07年1月31日付事務職員部報より。
White Collar Exemption②はこちら。
それでは勤務時間の自由度が高まるとはどんなことでしょう。自分の仕事を完遂するために、ある一日は18時間ぶっ通しで働き、翌日はオフにする……なるほど“自律的”でしょう。しかしそれが実現可能だと本気で厚生労働省は考えているのでしょうか?
・退勤するときに上司の顔色をうかがい
・残業が多いと無能だと評価され
・あふれるほどの仕事を抱えこんでも文句も言わず
・いちばん文句を言わない層である中間管理職へ仕事を集中させ
……るような日本で?
徹底した横並び意識で労働者をしばり、利用してきたのが日本の経営者だったはず。それがなぜ今“自律”を持ち出したのでしょう。答は二つあると考えられます。
A)残業代をカットすることで人件費を下げ、国際競争力を上げるため。
これが本音の中の本音でしょう。賃金の安い外国(特にアジア)の製造業に勝つために、まず自国の労働者の賃金を下げようというわけ。しかしこの発想には、労働者が同時に消費者でもあるという観点が完全に抜け落ちています。つまり、競争力がついても日本の景気は全然よくならない……あ、そうか。“国際企業”だから自社の製品がどこでもいいから売れてしまえば、自国の景気なんかどうでもいいわけか。近年、企業のトップが“株主のことしか考えていない”悪弊がこんなところにも。
B)労働基準法が邪魔になってきた。
これも(もちろん誰もそんなことは言わないけれど)本音だと思います。WEが持ち出された動機のひとつとして、過労死の問題があります。近ごろ、過労死について、責任を企業に求める判決が続いており、これをクリアするために労働時間規制をとっぱらってしまおうと財界が考えたわけです。
基本的なことをひとつ。労働基準法の言う「1週40時間、1日8時間」とは、40時間とか8時間を「働かなければならない」と定めているわけではありません。「それ以上働かせてはいけない」と定めているのです。だからそれ以上働かせるにあたっては割増賃金が支払われるわけ(まあ、このあたりにはサブロク協定とかめんどくさい理屈もあるんだけど)。そして、この労働基準法というのはものすごく“強い”法律で、どんな就業規則や労働協約にも優先します。これが、結局は邪魔で仕方がないのでしょう。
こんな数字があります。
週50時間以上働く労働者の割合……日本28% アメリカ20% イギリス15.5% ドイツ5.3% フランス5.7%
年間休日日数……日本127日 アメリカ127日 イギリス137日 ドイツ143日 フランス140日
これは厚生労働省の「就労条件総合調査」、および労働基準局賃金時間課推計より抜粋したもの。日本の労働条件が先進諸国のなかでも劣悪なものであることがわかります。ここにWEが導入されるとどうなるか……『時間を自己管理でき、ワークライフバランス(仕事と家庭生活の両立)に寄与する』(厚生労働省の説明)でしょうか?
まるっきり逆になることが容易に想像できます。残業代を払わなくてもよくなった経営者が、しめたとばかりに果てしない長時間労働を課すことは自明。
「(残業代が出なくなったら)みんな家で過ごす時間が増えて、少子化対策にもなるんじゃないですか」
安倍首相の能天気さは、こりゃ前首相以上だなあ。
さて、WEの問題点はもうひとつあります。これは次号で。