さすが地元庄内で撮られた映画だけあって、前作につづいて鶴岡まちキネは平日にもかかわらず(例によって振替休日に見ています)にぎわっている。全国的にも高稼働のようで、まずはめでたい。
おなじみの田畑は羽黒にあるスタジオセディックのもの。今回は謎の集団に荒らされてしまう。ある勢力(ばればれですけど)の陰謀で、湯長谷藩はふたたび窮地に陥り、藩主(佐々木蔵之介……思えば時代劇にぴったりの名前)や家来たち(寺脇康文、六角精児、西村雅彦、柄本時生、知念侑季)は全力疾走する破目になる。
どうしたって前作の二番煎じになってしまうわけなので、作り手たちは開き直って同じ構図でドラマを展開する。抜け忍(伊原剛志)のエピソードとかね。
でもこれ、時代劇ファンにとってありがたい話なのだと思う。予定調和けっこう。妙な新機軸はむしろ邪魔。水戸黄門が将軍職に恋々とするドラマがあったとして、あなた見たいですか。そんなファンに向けたサービスとして、いま朝ドラでチョー悪役をやっている(まだやってますか)古田新太に、とんでもない人物を演らせています。気持ちよさそうに桜吹雪を……あ、あれは北町の奉行だった。
前作よりもありがたいのは、深田恭子が今回は最初からめちゃめちゃ綺麗なこと。遊女から大名の側室になる戸惑いもかわいい。できればもう少し色っぽいシーンがあると……いかんいかん。そういう邪念はこのドラマに似つかわしくない。
この手のほのぼの時代劇が、年に1~2本はあってほしい。むかしなら明朗時代劇と称された感じの。今年は「殿、利息でござる!」があったし、去年のわたしのベストワンは「駆込み女と駆出し男」。この流れはおそらく「武士の家計簿」あたりから始まったんだろうけれど、わたし、好きです。
それに、一種のファンタジーとして描かなければ、柳生(あ、言っちゃった)の遣い手たちと闘う湯長谷藩のおとぼけ家来たちが、まったく傷つかないのは納得できないでしょう(助さん格さんが毎回瀕死の重傷を負うドラマがあったとして、あなた見たいですか)。
しかし吉宗を善玉にするために、清水義範の「尾張春風伝」、朝井まかての「御松茸騒動」に登場する尾張藩主、徳川宗春が単なる愚昧な殿様になっているのは納得できん!おっと、これも邪念かしら。