事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「勁草(けいそう)」 黒川博行著 徳間書店

2017-11-23 | ミステリ

おそらく黒川は、読者を意図的に興奮させまいとしているのだと思う。

刑事たちは、クライマックスに至っても世間話をやめない。まるで実生活のように。そのあたりの味わいこそが、黒川博行らしさというものなんだと思います。

殺人に至る経過も、実際にはこんなヘタレな展開が多いんだろうなとしみじみ。被害者の口座から金をひっぱるのがいかに大変かというのが最大の盛り上がり。

刑事の奥さんは小学校の先生で、若いうちは奥さんのほうが給料が高いけれども、年をとると警察のほうが手当がある分、上になるとか、そこまでリサーチしています。あ、これは黒川の奥さんが先生だったから実感なのかな(笑)。

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「喧嘩(すてごろ)」 黒川博行著 角川書店

2017-11-23 | ミステリ

疫病神シリーズのいまのところ最新作。

前作で文字どおり「破門」されてしまった桑原と、商売が先細りの二宮コンビは相変わらずへらずぐちの応酬で笑わせてくれます。

黒川の作品がリアルだと思うのは、金の部分。二宮の預金残高とか、しのぎの相場とか、ああそうなんだろうなあと読者を納得させる額なの。

よもやこのシリーズが映像化されることはあるまいと思ったら、なんと佐々木蔵之介主演で映画化。ところが、二宮役が関ジャニ∞のあいつですから、ちょっと二の足を踏む。他に誰かいなかったのかなあ。

でまたこの作品には悪ーい学校事務職員が出てくるんですよ。いいぞ!

「泥濘」につづく

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毎日かあさん完結。

2017-11-22 | アニメ・コミック・ゲーム

「高知のど田舎貧乏出身ヤンキーでバカな女子高強制退学上京してアル中夫とリコン」(本人弁)

でおなじみ西原理恵子の、もはやライフワークと化していた「毎日かあさん」がついに完結。彼女の私生活で語られないことは(高須クリニック院長との関係もふくめて)もうなにもない。

最初は息子の育児に翻弄される日々が中心。女の子と違って男の子はどうしてこうがさつでガキで汚くてうるさいのか、というネタが(まわりの息子をもつお母さんたちの苦闘も含めて)つづいていたが、その息子が海外に留学してすっかり大人になり(というわけでもないけれど)、今度は娘のほうがツンツカな反抗期に突入。

掲載していた毎日新聞とケンカになったことも含めて、読者はひたすら西原に共感したはずだ。

まあじゃんほうろうき」「はれた日には学校を休んで」「ゆんぼくん」のころからの読者であるわたしは、上が息子で下が娘であることも手伝って「他人ごとじゃない!」と、親戚の親子を見るような思いで読んでました。

そんな西原が母業を卒業する。まさしくわたしと妻も親としての役目を終えつつあるので(そうでもないあたりがつらいですけど)、これからの彼女を、やはり他人ごとじゃなく見つめていこうと思います。

にしても、オトナになりつつある息子と娘に

「楽しかった」

と母親の日々をふりかえる西原に、またしても泣かされてしまった。全国紙に毎週このような本音むき出しのマンガが連載された奇跡も含めて、歴史に残る作品。そして

「お互い元気でやってくれれば家族仲良くなくてヨシ」

も歴史に残る名言。

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「マシュマロ・ナイン」 横関大著 角川書店

2017-11-21 | ミステリ

不祥事のために大会出場停止となった相撲部(別に日馬富士のことがあったから紹介するわけではございませんよ)が、いろいろあって甲子園をめざす……

横関大は、この無理矢理な設定を納得させるために、高校野球なのにスモールベースボールじゃなくビッグベースボールを監督が選択する展開に。なるほど。相撲部だってアスリートなのだから、やるときはやるぜと。

もちろんそれだけだと物語としてしんどいと思ったか、殺人事件やドーピングをめぐる謎もしこんである。

でも、相撲部だからといってここまで大盛りにしなくてもよかったのでは。

例によってどんでん返しが用意してあって、とても気持ちのいいエンディングを迎える。やるなー横関。

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「ローガン・ラッキー」 Logan Lucky (2017 SONY)

2017-11-20 | 洋画

映画監督の才能とはいったいなんだろう。高邁な理論をとうとうと披露しても、いっこうに作品がはずまない人もいれば、なんでもない風景や動きだけで観客をわくわくさせてくれる御仁もいる。

クリント・イーストウッドハオ・シャオシェン、マキノ雅弘などは、どうカメラを振っても魅了してくれる。そしてわたしにとって、スティーブン・ソダーバーグもそんなわくわく組のひとりだ。

「アウト・オブ・サイト」「エリン・ブロコビッチ」「トラフィック」「コンテイジョン」……役者との関係性、編集の妙などが影響しているんだとは思うけれど、ソダーバーグマジックという気すらする(そう言いながら、わたしはオーシャンズ11、12、13をあまり高く評価はしていない)。

さて、そんな才人がなぜか引退を表明し、4年ぶりのカムバック作。

予告篇ではその面白さがいまひとつ伝わってこなかった。ジェームズ・ボンドじゃないダニエル・クレイグをはしゃがせ、どう見ても演技がうまそうじゃないチャニング・テイタムと、「フォースの覚醒」で全然美男じゃなくてこれから大丈夫なのかと思わせたアダム・ドライバーが主演。うーん。

ところが、微妙な間(ま)のやりとりや、画面のどこかに必ず動いている物体があるなど、こんなに躍動してる映画だったとは!

画面に横溢するのはアメリカ、アメリカ、アメリカ。典型的なプアホワイトである兄(テイタム)と、イラク戦で左手を失った弟(ドライバー)が、爆破のオーソリティであるクレイグを脱獄させ、カーレース会場から大金をまきあげる……計画は考えてあるもののけっこうずさんで、こんなんで成功するわけない……あ、でも“ラッキー”だから……ところが最後の最後にもうひとつひっくり返して客を驚かせる。こういうタイプの映画を待ってたんですよ。

もっとも損をしたのは誰か、もっとも得をしたのは誰かなど、徹底的に客をだましてくれる。スピリチュアルが入ったカーレーサーのエピソードがやけに長いのはなぜかとか、テイタムの傷を治療するボランティア団体が「寄付に頼っているのよ」なんてセリフが挿入されているのまで計算づく。

しかもエンドロールでは

And Introducing Daniel Craig as Joe Bang(役名が今回もJ.Bなのね)

とかます悪ノリぶりもうれしい。拾いもの、という表現はソダーバーグに失礼だが、もう引退するなんて言わないでこれからもいっぱい撮ってください。せっかく映画の神様に愛されているんだから。

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おんな城主直虎 第46回 悪女について

2017-11-19 | 大河ドラマ

第45回「魔王のいけにえ」はこちら

前回の視聴率は10.7%と超低空飛行。イッテQ!(日テレ)とスポーツ大将(テレ朝)に食われた……という総括でもないような気がする。この時期に視聴率が下がるのは、やっぱりきつい。

脚本に問題があるんだろうか。森下佳子さん自身が「ほぼ日刊イトイ新聞」でこう語っているし。

「映画は監督のもの、ドラマは脚本家のもの」

というような考え方があって。むかしから言われてるんですけど、映画は、だいたい1時間半とか2時間で、それを撮っていくときは、まあ、少なくとも、脚本がない状態で撮りはじめるということは、基本、ないわけですよ。

つまり、映画には完成した台本があって、最後まで見通せる状態で監督は撮れるんです。だから、責任持って大胆なアレンジが可能なので、監督のものと言われる。だけど、連ドラの場合は、スケジュール上、10話なり13話なりの脚本が撮影前にできあがってるということが少ない。

だから、演出家の方が、想像をたくましくして自分の思う方向へ撮っていくと、あとがつながらなくなる可能性もある。だから、まぁ、どうしても大胆なことができないわけです。じゃあ、誰が責任を持つのか、って言ったときに、それは脚本家なり、プロデューサーなり、というふうになる。たぶん、その違いかなと。

……だから、往時は山田太一倉本聰、そして向田邦子の名がフューチャーされたけれども、演出家は映画に進出するしか(「紅い花」「四季・ユートピアノ」の佐々木昭一郎のような例外はあるにしろ)名をあげる機会はなかったと。異論バリバリでしょうけれども。

今回は勘所の回。これまで森下さんが慎重に伏線を仕込んでいたのを刈り込む回だ。残虐な信長に唯々諾々としたがう家康という構図をひっくり返すために、どれだけのことが行われたかという好例。

「悪女について」というタイトルなのだから当然のこととして築山殿(菜々緒)が悪女ではなかったという造りになっている。

この脚本家は、やはり有能だということを知らしめた回。誰もが、登場しなかったキャラを頭に描いて泣かせられる。しかも、この大騒動が直虎と万千代が直列につながる契機となる仕掛け。おみごとです。久しぶりによかったなあ。視聴率?これで下がるようなら大河ファンはなにやってんだってことですかね。今度こそ12%台復帰と読みました。

第47回「決戦は高天神」につづく

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「野良猫を尊敬した日」 穂村弘著 講談社

2017-11-19 | 本と雑誌

「たましいのふたりごとアゲイン」はこちら

・インターネット接続をするのが面倒で、何年もネットカフェに通ってしまう。

・正味なところ、自分に自信がもてないのに、自意識過剰なのでできるふりをしてしまう。

・天職に就いている、という人をうらやましがりながら、しかし天職がわからない自分を弁護してしまう。

・チャットモンチーのことを『自分の時代』の少年ナイフだと結論づけてしまう。

……わかるー。ものすごくわかる。それでこそ穂村だ(笑)。自分の小ささをさらけ出しながら、小さな声で「で?」と読者にお伺いをたてる。なんてみごとな芸なんだ。

 

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「ハーメルンの誘拐魔」 中山七里著 角川書店

2017-11-18 | ミステリ

横関大につづいて、これまたどんでん返しで有名な中山七里。でもこの作品では犯人が途中でわかっちゃいました。

むしろこの作品は、子宮頸がん予防接種への怒りを読み取るべきでは。厚労省と医者と製薬会社のトライアングルによって、他国では禁止されたワクチン投与をやめない現状がテーマ。

もっとも、「切り裂きジャックの告白」で臓器移植の問題を告発したのと同様に、すっきりしたラストにならないのがしんどい。すっきりされたのでは告発にならない、という感じでもなさそうなあたりがなあ。

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明細書を見ろ!2017年11月号PART2 特殊業務手当増額

2017-11-16 | 明細書を見ろ!(事務だより)

PART1はこちら

これは人事委員会勧告とは別の話なのですが、来年の1月1日からいわゆる「特殊業務手当」が引き上げられます。3年ぶり。いい機会なのでこの手当についてちょっと説明します。

正式名称は「特殊業務に従事する教育職員の特殊勤務手当」。第1号業務から第4号業務まで存在します。まあ、そのうちの1号業務は非常災害などがからむレアなやつなので(わたしは一度もあつかったことがありません)、おなじみなのは以下の三つ。



クミアイは、手当が引き上げられることで、部活動がなお加熱することはないようにと釘を刺している様子。

近ごろ評判の、内田良名古屋大准教授の「ブラック部活動」(東洋館出版社)を読んでみたら、彼が提唱するのはまことにシンプルかつ金もかからない

「一週間の部活動を三日以内とする」

でした。そう聞いた瞬間に、「他の日に生徒が何をするかわからないじゃないか!」と危惧したあなたに伺いたい。このお手当の正式名称をもういちど思い返してください。

「特殊業務に従事する教育職員の特殊勤務手当」

が、特殊な業務でも特殊な勤務でもない現状こそが特殊だと思いませんか。まあ、それ以前に時間外勤務手当が出ない状況こそが問題なんでしょうけど。

2017年12月期末勤勉手当号PART1「越年?」につづく

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明細書を見ろ!2017年11月号PART1 速報人事委員会勧告PART2

2017-11-16 | 明細書を見ろ!(事務だより)

So What - Miles Davis Quintet 1963 Monterey Jazz Festival

先月号でお伝えしたように、山形県人事委員会が勧告を出しました。今年は

・給料表を変えないで、子どもに関する扶養手当を増額

・勤勉手当を0.1月分増額

・経過措置を終了させる

……がメイン。印象として「横着したなあ」とちょっとがっかり。解説しましょう。

・民間の事業所とくらべて山形県職員の月例給は308円下回っている

・その分を本来は給料表に反映させるべきところ、子どもに係る扶養手当を400円上げることで対応。

数字として、平仄が合っているようには見えます。少なくとも今年度の手取りで考えればそうかもしれません。でもね、基本給を上げるのと扶養手当を上げるのでは根本的な違いがあります。

・対象者が限定される

確かに。しかしそれ以上に

・基本給の引き上げは、退職手当や年金に影響していくが、扶養手当はその場限り

これが大きいわけ。別にわたしが対象者じゃないなんてちっちぇーことで怒っているわけではございませんよ。長い目で、みなさんの将来を見すえながら案じているのです。そうに決まっています!

本日の1曲は「ドリーム」でも使われたマイルス・デイビスの名曲「So What」。カインド・オブ・ブルーとは違うメンツ。すげえ。

PART2「特殊業務手当増額」につづく

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