「《米谷健+ジュリア展》 だから私は救われたい」 角川武蔵野ミュージアム

角川武蔵野ミュージアムエディット アンド アートギャラリー
「《米谷健+ジュリア展》 だから私は救われたい」
2020/11/6~2021/3/7



角川武蔵野ミュージアムエディット アンド アートギャラリーで開催中の「《米谷健+ジュリア展》 だから私は救われたい」を見てきました。

日本とオーストラリアのアートユニットで夫婦でもある米谷健とジュリアは、社会や環境問題を主題とする作品を制作し、主に海外の芸術祭や展覧会にて活動してきました。

その米谷健+ジュリアによる日本初の大規模な個展が「だから私は救われたい」で、会場では国内初公開の「最後の晩餐」などを含む数点の大型インスタレーションが展示されていました。


「最後の晩餐」 2014年

白く眩しいまでの煌めきに思わず息をのんでしまうかもしれません。一際目立っていたのが「最後の晩餐」で、長いテーブルに燭台やグラス、果実や牡蠣などの食材をモチーフとした白いオブジェが並んでいました。はじめは石膏で作られているのかと思いきや、素材は驚くべきことに塩でした。


「最後の晩餐」 2014年

米谷はオーストラリア東南部のマレー・ダーリング盆地における塩害に着目し、被害を止めるために地下から汲み上げた水を精製した塩を用いて作品を制作しました。同地域は国の最大の食糧生産地であるものの、大規模農業の過度の灌漑によって塩害が進行している上に、高温小雨が続いているため持続的な農業が困難になっているそうです。そのために毎年55万トンもの塩水を汲み上げ、塩分濃度の高い地下水の増加を止めようとしています。


「最後の晩餐」 2014年

また「最後の晩餐」は多くの絵画に表された聖書の一場面として知られていて、例えばレオナルド・ダ・ヴィンチの作品には、裏切り者とされるユダが塩のカップをひっくり返す光景が描かれています。人間が生きるために必要な塩は神聖であるとともに、環境を破壊する力を持つと捉えた米谷は、農業や食の安全性への疑念など踏まえて「最後の晩餐」として表現しました。


「クリスタルパレス:万原子力発電国産業製作品大博覧会」 2012年〜

「クリスタルパレス:万原子力発電国産業製作品大博覧会」も外観からは思いもよらぬ意味を持ちえた作品でした。ここでは大小6つのウランガラスを用いたシャンデリアが宙につられていて、ブラックライトの照射により緑色の美しい光を放っていました。


「クリスタルパレス:万原子力発電国産業製作品大博覧会」 2012年〜

あたかもゴージャスな夜のパーティーへと誘われたような雰囲気を醸していましたが、シャンデリアにはカナダや中国、それにベルギーといった国名が記されていました。一体、何を意味していたのでしょうか。


「クリスタルパレス:万原子力発電国産業製作品大博覧会」 2012年〜

これは2011年の福島第一原発事故を契機に作られた作品で、シャンデリアの大きさに世界の原発保有国32カ国の電力の総出力規模を反映させていました。(そのうちの6点を展示。)

タイトルは1851年の第一回万国博覧会会場の「クリスタルパレス」に由来していて、そこには世界各国が万博で競うのと同じように、今も原発を建てていることが暗示されていました。ウランガラスの妖しいまでの光は、いわば夢のエネルギーとされた原発の一側面を示しているのかもしれません。


「Dysbiotica」 2020年

2020年の最新作の「Dysbiotica」は、米谷は珊瑚の白化現象に注目し、人と動物、それに微生物の共生のあり方について考えた作品で、死んでいく珊瑚と人間を重ね合わせて表現しました。


「大蜘蛛伝説」 2018年

岡山と鳥取県の県境の峠に伝承する蜘蛛の物語をテーマとした、「大蜘蛛伝説」も目立っていたかもしれません。この峠には人を喰らう巨大な蜘蛛が棲んでいたため、藁人形で退治したという言い伝えが残されたことから、「人形峠」の名が付けられました。なお地域一帯では1950年代にウランの採掘が行われていて、本作でも「クリスタルパレス」と同じウランガラスが用いられました。

農業や気候変動、それに原発などから神話や伝承などを行き来した作品は、一見、美しく静謐ながらも、作家の様々な問題意識が強く反映されているのではないでしょうか。「美とユーモアと毒を併せ持つ作品」と解説にありましたが、美の奥底には現代社会へ不安や危うさが見え隠れしているように感じられました。


「本棚劇場」

チケットはWEBでの事前予約制です。「KCM スタンダードチケット」にて本展の他、本棚劇場、エディットタウン-ブックストリート、荒俣ワンダー秘宝館、武蔵野ギャラリーなども観覧することができます。


「角川武蔵野ミュージアム」。壁面に貼り付いているのは鴻池朋子の「武蔵野皮トンビ」。

2月1日より5日までは館内メンテナンスのために臨時休館します。


撮影も可能です。3月7日まで開催されています。

「《米谷健+ジュリア展》 だから私は救われたい」 角川武蔵野ミュージアム エディット アンド アートギャラリー(@Kadokawa_Museum
会期:2020年11月6日(金)~2021年3月7日(日)
休館:毎月第1・第3・第5火曜日(祝日の場合は開館・翌日閉館)。臨時休館日:2021年2月1日(月)~2月5日(金)
時間:10:00~18:00
 *金・土は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1200円、中学・高校生1000円、小学生800円、未就学児無料。
 *完全事前予約制。
 *本棚劇場、エディットタウン-ブックストリート、荒俣ワンダー秘宝館、武蔵野ギャラリーなども観覧可。
場所:埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3
交通:JR線東所沢駅から徒歩約10分。ところざわサクラタウン有料駐車場あり。
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「ポーラ ミュージアム アネックス展2020-主体と客体」 ポーラミュージアムアネックス

ポーラミュージアムアネックス
「ポーラ ミュージアム アネックス展2020-主体と客体」
2021/1/15~2/7



ポーラ美術振興財団が在外研修を助成したアーティストを紹介する展覧会が、ポーラミュージアムアネックスにて開かれています。

美術史家でポーラ美術館館長の木島俊介による監修の元、前後期に分けて計8名のアーティストが取り上げられていて、前期は「主体と客体」をテーマに、伊佐治雄悟、 石川洋樹、谷本めい、脇田常司の作品が展示されていました。


伊佐治雄悟 展示風景

まず目を引いたのは、スウェーデンにて研修を受けた伊佐治雄悟の立体を中心としたインスタレーションで、日用品を素材とした彫刻などが並んでいました。


伊佐治雄悟 展示風景

それらは洗剤のプラスチックボトルであったりプラモデルなどを原型としていて、中にはパッケージに商品名が残されている作品もありました。


伊佐治雄悟 展示風景

また制作プロセスを映した動画もスマートフォンにて紹介されていて、完成した作品と合わせて見ることもできました。作家はドイツの街中で作品を求めて歩くうちに、全てのものが彫刻に見えるという「彫刻酔い」を体験したそうです。元々の日用品が溶けては変容していくような表現も面白いかもしれません。


手前:谷本めい「Ay【Ceramic Drawings #2】」 2020年
奥:「太陽もしくは月」 2020年

セメントや土、金箔にセラミックなどの多様な素材を用いて作品を展開した、谷本めいの作品にも魅せられました。


谷本めい 展示風景

谷本は「Ceramic Drawings」の制作に際し、研修先のトルコの小さな村で出会った土を用いていて、緑色の斑紋が入り混じり、まるで軟体動物のような生き物を思わせる独特の形をした彫刻を生み出していました。


谷本めい「囀る窓」(部分) 2020年

一方で帰国してからは、山口県の方懐石を用いてモザイク画を作っていて、細かな石が渦を巻きつつ抽象的なパターンを描く作品は、まるで古代の地層から発見された遺跡の破片のようにも見えました。また僅かに散りばめられた金箔が放つ光も魅惑的でした。


脇田常司「庭」 2020年

ドイツに派遣された脇田常司の平面の作品も印象深いのではないでしょうか。ここでは戸外の庭の花畑や女性の顔、またカーテン越しの室内か扉のある部屋を連想させる風景が表されていて、一見するところ水彩かクレヨンの絵画のように思えました。


脇田常司「扉」 2020年

しかしよく見ると表面には絵具の厚みは一切なく、キャプションにも「インクジェットプリント」と記されていました。絵画と写真の合間を行き来するような表現も個性的かもしれません。


脇田常司「扉」(部分) 2020年

前期に続く後期は、2月の柏原由佳展を挟んで、3月18日より「自動と構成」をテーマに開催されます。

「ポーラ ミュージアム アネックス展2021 –自動と構成–」
会期:3月18日(木)~4月18日(日)
出展作家:上田暁子、倉和範、花房(鈴木)紗也香、山本しほり


新型コロナウイルス感染症対策から事前予約制が導入されました。但し定員に達していない時間帯は、予約なしで当日の観覧受付が可能です。

2月7日まで開催されています。

「ポーラ ミュージアム アネックス展2020-主体と客体」 ポーラミュージアムアネックス@POLA_ANNEX
会期:2021年1月15日(金)~2月7日(日)
休館:会期中無休。
料金:無料
時間:11:00~18:40 
住所:中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
交通:東京メトロ有楽町線銀座1丁目駅7番出口よりすぐ。JR有楽町駅京橋口より徒歩5分。
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「冨安由真展|漂泊する幻影」 KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場
「冨安由真展|漂泊する幻影」
2021/1/14~2021/1/31



KAAT神奈川芸術劇場で開催中の「冨安由真展|漂泊する幻影」を見てきました。

1983年に生まれた現代美術家の冨安由真は、絵画やインスタレーションを通して、「不可視なものに対する知覚を鑑賞者に疑似的に体験させる作品」(公式サイトより)を制作してきました。

その冨安の新作個展が「漂泊する幻影」で、同劇場のスタジオを廃墟に置き換え、現実と非現実の交錯した「無限迷宮」(解説より)を築いていました。



さてスタジオへの鉄製の扉を開け、もう1つのアンティーク調の木製のドアを開けると、目の前に細く長い廊下が伸びていました。



それは先の木製のドアと同様、年代を感じさせるように古びていて、天井には照明がついていました。そして正面を見据えると突き当たりに人影が見えましたが、すぐに自分の姿であることが分かりました。つまり廊下の正面の壁に鏡が設置されていました。



奥の鏡へ向かって進むと左側に扉があり、開けて中へ入ると、暗く大きな空間が広がっていました。しばらく目が慣れるまでは一体、何が置かれているか判然としませんでしたが、天井から点滅を繰り返すスポットライトにより、カビの生えたようなテーブルやひっくり返った椅子、それに壊れたピアノなどが舞台装置(セット)のように並んでいることが見て取れました。



そうした家具の周囲には、狸や鹿、それにアルマジロやワニなどの動物の剥製が点在していて、何やら我が物顔に闊歩するような様子を見せていました。



さらに朽ち果てたバーカウンターやボロボロのソファーも並んでいて、ホテルの廃墟のような空間が作られていることがわかりました。ただそれぞれのセットは断片的にしかライトで照らされない上、時に視界を遮るかのように暗幕がたなびき、全てを明るい状態で俯瞰することはできませんでした。



ライトの点滅に誘われながら壊れた家具の合間を動いていると、ホテルの廃墟の中を彷徨っているような気持ちにさせられるかもしれません。またあちこちに置かれた動物の剥製は、人間がいなくなった廃墟へ代わりにやって来た住人のようにも思えました。

こうした一連の廃墟のセットと同時に、暗室にて展開するのが、一方の壁のスクリーンへ投影された映像でした。



そこには同じように朽ちたバーカウンターや廊下、ソファーや椅子の並ぶ廃墟の室内が広がっていて、動物の剥製が置かれた様子も映されていました。



ただし映像は途切れ途切れに映されるため、展示室内のセットを一度に見るのが難しいのと同じく、全ての状況を把握するにはしばらく時間がかかりました。また映像とスポットライトが同時に映されることもありませんでした。



ともに断片的に視界が開けるセットと映像を見比べていくと、互いに共通する廃墟のイメージが頭の中で緩やかに繋がっていきました。展示室に広がるインスタレーションは、映像のホテルの一部を取り出して再構成したようにも見えるかもしれません。



この他にもノイズを立てるラジオや時を刻む時計も置かれていて、椅子の下の古ぼけたモニターにはスクリーンと同じような廃墟空間が映されていました。



何度かスクリーンを見ていると、映像の室内の壁に絵画が飾られていることに気がつきました。ただ特にクローズアップされることもなく、まさに忘れられた存在のようにさり気なく映っていました。そして改めて暗室のセットをライトとともに確認すると、映像と同じような椅子や家具こそ置かれているものの、絵画だけは1つもありませんでした。



入って来た扉とは別のドアから部屋を出ると、再び廊下が姿を表しました。廊下には車椅子や灰皿が捨てられたように置かれていて、最初と同じように奥には鏡が設置されていました。ちょうど合わせ鏡のようになっていて、また自分の姿が映り込みました。



廊下の右手にある扉を抜けると暗く小さな部屋が広がっていて、右側の壁には何枚もの絵画が掛けられていました。それらはスポットライトによって交互に照らされていて、今度は同時に全てが明るく映されることもありました。



その絵画には古く壊れた家具が散乱する廃墟化した室内が描かれていて、先ほど見た映像の中の光景と重なり合いました。但し映像と同時に見比べることは物理的に不可能なため、あくまでも記憶の中で擦り合わせることしかできませんでした。



映像、インスタレーション、それに絵画の3つの要素から、1つのホテルの廃墟が「無限迷宮」のように築かれているようで、一体どれが現実で非現実であるのか分からなりました。またそれぞれ同じような廃墟でありながらも、朽ちた程度がわずかに異なっているようにも感じられて、あたかも別の時間が流れているかのようでした。



一見、リアルなように思える映像の廃墟も、ともすれば展示室内のセットや絵画に描かれた室内を再現した架空の空間なのかもしれません。まさに冨安の「曖昧なもの・不確かなもの」(解説より)を表現した場に投げ込まれ、何が幻影なのかも判然とせず、その中を永遠に漂泊しているような気持ちにさせられました。

劇場空間を活かして、スポットライトを用いた展示も効果的だったのではないでしょうか。映像や絵画には一切の人物は登場しませんが、鑑賞者の動きや足音までも演出の一部として取り込んでいるかのようでした。



会場は一方通行でした。扉から廊下、暗室の展示室、そして廊下を経て絵画の部屋へと順路が続いていました。また全て見終えた後に二巡以上することも可能ですが、混雑時はこの限りではありません。



近年、人気を高めている冨安の個展ゆえか、土日を中心に多くの来場者を集め、既に一部の時間帯において数十分待ちの入場規制が行われました。そもそもスペースの都合や作品の性格上、一度に多くの人が鑑賞できません。会期最終週にあたる次の土日は相当に混雑することが予想されます。実際に一昨年の資生堂ギャラリーでの個展も会期後半は長蛇の列となりました。

私は運よく平日の夕方に入場したために人も疎らでした。タイトなスケジュールだけに難しいかもしれませんが、なるべく平日の観覧をおすすめします。


予約は不要です。1月31日まで開催されています。*写真は「冨安由真展|漂泊する幻影」会場風景。撮影が可能です。

「冨安由真展|漂泊する幻影」 KAAT神奈川芸術劇場@kaatjp
会期:2021年1月14日(木)~2021年1月31日(日) 
休館:会期中無休
時間:10:00~18:00 
料金:一般800円、学生・65歳以上500円、高校生以下無料。
 *10名以上の団体は100円引き無料。
住所:横浜市中区山下町281
交通:みなとみらい線日本大通り駅3番出口より徒歩約5分。JR線関内、石川町両駅より徒歩約15分。
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「阪本トクロウ|デイリーライブス」 武蔵野市立吉祥寺美術館

武蔵野市立吉祥寺美術館
「阪本トクロウ|デイリーライブス」
2021/1/9~2/28



武蔵野市立吉祥寺美術館で開催中の「阪本トクロウ|デイリーライブス」を見てきました。

1975年に生まれて日本画を学んだ阪本トクロウは、身近な風景を撮影した写真を元に描いた風景画などで人気を集めてきました。

その坂本の新旧作からなる個展が「デイリーライブス」で、2006年から2019年までの絵画、29点が展示されていました。


「呼吸」 2007年

まず阪本の代表的なシリーズとして知られるのが、日常の何気ない一コマを切り取った「呼吸」でした。そのうちの1つでは広い空の下、集合住宅のバルコニーが真正面からトリミングするように描かれていて、淡く白い光に包まれていました。


「呼吸」 2010年

さらに道路を坂道の下から見上げた景色であったり、家屋の勝手口と思しき扉をやはり正面から捉えていて、誰もがどこかで見かけるような日常が記録されていました。


「呼吸」 2008年

とはいえ、いずれも無人の光景が広がっていて、しばら目にしていると白昼夢を見ているような錯覚に囚われました。こうした一見、リアルな景色でありながら人の気配がなく、シンプルでかつ時に幾何学的な構図として浮かび上がるのも阪本の作品の魅力と言えるのかもしれません。


「呼吸」 2014年

一連の「呼吸」の中で特に印象に残ったのが、白い椅子が黒いテーブルを囲んだ室内を描いた作品でした。一面の白い室内の正面左手にはドアがあり、上部には非常口のプレートなどが設置されていて、オフィスビルの会議室のような空間が見てとれました。

ただここでも不在が強く意識されているように感じられて、この部屋に人がやってくることが想像もつきませんでした。解説に「淡白で中心性のない空虚感を描く」とありましたが、特定の場所や物語を想起させず、ただ空間のみを捉えているのも作品の特徴かもしれません。


「夜景」 2011年

「夜景」は暗がりの夜空に広がる都市を描いた作品で、マンションや家々、それに高層ビルからは無数の灯が漏れていました。画面の9割近くを空が占めていて、遠くまでを見渡せる光景ゆえか、空気が澄み切って冷え込んだ東京の真冬を思わせるものがありました。


「水面」 2016年

一方で「地図」や「水」のシリーズは、オールオーバーと受け取れるような作品で、線や形がせめぎ合う光景は抽象的に映りました。


「weave」 2019年

さらに近作の「weave」に至っては、水の中で揺らぐ波紋のような光景が広がっていて、より自由な造形感覚を見ることができました。実際に近年は水面のイメージだけでなく、水面の現象を写す「墨流し」と呼ばれる技法を用いているそうです。


「白」 2019年

「weave」と同じ2019年の作品である「白」に目を奪われました。海を背にした砂浜の海岸線が横一線に広がっていて、砂浜の上には物置やドラム缶、さらには車輪のついた家などが並んでいました。


「白」(部分) 2019年

何気ない海岸のようでありながら、現実ではありえない光景のようで、どこかシュールにも思えました。マグリットの絵画のイメージも思い浮かぶかもしれません。


「エンドレスホリディ」 2008年

白い空間へ公園の遊具のみを描いた「エンドレスホリディ」にも心惹かれました。遊具の下に僅かな影があることから、地面の上に立っていることは分かるものの、まるで風船が浮いているようにも見えました。また一抹の寂寞感も漂っているようで、平穏な日常に潜む不安や孤独が滲み出ているようにも思えました。


「呼吸」(部分) 2010年

アクリルと麻紙が生むマットな質感も魅力かもしれません。目を凝らして浮かぶ細かなモチーフにも見入りました。


新型コロナウイルス感染症対策のため、入場時にマスクの着用と検温、さらに連絡先の記入が必要です。

2月28日まで開催されています。

「阪本トクロウ|デイリーライブス」 武蔵野市立吉祥寺美術館@kichi_museum
会期:2021年1月9日(土) ~ 2月28日(日)
時間:10:00~19:30
休館:1月27日(水)、2月17日(水)、24日(水) 。
料金:一般300円、中高生100円、小学生以下・65歳以上無料。
住所:武蔵野市吉祥寺本町1-8-16 コピス吉祥寺A館7階
交通:JR線・京王井の頭線吉祥寺駅中央口(北口)から徒歩約3分。
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「大山エンリコイサム展 夜光雲」 神奈川県民ホールギャラリー

神奈川県民ホールギャラリー
「大山エンリコイサム展 夜光雲」
2020/12/14~2021/1/23



神奈川県民ホールギャラリーで開催中の「大山エンリコイサム展 夜光雲」を見てきました。

1983年に東京で生まれ、ニューヨークを拠点にする大山エンリコイサムは、モノクロームによる絵画や立体を制作しながら、自身の影響を受けたストリート文化に関する著作を発表するなどして幅広く活動してきました。

その大山の過去最大級の作品などで構成したのが「夜光雲」と題した個展で、平面から立体、さらにはサウンドインスタレーションが公開されていました。


「レタースケープ」 地下第2展示室

まず冒頭に展示されていたのは「レタースケープ」で、遠目からでは一枚の長い紙に無数の書き込みが見られる作品でした。


「レタースケープ」(部分)

実際には江戸時代に墨と筆で書かれた出納帳と、19世紀末から20世紀後半にかけて世界からニューヨークに送られた手紙をコラージュしたもので、墨の流麗な文字と手紙に記された様々な言語が断片的に連なっていました。

また地の紙もちぎり絵のような複雑なパターンを描いていて、文字をつなぎ合わせつつ、一方で引き裂くように展開していました。紙と文字の揺らぐような関係も面白いのではないでしょうか。

続くのは大山の代表的な制作である「クイックターン・ストラクチャー」による連作、「FFIGURATI」でした。


「FFIGURATI」 地下第3展示室

これはストリートアートの中心的な分野である「エアロゾル・ライティング」の視覚言語から文字の形を取り除き、抽象的な形として再構成した作品で、鋭い牙のような太い描線が踊るように展開していました。なお「エアロゾル・ライティング」とは、エアロゾル塗料をスプレーで壁面に図像などを描くストリートアートを意味します。(神奈川芸術プレス vol.156より)


「FFIGURATI」

白と黒による面は空間を切り刻んでいくようで、それ自体が意思を持って運動しているかのようでした。まるで何らかの概念を象るエンブレムのように見えるかもしれません。


「Cross Section」 地下第4展示室

こうした平面とは一転し、巨木を前にしたかのように重量感に満ちていたのが「Cross Section」と題した立体の作品でした。


「Cross Section」

「Cross Section」はスタイロファームと呼ばれる建築資材を約200枚重ねて、熱線カッターで切り落としたもので、鋭利な刃物で刻み込まれたような断面が見られました。


「Cross Section」

一枚一枚の資材が積み重なっては天井付近にまで達していて、時に斜めへ屈曲するように起立していました。しばらく眺めていると、あたかも展示室へと闖入し、いつしか姿形を歪ませながら変容する未知の有機物のようにも思えました。

さてギャラリーで最大の1300平米のスペースに展開していたのは、過去最大級の作品でもある「FFIGURATI(アンストレッチドキャンバス)」でした。


「FFIGURATI(アンストレッチドキャンバス)」 地下第5展示室

ここでは5枚の巨大な絵画が高さを変えて展示されていて、いずれもが即興的でかつスピーディーな線が重ねられていました。また全ての絵画は枠に貼らず剥き出しの状態に置かれていて、飛び散った墨が床にまで滴り落ちていることもありました。


「FFIGURATI(アンストレッチドキャンバス)」

そして暗がりの展示室ゆえか、あたかも作品が宇宙に浮かぶ星のようにも輝いていて、全体で1つの壮大なインスタレーションを築いていました。


「FFIGURATI(アンストレッチドキャンバス)」

この広いスペースに5点の絵画は少なく感じるかもしれませんが、大山はあえて「物量で埋めるのではなく、空間に対する適度な量」(神奈川芸術プレス vol.156より)を意図して作品を制作しました。また日本式庭園や禅の思想を踏まえるべく、鎌倉や京都の禅寺に取材したそうです。


「FFIGURATI(アンストレッチドキャンバス)」

複雑怪奇な線の動きは変幻自在で、何やら深い情念が憑依しているような雰囲気も感じられなくはありません。モノクロームの世界ながらも渦巻く熱気を浴びるかのようでした。


「エアロミュラル」 1階第1展示室

ラストのサウンドインスタレーションである「エアロミュラル」に魅せられました。絵画や立体作品が一切展示されていないホワイトキューブの床には、ただスピーカーのみがいくつか置かれていて、エアロゾル塗料の噴射音が鳴っていました。


「エアロミュラル」

これは壁にかかれる線を音として空間に表現したもので、いわば「音の壁画」(解説より)を築いていました。当然ながら噴射音は一定ではなく、場所などによって終始変化していて、線や面の動きが示されていました。

線や面の広がりを自由に想像する体験は思いの外に刺激的で、しばし目を閉じては音に聞き入りました。まさに鑑賞者に感性を委ね、想像力を膨らませる作品と言えるかもしれません。


「スノーノイズ」 1階第5展示室バルコニー

大山にとって雲とは、形が定まらず流動的であり、また無名性を持つことから、自らの美術に通じるものがあると考えているそうです。


「FFIGURATI(アンストレッチドキャンバス)」

それを踏まえて「FFIGURATI(アンストレッチドキャンバス)」を見ると、いつしか地球上で最も高い高度に発生するとされる「夜光雲」の神秘的な姿を眺めているような気分にさせられました。



新型コロナウイルス感染症対策に伴い、マスクの着用と検温のほか、神奈川県「LINEコロナお知らせシステム」への登録か入館カードに連絡先を記入する必要があります。

1月23日まで開催されています。

「大山エンリコイサム展 夜光雲」 神奈川県民ホールギャラリー@kanaken_gallery
会期:2020年12月14日(月)~2021年1月23日(土)
休館:12月17日(木)、24日(木)、28日(月)、1月7日(木)、年末年始(12月30日~1月4日)
時間:10:00~18:00 *入場は閉場の30分前まで。
料金:一般800円、学生・65歳以上500円、高校生以下無料。
住所:横浜市中区山下町3-1
交通:みなとみらい線日本大通り駅3番出口より徒歩約6分。JR線関内、石川町両駅より徒歩約15分。横浜市営地下鉄関内1番出口より徒歩約15分。
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「眠り展」 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館
「眠り展:アートと生きること ゴヤ、ルーベンスから塩田千春まで」
2020/11/25~2021/2/23



東京国立近代美術館で開催中の「眠り展:アートと生きること ゴヤ、ルーベンスから塩田千春まで」を見てきました。

人間が生きていく上で欠かせない眠りは、古今東西の美術においても多様に表現されてきました。

そうした眠りと美術との関係を紐解くのが「眠り展」で、ゴヤやクールベなどの西洋美術にはじまり、河原温や河口龍夫、塩田千春などの現代美術の作品が展示されていました。


右:ギュスターヴ・クールベ「眠れる裸婦」 1858年 国立西洋美術館

まず冒頭の序章「目を閉じて」では、クールベの「眠れる裸婦」やルーベンスの「眠る二人の子供」などが展示されていて、眠りが西洋絵画においてもよく見られる主題であることが見てとれました。と同時に、現代美術家の河口龍夫が闇の中で鉄製の箱へ闇を閉じたとする「DARK BOX」も並んでいて、眠りが今も美術家にインスピレーションを与えていることが感じられました。


序章「目を閉じて」会場風景

このように西洋の古典と現代の作品とが時にないまぜになっているのが特徴で、時間や場所を行き来しながら、多様に表現された眠りのあり方を目の当たりにできました。

端的に癒しや休息ではなく、夢と現実、生と死、それに目覚めなど、眠りにまつわる多面的な諸相を追っているのも、今回の展覧会の見どころと言えるかもしれません。


楢橋朝子「half awake and half asleep in the water」 2004〜2005年 東京国立近代美術館

「水の中で半ば目覚め、半ば眠っている状態」を意味した楢橋朝子の「half awake and half asleep in the water」シリーズは、作家が日本各地の海や湖に入っては、水面すれすれでシャッターを切って制作した写真で、水面と景色が揺らぐような光景が広がっていました。ここに夢うつつの中で水に沈んでいくような感覚が表れていて、水によって狭まれた視界が微睡んだ時に見える光景のようにも思えました。


ジャオ・チアエン「レム睡眠」 2011年 国立国際美術館

3面のスクリーンのよるジャオ・チアエンの「レム睡眠」は、18名の男女が夢で見たことを語る映像で、多くは外国で介護職で働く女性であることから、故郷の様子などを切々と振り返っていました。一見、腰掛けて眠っているようでありながら、おもむろに目を開けては語る様子も印象的で、眠りと現実を無限に行き来しているかのようでした。


小林孝亘「Pillows」 1997年 国立国際美術館

小林孝亘の「Pillows」は文字通り枕をモチーフとした絵画で、ちょうどベットの上から枕を正面に見下ろすように描いていました。白い枕は弾力を帯びているように膨らんでいて、さも寝心地が良さそうにも見えましたが、無人のベットは死を連想させるものがありました。


河口龍夫「関係ー種子、土、水、空気」 1986〜89年 東京国立近代美術館

麦や梨など30種類の植物の種子を30枚の鉛の板に閉じ込め、壁にかけたのが河口龍夫の「関係ー種子、土、水、空気」でした。河口はチェルノブイリ原発事故に触発され、植物の種子を鉛や蜜蝋で保護する作品を制作していて、同作においては床の真鍮やアルミの管に種子を発芽させるための水や空気などを詰め込みました。それこそ種子を眠りから目覚めへと誘う装置とも呼べるかもしれません。


森村泰昌「烈火の季節/なにものかへのレクイエム (MISHIMA)」 2006年 東京国立近代美術館

森村泰昌の映像「烈火の季節/なにものかへのレクイエム (MISHIMA)」も目立っていたのではないでしょうか。ここでは三島由紀夫に扮した森村がバルコニーに立ち、人々へ「静聴せよ」と勇ましく呼びかけていましたが、聴衆は目覚めているはずにもかかわらず眠っているように反応していませんでした。


「眠り展」会場風景

トラフ建築設計事務所による会場デザインや、平野篤史(AFFORDANCE)のグラフィックデザインも見どころと言えるかもしれません。会場内には寝室のカーテンを思わせる布が吊るされていて、夢うつつを連想させるような文字デザインなどを含め、眠りの世界へと誘うような仕掛けがなされていました。


石井茂雄「戒厳状態」 1956年 東京国立近代美術館

とはいえ、感性を呼び覚ますような刺激的な作品や、眠りと意外な接点を持つ作品も少なくなく、発見の多い展覧会でもありました。


ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ「貧しき漁夫」 1887〜1892年 国立西洋美術館

館内整備のため長期休館中の国立西洋美術館からシャヴァンヌの「貧しき漁夫」もやって来ていました。「眠り展」の全ての作品は国内の6つの国立美術館(東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立西洋美術館、国立国際美術館、国立新美術館、国立映画アーカイブ)で構成されていて、「陰影礼讃」(2010年)、「No Museum,No Life?ーこれからの美術館事典」(2015年)に続く、国立美術館合同展の第3弾として企画されました。


金明淑「ミョボン」 1994年 東京国立近代美術館

新型コロナウイルス感染症対策に伴い、来館日時を予約する日時指定制が導入されました。但し会場窓口においても当日券が販売されています。


会場内の一部作品を除き撮影も可能です。2月23日まで開催されています。

「眠り展:アートと生きること ゴヤ、ルーベンスから塩田千春まで」 東京国立近代美術館@MOMAT60th
会期:2020年11月25日(木)~2021年2月23日(火・祝)
時間:10:00~17:00。
 *1/15以降の金曜・土曜の夜間開館は当面休止。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し1月11日(月)は開館し、翌12日(火)は休館。
料金:一般1200(1000)円、大学生600(500)円、高校生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *当日に限り所蔵作品展「MOMATコレクション」も観覧可。
住所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
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「日本のたてもの―自然素材を活かす伝統の技と知恵」 東京国立博物館・ 表慶館

東京国立博物館・ 表慶館
「日本のたてもの―自然素材を活かす伝統の技と知恵」
2020/12/24~2021/2/21



東京国立博物館・ 表慶館で開催中の「日本のたてもの―自然素材を活かす伝統の技と知恵」を見てきました。

日本の伝統的な建築物は、近代以降に文化財建造物修理事業の一環として、主に10分の1サイズの模型としても制作されました。

そうした模型を紹介したのが「日本のたてもの」で、会場では古代から中世に至る仏堂、城郭、門、神社、住宅などの模型が約20点ほど展示されていました。


「日本のたてもの」展示風景 

まず冒頭で目を引いたのが、「法隆寺五重塔」や「石山寺多宝塔」などの塔婆建築でした。日本には仏教とともに朝鮮半島から伝わったとされていて、法隆寺の五重塔と法起寺の三重塔を最古とし、以来、ほぼ三重か五重塔として築かれてきました。


「法隆寺五重塔」(内部) 1/10模型 1932年制作 東京国立博物館 原建築:国宝 飛鳥時代 奈良県斑鳩町

そのうちの「法隆寺五重塔」は、戦前から半世紀に及んだ大修理に先立ち、1932年に現状模型として制作されたもので、よく見ると一部の内部空間も細かに再現されていました。


「今西家住宅」 1/10模型 1971年制作 国立歴史民俗博物館 原建築:重要文化財 1650(慶安3)年 奈良県橿原市

今回の展覧会で特に興味深いのは、建物を二分した模型、つまり分割模型があることでした。例えば17世紀の奈良県橿原市の「今西家住宅」では、ちょうど建物の真ん中の部分が分かれていて、さながら断面図のように内部構造を見ることができました。


「大仙院本堂」 1/10模型 1969年制作 国立歴史民俗博物館 原建築:国宝 1513(永正10)年 京都府京都市

臨済宗大徳寺の塔頭で16世紀に築かれた「大仙院本堂」も同様に二分されていて、左右に分かれた室内を目の当たりにできました。


「大仙院本堂」(部分) 1/10模型 1969年制作 国立歴史民俗博物館 原建築:国宝 1513(永正10)年 京都府京都市

さらに同本堂の模型では、内部の障屏画や庭園までもが細かに再現されていて、端的な模型というよりもジオラマを前にしたような臨場感がありました。

このように建物外観だけでなく、内部構造に着目を当てていたのも展覧会の大きな見どころと言えるかもしれません。暗がりの内部を映すような照明にも工夫がありました。


「東福寺山門」 1/10模型 1979年制作 国立歴史民俗博物館 原建築:国宝 1405(応永12)年 京都府京都市

一連の模型の中で建築物としての迫力を感じたのは、室町時代中期に遡る「東福寺山門」でした。1979年に分割模型として作られたもので、木が組み合わさる構造なども見事に表現されていました。


「松本城天守」 1/20模型 1963年制作 東京国立博物館 原建築:国宝 安土桃山時代 長野県松本市

長野県松本市の「松本城天守」は1963年、解体修理の成果をもとに制作された20分の1の分割模型で、五重六層に連なった堂々たる威容を見ることができました。


「如庵」 1/5模型 1971年制作 国立歴史民俗博物館 原建築:国宝 1618(元和4)年頃 愛知県犬山市

一方で小さな建物ながら極めて魅力的に感じたのが、17世紀に織田有楽斎が建てた茶室である「如庵」でした。


「如庵」(部分) 1/5模型 1971年制作 国立歴史民俗博物館 原建築:国宝 1618(元和4)年頃 愛知県犬山市

1972年の移築修理に先立って制作された5分の1の模型で、正面から左右、そして内部まで変化に富んだ意匠を360度の角度から鑑賞できました。

この他では「建築物装飾」や「建具製作」など、歴史的建築物を保存修理するために必要な「選定保存技術」を紹介したパネル展示も充実していたのではないでしょうか。そしてこれらの技術は2020年12月、日本の「伝統建築工匠の技」としてユネスコの無形文化遺産に登録されたそうです。


「首里城正殿」 1/10模型 1953年制作 沖縄県立博物館・美術館 原建築:18世紀前半建築(1945年焼失) 沖縄県那覇市

メイン会場の表慶館とは別に、平成館1階のガイダンスルームでは、18世紀前半に建てられ、沖縄戦で失われた首里城正殿の模型も展示されていました。同正殿は戦後再建され、沖縄のシンボルとして知られてきましたが、2019年に火災により無残にも焼失してしまいました。


「慈照寺東求堂」 1/10模型 1970年制作 国立歴史民俗博物館 原建築:国宝 1484(文明18)年 京都府京都市

「日本のたてもの―自然素材を活かす伝統の技と知恵」は3会場制です。

・「古代から近世、日本建築の成り立ち」 東京国立博物館・表慶館 2020年12月24日~2021年2月21日
・「近代の日本、様式と技術の多様化」 国立科学博物館・日本館1階(企画展示室) 2020年12月8日~2021年1月11日
・「工匠と近代化―大工技術の継承と展開」 国立近現代建築資料館 2020年12月10日~2021年2月21日

それぞれ「古代から近世、日本建築の成り立ち」、「近代の日本、様式と技術の多様化」、「工匠と近代化―大工技術の継承と展開」とテーマを設定し、東京国立博物館・表慶館、国立科学博物館・日本館1階(企画展示室)、国立近現代建築資料館にて開かれています。


「仁科神明宮」 1/10模型 1973年制作 国立歴史民俗博物館 原建築:国宝 江戸中期 長野県大町市

既に国立科学博物館は会期を終えましたが、開催中の国立近現代建築資料館も都立旧岩崎邸庭園の臨時休園に伴い、2月7日までの土日が臨時休館となりました。お出かけの際はご注意下さい、


「東大寺鐘楼」 1/10模型 1966年制作 東京国立博物館 原建築:国宝 1207〜1211年(承元年間) 奈良県奈良市

オンラインでの事前予約制が導入されました。但し定員に達していない場合は当日受付もできます。


一部を除き撮影が可能です。2月21日まで開催されています。

「日本のたてもの―自然素材を活かす伝統の技と知恵」 東京国立博物館・ 表慶館(@TNM_PR
会期:2020年12月24日(木)~2021年2月21日(日)
時間:9:30~17:00。
 *金・土曜の夜間開館は当面休止。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し1月11日(月)は開館し、翌12日(火)は休館。
料金:一般1500円、大学生1000円、高校生600円。中学生以下無料。
 *当日に限り総合文化展も観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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「田中一村展―千葉市美術館収蔵全作品」 千葉市美術館

千葉市美術館
「田中一村展―千葉市美術館収蔵全作品」
2021/1/5~2/28



千葉市美術館で開催中の「田中一村展―千葉市美術館収蔵全作品」を見てきました。

1908年に栃木県で生まれ、千葉で20年ほど暮らした田中一村は、50歳にて奄美大島へと移住すると、南国の花鳥や風土を題材にした日本画を制作しました。

それらの作品は生前に表立って公表されることがなく、1977年にほぼ無名のままに没したものの、後にテレビ番組で取り上げられるなどして注目を集め、数多くの展覧会が開かれてきました。

一村の再評価を決定づけたのが、2010年に千葉市美術館や鹿児島市立美術館、また田中一村記念館で開かれた回顧展「田中一村 新たなる全貌」でした。同展では初期から奄美時代までの作品を250点も集め、一村の画業を時代別に丹念に辿っていて、大勢の来館者を記録するなどして反響を得ました。

以来、約10年の間に千葉市美術館には一村の作品が寄託を含め100点を超え、2018年度には千葉で一村を支援した川村家から残りの資料などの寄贈を受けました。


そうした同館の一村のコレクションを初めて一堂に展示したのが「田中一村展―千葉市美術館収蔵全作品」で、絵画、彫刻、写真の130点に加え、書簡や書籍、合わせて特別出品の絵画などが並んでいました。

さて前回の「田中一村 新たなる全貌」では奄美時代の作品をかなり網羅していましたが、今回の一村展で重点が置かれているのは奄美以前、特に千葉での制作でした。

一村が千葉市に移ったのは1938年のことで、その後20年に渡って農作業をしながら、同地の風景や動植物を描きました。この時期の一村で目立つのは色紙サイズの小さな作品で、千葉寺の近郊の里山などが牧歌的に捉えられていました。

何かと孤高の存在と捉えがちの一村でありながら、千葉では地元の展覧会に出品したり、川端龍子の主催した青龍展で入選するなど、公募展での活動も行っていました。また天井画の依頼を受けたり、旅先で見た風景を色紙に描いたりしていて、戦後の一時期に集中的に取り込んだ軍鶏の作品や写真肖像画の仕事も目を引きました。

「仁戸名蒼天」は千葉の一村の支援者に応じて描いた作品で、広い青空の下の丘に生茂る林を写していました。ここで興味深いのは上辺が緩やかな弧を描いていることで、盛り上がるような岩絵具の質感は油彩と見間違うほどでした。

1958年、50歳になった一村は千葉を去り、奄美大島の名瀬に移り住むと、染色工として働きながら南国特有の動植物を独自の画風で描きました。



ここでハイライトを飾っていたのは、海辺に一本のアダンが茂る光景を描いた「アダンの海辺」でした。アダンの樹木の強調された近景と、彼方へ永遠に続くような海とが対比的な表現をとる作品で、一村の代表作の1つとして知られてきました。アダンの葉や実は植物でありながら、どこか熱気を帯びているようにも見えて、類い稀な生命感に満ちていました。

「アダンの海辺」を取り囲むように並んでいたたのが、色紙に描かれた「奄美風景」などの小品でした。それらは「アダンの海辺」に開けた南国の景色と呼応するように展開していて、あたかも来場者を奄美の場へと誘うかのようでした。

この他では若き一村の描いた「椿図屏風」も目を引くのではないでしょうか。金地に白や紅色の椿を細密に描いていて、花と葉が絡み合うような姿は妖艶にすら感じられました。後の奄美時代の一村画のような濃厚な描写を彷彿させるかもしれません。

ラストの田中一村のアーカイブ展示が充実していました。過去に一村を取り上げた展覧会のポスターやカタログなどが一堂に並んでいて、一村がどのように国内で受容されたのかを一覧することができました。


新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言発出のため、毎週金曜日と土曜日の夜間開館は中止となりました。また事前予約は不要ですが、混雑状況に応じて入場制限を行うそうです。

2月28日まで開催されています。

「千葉市美術館拡張リニューアルオープン・開館25周年記念/千葉市制100周年記念/川村コレクション受贈記念 田中一村展―千葉市美術館収蔵全作品」 千葉市美術館@ccma_jp
会期:2021年1月5日(火)~2月28日(日)
休館:1月18日(月)、2月1日(月)。
時間:10:00~18:00。
 *入場受付は閉館の30分前まで
 *金・土曜日の夜間開館は中止。
料金:一般600(480)円、大学生400(320)円、高校生以下無料。
 *( )内は前売り、市内在住の65歳以上の料金。
 *5階常設展示室「千葉市美術館コレクション名品選2020」も観覧可。
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口よりC-bus(バスのりば16)にて「中央区役所・千葉市美術館前」下車。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
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「博物館に初もうで 2021」 東京国立博物館

東京国立博物館
「博物館に初もうで 2021」
2021/1/2~1/31



2003年から東京国立博物館で開かれている「博物館に初もうで」は、今年で18年目を数えるに至りました。

今年の干支である丑に因み、牛に因んだ作品の特集「ウシにひかれてトーハクまいり」や、新春を飾るのに相応しい吉祥的な作品が公開されていました。

まず「ウシにひかれてトーハクまいり」では、牛をモチーフとした作品を、信仰や暮らし、それに牛車と王朝美などの観点から紹介していました。


森徹山「牛図屏風」 江戸時代・19世紀

森徹山の「牛図屏風」は銀地へ茶と黒の牛を互い違いに描いた作品で、黒牛は伏して彼方を眺める一方で、茶色の牛は黒牛を横目で見やるような仕草をしていました。写実的な表現が充実していて、牛の重量感までもがひしひしと伝わってきました。


「牧童水滴」 江戸時代・17〜18世紀

江戸時代に多く作られた動植物を象った水滴においても、牛は重要なモチーフの1つでした。そのうち「牧童水滴」では牛に乗る子どもの姿を巧みに捉えていて、牛はこちらを見やりながら足を休めていました。こうした柔らかな造形は、鋳造の原型を手捻りで制作することで生み出されたそうです。


「駿牛図断簡」 鎌倉時代・13世紀 重要文化財

牛車を引く牛を描いた絵巻の断簡として残されたのが、鎌倉時代に遡る「駿牛図断簡」でした。墨を重ね、細かな筆で脚などを描いた表現は大変に緻密で、後ろを振り返る一瞬の姿を見事に写していました。小さな画面ながらも、これほど牛が生き生きと感じられる作品も少ないかもしれません。


「片輪車蒔絵螺鈿手箱」 平安時代・12世紀 国宝

この牛車の車輪のみを全面に蒔絵として表したのが、平安時代後期を代表する名品である「片輪車蒔絵螺鈿手箱」でした。水に浸された車輪はあたかも流れに乗って回転するかのようで、雅やかな雰囲気を醸し出していました。


「三彩牛車・馭者」 中国・唐時代・7世紀

中国の唐の「三彩牛車・馭者」も興味深い作品かもしれません。これは墳墓に副葬するための明器として制作されたもので、車輪の形や人物の表現が隋の時代に近いことから、唐三彩としては早い段階の作例として知られてきました。


「袱紗 薄紅繻子地騎牛笛吹童子図」 江戸時代・18〜19世紀

この他では色鮮やかな「袱紗」や鈴木春信の「見立巣父」も魅惑的ではないでしょうか。牛は古くから信仰の対象でもあり、また農耕や輸送の労働力でもあったゆえに人間の生活と深く関わっていて、絵画や工芸でも多様に表現されてきました。


任清、「任清」印「色絵月梅図茶壺」 江戸時代・17世紀 重要文化財

さて本館では「ウシにひかれてトーハクまいり」以外においても、松竹梅や鶴亀、また富士山などの慶事の意匠を象った作品が展示されていて、お正月気分を味わうことができました。


長谷川等伯「松林図屏風」 安土桃山時代・16世紀 国宝

そのうち恒例ともいえるのが国宝室で公開された長谷川等伯の「松林図屏風」でした。同作は昨年秋の「特別展 桃山」でも展示されたばかりでしたが、心なしか国宝室では松林がより深い霧に包まれていて、幽玄な佇まいが強く滲み出しているように感じられました。


伊藤若冲「松梅群鶏図屏風」 江戸時代・18世紀

鶏のを躍動感あるタッチで描いた伊藤若冲の「松梅群鶏図屏風」も見応えがあったのではないでしょうか。鶏は時に大見得を切るように勇ましい立ち姿を披露していて、まさに「鶏の画家」で名高い若冲の真骨頂ともいえるような表現を見せていました。


「もう隠」印「花鳥図屏風」 室町時代・16世紀

「もう隠」なる印が記された「花鳥図屏風」にも魅せられました。中央に水辺の広がる水墨を背景に、孔雀や金鶏、牡丹や紅椿などが実に色彩豊かでかつ極めて緻密に描かれていました。


「もう隠」印「花鳥図屏風」(部分) 室町時代・16世紀

細部の描写や水墨と色彩のコントラストも絶妙で、近くによって目を凝らすほど、画中の世界に引き込まれるような感覚に囚われました。なお「もう隠」とは、狩野元信の弟の之信とする説が有力であるそうです。


伝土佐光信「松図屏風」 室町時代・16世紀 重要文化財

オンラインでの事前予約制が導入されました。但し事前予約の枚数に空きがある場合は、当日窓口でもチケットを予約することが可能です。



新型コロナウイルス感染症対策に伴い、金曜と土曜日の夜間開館は当面休止となりました。また恒例の獅子舞や和太鼓の演舞も取りやめになり、「博物館に初もうで」のカレンダーの配布も実施されませんでしたが、代わりにPDF版を同館のWEBサイトよりダウンロードすることができます。


1月31日まで開催されています。*「松林図屏風」は1月17日までの公開。

「博物館に初もうで 2021」 東京国立博物館@TNM_PR
会期:2021年1月2日(土) ~1月31日(日)
時間:9:30~17:00。
 *金・土曜の夜間開館は当面休止。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し1月11日(月)は開館し、翌12日(火)は休館。
料金:一般1000円、大学生500円。
 *特別展「日本のたてもの」のチケットでも観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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新型コロナウイルスへの対応に伴う「美術館・博物館」休館情報  第十報

第一報(2020年3月2日)、第二報(2020年3月9日)、第三報(2020年3月16日)、第四報(2020年3月24日)、第五報(2020年4月1日)、第六報(4月9日)、第七報(2020年5月2日)、第八報(2020年6月2日)、第九報(2020年6月25日)に続きます。新型コロナウイルス感染症への対応に伴う、一都三県(東京・神奈川・埼玉・千葉)の主な美術館と博物館の休館情報をまとめてみました。

最新の情報は→新型コロナウイルスへの対応に伴う「美術館・博物館」休館情報 第十四報(2021年6月1日現在)



年末年始にかけて新型コロナウイルスの感染が急拡大し、1月7日、政府により一都三県へ緊急事態宣言が再発出されました。それに伴って夜間開館を中止したり、臨時休館する美術館や博物館が出ています。

【臨時休館中の美術館】

・出光美術館 長期休館中
・NTTインターコミュニケーション・センター  長期休館中
・埼玉県立近代美術館 12/24~2/7休
 「上田薫」 ~1/11 開催中止
・埼玉県立歴史と民俗の博物館 12/24~2/7休
 「特別展 銘仙」 1/2~ 開催延期
・台東区立朝倉彫塑館 12/26~当面休館
 「Enjoy sports 朝倉文夫の1964年」 ~3/7 展示休止
・ちひろ美術館・東京 1/2~当面休館
 「子どもの心を見つめて いわさきちひろ展」 ~1/31 展示休止
・市原市湖畔美術館 1/9~2/7休
 「本城直季 (un)real utopia」 ~1/24 展示中止
・馬の博物館 ~2/7休
 「小さな騎士(ナイト)たち」 ~2/14 展示休止
・藤沢市アートスペース 1/9~2/7休
 「Artists in FAS 2020 入選アーティストによる成果発表展」 1/30~ 開催延期
・川越市立美術館 12/29~2/7休
 「常設展 第4期 1980年代以降の美術―関根伸夫など」 ~3/28 展示休止


12月24日から臨時休館していた埼玉県立近代美術館と埼玉県立歴史と民俗の博物館は、当初の休館期間が2月7日まで延長されました。これは緊急事態宣言が2月7日まで発出されることによる対応だと考えられます。またこの他には「さかざきちはるの本づくり展」(1月31日まで)を行っていた市川市文学ミュージアムも1月8日から臨時休館となりました。

【1月10日以降に臨時休館する美術館】

・大倉集古館 1/12~当面休館
 「海を渡った古伊万里~ウィーン、ロースドルフ城の悲劇」 ~1/24 1/11にて展示中止
・東京都庭園美術館 1/13~庭園の公開を中止
 「生命の庭」 ~1/12
・国立近現代建築資料館 1/16〜2/7の土日を臨時休館
 「工匠と近代化 大工技術の継承と展開」 ~2/21 
・神奈川県立近代美術館葉山館 1/12~当面休館
 「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」 1/9~ 1/11にて展示休止
・神奈川県立歴史博物館 1/12~2/7休
 「かながわの正月ーよい年になりますようにー」 ~1/24 1/11にて展示中止
・神奈川県立金沢文庫 1/12~2/8休
 「東アジア仏教への扉」 ~1/31 1/11にて展示中止
・横須賀美術館 1/12~2/7休
・千葉県立美術館 1/13~当面休館
 「魔法の手 ロッカクアヤコ作品展」 ~1/11
 「日本文化の華 大相撲展」 1/16~ 開催延期


各県の公立美術館や博物館に臨時休館する例が目立っています。神奈川県立近代美術館葉山館や神奈川県立歴史博物館などは、緊急事態宣言を受けた「特措法に基づく緊急事態措置に係る神奈川県実施方針」を踏まえ、1月12日より臨時休館することが決まりました。ただし1月9日から11日までは休館しないため、1月9日から葉山館で開催される「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」は3日間のみ観覧することが可能です。

1月12日まで「生命の庭」を開催中の東京都庭園美術館は、同展の会期を終えた1月13日以降に庭園の公開を当面休止します。レストランやカフェも休業します。

以下、東京、神奈川、埼玉、千葉県内の美術館と博物館の開館情報です。(1月8日現在。)



【上野】

・上野の森美術館 開館中 
 「KING&QUEEN展」 ~1/11
 http://www.ueno-mori.org

・国立科学博物館 開館中 金曜・土曜日の夜間開館を中止。平日は17時、土日は18時まで。
 「日本のたてもの」 ~1/11 予約制
 http://www.kahaku.go.jp

・国立近現代建築資料館 1/16〜2/7までの土日を臨時休館
 「工匠と近代化 大工技術の継承と展開」 ~2/21 
 http://nama.bunka.go.jp

・国立西洋美術館 館内施設整備のため休館中
 http://www.nmwa.go.jp

・台東区立朝倉彫塑館 12/26~当面休館
 「Enjoy sports 朝倉文夫の1964年」 ~3/7 展示休止
 http://www.taitocity.net/zaidan/asakura/

・東京藝術大学大学美術館 休館中
 「渡辺省亭 欧米を魅了した花鳥画」 3/27~
 https://www.geidai.ac.jp/museum/

・東京国立博物館 開館中 夜間開館を中止。17時まで。
 「日本のたてもの―自然素材を活かす伝統の技と知恵」 ~2/21 予約制
 「博物館に初もうで」 1/2~1/31 予約制
 http://www.tnm.jp

・東京都美術館 開館中 *館内整備のため1/11〜18は休館
 「没後70年 吉田博展」 1/26~
 http://www.tobikan.jp

・弥生美術館・竹久夢二美術館 開館中
 「奇想の国の麗人たち/夢二が愛した日本」 ~1/31 予約制
 http://www.yayoi-yumeji-museum.jp



【丸の内・京橋・日本橋・新橋】

・アーティゾン美術館 開館中 金曜日の夜間開館を中止。18時まで。
 「琳派と印象派」 ~1/24 予約制
 https://www.artizon.museum

・相田みつを美術館 開館中 17時までの短縮開館
 「いまから ここから」 ~3/14 会期延長
 http://www.mitsuo.co.jp/museum/

・出光美術館 新型コロナウイルス感染症の状況に鑑み長期休館中
 http://idemitsu-museum.or.jp

・国立映画アーカイブ 開館中
 「川本喜八郎+岡本忠成 パペットアニメーショウ2020」 ~3/28
 https://www.nfaj.go.jp

・東京国立近代美術館 開館中 金曜・土曜日の夜間開館を中止。17時まで。
 「眠り展:アートと生きること」 ~2/23 予約制(当日券の販売もあり)
 http://www.momat.go.jp

・三の丸尚蔵館 休館中
 https://www.kunaicho.go.jp/event/sannomaru/sannomaru.html

・東京ステーションギャラリー 開館中 金曜日の夜間開館を中止。18時まで。
 「河鍋暁斎の底力」 ~2/7 予約制
 http://www.ejrcf.or.jp/gallery/

・パナソニック汐留ミュージアム 開館中
 「香りの器 高砂コレクション展」 1/9~
 https://panasonic.co.jp/es/museum/

・三井記念美術館 開館中 金曜日のナイトミュージアムを中止。16時までの短縮開館。
 「国宝の名刀『日向正宗』と武将の美」~1/27 予約制
 http://www.mitsui-museum.jp

・三菱一号館美術館 開館中 夜間開館日を20時までに短縮
 「1894 Visions ルドン、ロートレック展」 ~1/17 予約制(当日券の販売もあり)
 http://mimt.jp

・ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション 12/21~1/15冬季休館
 「沈潜と蒸留 浜口陽三 濱田祐史 二人展」 1/16~
 https://www.yamasa.com/musee/



【表参道・青山】

・太田記念美術館 開館中 17時までの短縮開館
 「和装男子―江戸の粋と色気」 1/6~
 http://www.ukiyoe-ota-muse.jp

・岡本太郎記念館 開館中
 「対峙する眼」  ~3/14 会期延長
 http://www.taro-okamoto.or.jp

・根津美術館 開館中
 「きらきらでん(螺鈿)」 1/9~ 予約制
 http://www.nezu-muse.or.jp

・ワタリウム美術館 開館中 水曜日の夜間開館を中止。19時まで。
 「生きている東京展」 ~1/31
 http://www.watarium.co.jp



【新宿・渋谷】

・NTTインターコミュニケーション・センター  新型コロナウイルス感染症の拡大の防止の観点から休館中
 http://www.ntticc.or.jp/ja/

・草間彌生美術館 開館中
 「我々の見たこともない幻想の幻とはこの素晴らしさである」 ~3/29 予約制
 https://yayoikusamamuseum.jp

・國學院大學博物館 12/27~1/12休 水曜〜土曜日の12時~17時のみ短縮開館
 「江戸のベストセラー 唐詩選」 1/13~
 http://museum.kokugakuin.ac.jp

・渋谷区立松濤美術館 開館中
 「舟越 桂 私の中にある泉」 ~1/31
 http://www.shoto-museum.jp

・東京オペラシティ アートギャラリー 12/21~1/15休
 「千葉正也個展」 1/16~
 https://www.operacity.jp/ag/

・中村屋サロン美術館 開館中
 「コレクション展示」 ~2/21
 https://www.nakamuraya.co.jp/museum/

・文化学園服飾博物館 12/19~2/17休
 「ヨーロピアン・モード」 2/18~
 http://museum.bunka.ac.jp

・Bunkamura ザ・ミュージアム 開館中
 「ベルナール・ビュフェ回顧展」 ~1/24
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/

・SOMPO美術館 開館中
 「東郷青児 蔵出しコレクション」 ~1/24 予約制
 https://www.sompo-museum.org



【六本木・虎ノ門】

・大倉集古館 1/12~当面休館
 「海を渡った古伊万里~ウィーン、ロースドルフ城の悲劇」 ~1/24 1/11にて展示中止
 https://www.shukokan.org

・菊池寛実記念 智美術館 開館中
 「鈴木藏の志野」 ~3/21
 http://www.musee-tomo.or.jp

・国立新美術館 開館中
 「DOMANI・明日展 2021」 1/30~
 http://www.nact.jp

・21_21 DESIGN SIGHT 開館中 17時半までの短縮開館
 「トランスレーションズ展」 ~3/7
 http://www.2121designsight.jp

・森アーツセンターギャラリー 開館中
 「ミッキーマウス展」 ~1/11 予約制(残券がある場合は当日券を販売)
 https://macg.roppongihills.com/jp/

・森美術館 改修工事のため休館中
 「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力」 4/22~
 https://www.mori.art.museum/jp/

・サントリー美術館 開館中 金曜・土曜日の夜間開館を中止。18時まで。
 「美を結ぶ。美をひらく。」 ~2/28
 https://www.suntory.co.jp/sma/

・泉屋博古館分館 改修工事のため休館中
 https://www.sen-oku.or.jp/tokyo/



【恵比寿・白金・目黒・品川・台場】

・アクセサリーミュージアム 12/22~1/18冬季休館
 http://acce-museum.main.jp

・WHAT(建築倉庫ミュージアム) 開館中
 「謳う建築」 ~5/30 予約制
 https://archi-depot.com

・東京都写真美術館 開館中 木曜・金曜日の夜間開館を中止。18時まで。
 「138億光年 宇宙の旅/瀬戸正人 記憶の地図」 ~1/24
 http://topmuseum.jp

・日本科学未来館 開館中 予約制
 http://www.miraikan.jst.go.jp

・日本民藝館 改修工事のため休館中
 http://www.mingeikan.or.jp

・山種美術館 開館中 平日は16時までの短縮開館
 「東山魁夷と四季の日本画」 ~1/24 予約制(当日券の販売もあり)
 http://www.yamatane-museum.jp

・東京都庭園美術館 1/13~庭園の公開を中止
 「生命の庭」 ~1/12
 http://www.teien-art-museum.ne.jp

・原美術館 開館中
 「光―呼吸 時をすくう5人」 ~1/11 予約制
 http://www.haramuseum.or.jp/jp/hara/

・目黒区美術館 展示入替のため休館中
 「視ることの楽しみ ― 画材と素材の引き出し博物館」 1/16~
 http://mmat.jp

・畠山記念館 施設改築工事のため休館中
 http://www.ebara.co.jp/csr/hatakeyama/

・松岡美術館 所蔵作品の修復調査、設備点検のため休館中
 http://www.matsuoka-museum.jp



【両国・清澄白河・駒込】

・江戸東京博物館 開館中 土曜日の夜間開館を中止。17時半まで。
 「古代エジプト展 天地創造の神話」 ~4/4
 https://www.edo-tokyo-museum.or.jp

・すみだ北斎美術館 開館中
 「GIGA・MANGA 江戸戯画から近代漫画へ大江戸歳事記」 ~1/24
 http://hokusai-museum.jp

・たばこと塩の博物館 開館中
 「明治のたばこ王 村井吉兵衛」 ~1/24
 https://www.jti.co.jp/Culture/museum/index.html

・東京都現代美術館 開館中
 「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか/MOTアニュアル2020」 ~2/14 予約優先チケットあり
 「MOTコレクション 第2期 コレクションを巻き戻す」 当面休室
 http://www.mot-art-museum.jp

・刀剣博物館 開館中
 「埋忠〈UMETADA〉桃山刀剣界の雄」 1/9~ 土日祝は予約制
 https://www.touken.or.jp/museum/
 
・東洋文庫ミュージアム 開館中
 「岩崎文庫の名品―東洋の叡智と美」 ~1/17
 http://www.toyo-bunko.or.jp/museum/



【池袋・目白・板橋・練馬】

・板橋区立美術館 開館中
 「だれも知らないレオ・レオーニ展」 ~1/11 予約制
 http://www.itabashiartmuseum.jp

・古代オリエント博物館 開館中 16時半までの短縮開館
 「イスラエル、ガリラヤ湖畔の遺跡  -ヒッポスとエン・ゲヴ-」 ~1/31
 http://aom-tokyo.com

・ちひろ美術館・東京 1/2~当面休館
 「子どもの心を見つめて いわさきちひろ展」 ~1/31 展示休止
 https://chihiro.jp/tokyo/

・練馬区立美術館 開館中
 「35年の35点 コレクションで振り返る練馬区立美術館」 ~2/14
 https://www.neribun.or.jp/museum.html

・永青文庫 開館中
 「新・明智光秀論 細川と明智 信長を支えた武将たち」 ~1/31
 http://www.eiseibunko.com

・講談社 野間記念館 建て替えのため休館中
 http://www.nomamuseum.kodansha.co.jp



【世田谷】

・五島美術館 開館中
 「茶道具取合せ展」 ~2/14
 http://www.gotoh-museum.or.jp

・静嘉堂文庫美術館 開館中 16時までの短縮開館
 「江戸のエナジー 風俗画と浮世絵」 ~2/7
 http://www.seikado.or.jp

・世田谷美術館 開館中
 「美術家たちの沿線物語 田園都市線・世田谷線篇」 ~3/28
 「世田谷美術館コレクション選 器と絵筆 魯山人、ルソー、ボーシャンほか」 1/5~
 https://www.setagayaartmuseum.or.jp

・世田谷文学館 開館中
 「第39回 世田谷の書展 世田谷ゆかりの作家たち」 1/5~
 https://www.setabun.or.jp
 


【武蔵野・多摩】

・東京富士美術館 開館中
 「写真コレクション特集 あつまれ!どうぶつ」 ~1/24
 http://www.fujibi.or.jp

・八王子夢美術館 開館中
 「近代西洋絵画名作展 印象派からエコール・ド・パリまで」 ~1/24
 http://www.yumebi.com

・府中市美術館 開館中
 「メイド・イン・フチュウ 公開制作の20年」 ~2/28
 https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/

・町田市立国際版画美術館 開館中
 「新収蔵作品展 Present for You わたしからあなたへ/みんなから未来へ」 1/5~
 http://hanga-museum.jp

・三鷹市市民ギャラリー 開館中
 「三鷹市美術ギャラリー収蔵作品展Ⅰ 靉嘔」 ~2/28
 http://mitaka-sportsandculture.or.jp/gallery/

・武蔵野市立吉祥寺美術館 開館中
 「阪本トクロウ|デイリーライブス」 1/9~
 http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/

・多摩美術大学大学美術館 開館中
 「多摩美の版画、50年」 1/6~
 http://www.tamabi.ac.jp/museum/



【神奈川県】

・馬の博物館 ~2/7臨時休館
 「小さな騎士(ナイト)たち」 ~2/14 開催休止
 http://www.bajibunka.jrao.ne.jp/uma/

・岡田美術館 開催中
 「画遊人・若冲 ―光琳・応挙・蕭白とともに」 ~3/28
 http://www.okada-museum.com

・神奈川県民ホールギャラリー 開催中
 「大山エンリコイサム展 夜光雲」 ~1/23
 http://www.kanakengallery.com

・神奈川県立近代美術館葉山館 1/12~当面休館
 「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」 1/9~ 1/11にて展示休止
 http://www.moma.pref.kanagawa.jp

・神奈川県立歴史博物館 1/12~2/7臨時休館
 「かながわの正月ーよい年になりますようにー」 ~1/24 1/11にて展示休止
 http://ch.kanagawa-museum.jp

・鎌倉文華館鶴岡ミュージアム 開館中
 「鶴岡八幡宮と文士たち」 ~1/31
 https://tsurugaokamuseum.jp

・川崎浮世絵ギャラリー 開館中
 「新春浮世絵展」 1/5~
 https://ukiyo-e.gallery

・川崎市岡本太郎美術館 開館中
 「クルト・セリグマンと岡本太郎」 ~1/24
 http://www.taromuseum.jp/

・そごう美術館 開館中 19時半までの短縮開館
 「ミレーから印象派への流れ展」 ~1/24
 https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/

・茅ヶ崎市美術館 開館中
 「桑久保徹」 ~2/7
 http://www.chigasaki-museum.jp

・BankArt KAIKO + BankART Temporary 
 「アートブック/アートグッズ」イベント(BankART KAIKO) 1/15~
 http://www.bankart1929.com

・平塚市美術館 開館中
 「新収蔵品展 国際興業コレクションを中心に」 ~2/21
 http://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-muse/

・藤沢市アートスペース 1/9~2/7臨時休館
 「Artists in FAS 2020 入選アーティストによる成果発表展」 1/30~
 http://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/bunka/FAS

・ポーラ美術館 開館中
 「Connections-海を越える憧れ、日本とフランスの150年」 ~4/4
 http://www.polamuseum.or.jp

・横須賀美術館 1/12~当面休館
 http://www.yokosuka-moa.jp

・横浜市民ギャラリーあざみ野 開館中
 https://artazamino.jp

・横浜美術館 開館中
 「トライアローグ:横浜美術館・愛知県美術館・富山県美術館 20世紀西洋美術コレクション」 ~2/28 予約制
 http://yokohama.art.museum

・神奈川県立金沢文庫 1/12~2/8臨時休館
 「東アジア仏教への扉」 ~1/31 1/11にて展示中止
 https://www.planet.pref.kanagawa.jp/city/kanazawa.htm

・神奈川県立近代美術館鎌倉別館 改修のため休館中
 http://www.moma.pref.kanagawa.jp/annex

・川崎市市民ミュージアム 令和元年東日本台風の浸水被害により休館中
 https://www.kawasaki-museum.jp



【埼玉県】

・岩槻人形博物館 開館中
 「天野家の雛祭り」 1/30~
 https://ningyo-muse.jp

・うらわ美術館 開館中
 「芳年―激動の時代を生きた鬼才浮世絵師」 ~1/24
 http://www.city.saitama.jp/urawa-art-museum/index.html

・角川武蔵野ミュージアム 開館中 日曜~木曜日は18時まで、金曜・土曜日は20時まで開館。(時間変更)
 「《米谷健+ジュリア展》 だから私は救われたい」 ~3/7 予約制
 https://kadcul.com

・川口市立アートギャラリー・アトリア 開館中
 「アートな年賀状展2021」 1/8~
 http://www.atlia.jp

・川越市立美術館 12/29~2/7臨時休館
 「常設展 第4期 1980年代以降の美術―関根伸夫など」 ~3/28 展示休止
 https://www.city.kawagoe.saitama.jp/artmuseum/

・河鍋暁斎記念美術館 開館中
 「丑年の寿ぎ―新春祝画と七福神―」 1/4~
 http://kyosai-museum.jp/hp/top.html

・原爆の図丸木美術館 開館中
 「内田あぐり VOICES いくつもの聲」 ~1/24
 https://marukigallery.jp

・埼玉県立近代美術館 12/24~2/7臨時休館
 「上田薫」 ~1/11 開催中止
 http://www.pref.spec.ed.jp/momas/

・埼玉県立歴史と民俗の博物館 12/24~2/7臨時休館
 「特別展 銘仙」 1/2~ 開催延期
 http://www.saitama-rekimin.spec.ed.jp

・さいたま市大宮盆栽美術館 開館中
 「子どもたちに伝えたい さいたまの盆栽」 ~1/27
 https://www.bonsai-art-museum.jp/ja/

・鉄道博物館 開館中 予約制 17時までの短縮開館
 http://www.railway-museum.jp



【千葉県】

・市原市湖畔美術館 1/9~2/7臨時休館
 「本城直季 (un)real utopia」 ~1/24 展示中止
 http://lsm-ichihara.jp/

・航空科学博物館 開館中
 http://www.aeromuseum.or.jp

・国立歴史民俗博物館 開館中
 「アイヌ文化へのまなざし-N.G.マンローの写真コレクションを中心に」 ~5/9
 https://www.rekihaku.ac.jp

・佐倉市立美術館 開館中
 「カオスモス6 沈黙の春に」 1/26~
 http://www.city.sakura.lg.jp/sakura/museum/

・千葉県立美術館 1/13~当面休館
 「魔法の手 ロッカクアヤコ作品展」 ~1/11
 「日本文化の華 大相撲展」 1/16~ 開催延期
 https://www.chiba-muse.or.jp/ART/

・千葉市美術館 開館中 金曜・土曜日の夜間開館を中止。18時まで。
 「田中一村展 ―千葉市美術館収蔵全作品」 1/5~
 http://www.ccma-net.jp

・DIC川村記念美術館 開館中
 「コレクション展示」 ~1/11 予約制
 http://kawamura-museum.dic.co.jp

・成田山書道博物館 開館中
 「今日の書壇 新井光風展」 1/1~
 http://www.naritashodo.jp

・ホキ美術館 開館中
 「ホキ美術館ベストコレクション展」 ~5/16 予約制
 https://www.hoki-museum.jp

各美術館において消毒や検温の対応、さらには予約制の導入など、新型コロナウイルス感染症への対策が行われていますが、自治体の外出自粛の要請などもあり、今後も臨時休館する美術館が増えることも予想されます。

最新の情報は各美術館のウェブサイトをご覧ください。

*最上段の写真は東京国立近代美術館の「MOMATコレクション」から日本画展示室。なお同館も1月15日より当面の間、夜間開館が中止となりました。
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「石岡瑛子 グラフィックデザインはサバイブできるか」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー

ギンザ・グラフィック・ギャラリー
「SURVIVE - EIKO ISHIOKA /石岡瑛子 グラフィックデザインはサバイブできるか」
2020/12/4~2021/3/19



ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催中の「SURVIVE - EIKO ISHIOKA /石岡瑛子 グラフィックデザインはサバイブできるか」を見てきました。

1938年に生まれ、アートディレクターやデザイナーとして世界的に活躍した石岡瑛子は、広告キャンペーンにおいても時代を切り開く表現を続けてきました。

その石岡の日本での活動を紹介したのが「グラフィックデザインはサバイブできるか」で、主に1980年代にニューヨークへ渡る前に手がけた広告ポスターが展示されていました。



まず一階では「グラフィックアート編」とした3分の映像が公開されていて、周囲には「着地は熱情であらねばいけない。」や「デザインは感覚や技術ではなく、考え方を表現するひとつのきちんとした手段である。」などの石岡の言葉が紹介されていました。



グラフィックアートの鮮烈なイメージはもとより、石岡のメッセージも力強く感じられて、何とも言い難い熱量に飲まれるかのようでした。



一方で地下の展示室には、資生堂やパルコ、角川書店などの広告ポスターなどが所狭しと並んでいて、石岡の膨大でかつパワフルなまでの仕事の一端を目の当たりにすることができました。



こうした一連の広告ポスターとともに目を引いたのは、ブックデザインやマイルス・ディヴィスのアルバムのアートワークなどの仕事でした。



資生堂の高級石鹸「ホネケーキ」の広告では、石岡の手書きによるメモも残されていて、1つの仕事の制作プロセスを追うこともできました。なお同広告は、商品(石鹸)を真っ二つに切るという斬新なデザインゆえに、当初社内から強い反対を受けました。結果的には石岡のADとして実質初めて担ったデビュー作となり、1965年のADC賞を受賞しました。



石岡が資生堂入社試験の際、面接に持参したという「裸体のクロッキー」も興味深い作品でした。石岡は芸大時代、粘土を練っては陶器を焼いたり、塑像を造ったりしながら、自己の内面を見つめる時間を大切に考えていたそうです。



ラストインタビュー「グラフィックはサバイブできるか」からの約30分の音声も大いに耳を引きました。これは2011年、ニューヨークで入院中だった石岡が病院を抜け出し、自室のマンションにてインタビューを受けたもので、半年後に亡くなったために事実上、最後の生の声となりました。全部で4時間も収録したそうです。



いずれのポスターやデザインには、人間の強く根源的な魂の叫びが内包されているかのようで、類い稀な生命感に満ちていました。

会期は前後期の2期制です。それぞれ前期を「広告・キャンペーン」、後期を「グラフィックアート」をテーマとして作品が入れ替わります。

前期(広告・キャンペーン):2020年12月4日(金)〜2021年1月23日(土)
後期(グラフィック・アート):2021年2月3日(水)〜3月19日(金)

現在、東京都現代美術館においても質量ともに圧倒的な「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」が開かれていますが、合わせて見ておきたい内容と言えそうです。



後期も追いかけたいと思います。3月19日まで開催されています。(前期展示は1月23日まで)

「SURVIVE - EIKO ISHIOKA /石岡瑛子 グラフィックデザインはサバイブできるか」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー
会期:2020年12月4日(金)~2021年3月19日(土)
 *前期(広告・キャンペーン):2020年12月4日(金)〜2021年1月23日(土)、後期(グラフィック・アート):2021年2月3日(水)〜3月19日(金)
休廊:日曜・祝日。年末年始(12月28日〜1月5日)
時間:11:00~19:00
料金:無料
住所:中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅から徒歩5分。JR線有楽町駅、新橋駅から徒歩10分。
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2021年1月に見たい展覧会【冨安由真展/田中一村展/20世紀のポスター】

年末年始にかけて新型コロナウイルス感染症の更なる感染拡大が続き、1月7日にも首都圏の一都三県(東京、神奈川、埼玉、千葉)へ緊急事態宣言が再び発出されようとしています。

昨年の宣言下では殆ど全ての美術館と博物館が臨時休館しましたが、今回は飲食店を中心に制限がかけられ、劇場や映画館は対象に含めない方向で調整が続いているとのことです。(1月5日の報道)

今後、美術館と博物館の対応が明らかになりますが、少なくとも現時点では一部の館を除いて開館しています。そこで現状のスケジュールの通りに開館すると仮定して、見たい展覧会をリストアップしてみました。

【展覧会】

・「野見山暁治のいま展」 日本橋高島屋S.C. 本館8階ホール(1/9~1/18)
・「大山エンリコイサム展 夜光雲」 神奈川県民ホールギャラリー(12/14~2021/1/23)
・「東郷青児 蔵出しコレクション~異国の旅と記憶~」 SOMPO美術館(11/11~2021/1/24)
・「芳年 激動の時代を生きた鬼才浮世絵師」 うらわ美術館(11/18~2021/1/24)
・「ベルナール・ビュフェ回顧展 私が生きた時代」 Bunkamuraザ・ミュージアム(11/21~2021/1/24)
・「東山魁夷と四季の日本画」 山種美術館(11/21~2021/1/24)
・「138億光年 宇宙の旅」 東京都写真美術館(11/21~2021/1/24)
・「瀬戸正人 記憶の地図」 東京都写真美術館(12/1~2021/1/24)
・「国宝の名刀 日向正宗と武将の美」 三井記念美術館(11/21~2021/1/27)
・「生きている東京」 ワタリウム美術館(9/5~2021/1/31)
・「冨安由真展|漂泊する幻影」 KAAT神奈川芸術劇場(1/14~1/31) 
・「河鍋暁斎の底力」 東京ステーションギャラリー(11/28~2021/2/7)
・「桑久保徹 A Calendar for Painters without Time Sense. 12/12」 茅ヶ崎市美術館(12/12~2021/2/7)
・「きらきらでん(螺鈿)」 根津美術館(1/9~2/14)
・「日本のたてもの—自然素材を活かす伝統の技と知恵」 東京国立博物館(12/24~2021/2/21)
・「美を結ぶ。美をひらく。美の交流が生んだ6つの物語」 サントリー美術館(12/16~2021/2/28)
・「田中一村展 ― 千葉市美術館収蔵全作品」 千葉市美術館(1/5~2/28)
・「米谷健+ジュリア展 だから私は救われたい」 角川武蔵野ミュージアム(11/6~2021/3/7)
・「香りの器 高砂コレクション展」 パナソニック汐留美術館(1/9~3/21)
・「千葉正也個展」 東京オペラシティ アートギャラリー(1/16~3/21)
・「複製芸術家 小村雪岱 ~装幀と挿絵に見る二つの精華~」 日比谷図書文化館(1/22~3/23)
・「Connections―海を越える憧れ、日本とフランスの150年」 ポーラ美術館(11/14~2021/4/4)
・「国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話」 江戸東京博物館(11/21~2021/4/4)
・「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」 神奈川県立近代美術館 葉山(1/9~4/11)
・「20世紀のポスター 図像と文字の風景」東京都庭園美術館(1/30~4/11)

【ギャラリー】

・「梅津庸一監修 絵画の見かた reprise」 √K Contemporary(1/16~1/31)
・「ポーラ ミュージアム アネックス展2021-主体と客体」 ポーラ ミュージアム アネックス(1/15~2/7)
・「許寧展 Season – Letter」 小山登美夫ギャラリー(1/23~2/20)
・「大庭大介 絵画-現象の深度」 SCAI THE BATHHOUSE(1/26~2/27)
・「ルイザ・ランブリ」 ギャラリー小柳(1/15〜3/19)
・「アネケ・ヒーマン&クミ・ヒロイ、潮田 登久子、片山 真理、春木 麻衣子、細倉 真弓、そして、あなたの視点」 資生堂ギャラリー(1/16~4/18)

まずは気鋭の現代美術家の個展です。KAAT神奈川芸術劇場にて「冨安由真展|漂泊する幻影」が開催されます。



「冨安由真展|漂泊する幻影」@KAAT神奈川芸術劇場(1/14~1/31) 

1983年に生まれた冨安由真は、絵画やインスタレーションを用いて、「不可視なものに対する知覚を鑑賞者に擬似的に体験させる作品」(解説より)を制作してきました。中でも2018年に資生堂ギャラリーで行われた「第12回 shiseido art egg」では、会場内に心霊現象を知覚できるようなインスタレーションを築いて評判を呼び、会期後半には行列ができるほど人気を博しました。


その冨安の新たな個展が「漂泊する幻影」で、神奈川芸術劇場の中スタジオの劇場空間にて新たなインスタレーションを公開します。会期半月の短いスケジュールではありますが、また注目を集めるのではないでしょうか。

続いては日本画です。「田中一村展―千葉市美術館収蔵全作品」が千葉市美術館にて行われます。



「田中一村展―千葉市美術館収蔵全作品」@千葉市美術館(1/5~2/28)

栃木県に生まれ、千葉にも20年間住み、後に奄美大島へ移住した田中一村は、生前殆ど知られることがなかったものの、没後に再評価されて多くの人々の心を捉えてきました。


2010年には千葉市美術館でも大規模な回顧展があって大変な反響を呼びましたが、以来同館では10年あまりの間に作品の寄託を受け、2018年には一村の支援者である川村家から残りの作品と資料の寄贈を受けました。

それを公開するのが今回の展覧会で、千葉市美術館の収蔵した全ての一村の作品、約100点超が公開されます。

最後はデザインの展覧会です。東京都庭園美術館にて「20世紀のポスター 図像と文字の風景」が開かれます。



「20世紀のポスター 図像と文字の風景」@東京都庭園美術館(1/30~4/11)


これは1910年から20年代のヨーロッパでおこり、芸術やデザインに革新をもたらした構成主義に基づくポスターの系譜を辿るもので、戦前と戦後、さらには1970年以降の現代へと至るポスター作品、約130点が展示されます。アール・デコの本館のスペースにどのようにポスターが映るのかも見どころの1つとなるかもしれません。

繰り返しになりますが、緊急事態宣言の再発出などにより、今後の美術館の開館状況は流動的です。人の流れを抑える観点からイベント等に制限がかかり、臨時休館する可能性も考えられます。

最新情報は各館のWEBサイトをご覧下さい。

*再び休館する美術館が増えた場合は、新型コロナウイルスへの対応に伴う「美術館・博物館」休館情報  第一報(3月2日)、第二報(3月9日)、第三報(3月16日)、第四報(3月24日)、第五報(4月1日)、第六報(4月9日)、第七報(5月2日)、第八報(6月2日)、第九報(6月25日)の続報(第十報)として休館情報をまとめる予定です。
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謹賀新年 2021

新年あけましておめでとうございます。
今年も皆さまにとって素晴らしい一年になりますよう、心からお祈り申し上げます。



年末に寒波がやってきて、大変に寒いお正月を迎えました。今年は新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、一部自治体において外出自粛のお願いが出されていることもあり、自宅で過ごされる方も多いかもしれません。

年明けから東京と近郊で新たに開幕する展覧会は以下の通りです。(16日まで)

・「今日の書壇 新井光風展」 成田山書道博物館(1/1~2/21)
・「丑年の寿ぎ―新春祝画と七福神―」 河鍋暁斎記念美術館(1/4~2/24)
・「世田谷美術館コレクション選 器と絵筆 魯山人、ルソー、ボーシャンほか」 世田谷美術館(1/5~2/28)
・「新収蔵作品展 Present for You わたしからあなたへ/みんなから未来へ」 町田市立国際版画美術館(1/5~2/21)
・「新春浮世絵展」 川崎浮世絵ギャラリー(1/5~1/31)
・「田中一村展 ―千葉市美術館収蔵全作品/ブラチスラバ世界絵本原画展」 千葉市美術館(1/5~2/28)
・「和装男子―江戸の粋と色気」 太田記念美術館(1/6~1/28)
・「多摩美の版画、50年」 多摩美術大学大学美術館(1/6~2/14)
・「アートな年賀状展2021」 川口市立アートギャラリー・アトリア(1/8~1/31)
・「香りの器 高砂コレクション展」 パナソニック汐留ミュージアム(1/9~3/21)
・「きらきらでん(螺鈿)」 根津美術館(1/9~2/14)
・「埋忠〈UMETADA〉桃山刀剣界の雄」 刀剣博物館(1/9~2/21)
・「阪本トクロウ|デイリーライブス」 武蔵野市立吉祥寺美術館(1/9~2/28)
・「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」 神奈川県立近代美術館葉山館(1/9~4/11)
・「江戸のベストセラー 唐詩選」 國學院大學博物館(1/13~2/27)
・「沈潜と蒸留 浜口陽三 濱田祐史 二人展」 ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション(1/16~4/4)
・「千葉正也個展」 東京オペラシティ アートギャラリー(1/16~3/21)
・「視ることの楽しみ ― 画材と素材の引き出し博物館」 目黒区美術館(1/16~1/31)

新春に因んだイベントの情報です。東京国立博物館では新年恒例の「博物館に初もうで」が1月2日より開催されます。


これは新春吉祥作品紹介として長谷川等伯の国宝「松林図屏風」などの名品をはじめ、干支の丑に因んだ作品が公開されるもので、館内も玄関や大階段などでいけばなが設えられます。但し1月2日と3日に予定されていた和太鼓や獅子舞のイベントは中止されました。


1月2日から開館する東京都写真美術館では、2日と3日に限り、2階の「瀬戸正人 記憶の地図」と3階の「日本初期写真史 関東編 幕末明治を撮る」が無料で観覧できます。但し毎年恒例の雅楽の演奏などの「トップのお正月」イベントは、現時点でアナウンスがないことから中止となるようです。この他、同じ2日より開館する東京国立近代美術館も、例年行われている1月2日の無料観覧及び来館者プレゼントについては中止となりました。


一方、元日の段階で予定通りお正月イベントを開催するのが江戸東京博物館で、「えどはくでお正月」と題して1月2日と3日は常設展示室に無料で入場できます。また1月5日と6日には箏と尺八の演奏、獅子舞などの催しも実施されます。


1月3日より引き続き「東山魁夷と四季の日本画」を開催する山種美術館では、同日先着100名にプチギフトが配布される他、ミュージアムショップにて「新春福袋」が限定50個にて販売されます。

世界的なコロナ禍から約一年経った今もなお予断を許さない状況が続いていますが、今後も出来る範囲で美術の情報や展覧会の感想をブログで発信していきたいと思います。

それでは今年も「はろるど」をどうぞよろしくお願い致します。

*新型コロナウイルス感染症に伴い、今後美術館の開館状況が変わる可能性があります。お出かけの際は予め各館のWEBサイトをご覧下さい。
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