事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「どこかでベートーヴェン」中山七里著 宝島社

2017-11-28 | ミステリ

御子柴悪徳弁護士シリーズや犬飼(男の表情は読めるが女心はさっぱり)刑事シリーズは読んできたのに、肝心の岬洋介シリーズはこれが初。中山の本流はこれかもしれないのに(笑)。

なぜ最新刊から読み始めたかというと、これが岬の最初の事件だというふれこみだから。もちろんデビュー作「さよならドビュッシー」などの事件への伏線がしこんであるらしいけど、それはあとのお楽しみ。

才能のないことを「それは言わない約束でしょ」とお互いになれあっていた田舎の高校の音楽科クラスに、大マジの天才(岬)がやって来て……。

なぜ青春小説としてかなりきつい展開にしているかと思ったら、ラストのためだったようだ。びっくりしました。岬シリーズに耽溺した人ならもっと驚いたと思う。さすがどんでん返しが得意技な作家だけある。作家が一生に一回しか使えない手段をここで使ったかっ!

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「翼がなくても」中山七里著 双葉社

2017-11-28 | ミステリ


タイトルは赤い鳥の「翼をください」への返歌かな。理不尽な事故で片足を失った200m走の女子アスリートをめぐる“殺人”事件。

中山ミステリのスターである御子柴(極悪)弁護士犬飼刑事の共演。ではあるけれども内容のほとんどは『人はなぜスポーツをするのか』だ。

アスリートの平均寿命が10年ほど一般人より短いとか、障がい者スポーツが日本でどれだけ軽んじられているかとか、スポーツをめぐる闇もきちんと描かれていて、というかメインはそちら。

ヒロインが実につき合いにくそう(笑)なのも、アスリートの一面をついている。お人柄だけではトップアスリートにはなれませんもんね。

中山七里の作品は、いつもたいそう面白いのだけれど、後味が悪いときがたまにある。ハリウッドコードを意図的に無視しているというか。

登場するのが二組の家族だけなので、真犯人が誰であってもしんどい。また苦い終わり方なのかと思ったら……そうか、中山は泣かせるのも得意技だったんだよな。

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