東映実録路線まっさかりの世代であるわたしにとって、渡哲也とはつまり「仁義の墓場」であり「やくざの墓場 くちなしの花」だ。
もっと上の世代にとっては日活の「無頼」などのシリーズかも。
しかし大方は「大都会」「西部警察」の、冷静で強面のボスの印象が強いはずだ(この本には全エピソードが掲載されている。湯野浜や酒田でロケしたのももちろん)。
はたして石原プロモーションに入り、刑事ドラマをつくりつづけた彼は幸せだったのか、とても微妙なところ。彼は確かに歴史に残る俳優だ。それでも、もっと演じたい、撮りたいものが他にあったのではないか……それは石原裕次郎とシンクロしている。
それ以上に、彼は常に病気との闘いの日々にいた印象。彼の陰影の濃い表情は、そのことも関係していたのかもしれない。陽気な「浮浪雲」を実はそんなに喜んでいるわけではなかったのは意外。
てなことを言いながら、実はわたし、「大都会PARTⅡ」の松田優作とのからみがいちばん好きかも。
それにね、わたしは創価学会員ではないんだけれども、人間革命の2作目?で登場して一瞬にして場をさらったやくざ役にはやっぱりもってかれたのでした。招待券を学会員の同級生から300円で買った甲斐があったというものだ。さすが金券ショップ高校生(笑)。
責任監修は春日太一。さすがだ。