ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ウラジロミドリシジミ

2016-07-19 22:24:12 | チョウ/ゼフィルス

 ウラジロミドリシジミ Favonius saphirinus saphirinus (Staudinger, 1887) は、シジミチョウ科オオミドリシジミ属(Favonius属)のゼフィルスで、北海道、本州、四国、九州に分布し、東日本ではカシワを主に、西日本ではナラガシワを食樹としている。生息地は極めて局所的で、更には開発等によるカシワ林の消失や乱獲により各地で絶滅が危惧されており、多くの自治体のRDBに絶滅危惧Ⅰ類として記載されている。
 オスの翅表は光沢ある緑色で、見る方向によっては学名(saphirinus)にあるように濃青色(サファイア・ブルー)を呈する。一方、メスの翅表は暗い褐色で地味である。翅裏の地色は、雌雄ともに銀白色で数本の暗色条があるが、オスでは弱いか消失する個体もいる。翅裏の銀白色と翅形が丸みを帯びてることが、他のミドリシジミ類と異なり、本種の特徴となっている。また、前翅長は14~20mmとミドリシジミ類としては小型で、特にオスは小さく、春型のルリシジミほどの大きさの個体もいる。
 活動時間は夕方で、オスはメスを探すために食樹の樹冠付近を飛ぶが、テリトリーを見張る行動や卍飛翔を繰り広げることはほとんどない。

 ウラジロミドリシジミは、長野県にて自力で生息場所を見つけて撮影してきたが、「サファイア・ブルーの全開翅」を撮るという課題が残っている。今年も長野県を訪れたが、1回のみであり、しかも早朝から気温が高くてカシワの樹冠から降りず、全く撮影することができなかった。そこで知人にお願いをして群馬県内の生息地を案内していただいた。
 群馬県内では、かつて榛名山に多産していたが、現在では開発と乱獲により絶滅したと言われている。案内いただいた場所は、そのような心配はないと思われる環境条件である。また、 今回の群馬の生息地の標高は、長野県の生息地よりも、およそ400mほど高いため発生時期が2~3週間ほど遅いこともあり、転戦が可能となった。

 7月16日の初訪。前日は雨、当日も朝から霧雨が降る生憎の天候。気温は18℃だが蒸し暑く感じる。カシワの枝を刺激して飛び出しても、下草には降りてこない。元気よく飛び回って逆に高い所の葉に止まってしまう。この日は、翅裏を撮影するのが精一杯であった。
 18日、2回目の訪問。朝4時半からカシワの枝を刺激する。天候は曇りだが、やはり蒸し暑い。ウラジロミドリシジミは降りてこない。1時間半粘って、ようやく1頭のオスが地上2mの所に止まった。「もっと下に」と欲を出して刺激を与えると、上にいってしまい取り返しのつかない事態になると思い、このまま待機。チョウの方は、落ち着いた様子で、徐々に向きを変えた。空を見上げると、雲が切れ始め、朝日が見え始めていた。1時間が過ぎたころ、止まっているカシワの葉に木漏れ日が差し始めた。すると、予想通りに翅を開いた。
 目的は達成できたが、点数を付けるなら50点。翅の輝きは素晴らしいが、夏の太陽が強すぎて「サファイア・ブルー」とは違った色合いになってしまった。「サファイア・ブルーの全開翅」を求めて、また来年挑戦である。(写真は、長野と群馬の個体を掲載した。)

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ウラジロミドリシジミ

ウラジロミドリシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 1250 +1/3EV(撮影地:群馬県 2016.7.16)

ウラジロミドリシジミ

ウラジロミドリシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 3200 +1EV(撮影地:長野県 2015.7.5)

ウラジロミドリシジミ

ウラジロミドリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 3200 +1/3EV(撮影地:群馬県 2016.7.16)

ウラジロミドリシジミ

ウラジロミドリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F2.8 1/320秒 ISO 2000 -1EV(撮影地:長野県 2014.7.13)

ウラジロミドリシジミ

ウラジロミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 1250 -1/3EV(撮影地:群馬県 2016.7.18)

ウラジロミドリシジミ

ウラジロミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200 -1/3V(撮影地:群馬県 2016.7.18)

ウラジロミドリシジミ

ウラジロミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200 -1/3V(撮影地:群馬県 2016.7.18)

ウラジロミドリシジミ

ウラジロミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 250(撮影地:群馬県 2016.7.18)

ウラジロミドリシジミ

ウラジロミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 1600 +2/3EV(撮影地:長野県 2015.7.5)

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2 コメント

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ウラジロ (ともきりん)
2016-07-20 13:52:12
素晴らしい写真ですね。他のファボとはちょっと違う感じのブルーに見えます。
ハヤシミドリシジミの早朝もそうですが、撮影にはやはり気温が重要ですね。
ウラジロはまだ逢ったことがないので、是非撮りたいですね。群馬にはカシワ林が多いと聞いています。来年チャレンジしたいなぁと思っています。
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ウラジロミドリシジミ (ホタル)
2016-07-20 17:04:00
ともきりんさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
朝から気温が高いと、まったく降りてきません。15℃以下が望ましいですね。
ウラジロミドリシジミは、光の状況と見る角度で
まさにサファイアのような深い青色に見えます。
まだまだ課題が残っていますので、
来年、白馬、群馬と再挑戦です。
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