世界最速の公開、ということなので世界最速で紹介しよう(メルマガは5月1日だったのよ)。試写で観た連中や、吹替版の公開の方が一時間ほど早かったのは無視して(T_T)。
製作費が史上最高の3億ドルとくれば、親会社がソニーであるコロンビアは、アメリカよりも公開を先んじた(世界第二位の市場である)日本で少なくとも1億ドル(120億円程度)は稼いでほしいだろう。今月25日には「パイレーツ・オブ・カリビアン」の三作目がひかえているので、今のうちに稼がないとまずい!というのも本音か。にしても、大ヒット確実のシリーズが二本も5月なんてハンパな時期に公開とはもったいないなあ。ゴールデンウィークという言葉は映画界で生まれたのだが、近ごろはすっかり(業界的には)死語ですから。
で、本来は5月5日の土曜日に公開予定だったのにオキテ破りにも平日の、しかもシネコンが1000円均一のサービスデーに初日をもってきた影響はどうだろう。都会ではコスプレ組が早朝から並んだようだが、田舎では平日の朝イチに映画館に来るようなチャラチャラした野郎は学校が代休の事務職員ぐらいなので、ほぼ5分の入り。まあそんなものかな。
見終わってぐったりと疲れる。サービス満点の2時間20分。オープニングから蜘蛛男は飛びまくり、サンドマンをはじめとした敵キャラとのバトルはあきれるほどスピーディ。特に今回は上下動を中心に考えられたアクションで観客を翻弄する。あそこまでやるかねしかし。
でも、客の印象に残るのはピーター(トビー・マクガイア)とMJ(キルステン・ダンスト)の恋愛事情だろう。徹底的に美男美女であることがもとめられるスーパーマンとロイス・レインとは違い(「スーパーマン・リターンズ」もまもなく特集します)、彼らは若く、ルックスも平凡。無分別で、しかしなによりも健気だ。より善い人間になろうと努力する彼らを、「ったくいらつくなあ、足かけ5年もなにやってんだお前ら」と舌打ちしながらも応援したくなるようにつくってある。まあ、その恋愛のパートがまどろっこしいので「長すぎる!」とも思ったんだけどね。
巨額の製作費の割にいつもキャストは地味。でもサンドマン役は「サイドウェイ」で女にだらしのない俳優を演じて笑わせたトーマス・ヘイデン・チャーチ、ピーターのクラスメイトには「ヴィレッジ」のブライス・ダラス・ハワードといい感じの配役。
前二作では「大いなる力を持つ者には、大いなる責任がある」とブッシュへの皮肉を効かせていたが、今回も(わざわざ星条旗の前をスパイダーマンが飛ぶシーンで、深読みではないことがわかる)「ものごとには必ず別の選択肢がある」「自分を許すことが大事」と現政権のイラク政策を批判している。ラストのピーターの不安そうな顔は「続編まだつくるのかなあ」という意味だけではないはずだ。金を払う価値はある映画。ぜひ。