Joni Mitchell - Chinese Cafe/Unchained Melody
Vol.37 「ぼくは悪くない」はこちら。
60代女性。30代半ばの息子の結婚の相談です。
婚活パーティーで40代の女性と知り合い、交際1年で同居を始めました。その女性の家事能力に不安を感じます。いいかげんな水加減で焦げたご飯、薄いみそ汁、グリルは洗いたくないとフライパンで焼いたアジの干物1枚、がある日の夕食でした。
料理の分担は半々でという約束だったそうですが、彼女が料理をした日も息子が片づけをしているそうです。相手の母親からも初対面で「料理はさせていないからできません」と言われました。
料理は上手でなくてもいいのです。でもやる気がなく、献立に思いやりのなさが表れているような気がして腹立たしく思います。嫁だと思うから気になるわけで、ただ彼女であるならまだ許せるのかもしれませんが。親の立場から、婚姻届の提出を延期してほしいと提案するのは間違っているでしょうか。
(岡山・A子)
もちろん間違っています。絶対に間違っています。
まかりまちがってそんなことを息子さんに言おうものなら、まともな男ならブチ切れます。それで二人の仲が壊れたりしたら、喜ぶのはただひとり。そう、あなただけです。
婚姻届の提出を延期させたい?嘘おっしゃい。あなたがそんなことだけで満足するはずがない。あなたはその息子さんより年上の女性が気に入らなくて気に入らなくて仕方がないんでしょう?
彼女であるなら許せる?心にもないことを言って糊塗しているようだけど、できた女性ならできているだけで「息が詰まる」とか言い始めるに決まっています。
要するにあなたは息子の相手は自分で決めたいし、それ以外の候補者にはとりあえず難癖をつけるわけだ。
それにね、あなたの怒りの半分は、娘に料理も仕込まず、40すぎまで自由にさせておいた彼女の母親に向いているのではありませんか?
確かにあなたとは違ったタイプの母親かもしれない。しかし夕食のメニューを得々と開陳するタイプより、そっちの母親のほうがずっとましかな。
本日の1曲はジョニ・ミッチェルの「チャイニーズ・カフェ」
産業ロックの音質向上を誰よりも意識した人。アンチェインド・メロディのインサートがかっこいい。んで、このライチャス・ブラザーズの曲はあの「ゴースト/ニューヨークの幻」で名曲にカウントされることになる。
Vol.39「コロナとマナー」につづく。
わたしと同世代の人なら、同じ記憶を持っている人はたくさんいると思う。もっとも、小学校時代の国語の教科書が光村だった人限定かなあ。
言語学者として高名な(そして金田一耕助の名の由来となった)金田一京助のエピソード。
樺太アイヌの言語を研究する若き金田一は、なかなか彼らが打ち解けてくれないために苦労していた。子どもたちをスケッチしていると、ひとりがやってきて好奇心をむき出しにする。そこで顔の絵を指さし「目」「鼻」などの名が判明する。
そして金田一はそのノートに意味不明なグルグルの線を書くと、いつのまにかやってきた子どもたちが
「ヘマタ」「ヘマタ」
と言い始める。「何?」という意味のアイヌ語だったのだ。以降、金田一は「ヘマタ」という一語で樺太アイヌの言語を収集していく……
どうしてこのような話をしているかと言うと、出てくるんですこの直木賞受賞作に金田一京助のヘマタが。めちゃめちゃにうれしかったなあ。
さて、この長大な物語は、和人からのいわれなき差別に憤る樺太アイヌと、圧政下のロシアで樺太に投獄されたポーランド人が、怒りに似た行動原理によって目的に(迷いながらも)まい進する姿が描かれている。
このふたりだけでなく、登場人物たちがそれぞれ陰影深く描かれ、彼らもまたその
行動原理=熱源
によって歴史をつむいでいく。経済的に困窮しながらも、ひたすら学究に打ち込む金田一京助にしたって同じ熱をもっていたのだ。
日露戦争前夜から数十年におよぶ歴史小説。“誰のものでもなかったはず”の樺太が、維新や帝政などによって翻弄されていく。
南極探検隊の白瀬中尉も登場し、あの冒険に犬係としてアイヌが同行していたことも初めて知る(後援会長が大隈重信だったことも)。
ラスト、女性ふたりに彼らの熱が受け継がれていくことが暗示され、感動。石森延男の「コタンの口笛」に何事かを感じた人はぜひ。北海道人である妻に
「アイヌの人たちのことはどう感じてたんだ?」
「いたわ。確かに。でもあの人たちはそのことを言わないの」
考えさせる1冊。熱い1冊。
Journey - Who's Crying Now (HQ with lyrics)
スマホが死んでいるときに、某銀行からめったやたらに着信があったみたい。あー退職手当がらみの話なんだな。決算が近いから大変だなあ。
若手が一生懸命なんだ、ちゃんと話を聞いてやろう。
「やはりですね、運用をするとしないとでは大違いなわけです」
「ですよね。」
そんなことはわかっている。普通預金の口座に入れていていいことはなんもない(悪いこともない)。
「この資料をご覧ください。する場合としない場合ではこれだけの差が」
「ですよね。ただ、わたしとしてはこう考えているんです。このコロナの世に投資をするのはどうなんだと」
「え、あ、はあ」
「なんと株価あがってますよね。でもそれを信じてないんだなあ」
「……はい」
「大きい金をゲットしたことで、もちろんテンション高まってますけど、だからこそ今は金を動かすのはやめようと妻と語っておりまして」
嘘です。わたしだけの考えです。
「はああ。わかります。でもつなぎにですね……」
お兄ちゃんの話にはすごく説得力があった。彼にはなんの罪もない。
でも、もうひとつ別のファクターがあったの。
実は安倍晋三とトランプの世の中で投資することだけはしたくないの。してたまるもんか。投資信託するだけで、あいつらはうれしいわけでしょう?
これって頑固おやじみてーだな。いいよ頑固おやじで。
本日の1曲はジャーニーの「クライング・ナウ」
産業ロックの何が悪い!と開き直っているわけじゃなくて、あの(みんながバカにした)ジャンルのおかげで、ロックの音質は劇的に向上した。まあ、それがいいとか悪いとかはいろいろあるけどね。
最初の来日のときは郵便貯金ホールでロンドンブーツだったのに、売れてから武道館でライブをやったときはスニーカーだったとか(笑)。いいんだよ、頑固おやじもそれくらいは許容できますとも。
あ、まだ「インビクタス」以外にもイーストウッド映画で観てないのありました。
いい意味でも悪い意味でも伝説の男、初代FBI長官フーヴァーの伝記映画。どうにもホモセクシュアルな関係が強く出ているらしく、気が進まなかったの。
予想通りそっちのお話はさして面白くはなく(ゲイであることが弱さの象徴であると母親に難詰された経験が、彼を過剰にマッチョな姿勢をとらせることになったという意味では重要な背景なのだが)、アメリカ裏面史そのままのスキャンダルの連続と、フーヴァーがどう対処したかの方が趣深い。
ただ、フーヴァーを演じたレオナルド・ディカプリオはやはりミスキャストだったのではないか。
じゃあ20代前半から50年間に及ぶ人生を、他の誰が演じることができたのかということだが、うーん。
まあわたしはディカプリオが苦手な人間で、どんなときもミスキャストな感じを抱いてしまうので割り引いて聞いてほしいですけど。
にしても、フーヴァーがドロシー・ラムーアと結婚を考えていたってあたり、本当なのかなあ。常に彼を支えた秘書を演じたナオミ・ワッツの凄みは伝わってきたので、ひょっとしたらイーストウッドの興味はそっちにあったのかも。
PART1「横着な人」はこちら。
「針の穴を通すコントロールの投手など昔も今も1人も見たことないから心配しないで。投手はコントロールが一番だと言われるが、コントロールがなくてもそれ以外で補えるものを考えて作れば、色々な形で勝負できる」
NHK・BS1「あの試合をもう一度!スポーツ名勝負『2006プレーオフ 松坂大輔×斉藤和巳』」における斉藤和巳の発言。とても納得できます。わたし、このプレーオフを見てなかったのでとても残念。結果は1-0で西武の勝利。ものすごい投手戦だったらしい。
前にも紹介したけれど、わたしが見たなかで最高だったのは広島大野VS巨人槇原の延長12回の攻防。12回オモテにあげた1点を槇原が完封して勝利。あれは興奮したなあ。ふたりとも速球に切れがあってすばらしかった。ああ早くプロ野球が見たい。
「あれだけの真っ直ぐとカーブだと、やっぱりスピードの差があるから打ちづらいですよね。なかなかカーブを狙っていくのは難しい。真っ直ぐの割合のほうが多いわけですから。(捕手の)山倉(和博)さんはノーサインでいいと言っていました。(サイン)盗みが出た時に、山倉さんが『お前2つしかないんだからいいよ、ノーサインで』って。真っ直ぐと思っておけば、全部捕れちゃうんです。江川さんがマウンド上で首を振ったりとか色々してたんだけど、実際にはサインはなくて、自分が思ったボールを投げていたんですよ」
二塁から江川の投球を見続けた篠塚の回顧。やっぱり速球、というか江川の剛速球は投手の宝だったわけだ。にしてもノーサインだったのか(笑)。山倉もすごいなあ。ああ早くプロ野球が見たい!
2020年6月号PART1「稲妻」につづく。