わに塚の桜は、山梨県韮崎市にある「わに塚」の上に立つ一本桜で、樹齢約330年、根回り3.4m、樹高17mのエドヒガンザクラで、平成元年に韮崎市の天然記念物に指定されている。ちなみに、エドヒガン(江戸彼岸)は、古くから日本の山野に自生していた野生種で、江戸でお彼岸のころに花が咲くところから名付けられたと言われている。
「わに塚」の名の由来については、桜の脇にある案内板に2つの説が書いてある。1つは、甲斐国志によれば、お詣りするときに使う神社の神具・鰐口(わにぐち)に似た形の塚だったことから名付けられたという説。もう1つは、地元の人々の言い伝えで、日本武尊(やまとたけるのみこと)の王子、武田王(たけだのきみ)の墓または屋敷跡だという説がある。いずれにせよ、見晴らしが良い田畑の中に土を小高く盛った塚。その上で咲き誇る一本桜の凛とした美しさは、見るものを魅了する。
わに塚の桜は、これまで訪れたことがなく、また、桜の撮影も久しく行っていなかったので、今年は是非一度行って見ようと計画していた。情報をチェックすると4月1日に開花し、満開は5日とのこと。できれば満開の時に、そして青空の下、定番である残雪の富士山や八ヶ岳を背景に写したい。しかしながら、毎日天気予報がコロコロ変わる。この時期は、そろそろゲンジボタルの幼虫が雨の日に上陸する時期でもあり、雨天は嬉しいが、両方を一度には無理である。
4月3日は、気温が低く、朝から翌朝まで冷たい雨が降り続いた。翌4日の予報は気温が上昇。夜間でも18℃近くまである。当日朝の予報では、山梨県内のゲンジボタル生息地では夕方から雨であり、5日は曇りであった。ならば、4日夜にゲンジボタルの幼虫の上陸を観察し、5日の朝はわに塚の桜を撮る予定に決定。
自宅を14時に出発し、まずはゲンジボタル生息地へ向かった。途中の山梨県内は霧雨。ところが、現地に到着してみると曇りで、昨日に降った雨も乾いている。空も明るい。その時点で最新の予報を見ると、何と雨雲が消えている。夕方からも降らない予報に変わっていた。これでは上陸は行われない。このまま明日の朝まで待機するかどうするか・・・即決してわに塚の桜へ向かうことにした。
17時半に現地に到着したが、駐車場が満車で入れず、時間をおいて再度向かうと1台出るところで、入れ替わりに何とか駐車場に停めることができた。平日の夕方でも、それなりに見物客やカメラマンは多い。これが休日だったら大変だろう。車から降りて見上げると、上空は薄曇りだが、長野方面は晴れている。早速、300mほど先の桜の元へと進んだ。
わに塚の桜は、写真では知ってはいたが、実際に見ると、その孤高の一本桜に圧倒される。残念ながら富士山はまったく見えず、綺麗に見えていた八ヶ岳を背景に撮ろうにも、ベストポジションに30人ほどのカメラマンが列をなし、割り込むことも躊躇せざるを得ない状況。仕方なく、あちらこちら歩き回り、様々なカットを撮ってみたが、有名な一本桜はどこから撮ってもオンリーワンの写真にはならない。
そうこうしている内に日が暮れた。すると、3方向から桜にスポットライトが当たる。桜の開花期間中は、18時過ぎから20時頃までライトアップが開催されているのだ。人工的な照明に照らされた夜桜は、幻想的ではあるが、満月に照らされる夜桜の方が良いに決まっている。この桜の光景にとって唯一邪魔な存在である高圧線と鉄塔が入らぬよう数枚撮って、この日は帰ることにした。今後、晴れて富士山が見えるのは、おそらく桜が散る頃になるだろう。私的には、この日この時ならではの絵を残せたように思うが、いつか、残雪の富士山をバックに、朝日の逆光で輝くわに塚の桜を日本画風に撮ってみたいとも思う。
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素晴らしい桜ですね。
実際に現場に行って帰路に立つときに後ろ髪をひかれそうな魂が宿るような生命力を感じました。
早速、リンクの許可を頂き恐縮です。
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なにか不備等ございましたら、お知らせください。
よろしくお願いいたします。
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