三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「忍びの国」

2017年07月19日 | 映画・舞台・コンサート

 映画「忍びの国」を観た。
 http://www.shinobinokuni.jp/index.html

 石原さとみは「シンゴジラ」辺りから演技が一皮剥けた印象で、テレビドラマ「校閲ガール」では現代っ子の若い女性をコミカルに演じていた。
 この映画でも石原さとみの演技に期待していたが、まあ出番の少ないこと。それでも気は強いが愛情豊かな奥方を美しく演じていた。住居と着物のギャップは触れぬが花だ。
 ストーリーはなかなか練られていて全体として面白くは見れるのだが、鈴木亮平と大野くんが言う同じ台詞「人間じゃない」の、あまりのリアリティの欠如に、思わずずっこけそうになった。
 下人たちの中での大野くんの立ち位置や下人たちの日常などをもっと整理しないと、取ってつけたような設定になる。下人たちが「人間じゃない」呼ばわりされるためには、情け知らずの極悪非道でなければならないが、この作品の下人たちは自分の欲望に正直なだけで、作品全般ではむしろ愛すべき人々である。
 説得力に欠ける設定はシラけるだけだ。ディズニー映画じゃないんだから、もっと全体に悪党寄りにしてもよかったのではないか。その方が大野くんも新境地を開けただろう。残念だ。


映画「Pirates of the Caribbean: Dead Men Tell No Tales」

2017年07月19日 | 映画・舞台・コンサート

 映画「Pirates of the Caribbean: Dead Men Tell No Tales」を観た。
 http://www.disney.co.jp/movie/pirates.html

 このシリーズは見たり見なかったりだ。ディズニー映画だからというバイアスは特にないが、価値観はアメリカ映画に共通する「家族が一番大事」であることに変わりはない。ディズニーは特にその傾向が強い気がする。
 ジャック・スパロウは行き当たりばったりでお人好しの船長で、海賊らしさはまったくない。特に秀でた才能がある訳でも、人格に優れている訳でもない。この人物に魅力を感じる人と感じない人がいて、私は後者のひとりだ。従って主人公にまったく感情移入できない。つまり映画を観ても全然面白くないということになる。
 しかしこの映画がシリーズでずっとヒットしているということは、どこかにそれなりの面白さがあるはずだ。今回は斜に構えずにニュートラルな気持ちでこの映画のよさを見つけるつもりで観た。

 国も役人も恐れないジャック。~やくざをはじめ、大抵のアウトローは既成の権威や権力を恐れない。
 剣の腕がそこそこのジャック。~元々相手を殺す気がないのに戦って、会話で優位を得ようとするのは、詐欺師も同じだ。
 ユーモアのセンスがあるジャック。~笑っているのは本人だけ。売れない漫才師と同じだ。

 ということで、ジャック・スパロウはやくざで詐欺師の売れない漫才師という程度。やっぱり全く感情移入できなかった。残念だがこの映画は私には合わないということだろう。主人公が超軽量級の上に、価値観が浅薄すぎる。


舞台「イヌの仇討ち」

2017年07月19日 | 映画・舞台・コンサート

 紀伊国屋サザンシアターにて。こまつ座の公演「イヌの仇討ち」を鑑賞。
前半が終了した時点で、吉良上野介がめちゃくちゃ面白い。井上ひさしの面目躍如というところ。後半は前半から更に深く穿たれて、井上ひさし流の忠臣蔵が展開する。ここ数年で一番の舞台だ。
 終焉後のトークショーでは主演の大谷亮平さん、こまつ座生え抜きの三田さんなど、五人が壇上へ。演技での苦労話や演出家の人となりなどが聞けて、非常に有意義だった。
 我々の知る忠臣蔵が本当の忠臣蔵なのか、もしかしたら違う事実があるんじゃないか、そんな視点から書かれた戯曲である。井上ひさしらしく、お笑いをふんだんに盛り込まれて笑える場面が多い一方、言葉のやり取りだけでみるみる真実に迫ってゆく芝居に、思わず息を飲んでしまう。
 役者たちのそれぞれの配役に対する理解度が大変深いため、逆に観客には理解しやすいという理想的な芝居になっている。チケットが取れればもう一度観たい。