六本木の俳優座でこまつ座の公演「父と暮らせば」を観た。登場人物は父と娘の二人。山崎一と伊勢佳世がそれぞれ父と娘を演じる。
駄洒落と冗談が好きで陽気な父親の幽霊と真面目一方の娘。二人がピカと呼ぶ原爆の記憶は、三年たっても昨日のことのように生々しい。
すり鉢で作るじゃこ味噌、雨漏りのする家、来客に備えて氷で冷やしたビールなど、日常的なシーンが原爆とのギャップを強調し、日常的であればあるほど、失ったものがどれだけ大きかったかが伝わってくる。
原爆がどのように人々を、地域を、生活を蹂躙したか。広島弁の台詞が朴訥に表現する原爆後の生活と人々の気持ちに、深く打たれてしまった。演じた二人と演出に拍手。