いつものように(愛すべき)仙台のお話。ある家で起こった人質立てこもり事件を伊坂幸太郎が描く……期待するなというほうが無理。タイプとして「ゴールデンスランバー」のような味わいになるのかと思ったら全然ちがいました(笑)。
“ある家”のあたりから壮絶なひっかけが用意してあります。読者が必ずだまされるであろう展開は、作者が作品のなかに(「ジャン・バルジャン」のヴィクトル・ユーゴーのように)登場して解説したり、オリオン座のうんちくが“ある人物”(これもひっかけ)によって延々と開陳されたりする工夫によってみごとに着地する。
しかしさすがにやりすぎじゃない?と思えるほどで、ユーゴーやオリオン座は、仕方なく伊坂が用意したという後書きでの告白は、あながち韜晦ではないのかも。
それでも読ませる。
なにしろこの作品の主人公は(言っちゃっていいのかな)、あの泥棒探偵黒澤なのだ。彼が登場すると多幸感ありあり。これもネタバレになっちゃうから微妙だけれど、今回はほぼ出ずっぱりの大活躍。
ミステリを成立させるために、ここまでの曲芸が必要なのかと半分はあきれ、半分は伊坂の力技に感服。次作はもっと軽いのでいいですからね。