東京のヒメボタル生息地は、秩父多摩甲斐国立公園内の標高およそ700m~1,200mの山地に広く分布している。今年も、昨年訪れた生息地に行って見た。標高1,000mを越えるブナとミズナラ、シラカンバの原生林と杉林である。昨年は、ブナ林で発光飛翔する様子を写真に撮った。「参照;ヒメボタル(東京都)」今年は杉林で観察と撮影を行った。杉林では、別の東京都内のヒメボタル生息地ではあるが、過去に何度も訪れ写真撮影は行っている。「参照;ヒメボタル(東京2020)」
天候は晴れ時々曇り。気温は到着した18時で24℃。早速、林道にカメラ2台をセットして待機。昨年は、ブナ林の入口付近で19時24分から発光が始まったが、今年の一番ボタルは19時40分。なかなか後が続かない。20時を過ぎても一向に発光し飛翔するヒメボタルが増えないのである。それもそのはずで、月齢11.3の明るい月が、20時の段階で南方向30度の高さに輝いており、杉林の林床を照らしていたのである。山奥にたった一人であるから、この月明りは、私にとっては恐怖心を和らげたが、ヒメボタルにとっては大敵である。
20時半になると月が雲で隠れ、林内は暗闇に包まれた。するとヒメボタル達は盛んに発光飛翔するようになった。しかし、それも15分足らずで終了。再び、月が林床を照らし始めたのである
東京のヒメボタル生息地における今回の目的は、発生時期、活動時刻、飛翔範囲とルートの確認、そして証拠・記録としての写真と映像の撮影であった。月明りに邪魔をされたが、これら目的はすべて達成。以下には、3枚の写真と映像を掲載した。1枚目の写真は90秒相当の多重で、ヒメボタルの飛翔ルートが分かる。観察していると、何故オスはそのコースを飛翔するのか、そして全体的な飛翔範囲から特性も推察できた。できれば次の週末に再訪し、メスの生息範囲等を確認をし、仮説を証明したいと思う。
インターネット上では、これでもか!という位にヒメボタルの発光を重ね合わせた写真ばかり目に付き、コンテストでも上位に入るようだが、それらは単に「インスタ映え」という変な流行に惑わされた創作であり、ヒメボタルの生態学的見地からは何の意味もなく価値もない。そう思いながらも10分と13分相当の光跡を重ねた写真も掲載してみた。
この東京のヒメボタル生息地は、ヒメボタルの生態の知識がなく、それを学ぼうともしない、そして保護保全には興味がない単に創作写真撮影だけを目的としたカメラマンや興味本位の見物人は誰一人として来ない。かつては観賞者もカメラマンも誰もいなかった埼玉県や静岡県のヒメボタル生息地は、現在では人で溢れている状況。埼玉県のヒメボタル生息地では、カメラマンの足元の下草で光り始めたホタルがいても全く気にすることなく踏みつぶしていたのである。それも一人ではない。カメラを向けた方向に飛んでくれさえすれば良いのだろう。静岡県の生息地では、ヒメボタルが飛翔する時間になってから車で訪れ、いつまでも飛翔場所に向けたヘッドライトを消さない初老のカメラマン。消して頂くように話をすると「ここは駐車場だ!」と逆切れ。あるいは、生息地内を懐中電灯を照らしながら「ここはカメラマン優先ではなく、歩行者優先だ」と言いながら歩く若者。「ホタルが最優先である!」こんな状況はうんざりである。この東京のヒメボタル生息地を同じ状況にはしたくない。開発の手も入ることはない。これからも、ずっと山奥でひっそりと光り続けてほしいと思う。
以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。
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