今日はちょっと趣向を変えて自分の学校で職員向けに出している事務部報を。ここに出てくる“孫”こそ真紀子の息子。姑があんまり嫁をいじめるものだからケンカしているあのお兄ちゃんですね。
…… めでたくも(皮肉)教育関連三法案が衆議院をあっさり通過してしまいましたが、実は給与についても重要な問題をはらんでいます。それは学校教育法改正案のなかに
「副校長」
「主幹教諭」
「指導教諭」
を設置“できる”とする部分があるからですが、これはいずれ【主幹の犯罪】として特集しますのでお楽しみに。
さて、この3月29日に出た『今後の教員給与の在り方について』という中教審答申がなかなかしぶいので紹介します。
その第三章「メリハリのある教員給与の在り方」にこうあります。
【教員に優秀な人材を確保するという人材確保法の精神をふまえ、人材確保法における教員給与の優遇措置についてその基本を維持しながら】
……そうです。意識していないかもしれませんが、教員の給与は優遇されているのです。
その額は一般行政職を上回ることおよそ2.76%。なぜこういう経緯になったかというとここに田中角栄が登場します。
人確法(教職員人材確保法)とは、かつて公務員給与が低かった時代に「先生にでもなるか」「先生にしかなれない」といった「でもしか先生」が増え、教育水準を落とすと問題になった状況を改善するため、74年に制定し、教員給与を一般公務員より高く設定することを決めたものです。その財源が「2.76%」というわけ。
実は当時どんな動きがあったか、意外なことに後藤田正晴の自伝にあったので紹介しましょう。
……「義務教育諸学校の職員の処遇の改善に関する法律」というのがあるんですよ。あれは最初は処遇の改善ではなくて、「義務教育諸学校職員の給与に関する特例法」だったんだ。これは田中(角栄)さんの発想だった。突然田中さんに呼ばれて、後藤田君、この頃の学校教員の資質が悪いよ、と言うんだ。ぼくはわからんけれど、あの人は孫がいたからわかった。学校教員に少しいい人が来るようにしてくれ、と言う。どうするんですか、と言ったら、待遇をよくしてやらなければいいものは来ないよ、と言う。もちろんそうですよ、それを全部大学からやるんですか、と言ったら、大学はどうでもいい、と言う。何ですか、と言ったら、小学校と中学校だ、義務教育だけでいいよ、と言う。ああそうですか、それならやりましょう、ということで着手した。
田中さんのほんとうの腹は、僕の推測だけれど、日教組対策だな、これは確実に。政府が先手を打って給与さえ改善すれば日教組の存在価値がなくなる。こういう考え方でやったと思うな。総理のそういう意図もわかったから、待遇改善をやりました。そのときの田中さんの注文は、他の役人よりも五割上げろと言うんだ。五号俸ということだったんだ、田中さんの意図は。それは総理、無理ですよ、いくら何でもそんなことできませんよ、と言ったら、そうか、どれぐらいならいいか、というから、まあせいぜい三号ですな、と僕も腰だめでやった。ああよかろう、というんで話が早いんだよ。それで三号にして、三年計画にした。
【情と理~後藤田正晴自伝より】
……この流れが今に続いているという次第。官房副長官時代からカミソリ後藤田(実はダーティ後藤田でもあった)は健在だったわけだ。かつて日教組対策だった人確法を、日教組の側から守れと動いていることに時代を感じます。
それはともかく、文科省は答申にあるように教員給与を高いまま維持したい。でも政府は骨太方針に基づいて削減に動いている。
問題は自民党文教族が削減に積極的なことで、だから維持したい方は「なに言ってるんですか。これはそちらの角栄さんがやったことじゃないですか」と指摘。それならば、と今持ち出されているのが“メリハリ”というやつです。これは次号で紹介します。
6月号はこちら。