ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ミルンヤンマの産卵

2017-09-03 22:24:10 | トンボ/ヤンマ科

 ミルンヤンマの産卵シーンは、昨年と今年、生息地4ケ所を10回訪問し待機することのべ45時間。これまで産卵は目撃できても撮影には至らなかったが、今回ようやく撮影することができたので紹介したい。

 ミルンヤンマ Planaeschna milnei milnei (Selys, 1883)は、ヤンマ科(Family Aeshnidae)ミルンヤンマ属(Genus Planaeschna)で、北海道南部・本州・四国・九州、南西諸島の一部など広範囲に分布する日本特産種のトンボである。
 主として低山地から山地にかけてのやや暗い渓流に生息しているが、谷戸の小さな流れにも生息していることがある。成虫の羽化は6月頃より始まり、8月頃には成熟し、9月を中心に生殖行動が行われ、11月頃まで見ることができる。環境省カテゴリに記載はないが、北海道のRDBでは準絶滅危惧種としている。東京都内では、丘陵地~山間部の沢には必ずと言ってほど生息している。

 さて、ミルンヤンマは、ヤンマ類の中では、産卵に関して一番神経質なタイプなのか、あるいは、産卵行動に関する私の知識不足なのか、これまでオスの静止は何度も撮影しているが、産卵シーンは目撃のみ。今年は、目標である産卵シーンをしっかりと撮りたい。
 先週、先々週は、東京都内のある生息地で挑戦したが、やはり目撃のみ。今回は、知人S氏(ミルンヤンマ産卵とコシボソヤンマ産卵)から撮影の知らせを受け、昨年も訪れた別の沢に的を絞った。この沢は、コシボソヤンマも生息しており、昨年は「コシボソヤンマの産卵」を撮影している。
 午前9時に沢のポイントに到着。気温は23℃で、天候は曇り。待機していると、10時に1頭のミルンヤンマのメスが飛来し産卵を始めるが、朽木ではなく、岩に生えたコケの水際付近ばかりであり、一度、腹部を水中まで入れて産卵していた。水際で産卵するのは、他の生息地では観察したことはなかった。いずれも川岸の高さ1m前後に位置する朽木であったから、興味深い事実である。産卵時間は極めて短く2~3秒ほど。次から次へと移動しながら、様々な場所で産卵を行っており、撮影することはできなかった。
 その後、ミルンヤンマのオスが川面すれすれの高さを往復飛翔しながらメスを探す様子を何回も観察できた。日中は、あまり活動しない黄昏型と言われているが、気温や天候、成熟による差もあるのだろう午前中から活発に探雌飛翔していた。
 しかしながらミルンヤンマのメスは、一向に飛来せず、代わりにコシボソヤンマのメスが何度も飛来しては、あちこちで産卵をしていた。朽木や岩に生えたコケに産卵していたが、コシボソヤンマも水際付近ばかりであり、腹部を水中まで入れて産卵していた。(参考までに写真を掲載した。)また産卵時間は極めて短く2~3秒ほどで、次から次へと移動しながら、様々な場所で産卵を行っていた。

 13時半。晴れ間が広がり、沢に太陽の光が差してきた。気温は24℃。すると1頭のメスのミルンヤンマが飛来した。当初、流れから2mほど離れた林道の山側にある切り株に止まり産卵を始めようとしたが、産卵に適さないと判断したのだろう、すぐに飛び立って川面の上を飛び、木が覆いかぶさった薄暗い岸辺にある朽木の所へ。静かにゆっくりと近づくと、朽木で産卵中であった。不意に近づくと飛んでしまうが、産卵に集中すると至近距離まで寄ることもできる。最初は300mmレンズで撮っていたが、最後は90mmマクロレンズで撮ることができた。この朽木は、柔らかく、飛翔するオスからも目立たない場所にあるため、産卵するのに最適な条件だったのであろう。およそ20分間、朽木の様々な場所に産卵管を刺していた。
 ミルンヤンマの産卵は、午後から夕方に行われることが多いと記載されているものがあるが、筆者のこれまでの観察では、どの生息地も午前10時から夕方までの間に産卵を行っており、特にピークになる時間帯はなく、生息流域を移動しながら随所で産卵を行っている。ただし25℃を超えると不活性になり、涼しい時間帯に産卵しているようである。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、すべて1024*683 Pixelsで掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ミルンヤンマの産卵写真

ミルンヤンマの産卵
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/6秒 ISO 400 -2EV ストロボ使用(2017.9.03 14:01)

ミルンヤンマの産卵写真

ミルンヤンマの産卵
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/4秒 ISO 400 -1 1/3EV ストロボ使用(2017.9.03 14:02)

ミルンヤンマの産卵写真

ミルンヤンマの産卵
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 0.3秒 ISO 400 -2/3EV ストロボ使用(2017.9.03 13:59)

ミルンヤンマの写真

ミルンヤンマ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/25秒 ISO 400 ストロボ使用(2017.9.03 14:06)

ミルンヤンマの写真

ミルンヤンマ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/30秒 ISO 400 -1 1/3EV ストロボ使用(2011.9.10 16:01)

ミルンヤンマの写真

ミルンヤンマ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F4.5 1/20秒 ISO 400 -1 1/3EV ストロボ使用(2011.9.10 16:05)

コシボソヤンマの産卵写真

コシボソヤンマの産卵
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/60秒 ISO 400 ストロボ使用(2017.9.03 10:41)

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