアップして行われます。期間が短いので、何とか会期の土日を狙って、ビールを楽しみたいところです。

いつもながらにたくさんあげてしまいましたが、全ての展覧会が見られるわけでもありません。マイペースでいきたいと思います。

それでは7月も宜しくお願いします。
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三菱一号館美術館2018-2019展覧会スケジュール

2018年から2019年にかけての、三菱一号館美術館の展覧会スケジュールが発表されました。



【フィリップス・コレクション展】
会期:2018年10月17日(水)〜2019年2月11日(月・祝)

主催:三菱一号館美術館、フィリップス・コレクション、読売新聞社、日本テレビ放送網
概要:米国で最も優れた私立美術館の一つとして知られるワシントンのフィリップス・コレクションは、裕福な実業家の家庭に生まれ、高い見識を持つコレクターであったダンカン・フィリップス(1886-1966)の旧私邸であった場所に位置しています。2018年には創設100周年を迎えます。
本展では、この世界有数の近代美術コレクションの中から、アングル、コロー、ドラクロワ等19世紀の巨匠から、クールベ、そして近代絵画の父マネ、印象派のドガ、モネ、印象派以降の絵画を牽引したセザンヌ、ゴーガン、クレー、ピカソ、ブラックらの秀作75点を展覧します。

【ラファエル前派の軌跡展(仮)】
会期:2019年3月14日(木)〜6月9日(日)

主催:三菱一号館美術館
概要:1848年、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティらが結成したラファエル前派兄弟団は、英国美術の全面的な刷新をめざして、世の中に衝撃をもたらしました。その精神的な指導者であるジョン・ ラスキンは、あらゆる人にかかわる芸術の必要性を説く一方で、彼らとエドワード・バーン=ジョーンズやウィリアム・モリスら、そして風景画家J. M. W. ターナーとを関連づけて考察しました。
本展では、英米の美術館に所蔵される油彩画や水彩画、素描、ステンドグラス、タペストリ、家具など約150点を通じて、彼らの功績をたどり、この時代のゆたかな成果を展覧します。

【マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展(仮)】
会期:2019年7月6日(土)〜10月6日(日)(予定)

主催:三菱一号館美術館、毎日新聞社
概要:軽くてしなやかな「デルフォス」(繊細なプリーツを施した絹サテンのドレス)で一躍20世紀初頭の服飾界の寵児となったマリアノ・フォルチュニ (1871-1949)。彼の邸宅兼アトリエを美術館として公開しているフォルチュニ美術館(ヴェネツィア)の全面的な協力のもと、本展では、フォルチュニ芸術の真骨頂である絹地のドレスやコートなどの服飾作品を軸に、絵画、版画、写真、舞台関連作品、彼が蒐集した日本の染め型紙を含むデザイン関連資料等を総合的に展覧します。
スペインのグラナダで生まれ、ローマとパリで育ち、ヴェネツィアで制作し て成功をおさめた彼の生い立ちから多彩な創作活動まで、近年世界的に注目 されている総合芸術家・デザイナーの全貌に迫ります。



スケジュールは上記の通りです。フィリップス・コレクション展は、2005年に森アーツセンターギャラリーでも開催されました。また、ラファエル前派に関しては、リバプール美術館のコレクションによる展覧会が、2015年から2016年にかけてBunkamura ザ・ミュージアムにて行われました。よって、東京都内でのフィリップス・コレクション展は、おおよそ13年ぶりで、ラファエル前派展は、3年ぶりの展覧会となります。

三菱一号館美術館では、6月28日より「ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界」がはじまりました。



「ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界」 三菱一号館美術館
会期:6月28日(木)~9月17日(月・祝)
https://mimt.jp/chaumet/

パリのヴァンドーム広場のジュエラーの中で、最も長く歴史を誇るショーメの伝統と歴史を紹介する展覧会で、18世紀から現代へと至る宝飾品をはじめ、デザイン画や写真など、約300点が公開されています。日本初のショーメ展でもあります。


梅雨が明けてしまいましたが、7月13日までは、雨天時に平日限定で、オリジナル付箋のプレゼントサービスがあるほか、館内では撮影スポットも用意されています。9月中旬までの展覧会ですが、私も早々に出かけたいと思います。



展覧会スケジュールは、2018年6月時点のものです。今後、変更になる場合もあります。最新の情報は美術館サイトでご確認下さい。

「ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界」 三菱一号館美術館@ichigokan_PR
会期:6月28日(木)~9月17日(月・祝)
休館:月曜日。
 *但し、7月16日、9月10日、9月17日と、トークフリーデーの7月30日、8月27日は開館。
時間:10:00~18:00。
 *金曜、第2水曜、9月10日~13日は21時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:大人1700円、高校・大学生1000円、小・中学生500円。
 *アフター5女子割:毎月第2水曜日17時以降/当日券一般(女性のみ)1000円。
住所:千代田区丸の内2-6-2
交通:東京メトロ千代田線二重橋前駅1番出口から徒歩3分。JR東京駅丸の内南口・JR有楽町駅国際フォーラム口から徒歩5分。
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「さあ、今、我が人生の最大の出発にきた」 草間彌生美術館

草間彌生美術館
「さあ、今、我が人生の最大の出発にきた」
4/1〜8/31



草間彌生美術館で開催中の「さあ、今、我が人生の最大の出発にきた」を見てきました。

前衛芸術家、草間彌生の作品を公開するために設立された草間彌生美術館は、2017年10月、新宿区弁天町にオープンしました。

主に年2回の展覧会で、草間コレクションを紹介していて、今年の4月からは、1950年代の初期作と、現在、制作中の「わが永遠の魂」を展示した、「さあ、今、我が人生の最大の出発にきた」が行われています。


「草間彌生美術館」外観

美術館の最寄駅は、都営大江戸線の牛込柳町駅で、駅東口を外苑東通りを北向きに6〜7分歩くと、白く、丸みを帯びた建物が左手に見えて来ました。それが草間彌生美術館でした。

ちょうど1階部分の窓には、白い水玉のドットが広がっていて、建物右側が入口でした。周囲は、ほぼ住宅地と呼んで差し支えありません。


「エントランスとショップ」(1階)

美術館の施設は、1階から5階にあり、1階はエントランスとショップ、2、3、4階に展示室があり、5階には草間に関する資料を閲覧できるブラウジングルームと、屋外展示スペースがありました。


「館内階段」(やや急でした。)

館内は一方通行で、原則、1階から順に階段で、2、3、4、5階へとあがる必要がありました。そして下りのみ、エレベーターを使用することが出来ました。(車椅子はこの限りではありません。)

やや細い階段をあがると、2階のフロアでは、1950年代に草間が制作した、比較的小さなグワッシュの作品が、20点ほど展示されていました。いずれも「創作活動の出発点」(解説より)とされる、故郷の松本で描かれた作品で、時に微細なドットが、まるでネットのように広がっていました。


参考図版「我が永遠の魂」 *「草間彌生 わが永遠の魂」(2017年、国立新美術館)での展示風景。草間彌生美術館で撮影した写真ではありません。

続いて3階へ進むと、2012年以降、近年にまで描かれた最新の絵画シリーズ、「わが永遠の魂」が、計16点並んでいました。一昨年、国立新美術館で開催された個展でも大いに注目された作品で、120号の正方形の大きなキャンバスに、人の顔や目、それに動物などの具象的なモチーフと、抽象的なパターンを描きこんでいました。

実に色彩鮮やかであり、またモチーフも多様で、まるで絵自体が有機物としてうごめき、増殖を繰り返しているかのようでした。実にエネルギッシュで、常に旺盛に創造する草間の世界を、体感的に味わえるかもしれません。

4階はインスタレーション、「無限の彼方へかぼちゃは愛を叫んでゆく」の展示スペースでした。


「無限の彼方へかぼちゃは愛を叫んでゆく」 2017年

作品は1点のみで、おおよそ2分間の入れ替え制でした。暗室に入ると、黄色く光を放つかぼちゃが、小さなボックスに収められていて、鏡の効果により、無限にかぼちゃの広がる光景を見ることが出来ました。


「無限の彼方へかぼちゃは愛を叫んでゆく」 2017年

言うまでもなく、草間にとってのかぼちゃは特別なモチーフであり、これまでも多くの作品にも登場して来ました。


「無限の彼方へかぼちゃは愛を叫んでゆく」 2017年

かぼちゃは、まるで呼吸をするように、光の点滅を繰り返していました。その光景は美しいというよりも、神秘的で、いつしか無心で眺めては、写真を撮っている自分に気がつきました。


「ブラウジングルーム」(5階)

5階のブラウジングルームでは、草間の著書、ないし過去の展覧会のカタログを手にとって閲覧することが出来ました。


「Starry Pumpkin」 2015年

その奥へ抜けると、唯一の屋外展示スペースに、巨大なかぼちゃ、「Starry Pumpkin」が置かれていました。表面は、金色のモザイクが広がり、ピンク色の水玉で彩られていました。


「Starry Pumpkin」 2015年

ちょうどこの日は荒天であったため、かぼちゃにも雨がざんざんと降っていました。鑑賞スペースにこそ、屋根があるものの、かぼちゃの上には何もありません。また天候によっては、屋外展示室をクローズする場合もあるそうです。



エレベーターもトイレも水玉仕様でした。さすがに徹頭徹尾、草間仕様で作られています。

草間彌生美術館 公式オンラインチケット
http://www.e-tix.jp/yayoikusamamuseum/

最後に美術館に関する情報です。草間彌生美術館は、日時指定の予約・定員制です。当日券の販売は一切ありません。

木曜日から日曜日、および祝日の開館日のうち、1日4回、各90分、定員70名の入れ替え制になっています。私は、6月23日(土)の15時半から17時の回で観覧して来ました。



最大90分間ほどの鑑賞時間がありますが、ワンフロアは思いの外に狭く、作品自体も必ずしも多くはないため、60分もあれば十分に楽しめるかもしれません。

チケットの入手は容易とは言えません。定員を絞っているゆえに、発売後、土日を中心に、かなり早い段階で、予定枚数が終了してしまいます。既に、7月、8月分のチケットは全て完売しました。

原則、毎月1日、朝10時に、翌々月分のチケット販売が、オンラインで開始されます。9月は全館休館のため、次の展覧会がはじまるのは10月です。よって10月分のチケットの発売開始時間は、8月1日の朝10時です。お間違いのないようにご注意ください。



外国のお客さまが目立ちました。海外での草間の人気も現しているのか、実際に来館者の半数近くは外国人で占められているそうです。

1階と4階、5階の撮影が可能でした。2階と3階は出来ません。



8月31日まで開催されています。

「さあ、今、我が人生の最大の出発にきた」 草間彌生美術館
会期:4月1日(日)〜8月31日(金)
 *前期:4月1日(日)〜6月17日(日)、後期:6月21日(木)〜8月31日(金)
休館:月・火・水曜日。
時間:11:00~17:00
入場時間:11 : 00〜12:30、12 : 30〜14:00、14 : 00〜15:30、15 : 30〜17:00
 *全4回の完全入替制。 
 *各回の入場は入場時間後30分まで。
料金:一般1000円、小学・中学・高校生600円、未就学児無料。
住所:新宿区弁天町107
交通:都営大江戸線牛込柳町駅東口から徒歩約6分。東京メトロ東西線早稲田駅出口1から徒歩約7分。
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「国宝の解剖図鑑」 エクスナレッジ

エクスナレッジの「国宝の解剖図鑑」を読んでみました。

昨年、京都国立博物館の特別展として過去最多の入場者を記録した「国宝展」は、国宝に対しての関心を集めただけでなく、国宝が多様な出版物やメディアに取り上げられる契機ともなりました。



その1つが、私も毎号追っている、「週間ニッポンの国宝100」(小学館)で、全50号のうち、既に39号に達し、いよいよ完結を迎えようとしています。

「国宝の解剖図鑑/佐藤晃子/エクスナレッジ」

新たな国宝本が登場しました。それがエクスナレッジの「国宝の解剖図鑑」で、日本、西洋の美術に関する数々の書籍を刊行されている、美術ライターの佐藤晃子さんが執筆されました。



現在、国宝として指定されている文化財は、全1110件あり、うち「国宝の解剖図鑑」では、考古・工芸、絵画、彫刻、建造物・歴史資料の4つのジャンルより、93件の国宝をピックアップしていました。

「国宝の解剖図鑑」の最大の特徴は、全ての国宝をイラストで紹介していることでした。そしてこのイラストが、国宝を理解するのに大いに重要で、ほかに多くある国宝本の中でも、殆ど唯一の「完全イラスト版」と言っても差し支えないかもしれません。



例えば、先だっての「名作誕生」(東京国立博物館)でも出品された「彦根屏風」では、登場人物をイラストで表すだけでなく、一体、それぞれがどういう人物で、何をしているのかについても、細かに触れていました。また、人物の配置、つまり構図にも言及していて、画題や描写など、「彦根屏風」の見方を、専門的な見地を交えて紹介していました。



三佛寺奥院の「投入堂」も、イラストによって、お堂の位置関係が分かるように工夫されていました。また、参拝に際しては、2人以上で行く決まりがあることや、実際に辿り着ける場所、さらには往復の所要時間(90〜120分)についても触れていて、観覧に際して便利な情報も多く記載されていました。さらに、法隆寺の「救世観音」や浄土寺の「阿弥陀三尊像」などでも、公開日時や、おすすめの拝観時間を記していて、豆知識的な要素も盛り込まれていました。

千利休作とされる現存唯一の茶室、「待庵」では、人を交えたイラストにより、建物のスケール感を一目で理解することが出来ました。また「厳島神社」の見取り図も、社殿の配置関係が良く分かるかもしれません。干潮時のおすすめ写真スポットも記されていました。



絵師などの制作者も登場します。例えば雪舟の「慧可断臂図」では、達磨と神光の描写自体をイラストで細かく見ている一方、長谷川等伯の「楓図襖」では、襖絵と合わせて、当時の等伯と狩野派の動向や関係を、年表形式で比較していました。このように、国宝を取り巻く人や歴史も踏まえていて、単なる国宝を紹介するだけに留まっていませんでした。

国宝に因む焼き物や絵画、それに仏像の見方などのコラムも読み応えがあるのではないでしょうか。特に、国宝に関する数字を集めた「数で読む国宝」は、国宝の基礎的知識を得るのに、大いに参考になりました。

【Column】
国宝の基礎知識:選定基準、全国分布、日本にあったら即国宝?!etc.
ジャンル別国宝の見かた:絵、やきもの、仏像、寺と神社etc.
数で読む国宝:件数、サイズ、歴史・保存編etc.


全160頁とボリュームがありながらも、持ち運びにも便利なA5サイズのため、実際の国宝鑑賞の際に持ち歩くのも楽しいのではないでしょうか。佐藤晃子さんによる「国宝の解剖図鑑」。好評のために2刷となったそうです。まずは書店でご覧になることをおすすめします。

「国宝の解剖図鑑/佐藤晃子/エクスナレッジ」

「国宝の解剖図鑑」
内容:「国宝の、どこがすごい?」がマルわかり。一度は見たことのある仏像、建築、日本画も、見かたがわかると100倍楽しい!国宝約100件の、すごさ・見どころ・知られざる人間模様まで大解剖
著者:佐藤晃子。美術ライター。日本、西洋の絵画をやさしく紹介する書籍を多数執筆する。明治学院大学文学部芸術学科卒業。学習院大学大学院人文科学研究科博士前期課程修了(美術史専攻)。
価格:1728円
単行本(ソフトカバー)160ページ
出版社:エクスナレッジ
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「本館 特別展示 リヒター/クールベ」 国立西洋美術館

国立西洋美術館
「本館 特別展示 リヒター/クールベ」 
6/19~2019/1/20

国立西洋美術館で開催中の「特別展示 リヒター/クールベ」を見てきました。

ドイツの現代美術家、ゲルハルト・リヒター(1932〜)は、自邸のダイニング・ルームにクールベの風景画を飾り、隣り合う部屋に、自作の「シルス・マリア」を置いています。


「特別展示 リヒター/クールベ」会場風景

その「シルス・マリア」が、意外にも、日本の西洋美術の殿堂、国立西洋美術館へとやって来ました。タイトルは「リヒター/クールベ」で、「シルス・マリア」を含む、リヒターの絵画2点と、国立西洋美術館の所蔵する、クールベの「狩猟者のいる風景」が、あわせて展示されていました。


ギュスターヴ・クールベ「狩猟者のいる風景」 1873年

「狩猟者のいる風景」は、クールベの晩年、1873年にスイスへ亡命する直前、故郷のオルナンの地を描いた作品で、中央の小川を挟み、左手の狩人が、対岸の動物を捕らえようと身構える姿を表していました。奥には白い崖が聳えたち、夕方なのか、青い空は僅かに陰っているようにも思えました。左手の樹木の幹など、随所にクールベならではの質感に富んだ油彩表現を見ることが出来ました。


ゲルハルト・リヒター「シルス・マリア」 2003年

一方の「シルス・マリア」は、リヒターが写真のイメージを援用しながら描いた作品で、スイスの南東部の景勝地を舞台としていました。ちょうど「狩猟者のいる風景」と向かいあっていて、朧げな緑や青の色彩から、緑に深い山々や、白い雲の靡く空の景色が浮かび上がっていました。


ゲルハルト・リヒター「抽象絵画(ラヴィーン)」 1996年

その2点の合間には、白い色彩が斑紋状に広がる、リヒターの「抽象絵画」が展示されていました。タイトルが示すように、いわゆる抽象表現ながらも、元は景色が描かれていて、のちに画家が白く「塗り潰しました。」(*)その重層的で、厚みのある質感は、クールベ画の「荒っぽい物質性」(*)と共通するとする指摘もなされていました。


「特別展示 リヒター/クールベ」会場風景

リヒターは1980年代、「偶然のなりゆき」(*)によって、クールベの風景画を入手したそうです。その作品には、時にクールベの名を含みこみ、構図をなぞったイメージがあるとも言われています。ともするとクールベは、リヒターにとって、特別な画家であるのかもしれません。

会場は常設展の展示室です。またクールベに関しては、引き続く常設展でも、「波」や「罠にかかった狐」、それに「眠れる裸婦」などの作品が展示されています。あわせてお見逃しなきようご注意下さい。


2019年1月20日まで開催されています。*内は解説より

「本館 特別展示 リヒター/クールベ」 国立西洋美術館@NMWATokyo
会期:6月19日(火)~2019年1月20日(日)
休館:月曜日。7月17日(火)、9月25日(火)、10月9日(火)、12月28日(金)~1月1日(火・祝)、1月15日(火)。
 *但し、7月16日(月・祝)、8月13日(月)、9月17日(月・祝)、9月24日(月・休)、10月8日(月・祝)、12月24日(月・休)、1月14日(月・祝)は開館。
時間:9:30~17:30 
 *6月22日(金)~9月29日(土)までの毎週金・土曜日と、毎月最終金曜日は21時まで開館。10月以降の毎週金・土曜日は20時まで開館。但し11月17日(土)は17時半まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般500(400)円、大学生250(200)円、高校生以下無料。
 *特別展チケットで観覧可。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園7-7
交通:JR線上野駅公園口より徒歩1分。京成線京成上野駅下車徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅より徒歩8分。
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「東京の雨に濡れない美術館」についていまトピにまとめました

「gooいまトピ」に、「東京の雨に濡れない美術館 10選」を寄稿しました。



梅雨にこそ行きたい!【東京の雨に濡れない美術館 10選】
https://ima.goo.ne.jp/column/article/5984.html


「雨に濡れない美術館」とは、駅から直結、ないし地下道などで繋がっている美術館で、私が実際に歩いて確認した10の施設をリストアップしました。

「東京の雨に濡れない美術館 10選」

東京ステーションギャラリー(東京)
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/

三菱一号館美術館(東京)
https://mimt.jp

三井記念美術館(三越前)
http://www.mitsui-museum.jp

サントリー美術館(六本木)
https://www.suntory.co.jp/sma/

東京オペラシティアートギャラリー(初台)
https://www.operacity.jp/ag/

国立新美術館(乃木坂)
http://www.nact.jp

森美術館(六本木)
http://www.mori.art.museum/jp/

東京都写真美術館(乃木坂)
https://topmuseum.jp

パナソニック汐留ミュージアム(汐留)
https://panasonic.co.jp/es/museum/

出光美術館(日比谷)
http://idemitsu-museum.or.jp



記事では、各館で最も行きやすいルートをご紹介しましたが、例えば三井記念美術館は、東京メトロ三越前駅だけでなく、JR線の新日本橋駅とも地下通路で繋がっています。



サントリー美術館と森美術館は、ともに六本木駅に直結していますが、前者は都営大江戸線、後者は東京メトロ日比谷線の駅と繋がっています。日比谷線六本木駅からサントリー美術館のある東京ミッドタウンへは、地下通路で行くことが可能ですが、大江戸線六本木駅から森美術館のある六本木ヒルズへ行くためには、日比谷線の駅の中を経由する、改札通過サービス(構内通過)を利用する必要があります。ご注意下さい。



六本木駅で改札通過サービスがご利用いただけるようになります
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2013/09/20n9c500.htm

東京ステーションギャラリーは、JR線のみならず、東京メトロ丸ノ内線東京駅や、東京メトロ各線の大手町駅からも、地下通路を経由して行くことが出来ます。また、三菱一号館美術館も、JR線の東京駅だけでなく、都営三田線大手町駅や東京メトロ千代田線二重橋前駅からも、地下道経由で入場出来ます。公式サイトには、バリアーフリーのルートに関する案内もありました。



三菱一号館美術館アクセス
https://mimt.jp/access/

パナソニック汐留ミュージアムと、出光美術館は、ごく僅かな距離ながらも、一部に屋外を経由するルートになります。

このほかにも、中村屋サロン美術館、相田みつを美術館、インターメディアテク、郵政博物館、消防博物館も、雨に濡れない施設としてご指摘いただきました。また東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館も、新宿駅から地下道を経由して行くことが出来るそうです。


さらに雨の日だけでなく、夏の強い日差しの際にも、地下通路が便利という声を頂戴しました。梅雨から夏のお出かけの際に参考にしていただければ嬉しいです。
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「ヌード NUDE ―英国テート・コレクションより」 横浜美術館

横浜美術館
「ヌード NUDE ―英国テート・コレクションより」
3/24~6/24



横浜美術館で開催中の「ヌード NUDE ―英国テート・コレクションより」を見てきました。

西洋の芸術にとって、「永遠のテーマ」(解説より)でもあり続けたヌード。そのヌード表現に関した、絵画、彫刻、版画、写真、約130点が、ロンドンのテートギャラリーよりやって来ました。

19世紀のヴィクトリア朝時代からはじまりました。そもそも西洋では、文学や神話、聖書を題材とした作品、つまり歴史画に、裸体が多く登場していました。当時は、歴史画が、唯一、ヌードの描くことの出来るジャンルでもありました。


フレデリック・ロード・レイトン「プシュケの水浴」 1890年

フレデリック・レイトンは「プシュケの水浴」において、左手をたくし上げ、白いローブから裸を覗かせたギリシャ神話の女神を、神殿風の建物を背に描きました。白く透き通るかのような身体を見せていて、まさに当時の理想化されたヌードを表現しました。


ハーバート・ドレイパー「イカロス哀悼」 1898年

また、ラファエル前派のジョン・エヴァレット・ミレイは「ナイト・エラント(遍歴の騎士)」で、裸で樹木に縛られた女性と、救いのためにやって来た騎士の姿を表しました。甲冑に身をまとった騎士は、全裸の女性とあまりにも対比的で、長い剣を手にしながら、縄を切り取ろうとしていました。なお、制作当初、女性は騎士の方を向いていたものの、「エロティック」過ぎるとして批判を受け、顔を背けた今の姿に描き改められたそうです。社会のモラルとの葛藤の間に、ヌードが位置することもありました。


ピエール・ボナール「浴室」 1925年

19世紀後半になると、物語に由来しないヌードが登場しました。印象派のドガや、ナビ派のボナールは、「浴槽の女性」や「浴室」などにおいて、日常生活の中のヌードを表現しました。また、マティスやルノワールは、モデルの女性と深く関係しては、ヌードを描きました。


ヘンリー・ムーア「倒れる戦士」 1956–57年頃

ヌードが歴史的な文脈と切り離されると、身体そのものの造形に関心が集まりました。中でも目立つのは、ヘンリー・ムーアやジャコメッティによる彫刻で、ムーアは「倒れる兵士」にて、逆さになって反り返るように倒れる戦士をブロンズで象りました。また、キュビズムやドイツ表現主義では、時に人体は解体され、多様に変形したヌード像が生み出されました。


オーギュスト・ロダン「接吻」 1901-04年頃 *会場内、本作品のみ撮影が可能です。

チラシ表紙を飾った、オーギュスト・ロダンの「接吻」こそが、ハイライトと言えるかもしれません。高さ180センチにも及ぶ、大型の大理石像で、2人の男女が、他者の入る余地もないほど、一心不乱に抱き合っては、愛の喜びに耽っていました。男女の身体は極めて肉感的で、ごつごつとした男性の筋肉と、柔らかい女性のラインを巧みに表していました。その迫真性のゆえか、公開当時のイギリスでは、刺激的過ぎるとして、シーツをかけられたエピソードも残されています。


オーギュスト・ロダン「接吻」 1901-04年頃

「接吻」の周囲に、思わぬヌードがありました。それがデイヴィッド・ホックニーによる「C.P.カヴァフィスの14編の詩のための挿絵より」とした連作で、ベットで連れ添う2人の裸の男など、いずれも男性同士の愛をテーマにしていました。ともかく2人は親密で、迫力こそ「接吻」に及ばないないかもしれませんが、その愛の密度は、同様に強いものと言えるかもしれません。

このロダンを超えた付近から、俄然に面白くなるのも、展覧会の特徴ではないでしょうか。続くのは、1920年から1940年代にかけてヌードを牽引した、シュルレアリスムとレアリスムで、デルヴォーの「眠るヴィーナス」をはじめ、マン・レイの「ヌード」、そしてバルテュスの「長椅子の上の裸婦」や、スタンリー・スペンサーの「ふたりのヌードの肖像」が並んでいました。


ポール・デルヴォー「眠るヴィーナス」 1944年

デルヴォーの「眠るヴィーナス」は、神話を表したかのような世界を見せていて、月明かりの下、神殿に囲まれた空間の中を、仰向けに横たわり、また手を振り上げては、何かに祈るような仕草をした裸の女性が描かれていました。古代の祭祀の場面を思わせるものがありました。

また、スペンサーの「ふたりのヌードの肖像」は、やや老いた画家と妻の全裸を捉えていて、妻は股を開いては寝そべり、画家本人が見下ろすようにしゃがんでいました。皮膚の皺や肌の描写は、リアルでかつ濃密で、手前の羊の肉片も、実に生々しく表現されていました。


ルシアン・フロイド「布切れの側に佇む」 1988–89年

こうしたスペンサーの肉体の表現は、のちの芸術家にも何らかの影響を与えたかもしれません。1950年代以降、今度は「人体の物質性や内面性」(解説より)表した絵画が現れ、中でもルシアン・フロイドは「布切れの側に佇む」において、厚塗りの油彩にて、無数の布切れに囲まれた女性を描きました。肌のたるみなどを写し取った、絵具自体にも迫力があり、思わず熱気にのまれてしまうかのようでした。

ほかにも、デフォルメした人物を示したベーコンの2点、「横たわる人物」と「スフィンクス」、そして素早く、また揺らぐような筆触で女性を描いたクーニングの「訪問」、さらに僅かに女性らしき肉体こそ見えるものの、もはや抽象表現をも思わせるほどに激しいセシリー・ブラウンの「楽園の困難」なども、見応えがありました。事前の宣伝などにもよるのか、ともすると古典的なヌード絵画が多い展覧会のように思えるかもしれませんが、実際は20世紀の作品が相当のウエイトを占めていました。

ジェンダーや政治性も、大きなテーマと言えるかもしれません。シルヴィア・スレイは「横たわるポール・ロサノ」において、男性のヌードを俯瞰する視点で描き出しました。モデルは、画家と関係のあった男性で、赤いマットの上で、両手を振り上げ、全てを露わにしながら、実に艶やかで、色気のある視線を向けていました。まさしく官能的な作品と言えるかもしれません。

また、バークレー・L・ヘンドリックスは、黒人をモデルとした「ファミリー・ジュールス:NNN[ノー・ネイキッド・ニガー(裸の黒人は存在しない)」を制作しました。白いソファに裸で座るのは、煙管を手にした男性の黒人で、右足を立て、やや首をあげながら、何とも寛いだ姿を見せていました。ほかにはデュマスらも、人種や性をテーマとしていて、従来の固定的なヌードの観点を解体しようと試みていました。


シンディ・シャーマン「無題」 1982年

ラストは「儚き身体」と題したセクションで、1980年以降、ヌードを「儚く移ろいゆくもの」とした捉えた作品が展示されていました。中でも目を引いたのは、シンディ・シャーマンの「無題」の3点で、グラビア写真に着想を得て、赤いローブに包まれた自らの姿を、写真で捉えていました。どこか怪訝で、見る者を疑ぐるような視線が特徴的で、旧来の女性のヌード観を拒否するシャーマンの姿勢が現れているのかもしれません。

いわゆる名品選というよりも、ヌードの歴史の変遷、ないし現代の身体表現やジェンダーの問題も検証していて、かなり読ませる展覧会でもありました。そもそもこれほどのスケールでヌードを一覧すること自体、なかなか望むことは出来ません。その意味でも、一期一会の展覧会と言えそうです。

なお続く常設においても、ヌード展に関し、裸体を描いた作品が、一定数、まとめて出展されています。


下村観山「ナイト・エラント」 1904(明治37)年 横浜美術館

中でも興味深いのは、下村観山の「ナイト・エラント」で、ヌード展に出ていた、ジョン・エヴァレット・ミレイの同名の作品を模写していました。観山がイギリス留学中に描いたもので、元の油彩を水彩に写していました。併せ並んではいませんが、見比べるのも興味深いかもしれません。


小倉遊亀「良夜」 1957(昭和32)年

ほかにも小倉遊亀の「良夜」や、守屋多々志の「愛縛清浄」、それに松井冬子の「成灰の裂目」なども目を引くのではないでしょうか。日本では古くから裸体を描いた作品はあったものの、いわば裸体を美の理想とする思想はなく、あくまでも西洋の思想が輸入されたのち、「裸体画」とするジャンルが確立しました。


今週で会期末を迎えます。私は先週の日曜の午後に出向きましたが、特に混雑することなく、どの作品もスムーズに観覧することが出来ました。



6月24日まで開催されています。大変に遅れましたが、おすすめします。

「ヌード NUDE —英国テート・コレクションより」@nude2018) 横浜美術館@yokobi_tweet
会期:3月24日(土) ~6月24日(日)
休館:木曜日。5月7日(月)。但し5月3日(木・祝)は開館。
時間:10:00~18:00
 *5月11日(金)、6月8日(金)は20時半まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1600(1500)円、大学・高校生1200(1100)円、中学生600(500)円。小学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体。要事前予約。
 *毎週土曜日は高校生以下無料。
 *当日に限り、横浜美術館コレクション展も観覧可。
住所:横浜市西区みなとみらい3-4-1
交通:みなとみらい線みなとみらい駅5番出口から徒歩5分。JR線、横浜市営地下鉄線桜木町駅より徒歩約10分。
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「ふるさとの駄菓子ー石橋幸作が愛した味とかたち-」 LIXILギャラリー

LIXILギャラリー
「ふるさとの駄菓子ー石橋幸作が愛した味とかたち-」 
6/7~8/25



リクシルギャラリーで開催中の「ふるさとの駄菓子ー石橋幸作が愛した味とかたち-」を見てきました。

戦後、郷土菓子を作りながら、約半世紀にも渡って全国各地の駄菓子を調べ歩いては、スケッチに記録した1人の菓子職人がいました。

その人物こそが、明治18年から続く、仙台の「石橋屋」の2代目である石橋幸作で、単に駄菓子を絵と文字に記しただけでなく、紙粘土で立体的に再現して残しました。また、膨大な駄菓子は、用途や目的に分類されたため、いわば民俗学的観点からも高く評価されました。


「細工もの」

その石橋の残したスケッチブックと、紙粘土の再現駄菓子が、京橋のリクシルギャラリーにやって来ました。


「駄菓子行脚 東北編」

冒頭は、石橋の駄菓子行脚の記録、すなわち駄菓子スケッチブックでした。例えば「駄菓子行脚 東北編」では、岩手県で採取した「明けがらす」や「ごまひねり」といった駄菓子が、カラーの挿絵で写されていて、「あやめ団子」では、「串にさし、紅と青の色とりどりの団子に砂糖と蜜をかけて焼く」とした、製法や食べ方までも記されていました。


「ふるさとの駄菓子を探ねて」

昭和35年の記録集、「ふるさとの駄菓子を探ねて」では、山形県の郷土の金平糖である「招き猫」が描かれていました。石橋は、当時、山形で唯一の金平糖店に足を運び、工場も見学しては、駄菓子を採取しました。また興味深いのは、スケッチに雑感が記されていることで、中に採取に際し、「あまり収穫がなかった。」とした言葉も残されていました。石橋は、戦後に商売を子息に譲り、全国へ駄菓子を求めて旅しましたが、道中は平坦ではなく、多々、苦労もあったようです。


「ふるさとの駄菓子行脚」

北海道の菓子博覧会で採取した、アイヌの菓子のスケッチも目を引きました。アイヌ語では「シド」と呼ばれ、ウバユリという植物からとったデンプンで作られているそうです。一体、どのような味がするのでしょうか。

石橋は自らの著作「駄菓子のふるさと」で、駄菓子の用途を6つに分類して提示しました。それはのちに「信仰」、「薬」、「道中」、「食玩」、「お茶請」の5つに改められました。そして一連の駄菓子を、紙粘土で制作しました。会場では、石橋の残した紙粘土菓子、約1000点のうち、200点ほどが紹介されていました。


「信仰駄菓子」 しんこ犬、稲花餅、彼岸饅頭ほか

まず1つが「信仰駄菓子」で、神仏に供えるために作られ、祈願をこめて寺社に飾られる縁起菓子、正月や盆などの行事菓子、さらに個人の慶忌のための引菓子を当てはめて分類しました。


「道中駄菓子」 凍餅、水饅頭、鬼煎餅ほか

また宿場町などで旅人の疲れを癒し、土産として売られていた菓子を、「道中駄菓子」と呼びました。そして石橋自身も、旅先の宿で出された菓子を調べては、作り手を訪ねました。ともかく石橋にとって、一にも二にも実地調査が重要だったようで、無数の紙粘土菓子からは、石橋の駄菓子調査にかける並々ならぬ熱意が伝わってきました。


「食玩駄菓子」 風船玉、豊年団子、カラカラ煎餅ほか

ほかにも「薬駄菓子」は滋養栄養のための菓子で、「お茶請駄菓子」は、文字通りお茶に添える菓子、さらに「食玩駄菓子」は、くじ引きの景品に使われた菓子を指していました。大小、色も形も様々な紙粘土菓子を前にすると、「たかが駄菓子」など、とても口に出来ません。いかに駄菓子の世界が奥深く、バリエーションに豊富であるのかが、良く分かりました。


「吹き飴売り」

石橋の駄菓子への情熱は留まるところを知りません。時代とともに失われていく駄菓子を、かたちに残したとした石橋は、幼い頃に見た駄菓子売りの様子を、今度は紙粘土の人形に再現しました。


「しんこ細工師」

吹き飴売りや団子の担ぎ売り、そしてしんこ細工師など、実に精巧で、駄菓子売りの掛け声すら聞こえるかのように生き生きとしていました。


「八百屋菓子売り」

八百屋菓子とは、人参や大根、茄子などの野菜を、色も形も本物そっくりに作った駄菓子のことで、明治から大正にかけて縁日で売られていたそうです。

「ふるさとの駄菓子 石橋幸作が愛した味とかたち/LIXIL BOOKLET」

まさか全国の駄菓子を、これほどまでに丹念に調査、分類、さらに記録し、再現して保存した人物がいたとは知りませんでした。



8月25日まで開催されています。おすすめします。

「ふるさとの駄菓子ー石橋幸作が愛した味とかたち-」 LIXILギャラリー
会期:6月7日(木)~8月25日(土)
休廊:水曜日。夏季休業あり。
時間:10:00~18:00
料金:無料
住所:中央区京橋3-6-18 LIXIL:GINZA1、2階
交通:東京メトロ銀座線京橋駅より徒歩1分、東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅7番出口より徒歩3分、都営浅草線宝町駅より徒歩3分、JR線有楽町駅より徒歩7分
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「平田晃久展 Discovering New」 TOTOギャラリー・間

TOTOギャラリー・間
「平田晃久展 Discovering New」
5/24~7/15



1971年に大阪に生まれ、大学を卒業後、伊東豊雄建築設計事務所に勤めた平田晃久は、2005年に独立して国内外で数多くの建築設計に携わり、第13回ベネチアビエンナーレ国際建築展では金獅子賞(2012年)を受賞しました。

(*)

中でも特に知られるのが、群馬県の太田市の「太田市美術館・図書館」ではないでしょうか。2017年の4月にオープンした、美術館と図書館を併設した公共建築で、「内外に表裏のない建物」として、大いに注目を集めました。

(*)

私も、昨年、同美術館・図書館を見学してきましたが、ともかく螺旋を特徴とした構造と、美術館と図書館のスペースが入り混じった内部空間が個性的で、確かに内と外が絡み合うような建物に、強く感銘を受けたことを覚えています。



その建築家、平田晃久の個展が、乃木坂のTOTOギャラリー・間にて開催されています。



会場の中へ入って驚きました。なにせ無数の金属パイプが縦横無尽に張り巡らされ、合間に建築模型やスタディ、それにスケッチが設置されていたからです。模型は、パイプの上にやや不安定に置かれ、時に傾き、また上下にも展開しているため、中には近づいて見られないものもありました。一体、どういう理由なのでしょうか。



これが、平田の「思考の雲」(解説より)で、「新しいかたち」、「新しい自然」、「新しいコミットメント」の3つの軸が展開していて、各軸の周りには、さらに派生する4つのトピックの平面が広がる姿を表現していました。



よく見ると、金属パイプの随所には、確かに「ひだ」や「階層」といったトピックを表すプレートがついていました。全ては平田の著書であり、本展のタイトルでもある「Discovering New」の章立てに対応していて、一定の規則によって作られていました。



そのパイプによる「思考の雲」は、展示室を超え、屋外の中庭まで連続していて、室内と同様に、パイプが巡らされ、模型などが設置されていました。



いずれも思考、ないし概念によって建築を分類して見せる試みで、カフェや店舗、住宅、それに美術館が、互いに関係し合いながら、いわば「博物学的」(解説より)展開をもって示されていました。各建築を通し、平田の思考の欠片、ないし集積を辿っていく展覧会と言えるかもしれません。



一方、階上の展示室では、木製の構造体、「Timber Form+」が設置されていました。2011年に台湾のコンペで次点であったという「Foam Form」のモデルを縮小した作品で、長さは6メートル、高さも2メートルに及び、中に立ち入ることも可能でした。内部には何体かのディスプレイが吊るされ、そこでは平田の建築や展示の設営風景などが映し出されていました。

さらに奥の壁面には、「太田市美術館・図書館」などの映像も投影されていました。内部にも立ち入った映像で、臨場感もあり、建築の中へ入ったかのような体験を得ることが出来ました。



「私たちの建築は、建築やその背後にある人間の営みを、広義の生命活動として捉え直すところから始まる。」(解説より)



当初は、複雑に張り巡らされた「思考の雲」の前に戸惑いすら覚えましたが、あえて時系列などで提示することなく、建築を有機的に捉えて見せる試みは、なかなか刺激的とも言えるのではないでしょうか。しばらくすると「雲」の中で彷徨いながら、その絡まるパイプを追いつつ、建築模型に見入っている自分に気がつきました。

「太田市美術館・図書館へ行ってきました(前編:建物・施設)」(はろるど)

太田市美術館・図書館へもまた改めて出かけたいものです。


7月15日まで開催されています。

*印は太田市美術館・図書館の外観と内観。昨年、見学した際に撮影しました。ほかは「平田晃久展 Discovering New」会場風景。

「平田晃久展 Discovering New」 TOTOギャラリー・間
会期:5月24日(木)~7月15日(日)
休館:月曜日。
時間:11:00~18:00
料金:無料。
住所:港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅3番出口徒歩1分。都営大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅7番出口徒歩6分。
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「悪人か、ヒーローか」 東洋文庫ミュージアム

東洋文庫ミュージアム
「悪人か、ヒーローか」
6/6~9/5



東洋文庫ミュージアムで開催中の「悪人か、ヒーローか」を見てきました。

当時の社会規範や支配体制によって「悪」とされた歴史上の人物は、のちの創作物において、時に「ヒーロー」のように描かれることがありました。

そうした「悪」と「ヒーロー」の表裏一体の関係を検証するのが、「悪人か、ヒーローか」で、主に日本と中国の伝記や記録の資料を紹介していました。


「帝鑑図説」 張居正 1572年成立、1606年(江戸時代)

はじまりは秦の始皇帝で、司馬遷の著した「史記」と、明の時代に作られた「帝鑑図説」を見比べていました。それによれば、「史記」では、始皇帝が数多くの土木工事を行ったことや、法によって統治したことが記されているものの、特に暴君の位置付けはなされていません。一方の「帝艦図説」は、中国歴代の王を儒教的観点から評価しているため、焚書坑儒を悪行として紹介していました。


「三国志」 陳寿撰 東晋(371〜451)年成立、1739年(中国清代)

また日本でも人気の高い「三国志」の正史が成立したのは、魏の臣下であった司馬氏の建てた西晋の時代でした。よって、三国の魏、呉、蜀のうち、魏のみを正当な王朝とみなしているため、蜀の劉備や呉の孫権は、臣下の列伝で記述されました。


「明清軍談国姓爺忠義伝」 鵜飼信之 1716年(江戸時代)

洋の東西で評価が分かれるのが鄭成功でした。日本の平戸に生まれた鄭は、のちに明の旧臣であった父とともに、中国へと渡り、当時、台湾にいたオランダの勢力を追い出し、明の復興運動に尽力しました。よってて東アジアでは英雄として扱われ、近松門左衛門の人形浄瑠璃でも、忠臣や英雄として表現されました。一方の西洋では、鄭を海賊と呼びました。まさに立場によって「悪人か、ヒーローか」を分けた、典型的な例と言えるかもしれません。


「日本書紀」 舎人親王ほか編 720年成立、1610年(江戸時代)
「妹背山婦女庭訓」 近松半二ほか作 1771年初演、1849年(江戸時代)


日本の「悪役」も勢ぞろいしています。古くは蘇我入鹿で、「日本書紀」の記述に基づき、長らく「悪」のイメージが定着しました。江戸時代の浄瑠璃や歌舞伎の演目でも人気のある、「妹背山婦女庭訓」においても、蘇我入鹿は凄まじい力を持つ悪役として表現されました。


「大日本史」 徳川光圀ほか編 1851年刊 

「太平記」に登場する足利尊氏と楠木正成も、時代によって評価が変化した人物でした。江戸時代に編纂された「大日本史」は、尊王派の志士に影響を与えた書で、正成は天皇を支えた忠臣とされた一方、尊氏は逆賊として見なされました。こうした評価は、維新後も根強く支持されたそうです。


「源頼光公舘土蜘作妖怪図」 歌川国芳 1843年(江戸時代)

「人ならざる悪」もテーマの1つでした。例えば土蜘蛛で、元々は古代の朝廷に服従しない者を指す意味を持ち得ていました。そのイメージは、のちに変容し、いつしか巨大な蜘蛛の妖怪として描かれるようになりました。


「鬼ヶ島の為朝」 歌川国芳 1856年

ほかに中国では、則天武后、徽宗皇帝、日本では、平清盛、織田信長、春日局、鼠小僧次郎吉などが取り上られていました。「悪」と「ヒーロー」における、半ば表裏一体な関係を見ることが出来ました。

なお本展は、現在、都内の6施設で開催中の多分野連携展示「悪」のうちの1つです。

多分野連携展示「悪」
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/special/2018/edonoaku/event.html

ここ東洋文庫のほかにも、太田記念美術館、國學院大學博物館、それにヴァニラ画廊などでも、「悪」をテーマとした展示が行われています。


内容がかなり重複しますが、「悪人か、ヒーローか」と、多分野連携展示「悪」については、gooの「いまトピ」にも寄稿しました。改めてお目通し下されば嬉しいです。


国宝「文選集注」 10〜12世紀(平安時代)写

企画展に先立って公開されていた、国宝「文選集注」にも目を引かれました。「文選」とは、6世紀前半の中国・梁の時代に編纂された詩文集で、約800編もの作品が収録されています。日本には7世紀頃に伝来しました。

その代表的な注釈を再編集したのが、「文選集注」で、平安時代に書写されました。実に流麗で、美しい書風ではないでしょうか。


「悪人か、ヒーローか」会場風景

撮影も可能です。9月5日まで開催されています。

「悪人か、ヒーローか」 東洋文庫ミュージアム@toyobunko_m
会期:6月6日(水)~9月5日(水)
休館:火曜日。但し祝日の場合は開館。翌日休館。
時間:10:00~19:00
 *6月17日(日)は15時まで。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般900円、65歳以上800円、大学生700円、中学・高校生600円、小学生290円。
住所:文京区本駒込2-28-21
交通:都営地下鉄三田線千石駅A3出口から徒歩7分。JR線・東京メトロ南北線駒込駅(JR線南口、南北線2番出口)から徒歩8分。
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横浜美術館の「ヌード展」でリツイートキャンペーンを実施中です

現在、横浜美術館で開催中の「ヌード NUDE」展にて、入館料が割引となる、Twitterのリツイートキャンペーンが実施されています。



「ヌード NUDE —英国テート・コレクションより」(横浜美術館)
https://artexhibition.jp/nude2018/

参加は至って簡単です。ヌード展のTwitter公式アカウントから、以下の該当ツイートをリツイートの上、その画面を会場のチケット売場で提示すると、当日券から200円の割引になります。


なお割引は、6月18日(月)、19日(火)、20日(水)、22日(金)の平日4日間のみ有効です。6月16日(土)、17日(日)、及び会期最終末に当たる23日(土)、24日(日)は、対象ではありません。ご注意下さい。


オーギュスト・ロダン「接吻」 *本作品のみ撮影が可能です。

実は、私もかなり前に「ヌード」展を鑑賞して来ました。感想を書きそびれていますが、特に後半の現代美術のセクションが充実していて、各テーマ設定も面白く、実に見応えのある展覧会でした。出来れば、もう1度、見たいと思っています。


平日ラスト4日間限定のキャンペーンではありますが、横浜美術館で開催中の「ヌード NUDE —英国テート・コレクションより」。まだの方は、是非、ご覧になることをおすすめします。

「ヌード NUDE —英国テート・コレクションより」(@nude2018) 横浜美術館@yokobi_tweet
会期:3月24日(土) 〜6月24日(日)
休館:木曜日。5月7日(月)。但し5月3日(木・祝)は開館。
時間:10:00~18:00
 *5月11日(金)、6月8日(金)は20時半まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1600(1500)円、大学・高校生1200(1100)円、中学生600(500)円。小学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体。要事前予約。
 *毎週土曜日は高校生以下無料。
 *当日に限り、横浜美術館コレクション展も観覧可。
住所:横浜市西区みなとみらい3-4-1
交通:みなとみらい線みなとみらい駅5番出口から徒歩5分。JR線、横浜市営地下鉄線桜木町駅より徒歩約10分。
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「第12回 shiseido art egg 冨安由真展」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「第12回 shiseido art egg 冨安由真展」 
6/8~7/1



2006年にはじまった、新進アーティストを公募で紹介する「shiseido art egg」も、今年度で12回目を迎えました。

今回は350件の応募があり、専門家の選定の上、冨安由真、佐藤浩一、宇多村英恵が入選しました。うちそれぞれが、約1ヶ月弱程度の会期で、個展形式で作品を発表していきます。

トップバッターに選ばれたのは、1983年に東京で生まれた冨安由真でした。作家は、「心霊など、不可視なものや科学で解明されていないことを手掛かりに、現実と虚構の狭間を探るインスタレーションを制作する」(解説より)としています。それでは一体、どのような作品が展開していたのでしょうか。



薄暗がりの空間が待ち構えていました。タイトルは「くりかえしみるゆめ」で、合板の合間に扉があり、半ば入り組んだ迷路のような部屋や廊下が続いていました。室内には、アンティークを思わせる家具や調度品、それに黒電話などが置かれていました。いずれも無人で、誰もいないものの、不思議と人の気配、ないし生活の痕跡を残しているようにも思えました。



さらに部屋の随所には、ともすると不気味にも感じられる絵画が飾られていました。テーカップには砂が入れられ、いわゆる恐怖小説で知られるエドガー・アラン・ポーの著作なども置かれていました。ランプは点滅し、消えてたかと思いきや、突如、強い光を放つこともありました。不可思議、ないしオカルト的とも呼べうる空間が広がっていたと言えるかもしれません。



食堂、書斎などを廊下を伝って進むと、一際、広い部屋に到達しました。円形のテーブルの上には電球が灯り、随所には古いブラウン管のテレビがあり、やはり消えていたかと思うと、突然、点いたりしていました。ベットの上のリネンは乱れていて、まるで先ほどまで人が寝ていたかのようでした。



音が重要なモチーフの1つでした。というのも、しばらく歩き、また部屋を眺めていると、俄かに窓をドンドンと叩く音が聞こえてくるからです。音は、あまりにも突然でかつ、まるで人を驚かすように忙しなく響いていました。ただし、そもそもどのように叩かれているかも分からず、音の発生源を確かめようとも、狐につままれるばかりでした。これぞ「心霊」現象の1種である、ポルターガイストなのかもしれません。



冨安は今年の「第21回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)」の特別賞にも選出され、川崎市岡本太郎美術館で開催された「TARO賞」展にも作品を出展していました。

「第21回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」 川崎市岡本太郎美術館(はろるど)

「TARO賞」は一室のみの展開ながらも、同じく暗い部屋を舞台として、突然、窓や壁が打ち鳴らされ、やはり超常現象を思わせる展開を見せていました。



その拡大バージョンと言えるかもしれません。先のポーやUFOに関する書籍、ないし随所の絵画も効果的で、個々の要素がより複雑に絡み合いながら、不在の住人を取り巻く、何らかの物語が紡がれているかのようにも思えました。



一概に言えませんが、人が少ない方がより楽しめる展示かもしれません。

「第12回 shiseido art egg展」
冨安由真展:6月8日(金)~7月1日(日)
佐藤浩一展:7月6日(金)~7月29日(日)
宇多村英恵展:8月3日(金)~8月26日(日)


7月1日まで開催されています。

*写真は全て「くりかえしみるゆめ」2018年

「第12回 shiseido art egg 冨安由真展」 資生堂ギャラリー@ShiseidoGallery
会期:6月8日(金)~7月1日(日)
休廊:月曜日。
料金:無料。
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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「近くへの遠回り―日本・キューバ現代美術展 帰国展」 スパイラルガーデン

スパイラルガーデン
「近くへの遠回り―日本・キューバ現代美術展 帰国展」
6/6~6/17



日本とキューバ、12名の現代アーティストによる「近くへの遠回り―日本・キューバ現代美術展」は、今春、ハバナのウィフレド・ラム現代美術センターで開催され、「好評」(解説より)を得ました。その帰国展が、現在、東京・南青山のスパイラルガーデンにて開かれています。


手前:レニエール・レイバ・ノボ「Untitiled」 2018年
奥:三瀬夏之介「Exchangeability」 2018年


床一面にカラフルなカーペットが広がっていました。レニエール・レイバ・ノボの「無題」で、カーキ色を主体に、赤、青、水色、それに肌色のほか、柄物の布の切れ端が、無数に編み込まれていました。キューバでは「普遍的な家庭用品」(解説より)であるマットを素材としていて、全てリサイクルされた布を使用していました。


レニエール・レイバ・ノボ「Untitiled」 2018年

カーキ色の布はキューバの軍服で、ほかが一般市民の服でした。キューバは、アメリカとの国交も回復し、軍事的緊張が緩んだともされていますが、彼の地にとって軍服とは、我々よりもはるかに身近な素材なのかもしれません。


田代一倫「東京」 2018年

田代一倫は、写真のシリーズ、「東京」を出展していました。写真家が、警備員の仕事の行き帰りに撮影した作品で、都内の様々な場所で、ポーズを構える人々の姿を写し出していました。


田代一倫 「東京」 2018年

しかし撮影は必ずしもスムーズに進まず、拒否されたり、中には「肖像権」の問題があるとして、注意されてしまうこともあったそうです。確かに被写体との間には独特の緊張感も漂っていて、東京における人同士の距離感を示しているかのようでした。


持田敦子「距離、その落下、その痕跡について」 2018年

吹き抜けのスペースで目立っていたのは、持田敦子の「距離、その落下、その痕跡について」でした。パイプによる足場が階段状に連なり、天井付近にまで達したインスタレーションで、ハバナでも既存の建物に階段を作る作品を制作しました。


持田敦子「距離、その落下、その痕跡について」 2018年

階段を上がると、足場からスパイラルを見下ろすことも可能でした。但し足元はやや揺らぎ、全てに安定しているとは言えません。実際に不安定な靴や、大きな荷物を持って進むことは出来ませんでした。


持田敦子「距離、その落下、その痕跡について」 2018年

なおハバナでは、会場の裏庭に6メートルの階段を構築したものの、なかなか材料が集まらず、当初の計画通りの高さに達しませんでした。その様子を示すための、同地での制作、ないし完成風景を捉えた写真もありました。


高嶺格「歓迎されざる者ーカリブ編」 2018年

多くのカラフルなTシャツで彩られた船に目が留まりました。それが高嶺格の「歓迎されざる者ーカリブ編」で、キューバからカリブ海を超え、アメリカへ目指す人々をテーマとしていました。アメリカでは、基本的に、「上陸した者に市民権を与え、海上で保護された者はキューバに送還する」(解説より)政策を実施しているそうです。


高嶺格「歓迎されざる者ーカリブ編」 2018年

Tシャツのプリントは、アメリカに渡った船の表面をフロッタージュの技法で写したものでした。また船は、身の回りの多様な資材で作られていて、中には芝刈り機のエンジンなども用いられていました。しかしながら、手作りの船による渡米は大きなリスクを伴い、数十万人が海上で命を落としました。


高嶺格「歓迎されざる者ーカリブ編」 2018年 *「漂流朝鮮人之図」(複製)

船の横には、江戸時代に朝鮮半島から日本に漂流し、保護され、無事に帰国した人々の様子を描いた、「漂流朝鮮人之図」の複製が展示されていました。いわゆる難民の問題は、何も今日にはじまったわけではありません。


岩崎貴宏「寓話のような」  2018年

そのほか、日本側では三瀬夏之介や毛利悠子、岩崎貴宏、ミヤギフトシ、キューバからはホセ・マヌエル・メシアス、グレンダ・レオンらも展示に参加していました。ともすると、互いに身近な国とは言えないかもしれませんが、今年は、キューバへ日本人が移住してから、120年の節目の年でもあります。


会期中は無休です。6月17日まで開催されています。

「近くへの遠回り―日本・キューバ現代美術展 帰国展」 スパイラルガーデン@SPIRAL_jp
会期:6月6日(水)~6月17日(日)
休館:会期中無休
時間:11:00~20:00
 *但し6月6日(水)は18:30まで。
料金:無料
住所:港区南青山5-6-23
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅B1出口すぐ。
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「大正モダーンズ~大正イマジュリィと東京モダンデザイン~」 日比谷図書文化館

日比谷図書文化館
「大正モダーンズ ~大正イマジュリィと東京モダンデザイン~」
6/8~8/7



日比谷図書文化館で開催中の「大正モダーンズ ~大正イマジュリィと東京モダンデザイン~」を見てきました。

大正時代から昭和初期にかけ、大衆文化が花開き、芸術も変革期を迎えた頃、デザインにおいても新たな展開が沸き起こりました。

中でも複製印刷の分野では、技術の進歩が発達し、書籍や雑誌、パンフレットや広告に至るまで、「イマジュリィ」と呼ばれる容れ物が登場しました。

そうしたデザインを紹介するのが、「大正モダーンズ~大正イマジュリィと東京モダンデザイン~」展で、杉浦非水にはじまり、橋口五葉、小林かいち、竹久夢二、小村雪岱など、同時代を牽引した作家による雑誌や装幀、またパッケージデザインなどが展示されていました。


杉浦非水「東京(第2巻第3号)」 1925(大正14)年

冒頭を飾るのが、当時の三越のブランドイメージを作り上げた、杉浦非水の商業図案でした。「非水図案集」では、蝶や女性の顔、それに鳥などを、曲線を多用した構図で表現していて、モダンなデザインを見せていました。大正時代は、「簡単化、大衆化の時代」(解説より)とも呼ばれ、それを反映したデザインが多様に生み出されました。


川端龍子「少女の友1月号(第8巻第1号)」 1915(大正4)年

東京の神田に出版社や印刷所が増えたのは、明治後半から大正にかけてのことでした。そしてこの時代に出版文化が隆盛し、多くの美術家らが雑誌の表紙のデザインを手がけました。中には岸田劉生や藤島武二らの洋画家もデザインを担っていて、半ば実験的とも呼べ得る、絵画とは異なった表現も作りました。


小林かいち「灰色のカーテン」 1925(大正14)年頃

大正時代のデザインには子どもや女性も数多く登場しました。特に積極的に取り上げたのは、竹久夢二や杉浦非水、それに小林かいち、蕗谷虹児でした。先立つ1900年に刊行された、エレン・ケイの著書、「児童の世紀」が世界的に流行し、日本でも子供を尊重すべき風潮が生まれ、1909年には三越で「児童博覧会」も開催されました。

一方で、明治末期から大正時代にかけては、浮世絵が見直され、江戸時代の世界が再び美術へ取り入れられました。その筆頭にあげられるのが、まさに江戸趣味を主題とした小村雪岱で、鏑木清方や橋口五葉も浮世絵のモチーフを援用しました。海外のジャポニスムの流行も影響していたそうです。


映画、演劇、舞踏、それにクラシックコンサートのパンフレットデザインも魅惑的ではないでしょうか。うち特に惹かれたのが、「松竹座ニュース」の表紙で、幾何学的なモチーフを活用し、構成主義的なデザインを落とし込んでいました。第一次大戦後の景気動向もあり、大正時代は、いわゆる中間層も文化的な催しに接した時代でもありました。

震災後、新たな街並みの築かれた東京には、モボやモガが登場し、より明るく、軽快な生活が好まれるようになりました。その中核とかしたのが、銀座で、「華宵好みの君が行く」と歌われ、様々なイラストレーションが街を彩りました。



資生堂のマッチラベルも興味深い資料のうちの1つでした。比較的手狭な一室での展示ですが、所狭しと資料が並んでいて、思いの外にボリュームがありました。またミニ図版の掲載されたリーフレットも有用ではないでしょうか。見応えは十分でした。

なお本展は、東京ステーションギャラリーで開催中の「夢二繚乱」の連動企画です。相互割引はありませんが、あわせて見るのが良さそうです。



8月7日まで開催されています。

「大正モダーンズ ~大正イマジュリィと東京モダンデザイン~」 日比谷図書文化館@HibiyaConcierge
会期:6月8日(金)~8月7日(火) 
休館:6月18日(月)、7月16日(月・祝)
時間:10:00~20:00(平日)、10:00~19:00(土曜)、10:00~17:00(日祝)。
料金:一般300円、大学・高校生200円、中学生以下無料。
住所:千代田区日比谷公園1-4
交通:東京メトロ丸の内線・日比谷線霞ヶ関駅B2出口より徒歩約3分。東京メトロ 千代田線霞ヶ関駅C4出口より徒歩約3分。都営三田線内幸町駅A7出口より徒歩約3分。
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