07年1月24日付事務職員部報より。
<残業代ゼロ制>安倍首相が国会提出断念を明らかに
07年1月16日20時40分配信 毎日新聞
安倍晋三首相は16日、残業の概念をなくす「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション」制度を導入する労働基準法改正案について「働く人たち、国民の理解が不可欠だ。今の段階では理解を得られていない」と述べ、25日召集の通常国会への提出を断念することを明らかにした。首相官邸で記者団に語った。
首相は11日には記者団に「私の内閣では、仕事と生活のバランスを見直していこうと考えていく」と話し、提出を目指す考えを示していた。しかし、同法案をめぐっては「残業代がなくなる」「長時間労働を助長する」など、労働側から批判が噴出し、民主党は導入に徹底抗戦する構えを見せている。
与党内でも、4月の統一地方選や7月の参院選に悪影響を与えかねないとの懸念や、参院選前の通常国会は会期延長が難しく、提出しても成立が困難なことから慎重論が強まり、提出見送りで最終調整していた。
……ようやく、こんな決着。年初から毎日のように「(国会に)提出する」「いや、しない」と綱引きがあり(演じたのは官邸、厚生労働省、与野党、労働団体)、どうなることやらと思ったらこの始末でした。
このホワイトカラー・エグゼンプション(以下WE)が『残業代ゼロ制』と受け取られた時点で負けは確定ということでしょうか。しかし国会に提出したかった勢力はこんな内容で“勝つ”自信があったということ。思えばなめられたものです。
事務職員部報で、今号からWEについて大特集したいと考えています。なぜなら
・県教組のなかで、教員は最初からエグゼンプト(除外)されていることから、事務職員と栄養職員だけの課題であること。
・今回は参院選前だから引っ込めたとしても、名前を変えるか何かして再度提案されてくることが確実だから。
・残業手当の問題だけがピックアップされているけれど、他に検討すべき問題がたくさん含まれていること。
そして
・WEの内容が、「希望の国」「美しい国」日本の弱点を露骨にさらけ出しているため。
……などです。何より、わたしたちにとってまったく他人事ではない課題だということを理解してください。
さて、それではWEとは何だったのでしょうか。日本語に訳せば「自律的労働時間制度」。いつまでも横文字であったことでお分かりのようにアメリカで生まれた労働法制です。労働基準法に定められている一日8時間、週40時間の労働時間規制を適用しないということ。いつ、どのように働くかという自由度が高まり、働いた【時間】ではなく仕事の【成果】で賃金を決めようというわけです。本家のアメリカには労働時間を制限する法律がなく、労働時間が週40時間を超えたら1.5倍の割増賃金を払うという条項があるだけです。この条項を除外するのがWE。管理職であったり、専門職であることが必要条件なので、エグゼンプトされるとむしろ「オレもここまで来たか」とプライドがくすぐられる傾向があるとか(※)。
日本版WEは発想からして違います。誰よりもこの制度を推進したがっている財界が、なぜWEを必要としたかというと……
【以下次号】
※最初は名誉であったアメリカのWEも、次第に適用範囲が広がり、今はそんなに喜ばれてもいないらしい。