事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

木更津キャッツアイ ワールドシリーズ

2008-01-14 | 邦画

Kisarazu

第二球はこちら

 さすがの宮藤官九郎も今回は苦労するんじゃないかと思っていた。なにしろ

①主人公はとっくの昔に死んでいる

②前作が「日本シリーズ」だから「ワールドシリーズ」にタイトルだけは決定している。

③しかもどんな形であれ完結させなければならない。

……なめてました。手練れである宮藤は、そのすべてを逆手にとってみごとな作品に仕上げているのだ。

 まず、主人公のぶっさんが死んでいる問題だが、死んだ野球選手が現世にもどってくる話といえばあれだろ、と「フィールド・オブ・ドリームス」の設定を臆面もなくパクり、しかもあの映画と同じレベルで泣かせることに成功している。

 おまけにワールドシリーズだからアメリカ人を登場させなければならないのに、まず出てくるのが韓国人(キャッツアイのおなじみのフレーズ「ビール!ビール!」がいきなり「JINRO! JINRO!」になっていたのには笑った)とロシア人だったというひっかけ。

 そして肝心のアメリカ人を「タイガー&ドラゴン」でさんざん笑わせてくれた橋本じゅんに演じさせる厚顔さ(「日系デース!」にもひたすら笑った)。

 そして問題はラストだ。

Kisarazuws 「木更津キャッツアイ」の最大の美点は、一種の難病ものなのに、主人公が病院のベッドで死んでいく場面を排除していることにあった。

いや、あることはあるんだけど何しろことごとく生き返っちゃうから(笑)。しじみの貝殻も何度も効果的に使われていたしね。

それが今回、ちょっとびっくりするタイミングで父子の別れが描かれ、そしてそのことが、“よみがえった息子を、なぜ父親だけが見ることができなかったか”という謎に決着までつけるという離れ技を決めているのだ。

 TVシリーズオンエア時には地味なキャストに思えたものが、今やすっかり豪華キャストになっていることにあらためて時の流れを思う。

エンドタイトルで数々の名場面がサービスされるが、やはりこのドラマは

「息子を『公平くん』としか呼ぶことが出来ず、死にゆく息子への哀惜を、和田アキ子のものまねでしか表現できない父親」

「罵倒と軽口しか感情の表し方を知らず、ゆえに父親に最後まで感謝の言葉が言えない息子」

の物語だったのだとつくづく。母親の不在はだから必然だったし、ユンソナが演じる妻が徹底して軽かったのもそのせいだ。わたしも、となりにすわった息子も泣きながらこのシリーズの終焉を見守ったが、だからといって急に「絵に描いたような仲のいい親子」を演じられるわけでもないわたしたちだからこそ、思いきり泣けたのかも。にゃー。

「マンハッタンラブストーリー」につづきます

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「木更津キャッツアイ」(TBS) 第2球

2008-01-14 | テレビ番組

Kudokan

第一球はこちら

「んざけんなよ」

「うるせーよ」

「てゆーか」

こんなヤンキー言葉に辟易している人は多いと思う。いったい何考えてんだ、と軽蔑すらしているかも。

 しかしご心配なく。ご想像のとおり彼らは何にも考えてはいない。ってゆーか、周囲から考えなければならない対象が慎重に排除されているだけだ。だからこそ彼らヤンキーはひたすら【仲間】を大切にし、優しくあろうとしている。必然の、自己完結。

「絶対にフツーの難病モノのように最終回で泣かせるようにはしたくなかった」(宮藤)なんて言いながら、だからこそかえって涙が噴き出してしまう。

 これは、わたしたちにしたってストレートな感情表現など苦手なのだし、罵倒やギャグだけでこれだけ思いのたけを発露させることができる彼らを、少しうらやましく思うからだろう。罵倒やギャグだけでこれだけのドラマを創りあげるスタッフやキャストの力もすごいもんだが。

 ここまで持ち上げても、まだ観る気にならない人もいるかも。

でも

「嶋大輔」

巨人の星

「哀川翔」

「加藤鷹」

「氣志團」

ドカベン

……これらのキーワードにちょっとでも心惹かれるあなたなら、このドラマは絶対のお奨めだ。今すぐビデオ屋に走れっ!まもなく映画「木更津キャッツアイ・日本シリーズ」が公開される。本格的なブームがやってきたら、みんな貸出中になっちゃうぞっ!

Isoyama ……これは03年9月に記したものだけど、予想どおり木更津は思いっきりブームになり、クドカンと磯山晶プロデューサーの名を不動のものにした。だからといって高視聴率ゲッターになれたかというと、これが相変わらず低視聴率に悩んでいるんだからうれしいっす(笑)。

「ワールドシリーズ」につづく

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木更津キャッツアイ(TBS) 第1球

2008-01-14 | テレビ番組

Bussan TVドラマのオールタイムベストを挙げろと言われたら、躊躇なく
天下御免」(早坂暁 NHK)
前略おふくろ様」(倉本聡 日本テレビ)
王様のレストラン」(三谷幸喜 フジテレビ)
を選ぶ。時代と脚本家の幸福な出会いがここには確実にある。予告ばかりやっているけれど、いつか必ず特集します。

 しかしここへ食い込むような傑作がいきなりあらわれた。「木更津キャッツアイ」(宮藤官九郎 TBS)がそれ。

 すでにTVドラマを1クール毎週つきあうなどという習慣を失い、おまけにいくらクドカン(宮藤)の作品でも「余命いくばくもない主人公が、なんか悪友たちと野球をやる」設定にはどうしてもノレず、オンエア時には一度も観ていない。これは世間も同じだったようで、クドカンの最高傑作、と騒がれたわりには視聴率は低迷した。

 しかしその不明を恥じる。いやもう速射砲のようにくり出されるセリフの応酬は史上最高。岡田准一(V6)のクールな風貌がここまでいかされたのって初めてだろうし、櫻井翔(嵐)なんてこのドラマで初めて“認識”した(笑)。

 テレビではいっこうに映えなかった薬師丸ひろ子も、キレまくる高校教師役がみごとにはまっている。酒井若菜にしたって、これまでどこがいいんだと思っていたが、「木更津にスターバックスができますよーに」と神社でお祈りするモーコ役はひたすらかわいい。

 そして小日向文世。死にゆく息子にどう対処していいかわからず、和田アキ子のモノマネで

「♪あのか~ね~を~ 鳴らすのはーあな~た~♪」と絶唱する父親。

こんな役、小日向以外に誰がこなせたろうか。以下次号

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