日々好日・いちよう

ちょっとした日々の一コマです

田中奈保美著「ボケてもがんでも死ぬまで我が家」

2022-03-08 | 読書
長年の友人の田中奈保美さんから送っていただいた著書

「ボケてもがんでも死ぬまで我が家」アートデイズ刊
ー夫のがん発覚から
  看取りまでの一年二カ月の記録ー

田中さんとは以前星岡のお茶会でご一緒し
行き帰りにいろいろなお話をしていた。
素敵なお医者様のご主人のお話も聞いていた。

和服の帯結びのお手伝いをしてもらっている事
住まいの改装で、床板をご主人が張り替えた事
「それが上手なのよ!」嬉しそうだった。

大きな病院の著名な脳外科医とは思えない気やすさ
物事の上下をつけず何事にもチャレンジする精神
それにも増して、病気を治療する性の人が
人が死にゆくのを邪魔してはいけない、、と言う。
ご夫妻で思いを共有できる幸せ、を話の端々からかんじていた。

そのご主人が認知症になり、癌になり、看取ったこと
話には聞いていたものの、
本にするのはかなりの決断を要したことは想像できる。
送っていただいたものの、読みはじめるのも勇気のいる思いだった。

ところが、どこを取っても暗さはない、
田中さんの話し口そのままの、キッパリとした文章運び
何のてらいもなく読み進めた。

ご主人のスナオさんには結婚パーティや
コンサートでお目にかかってはいたものの
直接お話しした事はなかったけれど
すぐ目の前を歩いているのを見ている気分になった。

結婚パーティーで賑やかな笑い声の集団
きっとお医者仲間だったに違いない
あの人達が、一団となって
田中さんやスナオさんを支えていた人達だったのだろう
懐かしく心強く読み進めた。

私の母もそうだったが、死はノロノロした挙句に一気にやってくる。
「亡くなった..」
「ああ終わったんだ...」
実感として胸に収まる。

亡くなった悲しみ、
なぞりながら文章を書きながら、
何度も追体験をして涙したのでしょう。

書いていいのか?
何回も問いかけながら、出来た一冊。

これから何人もの死に向き合わなければならない私達
一人一人の死と私自身の死
心置き無く死に向かっていける気もする(?)

奈保美さんの見事な看取りを受け取り
言葉は交わさなかったけれど
スナオさんは死ぬまで立派なお医者さんだった!
つくづくそう思う。



2010年の著作
田中奈保美著、新潮社発行「枯れるように死にたい」
ー「老衰死」ができないわけー
こちらもご一読ください。

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