ホタルの独り言 Part 2

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ムラサキシジミ

2017-08-28 21:09:40 | チョウ/シジミチョウ科

 ムラサキシジミは、過去に何度も撮影し、その都度記事にしてきたが、先日、メスの開翅を撮影したので、 今一度過去の撮影分と合わせてまとめたいと思う。

 ムラサキシジミ Arhopala japonica (Murray, 1875) は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)ムラサキシジミ属(Genus Arhopala)のチョウで、翅表は、和名のように黒色の広い帯で縁どられた紫藍色で、オスの方が紫藍色部分が広い。一方、翅裏は地味で灰褐色にやや濃い斑紋が並んでいるのが特徴である。暖地性のチョウで、本州(宮城県以南)、四国、九州、南西諸島に分布し、平地から山地の照葉樹林や落葉樹林に生息している。原因は不明だが、東京都や埼玉県では、1960~70年代頃に一時的に本種の姿が消えたが、最近では食樹がある都心の大きな公園でも見ることができるようになっている。
 ムラサキシジミは、多化性で6月~10月の間に2~3回発生するが、季節型はなく、羽化時期による翅の色彩や形状、大きさ等の違いは見られない。その年の最後に羽化した成虫は、そのまま単独ないし数匹の小集団で越冬し、越冬後は4月頃まで見られる。
 成虫は、花で吸蜜することは稀で、ほとんど何も食さないと考えられているが、幼虫はアラカシ、イチイガシ、スダジイなどのブナ科の常緑樹を食樹としている。また幼虫は、アリと密接な関わりを持った生活をしている。
 ムラサキシジミの幼虫は、糖とアミノ酸の豊富な蜜を分泌してアリに栄養報酬として与え、外敵から守ってもらうことで知られている。幼虫の分泌物を口にしたアリの脳内では、ドーパミンレベルが低下することを神戸大学の北條賢博士と琉球大学、ハーバード大学の共同研究グループが研究により明らかにしている。脳のドーパミンシグナルを改変することで、アリは幼虫に夢中になり、幼虫が触覚を引っ込める等の危険信号を発した時は、幼虫に危害を加えようとする外敵に対して攻撃を加えるようになるというのである。この研究は、これまで考えられてきた異なる生物種がお互いの利益を交換しあう「相利共生」ではなく、幼虫が化学的・視覚的な刺激で一方的にアリを操っていることを明らかにした。生態学的にも、反響の大きい発見である。

 甘い蜜に釣られて知らぬ間に操られているのは、アリだけではないだろう。銀座や歌舞伎町等の「夜の蝶」には気を付けたい。

追記

ムラサキシジミは、分類学上(Narathura属)という別の属に扱われることが多いが、明確な理由がないため、ここでは(Arhopala属)として表記した。

参考文献ほか

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ムラサキシジミの写真

ムラサキシジミ(オスの開翅)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 1250(2017.6.11)

ムラサキシジミの写真

ムラサキシジミ(メスの開翅)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 400 -2/3EV(2017.8.19)

ムラサキシジミの写真

ムラサキシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.0 1/800秒 ISO 200(2010.11.03)

ムラサキシジミの写真

ムラサキシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 3200(2010.8.07)

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