死の商人であることの何が悪い、と開き直り、しかし自分が現実の死と向き合うことによって愛と正義の人に生まれ変わる……わははは。能天気さに批判集中。
でもこれがアメリカの本音。天才科学者にして大金持ち(つまり大嘘の設定)のロバート・ダウニーJr.が装甲し、飛行し、敵を掃討する姿は否応なくアメリカの象徴だ。
だからこそ、ラストで主人公は“あのセリフ” (かなり笑える)を吐かなければならなかったわけだ。要するにODAだの技術提供だのとめんどくさいことをするよりも、軍隊つっこんで後進国に言うこと聞かせた方が手っとり早いって宣言ですわね。
「この1冊」で散々ブッシュに代表されるアメリカを批判してきたわたしのことだから、こんなアメリカ礼賛映画に怒ったと思うでしょ。でも違うんだな。だってさー、この主人公って手当たり次第に女をものにするプレイボーイでありながら、いちばん身近にいる秘書の美しさに全然気づかない(しかもグウィネス・パルトロウがやってるんだよ)というおバカな設定。マジな突っこみは野暮というものでしょう。
そんなバカ社長を演じているのがロバート・ダウニーJr.なのも気がきいている。チャップリンに扮した「チャーリー」や、生活が破綻した新聞記者を絶妙に演じた「ゾディアック」でわかるように、この人はとにかく演技がむちゃくちゃにうまい。おまけにクスリで身を持ち崩した過去があるので、常にジョークでしか会話できない能天気野郎を演じても、なんか味わいが深いのだ。脇をかためるのがジェフ・ブリッジス(ジーン・ハックマンと区別がつかないルックスになってます)とテレンス・ハワードなのも渋い。
不満はある。エンドロールが流れる寸前に「タイトル終了後、つづきがあります」とテロップが入るのはちょっとなあ……商売に直結するから今回は仕方がないとはいえ、どうもしらける。次回からはやめて。
で、アメリカでは大ヒットしたのに日本でふるわないのはなぜか。アメコミ映画は「スパイダーマン」以外は当たらないのが通例とはいえ、予告編を観た時点で「こりゃ(日本じゃ)ダメだ」とすぐにわかりました。だってパワードスーツはなんといっても日本が本場。すっかり目が肥えたアニメオタクたちに、あのキャラは受けないだろう。途中で赤くペイントされるアイアンマンに、全国のガンダムフリークは一斉にこう突っこんだはず。
「そりゃ、シャア専用だろ。」
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