「しきのいろ 志村ふくみ・洋子×須田悦弘」 ザ・ギンザ スペース

ザ・ギンザ スペース
「しきのいろ 志村ふくみ・洋子×須田悦弘」 
2020/1/24~3/22



ザ・ギンザ スペースで開催中の「しきのいろ 志村ふくみ・洋子×須田悦弘」を見てきました。

草木染の人間国宝である志村ふくみと、母と同様に染織の世界に入り、芸術学校「アルスシムラ」を主宰する娘の洋子は、「織物に新たな美と活力を見出す」(公式サイトより)べく様々な創作を行ってきました。

その志村親子と木彫作家の須田悦弘がコラボレーションしたのが、「しきのいろ」と題した展覧会で、志村の染織インスタレーションと須田の草花を象った作品を展示していました。



ため息が漏れるほどに美しいインスタレーションとはこのことを指すのかもしれません。志村ふくみと洋子は、会場中央に、四角いフレームからなる「ひかりの茶室」を設置し、赤や緑、黄色から青などの多様な色の糸を四方から張り巡らせては、「しき」、すなわち四季の移ろいを表していました。



あまりに繊細なゆえに写真ではうまく分かりませんが、何本もの糸が壁の上から帯を描くように伸びては、フレーム上で屈曲し、あたかも滝のような筋を落としていて、立ち位置によって変化する色を見ることが出来ました。



また楕円形の吹き抜けの構造、あるいは天井のミラーを活かし、上下に作品が連なるように映っていて、もう1つの同じ作品が上に設置されていると見間違うほどでした。



それぞれの糸は、藍やクチナシ、カラスノエンドウ、それによもぎなどの春の野草などで染められていて、あたかも七色に変化する虹のように光を放っていました。



一方で超絶的な木彫で知られる須田悦弘は、木彫の草花の作品を4点ほど出展していました。



いずれも春夏秋冬に咲く「椿」、「コヒルガオ」、「露草」、「菊」を1本ずつ象っていて、資生堂の小さな瓶へ生け花のように見せていました。



須田といえば、時に草花の彫刻などを隙間へ挿し込むように展示することもあり、さながら宝探しのように愛でる楽しみ方もありますが、今回は1輪1輪の作品が各展示台の上に何ら隠されることなく置かれていました。

シンプルな展示ではありますが、何やら姿勢を正して見るかのような、凛とした佇まいを感じました。



「布を織る前の糸の状態の時の色が最も美しい」 志村ふくみ・洋子

会場のザ・ギンザ スペースは、銀座コアの裏手、あづま通りに面した銀座青月堂ビル地下2階に位置します。ワンフロアの小さなスペースで、ビル正面入口の階段、及びエレベーターで入場することが出来ます。



周辺には資生堂ギャラリーをはじめ、GINZA SIX内蔦屋書店の「THE CLUB」など、多くのギャラリーが存在します。銀座界隈へのお出かけの際に立ち寄るのも良いかもしれません。

「夢もまた青し 志村の色と言葉/志村ふくみ 志村洋子 志村昌司」

3月22日まで開催されています。

「しきのいろ 志村ふくみ・洋子×須田悦弘」 ザ・ギンザ スペース
会期:2020年1月24日(金)~3月22日(日)
休館:2月17日、3月16日。
時間:11:00~19:00。
料金:無料
住所:中央区銀座5-9-15 銀座清月堂ビルB2F
交通:東京メトロ銀座線・丸ノ内線・日比谷線銀座駅より徒歩3分。東京メトロ日比谷線・都営浅草線東銀座駅より徒歩3分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「フィリップ・パレーノ展 オブジェが語りはじめると」 ワタリウム美術館

ワタリウム美術館
「フィリップ・パレーノ展 オブジェが語りはじめると」 
2019/11/2~2020/3/22



ワタリウム美術館で開催中の「フィリップ・パレーノ展 オブジェが語りはじめると」を見てきました。

フランスのパリを拠点に活動する現代美術家、フィリップ・パレーノは、映像、彫刻、ドローイング、それにインスタレーションの様々な手法を用い、国内外で展覧会を開くなどして活動してきました。

そのパレーノの日本初の大掛かりな個展が「オブジェが語りはじめると」で、1994年から2006年にかけて制作された作品を再構成して展示していました。


手前:「しゃべる石」 2018年

タイトルの「語りはじめると」が示すように、作品が互いに会話し、関係し合うように展開するのも、パレーノの表現の大きな特徴と言えるかもしれません。スピーカーを内蔵した人工石の「しゃべる石」は、終始、何かを語っていて、時に訴えかけるかのように熱っぽく声を発していました。なおテキストは、パレーノ自ら執筆し、俳優の村上純子が吹き替えた、オートマトンについての内容でした。


「ハッピー・エンディング」 2014〜2015年

「しゃべる石」の横に置かれた照明型の作品、「ハッピー・エンディング」は、あたかも石に明かりを当てるかのようにランプを灯していて、光は変化しつつ、時折、消えていました。その光景はあたかも石と照明が対話しているかのようで、本来的には無機的な器具が、有機体として意思を持っているような錯覚に囚われました。


右:「花嫁の壁」 2018年

この他、アクリルガラスにLEDライトなどを組み込んだ「花嫁の壁」も、「ハッピー・エンディング」と同様に明かりを点滅させていて、個々の作品が照応しつつ、空間全体が1つのインスタレーションとして作り上げられていました。

こうした一連の運動は、てっきり一定の法則に基づいているのかと思いきや、美術館の周辺の気圧や風の方向などの細かな気象条件と連動していて、空気の変化や換気に反応していました。私が出向いた日は真冬の寒い曇天でしたが、ひょっとすると晴天時や温度で作品の動きが変わるのかもしれません。


「リアリティー・パークの雪だるま」 1995年〜2019年

チラシ表紙を飾った「リアリティー・パークの雪だるま」も常に変化し続ける作品でした。ご覧のように氷で出来た雪だるまで、室温では徐々に溶けていくのか、下の穴からポタポタと水を落としていました。


「リアリティー・パークの雪だるま」 1995年〜2019年

実のところ雪だるまは、会期中、何度か入れ替わっていて、ちょうど私は溶け落ちた後、新たな雪だるまが設置されたばかりの状態で見ることが出来ました。


会場入口に貼られた「雪だるま溶融暦」によると、約1週間で溶け、おおむね週末に雪だるまが再び構築されるようでしたが、どのような状態の雪だるまを見られるのかは、それこそタイミングによるのかもしれません。


「マーキー」 2016年

電球とネオン管によって構築された「マーキー」も、やはり変化、つまり終始、激しく点滅する作品でした。20世紀初頭の映画館や劇場のエントランスで設置された広告盤をモデルとしていて、当時は映画のタイトルや役者の名前をネオンで知らせていましたが、作品においては一切の文字はありませんでした。


「マーキー」 2016年

ともかくも突如、ネオンが強く輝いては、またバタリと力尽きたかのように消えていて、もはやSFなどに登場する未知の機械生命体のようでした。

それにしても個々のオブジェが妙に人懐っこく映るのが不思議でなりませんでした。チラシに「展覧会はオープンスペース」と記されていましたが、まるで器具や氷の彫刻が演じる舞台を目にするかのような印象も与えられるかもしれません。



氷の雪だるまは、1995年、ワタリウム美術館が青山の街中で展開した「氷の波紋」展のために作られました。言わば四半世紀ぶりの再現展示でもあります。


「壁紙 マリリン」 2018年

3月22日まで開催されています。

「フィリップ・パレーノ展 オブジェが語りはじめると」 ワタリウム美術館@watarium
会期:2019年11月2日(土)~2020年3月22日(日)
休館:月曜日。但し11月4日、12月30日、1月13日、2月24日は開館。年末年始(12月31日~1月3日)
時間:11:00~19:00 
 *毎週水曜日は21時まで開館。
料金:一般1000円、25歳以下(学生)800円、小・中学生500円、70歳以上700円。
 *ペア券:大人2人1600 円、学生2人1200 円
 *フィリップ・パレーノPass:1500円(本人に限り、会期中何度でも入場可。)
住所:渋谷区神宮前3-7-6
交通:東京メトロ銀座線外苑前駅より徒歩8分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」 21_21 DESIGN SIGHT

21_21 DESIGN SIGHT
「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」
2019/11/22〜2020/3/8



21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」を見てきました。

1953年に設立された日本デザインコミッティーには、現在、26名のデザイナーや建築家が名を連ね、プロダクトデザインの選定やデザイン展などを行っては、「日本のデザインに貢献」(解説より)してきました。


「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」展示風景

そうしたデザイナーらの原画などが21_21 DESIGN SIGHTへと一堂に会しました。そして単に原画といえども、手書きのスケッチなどに留まらず、デザインのプロトタイプからスタディ模型、或いはメモや日記帳、はたまた蔵書や自転車、展覧会チケットまでもが紹介されていました。


黒川雅之「COBRA」 株式会社ヤマギワ 1974年

まさか「原画」と名付けられた展覧会で、照明器具が公開されているとは思いませんでした。建築家でプロダクトデザイナーの黒川雅之の「COBRA」は、1974年にヤマギワより発表されたデスクライトで、ネックの部分がそれこそ蛇のように可動するため、様々な場所へ明かりを照らせるように設計されました。


松永真「ウーノのロゴタイプ」 株式会社資生堂 1992年

ベネッセや国立西洋美術館のCI計画や、スコッティや資生堂ウーノのデザインなどでも知られる松永真は、一連のロゴタイプに加えて、1990年より書き続けたオリジナルの日記帳を展示していました。


松永真の日記帳(現物) 株式会社第一紙行 他 1996年

松永は1日1ページしかない従来の日記帳がスペースに不足すると考え、左が絵、右に文字を記す1日分を見開きとして日記帳をデザインしました。いわば愛用の必需品として作り続けていくそうです。


面出薫「東京駅丸の内駅舎ライトアッププロジェクト」 2012年

照明デザイナーの面出薫で目を引いたのは、展示台の上に置かれた東京駅丸の内駅舎の模型でした。これは同駅舎のライトアッププロジェクトの際のデザインの際に用いられた模型で、実際にスイッチを入れ、明暗をコントロール出来るようになっていました。


隈研吾「高輪ゲートウェイ駅 屋根の細部スタディ」

同じく駅舎といえば、駅名決定の際に物議を醸した高輪ゲートウェイ駅のスタディも興味深いかもしれません。言うまでもなく手掛けたのは建築家の隈研吾で、折り紙をモチーフに障子を思わせる大屋根の模型などがいくつも並んでいました。


平野敬子「大分県立美術館(OPAM)サインの模型」 大分県 2015年 / 「東京国立近代美術館60周年のトートバック試作手縫い」 東京国立近代美術館 2012年
 
美術館に関したデザインでは平野敬子の展示も見過ごせませんでした。ここでは東京国立近代美術館のシンボルマークや、2015年に開館した大分県立美術館の立体サイン模型が展示されていました。2012年に近代美術館60周年を記念して作られた、試作のトートバックも珍しい資料かもしれません。


原研哉「東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムのスケッチ」 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 2015年

原研哉の手書きのスケッチ類にも目を奪われました。中でも竹尾ペーパーショウのアートポスターや、東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムスケッチ案は、いずれも繊細なタッチで描かれていて、大変に魅力的でした。


田川欣哉「メルカリのデザイン検討資料」 メルカリ 2018年〜

今回の展示のディレクションを担ったデザインエンジニアの田川欣哉は、メルカリのデザイン検討資料とともに、マル秘展そのもののコンセプト資料などを公開していました。


田川欣哉「マル秘展のコンセプト資料」 21_21 DESIGN SIGHT 2015年

そこには展示、ウェブサイト、デジタルアーカイブ、インタビュー、トークイベントの5本の柱から構成された展覧会全体のプランが事細かに記されていて、マル秘展の成立プロセスを見知ることも出来ました。展覧会の生い立ちを辿れる資料と呼べるかもしれません。


「作家たちの椅子」展示風景

この他、日本デザインコミッティーの新旧のメンバーの使った椅子も置かれていて、実際に座ったり、各種資料を閲覧することも可能でした。


「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」展示風景

展示資料は想像以上に膨大でした。時間に余裕を持って出かけられることをおすすめします。


会場内の撮影も可能でした。3月8日まで開催されています。

「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」 21_21 DESIGN SIGHT@2121DESIGNSIGHT
会期:2019年11月22日(金)〜2020年3月8日(日)
休館:火曜日。但し12月24日、2月11日は開館。年末年始(12月26日〜1月3日)。
時間:11:00~19:00
 *入場は閉場の30分前まで。
料金:一般1200円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料。
 *15名以上は各200円引。
住所:港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン・ガーデン内
交通:都営地下鉄大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅、及び東京メトロ千代田線乃木坂駅より徒歩5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「奈良原一高のスペイン―約束の旅」 世田谷美術館

世田谷美術館
「奈良原一高のスペイン―約束の旅」
2019/11/23~2020/1/26



世田谷美術館で開催中の「奈良原一高のスペイン―約束の旅」を見てきました。

1962年、まだ30歳の若き奈良原はヨーロッパへと旅立つと、フランスからドイツ、スペイン、ポルトガルなどを約3年間かけて巡り、帰国後、同地で撮影した写真作品を発表しました。その1つが「スペイン 偉大なる午後」と題した連作で、スペインの街や祭り、そして闘牛などの光景を収めました。

冒頭、プロローグとして紹介されたのが「ヨーロッパ・静止した時間」で、ルーアンやヴェネツィア、パリやバルセロナなど、ヨーロッパの古い街を写していました。いずれも重厚な石造りの街の歴史が滲み出すような写真でしたが、奈良原自身はパリを「老婆のような街」と評すなど、どこか馴染めない違和感を覚えながら撮影に向き合ったとされています。



続くのが「スペイン 偉大なる午後」で、「フェエスタ」、スペイン語でさよならを意味する「バヤ・コン・ディオス」、そして闘牛の際に演奏される曲を指す「偉大なる午後」が順に展示されていました。作品数はゆうに120点にも及んでいて、スペインの乾いた空気感や眩しい光の感覚、さらに人々や祭りの生み出す熱気がひしひしと伝わってきました。



奈良原の写真で印象に深いのは、現地の人々に極めて近しい距離感で祭りなどを捉えていることでした。実際、奈良原は牛追い祭りにおいて、誰でも参加出来ることと、若者の「爆発する喜び」(解説より)に感動したそうですが、まさに祭りに入り込み、歓喜を共有しているような体験を得られるかもしれません。

「バヤ・コン・ディオス」では、大都市ではなく、観光客の少ない小さな町や村を訪ねていて、スペインの何気ない日常の一コマを時間とともに見事に切り取っていました。街に差し込む光は殊更に輝いていて、画面で織りなす白と黒の強いコントラストも魅力的でした。

また闘牛ではより臨場感をもって舞台に迫っていて、牛が走り、人が身をこなし、砂煙が舞うような光景を、あたかも映像のような動きを伴って写し出していました。奈良原はよほど闘牛に心を引かれたのか、1963年に初めて観戦して以来、実に200頭もの闘牛を見続けました。



「スペイン 偉大なる午後」は1965年に発表され、1969年には写真集として出版されましたが、どういうわけか2010年の島根県立美術館の回顧展にて紹介されるまで、殆ど世の中で展示されることがありませんでした。実に東京での展覧はほぼ半世紀ぶりとなります。同時期に撮影された「ヨーロッパ・静止した時間」とあわせて鑑賞出来る、またとない機会と言えるかもしれません。 *上の掲載写真は全て会場外のバナー


さて展覧会も終盤を迎え、突然の訃報が舞い込んできました。写真家、奈良原一高は、1月19日に心不全のため亡くなりました。88歳でした。


「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」から

現在、奈良原の作品は、都内において本展の他に、東京国立近代美術館の「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」と、半蔵門のJCIIフォトサロンの「奈良原一高 人間の土地/王国 Domains展」にて鑑賞することが出来ます。(ともに2月2日まで)


「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」から

15年ほど前にくも膜下出血で倒れ、以来、療養を続けていましたが、今回の展覧会も開幕後、家族の方と一緒にご覧になったそうです。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

「奈良原一高のスペイン―約束の旅/クレヴィス」

次の土日で会期末です。1月26日まで開催されています。

「奈良原一高のスペイン―約束の旅」 世田谷美術館@setabi_official
会期:2019年11月23日(土・祝)~2020年1月26日(日)
休館:毎週月曜日。(祝・休日の場合は開館、翌平日休館)。年末年始(12月29日〜1月3日)、1月13日(月・祝)は開館し、翌1月14日(火)は休館。
時間:10:00~18:00 *最終入場は17時半まで。
料金:一般1000(800)円、65歳以上800(600)円、大学・高校生800(600)円、中学・小学生500(300)円。
 *( )内は20名以上の団体料金
 *リピーター割引あり:有料チケット半券の提示で2回目以降の観覧料を団体料金に適用。
住所:世田谷区砧公園1-2
交通:東急田園都市線用賀駅より徒歩17分。美術館行バス「美術館」下車徒歩3分。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

「瀬戸内アートの楽園 直島を1日で巡る旅」 後編:本村地区・家プロジェクト

前編:ベネッセハウスミュージアム・李禹煥美術館・地中美術館から続きます。ベネッセアートサイト直島へ行ってきました。



つつじ荘を経由し、町営バスで家プロジェクトのある本村地区へ着くと、既にランチタイムは過ぎ、14時近くになっていました。実のところ、美術館エリア内で食事をとるつもりでしたが、昼時の地中美術館が想像以上に混雑していたため、少し時間をずらし、本村地区にあたることにしました。



同島東部の本村は、直島町役場もある町の拠点で、直島への観光客を受け入れるべく、宿泊施設やカフェなどが多く点在しています。



本村で食事をしたのは、一軒の古民家を用いたCafe Gardenでした。カレーとピザのメニューが豊富なカフェで、もちもちのピザも美味しくいただけました。店内も時間帯が外れていたからか空いていて、快適に過ごせました。



腹ごしらえをした後は、本村に展開する家プロジェクトを巡ることにしました。同プロジェクトは、使われていない古民家を保存しつつ、現代美術の展示場として利用したもので、1998年に築200年の家屋を改修し、宮島達男の作品を展示した「角屋」からスタートしました。現在は予約制の「きんざ」を含めると7軒の展示施設が開設されています。



本村のラウンジで共通チケットを購入し、細い路地の続く集落を歩くと、まず目についたのが宮島達男の「角屋」でした。暗がりの母屋内部では、プールの中に沈められたLEDのデジタルカウンターが1から9の数字を刻んでいて、あたかも宇宙にまたたく星のような光を放っていました。なおカウンターの変化するスピードは、最初のセッティングの際によって島の人が決めたそうです。



高台に位置する護国神社は、江戸時代から続く古い神社だったものの、著しく老朽化したことから、杉本博司が家プロジェクトの一環として再建しました。



社殿は伊勢神宮を思わせる古い建築様式に基づき、神社の下には古墳のような石室が築かれていて、上下をガラスの階段で結んでいました。



直接、社殿から石室に降りることは叶いませんが、横からのアプローチにて石室に入ることが出来ました。ちょうど石室の通路から背後を見やると海が広がっていて、まさに杉本の海景シリーズを連想させるものがありました。以前、江之浦測候所の隧道から眺めた海がフラッシュバックするかのようでした。



「碁会所」にて作品を展開したのが須田悦弘で、建物の外の椿の樹木を参照しつつ、椿の花を象った彫刻を見せていました。そしてここで面白いのは左右に対となる部屋に本物と写しを並べていることで、初めは竹までが彫刻であるとは気がつかないほどでした。なお「碁会所」とは、かつてこの場所で町の人々が囲碁を打っていたことに因んでいるそうです。



大きな古民家の「石橋」を舞台に、襖絵を描いたのが、日本画家の千住博でした。瀬戸内の風景に触発された襖絵は、幽玄な趣きをたたえていて、暗い蔵にある滝のシリーズ、「ザ・フォールズ」も迫力がありました。これまでも何度か千住の絵画を見てきたつもりですが、場所の風情もあるのか、今までで最も美しく思えたかもしれません。しばし庭の石に座りつつ、ぼんやりと襖絵を眺めては見入りました。



直島町役場近くにある現代美術家の大竹伸朗の「はいしゃ」も目立っていました。かつて歯医者であった廃屋を再生させた施設で、無数のペインティングやコラージュが施され、まさに大竹の世界観が建物全体を支配していました。



その他、古い看板やネオンサイン、さらには船をめり込ませたような壁も個性的ではないでしょうか。もはや建物そのものが作品と化していました。



家プロジェクトを観覧しながら本村を歩いていると、気が付けば夕方に差し掛かっていました。本村にはANDO MUSEUMもありますが、時間の都合により見学を諦め、町営バスで宮浦港へと戻りました。



そして写真を撮り損ねてしまいましたが、大竹伸朗の直島銭湯を見学し、予定していた16時半のフェリーで宮浦港を出発し、宇野港へと出て、その日のうちに岡山から新幹線で東京へと戻りました。



直島を周遊して感じたことは、まずバスの時間など、事前に一定のプランニングしておく必要があることでした。無料バスの運行する美術館エリア内も歩けなくはありませんが、昇り降りも少なくなく、夏の暑い時期などは大変なことも予想されます。また町営バスは現金のみの対応していたため、小銭が意外と重要でした。



また芸術祭期間中でないにも関わらず、多くの人々がやって来ていて、既に直島が瀬戸内の代表的な観光地であることも感じられました。さらに外国人向けの英語の対応も重要で、バスの方が積極的に英語でアナウンスしていたのも印象的でした。



美術館では李禹煥美術館に一番心惹かれましたが、家プロジェクトが想像以上に充実していたのが嬉しい誤算でした。また集落の中に点在するため、美術館エリアとは異なり、直島の人々の生活の息吹を感じることも出来ました。門などを美しくディスプレイしている家も目立っていました。



今回は先に触れたANDO MUSEUMの他、全ての展示を回りきることは叶いませんでしたが、朝から夕方まで同島のみに滞在したため、主だった施設は観覧出来ました。宿泊客のみしか観覧できないベネッセハウスミュージアムの一部の展示や、屋外作品などを網羅しようとすると難しいかもしれませんが、基本的に直島だけであれば1日で見て回ることは可能です。



とは言え、直島を取り巻く瀬戸内には、豊島美術館などのある豊島、そして精錬所で知られる犬島など、他のアートスポットも数多く存在します。次回、直島を訪ねる機会があれば、他の島へも是非行ってみたいと思いました。

「ベネッセアートサイト直島」 地中美術館、ベネッセハウスミュージアム、李禹煥美術館、家プロジェクトほか
休館:月曜日。但し祝日の場合開館し、翌日休館(地中美術館、李禹煥美術館、家プロジェクト)。無休(ベネッセハウスミュージアム)。
 *メンテナンスのための臨時休館あり。
時間:3月1日~9月30日 10:00~18:00、10月1日~2月末日 10:00~17:00(地中美術館、李禹煥美術館)。8:00~21:00(ベネッセハウスミュージアム)。10:00~16:30(家プロジェクト)
 *各館毎に最終入館時間の設定あり。
料金:2100円(地中美術館)。1050円(ベネッセハウスミュージアム、李禹煥美術館、家プロジェクト)。
 *各施設ともに15歳以下は無料。
 *ベネッセハウスミュージアムは宿泊客無料。
 *地中美術館はオンラインチケット予約制。
 *家プロジェクトは共通券。ワンサイトチケット(420円)あり。「きんざ」は完全予約制。
住所:香川県香川郡直島町3449-1(地中美術館)。香川県香川郡直島町琴弾地(ベネッセハウスミュージアム)。香川県香川郡直島町字倉浦1390(李禹煥美術館)。香川県香川郡直島町本村地区(家プロジェクト)。
交通:宇野港、または高松港より四国汽船フェリーにて宮浦港。(本村港へのルートあり)直島島内は路線バス、及びつつじ荘乗り換えの場内無料シャトルバスを利用
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「瀬戸内アートの楽園 直島を1日で巡る旅」 前編:ベネッセハウスミュージアム・李禹煥美術館・地中美術館

1992年にベネッセハウスミュージアムが開館し、後に地中美術館、李禹煥美術館などがオープンした香川県の直島は、いわば現代アートの聖地として多くの人々を集めてきました。



宿泊先の岡山を8時半前に出て、高松行きの快速マリンライナーに乗車し、茶屋町で宇野線に乗り換えて約30分ほど経つと、終点の宇野駅に到着しました。宇野は岡山県側の直島への起点で、島へは駅の目の前にある宇野港からフェリーに乗船する必要がありました。



9時20分過ぎのフェリーに乗ると、船内はツアー客などで賑わっていて、特に外国の方々の姿が多く見受けられました。



直島の玄関口の1つである宮浦港への所要時間は約20分ほどで、瀬戸内海の景色を眺めながら、のんびりと船に揺られると、すぐに草間彌生のかぼちゃのオブジェがある宮浦港に着きました。



現代美術の展示施設は概ね島の中南部に点在していて、観覧に際しては、基本的にはバスで周遊する形となっていました。各施設の行き来に定まったルートはありませんが、私はまず、バスルートで最も港から遠い地中美術館などのある島南部の美術館エリアを目指すことにしました。



港から満員の町営バスに乗車し、終点のつつじ荘で下車して、ベネッセアートサイトの無料場内バスに乗り換えると、高低差のある狭い一本道を進み、海を望む高台へと上がりました。そこに位置するのがベネッセハウスミュージアムでした。



ベネッセハウスミュージアムは1992年、「自然・建築・アートの共生」をコンセプトに、安藤忠雄の設計によってオープンした美術館で、ホテルの機能も兼ね備えています。

山の斜面に沿って建てられていて、ギャラリー部はほぼ地下に埋めこまれ、地下と1階、2階部分に、約20名の現代美術家の作品が公開されていました。なお昨今、撮影の可能な美術館も増えてきましたが、直島では原則、各施設の展示室内の写真を撮ることは出来ません。



建物は円筒形の部分と、窓から光の差し込む縦に長いスペースに分かれていて、思いの外に広く、リチャード・ロングやブルース・ナウマンなどの大作のインスタレーションも展示されていました。またコレクションの一部は作家が同地で制作していて、リチャード・ロングの「瀬戸内海の流木の円」も直島の素材も使用していました。



2階にはカフェとショップがあり、そこから外の景色については撮影も可能でした。ともかく海を望む抜群のロケーションで、この日は快晴だったこともあり、瀬戸内海に浮かぶ島や行き交う船などが眺められました。



ベネッセハウスミュージアムを後にして、再び無料バスに乗ると、すぐに李禹煥美術館に辿り着きました。美術館エリアとしては最も新しい2010年に建てられた施設で、もの派の作家として知られるとして李禹煥のコレクションが収められています。



李禹煥美術館で特徴的なのは、建物の外のスペースも効果的に用い、作品と景観を融合させていたことでした。



ちょうど美術館はベネッセハウスミュージアムと地中美術館の間の谷間に建てられていて、バス停から階段を降りると正面に柱の広場があり、左手には海に面したスペースに「無限門」などの大規模な作品が設置されていました。



大きな半円を描く「無限門」は海を借景として取り込んでいて、実にダイナミックな景観を築き上げていました。



一方の柱の広場では、高さ18メートルを超える柱、「関係項ー点線面」が設置されていて、建物の壁の水平面とは対比的な垂直軸を生み出していました。



「沈黙の間」や「影の間」、それに「瞑想の間」などから構成された美術館内部も、李の新旧の作品が空間と巧みに調和していて、あたかも洞窟を辿りつつ、修道院の中へと迷い込むかのような神秘的な体験を得ることも出来ました。



李は美術館の建設に際し、「静かに瞑想する空間を作りたい」と考えていたそうですが、設計の安藤忠雄の力も借りて、自らの世界観を見事に体現していたのではないでしょうか。私としては美術館エリアの安藤建築の中で、最も心に惹かれたのが李禹煥美術館でした。



李禹煥美術館から地中美術館へは適当な時間のバスがなかったため、徒歩で移動することにしました。場内シャトルバス路線内はバスと徒歩のみ通行可能で、自転車も走行することが出来ません。しばらく歩き、右手に池を見やると、地中美術館のチケットセンターが姿を現しました。



地中美術館は建物の大半が地下に埋設された美術館で、安藤忠雄の設計の元、2004年に建てられました。そして地中へ降り注ぐ自然光を用いた展示室に、クロード・モネ、ウォルター・デ・マリア、ジェームス・タレルの3名の作家の作品が恒久設置されました。



チケットセンターで事前に手配したチケットを引き換え、モネの睡蓮の池を模した「地中の庭」の小道を歩くと、美術館の建物のゲートが見えてきました。



原則、入れ替え制になっているため、さほど混んでいないのかと思いきや、ベネッセハウスミュージアムや李禹煥美術館よりも明らかに人が多く、想像以上に賑わっていました。ちょうど昼時だったからかカフェもほぼ満席で、タレルの「オープン・フィールド」の体験型展示には行列も出来ていました。

私として印象に深いのはモネの睡蓮の展示室で、真っ白な壁面に浮かび上がる青みがかかった色彩の渦は殊更に美しく思えました。2センチ角の大理石の床も足に独特な触感をもたらしていて、まさに全てが睡蓮のために作られた空間であることが感じられました。また正面の「睡蓮の池」は2枚合わせて横幅6メートルもあり、これほど大きな睡蓮を見たこと自体も初めてでした。

一方でウォルター・デ・マリアの展示室は、作品が安藤建築に対峙するかのように設置されていて、不思議な緊張感を醸し出していました。その階段状の空間をはじめ、金箔で覆われた柱などからは、祭壇や教会のイメージも浮かび上がるかもしれません。



空を切り取ったタレルの部屋でしばらく休み、列に加わって「オープン・フィールド」で光を浴びた後は、地中美術館を退館し、無料バスに乗車して、終点のつつじ荘へと戻りました。

後編:本村地区・家プロジェクトへと続きます。

「ベネッセアートサイト直島」 地中美術館、ベネッセハウスミュージアム、李禹煥美術館、家プロジェクトほか
休館:月曜日。但し祝日の場合開館し、翌日休館(地中美術館、李禹煥美術館、家プロジェクト)。無休(ベネッセハウスミュージアム)。
 *メンテナンスのための臨時休館あり。
時間:3月1日~9月30日 10:00~18:00、10月1日~2月末日 10:00~17:00(地中美術館、李禹煥美術館)。8:00~21:00(ベネッセハウスミュージアム)。10:00~16:30(家プロジェクト)
 *各館毎に最終入館時間の設定あり。
料金:2100円(地中美術館)。1050円(ベネッセハウスミュージアム、李禹煥美術館、家プロジェクト)。
 *各施設ともに15歳以下は無料。
 *ベネッセハウスミュージアムは宿泊客無料。
 *地中美術館はオンラインチケット予約制。
 *家プロジェクトは共通券。ワンサイトチケット(420円)あり。「きんざ」は完全予約制。
住所:香川県香川郡直島町3449-1(地中美術館)。香川県香川郡直島町琴弾地(ベネッセハウスミュージアム)。香川県香川郡直島町字倉浦1390(李禹煥美術館)。香川県香川郡直島町本村地区(家プロジェクト)。
交通:宇野港、または高松港より四国汽船フェリーにて宮浦港。(本村港へのルートあり)直島島内は路線バス、及びつつじ荘乗り換えの場内無料シャトルバスを利用
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「ダ・ヴィンチ没後500年 『夢の実現』展」 代官山ヒルサイドフォーラム

代官山ヒルサイドフォーラム
「ダ・ヴィンチ没後500年 『夢の実現』展」 
2020/1/5~2020/1/26



代官山ヒルサイドフォーラムで開催中の「ダ・ヴィンチ没後500年 『夢の実現』展」を見てきました。

2019年に没後500年を迎えた芸術家、レオナルド・ダ・ヴィンチは、「モナ・リザ」などの世界的名画で知られるものの、生涯で完成させた作品は意外に少なく、現存する絵画は僅か16点にしか過ぎません。

そして多くは未完成の状態に置かれているか、欠損していて、完全な姿で残る作品は4点とされてきました。

そのレオナルドの絵画を科学的見地よって復元したのが東京造形大学の「Zokei DA Vinci Project」のメンバーで、レオナルド研究で知られる池上英洋(東京造形大学教授)の監修の元、同大の教員と学生の約100名が協働し、絵画をはじめ、建築、工学系の発明品の未完作品約30点を、復元画、再現模型、ないし映像で紹介していました。

さて実物はともかくも、図版等では見る機会も少なくないレオナルドの絵画ですが、今回、復元画に接して強く印象に残ったのは、現存する作品とかなり違って見えることでした。


「聖ヒエロニムス」 復元絵画

と言うのも、そもそもレオナルドが着色し得なかった「聖ヒエロニムス」や「東方三博士(マギ)の礼拝」などにおいても、精緻な下絵を参照し、当時の他の画家の作例などを参照に色彩を復元しているからでした。


「東方三博士(マギ)の礼拝」 復元絵画

例えば「聖ヒエロニムス」における赤いローブは、同時代のフィレンツェの画家の定番の色彩に準じていて、「東方三博士(マギ)の礼拝」でもフィリッピーノ・リッピの色を参考に、色彩鮮やかな群像世界を作り上げていました。


「ラ・ジョコンダ(モナ・リザ)」 復元絵画

また「モナ・リザ」では、現在の黄色がかったニスやひび割れをバーチャル状で取り除き、復元画を制作していて、背景の青みがかった風景は驚くほど明るく、どこかモデル自身の姿も僅かに若いようにも思えました。今、見知っている実物の状態が、いかに古色を帯び、また年月のファクターを通して見ていることが良く分かるかもしれません。


「最後の晩餐」 展示風景

レオナルド唯一の現存壁画であり、最大のサイズを誇る「最後の晩餐」は、映像にて再現していました。ちょうどカフェを横にした吹き抜けの天井付近に映されていて、下から見上げる形だけでなく、2階より正面からも眺めることが出来ました。

1999年、実物の「最後の晩餐」は20年に渡る修復を終えましたが、長年の劣化や戦争などにより、必ずしも状態が良くなく、完全に欠落した部分も存在しています。よって今回はレオナルドの弟子の残した模写を参照し、色彩のみならず、空間全体を復元しました。


「スフォルツァ騎馬像」 縮小復元ブロンズ像

復元彫刻では「スフォルツァ騎馬像」が見逃せません。そもそもはレオナルドがミラノで考案した史上最大の騎馬像計画で、準備段階にて塑像模型こそ作られたものの、用意されていた青銅がフランス軍の侵攻により大砲の製造に回され、造られることはありませんでした。そして模型も破壊されてしまいました。

ここでレオナルドは、当初、伝統的な三脚の着地ではなく、両前脚をあげたポーズを考えていました。結果的には重量を支えるのが困難として、三脚のポーズでプランが進行しましたが、晩年に別の騎馬像の依頼を受けた際、再び二脚着地のポーズに挑戦したと言われています。

よって今回はレオナルドの夢を叶えるべく、世界で初めて両前脚をあげるポーズをブロンズで復元しました。前脚を振り上げることによって、さらなる躍動感のある姿を作ろうとした、レオナルドの意図も伝わってくるかもしれません。


「大墳墓計画」 模型および3DCG

建築では「大墳墓計画」の復元模型に目を奪われました。これは素描に基づく巨大なピラミッドのような墳墓で、おそらくはビザンチンを含む東地中海の建築知識をベースにしたとされています。そもそもレオナルドは生前、建築家としても活動していましたが、実現していたら、まさに唯一無比の建築として多くの人の注目を浴びたに違いありません。


復元工学系発明品 縮小再現模型

このほか、武器などの工学系の発明品も模型や映像で紹介されていました。そもそも軍事技術のキャリアのなかったレオナルドは、いわば手探りの形で武器などを考案し、実現しなかったも多数ありました。しかし後には先人たちに学びつつ、ネジやトンカチまでを自作し、規格化しては多様な発明を行いました。そうしたプロセスを目にすると、レオナルドの制作や物事を把握することに対する強い熱意、ないし探究心も感じられるかのようでした。

さらにARを取り込んだ鑑賞ガイドや、「最後の晩餐」の部屋を模したVRルームなど、多様な最新のメディアを通し、レオナルドの探究に迫っているのも展覧会の大きな特徴と言えるかもしれません。


「集中式聖堂」 模型および3DCG

復元に際して得られた新たな知見もパネルなどで詳細に解説されていました。いわゆる実物の展示こそありませんが、これほど発見の多いレオナルド展も他にないかもしれません。


「サルヴァトール・ムンディ」 復元絵画

約20日間あまりと短期間の展覧会ですが、会期中は無休の上、連日20時半まで開館しています。(入館は20時まで。)日没後の夜間開館もスムーズに観覧出来るのではないでしょうか。


「ジネヴラ・デ・ベンチ」および裏面 復元絵画

入場は無料、鑑賞ガイドのレンタルも料金はかかりません。但しガイドには台数に限りがあります。お出かけの際はご注意下さい。


会期中、多数のイベントが行われ、監修の池上英洋東京造形大学教授のギャラリートークも随時開催されています。各イベント情報については公式Twitterアカウント(@Leonardo_TZU)がこまめに発信しています。そちらもご覧下さい。


「ダ・ヴィンチ没後500年 『夢の実現』展」会場風景

一部を除き撮影も可能です。1月26日まで開催されています。

「ダ・ヴィンチ没後500年 『夢の実現』展」@Leonardo_TZU) 代官山ヒルサイドフォーラム
会期:2020年1月5日(日)~2020年1月26日(日)
時間:11:00~20:30
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:会期中無休。
料金:無料。
住所:渋谷区猿楽町18-8 代官山ヒルサイドテラスF棟内
交通:東急東横線代官山駅下車徒歩3分。東急東横線・東京メトロ日比谷線中目黒駅下車徒歩7分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「動きの中の思索―カール・ゲルストナー」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー

ギンザ・グラフィック・ギャラリー
「動きの中の思索―カール・ゲルストナー」 
2019/11/28~2020/1/18



ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催中の「動きの中の思索―カール・ゲルストナー」を見てきました。

1930年にスイスのバーゼルに生まれたデザイナー、カール・ゲルストナーは、デザインをシステムとして構築することを提案し、同国のタイポグラフィとグラフィックデザインに大きな影響を与えました。

そのゲルストナーの日本初の個展が「動きの中の思索」で、広告デザイン25点、ポスター9点の他、直筆のスケッチなどが一堂に紹介されていました。



ゲルストナーの作品はもちろん、会場のデザインも魅力的と言えるかもしれません。とするのも、1階展示室ではゲルストナーの広告ポスターを壁一面に引き伸ばし、ダブルイメージのように展開していて、あたかも広告の中へ迷い込んだかのような感覚を作り出しているからでした。



また1階はほぼモノクロームの作品で占められている一方、地下の展示室ではカラーのポスターなどを並べていて、上下階でゲルストナーの作品を色で対比するかのように紹介していました。



左右非対称なレイアウトやグリッドを利用する「スイス・スタイル」がゲルストナーの作品の基本とされていて、体系的な色彩や秩序だったフォルムなど、言わば理知的に見えるのも特徴であるかもしれません。



その一方で、タイポと写真の組み合わせには、時にウィットも垣間見られて、洗練でありながらも、遊び心が感じられるのも面白いところでした。



スイス航空のCI(コーポレート・アイデンティティ)や、シェル石油のロゴデザイン案などはよく知られた作品と言えるのではないでしょうか。若い頃、バーゼルの工芸学校で学んだゲルストナーは、1949年、医薬品メーカーのカイギー社でデザインチームの一員として活動しました。そして後に広告代理店を立ち上げると、1963年にはGGK(ゲルストナー グレディンガー クッター)を設立し、ヨーロッパで有数の成功を収めました。



ゲルストナーは2017年、86歳にて亡くなりましたが、デザインのアーカイブはスイスの国立図書館に納められていて、「タイポグラフィ、コマーシャルアート、コーポレートデザインの最も重要な革新者の一人」として称賛されました。

1965年に松屋銀座で開催されたデザイン展「ペルソナ」にて、ゲスト作家として招待されたゲルストナーは、当時の日本の若いデザイナーにも大きな影響を与えたそうです。以来、約半世紀ぶりにゲルストナーの業績がまとめて紹介された展覧会と言えるのかもしれません。


年末年始のお休みも終わりました。年明けは1月7日よりオープンしています。



1月18日まで開催されています。

「動きの中の思索―カール・ゲルストナー」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー
会期:2019年11月28日(木)~2020年1月18日(土)
休廊:日曜・祝日。年末年始(12/27~1/6)。
時間:11:00~19:00
料金:無料
住所:中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅から徒歩5分。JR線有楽町駅、新橋駅から徒歩10分。
コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )

特別公開「高御座と御帳台」 東京国立博物館

東京国立博物館・本館特別4室・5室
特別公開「高御座と御帳台」
2019/12/22~2020/1/19



天皇陛下ご即位に際し、即位礼正殿の儀で両陛下の昇られた高御座と御帳台が、東京国立博物館にて公開されています。

会場は本館1階正面の特別4室と5室で、5室に高御座と御帳台が公開され、4室にて儀式における服装、もしくは「儀式の威厳を整えるために」(解説より)捧持する弓や盾などの威儀物が展示されていました。



まず最初の特別5室で威容を誇るのが高御座と御帳台で、手前に高御座、奥に御帳台が横に並んで置かれていました。



現在の高御座と御帳台は、大正天皇の即位に際して制作されたもので、朱塗りの高欄や鳳凰を頂く金色の屋根、ないし様々な装飾品が神々しいまでの美しい光を放っていました。



細部までに贅を尽くした意匠は、まさに雅やかであり、なおかつ威厳に満ちた姿を見せていました。また高御座と御帳台の大きさは同一でなく、概ね高御座より御帳台の方が像高で約80センチ、幅で約75センチ、奥行きで約70センチほど小さく造られていました。



ともに高御座と御帳台はガラスの壁の向こうに置かれ、正面から奥、さらに背面と、ほぼ360度の角度から見学することが出来ました。そして個人利用に限り撮影も可能で、実際に会場でも殆どの方がスマホを片手に写真を撮っていました。



続く特別4室では、威儀物と、それを持つ捧持者の服装が展示されていました。また服装は人形に着せられていたため、さも儀式を目の当たりにするかのような臨場感のある形で見学出来ました。



こうした服装をはじめ、弓、鉦、鼓などの威儀物は、ガラスケースなしの露出展示で、かなり近い距離から見ることも可能でした。



この他、即位礼正殿の儀にて撮影された写真もパネルで展示されていて、テレビなどで目にした当日の光景の記憶もまた蘇ってくるかのようでした。

さて会場内の状況です。公開も残すところ約1週間となり、連日、多くの方で賑わっています。リアルタイムで混雑情報を発信するアカウント(@takamikura_tnm)によると、直近では1月11日(土)の10時40分において70分から90分の待ち時間が発生しました。既に平日、土休日問わず、朝から昼の時間帯で混雑し、1時間超の待機列が生じて、夕方前にかけて段階的に解消していくようです。

私は混雑を避けるべく金曜の夜間開館時に行ってきました。1月10日の19時頃に博物館へ到着し、常設展と東洋館を廻った後、会場へと移動すると、特に列もなく、スムーズに見学出来ました。残すところ17日と18日しかありませんが、とりあえずは金曜と土曜の夜間開館(21時まで)が狙い目と言えそうです。

特別公開「高御座と御帳台」の観覧は無料です。博物館のスタッフの方が、正門の中央にて特別公開の無料パスを配布しています。そのパスを首からかけて、本館へ進み、特別5室、4室と見学する流れとなっています。但し無料で入場した場合、総合文化展、つまり常設展の観覧は一切出来ません。常設展の場内に入場禁止の旨も掲示されていました。


国宝「古今和歌集(元永本)下帖」 平安時代・12世紀

ただ私は常設展も見たかったため、常設展の所定の観覧券を購入して入場しました。


「花車図屏風」 筆者不詳 江戸時代・17世紀

東博の醍醐味は膨大なコレクションを有する常設展にあります。 現在、本館では干支の鼠に因んだ作品を公開する恒例の「博物館に初もうで」をはじめ、東洋館ではアジアや中南米の古代遺物を紹介する「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界」なども開催されています。そしてこの東洋館の展示が驚くほど充実していました。


国宝「松林図屛風」 長谷川等伯 安土桃山時代・16世紀 *1月13日まで本館2階の国宝室で公開。

特別公開「高御座と御帳台」の会場では、パスを下げた無料入場の方を多く見受けられましたが、もしこれから出向かれる際は、常設展と合わせて見学されることをおすすめします。



1月19日まで開催されています。

特別公開「高御座と御帳台」 東京国立博物館・本館特別4室・5室(@TNM_PR
会期:2019年12月22日(日)~2020年1月19日(日)
時間:9:30~17:00。
 *会期中の金・土曜は21時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日、年末年始(12月26日~1月1日)、1月14日(火)。1月13日(月・祝)は開館。
料金:無料。但し総合文化展、特別展の観覧には別途入館料が必要。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「小さなデザイン 駒形克己展」 板橋区立美術館

板橋区立美術館
「小さなデザイン 駒形克己展」 
2019/11/23~2020/1/13



1953年に生まれ、日本やアメリカでグラフィックデザイナーとして活動してきた駒形克己は、1989年の長女の誕生に際し、絵本の制作に取り組み始めました。

その駒形克己の絵本をはじめ、初期の実験的な作品や音楽やファッションの仕事、それにスケッチなど、約300点もの作品資料が板橋区立美術館へとやって来ました。

はじめは駒形のキャリア初期の作品で、1977年に渡米し、ニューヨークCBS本社やシェクターグループで手掛けたグラフィックデザインなどが紹介されていました。いずれもシンプルなデザインながらも、独特の豊かな手触り感も感じられて、後の絵本に通じる面も見られました。

1983年に帰国した駒形は、オフコースや安全地帯などのレコードジャケットや、コムデギャルソンなどのファッションブランドのタグやズッカのロゴなどを制作しました。



さらに1989年に長女が誕生すると、子どもの成長に向き合うべく、絵本を作り始めました。それらの絵本は紙の質感を活かしつつ、切り抜きや変形ページを多用していて、2010年には「Little Tree」にてボローニャ国際児童図書展のラガッツィ賞にノミネートされました。



駒形本人が展示を行った絵本のインスタレーションも見どころでした。木製の台の上に絵本を多様に展開していて、あたかもそれぞれの絵本が互いに関係しては、1つの大きな物語を紡ぐかのようでした。



さすがに触ることは叶いませんが、やはり紙の温もりのある質感や、まるで自由工作を目にするような遊び心も感じられて、愛おしく思えるほどでした。「小さなことをを大切にしてきた」とする、駒形の子どもへの愛情が反映された作品と言えるかもしれません。(絵本のインスタレーションのみ撮影可)



会場の一角では絵本を自由に手にすることの出来るスペースも設けられていました。そちらでじっくり立体絵本を閲覧するのも楽しいのではないでしょうか。



駒形は板橋区立美術館と関係が深く、2000年には「ボローニャ国際絵本原画展」で絵本を紹介した他、後に同展の審査員に就任してからは、ワークショップやイベントの講師を務めるようになりました。さらに2007年の「ブルーノ・ムナーリ」展では図録とポスターのデザインを行い、2009年には同美術館初のロゴマークも制作しました。



そして2019年には開館40周年を期して、新たなロゴマークも駒形が手掛けました。建物正面のシルエットをモチーフとしていて、二色のシンプルな構成ながらも、どこか回転ならぬ動きを感じられるようなデザインとなっていました。今回の展覧会でも多数のイベントを開いていますが、今後も同美術館と協働を続けていくのかもしれません。



さて2018年5月より大規模改修工事のため休館していた板橋区立美術館ですが、2019年6月、約10ヶ月の工期を経て、全面リニューアルオープンしました。



大きな屋根を特徴とした2階建ての建物の形こそ同じものの、外装、及び内装は完全に一新されていて、前の建物を知らなければ新築と錯覚するほどでした。



1階のラウンジにはペンダントライトが吊るされ、カジュアルな雰囲気を醸し出す一方、展示室は落ち着いた空間となっていて、ケースや照明なども入れ替えられ、実に快適に作品を見ることが出来ました。



既に日本美術の展覧会で定評のある同美術館ですが、今後は国宝や重要文化財も展示可能な仕様となりました。また明るい授乳室も設置され、トイレもバリアフリーに対応しました。



自ら「永遠の穴場」とうたう、板橋区立美術館のこれからの活動にも期待したいと思います。

「小さなデザイン 駒形克己展/板橋区立美術館/ブルーシープ」

「小さなデザイン 駒形克己展」巡回スケジュール
三菱地所アルティアム(福岡):2020年3月14日~5月10日
岩手県立美術館:2020年9月5日~11月3日
足利市立美術館:2020年11月14日~2021年1月10日


気がつけば会期末を迎えていました。1月13日まで開催されています。

「小さなデザイン 駒形克己展」 板橋区立美術館@itabashi_art_m
会期:2019年11月23日(土・祝)~2020年1月13日(月・祝)
休館:月曜日。但し1/13は祝日のため開館。年末年始(12月29日~1月3日)。
時間:9:30~17:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般650円、高・大生450円、小・中学生200円。
 *毎週土曜日は高校生以下無料。
住所:板橋区赤塚5-34-27
交通:都営地下鉄三田線西高島平駅下車徒歩13分。東武東上線・東京メトロ有楽町線成増駅北口2番のりばより増17系統「高島平操車場」行き、「区立美術館」下車。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「みえないかかわり イズマイル・バリー展」 メゾンエルメス

メゾンエルメス
「みえないかかわり イズマイル・バリー展」 
2019/10/18~2020/1/13



メゾンエルメスで開催中の「みえないかかわり イズマイル・バリー展」を見てきました。

1978年に生まれ、チュニスとパリを拠点に活動するイズマイル・バリーは、「目に見える事物や知覚そのものの儚さを問う」(公式サイトより)べく、映像やインスタレーションなどの作品を制作してきました。



「出現」と題した3分間の短い映像に目を奪われました。誰とも分からない人物の両手が、アラブと思しき都市の広場を背景に、白い紙を光に透かす様子を映していて、ちょうど紙の向こうに手をかざした時にのみ、イメージが立ち上がってきました。



実のところ映像は、バリーの出身でもあるチュニジアの独立の日を捉えていて、それを祝うためか大勢の人々が集っていましたが、いずれもが光に包まれては現れたり消えたりしていて、あたかも不安定で実在しない幻想のようにも見えました。



「線」も人の身体、今度は腕を扱った映像で、左手を添えた右腕の脈の上に、ただ1つの小さな水滴をのせた様子を捉えていました。一見、何も変化がないようにも思えましたが、よく見ると水滴は脈の動きと同時にかすかに震えていて、水滴が魂をもっては鼓動を打つかのようでした。何とも繊細な感覚を表してはいないでしょうか。



エルメスの展示室全体を、1つの「光学装置」(公式サイトより)へと変貌させたインスタレーションも魅惑的でした。薄暗がりのスペースの壁には、淡い色のついたトレーシングペーパーなどの薄い紙が貼られ、風に揺られつつ、わずかに靡いてもいました。この他にもドローイングであったり、木片などが組み込まれていて、いずれも明るい光を放っていました。



ここで面白いのは、この暗室全体もバリーの作り出した作品であることでした。というのも、エルメスのガラスブロックを完全に塞いでいるわけではなく、ガラスの内側に仮設の壁を築いて暗くしていたからでした。



そしてちょうど紙やドローイングの部分に小さな切り込みを入れて、外から内部へと光を誘っていました。つまり先に見ていた光は内にあるわけではなく、外からもたらされたものでした。



この壁の存在によって空間は大きく表情を変えていて、作品の表と裏の関係を半ば曖昧にしていました。率直なところ、私自身、内部の暗い部分のみの展示と思い込んでいたため、外のガラスブロックのある空間に出た時は、まるでパラレルワールドを行き来したかのような錯覚に囚われました。



ちょうど夕方前に出向きましたが、鋭敏な光を取り入れたインスタレーションゆえに、日没後には表情を変えて見えるかもしれません。手触り感のあるドローイングや映像に惹かれつつ、光を操って見せるバリーの才知にたけたアプローチにも感心させられました。



1月13日まで開催されています。おすすめします。

「みえないかかわり イズマイル・バリー展」 メゾンエルメス
会期:2019年10月18日(金)~2020年1月13日(月・祝)
休廊:11月13日(水)、12月11日(水)、年末年始(12月30日〜1月2日)。
時間:11:00~20:00 
 *日曜は19時まで。入場は閉場の30分前まで。
料金:無料。
住所:中央区銀座5-4-1 銀座メゾンエルメス8階フォーラム
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅B7出口すぐ。JR線有楽町駅徒歩5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

2020年1月に見たい展覧会【ダ・ヴィンチ夢の実現展/白髪一雄/コレクションの現在地】

今年のお正月は、3が日の他に、4日、5日の土日を合わせて9連休の方も多いのかもしれません。1月に気になる展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」 江戸東京博物館(~1/19)
・「印象派からその先へー世界に誇る吉野石膏コレクション展」 三菱一号館美術館(~1/20)
・「奈良原一高のスペイン――約束の旅」  世田谷美術館(~1/26)
・「坂田一男 捲土重来」 東京ステーションギャラリー(~1/26)
・「能と吉祥 寿―Kotohogi」 大倉集古館(~1/26)
・「ダ・ヴィンチ没後500年 夢の実現展」 代官山ヒルサイドフォーラム(1/5~1/26)
・「国宝 雪松図と明治天皇への献茶」 三井記念美術館(~1/30)
・「パリ世紀末ベル・エポックに咲いた華 サラ・ベルナールの世界展」 渋谷区立松濤美術館(~1/31)
・「やきもの入門 ―色彩・文様・造形をたのしむ」 出光美術館(~2/2)
・「心ある機械たち again」 BankART Station + BankART SILK(~2/2)
・「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界」 東京国立博物館・東洋館(~2/9)
・「開館40周年記念 太田記念美術館所蔵 肉筆浮世絵名品展―歌麿・北斎・応為」 太田記念美術館(1/11~2/9)
・「〈対〉で見る絵画」 根津美術館(1/9~2/11)
・「MOTアニュアル2019 Echo after Echo:仮の声、新しい影/ダムタイプ|アクション+リフレクション/ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」 東京都現代美術館(~2/16)
・「たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代」 たばこと塩の博物館(~2/16)
・「DOMANI・明日2020 傷ついた風景の向こうに」 国立新美術館(1/11~2/16)
・「千田泰広―イメージからの解放」 武蔵野市立吉祥寺美術館(1/11~2/23)
・「ミイラ~永遠の命を求めて」 国立科学博物館(~2/24)
・「上村松園と美人画の世界」 山種美術館(1/3~3/1)
・「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」 21_21 DESIGN SIGHT(~3/8)
・「ポーランドの映画ポスター」 国立映画アーカイブ(~3/8)
・「ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター」 Bunkamuraザ・ミュージアム(1/9~3/8)
・「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢展」 パナソニック汐留美術館(1/11~3/22)
・「白髪一雄」 東京オペラシティ アートギャラリー(1/11~3/22)
・「祈りの造形 沖縄の厨子甕を中心に」 日本民藝館(1/12~3/22)
・「開館記念展 見えてくる光景 コレクションの現在地」 アーティゾン美術館(1/18~3/31)
・「シュルレアリスムと絵画―ダリ、エルンストと日本の『シュール』」 ポーラ美術館(~4/5)
・「森村泰昌:エゴオブスクラ東京2020―さまよえるニッポンの私」 原美術館(1/25~4/12)

ギャラリー

・「αMプロジェクト2019 東京計画2019 vol.5 中島晴矢」 ギャラリーαM(~2020/1/18)
・「利休のかたち 継承されるデザインと心」 松屋銀座(~1/20)
・「ソピアップ・ピッチ RECLAIM」 小山登美夫ギャラリー(~1/25)
・「ものいう仕口―白山麓で集めた民家のかけら」 LIXILギャラリー(~2/22)
・「無形にふれる」 ポーラ ミュージアム アネックス(1/18~2/16)
・「アイノとアルヴァ 二人のアアルト 建築・デザイン・生活革命」 ギャラリーA4(~2/27)
・「増田信吾+大坪克亘展」 TOTOギャラリー・間(1/16~3/22)
・「記憶の珍味 諏訪綾子展」 資生堂ギャラリー(1/17~3/22)

まず年明け早々に注目したいのは、2019年に没後500年を迎えたレオナルド・ダ・ヴィンチに関する展覧会です。代官山ヒルサイドフォーラムにて「ダ・ヴィンチ没後500年 夢の実現展」が始まります。



「ダ・ヴィンチ没後500年 夢の実現展」@代官山ヒルサイドフォーラム(1/5~1/26)

これは東京造形大学が、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画を復元した成果を披露するもので、未完を含む、全16点の作品がヴァーチャルの形で展示されます。いずれもダ・ヴィンチ研究で知られる池上英洋(東京造形大学教授)の監修の元、教員や学生ら100名によって約1年間ほど復元作業が行われました。


また同じく未完のブロンズ製騎馬像や、構想段階に留まった巨大建築物や発明品も、縮小模型や3DCGによって再現されます。いわゆる実物の展示ではありませんが、絵画空間へ入り込んだり、機械をVRで動かす体験展示など、まさに夢のあるチャレンジングなダ・ヴィンチ展となりそうです。

意外にも東京の美術館では初の本格的な個展です。東京オペラシティ アートギャラリーにて画家、白髪一雄の展覧会が開催されます。



「白髪一雄」@東京オペラシティ アートギャラリー(1/11~3/22)

戦後日本の前衛芸術を牽引し、具体美術協会のメンバーでもある白髪一雄は、1954年より支持体に足で直接描くフット・ペインティングの制作をはじめ、アクション・ペインターの泰斗として旺盛に活動してきました。


白髪の個展といえば、自ら生前に構想し、亡くなった1年後の2009年に横須賀美術館で行われた「白髪一雄 - 格闘から生まれた絵画」を思い出しますが、約10年ぶりの今回の展示においても、また新たな知見が示されるかもしれません。

ブリヂストン美術館がアーティゾン美術館と名を変えて東京・京橋に誕生します。「開館記念展 見えてくる光景 コレクションの現在地」が開催されます。



「開館記念展 見えてくる光景 コレクションの現在地」@アーティゾン美術館(1/18~3/31)

2015年に建物建て替えのため休館し、今年新たに開館するアーティゾン美術館は、休館中も作品を収集し、コレクションの幅を広げてきました。そして記念すべき開館記念展では、旧館の約2倍の新たな展示スペースにて、新収蔵品31点を含むコレクション作品が一堂に公開されます。


なおアーティゾン美術館では日時指定入場制が導入されたため、予め来館前に入場券を専用サイトで購入する必要があります。改めてサイトを確認したところ、開館を半月後に控えた現段階においても、開館当日の18日も含め、土日、平日ともチケットは購入出来ます。



また予約チケットが完売していない場合は当日チケットも販売されますが、予約(1100円)と当日(1500円)の値段に差があり、事前に確保しておくのが良さそうです。

それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

謹賀新年 2020

新年あけましておめでとうございます。
今年も皆さまにとって素晴らしい一年になりますよう、心からお祈り申し上げます。



全国的に寒いお正月を迎えましたが、いかがお過ごしでしょうか。私は特に遠出もせず、2日以降、近場の博物館や美術館をまわってくるつもりです。

年明けに東京と近郊で新たに開幕する展覧会は以下の通りです。(15日まで)

・「新春特別展 成田山の書画」(1/1~2/16)
・「博物館に初もうで」 東京国立博物館(1/2~1/26)
・「上村松園と美人画の世界」 山種美術館(1/3~3/1)
・「えとの始めは子年から おめでたい神仏画展」 河鍋暁斎記念美術館(1/4~2/25)
・「ダ・ヴィンチ没後500年 夢の実現展」 代官山ヒルサイドフォーラム(1/5~1/26)
・「新収蔵作品展 Present for you」 町田市立国際版画美術館(1/5~2/16)
・「保科豊巳退任記念展 萃点 SUI-TEN」 東京藝術大学大学美術館(1/7~1/19)
・「もうひとつの歌川派?!国芳・芳年・年英・英朋・朋世~浮世絵から挿絵へ/はいからモダン袴スタイル展」 弥生美術館・竹久夢二美術館(1/7~3/29)
・「〈対〉で見る絵画」根津美術館(1/9~2/11)
・「ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター」 Bunkamuraザ・ミュージアム(1/9~3/8)
 「新春だニャン福来たる! 招き猫亭コレクション」 藤沢市アートスペース(1/11~2/2)
・「開館40周年記念 太田記念美術館所蔵 肉筆浮世絵名品展―歌麿・北斎・応為」 太田記念美術館(1/11~2/9)
・「DOMANI・明日2020 傷ついた風景の向こうに」 国立新美術館(1/11~2/16)
・「千田泰広―イメージからの解放」 武蔵野市立吉祥寺美術館(1/11~2/23)
・「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢展」 パナソニック汐留美術館(1/11~3/22)
・「白髪一雄」 東京オペラシティ アートギャラリー(1/11~3/22)
・「祈りの造形 沖縄の厨子甕を中心に」 日本民藝館(1/12~3/22)
・「特別展 出雲と大和」 東京国立博物館(1/15~3/8)

まずは新春に因んだイベントの情報です。新年恒例の「博物館で初もうで」が東京国立博物館にて1月2日から開催されます。


新春名品紹介として長谷川等伯の国宝「松林図屏風」が公開されるのをはじめ、特集「子・鼠・ねずみ」と題し、干支のねずみにまつわる作品が展示されます。

この他、和太鼓や獅子舞の演舞や、ミュージアムショップでのお年玉プレゼント企画なども行われます。なお毎年、多くの人で賑わう「博物館に初もうで」ですが、今年は即位礼正殿の儀に用いられた高御座と御帳台も本館(4室と5室)で公開されているため、より一層混み合うことが予想されます。

1月2日より開館する東京都写真美術館では「トップのお正月」として、2日と3日に限り、「至近距離の宇宙 日本の新進作家 vol.16」と 「山沢栄子 私の現代」が無料で観覧できます。


そして2日と3日の先着100名にオリジナルグッズがプレゼントされる他、4日と5日には雅楽演奏とトークによる「とっぷ雅楽」が行われます。また2日にはミュージアムショップにて福袋も販売されます。(限定30個)


同じく2日より開館する江戸東京博物館では、2日と3日の常設展示室の観覧料が無料になるのをはじめ、2日から5日にかけて「夢からくり一座」の公演や、獅子舞、筝と尺八の演奏、書初め体験などのイベントが多数催されます。


東京国立近代美術館は2日から開館し、同日は所蔵作品展「MOMATコレクション」 と工芸館の「パッション20 今みておきたい工芸の想い」が無料で観覧できます。また美術館、工芸館ともに先着115名にカタログやオリジナルグッズなどがプレゼントされます。


3日より新たに「上村松園と美人画の世界」がスタートする山種美術館では、開館10時より先着100名にプチギフトがプレゼントされ、Cafe椿では甘酒が振る舞われます。またミュージアムショップにて人気アイテムを集めた「新春福袋」も販売されます。(限定50個)


「オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」展を開催中の横浜美術館は3日に開館し、当日来場先着500名にマティスの「赤いキュロットのオダリスク」をデザインしたクリアファイルがプレゼントされます。

それでは今年も「はろるど」をどうぞよろしくお願いします。

*図版は小原古邨「孔雀の羽に白鼠」。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )