三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「空飛ぶタイヤ」

2018年06月17日 | 映画・舞台・コンサート

 映画「空飛ぶタイヤ」を観た。
 http://soratobu-movie.jp/

 この作品は長瀬智也が主演のはずで、本人もそれなりの演技をしていたのだが、如何せん脇役陣の演技が凄すぎて主役がボケてしまった感がある。それはプロットにも由来するところがあって、主要な登場人物それぞれの人生が少しずつ描かれることで、それぞれの人物に一様に感情移入することになり、主役のシェアが下がってしまうのだ。しかしそれは強ち悪いことではなく、寧ろ群像劇のように物語の幅を広げている。
 個人と組織の相克というテーマはお馴染みではあるが極めて奥の深い問題で、映画、小説、演劇など様々なジャンルの数多くの作品で様々に描かれてきた。この作品では組織の論理が個人を蹂躙する大企業に対して、家族のような人の繋がりを是とする小企業の対比がベースとなっている。現実はもう少し複雑だが、敢えて簡略な構図を設定することで登場人物たちを典型化し、行動の動機を明快にしている。登場人物に感情移入しやすいからくりがそのあたりにあると思う。
 場面場面で異なる登場人物に感情移入しながら観るので、飽きることはない。また登場人物が典型だから混乱することもなく全体像を容易に把握しながら観ることができる。とても分かりやすい作品で、エンドロールで流れる桑田佳祐の歌の「しんどいね、生きてく(生存競争)のは」という歌詞がこの作品を象徴していて、いろんなことはあるけど、共同体の中で組織や個人と関わりつつ、それらを受け入れて生きていくしかないという、諦観とも肯定ともつかない感想を得る。


映画「バーフバリ 王の凱旋」

2018年06月17日 | 映画・舞台・コンサート

 映画「バーフバリ 王の凱旋」を観た。
 http://baahubali-movie.com/

 インド映画を観るのは多分初めてである。歌や踊りがあると聞いていて、場面の途中で何の脈絡もなくいきなり歌や踊りのシーンが出て来るのかと勝手に思って敬遠していたのだ。
 しかし実際に観てみるとそれほど違和感はない。というよりも、歌と踊りのシーンが楽しくてしょうがない。日本女性がやると痛々しさを感じてしまう鼻飾りも、インドの女性はよく似合ってとても美しい。女性たちが皆、微妙にふくよかなところもある意味ツボである。
 物語は極めて権威主義のファンタジーだが、王様が主人公だから権威主義の世界観は当たり前だ。その後ろ楯は現代でもお馴染みの軍事力である。戦いで多くのその他大勢の人々が死んでいくが、あまり気にすることもなく物語は進んでいく。権力の中枢での権謀術数や王国同士の力関係などが絡み合い、プロットは幾何学的に組み立てられている。
 古い価値観と新しい価値観の相克の場面もあり、誰もが古い権威主義を振りかざす中で王女の主張が非常に論理的で明快で、封建主義に新風を吹き込むような爽快感がある。とても気持ちのいい作品で、インド映画を見直した。