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それ以前から母は少なからず異常さが見えていた。ほとんど家事をせず、引きこもりの二男については、甘やかすだけ(つまりほとんどコミットしない)。夫に耐え切れなくなった彼女は家出する。
この、出て行った先のアパートのシーンは、追いつめられた家族の最後の場所であることが観客に理解できるようになっている。あたたかな色調のなかで、母と二男はやはりコンビニから買ってきたパスタを食べている。
そんな、まったく料理をつくらない母親が、息子たちに発する質問は哀しい。
「地球最後の日に、何が食べたい?あたしはおばあちゃんがつくったちらし寿司だなあ」
答えたがらない二男は、せかされてようやく答える。
「うな重。」
「えええ?」
「おれ、歯わるいし。」
そこへ父親が現れ、アパートの情景は文字通り暗転する。二男に手を上げないことを条件に家に戻る妻。そこには、さらなる地獄が待っていた。
二男が行うのは、ご想像のとおり無差別殺人だ。この映画は、どんな家族にだってその不幸は起こりうるのだと主張している。その主張に説得力がありすぎて(まったく他人事だと思える観客は幸福だ)、見終わって不安でいたたまれなくなる。
ナイフを持った二男は、殺戮の直前にキャバクラの呼びこみに声をかけられる。殺す相手としてその呼びこみを二男が見た、という判断もあるだろうが、その誘いにのっていたら、ひょっとしたら不幸な事件はなかったかも、とも思わせる。現実はあやふやで、家族という存在もまた危うい。
死刑執行の朝、二男が最後に口にしたものを聞いて、父親は何を考えたか。彼が最後に食べる冷やし中華もまた、壮絶にまずそうなのである。気力と体力が充実しているときに見ないと、弾き飛ばされそうな映画。ぜひに、とは言わない。でも、これもまた家族の映画だ。