163分の長篇。それなのに、「終わらないでくれ!」と願ってました。陶然。
「彼女の名前は?」
主人公の、ブレードランナーであるK(ライアン・ゴズリング)は、むかし同じ職業だった男(ハリソン・フォード)に問う。
「…………レイチェル。」
両耳のあたりにゾワゾワっと来ました。感動。
わたしは1982年のオリジナルの大ファンで、劇場で見てレーザーディスクも買って、ほいでディレクターズ・カットだのファイナル・カットだのまですべて見ている。そんな人間だから感動したんだろうと思われるかもしれない。
確かに、眼球へのこだわり、羊の折り紙、レプリカントをいらつかせる設問の数々、音声で画像をコントロールする映画的ギミック、ヴァンゲリスの音楽(ハンス・ジマーが受け継いでいます)、前回はドライヤーで驚かせて今回は強烈なシャワー、などオリジナルへのリスペクトありあり。
しかしドゥニ・ヴィルヌーヴの新作としても大傑作だ。オープニングの、無数の太陽光パネルの描写からして、SFなのに現実の美しさを際立たせて風景の異常さを描く手法は健在。
前作は「強力わかもと」でアジアンテイストを一発で示していたが、今回は製作のSONYがその責任をとっています。バーチャルな恋人が、現実の娼婦を連れてきてシンクロし、3Pにおよぶという不健康な描写にはオタクたちは気が遠くなっただろう。
ハリソン・フォードの登場は意外なほど遅く、いや別にこのままでも面白いから……と思っていたら、彼が出てきた途端にもっと面白くなったのにはあきれた。さすがデッカード。もうヌードルを四つも食べる元気はなさそうだが、その味わいは深い。Kとデッカードの殴り合いの真ん中に、プレスリーとシナトラを置く展開にはうなった。
「俺には本物がわかる」
というセリフとラストとの相関には脱帽(レプリカントが“偽物”じゃない)。
2017年のマイベストはこれで決定。すばらしいSFであると同時に、すばらしいハードボイルドでなければならない条件もちゃんとクリアしている。おみそれしました。それにしてもロビン・ライトをはじめとして、今回もいい女をそろえたなあ!