事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ブレードランナー2049」Blade Runner 2049 (2017 SONY)

2017-11-04 | 洋画

163分の長篇。それなのに、「終わらないでくれ!」と願ってました。陶然。

「彼女の名前は?」

主人公の、ブレードランナーであるK(ライアン・ゴズリング)は、むかし同じ職業だった男(ハリソン・フォード)に問う。

「…………レイチェル。」

両耳のあたりにゾワゾワっと来ました。感動。

わたしは1982年のオリジナルの大ファンで、劇場で見てレーザーディスクも買って、ほいでディレクターズ・カットだのファイナル・カットだのまですべて見ている。そんな人間だから感動したんだろうと思われるかもしれない。

確かに、眼球へのこだわり、羊の折り紙、レプリカントをいらつかせる設問の数々、音声で画像をコントロールする映画的ギミック、ヴァンゲリスの音楽(ハンス・ジマーが受け継いでいます)、前回はドライヤーで驚かせて今回は強烈なシャワー、などオリジナルへのリスペクトありあり。

しかしドゥニ・ヴィルヌーヴの新作としても大傑作だ。オープニングの、無数の太陽光パネルの描写からして、SFなのに現実の美しさを際立たせて風景の異常さを描く手法は健在。

前作は「強力わかもと」でアジアンテイストを一発で示していたが、今回は製作のSONYがその責任をとっています。バーチャルな恋人が、現実の娼婦を連れてきてシンクロし、3Pにおよぶという不健康な描写にはオタクたちは気が遠くなっただろう。

ハリソン・フォードの登場は意外なほど遅く、いや別にこのままでも面白いから……と思っていたら、彼が出てきた途端にもっと面白くなったのにはあきれた。さすがデッカード。もうヌードルを四つも食べる元気はなさそうだが、その味わいは深い。Kとデッカードの殴り合いの真ん中に、プレスリーとシナトラを置く展開にはうなった。

「俺には本物がわかる」

というセリフとラストとの相関には脱帽(レプリカントが“偽物”じゃない)。

2017年のマイベストはこれで決定。すばらしいSFであると同時に、すばらしいハードボイルドでなければならない条件もちゃんとクリアしている。おみそれしました。それにしてもロビン・ライトをはじめとして、今回もいい女をそろえたなあ!

コメント (6)
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「ゴーストマン 消滅遊戯」 ロジャー・ホッブズ著 文藝春秋

2017-11-04 | ミステリ

「時限紙幣」はこちら

30分だけ時間をつぶすのに、書店以上の天国はない。書店員の気合いがこめられたディスプレイを眺め、どわっ、この人の新刊が出てたのかと驚かされるのもしばしば。Amazonのメールもうまいところを突いてくるんだけど、あまりにもピンポイントなのが難。やっぱり現物にはかなわない。

で、天童の八文字屋で30分。自分の心の中では「2000円までは使ってよし」

うわあフロスト警視シリーズの完結編をまだ買ってなかった、宮部みゆきも出てる、伊坂幸太郎の新作はもう買ったからいいんだよな……そして目に入ってきたのがこの「消滅遊戯」。ついにあのロジャー・ホッブスの新作がっ。

2052円と予算オーバーだけど文春だから高いのは仕方がない(笑)。それに、ゴーストマン(「時限紙幣」は2015年のマイベストミステリです)の続篇を読まずにおれるほどわたしは人間ができてはいない。

舞台はマカオ。闇ルートで流れる“ブツ”の争奪戦。このブツが宝石であるかのようにうまくミスリードされる。まるで見てきたような嘘が大量にしこまれているのか、東京の描写の正確さから考えると、あるいは取材が徹底しているのか。とにかく今回も面白くて読み始めたらやめられない。

前回がまるで“携帯電話は飲み物”であるかのようにバッキバキに使い捨てにして笑えたように、今回ゴーストマンはあらゆる人に現金まきまくり(笑)。敵役との最後の決戦が、ホテルの人口滝で行われるなど、コナン・ドイルへのリスペクトもばっちりだ。

セックスをまったく描かず、まるでアンジェラとゴーストマンの関係がプラトニックであるかのように誤解させるテクニック。うまい。さあまたしても新作を待ち望む日々がつづく……

え。

作者のロジャー・ホッブスは、28歳の若さでオーバードーズのために急死してしまっている。なんてことだ……

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