まずは原作の方からふれよう。例の横山秀夫直木賞落選事件について。
第198回直木賞選考会においてこの小説の肝の部分が「ミステリーとして成立しない」と判断されて落選。おまけに「このような重要な設定の事実誤認を指摘しないミステリーの業界が悪い」とまで選考委員に皮肉をかまされてしまった事件。発言したのが「バトル・ロワイヤル」にも難癖をつけた林真理子。このバカはさらに『オール読物』3月号の選評で、「落ちに欠陥がある。しかしそれほど問題にもならず、未だに本は売れつづけている。一般読者と実作者とは、こだわるポイントが違うのだろうか」とまで書いている。さらに読売新聞がこの騒動の尻馬に乗り、落ちまで完全に明かしておいて「ミステリー界には耳の痛い話ではないだろうか」と報じ……横山は怒り、林真理子の発言はミステリー・ファンへの侮辱だとしてついに直木賞決別宣言を出すに至った。
これはもう完全に林真理子が悪い。この人の性根のほとんどは“嫉妬”が占めている。注目されるのが好きだから問題発言を連発し、おまけに自分の小説よりも売れ、子分になりそうもないタイプには徹底して冷たく……早くこんなヤツ選考委員から外せよ文春!おわびに横山の新作「クライマーズ・ハイ」を文春のベストミステリに選んでも今さら遅いと思うけどなあ。
さて映画のほう。嫌な予感はしていたけれど、完璧に的中。大芝居の連続に辟易。前半の、主人公志木と警察内部の隠蔽体質との軋轢が効いていないため、後半の「空白の二日間」の部分が単なるお涙頂戴劇になってしまった。柴田恭兵や伊原剛志はもっといい役者のはずなんだが。それらすべてを補ったのが寺尾聰。もうこれ以上はないくらいの力の抜けっぷり。実は倫理的に問題のある落ちも含めて、この演じ方しか無かったろう。妻を絞殺するシーンも慎重に排除されてるし。おかげで観客はわたしや妻をふくめて滂沱の涙。こんなに泣いたの「砂の器」(松竹の映画の方)以来じゃないか。いやーそれにしてもさすが東映、ラストシーンは完璧に時代劇だったなあ。